説明

光無線通信システム、光無線通信装置、光無線通信方法、及びプログラム

屋外において、第1の光無線通信装置と第2の光無線通信装置の間で、光無線通信を行う光無線通信システムであって、光無線通信の屋外における通信環境を判断する環境判断部と、通信環境に基づいて、光無線通信の通信速度を変更する通信制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光無線通信システム、光無線通信装置、光無線通信方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
従来、光無線方式を用いた通信システムが用いられている。このシステムは、空間的に離れた複数の地点間で、光を媒体とした無線通信を行うことができる。
しかしながら、上記のシステムは、屋外に設けられた場合に、天候等の屋外環境の変化によって、通信媒体である光の遮蔽及び拡散等の影響を受け、通信速度、通信品質、及び通信の接続自体を保持することができない場合がある。
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできる光無線通信システム、光無線通信装置、光無線通信方法、及びプログラムを提供することを目的とする。この目的は請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【発明の開示】
このような目的を達成するために、本発明の第1の形態によれば、屋外において、第1の光無線通信装置と第2の光無線通信装置の間で、光無線通信を行う光無線通信システムであって、光無線通信の屋外における通信環境を判断する環境判断部と、通信環境に基づいて、光無線通信の通信速度を変更する通信制御部とを備えることを特徴とする光無線通信システムを提供する。
また、第2の光無線通信装置は、光無線通信の複数のパケットの間において、通信の制御に用いるテスト信号を、第1の光無線通信装置に送る送信制御部を更に備え、環境判断部は、第1の光無線通信装置におけるテスト信号の受信状態に応じて、通信環境を判断してもよい。
また、当該光無線通信システムが設置される地域に対応する天候情報を、外部から取得する天候情報取得部を更に備え、環境判断部は、天候情報に基づき、通信環境を判断してもよい。
また、天候情報取得部は、屋外の温度、湿度、気圧、又は降雨量の少なくとも1つの含む屋外環境を測定することにより天候情報を取得してもよい。
また、通信制御部は、通信環境に基づいて、光無線通信に用いる一のパケットを冗長に送信する回数を変更することにより、光無線通信の通信速度を変更してもよい。
また、互いに波長の異なる光を発光する複数の発光部と、複数の発光部に対応して設けられ、複数の発光部が発光する光をそれぞれ受光する複数の受光部とを更に備え、通信制御部は、複数の発光部及び複数の受光部を用いて、同一のパケットを送信するか、互いに異なるパケットを送信するかを、通信環境に基づいて設定することにより、光無線通信の通信速度を変更してもよい。
また、通信制御部が、複数のパケットのそれぞれを重複して送信すると設定した場合に、複数の受光部によりそれぞれ受光した複数の互いに波長の異なる光の信号値を加算した値に基づき、受信した複数のパケットを電気信号に変換する受信制御部を更に備えてもよい。
また、有線通信媒体により外部の装置と通信する有線通信部を更に備え、通信制御部は、更に、光無線通信の通信速度の設定を有線通信部により外部の装置に通知させることにより、有線通信部による外部の装置との通信速度を、光無線通信の通信速度に整合させてもよい。
また、有線通信媒体により外部の装置と通信する有線通信部を更に備え、通信制御部は、更に、互いに制御信号を送り合うことにより通信可能な最大速度を検出するオートネゴシエーション機能を用いて、有線通信部による外部の装置との通信速度を、光無線通信の通信速度に整合させてもよい。
また、屋外において、光無線通信を行う光無線通信装置であって、光無線通信の屋外における通信環境を判断する環境判断部と、通信環境に基づいて、光無線通信の通信速度を変更する通信制御部とを備えてもよい。
本発明の第2の形態によると、屋外において、第1の光無線通信装置と第2の光無線通信装置の間で、光無線通信を行う光無線通信方法であって、光無線通信の屋外における通信環境を判断する段階と、通信環境に基づいて、光無線通信の通信速度を変更する段階とを備えることを特徴とする光無線通信方法を提供する。
本発明の第3の形態によると、屋外において、第1の光無線通信装置と第2の光無線通信装置の間の光無線通信を管理する管理装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、コンピュータを、光無線通信の屋外における通信環境を判断する環境判断部と、通信環境に基づいて、光無線通信の通信速度を変更する通信制御部として機能させることを特徴とするプログラムを提供する。
