説明

光拡散板の製造方法

【課題】押出成形時におけるメヤニの発生を抑制し、表面不良の発生を低減することが可能な光拡散板の製造方法、この方法により得ることのできる光拡散板、これを備えた面光源装置及び、透過型画像表示装置を提供する。
【解決手段】光拡散板の製造方法は、粒子成分を含まない熱可塑性樹脂を溶融し、当該熱可塑性樹脂からなる層が表面42a,42bを構成するように押し出すことによって光拡散板40となる樹脂シート70を成形する工程と、2つの押圧ロール68,69で樹脂シート70を挟み込み、少なくとも一方の押圧ロールの周面に設けられた転写型によって樹脂シート70の表面42a,42bに凹凸を形成する工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散板の製造方法、光拡散板、これを備えた面光源装置及び透過型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型画像表示装置の一例である直下型画像表示装置として、透過型画像表示部の背面側に光源が配置されたものが広く用いられている。かかる直下型画像表示装置としては、光源からの光を均一に分散させて透過型画像表示部を均一に照明できることが望ましい。このため光源と透過型画像表示部との間には、光源側から入射する光を、その向きを変えて反対側の透過型画像表示部側から出射させる機能を有する光拡散板が配置されていることが一般的である(例えば特許文献1:特開平7−198913号公報参照)。
【0003】
このような光拡散板は、押出成形法により製造され得る。具体的には、溶融樹脂をシート状に押し出すことによって製造される樹脂シートを、所定の長さに切り出すことで光拡散板を製造し得る(例えば特許文献2:国際公開07/057960号パンフレット参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−198913号公報
【特許文献2】国際公開07/057960号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記に示した押出成形法では、溶融樹脂の押出口であるダイリップにおいて、溶融樹脂の一部が熱劣化した黒色の物体が形成され、メヤニが付着したような状態となることがある。このような、いわゆる「メヤニ」がダイリップに付着する現象は、粒子成分が含まれた溶融樹脂を押出す際に特に顕著に現れる。そして、このメヤニは、ダイリップから押出される樹脂シートに接触したり付着したりすることにより、樹脂シートの表面に不良を発生させるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、押出成形時におけるメヤニの発生を抑制し、表面不良の発生を低減することが可能な光拡散板の製造方法、この方法により得ることのできる光拡散板、これを備えた面光源装置及び、透過型画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、いわゆる「メヤニ」の発生が、溶融樹脂に含まれる粒子成分とダイリップにおけるエッジ形状とに起因することを見出した。すなわち、粒子成分を含む溶融樹脂をエッジから押し出すと、樹脂シートの表面から粒子成分が浮き上がり、当該粒子成分とエッジ表面と上記表面との間に微小な空間が形成される。この空間に溶融樹脂が滞留するとメヤニが発生する。
【0008】
そこで、本発明に係る光拡散板の製造方法は、粒子成分を含まない熱可塑性樹脂を溶融し、当該熱可塑性樹脂からなる層が表面を構成するように押し出すことによって光拡散板となる樹脂シートを成形する工程と、2つの押圧ロールで樹脂シートを挟み込み、少なくとも一方の押圧ロールの周面に設けられた転写型によって樹脂シートの表面に凹凸を形成する工程と、を備えている。
【0009】
この光拡散板の製造方法では、押出成形時にダイリップに接触する表面を構成する層の材料を、メヤニの発生の原因となる粒子成分を含まない熱可塑性樹脂としている。この粒子成分を含まない熱可塑性樹脂により構成される樹脂シートの表面に凹凸を形成しているので、この凹凸により拡散された光が出射される。この方法により、熱可塑性樹脂に含まれる粒子成分によって、押出成形時のメヤニの発生要因となる上記微小な空間が形成されることを防止できる。この結果、エッジ部分にメヤニが発生することが抑制され、表面不良の発生を低減させることが可能となる。
【0010】
