説明

光記録媒体、光記録媒体の製造方法、露光装置及び画像形成装置

【課題】容器内に充填されたホログラム記録材料からなる記録層を備えた光記録媒体であって、樹脂製の容器及び記録層の両方が製造工程で変形や変質されにくい光記録媒体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】シクロオレフィンポリマーを含んで構成された容器70と、この容器70内に充填されたホログラム記録材料からなる記録層60Aと、を備える光記録媒体80Aとする。シクロオレフィンポリマーを含んで構成された容器70に、重合により結着樹脂を生成するモノマー成分、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含む感光性組成物の前駆体を充填し、容器70内に充填された前記前駆体を加熱処理して、前記モノマー成分を重合させて前記結着樹脂を生成し、前記容器70内に充填された感光性組成物からなる記録層を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体、光記録媒体の製造方法、露光装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2枚の光透過性支持体の間に、光情報を3次元的に記録する厚さ100μm〜2mmの光情報記録層が介設された光情報記録媒体であって、前記2枚の光透過性支持体の外側両面に、放射線硬化樹脂からなる保護層が形成されていることを特徴とする光情報記録媒体が記載されている。
【0003】
特許文献2には、光カチオン重合性化合物(A)、バインダーポリマー(B)、光重合開始剤(C)、及び増感色素(D)を配合して体積型ホログラム記録用感光性組成物を調製する方法であって、前記光カチオン重合性化合物(A)として、予め沸点以下の温度で加熱処理を施したものを用いることを特徴とする体積型ホログラム記録用感光性組成物の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−039131号公報
【特許文献2】特開2010−134402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、容器内に充填されたホログラム記録材料からなる記録層を備えた光記録媒体であって、樹脂製の容器及び記録層の両方が製造工程で変形や変質されにくい光記録媒体及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、本発明の光記録媒体を用いた露光装置と、当該露光装置を用いた画像形成装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために各請求項に記載の発明は、下記構成を備えている。
【0007】
請求項1に記載の発明は、シクロオレフィンポリマーを含んで構成された容器と、前記容器内に充填されたホログラム記録材料からなる記録層と、を備える光記録媒体である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記ホログラム記録材料は、結着樹脂、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含む感光性組成物であり、前記結着樹脂がポリウレタン樹脂である、請求項1に記載の光記録媒体である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記記録層に体積ホログラムが記録された、請求項1又は2に記載の光記録媒体である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、シクロオレフィンポリマーを含んで構成された容器に、重合により結着樹脂を生成するモノマー成分、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含む感光性組成物の前駆体を充填し、容器内に充填された前記前駆体を加熱処理して、前記モノマー成分を重合させて前記結着樹脂を生成し、前記容器内に充填された感光性組成物からなる記録層を生成する、光記録媒体の製造方法である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記結着樹脂がポリウレタン樹脂であり、前記前駆体を80℃以上で加熱処理する、請求項4に記載の光記録媒体の製造方法である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、複数の発光素子が第1の方向に並ぶように配列された基板と、前記基板上に配置された光記録媒体であって、シクロオレフィンポリマーを含んで構成された容器と、当該容器内に充填されたホログラム記録材料からなる記録層とを含み、前記記録層に、前記複数の発光素子の各々から射出された射出光が、対応するホログラム素子により回折及び集光されて、被露光面上に前記第1の方向に並ぶ集光点列が形成されるように、前記複数の発光素子の各々に対応する複数のホログラム素子が多重記録された光記録媒体と、を備える露光装置である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記ホログラム記録材料は、結着樹脂、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含む感光性組成物であり、前記結着樹脂がポリウレタン樹脂である、請求項6に記載の露光装置である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の露光装置と、前記露光装置と作動距離だけ離間して配置されると共に、前記露光装置に対して前記第1の方向と交差する第2の方向に相対移動され、前記露光装置により画像データに応じて走査露光されて、画像が書き込まれる感光体と、を含む画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の各請求項に記載の発明によれば、以下の効果がある。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、容器内に充填されたホログラム記録材料からなる記録層を備えた光記録媒体において、本発明を用いない場合に比べ、樹脂製の容器及び記録層の両方が製造工程で変形や変質されにくい光記録媒体を提供できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、他のホログラム記録材料を用いた場合に比べて、製造工程における容器及び記録層の変形や変質をさらに抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、入射角選択性及び波長選択性が高い体積ホログラムにより、高い回折効率を得ることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、樹脂製の容器内に充填されたホログラム記録材料からなる記録層を備えた光記録媒体の製造方法において、ホログラム記録材料が結着樹脂、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含む感光性組成物であっても、本発明を用いない場合に比べて、容器及び記録層の両方が製造工程で変形や変質されにくい。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、容器内の前駆体を加熱処理してポリウレタン樹脂を生成するが、この場合に80℃以上で加熱処理しても、容器及び記録層の両方が製造工程で変形や変質がされにくい。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、本発明を用いない場合に比べ、樹脂製の容器及び記録層の両方が製造工程で変形や変質されにくく、高い透過率と優れた記録特性とを有する光記録媒体を用いて、複数のホログラム素子の各々を精度よく記録することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、他のホログラム記録材料を用いた場合に比べて、製造工程における容器及び記録層の変形や変質をさらに抑制することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、本発明を用いない場合に比べ、樹脂製の容器及び記録層の両方が製造工程で変形や変質されにくい光記録媒体を用いて、複数のホログラム素子の各々を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る光記録媒体の構成の一例を示す概略斜視図である。
【図2】(A)〜(C)は図1に示す光記録媒体の製造工程を示す概略断面図である。
【図3】光記録媒体にホログラムが記録される様子を示す模式的な断面図である。
