説明

光補償型放電灯点灯装置

【課題】本発明の解決すべき課題は始動性に優れた光補償型放電灯点灯装置を提供することにある。
【解決手段】一定温度以下で始動操作時に高圧パルスを発生する内蔵始動手段26を有した放電灯20と、前記放電灯20の点灯操作後、放電灯20が点灯し所定光量に達するまでの期間中に点灯する白熱灯22と、を有する光補償型放電灯点灯装置10において、
前記放電灯に点灯電力を供給する安定器14と、
放電灯外に配置され、点灯操作から一定の遅延時間経過後に高圧パルスを発生する外部始動器12と、
を備えたことを特徴とする光補償型放電灯点灯装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光補償型放電灯点灯装置、特にその始動制御機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
金属蒸気放電灯などの放電灯は、消費電力に比較して光量が大きく、寿命が長いなどの各種利点を有するが、一方でその始動時に高圧パルスによる絶縁破壊が必要であり、また点灯後しばらくの間は光量が低く安定状態に達するのに時間がかかるなどの欠点もある。
特に点灯操作後に光量が最大値に達するまでに時間がかかる点は、使用者からの不満も多く聞かれるところであり、改善が要求される。
この始動時の光量を補償する方式の一つとして、点灯操作時に放電灯とともに白熱灯などの最大光量に達するのが極めて早い光源を点灯させ、点灯操作後、放電灯が未点灯の期間及び低光量の期間は白熱灯により光量を補償し、ある程度時間が経過し放電灯の光量が最大値に近くなった段階で白熱灯を消灯させる、いわゆる光補償型放電灯点灯装置が公知である(特開平10−334725号公報)。
【0003】
一方、金属蒸気放電灯など、特殊な始動器を必要とするランプには始動器を内蔵させたものが汎用されている。一般に、この内蔵型始動器は非線形コンデンサFECとバイメタルスイッチ等で構成され、ランプの点灯を温度変化としてバイメタルスイッチで検知し高圧パルスの発振を停止させている。
ところが、一般的な光補償型点灯装置でこのような始動器内蔵型放電灯を点灯させると、一度放電灯を点灯させてから、立ち消えなどにより再始動を行う場合に時間がかかり、場合によっては再始動不能になることがあった。
すなわち、始動器内蔵型放電灯では、前述したようにバイメタルスイッチを用い、点灯状態或いは再始動可能時期を検出している。しかしながら、前記光補償型放電灯点灯装置では放電灯が立ち消えることにより白熱灯が点灯するため、投光器内の温度低下が極めて遅く、バイメタルスイッチがOn作動するまで時間がかかり、場合によってはバイメタルスイッチのターンオン温度にまで低下しないことによる。
このように、始動器内蔵型放電灯は各種点灯装置で点灯可能であるという優れた利点があるものの、光補償型点灯装置に用いた場合には再始動性に問題を生じてしまうのである。
【0004】
これに対し、光補償型ではないものの、外部始動器を備えた点灯装置もあり、安定器温度により冷間始動か、或いは再始動かを検出し、安定器温度が低い冷間始動時には内蔵型始動器を用い、安定器温度が高い再始動時には外部始動器を用いることで再始動性を向上させる技術も開発されている(特開平9−50890号公報)。
しかしながら、このような改良された放電灯点灯装置にあっても、光補償型放電灯点灯装置として用い、且つ始動器内蔵型放電灯を使用すると、経時により始動性能が低下した放電灯等では冷間始動に長時間を有する場合があった。
【特許文献1】特開平10−334725号公報
【特許文献2】特開平9−50890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は始動性に優れた光補償型放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが始動器内蔵型放電灯の始動性について詳細に検討を行った結果、前記特開平9-50890号公報のように外部始動器の起動条件を安定器温度に依存させた場合、始動性能の低下した放電灯等では冷間始動時には大きな始動エネルギーを発生できる外部始動器が起動せず、さらに長時間点灯された白熱灯の熱により一層始動特性が低下し、さらには温度上昇により内部始動器もOff作動してしまうことによる始動不能を生じることが明らかとなった。
【0007】
前記課題を解決するために本発明にかかる光補償型放電灯点灯装置は、一定温度以下で始動操作時に高圧パルスを発生する内蔵始動器を有した放電灯と、前記放電灯の点灯操作後、放電灯が点灯し所定光量に達するまでの期間に点灯する白熱灯と、を有する光補償型放電灯点灯装置において、
前記放電灯に点灯電力を供給する安定器と、
放電灯外に配置され、点灯操作から一定の遅延時間経過後に高圧パルスを発生する外部始動器と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記光補償型放電灯点灯装置において、遅延時間は60秒以上であることが好適である。
