説明

光硬化性樹脂成形装置

【課題】光硬化性樹脂を樹脂保持空間に効率的に充填し、確実に光を照射して、対象物に光硬化性樹脂による成形部を得ることができる光硬化性樹脂成形装置を提供する。
【解決手段】対象物の表面に配置され、成形部y1に対応した樹脂保持空間30が形成され、光が透過する導光型42と、樹脂保持空間30に光硬化性樹脂1を供給する樹脂供給バルブ20を有し、当該樹脂供給バルブ20の先端面が樹脂保持空間30に面するように配置され、光硬化性樹脂1を外部から遮光しながら貯留する樹脂貯留タンク10と、樹脂保持空間30に充填された光硬化性樹脂1に、導光型42を介して光を照射する光源41と、を備える光硬化性樹脂成形装置X。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂に紫外線や可視光を照射して当該光硬化性樹脂を硬化させ、対象物の被成形面に所望の立体形状の成形部を設ける光硬化性樹脂成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂は、紫外線など特定の波長の光を照射されたときに重合して硬化する樹脂である。
【0003】
特許文献1には、光硬化性樹脂を使用して立体形状の成形品を得る立体図形作製装置が記載してある。当該立体図形作製装置では、未硬化の光硬化性樹脂にレーザーを走査しながら照射して当該光硬化性樹脂を硬化させ、硬化した光硬化性樹脂の上に未硬化の光硬化性樹脂を配置して再度レーザー照射することで当該光硬化性樹脂を硬化させる。この操作を繰り返すことにより、所望の立体形状を有する成形品を得ている。
【0004】
特許文献2には、光硬化性樹脂を、射出成形装置によって成形することが記載してある。当該射出成形装置では、キャビティに充填された光硬化性樹脂に光を照射して、硬化・成形を行う。当該射出成形装置は、成形型の一部分であり、光硬化性樹脂が充填されるキャビティへと光を透過可能な光透過部品を備える。
具体的には、プランジャに供給された光硬化性樹脂をランナー部を介してキャビティ内へと注入する。この際、検出部によって検出されたプランジャの位置が光源ユニットへと入力される。プランジャが注入開始位置から注入終了位置まで移動するのに対応して、光源ユニットでは、最外側の環状LED列から最内側の環状LED列まで各環状LED列が順次発光する。
このように成形型への光硬化性樹脂の充填状態に応じて光源ユニットの発光状態を調節することにより、光硬化性樹脂の硬化の進行を調節でき、最適な硬化工程を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−144478号公報
【特許文献2】特開2008−87479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の立体図形作製装置では微細な加工が可能となるが、光硬化性樹脂を硬化させる際には、レーザーを走査しながら照射しているため、光硬化性樹脂への光の照射に時間を要することとなり、生産性が低く、成形品の大量生産には適さない。
【0007】
特許文献2の射出成形装置では、成形型への光硬化性樹脂の充填状態に応じて光源ユニットの発光状態を調節しており、効率よく光硬化性樹脂の硬化の進行を調節できるため生産性が高い。成形型内にはランナー部を形成しているため、光硬化性樹脂はランナー部を通過してキャビティ内に注入される。そのため、最終的な成形品に要する光硬化性樹脂以外に、ランナー部に充填される光硬化性樹脂が必要となる。当該ランナー部に充填される光硬化性樹脂は無駄な光硬化性樹脂となっている。
【0008】
従って、本発明の目的は、光硬化性樹脂を樹脂保持空間に効率的に充填し、確実に光を照射して、対象物に光硬化性樹脂による成形部を得ることができる光硬化性樹脂成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る光硬化性樹脂成形装置の第一特徴構成は、光硬化性樹脂を硬化させて対象物の表面に成形部を設ける光硬化性樹脂成形装置であって、前記対象物の表面に配置され、前記成形部に対応した樹脂保持空間が形成され、光が透過する導光型と、前記樹脂保持空間に前記光硬化性樹脂を供給する樹脂供給バルブを有し、当該樹脂供給バルブの先端面が前記樹脂保持空間に面するように配置され、前記光硬化性樹脂を外部から遮光しながら貯留する樹脂貯留タンクと、前記樹脂保持空間に充填された前記光硬化性樹脂に、前記導光型を介して光を照射する光源と、を備えた点にある。
