説明

光電流を用いた被検物質検出に用いられる作用電極、それを用いた測定装置および測定方法

【課題】 従って、光電流を用いた被検物質の特異的検出方法において、作用電極上に形成された複数の検出スポットと、検出装置に設けられた光照射機構より照射される光とが正確に位置合わせされているかを容易に確認でき、その結果各検出スポットにて発生する電流値を精度良く検出することのできる検出方法の提供。
【解決手段】 作用電極上に、プローブ物質を担持したスポットに加えて、増感色素を担持した色素標識スポットを備え、色素標識スポットに光を照射した場合の電流値が所定範囲外の場合装置の不具合を報知することを特徴とする方法。特に、複数の色素標識スポットを、前記作用電極上に設けられたスポットのうち相対的に最も離れた位置の二点とすることで、作用電極11の取り付けが適切になされているか否かを容易に知ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電流を用いて、核酸、外因性内分泌攪乱物質、抗原等の特異的結合性を有する被検物質を特異的に検出する方法において、測定条件が適切であるかを容易に知ることができる方法およびそれに用いられるセンサユニット及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料中のDNAを検出及び解析する遺伝子診断法が、各種病気の新たな予防および診断法として、有望視されている。このようなDNAの検出を簡便かつ正確に行う技術として、以下のものが提案されている。
【0003】
被検体DNAを、これと相補的な塩基配列を有し、かつ蛍光物質を標識されたDNAプローブとハイブリダイズさせ、その際の蛍光シグナルを検出する、DNAの分析方法が知られている(例えば、特開平7−107999号公報(特許文献1)および特開平11−315095号公報(特許文献2)参照)。この方法にあっては、ハイブリダイゼーションによる二本鎖DNAの形成を色素の蛍光により検出する。蛍光検出においては、プローブDNAを固定化した複数の検出スポットを同一の基板に形成させることができるため、複数のプローブDNAに対する特異性を一度の検出により解明することができるという長所がある。しかし、蛍光検出に必要な受光器などを含む検出装置は大型で高価で、また、二本鎖DNAの一本鎖化、ハイブリダイゼーション、洗浄、蛍光検出をそれぞれ別装置で行なわなければならず、DNAの検出を簡便に行なうことができない。
【0004】
ところで、増感色素を用いて光から電気エネルギーを発生させる太陽電池が知られている(例えば、特開平1−220380号公報(特許文献3)参照)。この太陽電池は、多結晶の金属酸化物半導体を有し、かつその表面積に広範囲にわたり増感色素の層が形成されてなるものである。
【0005】
そして、このような太陽電池の特性を生物化学的な分析に応用しようとする試みとして、色素の光励起により生じる光電流を被検物質(DNA、蛋白などの生体分子)の検出に利用する提案がなされている(例えば、中村他「光電変換による新しいDNA二本鎖検出法」(日本化学会講演予稿集 Vol.81ST NO.2(2002)第947頁(非特許文献1))。
【0006】
さらに、本発明者らの一部は、先に、光電流を用いて、核酸、外因性内分泌攪乱物質、抗原等の特異的結合性を有する被検物質を特異的に検出する方法を提案している。例えば、WO2007/037341号公報(特許文献4)、特開2006−119111号公報(特許文献5)、特開2006−119128号公報(特許文献6)、特開2007−085941号公報(特許文献7)、特開2008−020205号公報(特許文献8)、特開2008−157915号公報(特許文献9)、特開2008−157916号公報(特許文献10)、特開2008−192770号公報(特許文献11)、特開2008−202995号公報(特許文献12)、特開2009−186453号公報(特許文献13)、特開2009−186454号公報(特許文献14)、特開2009−186462号公報(特許文献15)、特開2010−038813号公報(特許文献16)、さらに、特願2010−232919号(特許文献17)、特願2011−504882号(特許文献18)を提案している。
【0007】
これらの本発明者らの提案した方法において、光照射は、作用電極上に形成された被検物質と特異的に結合できる物質を担持した複数の検出スポットに順次照射していくことから、効率のよい検出が可能となる。他方、一度の操作で複数のスポットにおける検出を行う方法であることから、その測定条件が適切でないと、操作のやり直しが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−107999号公報
【特許文献2】特開平11−315095号公報
【特許文献3】特開平1−220380号公報
【特許文献4】WO2007/037341号公報
【特許文献5】特開2006−119111号公報
【特許文献6】特開2006−119128号公報
【特許文献7】特開2007−085941号公報
【特許文献8】特開2008−020205号公報
【特許文献9】特開2008−157915号公報
【特許文献10】特開2008−157916号公報
【特許文献11】特開2008−192770号公報
【特許文献12】特開2008−202995号公報
【特許文献13】特開2009−186453号公報
【特許文献14】特開2009−186454号公報
【特許文献15】特開2009−186462号公報
