説明

光電センサ

【課題】 検出ヘッドの薄型化を実現出来ると共により信頼性の高い光電センサを提供する。
【解決手段】 投光素子2から投射される光の角度範囲と受光素子3が受光可能な光の角度範囲とが重複する様に配置された光学系を備え、投光素子2から投射された光が重複領域Sにある検出対象Wの表面で反射して受光素子3に入射することにより検出対象Wが検出される限定反射形の光電センサ1であって、投光素子2から受光素子3に至る光線が辿るべき経路における、投光素子2の出射開口部又は受光素子3の出射開口部の一方又は双方に、予め所定の傾斜角度を持つ方向板5が所定間隔で複数配列された視野角調整用フィルタ4を設置し、投光素子2から出射或いは受光素子3へ入射する光P,Rの方向を所定方向に制限して、投光素子2から重複領域S外へ光を投射する事又は重複領域S外からの光が受光素子3に入射する事を防止する様にしたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象の有無を非接触で検出する光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線や可視光線等の光を用いて検出対象の有無を検出する光電センサについては、現在までに種々の態様のものが開発されている。そのうち、検出対象の存在し得る範囲が限られている場合に好適な光電センサの一つとして、いわゆる限定反射形光電センサと言うものがある。この限定反射形の光電センサは、投光部から投射される光の角度範囲と受光部の受光可能な光の角度範囲との重複部分(検出範囲)に位置する検出対象の有無を検出するものである。
一般的な限定反射形光電センサの光学系は図9Aに示す通りであり、投光素子2からレンズLを介して光が投射されて投光領域Pが形成される一方、受光領域Rからの光は受光側に別途設けられたレンズLを介して受光素子3に集光される。
ここで、従来知られた限定反射形光電センサでは、特にレンズを使用する都合上、投受光領域を構成する光芒が細く長いものとなるゆえ、次のような問題点があった。
【0003】
まず、検出対象がガラス板等光沢のあるものの場合、投光素子2から投射された光は検出対象において正反射に近いかたちで反射するため、例えば図9Aに示す通り検出対象Wが投受光素子が配置されるセンサのケース表面Xに対して角度を持って検出領域Sに来たときには、検出対象Wからの反射光が進む方向が、ケース表面Xと平行に検出対象Wがあるときに比べてずれることとなる。そうすると、上記反射光が受光素子3に入射せず、実際には検出領域Sに検出対象が存在するにも関わらず検出対象を検出出来ない場合が生じ得る。
このように、限定反射形光電センサには検出対象の角度変化に非常に弱いと言う傾向があった。特に、光学系にレンズが介在した場合、元々投受光領域を構成する光芒が細長く、検出領域も狭いことから、検出対象の角度変化に非常に弱いという上述した傾向が更に強まるという問題があった。
【0004】
次に、限定反射形光電センサでは、光学系のレイアウトによっては、投受光素子を収めるケース表面Xの投受光面付近において、検出領域Sから外れる領域即ち、受光出力が減少して検出対象を検出出来なくなる不感領域Nが生ずる場合がある。特に、光学系にレンズが介在した場合には、図9Aに示す通り広い角度範囲に光が投射され或いは広い角度範囲から光が集光されないことから、不感領域Nが大きくなってしまうと言う問題があった。
【0005】
また、光の強度或いは受光出力の大きさは距離の二乗に反比例する性質を有しているところ、レンズを使用して光を絞る構成であると、光は遠くに届く一方で検出領域内外の光の強度差が少なくなるのでいわゆるS/N(信号対ノイズの大きさの比率を示す指標)が悪く、検出領域外の光(ノイズ)によりセンサの誤動作が生じる虞があると言う問題があった。
特に、図10並びに図11A及びCに示される通り、上下方向に所定ピッチで複数配置されたガラス基板の夫々の下方に移動させた光電センサから上方に向けて光を投射することによりガラス基板の有無を検知する様な適用例では、現状のセンサでは適切な検出領域S及び検出距離dが殆ど得られず、そうすると例えば図10並びに図11A及びCに示される通り、透明な検出対象Wを通過した光が検出対象Wより上段にある非検出対象W’のガラス基板や検出対象Wより遠く離れた背景等で反射されることによりセンサ1’の誤動作が生じる虞があると言う問題があった。更に、限定反射形光電センサでは検出対象表面の反射率等により検出特性が変化するところ、例えば検出対象Wが透明なガラス基板である一方、その上段にある非検出対象W’のガラス基板が反射率の高い蒸着基板であった場合等では、検出対象ではない蒸着基板からの反射光によってセンサの誤動作が生じる虞がより強まると言う問題があった。光電センサ1’の直上に検出対象が無い場合であっても同様に、投光素子2から投射された光が、図10に示される通り本来検出対象Wがある位置より上段にある非検出対象W’のガラス基板や検出対象Wより遠く離れた背景等で反射されることによりセンサの誤動作が生じる虞があると言う問題があった。
