説明

光照射装置および印刷装置

【課題】
紫外線照射による熱影響の少ない光照射装置および印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の光照射装置は、紫外線硬化型インクまたは紫外線硬化型樹脂を被着させた光透過性を有する対象物に対して光を照射するための光照射装置であって、前記対象物の紫外線硬化型インクまたは紫外線硬化型樹脂の被着面と、該被着面の反対側に位置する非被着面とにそれぞれ対向するように配置される一対の光照射デバイスを備えており、該一対の光照射デバイスは、それぞれ基体と該基体の前記対象物側の主面に縦横の並びに配列された複数の発光素子とを有し、前記非被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子の数は、前記被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子の数よりも少ないため、発光素子の光照度を比較的低くすることができることから、発光素子からの熱影響を比較的少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型樹脂や塗料の硬化に使用される光照射装置および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線照射装置は、医療やバイオ分野での蛍光反応観察、殺菌用途、電子部品の接着や紫外線硬化型樹脂およびインクの硬化などを目的に広く利用されている。特に電子部品の分野などで小型部品の接着等に使われる紫外線硬化型樹脂の硬化や、印刷の分野で使われる紫外線硬化型インキの硬化などに用いられる紫外線照射装置のランプ光源には高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどが使用されている。
【0003】
近年、世界規模で地球環境負荷の軽減が望まれていることから、比較的長寿命、省エネルギー、およびオゾンと熱の発生を抑制することができる紫外線発光素子をランプ光源に採用する動きが活発になってきている。
【0004】
ところが、熱の発生を比較的抑制することができる紫外線発光素子をランプ光源としても、熱に敏感なプラスチックフィルムなどへ紫外線照射を行なうと、ランプ光源から発生する熱によりプラスチックフィルムが収縮してしまうなどの不具合が発生する。そこで、例えば特許文献1に記載されているように、紫外線照射を行ないながら対象物を冷却する装置が提案されている。
【0005】
しかしながら、このような装置では冷却機を設ける必要があるなど複雑で大型の装置となるため、紫外線発光素子を利用し、紫外線硬化を十分に行ないつつ、比較的熱影響の少ない小型化された光照射装置が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−170683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、紫外線照射による熱影響の少ない光照射装置および印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光照射装置は、紫外線硬化型インクまたは紫外線硬化型樹脂を被着させた光透過性を有する対象物に対して光を照射するための光照射装置であって、前記対象物の紫外線硬化型インクまたは紫外線硬化型樹脂の被着面と、該被着面の反対側に位置する非被着面とにそれぞれ対向するように配置される一対の光照射デバイスを備えており、該一対の光照射デバイスは、それぞれ基体と該基体の前記対象物側の主面に縦横の並びに配列された複数の発光素子とを有し、前記非被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子の数は、前記被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子の数よりも少ないことを特徴とする。
【0009】
また、前記非被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子が照射する光の波長は、前記被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子が照射する光の波長よりも長いことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記非被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子から前記対象物までの距離は、前記被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子から前記対象物までの距離よりも短いことを特徴とする。
【0011】