【0010】
本構成によれば、樹脂供給バルブを開状態とすることによって、光硬化性樹脂を樹脂保持空間に直接供給することができ、かつ、対象物を透過することなく樹脂保持空間に光が照射される。樹脂保持空間に光硬化性樹脂を供給した状態で光源を照射すれば、導光型を経由した光を光硬化性樹脂に照射することができる。本構成では、従来技術のように光源を走査する必要はなく、硬化させたい所望の光硬化性樹脂に対して略同時に光を照射するため、光硬化性樹脂を効率よく硬化させることができる。
また、本構成では、光硬化性樹脂はランナー部を通過して樹脂保持空間内に注入される態様ではないため、ランナー等の不必要な部分を形成することなく、対象物に容易に成形部を設けることができる。
【0011】
本発明に係る光硬化性樹脂成形装置の第二特徴構成は、前記樹脂保持空間に充填された前記光硬化性樹脂が、前記光源からの光の照射により硬化した後に、先端が前記樹脂保持空間に出入するように、前記樹脂供給バルブの内部に挿通された突出しピンを備えた点にある。
【0012】
本構成によれば、突出しピンが樹脂供給バルブ内に構成されて一つの部品となっている。よって、装置の構成を簡単にすることができる。
また、突出しピンが樹脂保持空間の内部に延出したとき、突出しピンの先端部分が樹脂保持空間で硬化した光硬化性樹脂の成形部を押圧することができる。この状態でさらに突出しピンを延出させると、当該成形部を樹脂保持空間から速やかに離型させることができるため、成形部が成形された対象物を導光型から容易に取り出すことができる。
【0013】
一般に光硬化性樹脂は、硬化の前後で体積が減少する「引け」が発生することが知られている。この場合、光硬化性樹脂の成形部の形状が樹脂保持空間に対応する形状に対応しない虞がある。
突出しピンによる光硬化性樹脂の成形部を押圧するタイミングを、光硬化性樹脂が完全に硬化する前とすれば、成形部の表面に凹部を形成することができる。このように凹部が形成されると、その分だけ光硬化性樹脂が押圧され、光硬化性樹脂を確実に樹脂保持空間に沿った形状にすることができる。そのため、光硬化性樹脂の硬化に伴う「引け」が発生した場合であっても、成形部の形状を樹脂保持空間に対応する形状とすることができる。
【0014】
本発明に係る光硬化性樹脂成形装置の第三特徴構成は、前記樹脂保持空間に前記光硬化性樹脂を供給するために前記樹脂供給バルブが開いているときは、前記光源からの光の前記樹脂保持空間への照射を停止させ、前記樹脂供給バルブが閉じているときは、前記光源からの光の前記樹脂保持空間への照射を行う照射時機制御手段を備えた点にある。
【0015】
本構成によれば、樹脂保持空間に光硬化性樹脂を供給する供給状態であるとき、光源から樹脂保持空間への照射を停止するため、供給口は樹脂供給バルブによって開状態であっても光が貯留部の内部に進入することはない。また、樹脂供給バルブが閉じている供給停止状態であるとき、光源から樹脂保持空間への照射を開始するが、供給口は樹脂供給バルブによって閉状態であるため、光が貯留部の内部に進入することはない。よって、本構成では、照射時機制御手段によって、当該樹脂供給バルブの動作に応じて光源から樹脂保持空間への照射のタイミングを制御して、光が貯留部の内部に進入するのを確実に防止することができる。
【0016】
本発明に係る光硬化性樹脂成形装置の第四特徴構成は、前記樹脂保持空間に充填された前記光硬化性樹脂が、前記光源からの光の照射により硬化する前の所定の時機に、前記突出しピンを前記樹脂保持空間に所定の長さだけ突き出して前記光硬化性樹脂を押圧する樹脂押圧制御手段を備えた点にある。
【0017】
ここで、所定の時機とは、例えば、光硬化性樹脂が硬化により収縮し始める時機をいい、例えば、完全に硬化する直前等である。所定の長さとは、硬化により光硬化性樹脂が収縮した部分の体積に対応した長さをいう。
【0018】
本構成によれば、光硬化性樹脂の硬化に伴う「引け」が発生しそうな場合に、突出ピンの先端部分で成形部を押圧することで、光硬化性樹脂を確実に樹脂保持空間に沿った形状にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の光硬化性樹脂成形装置の概要を示す断面図である。
