説明

光沢に優れた交編ストッキング

【課題】黒色等の濃色に染色したときでも交編糸からの反射光による光沢を発現する交編ストッキングを提供する。
【解決手段】ポリアミドマルチフィラメントを鞘糸とし、弾性糸を芯糸とするカバリング弾性糸とポリアミドマルチフィラメントの交編糸により少なくとも構成されたストッキングにおいてレッグ部の交編糸に使用されるポリアミドマルチフィラメントの少なくとも一部に、アミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントを使用し、かつカバリング弾性糸の鞘糸の少なくとも一部にアミノ末端基量が3.5×10−5mol/g以上であるポリアミドマルチフィラメントを使用していることを特徴とする光沢に優れた交編ストッキング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃染したストッキングにおいてもシャイニーな光沢を発現する交編ストッキングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
交編ストッキングは、フィット性、高い透明性に加え、交編糸の繊維軸方向は編み地に対して平行に並んでいるため、交編糸からの反射光による光沢感を有しており、特に交編糸として例えば三角断面を用いることにより、より強い光沢感をストッキングに与えることができる。ストッキングにシャイニーな光沢を付与することは、意匠性、ファッション性から重要でありファッションの重要なアイテムとして利用されてきた。しかしながら、淡ブラウンやベージュに染色したストッキングでは発現する光沢も黒などの濃色に染色した際は、交編糸も濃色に染まってしまうために、表面反射光が抑えられ、期待する光沢感が得られなかった。
【0003】
一方、カチオン可染ポリアミドマルチフィラメントをストッキング用途に用いることはこれまでも提案されており、例えば、特許文献1では、カバリング弾性糸の鞘糸として通常の酸性可染ポリアミドマルチフィラメントと共にカチオン可染ポリアミドマルチフィラメントを用いることによりカバー糸を異色に染め分け、視角方向により色調変化するストレッチ織物が提案されている。しかしながら異色に染め分けることを目的としていること、両繊維を一緒にカバリングの鞘糸に用いていることから、シャイニーな光沢を発現させることには寄与しない。
【0004】
また、特許文献2では、酸性可染ポリアミドマルチフィラメントとカチオン可染ポリアミドマルチフィラメントを引き揃えて編成したり、引き揃えて鞘糸に用いたカバリング弾性糸を使用し、異色に染め分けた靴下が提案されている。杢調として、意匠性を高めると共に先染め糸を用いることなく、染色工程で色を組み合わせることができるので、生産性とクイックレスポンス性を向上させることができる。しかしながら、これも異色に染め分けることを目的とし、引き揃えて用いていることから、シャイニーな光沢を発現させることに寄与しない。
【0005】
さらに特許文献3では、靴下の柄部にカチオン可染ポリアミドマルチフィラメントを用いて地部と異色に染め分けることが提案されている。柄部を異色に染め分けることにより、柄部をより効果的に浮きだたせることができると共に先染め糸を用いることなく、染色工程で色を組み合わせることができるので、生産性とクイックレスポンス性を向上させることができる。しかしながら、これも柄部を異色に染め分けることを目的とし、シャイニーな光沢を発現させることを狙ったものではない。
【特許文献1】特開平5−163626号公報(段落番号[0006]〜[0008]、[0018])
【特許文献2】特開2003−183903号公報(段落番号[0005]〜[0010])
【特許文献3】特開2003−227006号公報(段落番号[0007]〜[0016])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
濃色に染色した場合でも、シャイニーな光沢を発現させる交編ストッキングを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明は、次の構成を採用するものである。
(1)ポリアミドマルチフィラメントを鞘糸とし、弾性糸を芯糸とするカバリング弾性糸とポリアミドマルチフィラメントの交編糸により少なくとも構成されたストッキングにおいてレッグ部の交編糸に使用されるポリアミドマルチフィラメントの少なくとも一部に、アミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントを使用し、かつカバリング弾性糸の鞘糸の少なくとも一部にアミノ末端基量が3.5×10−5mol/g以上であるポリアミドマルチフィラメントを使用していることを特徴とする光沢に優れた交編ストッキング。
(2)前記アミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントのスルホン酸基量が3.0×10−5mol/g以上であることを特徴とする(1)記載の光沢に優れた交編ストッキング。
(3)前記アミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントの少なくとも一部が、多葉断面であるポリアミドマルチフィラメントであることを特徴とする(1)または(2)の光沢に優れた交編ストッキング。