なお上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションも又発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
図1は、光無線通信システム10の機能ブロック図。
図2は、受光ユニット200及び受信制御部210の機能の詳細を示す図。
図3は、光無線通信システム10が通信を開始する場合の通信フローを示す図。
図4は、光無線通信システム10が通信速度を向上させる場合の通信フローを示す図。
図5は、光無線通信システム10が通信速度を低下させる場合の通信フローを示す図。
図6は、情報処理装置25のハードウェア構成の一例を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態はクレームにかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、光無線通信システム10の機能ブロック図を示す。光無線通信システム10は、第1の光無線通信装置20と、有線通信媒体により光無線通信装置20の外部に接続される情報処理装置25と、第1の光無線通信装置20との間で光無線通信を行う第2の光無線通信装置30と、有線通信媒体により光無線通信装置30の外部に接続される情報処理装置35とを備える。
光無線通信装置20は、屋外に設置して用いられ、屋外の他の箇所に設置される光無線通信装置30と光無線通信を行う。例えば、光無線通信装置20及び光無線通信装置30は、それぞれ互いに離れた2つのビルに設けられ、これら2つのビルの間で光無線通信を行う。また、光無線通信装置20及び光無線通信装置30は、屋内に設置され、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の光を屋外を経由して伝送させてもよい。このように、光無線通信装置20及び光無線通信装置30は、屋外において通信を行うため、屋外における通信環境に基づいて通信速度を変更し、通信エラーの発生を防止する。
情報処理装置25は、屋内等に設置され、光無線通信装置20及び光無線通信装置30の光無線通信を介して、情報処理装置35と通信する。また、情報処理装置25は、光無線通信システム10の管理等を行う管理装置として機能してもよい。なお、光無線通信装置30及び情報処理装置35は、それぞれ光無線通信装置20及び情報処理装置25と略同一の構成をとる。
光無線通信装置20は、受光ユニット200と、受信制御部210と、有線通信部215と、天候情報取得部220と、環境判断部240と、通信制御部250と、送信制御部260と、発光部270A〜Cと、発光側レンズ272とを備える。
受信制御部210は、光無線通信のデータを転送する複数のパケットの間において、通信の制御に用いるテスト信号を、受光ユニット200を介して、光無線通信装置30から受取る。そして、受信制御部210は、このテスト信号の受信状態を解析し、解析結果を環境判断部240に送る。例えば、受信制御部210は、一定期間一定の強度で送信されたテスト信号を受信し、その強度の変化の情報を解析して環境判断部240に送る。
また、受信制御部210は、テスト信号に付加されたCRC(Cyclic Redundancy Codeの略)等のエラー検出/訂正コードの情報に基づき、テスト信号のエラー率を解析して環境判断部240に送ってもよい。
また、受光ユニット200及び受信制御部210は、光無線通信装置30から光を受取ることによりデータの受信を行うが、詳細については受光ユニット300及び受信制御部310の動作として後述する。
有線通信部215は、情報処理装置25から受取ったパケットを送信制御部260に送る。有線通信部215は、この他に、光無線通信装置30から受取った光無線通信のデータを情報処理装置25に送るが、詳細については有線通信部315の動作として後述する。
天候情報取得部220は、外部のネットワークから、光無線通信システム10が設置される地域に対応する気象情報や天災情報等の天候情報を取得し、環境判断部240に送る。例えば、天候情報取得部220は、インターネットの特定のアドレスから、定期的に天候情報を取得し、この天候情報を所定のフォーマット(例えば、XML:Extensible Markup Language等による記載)に変換してもよい。すなわち、例えば、天候情報取得部220は、所定のフォーマットとして、時間帯毎の天気、降水確率等を記述したXMLを用いてもよい。そして、天候情報取得部220は、環境判断部240からの要求に応じて、又は定期的にこの天候情報を環境判断部240に送ってもよい。
また、天候情報取得部220は、屋外の温度、湿度、気圧、又は降雨量の少なくとも1つの含む屋外環境を測定する。そして、天候情報取得部220は、測定した屋外環境を天候情報として環境判断部240に送る。