【特許文献16】特開2010−038813号公報
【特許文献17】特願2010−232919号
【特許文献18】特願2011−504882号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】中村他「光電変換による新しいDNA二本鎖検出法」(日本化学会講演予稿集 Vol.81ST NO.2(2002)第947頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、今般、作用電極上に形成された複数の検出スポットと、検出装置に設けられた光照射機構より照射される光とが正確に位置合わせされているかを容易に確認できる手法を見出した。
従って、本発明は、光電流を用いた被検物質の特異的検出方法において、作用電極上に形成された複数の検出スポットと、検出装置に設けられた光照射機構より照射される光とが正確に位置合わせされているかを容易に確認でき、その結果各検出スポットにて発生する電流値を精度良く検出することのできる検出方法の提供をその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明による被検物質の特異的検出方法は、
増感色素が結合した被検物質がプローブ物質を介して固定された作用電極を、対電極と共に電解質媒体に接触させ、前記作用電極に光を照射して前記増感色素を光励起させ、光励起された増感色素から作用電極への電子移動に起因して作用電極と対電極との間に流れる光電流を検出することを含んでなる被検物質の特異的検出方法であって、
前記作用電極が、前記増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる電子受容層を有し、この電子受容層の表面に前記プローブ物質が担持されてなり、
前記作用電極上に、前記プローブ物質を担持したスポットに加えて、前記増感色素を担持した色素標識スポットを備え、
前記作用電極を前記被検物質と接触させることを少なくとも含んでなる、前記増感色素が結合した被検物質がプローブ物質を介して固定された作用電極を得る反応工程と、
前記電解質媒体を供給して、光を照射し、光電流を測定する測定工程と、
測定の結果を表示する結果報知工程とを有し、
前記結果報知工程において、色素標識スポットに光を照射した場合の電流値が所定範囲外の場合装置の不具合を報知することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による検出方法を実施するための装置の一例を示す図である。
【図2】本発明による検出方法を実施するためのセンサセル構成を示す図である。
【図3】センサセルの電極部の構成を示す図である。
【図4】本発明による検出方法に用いられる複数の検出スポットが設けられた作用電極を示す図である。
【図5】本発明による検出方法に用いられる、増感色素を担持した色素標識スポット30−1および30−2が設けられた作用電極を示す図である。
【図6】図6(A)は、作用電極11上に設けられた複数のスポットと、押さえ部材20に設けられた複数の開口部19との位置が一致している状態を示す図であり、図6(B)は、作用電極11上に設けられた複数のスポットと、押さえ部材20に設けられた複数の開口部19との位置がずれて取り付けられた状態を示す図である。
【図7】実施例1において得られた、コントロールプローブDNA固定化スポットにおけるターゲットDNA濃度別の検出電流値を表したグラフである。
【図8】実施例2において得られた、検出部位を含むプローブDNA固定化スポットにおけるターゲットDNAの各濃度における検出電流値およびそれから標準偏差×3を差し引いた値を基に作成した検出したターゲットDNAが完全一致か一塩基違いかを見極める境界を表すグラフである。
【図9】実施例3において得られた、75nMに調整した完全一致ターゲットDNAと一塩基違いターゲットDNAを用いた際の電流値(それぞれ図中コントロールの110.2nAおよび108nA)と、この電流値から図7および図8に示したグラフより求めた、完全一致プローブDNA固定化スポットにおける算出電流値(図中の検出部位の130.2nA)と、境界ライン値(図中の検出部位の62.8nA)が示されている。実際の測定値と、境界ライン値を対比することで、完全一致ターゲットDNA、一塩基違いターゲットDNAいずれにおいても見極めができた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
光電流を用いた被検物質の特異的検出
本発明の方法にあっては、まず、被検物質を含む試料液と、作用電極と、対電極とを用意する。本発明に用いる作用電極は、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を表面に備えた電極である。すなわち、プローブ物質は、被検物質と直接的に特異的に結合する物質のみならず、被検物質を受容体蛋白質分子等の媒介物質に特異的に結合させて得られる結合体と特異的に結合可能な物質であってよい。次いで、増感色素の共存下、試料液を作用電極に接触させて、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させ、この結合により増感色素を作用電極に固定させる。増感色素は、光励起に応じて作用電極に電子を放出可能な物質であり、被検物質あるいは媒介物質に予め標識させておくか、あるいは被検物質およびプローブ物質の結合体にインターカレーション可能な増感色素を用いる場合には試料液に単に添加すればよい。
【0014】