(4)L値が25以下の濃色で染色されていることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の光沢に優れた交編ストッキング。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記の構成を採用することにより、これまで淡色でしか効果的に発現させることのできなかったシャイニーな光沢を濃色に染色されたストッキングにおいても発現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の構成としては、ポリアミドマルチフィラメントを鞘糸とし、弾性糸を芯糸とするカバリング弾性糸とポリアミドマルチフィラメントの交編糸により少なくとも構成されたストッキングにおいてレッグ部の交編糸に使用されるポリアミドマルチフィラメントの少なくとも一部に、アミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントを使用し、かつカバリング弾性糸の鞘糸の少なくとも一部にアミノ末端基量が3.5×10−5mol/g以上であるポリアミドマルチフィラメントを使用している交編ストッキングである。
【0010】
上記アミノ末端基量は、次の方法で測定される値である。すなわち、ポリアミドマルチフィラメントを構成するポリアミド系ポリマーを粉末化し、105℃、666Paの条件にて7時間の真空乾燥を行うことにより低分子量成分および水分の除去を行った後、ポリアミド系ポリマー1gをフェノール/エタノールの混合溶媒(エタノール20ml/フェノール80gの混合割合)45±5mlに常温で振とう溶解させて溶液とし、この溶液を0.02Nの塩酸で中和滴定し、要した0.02N塩酸量を求める。また、上記フェノール/エタノール混合溶媒(上記と同量)のみを0.02N塩酸で中和滴定し要した0.02N塩酸の量を求める。そしてその差からポリアミド系ポリマー1gあたりのアミノ末端基量を求めるものとする。
【0011】
すなわち、レッグ部の交編糸に使用されるポリアミドマルチフィラメントの少なくとも一部に、アミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドで構成されるマルチフィラメントを使用することにより、染色する色によらず交編糸から効果的に反射光を発現させることができるものである。これは、上記ポリアミドマルチフィラメントを用いることにより、後述のとおりポリアミドマルチフィラメントにおいて通常用いられる酸性染料に染色されにくくなり、これを交編糸の少なくとも一部に用いると交編糸の繊維軸方向が編み地に対してほぼ平行に配置されるため、交編糸からの反射光が、交編ストッキングから発現するため優れた光沢が得られる。図2に本発明の交編ストッキング編み地の一例を示しているが、aで示すカバリング弾性糸ではポリアミドマルチフィラメントは芯糸の周りに巻き付いているため、光沢面が揃わないのに対して、bで示す交編糸は編み地に対してほぼ平行に配置されるため、光沢面が形成されている。
【0012】
ここで、アミノ末端基量を1.5×10−5mol/g以下とする理由としては、酸性染料で染色した場合、染着座席となるアミノ末端基を減らすことにより、染色されることを抑え、効果的に反射光を発現させるためである。1.5×10−5mol/gを越える場合には、特に酸性染料で濃色に染色した際に交編糸も濃色に染まってしまい、効果的に光沢を発現させることができず、好ましくない。アミノ末端基量が少ないことにストッキングとして問題はないが、ポリマー調製、市場からの入手のしやすさの観点からは、0.5〜1.5×10−5mol/gとすることがより好ましい。
【0013】
また、ここで、レッグ部は、スカートや靴から隠れずに露出する部分をいい、例えばパンティーストッキングにおいては、図1における3を指し、ロングストッキング、ショートストッキングの場合にはつま先や踵、口ゴム以外の部分を指す。
【0014】
図1は本発明における交編ストッキングの一例を示す概略図であり、パンティ部1、ガーター部2、レッグ部3、トウ部4からなるパンティーストッキングを示す。
【0015】
アミノ末端基量を1.5×10−5mol/g以下とする方法として限定するものではないが、例えばポリアミド原料モノマーに酢酸、安息香酸などのモノカルボン酸またはアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸を添加し重合すること、液相重合の最終段階で無水安息香酸、無水コハク酸などの酸無水物を重合系に添加し反応させること、重合度を上げることやこれらを組み合わせることにより実現できるが重合速度、反応性の観点からジカルボン酸を用いることが好ましい。
【0016】
ここで、酸性染料に染まらないだけであれば、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなるマルチフィラメントも挙げられる。しかしながら、ストッキング用途に用いる場合、高い耐摩耗性、肌にソフトな低いヤング率が求められる。特に光沢を発現させるためには後述のように単糸繊度を比較的太くしたり、異形断面にすることが求められる。この場合、PETは粗硬であり、ストッキング用途には不適である。
【0017】
一方、カバリング弾性糸の鞘糸の少なくとも一部にアミノ末端基量が3.5×10−5mol/g以上であるポリアミドマルチフィラメントを使用することにより、ストッキングを酸性染料で染めた際、ストッキングを効果的に目的の色とすることができる。これは、カバリング弾性糸は弾性糸の周りに鞘糸としてポリアミドマルチフィラメントを巻いているため、交編糸に対して、一般に太く、ストッキングの色に大きく影響しているためである。さらにカバリング弾性糸の鞘糸はコイル上に巻かれているため、編み地に対して平行となっている面は極めて小さく、反射光は比較的少ない。