また、前記非被着面側の前記光照射デバイスにおける前記基体の前記主面側に、該主面に向けて入射した光を前記対象物に反射する反射板が配設されていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、光透過性を有する記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体に対して紫外線硬化型インクまたは紫外線硬化型樹脂を印刷する印刷手段と、印刷された前記記録媒体に対して光を照射する光照射装置とを有することを特徴とする印刷装置を併せて提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光照射装置によれば、紫外線硬化型インクまたは紫外線硬化型樹脂を被着させた光透過性を有する対象物に対して光を照射するための光照射装置であって、前記対象物の紫外線硬化型インクまたは紫外線硬化型樹脂の被着面と、該被着面の反対側に位置する非被着面とにそれぞれ対向するように配置される一対の光照射デバイスを備えており、該一対の光照射デバイスは、それぞれ基体と該基体の前記対象物側の主面に縦横の並びに配列された複数の発光素子とを有し、前記非被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子の数は、前記被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子の数よりも少ないため、発光素子の光照度を比較的低くすることができる。その結果、紫外線硬化を十分に行ないつつ、発光素子からの熱影響が比較的少ない小型化された光照射装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光照射装置の概略図である。
【図2】図2は、図1に示した光照射デバイスの平面図である。
【図3】図3は、図2に示した光照射デバイスにおける2I−2I線に沿った断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の一実施形態に係る光照射デバイス2aの発光素子の配列、図4(b)は、本発明の一実施形態に係る光照射デバイス2bの発光素子の配列を説明する図である。
【図5】図5は、図1に示した光照射モジュールを用いた印刷装置の上面図である。
【図6】図6は、図5に示した印刷装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の光照射装置および印刷装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(光照射装置の実施形態)
図1に示す光照射装置1は、紫外線硬化型インクを使用するオフセット印刷装置やインクジェット印刷装置等の印刷装置に組み込まれ、光透過性の対象物4(記録媒体)に紫外線硬化型インクを被着した後に紫外線を照射することで紫外線硬化型インク3を硬化させる紫外線照射装置として機能する。
【0017】
光照射装置1は、一対の光照射デバイス2を備えており、紫外線硬化型インク3を被着させた対象物4を挟むように、対象物4の紫外線硬化型インク3の被着面と対象物4の紫外線硬化型インク3の被着面の反対側に位置する非被着面とにそれぞれ対向するように配置されている。しかも、非被着面側の光照射デバイス2が有する発光素子20の数は、被着面側の照射デバイス2が有する発光素子20の数よりも少ない。このように配置するこ
とで、それぞれの光照射デバイス2から照射される紫外線の照度を比較的低くすることが可能となり、対象物4に被着された紫外線硬化型インク3を十分硬化させつつ、対象物4への熱影響を比較的小さくすることができる。対象物4への熱影響を比較的小さくすることができる理由については、次の光照射デバイス2の説明の後で詳述する。
【0018】
ここで、光照射装置1を構成する光照射デバイス2について図2、図3を用いて説明する。
【0019】
光照射デバイス2は、光照射装置1の紫外線照射光源として機能する。
【0020】
光照射デバイス2は、一方主面11aに複数の開口部12を有する基体10と、各開口部12内に設けられた複数の接続パッド13と、基体10の各開口部12内に配置され、接続パッド13と電気的に接続された複数の発光素子20と、各開口部12内に充填され、発光素子20を被覆する複数の封止材30と、基体10の他方主面11bに接着剤50を介して放熱用部材60と、を備えている。
【0021】
基体10は、第1の絶縁層41および第2の絶縁層42が積層されてなる積層体40と、発光素子20同士を接続する電気配線60と、を備え、一方主面11a側から平面視して矩形状を成しており、該上面に設けられた開口部12内で発光素子20を支持している。
【0022】
第1の絶縁層41は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、およびガラスセラミックスなどのセラミックス、ならびにエポキシ樹脂、および液晶ポリマー(LCP)などの樹脂、などによって形成される。