【図2】光硬化性樹脂成形装置を用いて、対象物の被成形面に所望の立体形状の成形部を設ける概要を示した図である。
【図3】弁体の先端部に環状シーリング部材を設けた概要を示した図である。
【図4】樹脂貯留タンクおよび導光型を一体化した場合の概略図である。
【図5】樹脂保持空間の周縁にシール部材を設けた概要図である。
【図6】突出ピンが光硬化性樹脂(成形部)を押圧して成形部の表面に凹部を形成する場合を示した概要図である。
【図7】突出ピンが光硬化性樹脂(成形部)を押圧して成形部の表面に凹部を形成する場合を示した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の光硬化性樹脂成形装置は、光硬化性樹脂に紫外線(UV)や可視光を照射して当該光硬化性樹脂を硬化させ、対象物の被成形面に所望の立体形状の成形部を設ける。
【0021】
図1に示したように、当該光硬化性樹脂成形装置Xは、対象物Yの表面に配置され、成形部y1に対応した樹脂保持空間30が形成され、光が透過する導光型42と、樹脂保持空間30に光硬化性樹脂1を供給する樹脂供給バルブ20を有し、当該樹脂供給バルブ20の先端面が樹脂保持空間30に面するように配置され、光硬化性樹脂1を外部から遮光しながら貯留する樹脂貯留タンク10と、樹脂保持空間30に充填された光硬化性樹脂1に、導光型42を介して光を照射する光源41と、を備える。
【0022】
(光硬化性樹脂)
光硬化性樹脂1は、例えば常温下で流動性を示す比較的低分子量の樹脂に対してUV・可視光など特定の波長の光を照射したときに重合して硬化する樹脂である。光硬化性樹脂1は、当該光の照射によって例えば架橋反応を起こして網目状の三次元構造を形成し、分子量を増大させながら不溶不融性の樹脂となる。本発明で使用する光硬化性樹脂1は、光照射により架橋もしくは重合しうる感光性基を有する光硬化性樹脂であれば特に限定されるものではない。
【0023】
光硬化性樹脂1は、例えばUVの照射よって硬化するUV硬化樹脂、可視光の照射よって硬化する可視光硬化樹脂などを使用することができる。UV硬化樹脂は、例えばウレタンアクリレート系樹脂・エポキシアクリレート系樹脂・ポリエステルアクリレート系樹脂・シリコーン樹脂などが使用できる。
【0024】
UV硬化樹脂は、例えばモノマー、オリゴマー、光重合開始剤および添加剤で構成されている。モノマーは樹脂の希釈剤であり、硬化後、樹脂の一部となる。オリゴマーは、最終的にはポリマー(固体)になるモノマー(液体)との中間的な物質で樹脂の主成分である。光重合開始剤は、紫外線を照射されると光重合反応を開始する物質のことである。
UV光の照射を受けると、当該光重合開始剤がモノマー(液体)状態からポリマー(固体)状態に転換させる「光重合反応」が起こることで硬化する。
【0025】
(導光型)
導光型42は、例えば導光型42の一方の側から侵入した光が、導光型42の他方の側に透過するように構成してある。他方の側には樹脂保持空間30を形成するとよい。導光型42は、光源41からの光を樹脂保持空間30に導けるように、例えばガラス板・アクリル板など、光透過性の材料で形成する。
【0026】
導光型42は、その上方に樹脂貯留タンク10を配置し、その下方に対象物Yの被成形面yを配置する板状部材42aで形成してある。
板状部材42aである導光型42は、樹脂貯留タンク10および対象物Yに挟持されるため、樹脂貯留タンク10および対象物Yの間を光源41から照射された光が透過する。
樹脂貯留タンク10および対象物Yが光不透過性の材料で形成してあれば、導光型42の側方42bから入射した光は、樹脂貯留タンク10および対象物Yに入射することなく、樹脂保持空間30に確実に照射される。
【0027】
本発明の光硬化性樹脂成形装置Xは、対象物Yを配置する配置型(図外)を構成してもよい。例えば、配置型には、対象物Yの外形に沿った凹部が形成され、対象物Yをその凹部に嵌め合わせれば、対象物Yは所望の位置に配置される。配置型と導光型42とで対象物Yを挟持する。導光型42と樹脂貯留タンク10とは相対的に移動しないように固定してある。