この誤検出の問題については、検出対象Wの配列ピッチを詰める程、その傾向がより強まるのは明白である。
【0006】
更に、上述した、上下方向に所定ピッチで複数配置されたガラス基板の夫々の下方に移動させた光電センサから上方に向けて光を投射することによりガラス基板の有無を検知する様な適用例では、図10からも明らかな通り検出対象Wの配列ピッチを詰めるには、光電センサ1’、特に投光部と受光部が内蔵される検出ヘッドの薄型化が必要となる。ところが、図9Aに示す通り光学系にレンズを使用する構成では、投受光素子と投光又は受光レンズとの間に一定の焦点距離fを確保する必要があるので検出ヘッドの薄型化が物理的に難しいという問題があった。
このように、光学系にレンズを使用する限定反射形光電センサには種々の問題があった。
【0007】
一方、上記欠点を解消すべく、図11Bに示す通り光学系にレンズを使用せず比較的広い視野の投受光光芒によって限定反射形光電センサを構成することも考えられる。しかしながら、今度は視野角を広く取る程、検出対象からの反射光ではない外乱光(ノイズ)が受光素子に差し込むことによりセンサが誤動作する可能性が高まると言う問題があった。
【0008】
その他、図9Bに示される様に、光ファイバF等の媒体を介して、光源から離れた所定の投光面に光を導いたり、受光面に達した光を受光素子に導くという手法も提案されている。かかる例によれば、投光面及び受光面周りの構造が簡素なため、検出ヘッドの薄型化を有効に図ることが出来る。図9B−1は光ファイバFを利用して限定反射形光電センサを構成した一例を示す斜視図、図9B−2は図9B−1に示される光電センサを、光ファイバFの端部側即ち図9B−1中に示された矢印の方向から見た図である。光ファイバFの端面は、図9B−1に示される通り斜めにカットされ、斜め上方に向かって尖鋭に形成されている。投光素子2から伝送された光は、図9B−1に示される通り光ファイバFの端面で垂直方向に反射され、検出領域Sを形成すべく、光ファイバFの外周面から斜め上方に投射される。
しかしながら、図9B−2からも明らかな通り光ファイバFの外周面は弧状に湾曲していてレンズ効果を有するため、光ファイバFの外周面から上向きに投射される光の内、光ファイバFの横断面方向の成分は集光されたかたちで拡がることとなる。そうすると、光ファイバFの外周面から上方に投射される光は、図9B−1及び2に示される通り、広い角度範囲に一様に光が投射されず長円形に拡がって行くことになる。受光側も同様に、広い角度範囲から一様に光が集光されないこととなる。
従って、光ファイバF等の媒体を利用する例によっても、少なくとも一部の方向では光学系にレンズが介在しているのと同様の状態となるので、上記した光学系にレンズを使用する限定反射形光電センサの場合と同様な問題があった。
【0009】
ところで、近年、省スペース、省エネルギー及び長寿命等の観点から液晶ディスプレイ(LCD)の利用が急速に進展している。
かかるLCDの製造工程では、LCDに使用されるガラス基板を上下方向に所定ピッチで格納し得る様構成された格納ラック(キャリアカセット)内に適宜格納されたガラス基板の有無を検知する(マッピングと言われる)必要が度々あるところ、キャリアカセットに格納されたガラス基板を光電センサで検出する技術としては、一般的にガラス基板Wの側面に当てて反射した光を感知する反射型のセンサを用い、これをキャリアカセットの上下方向に逐次移動させてガラス基板の有無を逐一検出するものが利用されている(特許文献1[0013]並びに特許文献2[図5及び11]参照)。
しかしながら、上記システムは光電センサによってガラス基板を1枚づつ検出するものであるからその作業に多大な時間が掛かり効率が悪くなる上、光電センサを上下方向に移動する移動機構が必要不可欠となり、全体としてシステムが複雑で高価になるという問題がある。
【0010】
又上記とは別に、センサ本体を、上下方向に所定ピッチで配列された夫々のガラス基板の下方に移動させて、ガラス基板の下方から上方に向けて光を投射することによってマッピングを行なう手法も提案されている(特許文献1[0013]参照)。かかる手法には、反射形光電センサの中でも限定反射形のものが適していると考えられる。