【図4】(A)及び(B)はホログラムが記録される原理を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。
【図7】図6に示すLEDプリントヘッドの回折光学系の構成の一例を示す概略斜視図である。
【図8】(A)はホログラム素子の概略形状を示す斜視図である。(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向に沿った断面図である。(C)はLEDプリントヘッドの主走査方向に沿った断面図である。
【図9】回折光学系を構成するホログラム素子が記録される様子を示す模式的な断面図である。
【図10】回折光学系を構成するホログラム素子から回折光が取り出される様子を示す模式的な断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの部分的構成の一例を示す分解斜視図である。
【図12】(A)及び(B)は参考例で用いるガラス製容器の形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0026】
<光記録媒体の構造>
図1は本発明の実施の形態に係る光記録媒体の構成の一例を示す概略斜視図である。図1に示すように、光記録媒体80Aは、ガラスや樹脂等で構成された長尺状で且つ平板状の容器70と、容器70内に収納されたホログラム記録層60Aと、を備えている。ホログラム記録層60Aは、ホログラム記録材料を容器70内に充填することで、容器70内に収納されている。ホログラム記録層60Aは、容器70により保護されている。
【0027】
容器70の形状が、光記録媒体80Aの形状となる。即ち、光記録媒体80Aは、容器70と同様に、長尺状で且つ平板状の形状を備えている。なお、以下では、図1に示すように、長尺状で且つ平板状の光記録媒体80Aについて説明するが、光記録媒体80Aの形状はこれに限定される訳ではない。ディスク状やカード状など、用途に応じて光記録媒体80Aの形状を変更してもよい。
【0028】
また、光記録媒体80Aは、ホログラムが記録される前の光記録媒体であり、符号Aを付して、ホログラムが記録された光記録媒体80と区別する。同様に、ホログラム記録層60Aは、ホログラムが記録される前の記録層であり、符号Aを付して、ホログラムが記録されたホログラム記録層60と区別する。
【0029】
容器70は、主走査方向に延びる長尺状で且つ平板状の第1の平板部72と、ホログラム記録層60Aを挟んで第1の平板部72と対向する長尺状で且つ平板状の第2の平板部74と、側面を形成して第1の平板部72と第2の平板部74とを連結する連結部76と、を備えている。換言すれば、第1の平板部72、第2の平板部74及び連結部76で囲まれた薄い中空部分に、ホログラム記録材料が充填されて、ホログラム記録層60Aが構成されている。
【0030】
容器70の第1の平板部72及び第2の平板部74の表面は、光学品質に形成されている。ここで「光学品質」とは、無色透明性、低複屈折性、平坦性を指している。また、第1の平板部72及び第2の平板部74の厚さdcは、0.2mm〜0.5mmの範囲であり、0.1mm〜1.0mmの範囲としてもよい。
【0031】
容器70は、主基材としてシクロオレフィンポリマーを含んで構成されている。シクロオレフィンポリマー(略称:COP)とは、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセンなどのシクロオレフィンを開環重合することにより製造される透明な樹脂である。一般に、COPは、透明性が高いという特徴の外に、耐熱性に優れると共に、吸湿性が低いという特徴を有している。
【0032】
後述する通り、容器70は、光記録媒体80Aの製造工程において、ホログラム記録材料を生成する感光性組成物の前駆体と共に加熱処理される。主基材としてCOPを含む容器70は、この加熱処理によって、容器70自体が変形、変質する等の不具合を生じない。また、主基材としてCOPを含む容器70は、この加熱処理によって、ホログラム記録材料を発泡、白濁させる等の不具合を生じない。
【0033】
従来、容器を構成する材料としては、ショット社製の「AF45(登録商標)」、コーニング社製の「イーグル2000(登録商標)」等のガラス材料が用いられてきた。樹脂製の容器は、ガラス製の容器に比べて強度が高く、破損し難い。また、主基材としてCOPを含む容器70は、樹脂製の容器であっても、ガラス製の容器と同様に、記録光に対する透明性が高く、記録光に対する透過率が高く、加熱処理で変質しない程度の耐熱性を有し、吸水性が低いという光学要素としての要件を満たす。
【0034】
容器70に使用するCOPとしては、ホログラムを記録する記録光やホログラムを再生する再生光に対し透明なCOPが用いられる。容器70に使用するCOPとしては、ノルボルネン系COP、テトラシクロドデセン系COP等が挙げられる。耐熱性向上の観点から、シクロオレフィンの重合の際に、種々の共重合成分を添加しても良い。共重合成分の例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンや、他のノルボルネン系モノマーやテトラシクロドデセン系モノマー材料などを用いてもよい。
【0035】
また、成形時に、以下の材料を混合して容器70を作成しても良い。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルブテ−1−エン、ポリ(4−メチルペンテ−1−エン)、ポリブテ−1−エンおよびポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロプレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体およびアクリロニトリル/スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリフタル酸アリル、ポリアリルメラミン、上記モノマーの共重合体、例えばエチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシドおよびビスグリシジルエーテルの重合体、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレンおよびポリオキシメチレン/エチレンオキシド共重合体、ポリフェニルオキシド重合体、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11およびナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリ−1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンナフタレートビベンゾエート(PENBB)、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、セルロース、プロピオン酸セルロースおよびセルロースエーテルおよびタンパク質)。また、異なるCOP材料を成形時に混合することで容器70を作成しても良い。
【0036】
COPとして、日本ゼオン社製の「ゼオネックス(登録商標)」「ゼオノア(登録商標)」等、市販のCOP材料を用いてもよいし、三井化学社製の「APEL(登録商標)」JSR社製の「アートン(登録商標)」などの市販のシクロオレフィン共重合樹脂を用いても良い。これら市販の材料に他のCOP材料を成形時に混合することで容器70を作成しても良い。「ゼオネックス(登録商標)」「ゼオノア(登録商標)」はCOPとしてノルボルネン系開環重合体を、「APEL(登録商標)」はテトラシクロドデセンとエチレンのコポリマーを含み、「アートン(登録商標)」はジシクロペンタジエンとメタクリル酸エステルを材料としている。
【0037】
また、容器70は、COP以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、フィラー等の成分を含んで構成されていてもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられる。紫外線吸収剤としては、ヒンダードフェノール系などが挙げられる。離型剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族エステル、芳香族エステル、トリグリセライド類、フッ素系界面活性剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらの添加剤は、それぞれ単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。添加剤の使用量は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0038】