環境判断部240は、通信の制御に用いるテスト信号の受信状態の解析結果を受信制御部210から、天候情報を天候情報取得部220からそれぞれ受取る。そして、環境判断部240は、テスト信号の受信状態の解析結果及び天候情報に基づき、屋外における通信環境を判断し、通信制御部250に送る。例えば、環境判断部240は、これらの情報を組み合わせることにより、天候や気象状態、火山灰の降灰、及び鳥や動物等の遮蔽物の通過等を屋外における通信環境として判断してもよい。例えば、環境判断部240は、雨、雪、及び濃霧等の天候情報を受取った場合に、屋外における通信環境が悪いと判断してもよい。また、環境判断部240は、受信制御部210が受取るテスト信号の変動が所定量より大きい場合に、屋外における通信環境が悪いと判断してもよい。
通信制御部250は、環境判断部240から受取った屋外における通信環境に基づいて、光無線通信の通信方法を変更することにより通信速度を変更する通信方法変更指示を受信制御部210、有線通信部215及び送信制御部260に送る。例えば、通信制御部250は、通信方法変更指示として、光無線通信に用いるパケットのフレームサイズを変更するフレームサイズ変更指示を送ってもよいし、光無線通信の通信レートを変更する通信レート変更指示を送ってもよいし、光無線通信に用いる一のパケットを冗長に送信する回数を変更する冗長回数変更指示を送ってもよい。また、通信制御部250は、光無線通信における一のパケットを、発光部270A〜Cにより並列に送信するか、又は、このパケットをそれぞれの発光部270A〜Cが重複して直列に送信するかを示す多重度変更指示を通信方法変更指示として送ってもよい。
送信制御部260は、有線通信部215から受取ったパケットを、通信制御部250から受取ったフレームサイズ変更指示、通信レート変更指示、冗長回数変更指示、又は多重度変更指示等の通信方法変更指示に基づいた通信方法で、電気信号に変換し、発光部270A〜Cに送る。また、送信制御部260は、通信の制御に用いるテスト信号を生成し、有線通信部215から受取った複数のパケットに対応する電気信号の間において、発光部270A〜Cに送る。例えば、送信制御部260は、このテスト信号を一定期間一定の強度で発光部270A〜C送信させる。また、送信制御部260は、通信方法変更指示を、発光部270A〜Cを介して光無線通信装置30に送る。
発光部270A〜Cのそれぞれは、送信制御部260から受取った電気信号及びテスト信号を、互いに波長の異なる光に変換し、発光側レンズ272を用いて光無線通信装置30に向けて発光する。発光部270A〜Cのそれぞれは、例えば、光として、レーザー光又は赤外光等を光無線通信装置30に向けて発光してもよい。
光無線通信装置30は、受光ユニット300と、受信制御部310と、有線通信部315と、天候情報取得部320と、環境判断部340と、情報処理装置350と、送信制御部360と、発光部370A〜Cとを備える。
光無線通信装置30における、受光ユニット300と、受信制御部310と、有線通信部315と、天候情報取得部320と、環境判断部340と、情報処理装置350と、送信制御部360と、発光部370A〜Cは、それぞれ、光無線通信装置20における受光ユニット200と、受信制御部210と、有線通信部215と、天候情報取得部220と、環境判断部240と、情報処理装置250と、送信制御部260と、発光部270A〜Cと略同一の構成をとる。光を送信するための構成及び動作については、光無線通信装置20における対応する部材の構成及び動作と同一であるため説明を省略し、光無線通信装置20から受信した光を処理するための構成及び動作を以下に説明する。また、以上において、発光部270A〜Cが光無線通信装置30に向けて光を発光するのに代えて、発光部370A〜Cのそれぞれは、光無線通信装置20に向けて光を発光する。
受光ユニット300は、データを伝送する光を発光部270A〜Cから受取り、電気信号に変換し、受信制御部310に送る。
受信制御部310は、受光ユニット300を介して光無線通信装置30から通信方法変更指示を受取った場合に、当該指示を環境判断部340を介して通信制御部350に送る。これを受けて、通信制御部350は、受信制御部310から受取った通信方法変更指示を、受信制御部310、有線通信部315、及び送信制御部360に送る。
また、受信制御部310は、受光ユニット300から受取った電気信号に変換されたデータを、通信制御部350から受取った通信方法変更指示に基づいた通信方法で、パケットに変換し、有線通信部315及び環境判断部340に送る。例えば、受信制御部310は、光無線通信に用いる一のパケットを冗長に所定回数送信する指示を通信制御部350から受取っている場合に、受光ユニット300から受取った電気信号が示す冗長回数のパケットのうち、通信エラーがより少ないパケットを選択し、当該選択されたパケットを、有線通信部315及び環境判断部340に送る。
有線通信部315は、受信制御部310から受取ったパケットを情報処理装置35に送る。有線通信部315は、通信制御部250から、通信方法変更指示としてフレームサイズ変更指示を受取った場合に、当該指示を情報処理装置35に送ることにより、パケットのフレームサイズを変更する。