しかしながら、現状の限定反射形センサは上記の通り種々の問題を抱えており、上記手法を適用してシステムを構成しても、例えば、自重で撓んだりしてセンサのケース上面に対して角度が付いた状態となっているガラス基板が確実に検出出来なかったり、或いは検出対象からの反射光ではない外乱光によりセンサの誤動作が生じたりするため信頼性に富むシステムを提供出来ないという問題があった。又検出ヘッドの薄型化が困難であることからキャリアカセット内に格納されるガラス基板の配列ピッチを詰めることが難しいという問題があった。
さらに、この例の場合であっても、ガラス基板検出に際しては前記公知例と同様にガラス基板端部の下面を1枚づつ検出する必要があり検出効率が悪い等の問題が残った儘である。
【0011】
これらのほか、キャリアカセットに格納されたガラス基板を出し入れする搬送装置の搬送アーム先端に限定反射形光電センサの検出ヘッドを埋め込み、上下方向に所定ピッチで配列された夫々のガラス基板の下方に上記搬送アーム先端を差し込んだ際、ガラス基板の下方から上方に向けて光を投射することによってガラス基板の有無を検出し、搬送装置がガラス基板をハンドリングしている最中であることを外部に表示或いは出力するシステムなるものも提案されているが(特許文献3参照)、この場合も、上述したマッピングに用いられるセンサ同様、自重で撓んだガラス基板を確実に検出出来なかったり、或いは検出ヘッドの薄型化が困難であることからキャリアカセット内に格納されるガラス基板の配列ピッチを詰めることが難しいという問題があった。
【特許文献1】特開2000−40735号公報
【特許文献2】特開2003−60010号公報
【特許文献3】特開平11−232972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明は、検出ヘッドの薄型化を実現出来ると共に、より信頼性の高い光電センサを得ることを課題とする。
又本発明は、所定ピッチで配列された複数の検出対象の有無をより効率良くしかも確実に検出出来る光電センサを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、本発明者は、
i)光学系にレンズを使用せず広い角度で光を投光し、広い視野で受光すれば、検出対象がセンサのケース上面に対して傾いている場合であっても検出対象の表面反射を確実に検出出来、傾いた検出対象の有無も安定に検出出来る光学系を構成出来ることを見出したほか、
ii)光学系前面即ち、投光素子から受光素子に至る光線が辿るべき経路における、投光素子側の出射開口部又は受光素子側の入射開口部の一方又は双方に予め所定の傾斜角度を持つ方向板(ルーバー)を所定ピッチで多数配列したブラインド状の視野角調整用フィルタを設け、投光素子から出射或いは受光素子へ入射する光の方向を一定方向に制限する事によって上記課題を悉く解決可能なことを見出した。
【0014】
本発明の光電センサは、投光素子から投射される光の角度範囲と受光素子が受光可能な光の角度範囲との重複領域が形成される様な光学系を備え、前記投光素子から投射された光が前記重複領域にある検出対象の表面で反射して前記受光素子に入射することにより前記検出対象が検出される限定反射形の光電センサであって、前記投光素子から前記受光素子に至る光線が辿るべき経路における、前記投光素子の出射開口部又は前記受光素子の入射開口部の一方又は双方に、予め所定の傾斜角度を持つ方向板が所定間隔で複数配列された視野角調整用フィルタを設け、
前記投光素子から出射或いは前記受光素子へ入射する光の方向を所定方向に制限して、前記投光素子から前記重複領域外へ光を投射すること又は前記重複領域外からの光が前記受光素子に入射することを防止するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
上記本発明の光電センサについては、さらに、前記投光素子、受光素子及び視野角調整用フィルタその他を収容するケースを備え、前記投光素子及び受光素子並びに前記視野角調整用フィルタを、前記ケース表面に形成された凹部内に設置し、光学系を前記ケース表面からオフセットして構成することが好ましい。これにより、ケース上方から不感領域を除去してケース上方を全て検出領域とすることが出来る。
【0016】
又上記課題を解決可能な本発明のセンサアレイは、所定間隔で配列された複数の検出対象を検出するためのセンサアレイであって、前記検出対象の配列間隔に相当する間隔で一直線上に配列された、前記検出対象の数に対応する数の請求項1又は2に記載の光電センサからなり、前記光電センサを夫々、所定間隔で配列された検出対象同士の間にある空間内に挿入することによって複数の前記検出対象の有無を一括検出することを特徴とするものである。