COPはペレットとして供給されている。容器70は、COPペレットを熱成形することにより作製してもよい。COP以外の成分は、COPペレットと共に熱成形される。例えば、成形型を用いた射出成形等により、容器70を一体成形してもよい。また、容器70を複数の部材に分けて、各部材を射出成形等により作製してもよい。
【0039】
ホログラム記録層60Aは、ホログラムを永続的に記録保持することが可能なホログラム記録材料から構成されている。体積ホログラムを記録するホログラム記録材料としては、ラジカル重合型の感光性組成物が用いられる。ラジカル重合型の感光性組成物は、結着樹脂、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含んで構成されている。このように高分子材料を含む「感光性組成物」は、一般にフォトポリマーと総称される。なお、感光性組成物の詳細については後述する。
【0040】
ホログラム記録層60Aの厚さdrは、体積ホログラムを記録する場合には、1000μm〜5000μmの範囲であり、記録層が厚いほど厚い体積ホログラムが記録される。また、光利用効率向上の観点から、ホログラム記録層60Aの厚さdrは、200μm〜1000μmの範囲としてもよい。なお、容器70の第1の平板部72と第2の平板部74との離間距離が、ホログラム記録層60Aの厚さdrとなる。
【0041】
<光記録媒体の製造方法>
次に、光記録媒体の製造方法について説明する。図2(A)〜(C)は、図1に示す光記録媒体の製造工程を示す概略断面図である。本実施の形態の光記録媒体80Aでは、容器70内に感光性組成物を充填するために、加熱処理により硬化する熱硬化性の感光性組成物を用いている。
【0042】
熱硬化性の感光性組成物は、容器内に充填する前は「液状」の感光性組成物の前駆体である。この前駆体を容器に充填した後に加熱処理すると、前駆体が硬化して「固体」の感光性組成物を生成する。具体的には、感光性組成物の前駆体は、結着樹脂の代わりに「重合により結着樹脂を生成するモノマー成分」を含んでいる。前駆体を加熱処理することで、モノマー成分が重合して結着樹脂を生成する。
【0043】
以下、光記録媒体の製造する製造方法の各工程を順に説明する。
まず、図2(A)に示すように、COPを含んで構成された容器70を用意する。容器70は、第1の平板部72、第2の平板部74及び連結部76で囲まれた中空部分を有している。また、図示はしていないが、容器70には、液状の前駆体を注入するための注入口が設けられている。
【0044】
次に、図2(B)に示すように、容器70内に感光性組成物の前駆体を注入する。「液状」の感光性組成物の前駆体60Bは、供給装置61から容器70に供給され、図示しない注入口から容器70内に注入される。これにより、容器70の中空部分は、前駆体60Bで満たされる。
【0045】
次に、図2(C)に示すように、容器70内に充填された前駆体60Bを、容器70と共に加熱処理する。加熱処理は、大気圧下または減圧下、加圧下で行われてもよい。また加熱処理を行う際の雰囲気としては、大気を用いてもよく、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを用いてもよい。またこれらの雰囲気の中間的な組成であってもよい。前駆体60Bを加熱処理することで、モノマー成分が重合して結着樹脂を生成する。これにより、前駆体60Bが固体化して、感光性組成物からなるホログラム記録層60Aを有する光記録媒体80Aが完成する。
【0046】
前駆体60Bが充填された容器70を加熱処理すると、容器70内で重合反応が起きる。主基材としてCOPを含む容器70を用いた場合には、容器70内で重合反応が行われても、容器70自体が変形、変質する等の不具合や、ホログラム記録材料が発泡、白濁する等の不具合を生じない。
【0047】
加熱温度及び加熱時間は、感光性組成物の前駆体が熱硬化するのに必要な温度及び時間である。例えば、結着樹脂がポリウレタン樹脂の場合には、約80℃の温度で数時間(2〜6時間)加熱する。加熱温度が高過ぎたり、加熱時間が長過ぎると、製造工程が非効率化する。一方、加熱温度が低過ぎたり、加熱時間が短過ぎると、前駆体の熱硬化が不十分となる。
【0048】
加熱温度を下げる又は加熱時間を短縮するには、重合促進剤の添加量を増やす手段が取られるが、添加量を増やすことで結着樹脂(バインダポリマー)が必要以上に硬化すると、光重合性化合物(モノマー)の移動を阻害する。これは記録時に重要な屈折率差を下げる要因となるため、適切な添加量と加熱温度、加熱時間が重要である。そのため、一般に、加熱温度は50℃〜100℃の範囲であるが、80℃〜90℃の範囲が好ましく、また、加熱時間は、2〜10時間の範囲であり、4〜6時間の範囲が好ましい。
【0049】
<ホログラムの記録原理>
次に、感光性組成物のホログラム記録原理について説明する。図3は光記録媒体にホログラムが記録される様子を示す模式的な断面図である。また、図4(A)及び(B)はホログラムが記録される原理を示す模式図である。
【0050】
図3に示すように、記録時には、ホログラム記録層60Aに、第1の平板部72又は第2の平板部74を介して、コヒーレント光である信号光と参照光とが照射される。コヒーレント光の照射には、半導体レーザ等のレーザ光源が用いられる。信号光と参照光とは、ホログラム記録層60Aの同じ領域で交差するように照射される。ホログラム記録層60A内で、信号光と参照光とが干渉する。信号光と参照光との干渉により得られる干渉縞(強度分布)に応じて、記録層60Aの屈折率や透過率などの物性が変化する。これにより、記録層60Aの厚さ方向にわたって、干渉縞がホログラムとして記録される。
【0051】
図3に示す例では、信号光と参照光とがホログラム記録層60Aに対し同じ側から照射されて、光記録媒体80Aには透過型のホログラムが記録される。ホログラムの記録方法は、これに限定される訳ではなく、従来公知の記録方法でホログラムを記録することができる。例えば、信号光と参照光とをホログラム記録層60Aに対し異なる側から照射して、反射型のホログラムを記録してもよい。また、信号光と参照光とをホログラム記録層60Aに同軸で照射して、同軸記録によりホログラムを記録してもよい。
【0052】
ラジカル重合型の感光性組成物は、結着樹脂、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含んで構成されている。図4(A)に示すように、この感光性組成物からなるホログラム記録層60A内には、結着樹脂(バインダポリマー)と光重合性化合物(モノマー)とが一様に分布している。図4(B)に示すように、ホログラム記録層60A内で信号光と参照光の干渉による干渉縞が形成されると、光重合性化合物(モノマー)の分布に偏りを生じる。
【0053】
干渉縞明部においては、増感色素が励起されて電子を放出する。放出された電子は、重合開始剤に移動してラジカルを発生させる。発生したラジカルは、光重合性化合物に移動して重合が開始される。干渉縞明部において重合反応が進むと、干渉縞暗部に存在する光重合性化合物が、矢印で示したように干渉縞明部に移動してくる。
【0054】
その結果、干渉縞明部では、光重合性化合物の割合が多い構成となる。一方、干渉縞暗部では、光重合性化合物の割合が少なく、結着樹脂の割合が多い構成となる。結着樹脂と光重合性化合物とでは屈折率が異なるので、光重合性化合物の分布の偏りにより屈折率差が生じる。例えば、干渉縞暗部の屈折率n1に対し、干渉縞明部の屈折率はn2(≠n1)となる。この屈折率差が、干渉縞としてホログラム記録層60A内に記録される。
【0055】
<感光性組成物>
ここで、本実施の形態の光記録媒体80Aにおいて、ホログラム記録材料として使用される「感光性組成物」について説明する。この「感光性組成物」は、ラジカル重合型の感光性組成物であると共に、加熱処理により硬化する熱硬化性の感光性組成物である。上述した通り、「感光性組成物」は、結着樹脂、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含んで構成されている。
【0056】
結着樹脂は、熱重合性化合物、熱重合性基をもつポリマーまたはオリゴマーの熱重合もしくは熱架橋性基をもつポリマーまたはオリゴマーの熱架橋により、製造工程における加熱処理によって生成される。結着樹脂としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。製造工程での加熱処理において容器70やホログラム記録層60Aの変形や変質を抑制する観点から、結着樹脂としてポリウレタン樹脂を用いてもよい。
【0057】
