光記録媒体
【課題】400nm付近の光で記録したときに十分な記録再生特性が得られる光記録媒体の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含有する記録層を備える。
式中、R1〜R8は水素、アルキル基、アリール基又はアルコキシカルボニル基を示し、R1〜R8は置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基である。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含有する記録層を備える。
式中、R1〜R8は水素、アルキル基、アリール基又はアルコキシカルボニル基を示し、R1〜R8は置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により情報を記録する光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光記録媒体の更なる高密度記録を実現するために記録再生光の短波長化が試みられており、具体的には、青色半導体レーザー光(波長405nm)のような400nm付近の短波長域の光の使用が検討されている。しかし、従来のCDやDVDに用いられてきた色素材料は、上記波長域の光では情報の記録に必要な屈折率変化を生じ得ないため、そのままでは適用が困難である。そこで、上記波長域の記録再生光に合わせた色素として、下記特許文献1に示すような材料が開発されている。
【特許文献1】特開2002−172865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の色素を記録層に用いた光記録媒体は上記の短波長域の光で記録したときの記録再生特性が必ずしも十分ではなく、この点で更なる改善が求められていた。
【0004】
そこで、本発明は、400nm付近の光で記録したときに十分な記録再生特性が得られる光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光記録媒体は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する記録層を備える。
【0006】
【化1】
【0007】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基を示し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうち少なくとも1個は置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基である。
【0008】
上記本発明の光記録媒体は、記録層を構成する光記録材料として、トリアゾール骨格を有する化合物においてアクリルアミド基を導入した式(1)の構造を有する色素を用いたことにより、400nm付近の光で記録したときに十分な記録再生特性が得られるものとなった。なお、(メタ)アクリルアミド基とは、アクリルアミド基又はメタクリルアミド基を意味する。
【0009】
記録再生特性向上の効果をより顕著なものとするため、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基であることが好ましい。また、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個がt−ブチル基又はt−オクチル基であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、400nm付近の光で記録したときに十分な記録再生特性が得られる光記録媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明の光記録媒体の好適な一実施形態を示す断面図である。図1に示す光記録媒体1は、基板2の一面上(図中下側)に、反射層6、記録層3、誘電体層4及び光透過層5がこの順で積層された積層構造を有する。光記録媒体1は追記型の光記録ディスクであり、青色半導体レーザー光の照射によって情報を記録及び再生するために用いられる。
【0013】
記録層3は、上記式(1)で表される化合物(以下、場合により「トリアゾール化合物」という。)の1種又は2種以上を主成分として形成されている。式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基を示す。
【0014】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうち少なくとも1個は置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基(以下「アクリルアミド含有基」という。)である。これらの中でもR1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個がアクリルアミド含有基であることが好ましい。特に、R1がアクリルアミド含有基であることが好ましい。
【0015】
アクリルアミド含有基は、例えば下記一般式(2)で表される。式(2)中、R9はアルキル基(好ましくは炭素数1〜4である直鎖または分岐アルキル基)を示し、R10は水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を示す。R9としてはメチル基が特に好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうちアクリルアミド含有基以外のもののから選ばれる少なくとも1個は、分岐アルキル基であることが好ましい。特に、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が分岐アルキル基であることが好ましい。分岐アルキル基としては、t−ブチル基及びt−オクチル基(2,4,4,−トリメチルペンタン−2−イル基)が挙げられる。
【0018】
また、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうちアクリルアミド含有基以外のもののから選ばれる少なくとも1個は、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基であることが好ましい。この場合、R1、R2、R3及びR4のうち1個がアクリルアミド含有基、1個が分岐アルキル基であり、R5、R6、R7及びR8のうち1個が置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基であることが特に好ましい。アルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基が挙げられる。
【0019】
より具体的には、記録層3は下記一般式(10)で表されるトリアゾール化合物を含有することが好ましい。
【0020】
【化3】
【0021】
式(10)中、R9及びR10は上記式(2)中のR9及びR10とその好適な態様も含めて同義であり、R11は分岐アルキル基を示し、R12は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基又は水素原子を示す。式(10)のトリアゾール化合物としては、下記一般式(11)で表されるものがある。