【0017】
尚本明細書中、本発明の光電センサとは、検出対象からの反射によって生ずる受光量の大小によって検出対象の有無を検知して出力を出す、光電効果を応用した非接触検出機器を指し示すものとする。
光学系とは、光線を出射したり、反射させたり、収斂させたりするための、投光素子、受光素子、視野角調整用フィルタ及び検出対象その他の光学素子の組み合わせ、又はこれらにより規定された、投光素子から受光素子に至る光線が辿るべき経路を指し示すものとする。
光学系前面とは、投光素子から受光素子に至る間に辿るべき光線の経路における、投光素子側の出射開口部又は受光素子側の入射開口部の一方又は双方を指し示すものとする。
視野角調整用フィルタとは、投光又は受光方向を制限するフィルタであって、予め所定の傾斜角度を持つ方向板が所定ピッチで多数配列されたものをいう。方向板の傾斜角度とは、方向板の配列方向に対する各方向板の傾斜角度を指し示すものとする。
視野角調整用方向板(ルーバー)とは、視野角調整用フィルタの構成要素である、所定ピッチで配列された所定の傾斜角度を持つ方向板の一部又は全部を言うものとする。
視野角とは、投光素子の投光面又は受光素子の受光面から見た投光素子又は受光素子の中心を通過する線に対する、投光素子から出射する光の広がり(角度範囲)又は受光素子が受光可能な光の領域(角度範囲)を指し示すものとする。一般的に、投光する光の広がりを大きくすれば広い視野角で光を投光したことになり、又受光する領域を広くすれば広い視野角で受光していることとなる。
上記の通り、本発明に用いられる視野角調整用フィルタは投光又は受光方向を制限するものである。例えば、投光側の視野角の調整は、投光素子から或る方向へ光を出射することは許容する一方、別の方向へ光を出射することを制限することによって行われる。
反対に、受光側の視野角の調整は、或る方向からの光が受光素子に入射することは許容する一方、別の方向からの光が受光素子に入射することを防止することによって行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光電センサは、光学系にレンズを一切使用しないため、投光側及び受光側の視野角が広く、投光及び受光領域並びに検出領域を広範囲に取ることが出来る。
それゆえ、本発明によれば、投受光素子が配置されるセンサのケース表面に対して検出対象が角度を持って検出領域に位置する場合であっても確実に検出対象を検出出来るので、検出対象の角度変化に強い光電センサを得ることが出来る。
又本発明によれば、検出領域が拡がるため、不感領域が少ない光電センサを得ることが出来る。
そのほか、本発明によれば、レンズを省略出来るので、コストを有効に抑えることが出来る。
【0019】
次に、本発明の光電センサでは、視野角調整用フィルタの働きにより、検出領域以外から来る外乱光が受光素子に入射することがないため、その様な外乱光に起因する誤検出を防止することが出来る。
更に、投光領域及び受光領域が視野角調整用フィルタで所定方向に制限されているので、センサの誤検出が生じることを確実に防止することが出来る。特に、透明な検出対象を通過した光、或いは検出対象が無いときは投光素子から直接投射された光が、検出対象より上段にある非検出対象のガラス基板や検出対象より遠く離れた背景等で反射されることで生じるセンサの誤検出をより確実に防止出来る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づき本発明の光電センサを詳細に説明する。
図1は本発明の光電センサの光学系及び検出原理を説明するための斜視図、図2は本発明の光電センサの光学系及び検出原理を説明するための模式図であって、図1の光電センサを端部側即ち図1中に示された矢印の方向から見たものである。図3は本発明の光電センサの一実施例の構成を示す斜視図、図4は図3の光電センサを端部側から見た図であって、本実施例の光電センサの光学系を示すものである。図5は、本発明の光電センサの別の実施例の構成を示す図である。図6は、本発明の光電センサを用いてセンサアレイを構成した一例を示す斜視図、図7は図6のセンサアレイの側面図である。図8は本発明の光電センサの変形例の構成を示す図である。
【0021】
[検出原理]
はじめに、本発明の光電センサの光学系及び検出原理を、図1及び図2に基づき説明する。