【0018】
ここで、アミノ末端基量を3.5×10−5mol/g以上とする理由としては、酸性染料で染色した場合、染着座席となるアミノ末端基を提供することにより、ストッキングの色を効果的に発現させるためである。3.5×10−5mol/g未満の場合には、酸性染料で濃色に染色しようとする際、目的とする色を発現させにくく、好ましくない。一方、アミノ末端基量が高すぎる場合、通常分子量が低いことを意味しており、繊維として必要な強度が得られないため、好ましくない。またアミノ末端基量が少な過ぎる場合、ストッキングとしての問題はないが、酸性染料に染まりにくくなる。ポリマーの調製のしやすさ、市場からの入手の容易さの観点から、3.5〜7.0×10−5mol/gとすることがより好ましい。
【0019】
本発明のストッキングにおいては、ポリアミドマルチフィラメントを鞘糸とし、弾性糸を芯糸とするカバリング弾性糸とポリアミドマルチフィラメントの交編糸により少なくとも構成されたものである。これは、光沢を発現させること、肌触りのやわらかさ、耐久性、発色性などから、ポリアミドマルチフィラメントを選択し、フィット性からカバリング弾性糸の芯糸に用いるものである。
【0020】
本発明でいうポリアミドは、交編糸またはカバリング糸など、用いられ方に関わらず、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体であって、好ましくは、染色性、洗濯堅牢度、機械特性に優れる点から、主としてポリカプロアミド、もしくはポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミドであることが好ましい。ここでいう主としてとは、ポリカプロアミドではそれを構成するε−カプロアミド単位として、ポリヘキサメチレンアジパミドではそれを構成するヘキサメチレンアジパミド単位として80モル%以上であることをいい、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に制限されないが、ポリカプロアミドの場合は、ヘキサメチレンアジパミド単位、ポリヘキサメチレンアジパミドの場合には、カプロアミド単位の他、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミンなどの単位が挙げられる。
【0021】
本発明でいうポリアミドの重合度は、必要とする糸強度、初期引張抵抗度等を考慮して適宜選択して良いが、98%硫酸相対粘度で2.0〜3.3の範囲が好ましい。
【0022】
さらに必要に応じて光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、末端基調節剤、染色性向上剤等が添加されていてもよい。また、紫外線吸収や接触冷感、抗菌性等の付与のため、無機粒子や有機機能剤の添加を行うことも可能である。しかしながら、製糸性や耐久性を低下してしまうため、1μmを超える無機粒子の添加は好ましくなく、白色顔料も含めて無機粒子の添加はポリアミドマルチフィラメント重量に対して1.0重量%未満とすることがより好ましい。
【0023】
また、本発明のストッキングに用いるポリアミドマルチフィラメントの断面形状としては、交編糸またはカバリング糸など、用いられ方に関わらず、丸に限定されず扁平断面や凸レンズ型、四角型、さらに多様断面や中空断面であっても問題なく、また、紡糸した後、仮撚加工によって断面が変形していても問題ない。
【0024】
ストッキングのレッグ部に用いるポリアミドマルチフィラメントとしては、トータル繊度は、特に限定されず、透明性や保温性、耐久性、等の目的に合わせて選択することができる。中でもカバリング弾性糸の鞘糸としては7〜90デシテックスとすることが好ましく、単糸繊度としては0.5〜5デシテックスとすることが好ましい。一方、交編糸に用いる場合は、トータル繊度として10〜50デシテックス、単糸繊度として1〜8デシテックスとすることが好ましい。これは、ストッキングとしたとき透明性、反射光の強さ、風合い等から設計することができる。
【0025】
さらに光沢をより効果的に発現させるためには、交編糸に使用されるアミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントについては、フラットヤーンとして用いることが好ましい。ここでいうフラットヤーンとしてはいわゆる生糸のことを意味し、仮撚加工糸のように捲縮を有するフィラメントではない。これは、光沢面を広く取ることにより光沢を効果的に発現させることができるため、フラットヤーンが有効である。さらに単糸繊度として2.5〜6デシテックスの比較的太繊度とすることにより反射面をいっそう効果的に生み出すことができ、より好ましい。さらに断面形状を異形断面とすることがより好ましく、多葉断面とすることがさらにより好ましく、3葉断面とすることが特に好ましい。これは、丸断面対比、反射面を広くすることができるため、強い光沢を発現させるために有効である。3葉断面形状としては、断面の外接円直径を内接円直径で除したM値として1.5〜4.0としたとき、とくに強い光沢を発現させることができる。
【0026】