【0022】
【化4】
【0023】
式(1)のトリアゾール化合物は、当業者には理解されるように、例えば下記一般式(3)で表されるトリアゾール化合物と、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとを硫酸等の酸触媒の存在下で反応させるより合成することができる。
【0024】
【化5】
【0025】
式(3)中、R5、R6、R7及びR8は式(1)におけるR5、R6、R7及びR8とその好適な態様も含めて同義であり、R21、R22、R23及びR24は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基を示し、R21、R22、R23及びR24のうち少なくとも1個は水素原子である。式(3)のトリアゾール化合物は公知の方法で合成することが可能であり、市販品として入手可能なものもある。
【0026】
記録層3の厚さは、5〜100nmであることが好ましい。特に30〜70nmとすると、変調度と反射率とのバランスが良くなるため、より好ましい。この範囲外では、反射率が低下して、再生を行うことが困難となる傾向にある。また、グルーブ23に隣接する部分における記録層3の膜厚を100nm以上とすると、変調度と反射率とのバランスが悪化する傾向にある。
【0027】
記録層3は、例えば、上述のトリアゾール化合物を光記録材料として溶媒に溶解した光記録材料溶液を用いて形成される。光記録材料溶液の溶媒としては、アルコール、脂肪族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、ハロゲン化アルキル系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、アルコール又は脂肪族炭化水素系溶媒を含む溶媒が好ましい。
【0028】
アルコールとしては、フッ素化アルコール、アルコキシアルコール又はケトアルコールが好ましい。特に、ポリカーボネート基板上に記録層を形成する場合、フッ素化アルコールが好適である。
【0029】
光記録材料溶液は、溶媒中に光記録材料を投入し、必要に応じて加熱しながら、超音波処理等してこれを溶解することにより、調製できる。光記録材料溶液における光記録材料の濃度は、光記録材料溶液全体を基準として0.1〜10質量%であることが好ましい。光記録材料溶液は、光記録材料及び溶媒の他、必要に応じて、バインダー、分散剤、安定剤などを含有していてもよい。
【0030】
光記録材料溶液を用いて記録層3を形成させる場合、光記録材料溶液からなる溶液層を反射層6上に形成する工程の後、溶液層中の溶媒を除去して、光記録材料を含有する記録層3を形成させる。すなわち、光記録媒体1は、有機色素を含有する光記録材料を溶媒に溶解した光記録材料溶液からなる溶液層を基板2上に形成させる工程と、溶液層中の溶媒を除去して記録層3を形成させる工程とを備える製造方法によって製造することができる。溶液層は、スピンコーティング法、グラビア塗布法、スプレーコート法、ディップコート法などの方法で反射層6上に塗布することにより形成される。これらの中でも、スピンコート法が好ましい。
【0031】
基板2は、直径が64〜200mm程度、厚さが0.3〜1.6mm、好ましくは0.5〜1.3mm程度のディスク状の形状を有する。記録層3の基板2と反対側、すなわち光透過層5側からの光照射により情報の記録及びその再生が行われる。そのため、基板2は必ずしも光学的に透明である必要はない。具体的には、基板2を形成する材料としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種プラスチック材料等が好適に用いられる。あるいは、ガラス、セラミックス、金属等を用いてもよい。
【0032】
基板2の記録層3側の面には、溝状のグルーブGと、隣り合うグルーブG同士の間で相対的に高くなっている(光透過層5側の光記録媒体表面に近くなっている)部分であるランドLとを含む微細な凹凸パターンが形成されている。グルーブGは、通常、スパイラル状に延びた溝として形成されている。グルーブGの深さGd(ランドLの光透過層5側に最も突き出た部分からの深さ)は、好ましくは40〜150nmであり、より好ましくは60〜120nmである。グルーブGの深さGdをこのような範囲とすることによって、十分なトラッキング制御が可能となり、クロストークを抑制できる。グルーブGの深さGdが40nm未満であると、トラック追従のために必要なトラッキングエラー信号が小さくなる他、クロストークが大きくなったり、ウォブル信号のようなプリフォーマット信号が小さくなったりする傾向がある。一方、深さGdが150nmを超えると、ランドL及びグルーブGを高精度で形成することが難しくなるために、反射信号の低下や感度の低下を招き得る。
【0033】
グルーブ幅Gw(グルーブGの底から深さGdの1/2の高さにおけるグルーブGの幅)は、好ましくは110〜210nmであり、より好ましくは130〜190nmである。グルーブピッチGp(隣り合うグルーブG同士の間隔、例えば、隣り合うグルーブGの幅Gw方向における中心同士の間隔)は、例えば290〜350nmであり、好ましくは310〜330nmである。このような構成とすることによって、クロストークが十分に抑制される。
【0034】
上記のような凹凸パターンが形成された基板2は、プラスチック材料を用いる場合には、射出成形により作製できる。プラスチック材料以外の材料を用いる場合には、例えば、フォトポリマー法(2P法)によって基板2が成形される。
【0035】
記録層3の基板2側の面上、すなわち、記録層3に記録再生光が入射する側と反対側の面上には、反射層6が設けられている。反射層6の厚さは0.1〜100μmであることが好ましい。
【0036】
反射層6は、適度な反射率を得る等の目的で、記録層3の記録再生光が入射する側(入射面側)と反対側の面上に設けられている。反射層6は、例えば、金属又は合金から形成される。反射層6は、具体的には、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)又はこれらの少なくとも1種を含む合金から形成されることが好ましい。特に、Ag又はAgを含む合金、例えば、AIS(Ag−In−Sn)を用いることが、適切な反射率が得られるため好ましい。
【0037】
あるいは、反射層6を構成する材料として、樹脂、セラミックス、金属化合物等を用いることもできる。樹脂やセラミックスを用いる場合、反射層は、樹脂と、金属粒子及びセラミックス粒子から選ばれる1種又は2種以上の粒子とを含有するものであることが好ましい。金属化合物を用いる場合、金属化合物としてはアルコキシド、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩及びアセチルアセトン塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属化合物が好ましい。これら金属化合物中の金属としては、Ag、Al、Pt、In、Sn、Ni、Fe等が挙げられる。