本発明に係る光拡散板の製造方法では、2つの押圧ロールの周面には転写型がそれぞれ設けられており、2つの当該転写型の形状は互いに異なっているものとすることができる。
【0011】
光拡散板が用いられる製品の一部品として光拡散板が組み付けられる場合には、例えば光拡散板の反りの向きに基づいて光拡散板の組み付け方向が決まるものがある。この光拡散板の製造方法では、樹脂シートの表面と裏面とで互いに異なる形状の転写型が転写されるので、触感や見た目により表面と裏面とを容易に判別することが可能な光拡散板が製造される。これにより、製品組み付け時に表と裏とを間違って組み付けられることを防止できる光拡散板を提供することができる。
【0012】
本発明はまた、上記本発明に係る製造方法により得ることのできる光拡散板に関する。本発明に係る光拡散板は、表面不良の発生が低減されるので高品質に製造される。
【0013】
本発明はまた、上記光拡散板と、互いに離間して配置されており、光拡散板に光を供給する複数の光源を有する光源部と、を備えている、面光源装置とすることができる。この構成では、高品質に製造される上記光拡散板を備えているので、光源の光を均一に分散して出射することが可能となる。
【0014】
本発明はまた、上記面光源装置と、複数の光源から出力され光拡散板を通過した光によって照明される透過型画像表示部と、を備えている、透過型画像表示装置とすることができる。この構成では、高品質に製造される上記の光拡散板を備えているので、光源の光を均一に分散して出射し、透過型画像表示部を照明することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、押出成形時において、メヤニの発生を抑制し、表面不良の発生を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る光拡散板の製造方法により製造される光拡散板を含む透過型画像表示装置の一実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る光拡散板の一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る製造方法の一実施工程を示すための説明図である。
【図4】本実施形態に係る押圧ロールの周面に設けられる転写型に形成された凹凸を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明に係る製造方法の一実施工程を示すフローチャートである。
【図6】メヤニが発生するメカニズムを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。また、説明中「上」、「下」などの方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
【0018】
〔透過型画像表示装置〕
図1は、本発明に係る光拡散板の製造方法により製造される光拡散板を含む透過型画像表示装置の一実施形態の構成を模式的に示す断面図であり、透過型画像表示装置を分解して示している。最初に、本実施形態に係る製造方法によって製造される光拡散板40を含む透過型画像表示装置1の構成について、図1を参照しながら説明する。透過型画像表示装置1は、図1に示すように、透過型画像表示部10と、透過型画像表示部10の背面側に対向して配置された面光源装置20とを備えている。以下の説明では、図1に示すように、面光源装置20と透過型画像表示部10の配列方向をz軸方向(板厚方向)と称し、z軸方向に直交する2方向であって互いに直交する2方向をx軸方向及びy軸方向と称す。
【0019】
透過型画像表示部10は、面光源装置20から出力された光によって照明されることにより画像を表示する。透過型画像表示部10としては、例えば液晶セル11の両面に直線偏光板12,13が配置されたカラー液晶表示パネルが挙げられる。この場合、透過型画像表示装置1は、液晶表示装置(又は液晶テレビ)である。液晶セル11及び偏光板12,13は、従来の液晶表示装置などの透過型画像表示装置で用いられているものを用いることができる。液晶セル11としてはTFT(Thin Film Transistor)型、STN(Super TwistedNematic)型などの公知の液晶セルが例示される。
【0020】