一方、カバリング弾性糸の芯糸となる弾性糸としては、ポリウレタン系弾性繊維、ポリアミド系エラストマ弾性繊維、ポリエステル系エラストマ弾性繊維、天然ゴム系繊維、合成ゴム系繊維、ブタジエン系繊維等が用いられ、弾性特性や熱セット性、耐久性等により適宜選択すればよい。中でも上記特性から好ましいのは、ポリウレタン系弾性繊維及びポリアミド系エラストマ弾性繊維である。弾性糸の太さは、靴下の用途、締め付け圧の設定により異なるが、耐久性とフィット性、さらに薄地としたい場合の透明性等を両立させるためには、一般に8〜150デシテックス程度であればよい。なかでも好ましいのは14〜50デシテックスである。8デシテックス未満では、糸強力が不足するのでカバリング時及び編立て時に芯糸切れ等のトラブルを生じ易く、靴下としての伸縮性、耐久性が不十分となり易いので好ましくない。逆に、150デシテックスを越えると締付け力が強くなり過ぎて粗硬感が強くなり、好ましくない。
【0027】
カバリング撚数としては被覆糸の繊度、収縮率や製品風合い、透明性、耐久性を考慮して設計すればよい。また、一重に巻いたシングルカバリングヤーンであっても2重に巻いたダブルカバリングヤーンであっても、さらにダブルカバリングヤーンの撚方向の組み合わせ(上撚と下撚が逆方向と同方向)は制限されないため、耐久性や風合い、伸縮性等に合わせて設計すればよい。さらにダブルカバリングする際、上撚と下撚を逆方向とするときには、トルクを抑制するために下撚数の0.7〜0.9倍を目安に設定すればよい。また、ドラフト倍率も狙いとする着圧に合わせて設計すればよく、例えば、2.5〜3.5倍に設定することが好ましい。
【0028】
なお、カバリング弾性糸を製造する場合は、常法のカバリング加工を実施すればよい。例えば、繊維の百科事典(丸善株式会社、平成14年3月25日発行、p439)に記載の加工を実施すればよい。すなわち一例を挙げると弾性糸を定速で引きだし、2つのローラー間で一定のドラフトをかけた状態で、予めHボビンに巻き付けた被覆糸を弾性糸に一定のカバリング撚数にて巻き付け、得られたカバリング弾性糸をチーズに巻き取るものである。
【0029】
本発明でいうところの、ストッキングとは、パンティーストッキング、ロングストッキング、ショートストッキングで代表されるストッキング製品が挙げられる。
【0030】
また、ストッキングの編機として、通常の靴下編み機を用いることができ、制限はなく、2口あるいは4口給糸の編機を用い、カバリング弾性糸と交編糸を供給して編成するという通常の方法で編成すればよい。例えば4口給糸の場合、シングルカバリング弾性糸を用いるとき、S方向カバリングのシングルカバリング弾性糸、交編糸、Z方向カバリングのシングルカバリング弾性糸、交編糸の順に交互に編む方法などがある。その他ダブルカバリング弾性糸と生糸の交編などが挙げられる。さらに編機の針本数としてはおおむね360〜474本が用いられる。また、編み組織に限定はない。
【0031】
さらにレッグ部の交編糸に使用されるアミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントは、そのスルホン酸基量が3.0×10−5mol/g以上であることが好ましい。すなわち、アミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下とすることで、酸性染料による染色を抑制すると共に、スルホン酸基量を上記範囲とすることで酸性染料の濃度によることなく、カチオン染料により交編糸を選択的に希望する色に染色することができる。ここではカバリング弾性糸と異なる色に染め分けるという目的よりも、カバリング弾性糸と交編糸の濃淡差をカチオン染料によって自由にコントロールできることである。ストッキングを濃色に染めた時、酸性染料だけではカバリング弾性糸と交編糸の色の差によっては染まらない交編糸が目立ちすぎる場合がある。その場合でも、交編糸だけを酸性染料の濃度に依存することなく、カチオン染料によって染色することができるため、例えば、カバリング弾性糸の鞘糸を黒に染めたときに交編糸をグレーに染めることにより、交編糸を色の差で目立たせることなく光沢を付与することが可能となり、好ましい。スルホン酸基量が3.0×10−5mol/g未満では効果的にカチオン染めがしにくくなる傾向にある。なかでもスルホン酸基量として3.0〜7.0×10−5mol/gとすることで、糸物性と染色性を両立することができ、より好ましい。
【0032】
ここで、スルホン基をポリアミドに導入する方法としてはポリアミドを重合する際、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸等のスルホン基を有するジカルボン酸または3−カルボキシベンゼンスルホン酸等のスルホン基を有するモノカルボン酸のスルホアルカリ金属塩またはこれらのエステル類などを添加してポリアミドを構成するモノマー成分と共重合することで実現できるが重合速度、反応性の観点からジカルボン酸を用いることが好ましい。アミノ末端基を減らしつつ、スルホン基を導入する場合には、先に説明した操作を同時に行ってもよいし、スルホン基を有するジカルボン酸あるいはモノカルボン酸を適宜使用して調節してもよい。また必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲でヘキサメチレンジアミンなどのジアミン類を重合速度向上の目的で重合初期の段階で添加することも可能である。
【0033】