そして、作用電極と対電極とを電解質媒体に接触させた後、作用電極に光を照射して増感色素を光励起させると、光励起された増感色素から、作用電極表面に存在させた電子受容物質へ電子移動が起こる。この電子移動に起因して作用電極と対電極との間に流れる光電流を検出することにより、被検物質を高い感度で検出することができる。また、この検出電流は試料液中の被検試料濃度との高い相関関係を有しているので、測定された電流量または電気量に基づき被検試料の定量測定を行うことができる。
【0015】
本発明は、基本的にこれらの装置および方法に適用して、適切な測定が行われることを確認できる。具体的には、本発明は、WO2007/037341号公報、特開2006−119111号公報、特開2006−119128号公報、特開2007−085941号公報、特開2008−020205号公報、特開2008−157915号公報、特開2008−157916号公報、特開2008−192770号公報、特開2008−202995号公報、特開2009−186453号公報、特開2009−186454号公報、特開2009−186462号公報、特開2010−038813号公報、さらに、特願2010−232919号、特願2011−504882号に記載の方法および装置に適用することができる。
【0016】
測定装置
上記基本原理に基づいた本発明による装置および検出方法の基本的な特徴を、図面を用いて説明する。図1に示す、被検物質の特異的検出に、色素の光励起により生じる光電流を利用した測定装置10は、基本構成として、センサセル1と、センサセル1へ流体を供給するための流体供給手段2およびそれらの間におかれたスイッチングバルブ3と、センサセル1内に設けた作用電極の電子受容層上に設けたプローブ物質を担持しているスポットへと光を照射するための光源レーザーヘッド4と、XY自動ステージ5、センサセル内に設けた反応および検出時の温度調整機能を制御する温度調整制御部6とを備えてなり、測定装置10からの信号を処理するパソコン7と接続されている。
【0017】
図2はセンサセル1の構造を示す図であり、作用電極11を、対電極12と、それらに通電を可能にする作用電極導通部13および対電極導電部14とを有し、対電極12には電解液が送入され、そして排出される送入口15および排出口16が設けられてなる。作用電極11と対電極12とは作用電極用ヒーター17とともに押え部材20により固定される。作用電極11に対して、図2中のA方向から光が照射され、この光は、作用電極11上の複数スポットの位置にそれぞれ対応した場所に複数の開口部19有する押さえ部材20を通過して、作用電極11に至る。増感色素を光励起させると、光励起された増感色素から電子受容物質(図示せず)へ電子移動が起こる。この電子移動に起因して作用電極と対電極との間に流れる光電流を検出することにより、被検物質を高い感度で検出することができる。
【0018】
図3は、作用電極11と対電極12との構造をさらに説明するための図である。作用電極11と対電極12との間には、両者を所定の距離に置くOリング21が、対電極凹部22に嵌め込まれながら置かれる。送入口15及び排出口16は、センサセル内での空気と溶液との置換が行われやすいよう、Oリング内の両端に設けている。
【0019】
さらに、本発明にあっては、作用電極11の対電極12と向かい合う面上に、図4に示される通り、複数の検出スポット30が設けられてなる(図中、上下2列以外はその存在を省略して記載している)。このスポットの少なくとも一つには、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質が担持される。さらに本発明においては、以下に説明する他のスポットを設けてなることを特徴とする。
【0020】
色素標識スポット
本発明にあっては、作用電極は、プローブ物質を担持したスポットに加えて、前記増感色素を担持した色素標識スポットを備えてなる。この色素標識スポットに、光をあてこのスポットにある増感色素から電子移動が起こり作用電極と対電極との間に光電流が流れる。このスポットに担持される増感色素をあらかじめ定められた量としておき、その際の光電流量を事前に取得しておく。同様に作成された別の作用電極について、光電流量を測定し、事前に取得した電流値と比較することで、その測定条件が所定のものであるかを知ることができる。具体的には、次のことを知ることができる。すなわち、(1)電解液に関する不備を知ることができる。例えばセル内に電解液が充填されていないと電流は流れず、また電解液が質的に異なっている(品質が悪い)場合には、所定の電流値が得られない。(2)測定条件の不備を知ることができる。例えば光源の強度の相違(劣化による変化)、光源移動機構の不備、電流値取得の不良(リード線の断線、導通部の不具合)の場合には、所定の電流値が得られない。(3)作用電極の不備を知ることができる。例えば、作用電極が規格どおりに作成されていない、劣化している場合には、所定の電流値が得られない。
【0021】