面光源装置20は、いわゆる直下型の面光源装置であり、並列配置された複数の光源31を含む光源部30を有する。各光源31は、複数の光源31の配列方向に直交する方向に延在している線状光源であり、蛍光ランプ(冷陰極線ランプ)のような直管状のものが例示される。複数の光源31は各光源31の中心軸線が同一の平面P1内に位置するように間隔をあけて配置されており、隣接する2つの光源31,31の中心軸線間の距離をLとした場合、距離Lは、例えば15mm〜150mmである。ここでは、光源31は線状としたが、LEDのような点光源などを用いることも可能である。なお、図1中に示した平面P1は説明の便宜のためであり、仮想的な平面である。
【0021】
複数の光源31は、図1に示すように、ランプボックス32内に配置されていることが好ましく、ランプボックス32の内面32aは、光散乱反射面として形成されていることが好ましい。これにより、各光源31から出力された光が透過型画像表示部10側に確実に出力されるため、各光源31からの光を効率的に利用することが可能となるからである。本実施形態では、光源部30は、上記好ましい構成のランプボックス32を有するものとして説明する。
【0022】
面光源装置20は、光源部30の前面側(図1では上側)、すなわち、透過型画像表示部10側に光源31に対して離間して配置された光拡散板40を有している。上記光拡散板40と複数の光源31との間の離間距離をDとした場合、離間距離Dは、例えば5mm〜50mmである。面光源装置20では、薄型化を図るため、L/Dが1.5以上であり、好ましくは、L/Dは2.5以上となるように、隣接する2光源31,31間の距離L及び離間距離Dが選択されている。
【0023】
光拡散板40は、光源部30からの光、すなわち、各光源31からの直接光及びランプボックス32の内面32aで反射した反射光を透過型画像表示部10に向けて拡散照射するためのものである。光拡散板40の厚さd1は、1.0mm〜4.0mm程度である。
【0024】
次に、光拡散板40の構成について、図2を用いて説明する。光拡散板40は、中間層41及び表層(表面)42a,42bが、光源部30の前面側(図1では上側)から表層42a、中間層41、表層42bの順に積層されてなる積層体(多層体)である。すなわち、光拡散板40は、中間層41が表層42a及び表層42bによって挟まれた2種3層の構造を有する。
【0025】
光拡散板40を構成する中間層41は、熱可塑性樹脂からなる。光拡散板40を構成する表層42a,42bは、粒子成分を含まない熱可塑性樹脂からなる。ここでいう「粒子成分」とは、一次粒子径が比較的大きな拡散剤やマット化剤などの粒子のことをいい、その粒径は、例えば30μm以上である。
【0026】
光拡散板40を構成する表層42a,42bは、添加剤としての紫外線吸収剤、光安定剤、及び熱安定剤が含まれる熱可塑性樹脂からなる層としてもよい。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)、環状ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン重合体などが例示される。
【0027】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン計紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられ、好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
【0028】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、アクリレート系光安定剤などが挙げられ、好ましくは、ヒンダードアミン系光安定剤である。
【0029】
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、フェノール系熱安定剤、硫黄系熱安定剤、などが挙げられ、好ましくは、リン系熱安定剤である。
【0030】
光拡散板40を構成する表層42a,42bには、エンボス加工が施されており、微細な凹凸が多数形成されている。表層42aと表層42aとは、図2(b)に示すように、互いに異なる凹凸形状が形成されている。
【0031】
〔光拡散板の製造方法〕
次に、本実施形態に係る光拡散板の製造方法について、図3〜図5を用いて説明する。まず、光拡散板40を製造するための装置について説明する。図3(a)は、光拡散板となるべき樹脂シートを製造する製造装置の概略構成図である。光拡散板40は、図3(a)に示すような樹脂シート製造装置60によって製造された樹脂シート70を所定の長さに切り出すことで製造される。