【0023】
次に、電気配線60は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銅(Cu)等の導電性材料により所定のパターンに形成されており、発光素子20への電流または発光素子20からの電流を供給するための給電配線として機能する。
【0024】
次に、第1の絶縁層41上に積層された第2の絶縁層42には、該第2の絶縁層42を貫通する開口部12が形成されている。
【0025】
開口部12は、各々の形状が発光素子20の載置面よりも基体10の一方主面11a側で開口面積が広くなるように、その内周面14が傾斜しており、平面視すると、例えば、略円形の形状を成している。なお、開口形状は円形に限られるものではなく、略矩形状でもよい。
【0026】
このような開口部12は、その内周面14で発光素子20の発する光を上方に反射し、光の取り出し効率を向上させる機能を有する。
【0027】
光の取り出し効率を向上させるため、第2の絶縁層42の材料として、紫外線領域の光に対して、比較的良好な反射性を有する多孔質セラミック材料、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、酸化ジルコニウム焼結体および窒化アルミニウム質焼結体により形成することが好ましい。また、光の取り出し効率を向上させるという観点では、開口部12の内周面14に金属製の反射膜を設けてもよい。
【0028】
このような開口部12は、基体10の一方主面11aの全体に渡って縦横の並びに配列されている。例えば、千鳥格子状に配列し、このような配列にすることによって発光素子20をより高密度に配置することが可能となり、単位面積当たりの照度を高くすることが可能となる。ここで、千鳥格子に配列するとは、斜め格子の格子点に配することと同義で
ある。
【0029】
なお、単位面積当たりの照度が十分確保できる場合には、正格子状等に配列してもよく、配列形状に制限を設ける必要はない。
【0030】
以上のような、第1の絶縁層41および第2の絶縁層42からなる積層体40を備えた基体10は、第1の絶縁層41や第2の絶縁層42がセラミックスなどから成る場合、次のような工程を経て製造される。
【0031】
まず、従来周知の方法により製作された複数のセラミックスグリーンシートを準備する。開口部12に相当するセラミックスグリーンシートには開口部に対応する穴をパンチング等の方法により形成する。次に、内部配線60となる金属ペーストをグリーンシート上に印刷(不図示)した上で、該印刷された金属ペーストがグリーンシートの間に位置するようにグリーンシートを積層する。この内部配線60となる金属ペーストとしては、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)および銅(Cu)などの金属を含有させたものが挙げられる。次に、上記積層体を焼成することにより、グリーンシートおよび金属ペーストを併せて焼成することによって、内部配線60および開口部12を有する基体10を形成することができる。
【0032】
また、第1の絶縁層41や第2の絶縁層42が樹脂から成る場合、基体10の製造方法は、例えば、次のような方法が考えられる。
【0033】
まず、熱硬化性樹脂の前駆体シートを準備する。次に、内部配線60となる金属材料からなるリード端子を前駆体シート間に配置させ、かつリード端子を前駆体シートに埋設するように複数の前駆体シートを積層する。このリード端子の形成材料としては、例えばCu、Ag、Al、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金、およびFe−Ni合金などの金属材料が挙げられる。そして、前駆体シートに開口部12に対応する穴をレーザー加工やエッチング等の方法により形成した後、これを熱硬化させることにより、基体10が完成する。
【0034】
一方、基体10の開口部12内には、発光素子20に電気的に接続された接続パッド13と、該接続パッド13に半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15により接続された発光素子20と、発光素子20を封止する封止材30とが設けられている。
【0035】
接続パッド13は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、および銅(Cu)などの金属材料から成る金属層により形成されている。なお、必要に応じて、金属層上に、ニッケル(Ni)層、パラジウム(Pd)層、および金(Au)層などを更に積層しても良い。かかる接続パッド13は、半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15により発光素子20に接続される。
【0036】