本発明による方法においては、結果報知工程として、色素標識スポットの電流値を、事前に取得した電流値と比較し、その測定条件が所定のものであるかを提示する。事前に取得した電流値との比較は、事前に取得した電流値に対し一定の幅を持った所定範囲を規定し、その範囲外の場合装置の不具合として報知するよう構成する。所定の範囲は、好ましくは、得られた電流値の標準偏差を求め、例えばその3倍(3σ)の範囲を外れる値を不具合として報知するよう構成されてよい。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、前記作用電極が、複数の色素標識スポットを備えてなる。より好ましくは、前記複数の色素標識スポットが、前記作用電極上に設けられたスポットのうち相対的に最も離れた位置の二点とされる。この態様による作用電極を、図を用いて説明する。図5は複数のスポットが設けられた作用電極11であり、設けられたスポットのうち相対的に最も離れた位置の二点である30−1および30−2のスポットが色素標識スポットとされ、他のスポットの少なくとも一つには、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質が担持される。この作用電極を図3に記載の構成のセンサセル1とし、図1および2に示される装置に装着する。その際に、作用電極11上に設けられた複数のスポットと、押さえ部材20に設けられた複数の開口部19との位置が一致していることが正確な測定には必要となる。一方、作用電極11の取り付けが適切になされていない等により、両者の位置が一致していないと正確な測定ができなくなる。本発明のこの態様によれば、両者の位置関係が適切にあるかを知ることが可能となる。
【0023】
図6(A)は、作用電極11上に設けられた複数のスポットと、押さえ部材20に設けられた複数の開口部19との位置が一致している状態を示す図である。この図において、スポット30−1および30−2に加え、他のスポットも開口部19の位置と正しく一致している。このような状態にあるとき、スポット30−1および30−2から測定される電流値は、色素標識スポットに担持された増感色素の量が同じであればほぼ同一の値となるはずである。
【0024】
他方、図6(B)は、作用電極11上に設けられた複数のスポットと、押さえ部材20に設けられた複数の開口部19との位置がずれて取り付けられた状態を示す図である。この図において、スポット30−1は開口部19の位置とほぼ一致しているが、スポット30−2をはじめ他のスポットはそれぞれ開口部19の位置と一致しない。その結果、光照射による光量が相違し、スポット30−1および30−2から測定される電流値は、色素標識スポットに担持された増感色素の量が同じとされても、異なる値(スポット30−2の値がスポット30−1よりも小さくなる)を示すことになる。この態様にあっても、結果報知工程として、色素標識スポットの電流値を、事前に取得した電流値と比較し、その測定条件が所定のものであるかを提示する。異なる値を示した場合には、不具合として報知するよう構成される。本発明の好ましい態様にあっては、二つの色素標識スポットが、前記作用電極上に設けられたスポットのうち相対的に最も離れた位置の二点とされていることから、そのずれがもっとも大きくなる位置に設けられている。従って、わずかな取り付けの不具合をも知ることが出来る。
【0025】
色素標識スポットは、色素標識のみを固定してもよいが、好ましくは色素標識は、プローブ物質と同一種類の物質を介して作用電極に固定される。例えば、プローブ物質がDNAである場合、色素標識はDNAを介して作用電極に固定されることがこのましい。この場合の固定方法は、プローブ物質の固定方法と同一であってよい。プローブ物質と同一物質を介して、かつ同一の方法で色素標識が固定されることの利点は以下のとおりである。後記するように、例えば完全一致プローブスポットにて得られる電流値が小さかった場合、PCR産物が増幅していない、温調されていないなど種々の原因が考えられ、その一つとして、完全一致プローブの固定化量が規定を満たしていないということも考えられる。この場合、何らかの理由でプローブ物質が固定化されていないということになるが、色素標識スポットにおいても規定の固定化量を満たしていないのであれば、スポット装置の条件が悪い、作用電極が規定を満たしていないなど、不具合の原因を更に特定できることになる点で有利である。より具体的な色素標識スポットの固定方法は、被検物質の遺伝的多型を検出するものであるとき、プローブDNAが固定化される工程に置いて、特異的に結合するか否かを見極めるプローブDNAが含まれる溶液と色素標識されたプローブDNAが含まれる溶液をそれぞれ準備し、溶液のスポット時のみそれぞれの溶液をスポットする。なお、色素標識されたプローブ物質は色素標識以外の条件はできるだけ同等のものを用いることが好ましい。例えば、プローブ物質がDNAであれば、同じ塩基数であればより好ましい。
【0026】
完全一致プローブDNAスポット
本発明の好ましい態様によれば、作用電極は、プローブ物質が被検物質の遺伝的多型を検出するものであるとき、塩基置換が生じていない領域と完全に一致する配列を有しかつ増感色素が結合されたプローブ物資を担持した完全一致プローブDNAスポットをさらに備えてなる。この完全一致プローブDNAスポットが有する配列は、塩基置換が生じていないため、プローブ物質を担持したスポットには塩基置換によりハイブリダイズしない被検物質が、ハイブリダイズすることになる。この完全一致プローブDNAスポットと、プローブ物質を担持したスポットとから得られる電流値を比較することで次のように、より適切な測定、検出が可能となる。本発明の好ましい態様によれば、遺伝的多型は一塩基多型である。
【0027】