図1に示す通り、本発明の光電センサ1は、検出媒体となる光を出射する役目を持つ投光素子2と検出対象Wで反射した投光素子からの光を受け電気信号に変換する受光素子3を所定間隔を空けて並べて設置すると共に、投光素子から受光素子に至る間に辿るべき光線の経路における、投光素子側の出射開口部又は受光素子側の入射開口部の一方又は双方に視野角調整用フィルタ4を設置し、投光素子2から出射或いは受光素子3へ入射する光の方向を所定方向に制限したことを特徴とするものである。かかる構成により、投光素子2から検出領域S外へ光を出射すること又は検出領域S外からの光が受光素子3に入射することが防止される。検出対象Wは、例えば薄く透明なガラス基板等、適宜のものとされる。
【0022】
この光電センサ1は、いわゆる限定反射形光電センサに当たり、投光領域(光芒)Pと受光領域(光芒)Rとが重複する領域が検出領域Sとなるものである。本例では、検出対象Wがセンサのケース表面Xに対して適宜角度で検出領域Sに位置すると、投光素子2から出射した光が反射して受光素子3へ入射する光量が増加し、受光素子3の電気的特性が変化することを利用して検出対象Wの有無を検出している。
【0023】
図1及び図2に示す通り、本発明の光電センサ1では、視野角調整用フィルタ4により、検出対象Wからの反射光ではない外乱光(ノイズ)が受光素子3に入射しない様視野角を調整している。本例では、予め表又は裏面に対し所定の傾斜角度θを持つ視野角調整用の方向板(ルーバー)5が内部に所定の配列ピッチで多数形成されたシート状の成形体を視野角調整用フィルタ4として利用している。視野角調整用フィルタ4は、投光側と受光側で視野角の調整方向即ちルーバー5の傾斜角度θが互いに対向する態様で設置されている。この視野角調整用フィルタ4は、センサのケース表面Xに設けられた投光又は受光用の開口部6に嵌め込まれて設置されている。
【0024】
以下では、本発明の光電センサ1において視野角が調整される態様につき、図2に基づき説明する。尚図2では、投光側の光の状況については、説明を容易にするため、投光素子を仮想的に点光源として取り扱ったときの様子を示している。
図2に示す通り、例えば投光素子2の出射面の中心から出射した光は、まず視野角調整用フィルタ4に到達する。ここで、図2中、破線(a)で示す様な角度の光はルーバー5によって遮られるため検出対象W側へ透過しない。一方、それら以外の光については視野角調整用フィルタ4を通過して検出対象Wに達する。本例では検出対象Wはガラス基板等を想定しているところ、検出対象Wに達した光は検出対象表面で正反射する。受光素子3には、受光側の視野角調整用フィルタ4を通過した反射光だけが入光する。ここで、視野角調整用フィルタ4を通過する光は、平均的にルーバー5の傾斜方向に沿ったものとなる。又検出領域S以外からの光はルーバー5により遮断されるため受光素子3に入射することはない。なお図2では投光素子を1個の点光源としたために図中Yで示す所謂、ヌケ部分が生じた様に現わされているが実際の投光素子には発光面積がありヌケYが少なくなる。またより投光光量を積極的に増加させる目的で投光素子を複数個用いることによってもヌケ部分はより少なくなる事は述べるまでもない。
【0025】
上記実施形態を用いて説明した通り、本発明の光電センサ1は、光学系にレンズを一切使用しないため、投光側及び受光側の視野角が広く、投光及び受光領域P,R並びに検出領域Sを広範囲に取ることが出来る。
それゆえ、本発明によれば特に、投受光素子が配置されるケース表面Xに対して検出対象Wが角度を持って検出領域Sに位置する場合であっても確実に検出対象Wを検出出来るので、検出対象Wの角度変化に強い光電センサを得ることが出来る。
また、本発明の光電センサ1では、視野角調整用フィルタ4の働きにより、検出領域S以外から来る外乱光が受光素子3に入射することがないため、その様な外乱光に起因する誤検出を防止することが出来る。
【実施例1】
【0026】
次に、本発明の光電センサの一実施例につき、図3及び図4に基づき説明する。
尚図4中、図4Aは視野角調整用フィルタを備えない場合における、投光素子からの出力が50%以上存在している領域を示す概念図、図4Bは視野角調整用フィルタを投光素子の出射開口部に備えた場合における、投光素子からの出力が50%以上の領域を示す概念図、図4Cは視野角調整用フィルタにより制限された投光領域及び受光領域によって形成される検出領域を示す概念図である。
【0027】
[構成]
図3に示す通り、光電センサ1は、投光素子2から投射される光の角度範囲と受光素子3が受光可能な光の角度範囲とが重複する様に配置された光学系と、投光素子から受光素子に至る間に辿るべき光線の経路における投光素子2の出射開口部及び受光素子3の入射開口部に設置された視野角調整用フィルタ4とから主に構成されている。本実施例では、投光素子としてはLEDが、又受光素子としてはフォトダイオードが使用される。検出対象Wは薄く透明なガラス基板とされる。投光素子2及び受光素子3は、ケーブルEを介して外部と電気的に接続された回路基板9上に備えられている。回路基板9への給電は、ケーブルEを介して行われる。回路基板9には、動作表示灯10その他の回路素子も搭載されている。回路基板9は上下2分割構造のケース8,8’内に納められる。