ポリウレタン樹脂は、ウレタン結合によりモノマーを重合させた高分子化合物である。通常、複数の水酸基を有するポリオールと、2つ以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとの重付加反応によりウレタン結合を生成して、ポリウレタン樹脂を合成する。また、イソシアネート基を保護基により保護したブロックイソシアネートを使用することもできる。更に、重合度を調整するために、必要に応じてモノオールや単官能イソシアネートも併せて使用することができる。このように、感光性組成物の前駆体は、モノマー成分として「ポリオール」と「イソシアネート」とを含んでおり、前駆体を加熱処理することで、これらが重合してポリウレタン樹脂を生成する。
【0058】
生成されたポリウレタン樹脂としては、脂肪族ポリオールと脂肪族イソシアネートから生成する脂肪族ポリウレタン樹脂、芳香族ポリオールと芳香族イソシアネートから生成する芳香族ポリウレタン樹脂、ポリオールとイソシアネートがそれぞれ脂肪族、芳香族またはその反対であるポリウレタン樹脂が挙げられる。結着樹脂に要求される光重合性モノマーの昜移動性を実現するためには、脂肪族ポリウレタン樹脂が好適に用いられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
光重合性化合物は、重合開始剤により発生したラジカルにより、ラジカル重合する官能基を有する化合物である。分子内に1つ以上のラジカル重合性不飽和二重結合を有するものであれば特に制限はないが、例えば、メタアクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基を有する化合物を用いることができる。アクリレート及びメタアクリレートは、共に単官能のものも多官能のものも使用することができる。ビニル基を有する化合物としては、単官能ビニル化合物及び多官能ビニル化合物が挙げられる。なお、これらラジカル重合性化合物の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
重合開始剤は、電子移動によりラジカルを発生する化合物である。重合開始剤としては、過酸化エステル類、有機過酸化物類、ベンゾイン・ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、キサントン類、芳香族スルホニウム塩、アゾ化合物等、公知の光重合開始剤を単独、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
増感色素は、光励起されて電子を放出する化合物であり、光重合開始剤を増感するものであれば特に限定されない。例えば、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が用いられる。また、ホログラム記録後の後工程で分解し、無色透明になるものが好ましい。増感色素は、単独、又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0062】
<画像形成装置>
図5は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。この装置は、電子写真方式で画像を形成する画像形成装置であり、発光ダイオード(LED)を光源に用いたLED方式の露光装置(LEDプリントヘッド、略称「LPH」)を搭載している。LEDプリントヘッドは、機械的な駆動が不要という利点を有する。
【0063】
また、この画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタであり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成部としての画像形成プロセス部10、画像形成装置の動作を制御する制御部30、及び画像読取装置3と例えばパーソナルコンピュータ(PC)2等の外部装置とに接続され、これらの装置から受信された画像データに対して予め定めた画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0064】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔で並列に配置される4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを備えている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの各々は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。なお、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを、適宜「画像形成ユニット11」と総称する。
【0065】
各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定めた電位で一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光する露光装置としてのLEDプリントヘッド(LPH)14、LPH14によって得られた静電潜像を現像する現像器15、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するクリーナ16を備えている。
【0066】
従来のLPHは、LEDアレイとロッドレンズアレイとで構成されていた。ロッドレンズアレイには、セルフォック(登録商標)など、屈折率分布型のロッドレンズが用いられていた。各LEDから射出された光は、ロッドレンズにより集光されて、感光体ドラム上に正立等倍像が結像される。本実施の形態に係る画像形成装置は、「ロッドレンズ」に代えて「ホログラム素子」を用いたLPHを備えている。
【0067】
LPH14は、感光体ドラム12の軸線方向の長さと略同じ長さの長尺状のプリントヘッドである。LPH14には、長さ方向に沿って複数のLEDがアレイ状(列状)に配列されている。LPH14は、その長さ方向が感光体ドラム12の軸線方向を向くように、感光体ドラム12の周囲に配置されている。本実施の形態のLPH14は、感光体ドラム12の表面から作動距離だけ離間して配置されている。本実施の形態のLPH14は、従来のLPHに比べて作動距離が長い。このため、感光体ドラム12の周方向における占有幅が小さく、感光体ドラム12の周囲の混雑が緩和されている。
【0068】
また、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト21、各画像形成ユニット11の各色トナー像を中間転写ベルト21に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール22、中間転写ベルト21上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール23、及び二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器25を備えている。
【0069】
次に上記画像形成装置の動作について説明する。
まず、画像形成プロセス部10は、制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、画像読取装置3やPC2から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インターフェースを介して各画像形成ユニット11に供給される。
【0070】
例えば、イエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により予め定めた電位で一様に帯電された感光体ドラム12の表面が、画像処理部40から得られた画像データに基づいて発光するLPH14により露光されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。即ち、LPH14の各LEDが画像データに基づいて発光することで、感光体ドラム12の表面が主走査されると共に、感光体ドラム12が回転することで副走査されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11M,11C,11Kにおいて、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像が形成される。
【0071】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、図1の矢印A方向に回転動作する中間転写ベルト21上に、一次転写ロール22により順次静電吸引されて転写される(一次転写)。中間転写ベルト21上には、重畳されたトナー像が形成される。重畳トナー像は、中間転写ベルト21の移動に伴って二次転写ロール23が配設された領域(二次転写部)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。