【0032】
樹脂シート製造装置60は、中間層71(図3(b)参照)となる熱可塑性樹脂を加熱溶融するためのスクリュー径が40mmの第1押出機61と、表層72a,72b(図3(b)参照)となる、例えば拡散剤やマット化剤といった粒子成分を含まない熱可塑性樹脂を加熱溶融するためのスクリュー径が20mmの第2押出機62と、第1及び第2押出機61,62から供給される溶融樹脂をシート状に押し出すためのマルチマニホールドダイといったダイ63と、ダイ63から押し出されたシート状の樹脂シート70を成形するための第1押圧ロール67、第2押圧ロール(押圧ロール)68及び第3押圧ロール(押圧ロール)69を備えている。第1押圧ロール67、第2押圧ロール68及び第3押圧ロール69は、各ロールの軸が略平行に配置されている。第1押圧ロール67の周面は、鏡面である。
【0033】
図4(a)は、第2押圧ロール68の周面に設けられる転写型68aに形成された凹凸を模式的に示す断面図、図4(b)は、第3押圧ロール69の周面に設けられる転写型69aに形成された凹凸を模式的に示す断面図である。
【0034】
第2押圧ロール68の周面には、図4(a)に示すように、微細な凹凸からなるマット転写型68aが設けられている。すなわち、第2押圧ロール68の周面は、微細な凹凸が多数形成されてなるマット面とされており、図3(b)に示す表層72bの凹凸と反転した形状を有する面となっている。微細な凹凸の表面粗さは、ISO4287:1997で規定される算術平均粗さRaで表すと、50μmである。
【0035】
第3押圧ロール69の周面には、図4(b)に示すように、微細な凹凸からなるマット転写型69aが設けられている。すなわち、第3押圧ロール69の周面は、微細な凹凸が多数形成されてなるマット面とされており、図3(b)に示す表層72aの凹凸と反転した形状を有する面となっている。微細な凹凸の表面粗さは、ISO4287:1997で規定される算術平均粗さRaで表すと、120μmである。
【0036】
次に、光拡散板40の製造工程について説明する。図5は、本発明に係る製造方法の一実施工程を示すフローチャートである。本実施形態における光拡散板40の製造工程は、図5に示すように、準備工程S1と、溶融工程S2と、押出工程S3と、転写工程S4と、切出工程S5とを有している。以下、準備工程S1〜切出工程S5について順に説明する。
【0037】
まず、準備工程S1では、熱可塑性樹脂としてのスチレン系樹脂と、添加剤としての紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、及び熱安定剤を準備する。次いで、スチレン系樹脂、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、及び熱安定剤をハンドブレンドする。そして、その混合物をスクリュー径30mmの造粒機にて190℃〜230℃で溶融混練し、例えば拡散剤やマット化剤といった粒子成分を含まないマスターバッチペレットを作製する。
【0038】
次に、溶融工程S2では、スチレン系樹脂をシリンダ内の温度が200℃〜245℃の第1押出機61で溶融混練して、ダイ63に供給する。同様に、上記マスターバッチペレットをシリンダ内の温度が200℃〜245℃の第2押出機62で溶融混練して、ダイ63に供給する。
【0039】
次に、押出工程S3では、上記第1押出機61から供給される溶融樹脂が中間層71となり、上記第2押出機62から供給される溶融樹脂が表層72a,72bとなるように、ダイ63によりダイ温度245℃で共押出成形を行う。そして、共押出成形された樹脂を第1押圧ロール67、第2押圧ロール68、及び第3押圧ロール69で挟圧と冷却とを行うことによって、図2に示す中間層41となる中間層71、図2に示す表層42aとなる表層72a及び図2に示す表層42bとなる表層72bによって構成される2種3層の樹脂シート70を得る。
【0040】
次に、転写工程S4では、押出工程S3において押し出された樹脂シート70を第1押圧ロール67と第2押圧ロール68とで挟み込んで押圧することで、樹脂シート70の一方の面である表層72bにエンボス加工を施す第1転写工程S41と、樹脂シート70を第2押圧ロール68と第3押圧ロール69とで挟み込んで押圧することで、樹脂シート70の他方の面である表層72aにエンボス加工を施す第2転写工程S42とを含む。
【0041】