この態様にあっては、この完全一致プローブDNAスポットに光をあて、このスポットにあるプローブに担持された増感色素から電子移動が起こり作用電極と対電極との間に光電流が流れる。このスポットに担持される完全一致プローブDNA、すなわち増感色素をあらかじめ定められた量としておき、次のような検量線を作成する。まず、被検物質に対して遺伝子多型ではない物質の濃度と、完全一致プローブDNAスポットにおける光電流値との第一の検量線を作成する。次に、同じく被検物質に対して遺伝子多型ではない物質の濃度と、前記プローブ物質を担持したスポットにおける光電流値との第二の検量線を作成する。この予め作成した検量線と、測定値とを対比することで、検体中のDNA濃度を知ることが出来る。すなわち、測定工程により得られた完全一致プローブDNAスポットにおける電流値と、前記第一の検量線と対比して、前記被検物質の濃度をまず決定する。次に、この濃度に対応する電流値を、第二の検量線から得て、この電流値と、測定工程で得られたプローブ物質を担持したスポットにおける電流値とを対比して、その差が所定の範囲外の場合に、被検物質に対して遺伝子多型ではない物質は検出されなかったとする。ここで、所定の範囲外とは、好ましくは、得られた電流値の標準偏差を求め、例えばその3倍(3σ)の範囲を外れることを意味する。従って、より確実な遺伝子多型の判定が可能となる。
【0028】
さらに、この態様によれば、色素標識スポットに加えて、測定値が得られた検量線から大きく離れた値の場合、以下の様な不具合が生じている可能性があると知ることが出来る。すなわち、検体からDNAが抽出できていない、DNAが増幅できていない、DNAが1本鎖化されていない、ハイブリダイゼーション条件が適切ではない等の不具合が発生していると考えられる。この場合、本発明による方法にあっては、色素標識スポットの場合と同様に、不具合として報知するよう構成されてよい
【0029】
被検物質の特異的検出方法
本発明による被検物質の特異的検出方法は、上記の作用電極を用いた以外は、通常知られたまたは公知の被検物質の特異的検出方法と同様であってよい。
【0030】
一般的な方法を説明すれば、例えば、まず、ハイブリダイゼーション反応溶液が、センサセル1内に供給される。次に、センサセル1に設けた送入口15から、ハイブリダイゼーション反応させるための被検物質を供給し、設定温度に温度調整されたセンサセル1内で、作用電極上に設けた被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質とハイブリダイゼーション反応を行う。その後、未結合の物質を洗浄するための洗浄溶液が供給される。
【0031】
このときの洗浄は、プローブ物質に結合した被検物質は結合したままで、未結合物質のみを取り除く必要がある。そこで、洗浄溶液には界面活性剤を配合させることが好ましい。ただし、センサセル内の作用電極上で反応、検出を行うために作用電極上に設けたプローブ上に洗浄流体の供給、排出に伴って発生する気泡が残存すると作用電極表面での反応ムラが発生する可能性があるため気泡の発生および残存には留意が必要である。
【0032】
洗浄後、センサセル内から排出口16より洗浄液を排出し、次に電解質媒体が供給され、センサセル1内に光源から光が照射され、光励起に伴う電流値の測定がなされる。電解質媒体の組成は上記の通りである。測定終了後、センサセル1内の電解質媒体はセンサセル外に排出される。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、前記作用電極と前記対電極との間隔は0.1〜3mmであることが好ましい。センサセル容量は、ハイブリダイゼーション反応を行う際には被検物質量が少量で行うことが好ましいが、作用電極上に設けたプローブ物質への固体表面に対する溶液の拡散効率を考慮すると溶液量は一定量以上必要となる。この構成によれば、同一センサセル内で、短時間でハイブリダイゼーション反応を完了させることができ、確実に光電流検出が可能となる。
【0034】
電解質含有溶液
本発明において用いられる電解質含有溶液は、電解質と、非プロトン性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される少なくとも一種の溶媒と、所望により添加物とを含んでなることが好ましい。電解質は、含水性基材中を自由に移動して増感色素、作用電極、および対電極との間で電子の授受に関与できるものであれば限定されず、幅広い種類の電解質が使用可能である。好ましい電解質は、光照射により励起された色素に電子を供与するための還元剤(電子供与剤)として機能できる物質であり、そのような物質の例としては、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化カルシウム(CaI)、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化アンモニウム(NHI)、テトラプロピルアンモニウムヨージド(NPrI)、チオ硫酸ナトリウム(Na)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、ヒドロキノン、K[Fe(CN)]・3HO、フェロセン−1,1’−ジカルボン酸、フェロセンカルボン酸、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、トリエチルアミン、チオシアネートアンモニウム、ヒドラジン(N)、アセトアルデヒド(CHCHO)、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩(TMPD)、L−アスコルビン酸、亜テルル酸ナトリウム(NaTeO)、塩化鉄(II)四水和物(FeCl・4HO)、EDTA、システイン、トリエタノールアミン、トリプロピルアミン、ヨウ素を含むヨウ化リチウム(I/LiI)、トリス(2−クロロエチル)リン酸塩(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトエタノールアミン、二酸化チオ尿素、(COOH)、HCHO、およびこれらの組合せが挙げられ、より好ましくは、NaI、KI、CaI、LiI、NHI、テトラプロピルアンモニウムヨージド(NPrI)、チオ硫酸ナトリウム(Na)、および亜硫酸ナトリウム(NaSO)、およびこれらの混合物であり、さらに好ましくは、テトラプロピルアンモニウムヨージド(NPrI)である。