【0072】
そして、二次転写部にて二次転写ロール23により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される(二次転写)。重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト21から剥離され、搬送ベルト24により定着器25まで搬送される。定着器25に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器25によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙トレー(不図示)に排出される。
【0073】
<LEDプリントヘッド(LPH)>
図6は本実施の形態に係る露光装置としてのLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。図6に示すように、LEDプリントヘッド(LPH14)は、複数のLED50を備えたLEDアレイ52と、複数のLED50の各々に対応して設けられた複数のホログラム素子54を備えたホログラム素子アレイ56と、を備えている。
【0074】
図6に示す例では、LEDアレイ52は6個のLED50〜50を備え、ホログラム素子アレイ56は6個のホログラム素子54〜54を備えている。なお、各々を区別する必要がない場合には、LED50〜50を「LED50」と総称し、ホログラム素子54〜54を「ホログラム素子54」と総称する。
【0075】
複数のLED50の各々は、LEDチップ53上に配列されている。複数のLED50が配列されたLEDチップ53は、LED50の各々を駆動する駆動回路(図示せず)と共に、長尺状のLED基板58上に実装されている。LEDチップ53は、複数のLED50が主走査方向に並ぶように位置合せをして、LED基板58上に配置されている。これにより、LED50の各々は、感光体ドラム12の軸線方向と平行な方向に沿って配列される。
【0076】
LED50の配列方向が「主走査方向」である。また、LED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50(発光点)の主走査方向の間隔(発光点ピッチ)が一定間隔となるように配列されている。また、感光体ドラム12の回転により副走査が行われるが、「主走査方向」と直交する方向を「副走査方向」として図示している。また、以下では、LED50の配置される位置を、適宜「発光点」と称する。
【0077】
複数のLED50の各々は、対応するホログラム素子54側に光を射出するように、発光面をホログラム素子54側に向けて、LEDチップ53上に配置されている。LED50の「発光光軸」は、LED50からLED基板58と直交する方向(法線方向)に射出される光の光軸である。LED基板58は、LED50や駆動回路が実装される側の表面が「主面」である。この主面の法線方向が、LED基板58の法線方向である。従って、LED50の「発光光軸」は、LED基板58の法線方向を向いている。図示した通り、発光光軸は、上記の主走査方向及び副走査方向の各々とも直交する。
【0078】
なお、図2においては、数個のLED50が1列に配列された1個のLEDチップ53で構成されたLPH14を、概略的に図示しているに過ぎない。後述するように、実際の画像形成装置では、主走査方向の解像度に応じて、数百個のLEDチップ53を配列することで、数千個のLED50が配列されている(図11参照)。
【0079】
また、複数のLEDチップ53は、1次元状に配置してもよく、複数列に分けて2次元状に配置してもよい。例えば千鳥状に配置する場合には、複数のLEDチップ53は、主走査方向に並ぶように一列に配置されると共に、副走査方向に一定間隔ずらして二列に配置される。複数のLEDチップ53単位に分けられていても、複数のLED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50の主走査方向の間隔が、略一定の間隔となるように配列されている。
【0080】
LEDチップ53としては、複数の自己走査型LED(SLED:Self-scanning LED)が配列されたSLEDチップを用いてもよい。SLEDチップは、スイッチのオン・オフを二本の信号線によって行い、各SLEDを選択的に発光させて、データ線を共通化する。このSLEDチップを用いることで、基板上での配線数が少なくて済む。
【0081】
LPH14は、感光体ドラム12の軸線方向の長さと略同じ長さの長尺状のプリントヘッドである。従って、図7に示すように、光記録媒体80の主走査方向の長さLpは、紙幅よりも長い。光記録媒体80の厚さDは、約2.0mmとしてもよい。例えば、記録層60の厚さを1.0mm、容器70の第1の平板部72及び第2の平板部74の厚さを、各々0.5mmとする。また、光記録媒体80の副走査方向の幅Wは、10mm以下としてもよい。なお、これら光記録媒体80の厚さD及び幅Wの値は一例であって、これらに限定されるものではない。記録するホログラムの厚さや径、感光体ドラム周囲の混雑の程度等に応じて、適宜変更してもよい。
【0082】
LED基板58上には、容器70内にホログラム記録層60(以下、適宜「記録層60」という。)が収納された光記録媒体80が配置されている。容器70は記録層60を保護する保護層としても機能する。長尺状で且つ平板状の光記録媒体80は、離間層64を介して、LED基板58上に重なるように配置されている。ホログラム素子アレイ56は、光記録媒体80の記録層60内に形成されている。光記録媒体80は、LEDチップ53から予め定めた高さだけ離間された位置に、図示しない保持部材によって保持されている。
【0083】
ホログラム記録層60には、複数のLED50〜50の各々に対応して、主走査方向に沿って複数のホログラム素子54〜54が形成されている。ホログラム素子54は干渉縞を記録した回折格子であり、光記録媒体80は「回折光学系」として機能する。ホログラム素子54の各々は、互いに隣接する2つのホログラム素子54の主走査方向の間隔(中心点の間隔)が、上記のLED50の主走査方向の間隔と、略同じ間隔となるように配列されている。即ち、互いに隣接する2つのホログラム素子54が互いに重なり合うように、径の大きいホログラム素子54が多重記録されている。また、複数のホログラム素子54の各々は、互いに異なる形状を有していてもよい。
【0084】
離間層64は、LEDチップ53と光記録媒体80とを離間する。離間層64は、空気や透明樹脂等、LED50から射出される光に透明な材料で構成されている。なお、容器70は、離間層64とは屈折率の異なる樹脂材料で構成されて、離間層64との間に界面を形成する。
【0085】
離間層64を低屈折率の空気層とし、容器70を高屈折率の樹脂層とする等、容器70を離間層64よりも屈折率が高い材料で構成してもよい。また、離間層64を高屈折率の透明樹脂層とし、容器70を低屈折率の樹脂層とする等、容器70を離間層64よりも屈折率が低い材料で構成してもよい。離間層64を高屈折率層とした場合には、隣接するLED50との屈折率差が小さくなり、光取り出し効率が向上する。
【0086】
なお、図示は省略するが、LPH14は、ホログラム素子54で生成された回折光が感光体ドラム12の方向に射出されるように、ハウジングやホルダー等の保持部材により保持されて、図5に示す画像形成ユニット11内の予め定めた位置に取り付けられている。なお、LPH14は、調整ネジ(図示せず)等の調整手段により、回折光の光軸方向に移動するように構成されていてもよい。ホログラム素子54による結像位置(焦点面)が、感光体ドラム12表面上に位置するように、上記の調整手段により調整する。また、ホログラム記録層60上に、カバーガラスや透明樹脂等で保護層が形成されていてもよい。保護層によりゴミの付着を防止する。
【0087】
<LEDプリントヘッドの動作>
LED50を発光させると、LED50から射出された光(インコヒーレント光)は、発光点からホログラム径まで拡がる拡散光の光路を通る。LED50の発光により、ホログラム素子54に参照光が照射されたのと略同じ状況となる。
【0088】
図6に示すように、LEDアレイ52とホログラム素子アレイ56とを備えたLPH14では、6個のLED50〜50の各々から射出された各光は、容器70の第1の平板部72を通過して、対応するホログラム素子54〜54のいずれかに入射する。ホログラム素子54〜54は、入射された光を回折して回折光を生成する。ホログラム素子54〜54の各々で生成された各回折光は、拡散光の光路を避けて、その光軸が発光光軸と角度θを成す方向に射出され、感光体ドラム12の方向に集光される。