【0028】
(樹脂保持空間)
当該樹脂保持空間30は、対象物Yの被成形面yに形成する成形部y1に対応する形状を有する空隙である。そのため、樹脂保持空間30は、樹脂貯留タンク10から供給された光硬化性樹脂1を所定の形状に成形する成形型となる。
樹脂保持空間30には、導光型42を経由して光源41からの光が導かれるため、樹脂保持空間30は、導光型42に隣接するように配置する。
本実施形態の樹脂保持空間30は、弁体21、導光型42、対象物Yによって囲繞される。これにより、供給された光硬化性樹脂1を所定の形状に保持することができる。
【0029】
(樹脂貯留タンク)
樹脂貯留タンク10は、光硬化性樹脂1を貯留する貯留部11を備えたケーシングである。当該樹脂貯留タンク10は、貯留手段遮光部14を設けて貯留部11に貯留した光硬化性樹脂1を遮光できるように構成する。貯留手段遮光部14は、例えば当該樹脂貯留タンク10の表面を光透過性の無い平板で覆うか、遮光塗料を塗布して形成する。
【0030】
樹脂貯留タンク10の底部12には、光硬化性樹脂1を樹脂保持空間30に供給する供給口13が形成してある。当該供給口13は、樹脂保持空間30の少なくとも一部と連通する位置に形成してあれば、その開口径の大きさは特に限定されるものではない。本実施形態では、供給口13の開口径は、樹脂保持空間30の開口径と略等しく、樹脂供給バルブ20によって封鎖できるように設定してある。
【0031】
(樹脂供給バルブ)
樹脂供給バルブ20は、樹脂貯留タンク10から対象物Yの被成形面yに供給する光硬化性樹脂1の量を制御するように構成してある。本実施形態の当該樹脂供給バルブ20は、供給口13を開閉するべく、断面長尺状となる弁体21を貯留部11の内部に配置してある。当該弁体21は、供給口13を開閉できる態様であれば、その形状は限定されるものではない。
当該弁体21は、貯留部11の内部を例えば上下に移動することで供給口13を開閉する。即ち、弁体21が上方に移動したときに供給口13が開状態となって光硬化性樹脂1が樹脂保持空間30に供給され、弁体21が下方に移動したときに供給口13が閉状態となって樹脂保持空間30への光硬化性樹脂1の供給を停止することができる。弁体21は、弁駆動手段23によって上下方向に駆動させる。
【0032】
弁体21が供給口13を塞ぐ閉状態のときには、外部の光が貯留部11の内部に進入しないようにする必要がある。そのため、弁体21において少なくとも供給口13を塞ぐ先端部分を光不透過性の材料で形成するとよい。
【0033】
本実施形態の弁体21は、当該弁体21の内部を挿通し、樹脂保持空間30に出退可能な突出ピン50を備える。当該突出ピン50は、例えば棒状の部材で構成する。本実施形態では、弁体21の断面における軸芯と突出ピン50の軸芯とが一致するように挿入する。
突出ピン50の先端部分51は樹脂保持空間30に出入するように構成する。突出ピン50は、突出ピン駆動手段52により弁体21の内部を摺動して樹脂保持空間30に出退可能に構成してある。樹脂保持空間30に充填された光硬化性樹脂1が、光源41からの光の照射により硬化した後に、突出ピン50が樹脂保持空間30の内部に延出したとき、突出ピン50の先端部分51が樹脂保持空間30で硬化した光硬化性樹脂1(成形部y1)を押圧することができる。この状態でさらに突出ピン50を延出させると、当該成形部y1を樹脂保持空間30から速やかに離型させることができる。成形部y1を樹脂保持空間30から離型させた後、突出ピン50は弁体21の内部に退入させる。
【0034】
(光源)
光源41は、UV・可視光など特定の波長の光を照射することができるものであればよい。例えば水銀ランプ、ハロゲンランプなどが使用できる。
【0035】
(制御機構)
樹脂貯留タンク10においては、光源41からの光や外部からの光が貯留部11の内部に進入しないようにする必要がある。上述したように樹脂貯留タンク10は、予め貯留部11の内部を遮光してある。
樹脂貯留タンク10の底部12に形成してある供給口13は弁体21によって開閉される。そのため、弁体21が閉状態の場合は、当該供給口13から貯留部11の内部に光が進入することはない。一方、弁体21が開状態の場合は、当該供給口13から貯留部11の内部に光が進入する虞がある。そこで本発明では、当該弁体21の動作に応じて光源41から樹脂保持空間30への露光のタイミングを制御するための制御機構60として、照射時機制御手段61を備える。