また、発光素子20は、例えば、GaAsやGaN等の半導体材料からなるp型半導体層およびn型半導体層をサファイア基板等の素子基板21上に積層してなる発光ダイオードや、半導体層が有機材料からなる有機EL素子等により構成されている。
【0037】
この発光素子20は、発光層を有する半導体層22と、基体10上に配置された接続パッド13に半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15を介して接続されたAg等の金属材料からなる素子電極23、24とを備えており、基体10に対してワイヤボンディング接続されている。そして、発光素子20は、素子電極23、24間に流れる電流に応じて所定の波長を持った光を所定の輝度で発し、その光を素子基板21を介して外部へ出射する。なお、素子基板21は、省略することが可能なのは周知のとおりである。
また、発光素子20の素子電極23、24と接続パッド13との接続は、接合材15に半田等を使用して、従来周知のフリップ接続技術により行なってもよい。
【0038】
本実施形態では、発光素子20が発する光の波長のピークスペクトルが、例えば250〜395〔nm〕以下のUV光を発するLEDを採用している。つまり、本実施形態では、発光素子20としてUV−LED素子を採用している。なお、発光素子20は、従来周知の薄膜形成技術により形成される。
【0039】
そして、かかる発光素子20は、上述した封止材30によって封止されている。
【0040】
封止材30は、光透過性の樹脂材料等の絶縁材料より形成されており、発光素子20を良好に封止することにより、外部からの水分の浸入を防止したり、あるいは、外部からの衝撃を吸収し、発光素子20を保護したりする。
【0041】
また、封止材30は、発光素子20を構成する素子基板21の屈折率(サファイアの場合:1.7)空気の屈折率(約1.0)の間の屈折率を有する材料、例えばシリコーン樹脂(屈折率:約1.4)等より形成されることで、発光素子20の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0042】
かかる封止材30は、発光素子20を基体10上に実装した後、シリコーン樹脂等の前駆体を開口部12に充填し、これを硬化させることで形成される。
【0043】
また、光照射デバイス2は、放熱用部材60に対してシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの接着剤50を介して接着することにより、放熱効果を高めることができる。この放熱用部材60の形成材料としては、熱伝導率の大きい材料が好ましく、例えば種々の金属材料、セラミックス、樹脂材料が挙げられる。
【0044】
光照射デバイス2は、上述のような構成となっているが、紫外線硬化型インク3の被着面と対向するように配置される光照射デバイス2aと、非被着面と対向するように配置される光照射デバイス2bとでは発光素子20の数が異なる。光照射デバイス2bにおける発光素子20の数は、光照射デバイス2aにおける発光素子20の数よりも少なくなっている。
【0045】
具体的には、例えば、図4(a)、(b)に示すように、発光素子20は、光照射デバイス2aおよび光照射デバイス2bに対して対象物4が相対的に移動する方向に、複数の発光素子列25を形成していて、光照射デバイス2bの発光素子列25の数が光照射デバイス2aよりも少なくなっている。本実施形態では、光照射デバイス2bの発光素子20の数は光照射デバイス2aの発光素子20の数の二分の一となっている。
【0046】
なお、光照射デバイス2a、2bが有する発光素子20の数や光照射デバイス2aの有する発光素子20の数と光照射デバイス2bの有する発光素子20の数の比などは、紫外線硬化型インクの種類や該インクの被着した厚み、光透過性の対象物4の種類や該対象物4の厚みなどにあわせて適宜調整すればよい。
【0047】
このような構成とすることで、光照射デバイス2a、2bから照射される紫外線の照度を比較的低くすることが可能となり、対象物4に被着された紫外線硬化型インク3を十分硬化させつつ、対象物4に与える熱の影響を比較的小さくすることができる。
【0048】
ここで、このような効果が得られるメカニズムを詳細に説明する。
【0049】
紫外線硬化型インク3を硬化させるためには、紫外線の所定の積算光量が必要になる。紫外線の積算光量は、紫外線の照度と紫外線を照射している時間との積で求められる。つまり、紫外線の照度を高くすれば短時間で紫外線硬化型インク3の硬化が完了する。しかし、紫外線の照度を高くすると熱の発生が比較的少ない発光素子20を光源とした場合でも、熱の影響を受け易いプラスチックフィルムなどが対象物4の場合には、発光素子20から発生した熱により対象物4が収縮する問題が発生する。
【0050】
そこで、光透過性のプラスチックフィルムなどが対象物4の場合には、本実施形態のように対象物4の紫外線硬化型インク3の被着面と、該被着面の反対側に位置する非被着面と対向するようにそれぞれ光照射デバイス2a、2bを配置する。