溶媒は、非プロトン性溶媒、プロトン性溶媒、またはそれらの混合物である。すなわち、水を主体に緩衝液成分を混合した極性溶媒系のもの、および非プロトン性の極性溶媒を用いることができる。非プロトン性の極性溶媒としては、アセトニトリルなどのニトリル類、炭酸プロピレンや炭酸エチレンなどのカーボネート類、1,3−ジメチルイミダゾリノンや3−メチルオキサゾリノン、ジアルキルイミダゾリウム塩などの複素環化合物やジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどを用いることができる。電解質媒体に含まれる溶媒は、複数の種類を混合して用いることができ、実使用上、検出対象に応じて溶媒組成を適宜変更可能である。
【0035】
その他に電解質は、溶液抵抗を下げる支持電解質として機能できる物質を含んでなるものでもよく、そのような物質の例としては、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化リチウム(LiCl)、塩化ルビジウム(RbCl)、塩化セシウム(ScCl)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化アンモニウム(NHCl)等の塩化物塩、および硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カリウム(KSO)、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ルビジウム(RbSO)、硫酸セシウム(CsSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸アンモニウム((NHSO)等の硫酸塩、および硝酸ナトリウム(NaNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸リチウム(LiNO)、硝酸ルビジウム(RbNO)、硝酸セシウム(ScNO)、硝酸カルシウム(Ca(NO)、硝酸マグネシウム(Mg(NO)、硝酸アンモニウム(NHNO)等の硝酸塩、および臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)、臭化リチウム(LiBr)、臭化ルビジウム(RbBr)、臭化セシウム(CsBr)、臭化カルシウム(CaBr)、臭化マグネシウム(MgBr)、臭化アンモニウム(NHBr)等の臭化物塩、およびクエン酸一ナトリウム(NaH(C))、クエン酸二ナトリウム(NaH(C))、クエン酸三ナトリウム(Na(C))、クエン酸一カリウム(KH(C))、クエン酸二カリウム(KH(C))、クエン酸三カリウム(K(C))等のクエン酸塩、および硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等の酸・塩基、およびトリス緩衝液、リン酸緩衝液、グッドの緩衝液(ADA、PIPES、POPSO、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Tricine、BicineおよびTAPS)等の生化学用緩衝液や、これらの組合せが挙げられ、より好ましくは、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カリウム(KSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸マグネシウム(Mg(NO)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)、臭化マグネシウム(MgBr)、およびこれらの混合物であり、さらに好ましくは、塩化ナトリウム(NaCl)である。
【0036】
洗浄溶液
本発明の好ましい様態によれば、ハイブリダイゼーション工程後に、未結合の物質を洗浄するために洗浄溶液が複数回供給され、スポットを洗浄することが好ましい。これにより、未結合物質を取り除き、スポット上のプローブ物質に結合した被検物質のみを残存させることが可能となる。
【0037】
本発明の好ましい様態によれば、この洗浄溶液には界面活性剤を配合させることが好ましく、より好ましくは界面活性剤を0.001%以上10%以下配合させる。界面活性剤を0.001%以上配合することにより、洗浄効率を上昇させることができるようになる。界面活性剤を10%以下とすることで、センサセル内の作用電極上で反応、検出を行うために作用電極上に設けたプローブ上に洗浄流体の供給、排出に伴って発生する気泡の残存を抑制でき、作用電極表面での反応ムラを抑制することができるようになる。
【0038】
本発明の好ましい様態によれば、光電流検出工程後にも、洗浄溶液が複数回供給され対電極表面を含めたセンサセル内を洗浄することが好ましい。測定終了後にセンサセル内を洗浄することができるため、対電極は交換せずに作用電極の交換のみで連続して次の反応と検出を行うことができる。