また、有線通信部315は、通信制御部350から通信方法変更指示を受取った場合に、光無線通信の通信速度の設定の情報を、外部の装置である情報処理装置35に通知することにより、情報処理装置35との間の通信速度を、光無線通信の通信速度に整合させる。また、有線通信部315は、互いに制御信号を送り合うことにより通信可能な最大速度を検出するオートネゴシエーション機能を用いて、情報処理装置35との通信速度を光無線通信の通信速度に整合させてもよい。例えば、有線通信部315は、通信制御部350からの通信方法変更指示に従い、有線通信媒体による情報処理装置35との通信速度が、光無線通信の通信速度を上回らないように、有線通信媒体による情報処理装置35との通信速度を整合させる。
ここで、光無線通信装置20における、受光ユニット200は、光無線通信装置30における、受光ユニット300と略同一の構成をとる。ただし、受光ユニット300がデータを伝送する光を光無線通信装置20から受取るのに代えて、受光ユニット200は、光無線通信装置30から受取る。
なお、本実施形態において、光無線通信装置20は、天候情報取得部220と、環境判断部240と、通信制御部250とを当該光無線通信装置20内に備えるが、これに代えて、情報処理装置25が、天候情報取得部220と、環境判断部240と、通信制御部250とを備えてもよい。また、光無線通信装置20の外部に設けられ、光無線通信装置20を制御する制御装置や制御装置を搭載した基盤である制御ボードが、天候情報取得部220と、環境判断部240と、通信制御部250とを備えてもよい。
以上で説明したように、光無線通信システム10は、屋外における通信環境に基づいて、光無線通信の通信速度を変更する。したがって、光無線通信システム10は、不測の事態により屋外における通信環境が悪化した場合においても、通信速度を低下させ、通信品質や通信の冗長性を高めることにより、通信状態の悪化を軽減し、通信の切断を防止することができる。
図2は、受光ユニット200、受信制御部210、及び送信制御部260の機能の詳細を示す。図2(A)に示すように、送信制御部260は、シリアル−パラレル変換器262と、複製器264と、セレクタ266とを有する。
シリアル−パラレル変換器262は、有線通信部215から受取ったパケットを示す直列の電気信号を、並列に変換し、セレクタ266に送る。一方、複製器264は、有線通信部215から受取ったパケットを示す電気信号を重複した3つの電気信号としてセレクタ266に送る。
セレクタ266は、通信制御部250からの通信方法変更指示に応じて、シリアル−パラレル変換器262又は複製器264から受取った電気信号の一方を選択し、発光部270A〜Cに送る。例えば、セレクタ266が、シリアル−パラレル変換器262から受取った電気信号に基づいて、パケットを生成し発光部270A〜Cに送る場合、送信制御部260は、光無線通信における一のパケットを、発光部270A〜Cにより並列に送信することができる。
一方、セレクタ266が、複製器264から受取った電気信号に基づいて、パケットを生成し発光部270A〜Cに送る場合、送信制御部260は、一のパケットを発光部270A〜Cのそれぞれが重複して直列に送信することができる。
このように、通信制御部250は、発光部270A〜C及び受光部370A〜Cを用いて、同一のパケットを送信するか、互いに異なるパケットを送信するかを、屋外における通信環境に基づいて設定することにより、光無線通信の通信速度を変更することができる。
なお、本実施形態において、通信制御部250は、互いに異なるパケットを送信する場合、データを構成する1つのフレームを3つに分割した電気信号を、発光部270A〜Cにより送信するが、他の例として、通信制御部250は、互いに異なるフレームを発光部270A〜Cにより送信してもよい。
図2(B)に示すように、受光ユニット200は、受光側レンズ202と、分光器204と、受光部205A〜Cと、カラーフィルタ207A〜Cとを有する。
受光側レンズ202は、光無線通信装置307A〜Cそれぞれにより発光された互いに波長の異なる光が混合された光を受光し、当該光を分光器204に送る。
分光器204は、受光側レンズ202から受取った光を、3つに分光し、受光部205A、受光部205B、及び受光部205Cにそれぞれ送る。
受光部205A〜Cは、発光部370A〜Cに対応して設けられ、分光器204から受取った光を、互いに色の異なるカラーフィルタ207A〜Cを通過させることにより、それぞれ第1波長の光、第2波長の光、及び第3波長の光を選択しそれぞれの光を電気信号に変換する。そして、受光部205A〜Cは、変換された電気信号をそれぞれ受信制御部210に送る。このように、受光部205A〜Cは、発光部370A〜Cが発光する光をそれぞれ受光することができる。