また、前記光補償型放電灯点灯装置において、外部始動器は安定器内に内設され、パルス発生用のコイルを安定器のチョークコイルと兼用することが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる光補償型放電灯点灯装置は、前述したように点灯操作後、一定時間放電灯が点灯しない場合には高エネルギーの始動パルスを発生できる外部始動器を起動させることとしたので、冷間始動時、再始動時ともに良好な始動性能を得ることができ、特に経時等により始動性能の低下した放電灯も短時間での点灯が可能となる。無論、遅延時間を設けたことにより内部始動器、外部始動器の同時起動による点灯装置ないし放電灯への過負荷は最低限に抑制される。
【0010】
このように本発明によれば、各種点灯装置、例えば光補償型点灯装置および外部始動器を有していない普及型点灯装置で使用することができ汎用性に優れた始動器内蔵型放電灯の特性を充分に発揮させつつ、隣接する白熱灯の熱により始動環境が好ましいとはいえない光補償型点灯装置にあっても外部始動器による良好な始動性も期待することが可能となる。この結果、始動器内蔵型放電灯の汎用性がさらに拡大される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態にかかる光補償型放電灯点灯装置10の概略構成を示す。
同図において、点灯装置10は、外部始動器12が内設された安定器14と、制御器16と、を含む。
また、逆円錐型の投光器18内には放電灯20と白熱灯22が併設されている。
【0012】
前記安定器14へは、商用電源24より電力供給されており、該安定器14は制御器16を介して放電灯20へ点灯電力を供給する。
また、商用電源24からは同じく制御器16を介して白熱灯22に点灯電力を供給可能である。
【0013】
そして、前記制御器16は、点灯装置10が点灯操作により商用電源24に接続されると、放電灯26のランプ電流を検知しつつ白熱灯22を点灯し、ランプ電流が検知(放電灯26が点灯)されてから一定時間(例えば3分間程度)経過したら白熱灯22への点灯電力供給を停止する。
なお、本実施形態において、放電灯20はFEC及びバイメタルスイッチを含む内部始動器26を備えている。
【0014】
本実施形態にかかる光補償型放電灯点灯装置10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
まず、点灯装置10が商用電源24に接続(点灯操作)されると、図2(A)に示されるように制御器16は白熱灯22を点灯させる。一方、安定器14は放電灯20へ電力供給は行うが、外部始動器12はこの時点でまだ起動しない。
そして、放電灯20への電力供給により内部始動器26が起動し、高圧パルスを発生させランプを点灯する。
【0015】
この点灯に伴う放電灯20の温度上昇により内部始動器26のバイメタルスイッチがOffし、内部始動器26による高圧パルスは停止される。
さらに、白熱灯22は放電灯20の点灯後一定時間の経過により消灯する為、充分な光量を得た放電灯20のみにより投光が行われることとなる。
【0016】
このように冷間点灯時には、内部始動器26が直ちに起動するが、外部始動器14は起動しないため、両始動器からの高圧パルスが重畳し点灯装置10ないし放電灯20へ過大な負担を与えることがない。なお、外部始動器14の起動遅延時間は、定格の放電灯を内部始動器で点灯させるに充分な時間であり、好ましくは5秒以上、さらに好ましくは60秒以上である。
【0017】
これに対し、瞬時停電等により放電灯20が立ち消えすると、白熱灯22が点灯し、光補償を行うとともに、放電灯20の再始動を行わなければならない。
しかしながら、投光器18内の温度は高く、しかも白熱灯22の点灯により冷却速度はきわめて遅い。したがって、放電灯20の内部始動器26はそのバイメタルスイッチがOffのままであり、起動しない。
そこで、一定の遅延時間(例えば60秒間)後、外部始動器12が起動し、高圧パルスの発生を開始するので、放電灯20の再始動が行われることとなる。
【0018】
以上のように、本実施形態にかかる点灯装置によれば、外部始動器の起動に遅延時間を設けることで、冷間始動時には内部始動器を、再始動時には外部始動器を用いて放電等の点灯操作を行うこととしたので、いずれの場合にも短時間で放電灯の始動を行うことが出来、しかも内部始動器、外部始動器の同時起動による装置への過負荷を抑制することができる。
また、周知のように立ち消え−再始動時には放電灯の温度が高く点灯しにくいため、外部始動器は内部始動器に比較し大きなエネルギーを供給できるように構成されている。
【0019】
一方、放電灯も経時とともに冷間始動にも時間がかかるようになる。この場合、前記特開平9−50890に示される構成では、安定器の温度は事実上上昇せず、大きなエネルギーを供給できる外部始動器は起動し得ない。しかも、放電灯の内部始動器が始動を試みている期間も白熱灯は点灯しつづけ、投光器内部の温度が上昇し、場合によっては内部始動器のバイメタルスイッチがOffし、点灯不能になる。
【0020】
すなわち、図3(A)に示すように、冷間始動時にも、放電灯の未点灯期間には白熱灯が点灯しているため、投光器内温度は上昇を続け、始動性の低下した放電灯はさらに始動しにくくなり、場合によっては投光器内温度が内部始動器のバイメタルスイッチOff温度を超えてしまい、内部始動器によるパルス発生は停止する。この間にも安定器温度は上がらないため、従来装置では外部始動器は起動しない。
【0021】
しかしながら、図3(B)に示すように、本発明によれば放電灯の始動開始後一定の遅延時間(例えば60秒間)経過することにより、投光器内温度、安定器温度に関わらず外部始動器が起動し、高エネルギーのパルスが放電灯に供給される。この結果、経時等により始動特性の多少悪化した放電灯であっても適切に点灯することができる。