第1転写工程S41では、図3(b)に示すように、ダイ63から共押出しされた樹脂シート70の表層72bに、図4(a)に示すような第2押圧ロール68の周面に設けられたマット転写型68aの微細な凹凸が転写される。これにより、樹脂シート70の表層72bには、拡散性能を有する微細な凹凸面が形成される。また、第2転写工程S42では、図3(b)に示すように、ダイ63から共押出しされた樹脂シート70の表層72aに、図4(b)に示すような第3押圧ロール69の周面に設けられたマット転写型69aの微細な凹凸が転写される。これにより、樹脂シート70の表層72aには、拡散性能を有する微細な凹凸面が形成される。
【0042】
次に、切出工程S5では、転写工程S4において得ることのできる樹脂シート70を、所定の長さに切り出すことによって光拡散板40を製造する。
【0043】
次に、上記光拡散板の製造方法の作用効果について説明する。ここで、ダイリップにメヤニが発生するメカニズムについて説明する。本願発明者らは、メヤニがダイリップに付着する現象は、例えば拡散剤やマット化剤といった粒子成分が含まれた溶融樹脂を押出す際に特に顕著に現れることに着目し、鋭意検討を重ねた結果、メヤニの発生メカニズムを見出した。見出したメヤニの発生メカニズムは以下のとおりである。
【0044】
図6に示すように、溶融樹脂45及び溶融樹脂45に含まれる、例えばマット化剤といった粒径φが30μmの粒子成分46は、ダイ63の押出口であるダイリップ64から押し出される。このとき、樹脂シート70の表面70aから粒子成分46が浮き上がり、当該粒子成分46とリップエッジ64bと上記表面70aとの間に微小な空間Sが形成される。そして、この空間Sに溶融樹脂45の一部45aが滞留し、熱劣化して硬化することによりメヤニが発生する。
【0045】
上記に記載したメヤニの発生メカニズムを踏まえ、本実施形態の光拡散板の製造方法では、表層42a,42bとなる樹脂シート70の表層72a,72bの材料として、メヤニの発生の原因となる粒子成分が添加されていないスチレン系樹脂を準備している。そして、この粒子成分を含まないスチレン系樹脂からなる表層72a,72bに、光拡散板としての拡散機能を有するためのエンボス加工が施される。この光拡散板の製造法では、表層を形成するスチレン系樹脂に粒子成分が含まれていないので、この粒子成分とリップエッジ64bと表面70aとの間に微小な空間が形成されることがない。この結果、押出成形時において、エッジ部分にメヤニが発生することが抑制され、表面の外観を損なうといった表面不良の発生を低減させることが可能となる。
【0046】
また、光拡散板には、微小な反りが付与されている場合があり、この光拡散板が用いられる、例えば面光源装置や透過型画像表示装置といった製品には、この反り方向に基づいて光拡散板が組み付けられることがある。上記実施形態で示した製造方法により製造される光拡散板40は、表面と裏面とで表面粗さが異なっているので、表面と裏面との判別がつきやすい。この結果、上記のような透過型画像表示装置1に光拡散板40を組み付ける際の表裏(反り方向)の間違いを防止できる光拡散板を提供することができる。
【実施例】
【0047】
次に、光拡散板40の製造方法について、上記作用効果が具体的に得られる点について、実施例を基に説明する。以下、実施例1及び比較例1について説明する。
【0048】
本実施例では、以下に示すものを最初に準備した。
<光拡散板の原材料>
光拡散板の材料として以下の(1)〜(7)のものを用意した。
(1)熱可塑性樹脂A
スチレン系樹脂(東洋スチレン株式会社製:HRM40)
(2)マット化剤B
マット化剤(積水化成品工業株式会社製:XX−335K、粒径:30μm)
(3)紫外線吸収剤C
紫外線吸収剤(ADEKA社製:LA−31)
(4)光安定剤D
ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン社製:TINUVIN770)
(5)熱安定剤E
熱安定剤(住友化学株式会社製:スミライザーGP)
(6)マスターバッチペレットF
98.4重量部の熱可塑性樹脂A、1.0重量部の紫外線吸収剤C、0.5重量部のヒンダードアミン系光安定剤D、0.1重量部の熱安定剤Eをハンドブレンドした後、スクリュー径30mmφの造粒機にて190℃〜230℃で溶融混練し、粒子成分を含まないマスターバッチペレットFを作製した。
(7)マスターバッチペレットG