【0036】
当該照射時機制御手段61は、樹脂保持空間30に光硬化性樹脂1を供給するために弁体21が開いているとき(供給状態)、光源41からの光の樹脂保持空間30への照射を停止させる。一方、弁体21が閉じているとき(供給停止状態)は、光源41からの光の樹脂保持空間1への照射を行うように構成してある。
【0037】
本構成によれば、光硬化性樹脂1を供給する際に光が貯留部11の内部に進入することはない。このように本構成では、照射時機制御手段61によって、当該弁体21の動作に応じて光源41から樹脂保持空間30への露光のタイミングを制御して、光が貯留部11の内部に進入するのを確実に防止することができる。
【0038】
一般に光硬化性樹脂1は、硬化の際に体積が減少する「引け」が発生することが知られている。そのため、光硬化性樹脂1が完全に硬化する前に、「引け」が発生したことによって光硬化性樹脂1の体積が減少した分だけ樹脂保持空間30に光硬化性樹脂1を追加するよう、弁体21を開状態にするようにしてもよい。
【0039】
突出ピン50を樹脂保持空間30の内部に延出させるタイミングは、樹脂保持空間30で光硬化性樹脂1が硬化した場合だけではなく、当該光硬化性樹脂1が完全に硬化する前としてもよい。
この場合、樹脂保持空間30に充填された光硬化性樹脂1が、光源41からの光の照射により硬化する前の所定の時機に、突出しピン50を樹脂保持空間30に所定の長さだけ突き出して光硬化性樹脂1を押圧する樹脂押圧制御手段62を備えるとよい。
即ち、光硬化性樹脂1の硬化に伴う「引け」が発生しそうな場合に、突出ピン50の先端部分51で成形部y1を押圧することで、光硬化性樹脂1を確実に樹脂保持空間30に沿った形状にすることができる。当該成形部y1の表面には凹部y2が形成されるが(図6)、当該凹部y2は、光硬化性樹脂1の硬化後、ネジ穴に利用することができる。
凹部y2が形成された後、さらに突出ピン50を延出させると、成形部y1を樹脂保持空間30から速やかに離型させることができる(図7)。
【0040】
上述したように本発明の光硬化性樹脂成形装置Xでは、樹脂供給バルブ20を開状態とすることによって、光硬化性樹脂1を樹脂保持空間30に直接供給することができ、かつ、対象物Yを透過することなく樹脂保持空間30に光が照射される。樹脂保持空間30に光硬化性樹脂1を供給した状態で光源41を照射すれば、導光型42を経由した光を光硬化性樹脂1に照射することができる。本構成では、光源41からの光を光硬化性樹脂1に対して単に照射するだけであるため、光硬化性樹脂1を効率よく硬化できる。
【0041】
(光硬化性樹脂成形方法)
本発明の光硬化性樹脂成形装置を用いた光硬化性樹脂成形方法について以下に説明する(図2)。
【0042】
まず、樹脂貯留タンク10、導光型42、対象物Yをこの順で配置する(図2(a))。弁体21が供給口13を閉鎖した状態で樹脂貯留タンク10に光硬化性樹脂1を充填する(充填工程:図2(b))。弁体21を開操作して樹脂保持空間30に光硬化性樹脂1を供給し(供給工程:図2(c))、光硬化性樹脂1が樹脂保持空間30に満たされた状態で弁体21を閉操作する(充填工程:図2(d))。光源41を点灯し、導光型42の側方42bから光を樹脂保持空間30に導き、光硬化性樹脂を硬化させる(樹脂硬化工程:図2(e))突出ピン50によって硬化した成形部y1を押圧して当該成形部y1を離型させる(離型工程:図2(f))。
【0043】
上述した光硬化性樹脂成形方法により、光硬化性樹脂1を効率よく硬化させ、かつ、光硬化性樹脂の使用量を抑制できるようになる。
【0044】
〔別実施の形態1〕
弁体21の先端部において供給口13と接触する位置には、弁体21が供給口13の周縁に密着できるように環状シーリング部材70を設けてもよい(図3)。当該環状シーリング部材70は、例えばゴムなどの弾性材をリング状に形成し、弁体21の先端部に配設する。当該先端部には、環状シーリング部材70を配置するための溝部22を形成してもよい。当該溝部22により、環状シーリング部材70の位置ズレを防止することができる。