本発明の交編ストッキングの光沢は色や明度に寄らない。しなしながら、L値25以下の濃色で染色されている場合、本発明の交編ストッキングは、カバリング糸との色の差に応じた光沢を効果的に発現させることができ、より好ましい。ストッキングは染め分けることにより色のバリエーションを確保しており、本発明の交編ストッキングとすることにより、淡色から濃色まで全てのカラーにて効果的に光沢を発現させることができる。ここで、ストッキングのL値測定は、染色、セット上がりの交編ストッキングを置き寸状態から、4回折り畳んで生地枚数として32枚が重なった状態として実質的に透過光がない状態とした上で測定した時のL値である。
【0034】
本発明においては、交編糸以外でも光沢を発現させるためにアミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントを用いることができ、例えば、プレーティングや柄部などに用いることも好ましく行われる。
【0035】
染色方法としては、酸性染料だけ染色することでも、さらにカチオン染めすることもでき、両染めする場合、一浴で一度に染色しても、二浴で染色しても、さらに例えばカチオン染料で染色した後、ソーピングし、その後アニオン染料で染色してもよい。ソーピングとしては界面活性剤による洗浄の他に、炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリを用いてもよい。もちろん色の組み合わせに制限はないが、光沢を効果的に発現させるためには、スルホン酸基量が3.0×10−5mol/g以上であるポリアミドマルチフィラメントは、他のポリアミドマルチフィラメントと同系色に染めてかつそれよりも淡色に染めることが好ましい。また、洗濯堅牢性を向上させるためにフィックス処理を行ってもよい。また、染色後、静電防止剤や柔軟剤による後加工も好ましく行われる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
【0037】
なお、実施例および比較例における各測定値は、次の方法で得たものである。
【0038】
A.断面形状
繊維の任意の位置にて横断面方向に薄切片を切り出し、透過顕微鏡で繊維横断面を単糸本数として12本撮影し、倍率1000倍でプリントアウト(三菱電機社製SCT−P66)した後、スキャナー(エプソン社製GT−5500WINS)を用いて取り込み(白黒写真、400dpi)、ディスプレー上で2500倍に拡大した状態で、画像処理ソフト(WINROOF)を用いてM値=外接円直径/内接円直径を算出し、12本から得られた値の数平均値からM値を求めた。
【0039】
B.98%硫酸相対粘度(ηr)
(a)試料を秤量し、98重量%濃硫酸に試料濃度(C)が1g/100mlとなるように溶解する。
(b)(a)項の溶液をオストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T1)を測定する。
(c)試料を溶解していない98重量%濃硫酸の25℃での落下秒数(T2)を(2)項と同様に測定する。
(d)試料の98%硫酸相対粘度(ηr)を下式により算出する。測定温度は25℃とする。
(ηr)=(T1/T2)+{1.891×(1.000−C)}。
【0040】
C.伸度測定
JIS L1013−1992 7.5引張強さ及び伸び率に準じて測定を行った。試験条件としては、試験機の種類としては定速緊張形、つかみ間隔50cmにて行った。
【0041】
D.アミノ末端基定量方法
ポリアミド系ポリマーを粉末化し、105℃、666Paの条件にて7時間の真空乾燥を行い、低分子量成分および水分の除去を行った後、ポリアミド系ポリマー1gをフェノール/エタノールの混合溶媒(エタノール20ml/フェノール80gの混合割合)40〜50mlに常温で振とう溶解させて溶液とし、この溶液を0.02Nの塩酸で中和滴定し要した0.02N塩酸量を求めた。また、上記フェノール/エタノール混合溶媒(上記と同量)のみを0.02N塩酸で中和滴定し要した0.02N塩酸の量を求めた。そしてその差からポリアミド系ポリマー1gあたりのアミノ末端基量を求めた。
【0042】
E.スルホン酸基定量方法
105℃、666Paの条件にて7時間の真空乾燥を行った絶乾試料0.3gを10N硫酸溶液25mlに加え、105℃で18時間、加水分解させる。これを室温まで冷却した後、10mm石英セルを用い、自記分光光度計で波長283nmの吸光度を測定する。283nmはCBS分子中に含まれるベンゼン環の吸光波長である。この吸光度を用いて、あらかじめ作成しておいた検量線からスルホン酸基量を計算する。
【0043】
F.測色:
日本電色工業株式会社製“COLOR MEASURING SYSTEM Σ80”を用い、測定条件としてはOPTICAL:Z−SENSOR、MEASUREMENT:REFLECTION、CONNECTOR:CN5、AVERAGE:DISABLE、TARGET:DISABLE、WHITE STD.:Y=93.52、X=91.58、Z=109.80にて測定した。
【0044】
パンティーストッキングのレッグ部の測定では、染色、セット後サンプルを置き寸状態で、ガーター部より下方5cmの部分が測定位置となるように置き寸状態で4回折り畳んで生地枚数として32枚が重なった状態としてさらに黒色板で押さえて透過しない状態で測定し実質的に透過光がない状態とした上で測定した時のL値を4回測定し、平均値を測定値とした。
【0045】
実施例1