90.4重量部の熱可塑性樹脂A、8.0重量部のマット化剤B(粒子成分)、1.0重量部の紫外線吸収剤C、0.5重量部のヒンダードアミン系光安定剤D、0.1重量部の熱安定剤Eをハンドブレンドした後、スクリュー径30mmφの造粒機にて190℃〜230℃で溶融混練し、粒子成分を含むマスターバッチペレットGを作製した。
【0049】
次に、マット化剤Bの粒径について、測定試料1gをアイソトン溶液200cc中に入れ、超音波洗浄装置で10分間の分散処理を行った後、粒度分布測定装置(コールター社製:コールターカウンターマルチマイザーII)を使用して、アパーチャ径200μmの条件で測定を行った。測定された粒度分布の中心粒径(D50%)を算出すると、その粒径は、29.3μmであった。
【0050】
<実施例1>
図3(a)に示した樹脂シート製造装置60を用いて、光拡散板40としての樹脂シート70を製造した。まず、100重量部の熱可塑性樹脂Aをスクリュー径40mmの単軸押出機61にて200℃〜245℃で溶融混練した。次に、マスターバッチペレットFをスクリュー径が20mmの単軸押出機61にて200℃〜245℃で溶融混練した。そして、溶融混練した上記熱可塑性樹脂A及び上記マスターバッチペレットFをダイ63に供給し、ダイ温度245℃で2種3層の構造の樹脂シート70を連続的に共押出した。
【0051】
このとき、樹脂シート製造装置60が備えるダイ63におけるダイリップ64のリップ長(幅)は250mmである。そして、上記形状のダイリップ64から樹脂シート70を共押出したときのリップエッジ64b(図6参照)におけるメヤニの発生状況を目視観察した。この目視による観察結果を下記の表1に示す。表1は、観察スタート時(0分)、60分後、120分後、240分後におけるメヤニの発生状況を示したものである。
【0052】
<比較例1>
実施例1と同様に、樹脂シート製造装置60を用いて、光拡散板40としての樹脂シート70を製造した。まず、100重量部の熱可塑性樹脂Aをスクリュー径40mmの単軸押出機61にて200℃〜245℃で溶融混練した。次に、マスターバッチペレットGをスクリュー径が20mmの単軸押出機61にて200℃〜245℃で溶融混練した。そして、溶融混練した上記熱可塑性樹脂A及び上記マスターバッチペレットGをダイ63に供給し、ダイ温度245℃で2種3層の構造の樹脂シート70を連続的に共押出した。
【0053】
このとき、樹脂シート製造装置60が備えるダイ63におけるダイリップ64のリップ長(幅)は250mmである。そして、上記形状のダイリップ64から樹脂シート70を共押出したときのリップエッジ64b(図6参照)におけるメヤニの発生状況を、実施例1と同様に観察した。この目視による観察結果を下記の表1に示す。
【表1】

【0054】
(評価結果)
上記表1に示すとおり、表面を構成する層としての表層72a,72bが、マット化剤B(粒子成分)を含まない熱可塑性樹脂からなる層となるように押し出して樹脂シート70を成形する実施例1の製造方法では、樹脂シート70を長時間押し出しても、リップエッジ64bにメヤニの発生は観察できなかった。これに対し、表面を構成する層としての表層72a,72bが、マット化剤B(粒子成分)を含む熱可塑性樹脂からなる層となるように押し出して樹脂シート70を成形する比較例1の製造方法では、30分を経過したあたりからリップエッジ164bにメヤニが発生し始め、時間経過と共にメヤニの量が増加していくことが確認できた。
【0055】
本発明に係る実施例1の製造方法では、表面を構成する層としての表層72a,72bがマット化剤B(粒子成分)を含まない熱可塑性樹脂からなる層となるように押し出して樹脂シート70を成形することによって、メヤニの発生を抑制できることが明らかとなった。
【0056】
以上、本発明の一実施形態及び一実施例について説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、図2に示すような中間層41の両側に表層42a,42bが設けられた2種3層の構造を有する積層板である光拡散板40を製造する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2種2層の層構成を有する光拡散板を製造する場合であっても、表面を構成する層である2つの層が粒子成分を含まない熱可塑性樹脂からなる層を構成するように押し出して樹脂シートを成形すればよい。また、例えば2種5層の層構成を有する光拡散板でも、同様に、最も外側に構成される2つの層が粒子成分を含まない熱可塑性樹脂からなる層を構成するように押し出して樹脂シートを成形すればよい。