本構成により、弁体21を閉状態としたとき、弁体21と供給口13との密着性が向上するため、光硬化性樹脂1が供給口13の側に漏洩するのを防止でき、かつ、供給口13の側から貯留部11へ光が進入するのを確実に防止することができる。
また、環状シーリング部材70が弾性を有する材質である場合、そのクッション量の範囲で弁体21を成形部y1へ押圧することで、樹脂の硬化に伴う「引け」を抑制できる。
【0045】
〔別実施の形態2〕
上述した実施形態では、樹脂貯留タンク10の底部12に供給口13を形成した場合について説明した。しかし、このような態様に限られるものではない。
図4に、樹脂貯留タンク10の底部12を設ける替わりに、板状部材42aを配置した場合を示す。この場合、樹脂貯留タンク10および板状部材42aは一体化して形成される。
弁体21は、板状部材42aのうち樹脂保持空間30における樹脂貯留タンク10側の周縁に直接接触して閉状態とすることとなる。
光が貯留部11に到達するのを防止するため、板状部材42aにおける樹脂貯留タンク10の側には、例えば板状の遮光部材43を設けておくとよい。当該遮光部材43は、例えば遮光性を有する薄板を板状部材42aに貼り合わせてもよいし、板状部材42aの表面に遮光性の塗料等を塗布してもよい。
【0046】
〔別実施の形態3〕
図5に示すように、樹脂保持空間30の周縁にシール部材80を設けてもよい。例えば、板状部材42aと対象物Yとの間にシール部材80を配設する。本構成であれば、樹脂保持空間30に供給した光硬化性樹脂1が、板状部材42aと対象物Yとの間に漏洩するのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、光硬化性樹脂に紫外線や可視光を照射して当該光硬化性樹脂を硬化させ、対象物の被成形面に所望の立体形状の成形部を形成する光硬化性樹脂成形装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
X 光硬化性樹脂成形装置
Y 対象物
y 被成形面
y1 成形部
1 光硬化性樹脂
10 樹脂貯留タンク
20 樹脂供給バルブ
30 樹脂保持空間
41 光源
42 導光型
50 突出しピン
61 照射時機制御手段
62 樹脂押圧制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性樹脂を硬化させて対象物の表面に成形部を設ける光硬化性樹脂成形装置であって、
前記対象物の表面に配置され、前記成形部に対応した樹脂保持空間が形成され、光が透過する導光型と、
前記樹脂保持空間に前記光硬化性樹脂を供給する樹脂供給バルブを有し、当該樹脂供給バルブの先端面が前記樹脂保持空間に面するように配置され、前記光硬化性樹脂を外部から遮光しながら貯留する樹脂貯留タンクと、
前記樹脂保持空間に充填された前記光硬化性樹脂に、前記導光型を介して光を照射する光源と、を備えた光硬化性樹脂成形装置。
【請求項2】
前記樹脂保持空間に充填された前記光硬化性樹脂が、前記光源からの光の照射により硬化した後に、先端が前記樹脂保持空間に出入するように、前記樹脂供給バルブの内部に挿通された突出しピンを備えた請求項1に記載の光硬化性樹脂成形装置。
【請求項3】
前記樹脂保持空間に前記光硬化性樹脂を供給するために前記樹脂供給バルブが開いているときは、前記光源からの光の前記樹脂保持空間への照射を停止させ、前記樹脂供給バルブが閉じているときは、前記光源からの光の前記樹脂保持空間への照射を行う照射時機制御手段を備えた請求項1または2に記載の光硬化性樹脂成形装置。
【請求項4】
前記樹脂保持空間に充填された前記光硬化性樹脂が、前記光源からの光の照射により硬化する前の所定の時機に、前記突出しピンを前記樹脂保持空間に所定の長さだけ突き出して前記光硬化性樹脂を押圧する樹脂押圧制御手段を備えた請求項2に記載の光硬化性樹脂成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−25606(P2011−25606A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175673(P2009−175673)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】