図3に示される通り、上側のケース8の表面Xには、投光素子2と受光素子3の位置に合わせて投光又は受光用の開口部6が形成されている。視野角調整用フィルタ4は、投光側及び受光側の双方の開口部6に嵌め込まれている。
【0028】
視野角調整用フィルタ4については、本実施例でも、予め表又は裏面に対し所定の傾斜角度θを持つ視野角調整用の方向板(ルーバー)5が内部に所定の配列ピッチで多数形成されたシート状の成形体を利用している。一例によれば、ルーバー5の配列ピッチは数十〜数百μm、ルーバー5の配列方向に対する各ルーバー5の傾斜角度θは60°程度である。この視野角調整用フィルタ4は、図4B及びCに示す通り、投光側と受光側で視野角の調整方向即ちルーバー5の傾斜角度θが互いに対向する態様で設置されている。このとき、検出領域Sは図4Cに示されるかたちに形成される。
【0029】
ここで、視野角調整用フィルタ4による視野角の調整につき、投光側の場合を例に説明する。
視野角調整用フィルタ4を備えない場合、投光素子2から出射する光P’は、図4Aに示される通り投光素子2の出射面の中心から一様に拡がるが、視野角調整用フィルタ4を投光素子2の出射開口部に備えた場合、投光素子2から出射する光は図4Bに示される通り一定方向に制限される。尚図4B中、実線で示された領域は投光素子からの出力が50%以上存在している領域、破線で示された領域はルーバー5の遮光効果によって投光素子2からの光が到達しない領域或いは投光素子からの出力が50%以下しか存在しない領域である。図4Bに示される通り、視野角調整用フィルタ4を通過する光は、平均的にルーバー5の傾斜方向θに制限される。
同様に、受光側についても視野角の調整が行なわれる。それゆえ、検出領域S外からの光や検出対象Wからの反射光ではない外乱光は、図4Cに示す通り視野角調整用フィルタ4のルーバー5によって遮られ、受光素子3に入光しない。
【0030】
[動作]
引き続き、本実施例の光電センサ1による検出対象Wの検出動作について説明する。尚本実施例の光電センサ1は、ケース8内に投光部及び受光部のほか、増幅部や制御部が一体に組み込まれたアンプ一体型の構成とされる。従って受光素子3から出力される信号は、図3の回路基板9上に形成された増幅部で適宜増幅されてから、同じく回路基板9上の制御部にて適宜演算処理される。
光電センサ1の光学系及び検出原理は、上の実施形態にて説明した通りであるが、本実施例の光電センサ1では、受光素子3への入光量の増加によって出力開閉素子が導通(オン)するライト・オン形の動作方式とされている。従って、検出対象Wが存在すると判定した場合、光電センサ1は動作表示灯10を点灯させる様になっている。
【0031】
図4に示される通り、本実施例では光学系にレンズを使用せず、広い角度で光を投光し、また広い視野で受光できる様になっている。一方、検出領域Sを形成するのに不要な方向に光が出射したり、或いは検出領域S外からの光や検出対象Wからの反射光ではない外乱光が受光素子3に入射したりすることを防止すべく、投光素子2から出射し或いは受光素子3へ入射する光の方向は、視野角調整用フィルタ4の働きにより、検出領域Sを形成するのに必要な一定方向に制限される。
かかる構成のため、例えば上下方向に所定ピッチで複数配置されたガラス基板の夫々の下方に移動させた光電センサから上方に向けて光を投射することによりガラス基板の有無を検知するシステムに本実施例の光電センサ1を適用した場合であっても、適切な検出領域S及び検出距離dを得ることが出来る。それゆえ、透明な検出対象Wを通過した光、或いは検出対象Wが無いときは投光素子2から直接出射した光が、検出対象Wより上段にある非検出対象のガラス基板W’や検出対象Wより遠く離れた背景等で反射されることによってセンサの誤検出が生じること(図10参照)を確実に防止することが出来る。
その他、本実施例の光電センサ1でも、上記実施形態同様の作用効果を得ることが出来る。すなわち、光学系にレンズを使用しないので投光素子又は受光素子と各レンズの間に必要であった一定の焦点距離を省略出来、検出ヘッドの薄型化を図ることが出来る。さらに、検出対象Wの角度変化に強く、不感領域Nが少ない光電センサを得ることが出来る。
【実施例2】
【0032】