【0051】
このように対象物4を挟んで、上下から紫外線を照射することにより、それぞれの光照射デバイス2a、2bにおける発光素子20の紫外線の照度を比較的小さくすることができるため、発光素子20から発生する熱を比較的少なくすることができる。
【0052】
また、紫外線硬化型インクや紫外線硬化型樹脂の紫外線照射による硬化は、空気中の酸素により障害を受けること(酸素阻害)が一般的に知られている。つまり、照射した紫外線が全て、紫外線硬化型インクや紫外線硬化型樹脂の硬化反応に寄与するわけではないことから、酸素阻害を考慮した比較的高い照度の紫外線を照射させる必要がある。
【0053】
しかし、本実施形態の光照射装置1によれば、対象物4の紫外線硬化型インク3の非被着面側からも紫外線を照射する構造となっているため、更に紫外線の照度を比較的低くすることが可能となる。なぜならば、紫外線硬化型インク3の非被着面側は光透過性の対象物で覆われているため酸素阻害の影響を受けにくくなっていることから、紫外線の照度を更に低くしても、紫外線硬化型インク3は十分に硬化し、かつ対象物4との密着性を確保することが可能となるためである。よって、対象物4の紫外線硬化型インク3の非被着面側に配置される光照射デバイス2bにおける発光素子20の数を少なくすることができる。
【0054】
さらに、本願実施形態の光照射デバイス2a、2bの第2の絶縁層42は、紫外線領域の光に対して比較的良好な反射性を有する酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム焼結体、窒化アルミニウム焼結体などの多孔質セラミック材料により形成されているため、光照射デバイス2a、2bから照射され、光透過性の対象物4を透過した紫外線は、それぞれ対向する光照射デバイス2b、2aの第2の絶縁層42で反射される。特に対象物4の紫外線硬化型インク3の非被着面側に配置される光照射デバイス2bにおける発光素子20の数が少なくされているため、光照射デバイス2bの絶縁層42の一方主面11aの面積は比較的広くすることができ、光照射デバイス2aから照射され、光透過性の対象物4を透過した、より多くの紫外線を反射することができる。よって、光照射デバイス2bにおける発光素子20の照度を更に低くすることができる。
【0055】
先に述べたとおり、本実施形態では、光照射デバイス2bの発光素子20の数は光照射デバイス2aの発光素子20の数の二分の一としたが、上述のように第2の絶縁層42が、光透過性の対象物4を透過した紫外線を反射する機能を有することから、光照射デバイス2bの発光素子20の数は光照射デバイス2aの発光素子20の数の50〜90%の割合とするのが好ましい。
【0056】
(印刷装置の実施形態)
本発明の印刷装置の実施形態として、図5および図6に示した印刷装置200を例に挙げて説明する。この印刷装置200は、光透過性の記録媒体250を搬送するための搬送機構210と、搬送された記録媒体250に印刷を行なうための印刷機構としてのインク
ジェットヘッド220と、印刷後の記録媒体250に対して紫外線を照射する、上述した光照射装置1と、該光照射装置1の発光を制御する制御機構230と、を備えている。ここで、光透過性の記録媒体250は、上述の光透過性の対象物4に相当する。
【0057】
搬送機構210は、記録媒体250をインクジェットヘッド220、光照射装置1の順に通過するように搬送するためのものであり、載置台211と、互いに対向配置され、回転可能に支持された一対の搬送ローラ212とを含んで構成されている。この載置台211によって支持された記録媒体250を一対の搬送ローラ212の間に送り込み、該搬送ローラ212を回転させることにより、記録媒体250を搬送方向へ送り出すためのものである。
【0058】
ここで、光照射装置1の光照射デバイス2a、2bは記録媒体250の紫外線硬化型インク3の被着面と該被着面の反対側の非被着面に対向するように配置される。
【0059】
インクジェットヘッド220は、搬送機構210を介して搬送される記録媒体250に対して、感光性材料を付着させる機能を有している。このインクジェットヘッド220は、この感光性材料を含む液滴を記録媒体250に向けて吐出し、記録媒体250に被着させるように構成されている。本実施形態では、感光性材料として紫外線硬化型インクを採用している。この感光性材料としては、紫外線硬化型インクの他に、例えば感光性レジスト、光硬化型樹脂などが挙げられる。
【0060】
本実施形態では、インクジェットヘッド220としてライン型のインクジェットヘッドを採用している。このインクジェットヘッド220は、ライン状に配列された複数の吐出孔220aを有しており、この吐出孔220aから紫外線硬化型インクを吐出するように構成されている。インクジェットヘッド220は、吐出孔220aの配列に対して直交する方向に搬送される記録媒体250に対して、吐出孔220aよりインクを吐出させ、記録媒体にインクを被着させることにより、記録媒体に対して印刷を行なう。