【0038】
反射層6の厚さは、0〜200nmであることが好ましい。反射層6は、例えば、蒸着、スパッタ等の気相成長法や、溶液法により形成することができる。
【0039】
誘電体層4は、記録層3に密着して設けられている。誘電体層4は、記録層3を機械的、化学的に保護する保護層としての機能とともに、光学特性を調整する干渉層としての機能を有する。誘電体層4は記録層3の記録光及び再生光が入射する側に位置するため、405nmのレーザー光を透過させることが必要である。
【0040】
誘電体層4に用いられる材料としては、例えば、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe及びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物又はこれらの複合物が好適に用いられる。特に、光透過能の観点から、ZnS−SiO2、AlN、Ta2O3等が好ましい。これら誘電体層4は単層であってもよいし、複数の層を有していてもよい。誘電体層4は、例えば、イオンビームスパッタリング法、リアクティブスパッタリング法、RFスパッタリング法等の気相成長法によって形成することができる。
【0041】
誘電体層4上には、光透過層5が誘電体層4に密着して設けられている。光透過層5は単層であってもよいし、多層構造を有していてもよい。光透過層5は、記録光及び再生光に対して、光学的に透明で、反射が少なく、複屈折が小さい材料から形成されることが好ましい。具体的には、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、熱硬化型樹脂などが好適に用いられる。光透過層5は、例えば、紫外線硬化樹脂などの材料を含む塗布液を誘電体層4上に塗布してから塗膜を乾燥し、更に必要に応じて樹脂を硬化させることにより形成可能である。塗布の際には、スピンコート法、グラビア塗布法、スプレーコート法、ディップコート法などが適用可能である。このようにして形成される光透過層5の厚さはその材質に応じて適宜選択されるが、光透過能の観点からは、一般に1〜150μmであることが好ましい。
【0042】
光記録媒体1の記録層3に対して、405nmの記録光を光透過層5側からパルス状に照射することにより、情報を高密度に記録することが可能である。特に、記録層3のグルーブGに沿った部分に集光して情報の記録及び再生を行う、いわゆるin−groove方式で情報の記録及び再生を行うことが好ましい。
【0043】
本発明の光記録媒体は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の光記録媒体は、所謂HD−DVDとして知られる光記録媒体においても同様に用いることができる。この場合、光記録媒体は従来公知のDVDに相当する構成を適用すればよい。例えば、図1の光透過層5に相当する基板を用意し、これの一面上に直接記録層3を形成し、更にその上に反射層6及び基板2をこの順で積層した構成とすることができる。このような構成の光記録媒体において、記録及び再生を光透過層5に相当する基板の側から行う場合には、図1の実施形態におけるランドLがグルーブとして機能し、グルーブGがランドとして機能することになる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
1.トリアゾール化合物の合成
(実施例1)
温度計、攪拌機を取り付けた500mLのフラスコ中で2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチルフェノール25g(0.094モル)を97%濃硫酸50mLに溶解した。そこに、5〜10℃に保ちながらN−ヒドロキシメチルアクリルアミド11.34g(0.11モル)を少量ずつ2時間かけて加え、加え終わってから同温度で2時間攪拌し、さらに室温で4時間攪拌した。約300mLの氷水にその反応液を加え、析出物をろ別して充分に水洗し粗生成物を得た。この粗生成物をトルエン150mL及びイソプロピルアルコール50mLの混合液に加熱により溶解し、熱ろ過し、ろ液を冷却後析出した固形物をろ別して、下記化学式(1a)のトリアゾール化合物(N−((3−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)メチルアクリルアミド)を得た(収量20.2g、白色結晶、収率61.6%)。
【0046】
【化6】
【0047】
・融点:196.7〜197.1℃
・純度:99.2%(HPLC)
・UV−近紫外吸収スペクトル(図2):λmax339nm、εmax17600
・溶解度:IPA 0.2%、EC 0.7%、TFP 0.4%
UV−近紫外吸収スペクトルは、島津製作所社製の「UV−2450」を用い、250nm〜500nmの範囲で試料濃度10ppmで測定した。純度を求めるためのHPLC測定は、島津製作所社製の「LC−6A」を用い、カラムを「SUMIPAX ODS A−212 5μm」(商品名、住化分析センター社製、φ6mm×15cm)、温度を40℃、移動相をメタノール:水=95:5、流速を1.0mL/分として、検出波長250nmで行った。また、赤外吸収スペクトルをKBr法により測定した(図7)。
【0048】
(実施例2)
出発物質として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノールを用いた他は実施例1と同様にして、下記化学式(1b)のトリアゾール化合物(N−((3−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル)アクリルアミド)を得た(収量24.8g、白色結晶、収率72.5%)。
【0049】
【化7】
【0050】
・融点:201.6〜202.3℃
・純度:98.6%(HPLC)
・UV−近紫外吸収スペクトル(図3):λmax341nm、εmax17300
・溶解度:IPA 0.1%以下、EC 0.1%以下、TFP 0.25%
UV−近紫外吸収スペクトルは実施例1と同様の条件で測定した。純度を求めるためのHPLC測定は、移動相をメタノール:水=9:1とした他は実施例1と同様の条件で行った。また、赤外吸収スペクトルをKBr法により測定した(図8)。
【0051】
(実施例3)
出発物質として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノールを用いた他は実施例1と同様にして、下記化学式(1c)のトリアゾール化合物(N−((3−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)メチル)アクリルアミド)を得た(収量48.2g、白色結晶、収率73.9%)。
【0052】
【化8】
【0053】
・融点:129.4〜131.0℃
・純度:98.9%(HPLC)
・UV−近紫外吸収スペクトル(図4):λmax341nm、εmax16400
・溶解度:EC 0.1%以上
UV−近紫外吸収スペクトル測定及びHPLC測定は実施例1と同様の条件で行った。また、赤外吸収スペクトルをKBr法により測定した(図9)。