【0039】
光源
本発明において、用いられる光源としては、標識色素を光励起できる波長の光を照射できるものであれば限定されず、好ましい例としては、蛍光灯、ブラックライト、殺菌ランプ、白熱電球、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀−キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色、青、緑、赤)、レーザー(CO2レーザー、色素レーザー、半導体レーザー)、太陽光を用いることができ、より好ましくは、蛍光灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色、青、緑、赤)、太陽光等を挙げることができる。また、必要に応じて、分光器やバンドパスフィルタを用いて特定波長領域の光のみを照射してもよい。
【0040】
本発明の好ましい態様によれば、互いに異なる光波長で励起可能な二種以上の増感色素を用いて複数種類の被検物質を個別に検出する場合、光源から波長選択手段を介して特定波長の光を照射することにより、複数の色素を個別に励起することが可能である。波長選択手段の例としては、分光器、色ガラスフィルター、干渉フィルタ、バンドパスフィルタ等が挙げられる。また、増感色素の種類に応じて異なる波長の光を照射可能な複数の光源を用いてもよく、この場合の好ましい光源の例としては、特定波長の光が照射されるレーザー光やLEDを用いてもよい。また、作用極に光を効率よく照射するため、石英、ガラス、液体ライトガイドを用いて導光してもよい。
【0041】
被検物質およびプローブ物質
本発明における被検物質としては、特異的な結合性を有する物質であれば限定されず、種々の物質であってよい。このような被検物質であれば、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を作用電極表面に担持させておくことにより、被検物質をプローブ物質に直接または間接的に特異的に結合させて検出することが可能となる。
【0042】
すなわち、本発明にあっては、被検物質およびプローブ物質として互いに特異的に結合可能なものを選択することができる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、特異的な結合性を有する物質を被検物質とし、被検物質と特異的に結合する物質をプローブ物質として作用電極に担持させるのが好ましい。これにより、作用電極上に被検物質を直接、特異的に結合させて検出することができる。この態様における、被検物質およびプローブ物質の組合せの好ましい例としては、一本鎖の核酸および核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸の組合せ、ならびに抗原および抗体の組合せが挙げられる。
【0043】
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質を一本鎖の核酸とし、プローブ物質を核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸とするのが好ましい。
【0044】
一本鎖の核酸を被検物質とする場合、プローブ物質である核酸と相補性部分を有していればよく、被検物質を構成する塩基対の長さは限定されないが、プローブ物質が核酸に対して10bp以上の相補性部分を有するのが好ましい。本発明の方法によれば、200bp、500bp、1000bpの塩基対を有する比較的鎖長の長い核酸であっても、高感度にプローブ物質と被検物質の核酸同士の特異的結合形成を光電流として検出することができる。
【0045】
被検物質としての一本鎖の核酸を含む試料液は、末梢静脈血のような血液、白血球、血清、尿、糞便、精液、唾液、培養細胞、各種臓器細胞のような組織細胞等の、核酸を含有する各種検体試料から、公知の方法により核酸を抽出して作製することができる。このとき、検体試料中の細胞の破壊は、例えば、振とう、超音波等の物理的作用を外部から加えて担体を振動させることにより行なうことができる。また、核酸抽出溶液を用いて、細胞から核酸を遊離させることもできる。核酸溶出溶液の例としては、SDS、Triton-X、Tween-20のような界面活性剤、サポニン、EDTA、プロテア−ゼ等を含む溶液が挙げられる。これらの溶液を用いて核酸を溶出する場合、37℃以上の温度でインキュベ−トすることにより、反応を促進することができる。
【0046】
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質とする遺伝子の含有量が微量である場合には、公知の方法により遺伝子を増幅した後検出を行なうのが好ましい。遺伝子を増幅する方法としては、ポリメラ−ゼチェインリアクション(PCR)等の酵素を用いる方法が代表的であろう。ここで、遺伝子増幅法に用いられる酵素の例としては、DNAポリメラ−ゼ、Taqポリメラ−ゼのようなDNA依存型DNAポリメラ−ゼ、RNAポリメラ−ゼIのようなDNA依存型RNAポリメラ−ゼ、Qβレプリカ−ゼのようなRNA依存型RNAポリメラ−ゼが挙げられ、好ましくは温度を調節するだけで連続して増幅を繰り返すことができる点で、Taqポリメラ−ゼを用いるPCR法である。
【0047】