【0061】
なお、本実施形態では、印刷機構として、ライン型のインクジェットヘッドを例に挙げたが、これに限られるものではなく、例えば、シリアル型のインクジェットヘッドを採用していてもよいし、ライン型又はシリアル型の噴霧ヘッドを採用してもよい。さらに、印刷機構として、記録媒体250の静電気を蓄え、かかる静電気で感光性材料を付着させる静電式ヘッドを採用してもよいし、記録媒体250を液状の感光性材料に浸して、かかる感光性材料を付着させる浸液装置を採用してもよい。さらに、印刷機構として刷毛、ブラシ、およびローラを採用してもよい。
【0062】
印刷装置200において光照射装置1は、搬送機構210を介して搬送される記録媒体250に付着した感光性材料を感光させる機能を担っている。この光照射装置1は、インクジェットヘッド220に対して搬送方向の下流側に設けられている。また、印刷装置200において発光素子20は、記録媒体250に付着した感光性材料を露光する機能を担っている。
【0063】
制御機構230は、光照射装置1の発光を制御する機能を担っている。この制御機構230のメモリには、インクジェットヘッド220から吐出されるインク滴を硬化するのが比較的良好になるような光の特徴を示す情報が格納されている。この格納情報の具体例を挙げると、吐出するインク滴を硬化するのに適した波長分布特性、および発光強度(各波長域の発光強度)を表す数値が挙げられる。本実施形態の印刷装置200では、この制御機構230を有することによって、制御機構230の格納情報に基づいて、複数の発光素子20に入力する駆動電流の大きさを調整することもできる。このことから、印刷装置200によれば、使用するインクの特性に応じた適正な光量で光を照射することができ、比
較的低エネルギーの光で、インク滴を硬化させることができる。
【0064】
この印刷装置200では、搬送機構210が記録媒体250を搬送方向に搬送している。インクジェットヘッド220は、搬送されている記録媒体250に対して紫外線硬化型インクを吐出して、記録媒体250の表面に紫外線硬化型インクを付着させる。このとき、記録媒体250に付着させる紫外線硬化型インクは、全面付着であっても、部分付着であっても、所望パターンでの付着であってもよい。この印刷装置200では、記録媒体250に付着した紫外線硬化型インクに光照射装置1の発する紫外線を照射して、紫外線硬化型インクを硬化させている。
【0065】
本実施形態の印刷装置200は、光照射装置1の有する効果を享受することができる。本実施形態の印刷装置200では、光照射装置1は、一対の光照射デバイス2を備えており、紫外線硬化型インク3を被着させた対象物4を挟むように、対象物4の被着面と対象物4の被着面の反対側に位置する非被着面とにそれぞれ対向するように配置されている。このように配置することで、それぞれの光照射デバイス2から照射される紫外線の照度を比較的低くすることが可能となり、対象物4に被着された紫外線硬化型インク3を十分硬化させつつ、対象物4への熱影響を比較的小さくすることができる。
【0066】
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、上述の実施形態においては、光照射デバイス2は一つの基体10で構成されているが、基体10を放熱部材80に縦横に複数配列した構造としてもよい。
【0068】
また、対象物4の紫外線硬化型インク3の被着面側に配置される光照射デバイス2aにおける発光素子20が照射する光の波長は、前記被着面の反対側に位置する非被着面側に配置される光照射デバイス2bにおける発光素子20が照射する光の波長よりも短くてもよい。上述の紫外線硬化反応での酸素阻害のメカニズムの一つは、紫外線硬化型インクや紫外線硬化型樹脂と結びついた酸素により紫外線硬化型インクや紫外線硬化型樹脂の硬化反応が阻害されると考えられているが、短波長の紫外線は、紫外線硬化型インクや紫外線硬化型樹脂と、これに結びついている酸素を切り離す効果があることが知られている。したがって、紫外線硬化型インク3の被着面側に配置される光照射デバイス2aにおける発光素子20が照射する光の波長が短いと、酸素阻害の影響を比較的少なくすることができる。
【0069】
さらに、紫外線硬化型インク3の被着面側の反対側の非被着面側に配置される光照射デバイス2bから対象物4までの距離は、該被着面側に配置される光照射デバイス2aから対象物4までの距離よりも短くしてもよい。このような構成とすることで、光照射デバイス2aから照射され、光透過性の対象物4を透過した紫外線をより効率的に反射することができ、光照射デバイス2bにおける発光素子20の照度を更に低くすることができる。
【0070】