【0054】
(実施例4)
出発物質としてメチル2−(5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートを用いた他は実施例1と同様にして、下記化学式(1d)のトリアゾール化合物(メチル2−(3−(アクリルアミドメチル)−5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート)を得た(収量7.9g、黄色結晶、収率63.0%)。
【0055】
【化9】
【0056】
・融点:183.6〜184.2℃
・純度:95.7%(HPLC)
・UV−近紫外吸収スペクトル(図5):λmax352nm、εmax18600
・溶解度:EC 1%
UV−近紫外吸収スペクトルは実施例1と同様の条件で測定した。純度を求めるためのHPLC測定は、カラムを「Inertsil ODS−3 5μm」(商品名、ジーエルサイエンス社製、φ4.6mm×15cm)とし、移動相をアセトニトリル:水=8:2(リン酸0.3%)とした他は実施例1と同様の条件で行った。また、赤外吸収スペクトルをKBr法により測定した(図10)。
【0057】
(実施例5)
出発物質としてメチル2−(2−ヒドロキシ−5−(2,4,4,−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートを用いた他は実施例1と同様にして、下記化学式(1e)のトリアゾール化合物(メチル2−(3−(アクリルアミドメチル)−2−ヒドロキシ−5−(2,4,4,−トリメチルペンタン−2−イル)−フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート)を得た(収量2.15g、黄色結晶、収率46.3%)。
【0058】
【化10】
【0059】
・融点:175.2〜175.5℃
・純度:98.0%(HPLC)
・UV−近紫外吸収スペクトル(図6):λmax354nm、εmax18100
・溶解度:IPA 0.1%以下、EC 0.7%、TFP 1%
UV−近紫外吸収スペクトル測定及びHPLC測定は実施例4と同様の条件で行った。また、赤外吸収スペクトルをKBr法により測定した(図11)。
【0060】
2.光記録媒体の作製
実施例1〜5で合成したアゾ化合物をテトラフルオロプロパノール(TFP)に溶解して光記録材料溶液を調製した。一方、グルーブが形成されたポリカーボネート基板を準備し、このグルーブ面上に、スパッタリング法によりAIS(Ag−In−Sn合金)からなる反射層を形成した。
【0061】
次いで、基板上に形成された反射層上に、上記塗布液をスピンコート法により塗布し、乾燥して、基板上に記録層を形成した。その後、記録層上にスパッタリング法によりSiO2−ZnSからなる誘電層を形成した後、この誘電層上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線の照射により硬化させて基板を形成した。これにより、図1に示す光記録媒体と同様の構成を有する光記録媒体を得た。
【0062】
また、下記化学式(5)で表されるトリアゾール化合物を用いた他は実施例と同様にして、比較例の光記録媒体を作製した。
【0063】
【化11】
【0064】
3.光記録媒体のCNR測定
実施例及び比較例の各光記録媒体を光ディスク評価装置(商品名:DDU1000、パルステック社製)にセットした。そして、対物レンズのNA(開口数)を0.85とし、青色波長域(407nm)のレーザービーム記録ヘッド内の集光レンズで光透過側から集光して、in−groove方式で記録層に対して光記録を行った。このとき、2T信号の単一信号を入力した。光記録後の各光記録媒体について、記録層における未記録部分に波長407nmの再生光(0.3mW)を照射し、当該再生光のCNR(dB)を測定した。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、アクリルアミド基を導入したトリアゾール化合物を記録層に用いた実施例の光記録媒体は、十分な記録再生特性を示すことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る光記録媒体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】実施例1で合成した化合物のUV−近紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図3】実施例2で合成した化合物のUV−近紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図4】実施例3で合成した化合物のUV−近紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図5】実施例4で合成した化合物のUV−近紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図6】実施例5で合成した化合物のUV−近紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図7】実施例1で合成した化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図8】実施例2で合成した化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図9】実施例3で合成した化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図10】実施例4で合成した化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図11】実施例5で合成した化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1…光記録媒体、2…基板、3…記録層、4…誘電体層、5…光透過層、6…反射層、G…グルーブ、L…ランド。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により情報を記録する光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光記録媒体の更なる高密度記録を実現するために記録再生光の短波長化が試みられており、具体的には、青色半導体レーザー光(波長405nm)のような400nm付近の短波長域の光の使用が検討されている。しかし、従来のCDやDVDに用いられてきた色素材料は、上記波長域の光では情報の記録に必要な屈折率変化を生じ得ないため、そのままでは適用が困難である。そこで、上記波長域の記録再生光に合わせた色素として、下記特許文献1に示すような材料が開発されている。
【特許文献1】特開2002−172865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の色素を記録層に用いた光記録媒体は上記の短波長域の光で記録したときの記録再生特性が必ずしも十分ではなく、この点で更なる改善が求められていた。