98%硫酸相対粘度2.8で酸化チタンを含まないポリカプロアミド(アミノ末端基5.9×10−5mol/g、スルホン酸基は含まない)チップを270℃で溶融し、丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、冷却、給油、引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように延伸した後、150℃で熱処理してから4000m/分で巻き取り、13デシテックス7フィラメントの酸性染料可染性ポリアミドマルチフィラメントを得た(アミノ末端基5.8×10−5mol/g)。このマルチフィラメントをカバリング用鞘糸に用い、東レデュポン社製“ライクラ”((登録商標)、T−178C、糸条繊度20デシテックスを芯糸とし、カバリングドラフト2.9倍に設定し、下撚としてZ撚方向に2000t/m、さらに上撚としてS撚方向に1700T/mでダブルカバリング弾性糸(DCY)を製造した。
【0046】
また、重合時に原料εカプロラクタムに対して0.5モル%のアジピン酸を添加し常法により得た98%硫酸相対粘度2.7、酸化チタン含有量0.3重量%、アミノ末端基量1.0×10−5mol/gを有する共重合ポリアミドチップを270℃で溶融し、丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し冷却、給油、引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように延伸した後、150℃で熱処理してから4000m/分で巻き取り、17デシテックス3フィラメントの酸性染料不染性ポリアミドマルチフィラメントを得た(アミノ末端基1.1×10−5mol/g)。
【0047】
永田精機(株)製 MODEL P−482(針数400本)にトウ部からレッグ部に上記酸性染料可染性ポリアミドDCYとカチオン染料可染性ポリアミド生糸を交互に2本づつ仕掛けて交編となるように仕掛け、パンティーストッキングを編成した。
【0048】
このパンティーストッキングを定法のごとく蒸気により80℃で10分プリセット、界面活性剤での精練工程の後、以下の染料及び染色助剤を用いて染色した。
(1)酸性染料(Mitsui Nylon Black GL ):酸性染料可染性ポリアミド重量に対して3.5%owf、
(2)硫安:染液に対して0.3g/l、酢酸:染液に対して0.09g/l、
(3)柔軟剤(ニッカシリコンAM−202(日華化学(株)):パンティーストッキング重量に対して4%owf
を準備し、ドラム染色機を用いて(浴比1:20)浴温を40℃とした後、(2)を入れた後(1)を入れて、1.5℃/分にて90℃まで昇温していき、60分間一定温度に保った後、クーリング、水洗の後、同じく浴比1:20にて浴温30℃とした。その後、浴温40℃にて(3)を用いて柔軟処理した後、靴下セッターにより110℃、30秒のファイナルセットを行った。
【0049】
得られたパンティーストッキングL値15の黒色製品ながら、着用時交編糸からの反射光による光沢が発現していた。
【0050】
実施例2
重合時に原料εカプロラクタムに対して0.8モル%の2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、0.3モル%のヘキサメチレンジアミンを添加し常法により得た98%硫酸相対粘度2.7、酸化チタン含有量0.3重量%、スルホン酸基量7.5×10−5mol/g、アミノ末端基量1.0×10−5mol/gを有する共重合ポリアミドチップを270℃で溶融し、丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し冷却、給油、引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように延伸した後、150℃で熱処理してから4000m/分で巻き取り、17デシテックス3フィラメントのカチオン染料可染性ポリアミドマルチフィラメントを得た(アミノ末端基1.1×10−5mol/g、スルホン酸基4.7×10−5mol/g)。
【0051】
永田精機(株)製 MODEL P−482(針数400本)にトウ部からレッグ部に実施例1で用いた酸性染料可染性ポリアミドDCYと上記カチオン染料可染性ポリアミド生糸を交互に2本づつ仕掛けて交編となるように仕掛け、パンティーストッキングを編成した。実施例1と同様に染色、仕上げ工程を行った。
【0052】
得られたパンティーストッキングL値15の黒色製品ながら、着用時交編糸からの反射光による光沢が発現しており、実施例1と同等の黒発色性を示すと共に同等の光沢となっていた。
【0053】
実施例3
実施例2で用いた共重合ポリアミドチップを用い、270℃で溶融し、Y型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し冷却、給油、引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように延伸した後、150℃で熱処理してから4000m/分で巻き取り、17デシテックス3フィラメントのカチオン染料可染性ポリアミドマルチフィラメントを得た(アミノ末端基1.1×10−5mol/g、スルホン酸基4.7×10−5mol/g、M値1.70)。
【0054】
永田精機(株)製 MODEL P−482(針数400本)にトウ部からレッグ部に実施例1で用いた酸性染料可染性ポリアミドDCYと上記カチオン染料可染性ポリアミド生糸を交互に2本づつ仕掛けて交編となるように仕掛け、パンティーストッキングを編成した。