受信制御部210は、加算器212と、パラレル−シリアル変換器214と、セレクタ216とを有する。加算器212は、受光部205A〜Cから受取った電気信号の信号値をアナログ加算し、セレクタ216に送る。パラレル−シリアル変換器214は、受光部205A〜Cから受取った電気信号を、シリアル−パラレル変換し、セレクタ216に送る。セレクタ216は、通信制御部250からの多重度変更指示に応じて、加算器212又はパラレル−シリアル変換器214から受取った電気信号の一方を選択し、有線通信部215及び環境判断部240に送る。例えば、セレクタ216は、多重度を減らす旨を示す多重度変更指示を通信制御部250から受取っている場合に、パラレル−シリアル変換器214から受取った電気信号に基づいて、パケットを生成し有線通信部215及び環境判断部240に送る。一方、セレクタ216は、多重度を増やす旨を示す多重度変更指示を通信制御部250から受取っている場合に、加算器212から受取った電気信号に基づいて、パケットを生成し有線通信部215及び環境判断部240に送る。
このように、通信制御部350が、光無線通信における一のパケットを、発光部370A〜Cにより並列に送信するか、又は、このパケットをそれぞれの発光部370A〜Cが重複して直列に送信するかを設定する場合において、受信制御部210は、発光部370A〜Cそれぞれから受取った光を、通信制御部250からの指示に応じて、適切にパケットに変換できる。
なお、送信制御部360が、光無線通信における一のパケットを、発光部370A〜Cにより並列に送信する場合において、受光ユニット200は、カラーフィルタ207A〜Cを用いなくてもよい。この場合、受光部205A〜Cは、分光器204により分光された光をカラーフィルタ207A〜Cを用いずに受光できるので、より強い光を受光し、受信するデータの誤りを小さくすることができる。
図3は、光無線通信システム10が通信を開始する場合の通信フローを示す。情報処理装置25は、通信開始要求を光無線通信装置20に送る(S300)。送信制御部360は、光無線通信のデータ送信に用いられる複数のパケットの間において、通信の制御に用いるテスト信号を、光無線通信装置20に送る(S310)。本図に示すように、送信制御部360は、光無線通信システム10が通信を開始する前のみにおいてテスト信号を送信するが、他の例として、送信制御部360は、通信を開始する前以外の場合においても、テスト信号を定期的に光無線通信装置20に送ってもよい。
光無線通信装置20は、情報処理装置25から通信開始要求を受取ると、天候情報及び送信制御部360から受取ったテスト信号の受信状態の解析結果に基づき、屋外における通信環境を判断する(S320)。通信制御部250は、この判断に基づいて無線通信方法及び無線通信速度を設定し、光無線通信装置30に通知する(S330)。有線通信部215は、設定された無線通信速度を情報処理装置25に通知する(S340)。また、有線通信部315は、通知を受けた無線通信速度を情報処理装置35に通知する(S350)。
光無線通信装置20は、通信制御部250により設定された無線通信方法及び無線通信速度により、光無線通信装置30との通信を開始する(S355)。光無線通信装置30は、光無線通信装置20から通知を受けた無線通信速度により、光無線通信装置20との通信を開始する(S360)。
続いて、通信制御部250は、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信速度以下の有線通信速度で情報処理装置25と通信を開始させることにより、有線通信部215による情報処理装置25との有線通信速度を、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信速度に整合させる(S370)。情報処理装置25は、光無線通信装置20から通知を受けた光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信速度に基づき、当該無線通信速度以下の有線通信速度により光無線通信装置20と通信を開始する(S380)。光無線通信装置30におけるS390の動作及び情報処理装置35におけるS395の動作は、それぞれ光無線通信装置20におけるS370の動作及び情報処理装置25におけるS380の動作と略同一であるので、説明を省略する。
なお、他の例として、通信制御部250は、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信速度と同一の有線通信速度で情報処理装置25と通信を開始させることにより、有線通信部215による情報処理装置25との無線通信速度を、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の有線通信速度に整合させてもよい。
以上の通信フローで示したように、光無線通信システム10は、光無線通信の屋外における通信環境に基づき設定された速度で、通信を開始することができる。また、光無線通信システム10は、光無線通信装置20による情報処理装置25との有線通信を、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の通信開始後に開始させる。したがって、光無線通信システム10は、情報処理装置25及び光無線通信装置20が通信を開始し、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信が開始されない状態を回避できるので、情報処理装置25から送信されたデータが光無線通信装置20のバッファから溢れてしまうエラー等を防止することができる。