【0004】
そこで、本発明は、400nm付近の光で記録したときに十分な記録再生特性が得られる光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光記録媒体は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する記録層を備える。
【0006】
【化1】
【0007】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基を示し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうち少なくとも1個は置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基である。
【0008】
上記本発明の光記録媒体は、記録層を構成する光記録材料として、トリアゾール骨格を有する化合物においてアクリルアミド基を導入した式(1)の構造を有する色素を用いたことにより、400nm付近の光で記録したときに十分な記録再生特性が得られるものとなった。なお、(メタ)アクリルアミド基とは、アクリルアミド基又はメタクリルアミド基を意味する。
【0009】
記録再生特性向上の効果をより顕著なものとするため、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基であることが好ましい。また、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基であり、且つ、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個がt−ブチル基又はt−オクチル基であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、400nm付近の光で記録したときに十分な記録再生特性が得られる光記録媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明の光記録媒体の好適な一実施形態を示す断面図である。図1に示す光記録媒体1は、基板2の一面上(図中下側)に、反射層6、記録層3、誘電体層4及び光透過層5がこの順で積層された積層構造を有する。光記録媒体1は追記型の光記録ディスクであり、青色半導体レーザー光の照射によって情報を記録及び再生するために用いられる。
【0013】
記録層3は、上記式(1)で表される化合物(以下、場合により「トリアゾール化合物」という。)の1種又は2種以上を主成分として形成されている。式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基を示す。
【0014】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうち少なくとも1個は置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基(以下「アクリルアミド含有基」という。)である。これらの中でもR1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個がアクリルアミド含有基であることが好ましい。特に、R1がアクリルアミド含有基であることが好ましい。
【0015】
アクリルアミド含有基は、例えば下記一般式(2)で表される。式(2)中、R9はアルキル基(好ましくは炭素数1〜4である直鎖または分岐アルキル基)を示し、R10は水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を示す。R9としてはメチル基が特に好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうちアクリルアミド含有基以外のもののから選ばれる少なくとも1個は、分岐アルキル基であることが好ましい。特に、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が分岐アルキル基であることが好ましい。分岐アルキル基としては、t−ブチル基及びt−オクチル基(2,4,4,−トリメチルペンタン−2−イル基)が挙げられる。
【0018】
また、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうちアクリルアミド含有基以外のもののから選ばれる少なくとも1個は、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基であることが好ましい。この場合、R1、R2、R3及びR4のうち1個がアクリルアミド含有基、1個が分岐アルキル基であり、R5、R6、R7及びR8のうち1個が置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基であることが特に好ましい。アルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基が挙げられる。
【0019】
より具体的には、記録層3は下記一般式(10)で表されるトリアゾール化合物を含有することが好ましい。
【0020】
【化3】
【0021】
式(10)中、R9及びR10は上記式(2)中のR9及びR10とその好適な態様も含めて同義であり、R11は分岐アルキル基を示し、R12は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基又は水素原子を示す。式(10)のトリアゾール化合物としては、下記一般式(11)で表されるものがある。
【0022】
【化4】
【0023】
式(1)のトリアゾール化合物は、当業者には理解されるように、例えば下記一般式(3)で表されるトリアゾール化合物と、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとを硫酸等の酸触媒の存在下で反応させるより合成することができる。
【0024】
【化5】
【0025】
式(3)中、R5、R6、R7及びR8は式(1)におけるR5、R6、R7及びR8とその好適な態様も含めて同義であり、R21、R22、R23及びR24は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基を示し、R21、R22、R23及びR24のうち少なくとも1個は水素原子である。式(3)のトリアゾール化合物は公知の方法で合成することが可能であり、市販品として入手可能なものもある。
【0026】
記録層3の厚さは、5〜100nmであることが好ましい。特に30〜70nmとすると、変調度と反射率とのバランスが良くなるため、より好ましい。この範囲外では、反射率が低下して、再生を行うことが困難となる傾向にある。また、グルーブ23に隣接する部分における記録層3の膜厚を100nm以上とすると、変調度と反射率とのバランスが悪化する傾向にある。
【0027】