図5に示す通り、投受光素子2,3及び視野角調整用フィルタ4をセンサのケース表面Xから若干凹んだ箇所(凹部7)に設置し、光学系をケース表面Xからオフセットして構成することにより、ケース8上方から不感領域Nを除去してケース8上方を全て検出領域とすることが出来る。
従って、図5に示す例によれば、上記実施形態及び実施例1に記載したものと同等の性能を持つうえ、さらに検出対象Wの表面がケース表面Xに密接した状態にあっても確実に検出対象Wの有無を検出出来る光電センサを得ることが出来る。
【実施例3】
【0033】
また、図6及び図7に示す通り、上で詳細に説明した光電センサ1を複数個、所定ピッチで本体部12上に適宜配列してセンサアレイ11を形成すると共に、夫々の光電センサ1が、例えばキャリアカセットC内に所定ピッチで格納される複数個の検査対象W同士の間にある空間内に挿入される様構成することで、複数個の検出対象Wを一括検出するシステムを提供することも可能である。一例によれば、上記光電センサ1或いは検出対象Wの配列間隔は、数mm〜数十mm程度とされる。
その様なセンサアレイ11を用いれば、複数個の検出対象Wを、逐一スキャンして行く必要無く素早くかつ確実に一括検出することが可能となる。なお、検出領域S以外から来る外乱光が受光素子3に入射することがないため、その様な外乱光に起因する誤検出を防止出来る点、検出対象Wが投受光素子が配置されるセンサのケース表面Xに対して角度を持って検出領域Sに位置する場合であっても確実に検出対象Wを検出出来る点、並びに検出対象Wが透明なものであっても、検出対象Wを通過した光、或いは検出対象Wが無いときは投光素子2から直接投射された光が、検出対象Wより上段にある非検出対象のガラス基板W’で反射されて誤検出されることが防止される点は、上記各例と同様である。
図7に示す通り、センサアレイ11を回転式にすると共に、複数個の検査対象Wが所定ピッチで格納されるキャリアカセットC同士の中間にセンサアレイ11を挟むかたちで設置しておけば、1基のセンサアレイ11をより効率良く運用することが出来る。
【0034】
[変形例]
本発明の光電センサの光学系については、上記各例に記載されたもののほか、図8に例示する通り種々の変更が可能である。
例えば、図8Aで示す様に、投受光素子及びルーバー角度を適宜調節した視野角調整用フィルタ4を、投光側及び受光側とも所定角度傾斜させ断面視V字形に対向配置する構成であっても、上記実施形態に記載したものと同等の性能をもつ光電センサを得ることが出来る。
又図8Bに示す通り、投光素子2と受光素子3は元の配置の儘とし、視野角調整用フィルタ4だけをルーバー角度を適宜調節した上投光側及び受光側とも所定角度傾斜させ断面視V字形に対向配置する場合でも同様である。尚、図8A及びBに示す例では、ルーバー5の配列方向に対する各ルーバー5の傾斜角度θは90°程度のものとされている。
【0035】
以上、本発明の光電センサにつき、一実施形態及び数種の実施例に基づき詳細に説明したが、本発明は、上記の形態に限定されず、種々の設計変更が可能である。
例えば、上記各例では検出対象Wを薄く透明なガラス基板としたが、検出対象Wはこれに限られず、ガラス基板の表面に金属等が蒸着されて反射率が高くなった蒸着基板や半導体ウェハ、金属、プラスチック、紙など、種々のものであって構わない。
検出対象が複数ある場合、それらの配列方向は上下方向に限定されず、例えば水平方向であっても構わない。尚その場合、左右方向に所定ピッチで複数配置されたガラス基板の夫々の間に挿入した光電センサから、隣接するガラス基板に向けて光を投射することによってガラス基板の有無を検知することとなる。検出対象が単数の場合でも、検出方向は特に限定されない。
【0036】
視野角調整用フィルタ4については、上記各例では予め表又は裏面に対し所定の傾斜角度θを持つルーバー5が内部に所定の配列ピッチで多数形成されたシート状の成形体を利用したが、例えば同様の構造を投光又は受光素子上に直接、蒸着や塗装等の手段で形成しても良い。
上記各例では、投光側又は受光側の双方に視野角調整用フィルタ4を設置しているが、何れか一方だけに視野角調整用フィルタ4を設置する構成としても良い。
ルーバー5の配列ピッチや傾斜角度その他の仕様についても、上記実施例記載のものに限られず、現実の光学系の状況に応じて適宜調整して構わない。従って、ルーバー5は例えば配列ピッチや傾斜角度が漸増若しくは漸減したりするものであったり、或いは配列ピッチや傾斜角度がランダムなものであっても良い。
視野角調整用フィルタ4の設置形態も、上記各例に記載されたものに限定されず、例えばルーバー5が内部に所定の態様で形成されたシート或いはフィルム状の成形体を視野角調整用フィルタ4とし、これをセンサのケース8上面に形成された投光又は受光用の透明な窓に貼付けて設置しても構わない。