図4は、光無線通信システム10が通信速度を向上させる場合の通信フローを示す。情報処理装置25は、通信速度を向上させることを示す通信速度変更要求を光無線通信装置20に送る(S400)。本図におけるS410、S420、S430、S440、及びS450の動作は、図3におけるS310、S320、S330、S340、及びS350の動作と略同一であるので、説明を省略する。
光無線通信装置20は、光無線通信装置30との無線通信速度を、通信制御部250により設定された速度に変更することにより、無線通信速度を向上させる(S455)。光無線通信装置30は、光無線通信装置20との無線通信速度を、光無線通信装置20から通知を受けた速度に変更することにより、無線通信速度を向上させる(S460)。
続いて、通信制御部250は、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信速度以下の範囲内において、情報処理装置25と有線通信速度を向上させることにより、有線通信部215を介した情報処理装置25との間の有線通信速度を、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信速度に整合させる(S470)。情報処理装置25は、光無線通信装置20から通知を受けた無線通信速度に基づき、当該無線通信速度以下の有線通信速度により光無線通信装置20との有線通信速度を向上させる(S480)。光無線通信装置30におけるS490の動作及び情報処理装置35におけるS495の動作は、それぞれ光無線通信装置20におけるS470の動作及び情報処理装置25におけるS480の動作と略同一であるので、説明を省略する。
以上の通信フローで示したように、光無線通信システム10は、光無線通信の屋外における通信環境に基づき設定された速度に基づき、通信速度を向上させることができる。また、光無線通信システム10は、光無線通信装置20による情報処理装置25との有線通信速度の変更を、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信速度の変更後に行う。したがって、光無線通信システム10は、通信速度の変更中に、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信速度が、光無線通信装置20及び情報処理装置25間の有線通信速度より低くなるのを防ぐことができる。その結果、光無線通信システム10は、光無線通信装置20のバッファ溢れ等によるエラーが生じるのを防ぐことができる。
図5は、光無線通信システム10が通信速度を低下させる場合の通信フローを示す。情報処理装置25は、通信速度を低下させることを示す通信速度変更要求を光無線通信装置20に送る(S500)。本図におけるS510、S520、S530、S540、及びS550の動作は、図3におけるS310、S320、S330、S340、及びS350の動作と略同一であるので、説明を省略する。
通信制御部250は、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間に設定された無線通信速度以下の範囲内に、情報処理装置25との有線通信速度を低下させる(S555)。情報処理装置25は、光無線通信装置20から通知を受けた無線通信速度に基づき、当該無線通信速度以下の速度に有線通信速度を低下させる(S560)。
光無線通信装置30及び情報処理装置35におけるS570及びS580の動作は、それぞれ光無線通信装置20及び情報処理装置25におけるS555及びS560の動作と略同一であるので説明を省略する。
続いて、光無線通信装置20は、光無線通信装置30との無線通信速度を、通信制御部250により設定された速度に変更することにより、無線通信速度を低下させる(S590)。光無線通信装置30は、光無線通信装置20との無線通信速度を、光無線通信装置20から通知を受けた速度に変更することにより、無線通信速度を低下させる(S595)。
以上の通信フローで示したように、光無線通信システム10は、光無線通信の屋外における通信環境に基づき設定された速度に基づき、無線通信速度を低下させることができる。また、光無線通信システム10は、光無線通信装置20による情報処理装置25との有線通信速度の低下を、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信速度の低下に先立って行うことにより、通信速度の変更中に、光無線通信装置20及び情報処理装置25間の有線通信速度が、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の無線通信速度より低くなるのを防ぐことができる。