記録層3は、例えば、上述のトリアゾール化合物を光記録材料として溶媒に溶解した光記録材料溶液を用いて形成される。光記録材料溶液の溶媒としては、アルコール、脂肪族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、ハロゲン化アルキル系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、アルコール又は脂肪族炭化水素系溶媒を含む溶媒が好ましい。
【0028】
アルコールとしては、フッ素化アルコール、アルコキシアルコール又はケトアルコールが好ましい。特に、ポリカーボネート基板上に記録層を形成する場合、フッ素化アルコールが好適である。
【0029】
光記録材料溶液は、溶媒中に光記録材料を投入し、必要に応じて加熱しながら、超音波処理等してこれを溶解することにより、調製できる。光記録材料溶液における光記録材料の濃度は、光記録材料溶液全体を基準として0.1〜10質量%であることが好ましい。光記録材料溶液は、光記録材料及び溶媒の他、必要に応じて、バインダー、分散剤、安定剤などを含有していてもよい。
【0030】
光記録材料溶液を用いて記録層3を形成させる場合、光記録材料溶液からなる溶液層を反射層6上に形成する工程の後、溶液層中の溶媒を除去して、光記録材料を含有する記録層3を形成させる。すなわち、光記録媒体1は、有機色素を含有する光記録材料を溶媒に溶解した光記録材料溶液からなる溶液層を基板2上に形成させる工程と、溶液層中の溶媒を除去して記録層3を形成させる工程とを備える製造方法によって製造することができる。溶液層は、スピンコーティング法、グラビア塗布法、スプレーコート法、ディップコート法などの方法で反射層6上に塗布することにより形成される。これらの中でも、スピンコート法が好ましい。
【0031】
基板2は、直径が64〜200mm程度、厚さが0.3〜1.6mm、好ましくは0.5〜1.3mm程度のディスク状の形状を有する。記録層3の基板2と反対側、すなわち光透過層5側からの光照射により情報の記録及びその再生が行われる。そのため、基板2は必ずしも光学的に透明である必要はない。具体的には、基板2を形成する材料としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種プラスチック材料等が好適に用いられる。あるいは、ガラス、セラミックス、金属等を用いてもよい。
【0032】
基板2の記録層3側の面には、溝状のグルーブGと、隣り合うグルーブG同士の間で相対的に高くなっている(光透過層5側の光記録媒体表面に近くなっている)部分であるランドLとを含む微細な凹凸パターンが形成されている。グルーブGは、通常、スパイラル状に延びた溝として形成されている。グルーブGの深さGd(ランドLの光透過層5側に最も突き出た部分からの深さ)は、好ましくは40〜150nmであり、より好ましくは60〜120nmである。グルーブGの深さGdをこのような範囲とすることによって、十分なトラッキング制御が可能となり、クロストークを抑制できる。グルーブGの深さGdが40nm未満であると、トラック追従のために必要なトラッキングエラー信号が小さくなる他、クロストークが大きくなったり、ウォブル信号のようなプリフォーマット信号が小さくなったりする傾向がある。一方、深さGdが150nmを超えると、ランドL及びグルーブGを高精度で形成することが難しくなるために、反射信号の低下や感度の低下を招き得る。
【0033】
グルーブ幅Gw(グルーブGの底から深さGdの1/2の高さにおけるグルーブGの幅)は、好ましくは110〜210nmであり、より好ましくは130〜190nmである。グルーブピッチGp(隣り合うグルーブG同士の間隔、例えば、隣り合うグルーブGの幅Gw方向における中心同士の間隔)は、例えば290〜350nmであり、好ましくは310〜330nmである。このような構成とすることによって、クロストークが十分に抑制される。
【0034】
上記のような凹凸パターンが形成された基板2は、プラスチック材料を用いる場合には、射出成形により作製できる。プラスチック材料以外の材料を用いる場合には、例えば、フォトポリマー法(2P法)によって基板2が成形される。
【0035】
記録層3の基板2側の面上、すなわち、記録層3に記録再生光が入射する側と反対側の面上には、反射層6が設けられている。反射層6の厚さは0.1〜100μmであることが好ましい。
【0036】
反射層6は、適度な反射率を得る等の目的で、記録層3の記録再生光が入射する側(入射面側)と反対側の面上に設けられている。反射層6は、例えば、金属又は合金から形成される。反射層6は、具体的には、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)又はこれらの少なくとも1種を含む合金から形成されることが好ましい。特に、Ag又はAgを含む合金、例えば、AIS(Ag−In−Sn)を用いることが、適切な反射率が得られるため好ましい。
【0037】
あるいは、反射層6を構成する材料として、樹脂、セラミックス、金属化合物等を用いることもできる。樹脂やセラミックスを用いる場合、反射層は、樹脂と、金属粒子及びセラミックス粒子から選ばれる1種又は2種以上の粒子とを含有するものであることが好ましい。金属化合物を用いる場合、金属化合物としてはアルコキシド、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩及びアセチルアセトン塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属化合物が好ましい。これら金属化合物中の金属としては、Ag、Al、Pt、In、Sn、Ni、Fe等が挙げられる。
【0038】
反射層6の厚さは、0〜200nmであることが好ましい。反射層6は、例えば、蒸着、スパッタ等の気相成長法や、溶液法により形成することができる。
【0039】
誘電体層4は、記録層3に密着して設けられている。誘電体層4は、記録層3を機械的、化学的に保護する保護層としての機能とともに、光学特性を調整する干渉層としての機能を有する。誘電体層4は記録層3の記録光及び再生光が入射する側に位置するため、405nmのレーザー光を透過させることが必要である。
【0040】
誘電体層4に用いられる材料としては、例えば、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe及びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物又はこれらの複合物が好適に用いられる。特に、光透過能の観点から、ZnS−SiO2、AlN、Ta2O3等が好ましい。これら誘電体層4は単層であってもよいし、複数の層を有していてもよい。誘電体層4は、例えば、イオンビームスパッタリング法、リアクティブスパッタリング法、RFスパッタリング法等の気相成長法によって形成することができる。
【0041】