【0055】
このパンティーストッキングを定法のごとく蒸気により80℃で10分プリセット、界面活性剤での精練工程の後、以下の染料及び染色助剤を用いて染色した。
(1)酸性染料(Mitsui Nylon Black GL ):酸性染料可染性ポリアミド重量に対して3.5%owf、
(2)硫安:染液に対して0.3g/l、酢酸:染液に対して0.09g/l
(3)柔軟剤(ニッカシリコンAM−202(日華化学(株)):パンティーストッキング重量に対して4%owf
を準備し、ドラム染色機を用いて(浴比1:20)浴温を40℃とした後、(2)を入れた後(1)を入れて、1.5℃/分にて90℃まで昇温していき、60分間一定温度に保った後、クーリング、水洗の後、同じく浴比1:20にて浴温30℃とした。その後、浴温40℃にて(3)を用いて柔軟処理した後、靴下セッターにより110℃、30秒のファイナルセットを行った。
【0056】
得られたパンティーストッキングL値15の黒色製品ながら、着用時交編糸からの反射光による光沢が発現しており、実施例1と比較してより強い光沢となっていた。
【0057】
実施例4
実施例3で編成した生編を用いて、以下の染色工程をおこなった。生編を定法のごとく蒸気により80℃で10分プリセット、界面活性剤での精練工程の後、以下の染料及び染色助剤を用いて染色した。
(1)酸性染料(Mitsui Nylon Black GL ):酸性染料可染性ポリアミド重量に対して3.5%owf、
(2)沈殿防止剤(ネオテックス CA−5(日華化学(株)製))、酢酸1g/l、
(3)カチオン染料(AiZen Cathillon Black CD−FGLH保土谷化学工業(株)製):カチオン可染性ポリアミド重量に対して0.3%owf、
(4)柔軟剤(ニッカシリコンAM−202(日華化学(株)):パンティーストッキング重量に対して4%owf
を準備し、ドラム染色機を用いて(浴比1:20)浴温を40℃とした後、(1)→(2)→(3)を順に入れていき、1.5℃/分にて90℃まで昇温していき、60分間一定温度に保った後、クーリング、水洗の後、同じく浴比1:20にて浴温30℃とした。その後、浴温40℃にて(4)を用いて柔軟処理した後、靴下セッターにより110℃、30秒のファイナルセットを行った。
【0058】
得られたパンティーストッキングL値15の黒色製品ながら、着用時交編糸からの反射光による光沢が発現しており、実施例2と比較してより強い光沢となっていた。また、実施例3と比較して交編糸とカバリング弾性糸の色差がよりマイルドとなっていた。
【0059】
実施例5
98%硫酸相対粘度2.54で酸化チタンを含まないポリカプロアミド(BASF社製 品番400N アミノ末端基4.4×10−5mol/g、スルホン酸基は含まない)チップを270℃で溶融し、丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、冷却、給油、引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように延伸した後、150℃で熱処理してから4000m/分で巻き取り、13デシテックス7フィラメントの酸性染料可染性ポリアミドマルチフィラメントを得た(アミノ末端基4.4×10−5mol/g)。このマルチフィラメントをカバリング用鞘糸に用い、東レデュポン社製“ライクラ”((登録商標)、T−178C、糸条繊度20デシテックスを芯糸とし、カバリングドラフト2.9倍に設定し、下撚としてZ撚方向に2000T/m、さらに上撚としてS撚方向に1700T/mでダブルカバリング弾性糸(DCY)を製造した。
【0060】
実施例2にて用いたカチオン染料可染性ポリアミドマルチフィラメントと組み合わせて実施例2と同様にパンティーストッキングを編成し、実施例1と同様に染色、仕上げ工程を行った。
【0061】
得られたパンティーストッキングL値15の黒色製品ながら、着用時交編糸からの反射光による光沢が発現しており、実施例2と同等の黒発色性を示すと共に同等の光沢となっていた。
【0062】
実施例6
実施例2で用いた共重合ポリアミドチップを用い、270℃で溶融し、丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し冷却、給油、引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように延伸した後、150℃で熱処理してから4000m/分で巻き取り、33デシテックス10フィラメントのカチオン染料可染性ポリアミドマルチフィラメントを得た(アミノ末端基1.1×10−5mol/g、スルホン酸基4.7×10−5mol/g)。
【0063】
33デシテックス、26フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミドからなる仮撚加工糸(酸化チタン含有量0.3重量%、(アミノ末端基4.2×10−5mol/g、スルホン酸基は含まない)をカバリング用鞘糸に用い、東レデュポン社製“ライクラ”(登録商標)、T−178C、糸条繊度20デシテックスを芯糸とし、カバリングドラフト2.9倍に設定し、1000T/mにカバリングしたシングルカバリング弾性糸(SCY)についてS撚、Z撚をそれぞれ製造した。 永田精機(株)製 MODEL P−482(針数360本)にトウ部からレッグ部に上記SCYと上記カチオン染料可染性ポリアミド生糸を交互に2本づつ仕掛けて交編となるように(SCY S撚→生糸→SCY Z撚→生糸)仕掛け、パンティーストッキングを編成した。実施例1と同様に染色、仕上げ工程を行った。