【0089】
射出された各回折光は、感光体ドラム12の方向に収束して、数cm先の焦点面に配置された感光体ドラム12の表面で結像される。即ち、複数のホログラム素子54の各々は、対応するLED50から射出された光を回折して集光し、感光体ドラム12表面に結像させる光学部材として機能する。
【0090】
感光体ドラム12の表面には、各回折光による微小なスポット62〜62が、主走査方向に一列に配列されるように形成される。換言すれば、LPH14により、感光体ドラム12が主走査される。なお、各々を区別する必要がない場合には、スポット62〜62を「スポット62」と総称する。
【0091】
一般に、インコヒーレント光(非干渉性の光)を射出するLEDを用いるLPHでは、コヒーレンス性が低下してスポットぼけ(いわゆる色収差)が生じ、微小スポットを形成することは容易ではない。これに対して、本実施の形態のLPH14は、ホログラム素子の入射角選択性及び波長選択性が高く、高い回折効率が得られる。このためバックグラウンドノイズ(背景雑音)が低減され、信号光が精度よく再生されて、輪郭の鮮明な微小スポット62(集光点)が形成される。
【0092】
<ホログラム素子の形状>
図8(A)はホログラム素子の概略形状を示す斜視図である。図8(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向の断面図である。図8(C)はLEDプリントヘッドの主走査方向に沿った断面図である。
【0093】
図8(A)に示すように、ホログラム素子54の各々は、一般に厚いホログラム素子と称される体積ホログラムである。光記録媒体80のホログラム記録層60には、複数のLED50に対応する複数のホログラム素子54が、主走査方向に並ぶように多重記録されている。上述した通り、ホログラム素子は、入射角選択性及び波長選択性が高く、回折光の出射角度(回折角)を高精度で制御して、輪郭の鮮明な微小スポットを形成する。回折角の精度はホログラムの厚さが厚いほど高くなる。
【0094】
図8(A)、図8(B)に示すように、ホログラム素子54の各々は、ホログラム記録層60の表面側を底面とし、LED50側に向かって収束する円錐台状に形成されている。この例では円錐台状のホログラム素子について説明するが、ホログラム素子の形状はこれには限定されない。例えば、円錐、楕円錐、楕円錐台等の形状としてもよい。円錐台状のホログラム素子54の直径は、底面で最も大きくなる。この円形の底面の直径を「ホログラム径r」とする。なお、「ホログラム厚さh」は、ホログラム素子54の厚さである。
【0095】
ホログラム素子54の各々は、LED50の主走査方向の間隔よりも大きな「ホログラム径r」を有している。例えば、LED50の主走査方向の間隔は30μmであり、ホログラム径rは2mm、ホログラム厚さhは250μmである。従って、図6及び図8(C)に示すように、互いに隣接する2つのホログラム素子54は、互いに大幅に重なり合うように形成されている。複数のホログラム素子54は、例えば、球面波シフト多重により多重記録されている。なお、複数のホログラム素子54の各々は、同一波長で記録してもよく、複数の波長を組み合わせて(波長多重)記録してもよい。
【0096】
<ホログラム素子の記録方法>
次に、ホログラム素子の記録方法について説明する。図9は、ホログラム記録層にホログラムが記録される様子、即ち、ホログラムを記録する前の光記録媒体80Aのホログラム記録層60Aに、回折光学系を構成するホログラム素子54が形成される様子を示す模式的な断面図である。感光体ドラム12の図示は省略し、結像面である表面12Aだけを図示する。
【0097】
図9に示すように、表面12Aに結像される回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。同時に、ホログラム記録層60Aを通過する際に、発光点から所望のホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。コヒーレント光の照射には、半導体レーザ等のレーザ光源が用いられる。
【0098】
信号光と参照光とは、ホログラム記録層60Aに対し、同じ側(LED基板58が配置される側)から照射される。信号光と参照光との干渉により得られる干渉縞(強度分布)が、ホログラム記録層60Aの厚さ方向にわたって記録される。これにより、透過型のホログラム素子54が形成された光記録媒体80が得られる。ホログラム素子54は、面方向及び厚さ方向に干渉縞の強度分布が記録された体積ホログラムである。この光記録媒体80を、LEDアレイ52が実装されたLED基板58上に取り付けることで、LPH14が作製される。
【0099】
また、ホログラムを記録する前の光記録媒体80AをLEDアレイ52が実装されたLED基板58上に取り付けた後に、位相共役記録によりホログラムを記録してもよい。光記録媒体80Aを取り付けた後でホログラムを記録するので、LED50と対応するホログラム素子54との距離が確保されると共に、LED50と対応するホログラム素子54との高い位置決め精度は不要になる。位相共役記録では、上記と同じ光路を通る信号光と参照光とが、LED基板58等が配置されていない側、即ち、ホログラム記録層60Aの表面側から照射される。この場合も同様に、透過型のホログラム素子54が形成された光記録媒体80が得られる。
【0100】
<ホログラム素子の再生方法>
次に、ホログラム素子の再生方法について説明する。図10は、ホログラムが再生される様子、即ち、光記録媒体80に記録されたホログラム素子54から、回折光が取り出される様子を示す模式的な断面図である。図10に示すように、インコヒーレント光源であるLED50を発光させると、LED50から射出された光は発散して拡がる。
この現象は「ランバーシアン配光」と称される。同じくインコヒーレント光源である電界発光素子(EL)においても、同様の現象が観測される。
【0101】
LED50を発光させると、LED50から射出された光の一部は、参照光の光路を通る。これにより、光記録媒体80に記録されたホログラム素子54に参照光が照射されたのと略同じ状況となる。点線で図示する参照光の照射により、実線で図示するように、ホログラム素子54から信号光と同じ光が再生され、回折光として射出される。射出された回折光は収束して、数cmの作動距離で感光体ドラム12の表面12Aに結像される。表面12Aにはスポット62が形成される。
【0102】
なお、回折光は、回折光光軸が発光光軸と角度θを成す方向に回折される。感光体ドラム12が参照光の光路の外側に位置するように、発光光軸と回折光光軸とが成す角度θが設定されている。このため、回折されずにホログラム素子54を透過する「0次光」が発生したとしても、この0次光は感光体ドラム12には照射されない。
【0103】
<LPHの具体的な構成>
次に、LPHのより具体的な構成について説明する。実際の画像形成装置では、主走査方向の解像度に応じて、数百個のLEDチップ53を配列することで、数千個のLED50が配列されている。例えば、A3幅まで印字可能な画像形成装置において、1インチ当たり1200スポットの解像度を得るためには、LED基板58上には、14848個のLED50が21μmの間隔で配列される。これに応じて、感光体ドラム12の表面12Aには、21μmの間隔で主走査方向に一列に並ぶように14848個のスポット62が形成される。
【0104】
図11は、本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの部分的構成の一例を示す分解斜視図である。図11の分解斜視図は、図6に概略的に図示したLPHの構成をより具体的に図示したものであり、実際の画像形成装置に使用される構成に近い。なお、図示は省略するが、ホログラム記録層60は容器70内に収納されて、光記録媒体80としてLED基板58上に配置されている。
【0105】
上述した通り、実際の画像形成装置のLPH14には、主走査方向の解像度に応じて数千個のLED50が配列されている。複数のLEDチップ53を、LED基板58上に、複数列に分けて2次元状に配列することでLPH14が構成されている。図11に示すLPH14では、複数のLEDチップ53は、主走査方向に沿って配置されると共に、副走査方向に一定間隔ずらして二列に配置されて、LED基板58上に千鳥状に配列されている。
【0106】
図11に示す分解斜視図では、LPH14の一部として、4個のLEDチップ53A、53A、53B、及び53Bが、A列及びB列の2列で千鳥状に配置されている様子を示す。以下、これらを区別する必要がない場合には、「LEDチップ53」と総称する。4個のLEDチップ53の各々には、複数(図11では9個)のLED50が予め定めた間隔(LEDピッチ)で一次元状に配列されている。そして、4個のLEDチップ53の各々は、LED50の配列方向が主走査方向を向くように配置されている。