誘電体層4上には、光透過層5が誘電体層4に密着して設けられている。光透過層5は単層であってもよいし、多層構造を有していてもよい。光透過層5は、記録光及び再生光に対して、光学的に透明で、反射が少なく、複屈折が小さい材料から形成されることが好ましい。具体的には、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、熱硬化型樹脂などが好適に用いられる。光透過層5は、例えば、紫外線硬化樹脂などの材料を含む塗布液を誘電体層4上に塗布してから塗膜を乾燥し、更に必要に応じて樹脂を硬化させることにより形成可能である。塗布の際には、スピンコート法、グラビア塗布法、スプレーコート法、ディップコート法などが適用可能である。このようにして形成される光透過層5の厚さはその材質に応じて適宜選択されるが、光透過能の観点からは、一般に1〜150μmであることが好ましい。
【0042】
光記録媒体1の記録層3に対して、405nmの記録光を光透過層5側からパルス状に照射することにより、情報を高密度に記録することが可能である。特に、記録層3のグルーブGに沿った部分に集光して情報の記録及び再生を行う、いわゆるin−groove方式で情報の記録及び再生を行うことが好ましい。
【0043】
本発明の光記録媒体は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の光記録媒体は、所謂HD−DVDとして知られる光記録媒体においても同様に用いることができる。この場合、光記録媒体は従来公知のDVDに相当する構成を適用すればよい。例えば、図1の光透過層5に相当する基板を用意し、これの一面上に直接記録層3を形成し、更にその上に反射層6及び基板2をこの順で積層した構成とすることができる。このような構成の光記録媒体において、記録及び再生を光透過層5に相当する基板の側から行う場合には、図1の実施形態におけるランドLがグルーブとして機能し、グルーブGがランドとして機能することになる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
1.トリアゾール化合物の合成
(実施例1)
温度計、攪拌機を取り付けた500mLのフラスコ中で2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチルフェノール25g(0.094モル)を97%濃硫酸50mLに溶解した。そこに、5〜10℃に保ちながらN−ヒドロキシメチルアクリルアミド11.34g(0.11モル)を少量ずつ2時間かけて加え、加え終わってから同温度で2時間攪拌し、さらに室温で4時間攪拌した。約300mLの氷水にその反応液を加え、析出物をろ別して充分に水洗し粗生成物を得た。この粗生成物をトルエン150mL及びイソプロピルアルコール50mLの混合液に加熱により溶解し、熱ろ過し、ろ液を冷却後析出した固形物をろ別して、下記化学式(1a)のトリアゾール化合物(N−((3−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)メチルアクリルアミド)を得た(収量20.2g、白色結晶、収率61.6%)。
【0046】
【化6】
【0047】
・融点:196.7〜197.1℃
・純度:99.2%(HPLC)
・UV−近紫外吸収スペクトル(図2):λmax339nm、εmax17600
・溶解度:IPA 0.2%、EC 0.7%、TFP 0.4%
UV−近紫外吸収スペクトルは、島津製作所社製の「UV−2450」を用い、250nm〜500nmの範囲で試料濃度10ppmで測定した。純度を求めるためのHPLC測定は、島津製作所社製の「LC−6A」を用い、カラムを「SUMIPAX ODS A−212 5μm」(商品名、住化分析センター社製、φ6mm×15cm)、温度を40℃、移動相をメタノール:水=95:5、流速を1.0mL/分として、検出波長250nmで行った。また、赤外吸収スペクトルをKBr法により測定した(図7)。
【0048】
(実施例2)
出発物質として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノールを用いた他は実施例1と同様にして、下記化学式(1b)のトリアゾール化合物(N−((3−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル)アクリルアミド)を得た(収量24.8g、白色結晶、収率72.5%)。
【0049】
【化7】
【0050】
・融点:201.6〜202.3℃
・純度:98.6%(HPLC)
・UV−近紫外吸収スペクトル(図3):λmax341nm、εmax17300
・溶解度:IPA 0.1%以下、EC 0.1%以下、TFP 0.25%
UV−近紫外吸収スペクトルは実施例1と同様の条件で測定した。純度を求めるためのHPLC測定は、移動相をメタノール:水=9:1とした他は実施例1と同様の条件で行った。また、赤外吸収スペクトルをKBr法により測定した(図8)。
【0051】
(実施例3)
出発物質として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノールを用いた他は実施例1と同様にして、下記化学式(1c)のトリアゾール化合物(N−((3−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)メチル)アクリルアミド)を得た(収量48.2g、白色結晶、収率73.9%)。
【0052】
【化8】
【0053】
・融点:129.4〜131.0℃
・純度:98.9%(HPLC)
・UV−近紫外吸収スペクトル(図4):λmax341nm、εmax16400
・溶解度:EC 0.1%以上
UV−近紫外吸収スペクトル測定及びHPLC測定は実施例1と同様の条件で行った。また、赤外吸収スペクトルをKBr法により測定した(図9)。
【0054】
(実施例4)
出発物質としてメチル2−(5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートを用いた他は実施例1と同様にして、下記化学式(1d)のトリアゾール化合物(メチル2−(3−(アクリルアミドメチル)−5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート)を得た(収量7.9g、黄色結晶、収率63.0%)。
【0055】
【化9】
【0056】
・融点:183.6〜184.2℃
・純度:95.7%(HPLC)
・UV−近紫外吸収スペクトル(図5):λmax352nm、εmax18600
・溶解度:EC 1%
UV−近紫外吸収スペクトルは実施例1と同様の条件で測定した。純度を求めるためのHPLC測定は、カラムを「Inertsil ODS−3 5μm」(商品名、ジーエルサイエンス社製、φ4.6mm×15cm)とし、移動相をアセトニトリル:水=8:2(リン酸0.3%)とした他は実施例1と同様の条件で行った。また、赤外吸収スペクトルをKBr法により測定した(図10)。
【0057】
(実施例5)
出発物質としてメチル2−(2−ヒドロキシ−5−(2,4,4,−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートを用いた他は実施例1と同様にして、下記化学式(1e)のトリアゾール化合物(メチル2−(3−(アクリルアミドメチル)−2−ヒドロキシ−5−(2,4,4,−トリメチルペンタン−2−イル)−フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート)を得た(収量2.15g、黄色結晶、収率46.3%)。