このように、本発明では一定の遅延時間後には安定器の温度に関わらず外部始動器が起動する為、その大きな始動エネルギーにより点灯しにくい放電灯の点灯が適切に行われる。
【0022】
図4は本実施形態にかかる制御器16の構成が示されている。
同図に示すように、制御器16はランプ電流検出回路50と、電子タイマー52と、信号反転素子54と、トライアック(スイッチング素子)56とを含む。そして、ランプ電流が検出されていない間、トライアック56はOn作動を継続し白熱灯22へ点灯電力を供給する。そして、ランプ電流検出回路50によりランプ電流が検出されてからの時間を電子タイマー52がカウントし、一定時間、例えば3分間経過すると、タイマー52は信号反転素子54へ指示を与え、トライアック56をOff作動させて白熱灯22を消灯する。このタイマー52によるカウント時間は、本実施形態においては、放電灯20が点灯してから光量が最大値の70%程度となる期間を設定している。なお、制御器16は、放電灯20が立ち消えした場合には、ランプ電流が検出されなくなる為、トライアック56はOnし、白熱灯の点灯が再開される。
【0023】
図5は本実施形態にかかる安定器14及び外部始動器16の構成が示されている。
同図に示すように、安定器14はチョークコイル14aを有し、また外部始動器12は前記コイル14aの中間タップc1に接続されたパルス停止機能付スタータ60と、バイパスコンデンサ62と、時定数設定用抵抗64とを有している。
そして、スタータ60は電源投入後一定時間(例えば1分間)発振せず、その後にコイル14aをパルストランスとして利用し高エネルギーの高圧パルスを発生する。なお、本実施形態においては汎用されるスタータに遅延タイマー回路を組み込んだものである。
このように本実施形態にかかる外部始動器16によれば、安定器14aのコイルをパルス発生用コイルに兼用する為、小型でしかも高エネルギーのパルスを発生することができる。
【0024】
図6は本発明の第二実施形態にかかる光補償型放電灯点灯装置が示されており、前記第一実施形態と対応する部分には符号100を加えて示し説明を省略する。
本実施形態において特徴的なことは、外部始動器112及び安定器114が投光器118内に収納されていることである。
【0025】
本実施形態においては、特に前記図5に示すように安定器のコイルを外部始動器のパルスコイルとすることできわめて有効に小型化を図ることができる。
なお、本発明は特に再始動に時間を要する金属蒸気放電灯に適用することが好適であり、周囲温度30℃、密閉全面ガラス付、HIDランプ:360W−FEC始動器内蔵セラミックメタルハライドランプ、白熱灯:500W−ハロゲンランプ、印加パルス:電圧4〜5kV,1回/半サイクル、半値幅:1μsec、外部始動器の遅延時間は1分間の条件で、光補償型放電灯点灯装置ではない他の点灯装置とほぼ同じ時間(約30分)で再始動することができた。また、外部始動器を有していない従来の光補償型放電灯点灯装置では再始動に至らなかった。

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる光補償型放電灯点灯装置の概略構成の説明図である。
【図2】第一実施形態にかかる装置の始動、再始動時の動作の説明図である。
【図3】第一実施形態にかかる装置で始動特性の悪化した放電灯を冷間点灯した場合の始動性の説明図である。
【図4】本発明にかかる制御器の説明図である。
【図5】本発明にかかる外部始動器及び安定器の説明図である。
【図6】本発明の第二実施形態にかかる光補償型放電灯点灯装置の概略構成の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
10,110 放電灯点灯装置
12,112 外部始動器
14,114 安定器
16,116 制御器
18,118 投光器
20,120 放電灯
22,122 白熱灯
26,126 内部始動器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定温度以下で点灯操作時に高圧パルスを発生する内蔵始動器を有した放電灯と、前記放電灯の点灯操作後、放電灯が点灯し所定光量に達するまでの期間に点灯する白熱灯と、を有する光補償型放電灯点灯装置において、
前記放電灯に点灯電力を供給する安定器と、
放電灯外に配置され、点灯操作から一定の遅延時間経過後に高圧パルスを発生する外部始動器と、
を備えたことを特徴とする光補償型放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1記載の光補償型放電灯点灯装置において、遅延時間は60秒以上であることを特徴とする光補償型放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の光補償型放電灯点灯装置において、外部始動器は安定器内に内設され、パルス発生用のコイルを安定器のチョークコイルと兼用することを特徴とする光補償型放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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