【0107】
主走査方向に沿ったA列のLEDチップ53A及び53Aと、B列のLEDチップ53B及び53Bとは、A列上のLED50AとB列上のLED50Bとが、副走査方向に一定間隔で離間されるように配置されている。LED50AとLED50Bとが副走査方向に離間される間隔は、LED50の主走査方向の間隔と略同じ間隔又は数倍(1倍〜9倍)程度の間隔とされている。
【0108】
複数のLEDチップ53に搭載された複数のLED50の各々に対応して、ホログラム記録層60には複数のホログラム素子54が形成されている。感光体ドラム12の表面12Aには、複数のLED50の各々に対応して、複数のスポット62が主走査方向に沿って予め定めた間隔(スポットピッチ)で一列に形成される。図11に示す例では、36個のLED50に対応して36個のスポット62が形成される。
【0109】
図11に示すLPH14では、A列のLED50AとB列のLED50Bとを、一列に並ぶ複数のスポット62に交互に対応付けている。従って、LEDチップ53のLEDピッチが「P」でも、A列及びB列の2列を交互に用いれば、主走査方向のLEDピッチ「P」は「P/2」となる。LEDピッチと同じ間隔でスポット62が形成されると仮定すると、スポットピッチ「P」も「P/2」となる。例えば、1200dpiの解像度を得たい場合であっても、600dpiのLEDチップ53を用いればよいことになる。
【0110】
<その他の変形例>
なお、上記では、複数のLEDを備えたLEDプリントヘッドを備える例について説明したが、LEDに代えて電界発光素子(EL)、レーザダイオード(LD)等、他の発光素子を用いてもよい。発光素子の特性に応じてホログラム素子を設計すると共に、インコヒーレント光による不要露光を低減することで、インコヒーレント光を射出するLEDやELを発光素子として用いた場合でも、コヒーレント光を射出するLDを発光素子として用いた場合と同様に、輪郭が鮮明な微小スポットが形成される。
【0111】
また、上記では、球面波シフト多重により複数のホログラム素子を多重記録する例について説明したが、所望の回折光が得られる多重方式であれば、他の多重方式で複数のホログラム素子を多重記録してもよい。また、複数種類の多重方式を併用しても良い。他の多重方式としては、参照光の入射角度を変えながら記録する角度多重記録、参照光の波長を変えながら記録する波長多重記録、参照光の位相を変えながら記録する位相多重記録等が挙げられる。
【0112】
また、上記では、画像形成装置がタンデム型のデジタルカラープリンタであり、その各画像形成ユニットの感光体ドラムを露光する露光装置としてのLEDプリントヘッドについて説明したが、露光装置により感光性の画像記録媒体を像様露光することで画像が形成される画像形成装置であればよく、上記の応用例には限定されない。例えば、画像形成装置は、電子写真方式のデジタルカラープリンタには限定されない。銀塩方式の画像形成装置や光書込み型電子ペーパー等の書き込み装置等にも本発明の露光装置を搭載してもよい。また、感光性の画像記録媒体は、感光体ドラムには限定されない。シート状の感光体や写真感光材料、フォトレジスト、フォトポリマー等の露光にも、上記応用例に係る露光装置を適用してもよい。
【実施例】
【0113】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0114】
<参考例1>
(容器の準備)
ホログラム記録材料を充填するガラス製の容器を準備した。図12(A)及び(B)は参考例で用いるガラス製容器の形状を示す模式図である。容器は、幅Wが20mm、厚さDが2.0mm、長さ10cmの外形を有する。互いに対向する平板部の厚さdcは0.5mm、対向する2つの平板部の離間距離(=記録層の厚さ)は1.0mmである。ガラス材料としては、コーニング社製の商品名「イーグル2000(登録商標)」を用いた。ガラス製の容器は、以下の方法で作製した。
【0115】
上記のガラス製の容器は、図12(A)及び(B)に示すように、2枚のガラス板を対向させ、対向するガラス板の間に同じガラス製のスペーサを挟んで、接着剤で接着することで作製される。ガラス板は、幅20mm、長さ100mm、厚さ0.5mmである。スペーサは、厚さおよそ1mm、幅5mm、長さ10cmである。スペーサの厚さと接着剤の厚さの合計が、記録層の厚さとなるので、この合計の厚さが1mmになるように作製する。
【0116】
接着剤としては、協立化学産業社製の商品名「ワールドロックNo.8840LSL(登録商標)」を用いる。スペーサとガラス板とは、スペーサに接着剤を塗布して、ガラス板と密着させ、紫外線を照射して硬化させることで接着させる。接着剤の塗布は、樹脂製シリンジに接着剤を充填し、遠心法等により気泡を除いた後、空気圧によりシリンジ内の液体を吐出する装置であるエアパルス方式ディスペンサーを接続し、シリンジ先端に装着したニードルから加圧により適量を塗布する方式で行う。
【0117】
(光記録媒体の作製)
樹脂製シリンジに液状の感光性組成物の前駆体を充填し、遠心法等により気泡を除いた後、空気圧によりシリンジ内の液体を吐出する装置であるエアパルス方式ディスペンサーを接続した。シリンジにはガラス製の中空容器の開口部に挿入可能なニードルが装着されており、加圧により適量をニードルから中空容器内に注入した。
【0118】
感光性組成物の前駆体は、結着樹脂であるポリウレタン樹脂を生成するモノマー成分(ポリオール及びイソシアネート)、光重合性化合物、重合開始剤、及び増感色素を含んでいる。前駆体の実施例は以下のとおりである。
【0119】
−溶液A−
・ヘキサメチレンジイソシアネート:三井化学社製、商品名「タケネート700(登録商標)」・・・5.9g
・9,9’ビフェニルフルオレンEO変性アクリレート:大阪ガスケミカル社製、商品名「オグソールEA0200(登録商標)」・・・1.73g
・ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム:チバ・ジャパン社製、商品名「イルガキュア784(登録商標)」・・・0.25g
【0120】
−溶液B−
・ポリプロピレンオキサイドトリオール:三井化学社製、商品名「アクトコールT−300(登録商標)」・・・8.08g
・ポリエチレングリコール:東京化成工業社製・・・7.16g
・サンアプロ社製、商品名「U−CAT SA102(登録商標)」・・・0.30g
【0121】
上記のように調整し混合した溶液A, 溶液Bから各々7.88g、9.36gを取り出し、ガラス容器中で10分間混合したものが、前駆体となる。なお、各成分の調整から液の混合、中空容器内への注入までは、湿度10%以下の空気を供給したグローブボックス内で行った。
【0122】
次に、容器内に充填された感光性組成物の前駆体を、容器ごとオーブンに入れて加熱処理した。加熱雰囲気は空気とした。加熱温度は80℃、加熱時間は6時間とした。加熱処理後は、オーブンから出して室温(25℃)まで自然に冷却した。感光性組成物の前駆体が熱硬化して、容器内にホログラム記録層が形成された。これにより、参考例1の光記録媒体を得た。
【0123】
(光記録媒体の評価)
参考例1の光記録媒体について、容器や記録層の変形や変質の有無を、目視と透過率の測定とにより評価した。容器の目視による評価では、容器の変形を生じていない場合を「○」、容器の変形を生じている場合を「×」とした。記録層の目視による評価では、記録層が透明な場合を「○」、記録層に白濁が見られる場合を「△」、記録層に気泡が発生している場合を「×」とした。また、透過率の測定は、以下の条件で行った。
【0124】
透過率は、波長780nmのレーザ光源を光記録媒体に対して垂直に照射し、光記録媒体を透過するレーザ光の強度を測定したものである。光記録媒体を介さない状態の光強度を100%としている。
【0125】
また、参考例1の光記録媒体について、実際にホログラムを記録して、光記録媒体の記録特性を評価した。なお、ここでいう記録特性とは、光記録媒体にホログラムを記録する際に重要な、記録感度および最大回折効率の値である。これらの記録特性からホログラムの記録・再生が可能か否か判断される。ホログラムの記録・再生は、以下の条件で行った。ホログラムの記録・再生が可能な場合を「○」、記録・再生が不可能な場合を「×」とした。
【0126】
評価結果を下記の表1にまとめて示す。表1に示すように、ガラス製の容器を用いた参考例1の光記録媒体では、加熱処理による容器及び記録層の変形や変質は見られず、62%と高い透過率が得られた。また、参考例1の光記録媒体では、ホログラムの記録・再生を問題なく行うことができた。
【0127】
【表1】

【0128】
<実施例1>
(容器の作製)