【0064】
得られたパンティーストッキングL値15の黒色製品ながら、着用時交編糸からの反射光による光沢が発現しており、実施例1と同等の黒発色性を示すと共に同等の光沢となっていた。
【0065】
比較例1
98%硫酸相対粘度2.6で酸化チタンを0.02重量%含むポリカプロアミド(アミノ末端基5.2×10−5mol/g、スルホン酸基は含まない)チップを270℃で溶融し、Y型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し冷却、給油、引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように延伸した後、150℃で熱処理してから4000m/分で巻き取り、17デシテックス3フィラメントの酸性染料可染性ポリアミドマルチフィラメントを得た(アミノ末端基5.3×10−5mol/g、M値1.70)。
【0066】
実施例1のDCYと組み合わせて、実施例1と同様の編成および染色、仕上げ工程を行い、パンティーストッキングを得た。
【0067】
得られたパンティーストッキングL値15の黒色製品となっていて、交編糸が3葉断面形状を取っているにも関わらず、着用時交編糸からの反射光はほとんど見られず、したがって交編ストッキングからの光沢は実施例と異なり発現しなかった。
【0068】
比較例2
実施例2にて用いた17デシテックス3フィラメントのカチオン染料可染性ポリアミドマルチフィラメントと比較例1にて用いた17デシテックス3フィラメントの酸性染料可染性ポリアミドマルチフィラメントを引き揃えた状態でカバリング用鞘糸に用い、東レデュポン社製“ライクラ”(登録商標)、T−178C、糸条繊度20デシテックスを芯糸とし、カバリングドラフト2.9倍に設定し、1000T/mにカバリングしたシングルカバリング弾性糸(SCY)についてS撚、Z撚をそれぞれ製造した。 永田精機(株)製 MODEL P−482(針数360本)にトウ部からレッグ部に上記SCYをS撚、Z撚を交互に2本づつ仕掛けて、パンティーストッキングを編成した。実施例1と同様に染色、仕上げ工程を行った。
【0069】
得られたパンティーストッキングL値22の杢調を呈する製品となっていて、断面形状が3葉断面形状を取っているにも関わらず、カバリング用鞘糸に用いているため、反射光はほとんど見られず、したがってストッキングからの光沢は実施例と異なり発現しなかった。
【0070】
また、得られた実施例、比較例の製品は、ポリアミドマルチフィラメントを用いた交編ストッキングであったため、いずれも風合いがソフトで肌触りが良く、実用耐久性も十分なレベルであったが、上記のとおり、酸性染料可染性のポリアミドマルチフィラメントを鞘糸とするDCYと酸性染料可染性のポリアミドマルチフィラメントの交編糸を用いた比較例1や、酸性染料可染性のポリアミドマルチフィラメントとカチオン染料可染性のポリアミドマルチフィラメントを引きそろえて鞘糸にしたSCYを用いた比較例2では、反射光がなく、光沢が発現しなかった。それに対し、本発明の場合には、いずれも交編糸からの反射光により光沢が発現した。
【0071】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明における交編ストッキングの一例
【図2】本発明における交編ストッキング編み地の一例
【符号の説明】
【0073】
1.パンティ部
2.ガーター部
3.レッグ部
4.トウ部
a.カバリング弾性糸
b.交編糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドマルチフィラメントを鞘糸とし、弾性糸を芯糸とするカバリング弾性糸とポリアミドマルチフィラメントの交編糸により少なくとも構成されたストッキングにおいてレッグ部の交編糸に使用されるポリアミドマルチフィラメントの少なくとも一部に、アミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントを使用し、かつカバリング弾性糸の鞘糸の少なくとも一部にアミノ末端基量が3.5×10−5mol/g以上であるポリアミドマルチフィラメントを使用していることを特徴とする光沢に優れた交編ストッキング。
【請求項2】
前記アミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントのスルホン酸基量が3.0×10−5mol/g以上であることを特徴とする請求項1記載の光沢に優れた交編ストッキング。
【請求項3】
前記アミノ末端基量が1.5×10−5mol/g以下であるポリアミドマルチフィラメントの少なくとも一部が、多葉断面であるポリアミドマルチフィラメントであることを特徴とする請求項1または2記載の光沢に優れた交編ストッキング。
【請求項4】
L値が25以下の濃色で染色されていることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の光沢に優れた交編ストッキング。

【図1】
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【図2】
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