【0058】
また、例えば、上記実施形態では、第2押圧ロール68の周面は、微細な凹凸が多数形成されてなるマット面とされている例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2押圧ロール68の周面に、微細な凹凸が多数形成された転写シートを配置して、ダイ63から共押出しされた樹脂シート70の表層72bに転写シートの微細な凹凸が転写されるようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、第2及び第3押圧ロール68,69の周面には、微細な凹凸からなるマット転写型68a,69aが設けられている例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2及び第3押圧ロール68,69の周面には、複数の凹部又は凸部からなる転写型68a,69aを設けることもできる。例えば、第2及び第3押圧ロール68,69の周面には、周方向に第2及び第3押圧ロール68,69を一周する複数の凹部又は凸部が、互いに平行に筋状に形成されていてもよい。凹部又は凸部の周方向に直交する断面の形状は半円弧状、半楕円形状、V字型形状などが挙げられる。
【0060】
また、上記実施形態では、本発明に係る拡散板が直下型の面光源装置(バックライト)用の光拡散板として好適に用いられる例を挙げて説明したが、特にこのような用途に限定されるものでない。また、上記実施形態では、本発明に係る面光源装置(ランプボックス)は、透過型画像表示装置(液晶表示装置)用の面光源装置として好適に用いられる例を挙げて説明したが、特にこのような用途に限定されるものではない。例えば、拡散板は、照明カバー、看板、パーテーションなどに適用されてもよい。また、面光源装置は、インストルメントパネル、計器盤などに適用することもできる。
【符号の説明】
【0061】
1…透過型画像表示装置、10…透過型画像表示部、11…液晶セル、12,13…偏光板、20…面光源装置、30…光源部、31…光源、32…ランプボックス、40…光拡散板、41…中間層、42a,42b…表層、45…溶融樹脂、45a…一部、46…粒子成分、60…樹脂シート製造装置、61…第1押出機、62…第2押出機、63…ダイ、64…ダイリップ、64b…リップエッジ、67…第1押圧ロール、68…第2押圧ロール、68a…マット転写型、69…第3押圧ロール、69a…マット転写型、70…樹脂シート、70a…表面、71…中間層、72a,72b…表層、S1…準備工程、S2…溶融工程、S3…押出工程、S4…転写工程、S5…切出工程、S41…第1転写工程、S42…第2転写工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子成分を含まない熱可塑性樹脂を溶融し、当該熱可塑性樹脂からなる層が表面を構成するように押し出すことによって光拡散板となる樹脂シートを成形する工程と、
2つの押圧ロールで前記樹脂シートを挟み込み、少なくとも一方の前記押圧ロールの周面に設けられた転写型によって前記樹脂シートの表面に凹凸を形成する工程と、
を備えている光拡散板の製造方法。
【請求項2】
前記2つの押圧ロールの周面には前記転写型がそれぞれ設けられており、2つの当該転写型の形状は互いに異なっている、
請求項1に記載の光拡散板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光拡散板の製造方法により得ることのできる光拡散板。
【請求項4】
請求項3に記載の光拡散板と、
互いに離間して配置されており、前記光拡散板に光を供給する複数の光源を有する光源部と、
を備えている、面光源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の面光源装置と、
前記複数の光源から出力され前記光拡散板を通過した光によって照明される透過型画像表示部と、
を備えている、透過型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−68746(P2013−68746A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206480(P2011−206480)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】