主基材としてCOPを含む樹脂材料を用いて、ホログラム記録材料を充填する容器を、射出成形により作製した。容器は、幅Wが20mm、厚さDが2mm、長さ10cmの外形を有する。互いに対向する平板部の厚さdcは0.5mm、対向する2つの平板部の離間距離(=記録層の厚さ)は1.0mmである。主基材としてCOPを含む樹脂材料としては、日本ゼオン社製の「ゼオネックス(登録商標)」を用いた。射出成形条件は、シリンダー温度280℃、金型温度130℃、射出圧力1000kgf/cm、射出速度70cm/秒とした。
【0129】
(光記録媒体の作製)
射出成形で得られたCOP製の中空容器に、参考例1と同様にして、液状の感光性組成物の前駆体を注入した。次に、容器内に充填された感光性組成物の前駆体を加熱処理して、容器内にホログラム記録層を有する光記録媒体とした。これにより、実施例1の光記録媒体を得た。
【0130】
(光記録媒体の評価)
実施例1の光記録媒体について、参考例1と同様にして、容器や記録層の変形や変質の有無、光記録媒体の記録特性を評価した。評価結果を表1にまとめて示す。表1に示すように、COP製の容器を用いた実施例1の光記録媒体では、加熱処理による容器及び記録層の変形や変質は見られず、69.1%と高い透過率が得られた。また、実施例1の光記録媒体では、ガラス製の容器を用いた参考例1の光記録媒体と同様に、ホログラムの記録・再生を問題なく行うことができた。
【0131】
<比較例1>
主基材としてPC(ポリカーボネート)を含む樹脂材料を用いて容器を作製した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の光記録媒体を得た。主基材としてPCを含む樹脂材料としては、三菱エンジニアリングプラスチックス社製の商品名「ユーピロン(登録商標)」を用いた。「ユーピロン(登録商標)」は、PCとして、粘度平均分子量20000〜30000のPCを含んでいる。
【0132】
比較例1の光記録媒体について、参考例1と同様にして、容器や記録層の変形や変質の有無、光記録媒体の記録特性を評価した。評価結果を表1にまとめて示す。表1に示すように、PC製の容器を用いた比較例1の光記録媒体では、加熱処理により記録層が白濁しているのが確認された。透過率は9.61%まで低下した。また、比較例1の光記録媒体の記録特性は「×」であった。
【0133】
<比較例2>
主基材としてPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を含む樹脂材料を用いて容器を作製した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の光記録媒体を得た。主基材としてPMMAを含む樹脂材料としては、三菱レイヨン社製の商品名「アクリペットVH(登録商標)」を用いた。「アクリペットVH(登録商標)」は、質量平均分子量120000のPMMAを含んでいる。
【0134】
比較例2の光記録媒体について、参考例1と同様にして、容器や記録層の変形や変質の有無、光記録媒体の記録特性を評価した。評価結果を表1にまとめて示す。表1に示すように、PMMA製の容器を用いた比較例2の光記録媒体では、加熱処理により容器が変形し、記録層内に気泡が発生しているのが確認された。透過率は42.95%まで低下した。また、比較例2の光記録媒体の記録特性は「×」であった。
【0135】
<比較例3>
主基材としてPS(ポリスチレン)を含む樹脂材料を用いて容器を作製した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の光記録媒体を得た。主基材としてPSを含む樹脂材料としては、東洋スチレン社製の商品名「トーヨースチロールGP(登録商標)」を用いた。「トーヨースチロールGP(登録商標)」は、重量平均分子量350000のPSを含んでいる。
【0136】
比較例3の光記録媒体について、参考例1と同様にして、容器や記録層の変形や変質の有無、光記録媒体の記録特性を評価した。評価結果を表1にまとめて示す。表1に示すように、PS製の容器を用いた比較例3の光記録媒体では、加熱処理により容器が著しく変形した。このため、透過率や記録特性の評価は行わなかった。
【0137】
<比較例4>
主基材としてPET(ポリエチレンテレフタレート)を含む樹脂材料を用いて容器を作製した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の光記録媒体を得た。主基材としてPETを含む樹脂材料としては、ユニチカ社製の商品名「G−PET(登録商標)」を用いた。「G−PET(登録商標)」は、融点255℃のPET樹脂である。
【0138】
比較例3の光記録媒体について、参考例1と同様にして、容器や記録層の変形や変質の有無、光記録媒体の記録特性を評価した。評価結果を表1にまとめて示す。表1に示すように、PET製の容器を用いた比較例4の光記録媒体では、加熱処理により容器が著しく変形した。このため、透過率や記録特性の評価は行わなかった。
【符号の説明】
【0139】
2 PC
3 画像読取装置
10 画像形成プロセス部
11 画像形成ユニット
12 感光体ドラム
12A 表面
13 帯電器
14 LEDプリントヘッド
15 現像器
16 クリーナ
21 中間転写ベルト
22 一次転写ロール
23 二次転写ロール
24 搬送ベルト
25 定着器
30 制御部
40 画像処理部
50 LED
52 LEDアレイ
53 LEDチップ
54 ホログラム素子
56 ホログラム素子アレイ
58 LED基板
60 ホログラム記録層
60A ホログラム記録層(記録前)
60B 感光性組成物の前駆体
61 供給装置
62 スポット
64 離間層
70 容器
72 第1の平板部
74 第2の平板部
76 連結部
80 光記録媒体
80A 光記録媒体(記録前)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンポリマーを含んで構成された容器と、
前記容器内に充填されたホログラム記録材料からなる記録層と、
を備える光記録媒体。
【請求項2】
前記ホログラム記録材料は、結着樹脂、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含む感光性組成物であり、前記結着樹脂がポリウレタン樹脂である、請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記記録層に体積ホログラムが記録された、請求項1又は2に記載の光記録媒体。
【請求項4】
シクロオレフィンポリマーを含んで構成された容器に、重合により結着樹脂を生成するモノマー成分、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含む感光性組成物の前駆体を充填し、
容器内に充填された前記前駆体を加熱処理して、前記モノマー成分を重合させて前記結着樹脂を生成し、
前記容器内に充填された感光性組成物からなる記録層を生成する、
光記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記結着樹脂がポリウレタン樹脂であり、前記前駆体を80℃以上で加熱処理する、
請求項4に記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項6】
複数の発光素子が第1の方向に並ぶように配列された基板と、
前記基板上に配置された光記録媒体であって、シクロオレフィンポリマーを含んで構成された容器と、当該容器内に充填されたホログラム記録材料からなる記録層とを含み、前記記録層に、前記複数の発光素子の各々から射出された射出光が、対応するホログラム素子により回折及び集光されて、被露光面上に前記第1の方向に並ぶ集光点列が形成されるように、前記複数の発光素子の各々に対応する複数のホログラム素子が多重記録された光記録媒体と、
を備える露光装置。
【請求項7】
前記ホログラム記録材料は、結着樹脂、光重合性化合物、重合開始剤及び増感色素を含む感光性組成物であり、前記結着樹脂がポリウレタン樹脂である、請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の露光装置と、
前記露光装置と作動距離だけ離間して配置されると共に、前記露光装置に対して前記第1の方向と交差する第2の方向に相対移動され、前記露光装置により画像データに応じて走査露光されて、画像が書き込まれる感光体と、
を含む画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−173540(P2012−173540A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35982(P2011−35982)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】