図6は、情報処理装置25のハードウェア構成の一例を示す。情報処理装置25は、CPU700、ROM702、RAM704、通信インタフェース706、ハードディスクドライブ708、データベースインタフェース710、フレキシブルディスクドライブ712、及びCD−ROMドライブ714を備える。CPU700は、ROM702及びRAM704に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。通信インタフェース706は、コンピュータネットワークを介して光無線通信装置20と通信する。データベースインタフェース710は、データベースへのデータの書込、及びデータベースの内容の更新を行う。
フレキシブルディスクドライブ712は、フレキシブルディスク720からデータ又はプログラムを読み取り通信インタフェース706に提供する。CD−ROMドライブ714は、CD−ROM722からデータ又はプログラムを読み取り通信インタフェース706に提供する。通信インタフェース706は、フレキシブルディスクドライブ712又はCD−ROMドライブ714から提供されたデータ又はプログラムを光無線通信装置20に送信する。データベースインタフェース710は、各種データベース724と接続してデータを送受信する。
光無線通信装置20に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク720又はCD−ROM722等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。記録媒体に格納されたプログラムは圧縮されていても非圧縮であってもよい。プログラムは記録媒体から読み出され、通信インタフェース706を介して、光無線通信装置20にインストールされ、光無線通信装置20において実行される。
光無線通信装置20を実現するプログラムは、受光ユニット機能モジュールと、受光部機能モジュールと、受信制御モジュールと、加算モジュールと、パラレル−シリアル変換モジュールと、有線通信モジュールと、セレクタモジュールと、天候情報取得モジュールと、環境判断モジュールと、通信制御モジュールと、送信制御モジュールと、シリアル−パラレル変換モジュールと、複製モジュールと、セレクタモジュールと、発光モジュールとを備える。これらのモジュールは、光無線通信装置20を、受光ユニット200と、受光部205と、受信制御部210と、加算器212と、パラレル−シリアル変換器214と、有線通信部215と、セレクタ216と、天候情報取得部220と、環境判断部240と、通信制御部250と、送信制御部260と、シリアル−パラレル変換器262と、複製器264と、セレクタ266と、発光部270ととして動作させるプログラムである。
記録媒体の一例としてのフレキシブルディスク720又はCD−ROM722には、本出願で説明した全ての実施形態における光無線通信装置20の動作の一部又は全ての機能を格納することができる。
これらのプログラムは記録媒体から直接光無線通信装置20によって読み出されて実行されても、光無線通信装置20にインストールされた後に光無線通信装置20において実行されてもよい。更に、上記プログラムは単一の記録媒体に格納されても複数の記録媒体に格納されてもよい。また、暗号化、圧縮等により符号化された形態で格納されていてもよい。
記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD−ROMの他にも、DVD、PD等の光学記録媒体、MD等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、ICカードやミニチュアカードなどの半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークやインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の格納装置を記録媒体として使用し、通信網を介してプログラムを光無線通信装置20に提供してもよい。
以上の説明から明らかなように、光無線通信システム10は、光無線通信の屋外における通信環境に基づき、通信速度を変更することができる。したがって、光無線通信システム10は、屋外における通信環境に基づいて、通信速度やノイズに対する耐性を変更することができるので、屋外の通信環境の変化に対応した適切な通信環境を実現することができる。
また、光無線通信システム10は、光無線通信装置20による情報処理装置25との通信速度を、光無線通信装置20及び光無線通信装置30間の通信速度に整合させることができる。したがって、光無線通信システム10は、情報処理装置25及び情報処理装置35間の、光無線通信を利用したデータ通信を適切に行わせることができる。