【0058】
【化10】
【0059】
・融点:175.2〜175.5℃
・純度:98.0%(HPLC)
・UV−近紫外吸収スペクトル(図6):λmax354nm、εmax18100
・溶解度:IPA 0.1%以下、EC 0.7%、TFP 1%
UV−近紫外吸収スペクトル測定及びHPLC測定は実施例4と同様の条件で行った。また、赤外吸収スペクトルをKBr法により測定した(図11)。
【0060】
2.光記録媒体の作製
実施例1〜5で合成したアゾ化合物をテトラフルオロプロパノール(TFP)に溶解して光記録材料溶液を調製した。一方、グルーブが形成されたポリカーボネート基板を準備し、このグルーブ面上に、スパッタリング法によりAIS(Ag−In−Sn合金)からなる反射層を形成した。
【0061】
次いで、基板上に形成された反射層上に、上記塗布液をスピンコート法により塗布し、乾燥して、基板上に記録層を形成した。その後、記録層上にスパッタリング法によりSiO2−ZnSからなる誘電層を形成した後、この誘電層上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線の照射により硬化させて基板を形成した。これにより、図1に示す光記録媒体と同様の構成を有する光記録媒体を得た。
【0062】
また、下記化学式(5)で表されるトリアゾール化合物を用いた他は実施例と同様にして、比較例の光記録媒体を作製した。
【0063】
【化11】
【0064】
3.光記録媒体のCNR測定
実施例及び比較例の各光記録媒体を光ディスク評価装置(商品名:DDU1000、パルステック社製)にセットした。そして、対物レンズのNA(開口数)を0.85とし、青色波長域(407nm)のレーザービーム記録ヘッド内の集光レンズで光透過側から集光して、in−groove方式で記録層に対して光記録を行った。このとき、2T信号の単一信号を入力した。光記録後の各光記録媒体について、記録層における未記録部分に波長407nmの再生光(0.3mW)を照射し、当該再生光のCNR(dB)を測定した。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、アクリルアミド基を導入したトリアゾール化合物を記録層に用いた実施例の光記録媒体は、十分な記録再生特性を示すことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る光記録媒体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】実施例1で合成した化合物のUV−近紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図3】実施例2で合成した化合物のUV−近紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図4】実施例3で合成した化合物のUV−近紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図5】実施例4で合成した化合物のUV−近紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図6】実施例5で合成した化合物のUV−近紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図7】実施例1で合成した化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図8】実施例2で合成した化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図9】実施例3で合成した化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図10】実施例4で合成した化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図11】実施例5で合成した化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1…光記録媒体、2…基板、3…記録層、4…誘電体層、5…光透過層、6…反射層、G…グルーブ、L…ランド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有する記録層を備える光記録媒体。
【化1】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基を示し、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうち少なくとも1個は置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基である。]
【請求項2】
R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基である、請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基であり、且つ、
R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個がt−ブチル基又はt−オクチル基である、請求項1記載の光記録媒体。
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有する記録層を備える光記録媒体。
【化1】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基を示し、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のうち少なくとも1個は置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基である。]
【請求項2】
R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基である、請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個が置換基として(メタ)アクリルアミド基を有するアルキル基であり、且つ、
R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個がt−ブチル基又はt−オクチル基である、請求項1記載の光記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−203597(P2007−203597A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25002(P2006−25002)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
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