【0037】
又上記各例では、投光素子2としてLEDを使用したものについて説明したが、投光素子はこれに限定されず、レーザダイオード等種々の投光源を使用し得る。受光素子3についても、上記各例ではフォトダイオードを使用したものについて説明したが、フォトトランジスタや、光導電素子等種々の光電変換素子を使用し得る。
上記実施例ではアンプ一体型の光電センサにつき説明したが、投光部及び受光部を有するヘッド部と、増幅部や制御部等からなるアンプ部を分離した構成としても構わない。
さらに、上記実施例では、光電センサ1の動作方式は受光素子3への入光量の増加によって出力開閉素子が導通(オン)するライト・オン形としたが、反対に入光量の減少によって出力開閉素子が導通するダーク・オン形としても良い。
【0038】
この様に、本発明の光電センサは、限定反射形の長所を活かしつつも、検出ヘッドの薄型化を実現出来るほか、検出対象の角度変化に強く、不感領域の影響が少ない等、より信頼性の高い光電センサを提供出来る新規かつ有用なるものである。
又本発明によれば、その様な光電センサを複数個、所定ピッチで一直線上に配列してセンサアレイを形成し、例えばキャリアカセット内に所定ピッチで格納される複数個の検査対象を一括検出するシステムを提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の光電センサの光学系及び検出原理を説明するための斜視図である。
【図2】図1の光電センサを端部側から見た図であって、本発明の光電センサの光学系及び検出原理を示す模式図である。
【図3】本発明の光電センサの一実施例の構成を示す斜視図である。
【図4】図3の光電センサを端部側から見た図であって、本実施例の光電センサの光学系を示すものである。
【図5】本発明の光電センサの別の実施例の構成を示す図である。
【図6】本発明の光電センサを用いてセンサアレイを構成した一例を示す斜視図である。
【図7】図6のセンサアレイの側面図である。
【図8】本発明の光電センサの変形例の構成を示す図である。
【図9】現状の限定反射形光電センサの光学系を示す図である。
【図10】従来例のセンサアレイの説明図である。
【図11】現状の限定反射形光電センサの光学特性を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
P 投光領域
R 受光領域
S 検出領域
W 検出対象
1 光電センサ
2 投光素子
3 受光素子
4 視野角調整用フィルタ
5 視野角調整用方向板(ルーバー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光素子から投射される光の角度範囲と受光素子が受光可能な光の角度範囲とが重複する様に配置された光学系を備え、
前記投光素子から投射された光が前記重複領域にある検出対象の表面で反射して前記受光素子に入射することにより前記検出対象が検出される限定反射形の光電センサであって、
前記投光素子から前記受光素子に至る光線が辿るべき経路における、前記投光素子の出射開口部又は前記受光素子の入射開口部の一方又は双方に、予め所定の傾斜角度を持つ方向板が所定間隔で複数配列された視野角調整用フィルタを設け、
前記投光素子から出射或いは前記受光素子へ入射する光の方向を所定方向に制限して、前記投光素子から前記重複領域外へ光を投射すること又は前記重複領域外からの光が前記受光素子に入射することを防止するようにしたことを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
前記投光素子、受光素子及び視野角調整用フィルタその他を収容するケースを有し、
前記投光素子及び受光素子並びに前記視野角調整用フィルタを前記ケース表面に形成された凹部内に設置し、光学系を前記ケース表面からオフセットして構成したことを特徴とする請求項1に記載の光電センサ。
【請求項3】
所定間隔で配列された複数の検出対象を検出するためのセンサアレイであって、
前記検出対象の配列間隔に相当する間隔で一直線上に配列された、前記検出対象の数に対応する数の請求項1又は2に記載の光電センサからなり、
前記光電センサを夫々、所定間隔で配列された検出対象同士の間にある空間内に挿入することによって複数の前記検出対象の有無を一括検出することを特徴とするセンサアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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