以上発明の実施の形態を説明したが、本出願に係る発明の技術的範囲は上記の実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に種々の変更を加えて、請求の範囲に記載の発明を実施することができる。そのような発明が本出願に係る発明の技術的範囲に属することもまた、請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、屋外の通信環境の変化に対応した適切な光無線通信を実現することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外において、第1の光無線通信装置と第2の光無線通信装置の間で、光無線通信を行う光無線通信システムであって、
前記光無線通信の屋外における通信環境を判断する環境判断部と、
前記通信環境に基づいて、前記光無線通信の通信速度を変更する通信制御部と
を備えることを特徴とする光無線通信システム。
【請求項2】
前記第2の光無線通信装置は、前記光無線通信の複数のパケットの間において、通信の制御に用いるテスト信号を、前記第1の光無線通信装置に送る送信制御部を更に備え、
前記環境判断部は、前記第1の光無線通信装置における前記テスト信号の受信状態に応じて、前記通信環境を判断することを特徴とする請求項1記載の光無線通信システム。
【請求項3】
当該光無線通信システムが設置される地域に対応する天候情報を、外部から取得する天候情報取得部を更に備え、
前記環境判断部は、前記天候情報に基づき、前記通信環境を判断することを特徴とする請求項1記載の光無線通信システム。
【請求項4】
前記天候情報取得部は、屋外の温度、湿度、気圧、又は降雨量の少なくとも1つの含む屋外環境を測定することにより天候情報を取得することを特徴とする請求項3記載の光無線通信システム。
【請求項5】
前記通信制御部は、前記通信環境に基づいて、前記光無線通信に用いる一のパケットを冗長に送信する回数を変更することにより、前記光無線通信の通信速度を変更することを特徴とする請求項1記載の光無線通信システム。
【請求項6】
互いに波長の異なる光を発光する複数の発光部と、
前記複数の発光部に対応して設けられ、前記複数の発光部が発光する光をそれぞれ受光する複数の受光部とを更に備え、
前記通信制御部は、前記複数の発光部及び前記複数の受光部を用いて、同一のパケットを送信するか、互いに異なるパケットを送信するかを、前記通信環境に基づいて設定することにより、前記光無線通信の通信速度を変更することを特徴とする請求項1記載の光無線通信システム。
【請求項7】
前記通信制御部が、前記複数のパケットのそれぞれを重複して送信すると設定した場合に、前記複数の受光部によりそれぞれ受光した複数の前記互いに波長の異なる光の信号値を加算した値に基づき、受信した前記複数のパケットを電気信号に変換する受信制御部を更に備えることを特徴とする請求項6記載の光無線通信システム。
【請求項8】
有線通信媒体により外部の装置と通信する有線通信部を更に備え、
前記通信制御部は、更に、前記光無線通信の通信速度の設定を前記有線通信部により前記外部の装置に通知させることにより、前記有線通信部による前記外部の装置との通信速度を、前記光無線通信の通信速度に整合させることを特徴とする請求項1記載の光無線通信システム。
【請求項9】
有線通信媒体により外部の装置と通信する有線通信部を更に備え、
前記通信制御部は、更に、互いに制御信号を送り合うことにより通信可能な最大速度を検出するオートネゴシエーション機能を用いて、前記有線通信部による前記外部の装置との通信速度を、前記光無線通信の通信速度に整合させることを特徴とする請求項1記載の光無線通信システム。
【請求項10】
屋外において、光無線通信を行う光無線通信装置であって、
前記光無線通信の屋外における通信環境を判断する環境判断部と、
前記通信環境に基づいて、前記光無線通信の通信速度を変更する通信制御部と
を備えることを特徴とする光無線通信装置。
【請求項11】
屋外において、第1の光無線通信装置と第2の光無線通信装置の間で、光無線通信を行う光無線通信方法であって、
前記光無線通信の屋外における通信環境を判断する段階と、
前記通信環境に基づいて、前記光無線通信の通信速度を変更する段階と
を備えることを特徴とする光無線通信方法。
【請求項12】
屋外において、第1の光無線通信装置と第2の光無線通信装置の間の光無線通信を管理する管理装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記光無線通信の屋外における通信環境を判断する環境判断部と、
前記通信環境に基づいて、前記光無線通信の通信速度を変更する通信制御部と
して機能させることを特徴とするプログラム。

【国際公開番号】WO2004/025879
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535828(P2004−535828)
【国際出願番号】PCT/JP2002/009214
【国際出願日】平成14年9月10日(2002.9.10)
【出願人】(396008347)アライドテレシスホールディングス株式会社 (38)
【Fターム(参考)】