また、紫外線硬化型インク3の被着面側の反対側の非被着面側に配置される光照射デバイス2bにおける基体10の一方主面11a側に反射板を配設してもよい。このような構成とすることで、一方主面11aに向かって入射した紫外線をより効率的に反射することができる。反射板の材料としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などの金属が好ましい。樹脂製の板材に金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などの金属をめっきなどで被着したものでもよい。
【0071】
さらに、印刷装置200の実施形態は、以上の実施形態に限定されない。例えば、軸支されたローラを回転させ、このローラ表面に沿って記録媒体を搬送する、いわゆるオフセ
ット印刷型のプリンタであってもよく、同様の効果を奏する。
【0072】
本実施形態では、インクジェットヘッド220を用いた印刷装置200に光照射装置1を適用した例を示しているが、この光照射装置1は、例えば対象体表面にスピンコートした光硬化樹脂を硬化させる専用装置など、各種類の光硬化樹脂の硬化にも適用することができる。また、光照射装置1を、例えば、露光装置における照射光源などに用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 光照射装置
2 光照射デバイス
3 紫外線硬化型インク
4 対象物
10 基体
11a 一方主面
11b 他方主面
12 開口部
13 接続パッド
14 内周面
15 接合材
20 発光素子
21 素子基板
22 半導体層
23、24 素子電極
25 発光素子列
30 封止材
40 積層体
41 第1の絶縁層
42 第2の絶縁層
50 接着剤
60 放熱用部材
200 印刷装置
210 搬送機構
211 載置台
212 搬送ローラ
220 インクジェットヘッド
220a 吐出孔
230 制御機構
250 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型インクまたは紫外線硬化型樹脂を被着させた光透過性を有する対象物に対して光を照射するための光照射装置であって、
前記対象物の紫外線硬化型インクまたは紫外線硬化型樹脂の被着面と、該被着面の反対側に位置する非被着面とにそれぞれ対向するように配置される一対の光照射デバイスを備えており、
該一対の光照射デバイスは、それぞれ基体と該基体の前記対象物側の主面に縦横の並びに配列された複数の発光素子とを有し、
前記非被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子の数は、前記被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子の数よりも少ないことを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記非被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子が照射する光の波長は、前記被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子が照射する光の波長よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記非被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子から前記対象物までの距離は、前記被着面側の前記光照射デバイスにおける前記発光素子から前記対象物までの距離よりも短いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記非被着面側の前記光照射デバイスにおける前記基体の前記主面側に、該主面に向けて入射した光を前記対象物に反射する反射板が配設されていることを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項5】
光透過性を有する記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体に対して紫外線硬化型インクまたは紫外線硬化型樹脂を印刷する印刷手段と、
印刷された前記記録媒体に対して光を照射する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光照射装置とを有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−135714(P2012−135714A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288998(P2010−288998)
【出願日】平成22年12月25日(2010.12.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】