本発明の好ましい態様によれば、上記増幅時に特異的に核酸を増感色素で標識することが出来る。一般的には、5’末端側を増感色素標識したPCRプライマーを用いて遺伝子増幅することで、増感色素が標識された被検物質が得られる。他に、増感色素で標識されたdUTPやアミノアリル修飾dUTPを取り込ませることにより、核酸を増感色素で標識することができる。アミノアリル修飾dUTPを取り込ませた場合、次のカップリング段階において、N−ヒドロキシサクシンイミド(N-hydroxysuccinimide)により活性化された増感色素が修飾dUTPと特異的に反応し、均一に増感色素で標識された被検物質が得られる。
【0048】
本発明の好ましい態様によれば、上記のようにして得られた核酸の粗抽出液あるいは精製した核酸溶液をまず90〜98℃、好ましくは95℃以上の温度で熱変性を施し、一本鎖核酸を調製することができる。また、アルカリ変性を行わせて、一本鎖核酸を調整することができる。
【0049】
本発明にあっては、被検物質とプローブ物質が間接的に特異的に結合するものであってもよい。すなわち、本発明の別の好ましい態様によれば、特異的な結合性を有する物質を被検物質とし、この被検物質と特異的に結合する物質を媒介物質として共存させ、この媒介物質と特異的に結合可能な物質をプローブ物質として作用電極に担持させるのが好ましい。これにより、プローブ物質に特異的に結合できない物質であっても、媒介物質を介して作用電極上に間接的に特異的に結合させて検出することができる。この態様における、被検物質、媒介物質、およびプローブ物質の組合せの好ましい例としては、リガンド、このリガンドを受容可能な受容体蛋白質分子、およびこの受容体蛋白質分子と特異的に結合可能な二本鎖の核酸の組合せが挙げられる。リガンドの好ましい例としては、外因性内分泌攪乱物質(環境ホルモン)が挙げられる。外因性内分泌撹乱物質とは、受容体蛋白質分子を介してDNAに結合し、その遺伝子発現に影響して毒性を生じる物質であるが、本発明の方法によれば、被検物質によりもたらされる受容体等のタンパク質のDNAに対する結合性を簡便にモニタリングすることができる。
【0050】
本発明によれば、1つのプローブ物質に対し、異なる入手経路に由来する複数の同一被検物質を同時に反応させ、サンプルの由来による被検物質量の差異を判断することにより、目的とする入手経路に由来する被検物質を定量することも可能である。具体的な適用例としては、マイクロアレイ上での競合的ハイブリダイゼーションによる発現プロフィール解析が挙げられる。これは、細胞間での特定遺伝子の発現パターンの差異を解析するため、別々の蛍光色素で標識された被検物質を、同一プローブ物質に対して競合的にハイブリダイゼーションを行わせるものである。本発明においては、このような手法を用いることにより、細胞間での発現差異解析が電気化学的に行えるという、従来に無い利点が得られる。
【0051】
増感色素
本発明にあっては、被検物質の存在を光電流で検出するために、増感色素の共存下、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させて、該結合により増感色素を作用電極に固定させる。そのために、本発明にあっては、被検物質あるいは媒介物質に予め増感色素で標識しておくことができる。また、被検物質およびプローブ物質の結合体(例えばハイブリダイゼーション後の二本鎖核酸)にインターカレーション可能な増感色素を用いる場合には、試料液に増感色素を添加することにより、プローブ物質に増感色素を固定させることができる。
【0052】
本発明の好ましい態様によれば、被検物質が一本鎖の核酸の場合、被検物質1分子につき増感色素を一つ標識するのが好ましい。一本鎖の核酸における標識位置は、容易に被検物質とプローブ物質の特異的な結合を形成させる観点から、一本鎖の核酸の5’’末端または3’末端のいずれかの位置とするのが好ましく、標識工程をさらに簡便にする観点から被検物質の5’末端とするのがさらに好ましい。
【0053】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、被検物質1分子あたりの増感色素担持量を高める為、被検物質1分子につき増感色素を2つ以上標識するのが好ましい。これにより、電子受容物質の形成された作用電極における単位比表面積あたりの色素担持量をより多くすることができ、より高感度に光電流応答を観測することができる。
【0054】
本発明に用いる増感色素は、光励起に応じて作用電極に電子を放出可能な物質であり、光源の照射による光励起状態への遷移が可能であり、かつ励起状態から作用電極に電子注入できる電子状態を採りうるものであればよい。したがって、用いる増感色素は、作用電極、特に電子受容層との間において上記電子状態をとることができるものであればよいことから、多種の増感色素が使用可能であり、高価な色素を使用する必要がない。
【0055】
複数の被検物質の個別検出を行う態様にあっては、各々の被検物質に標識する増感色素は、それぞれ異なる波長の光で励起できるものであればよく、例えば、照射光の波長を選択することにより各被検物質を個別に励起できればよい。例えば、複数の被検物質に対応する複数の増感色素を用い、各増感色素毎に異なる励起波長の光を照射すると、複数のプローブが同一スポット上であっても個別に信号を検出することが可能となる。本発明において、被検物質の数は限定されないが、光源から照射される光の波長と増感色素の吸収特性を考慮すると、1〜5種類が適当であろう。この態様において使用可能な増感色素は、照射光の波長領域内において光励起しさえすればよく、必ずしもその吸収極大が該波長領域にある必要はない。なお、特定波長における増感色素の光吸収反応の有無は、紫外可視スペクトロフォトメーター(例えば、島津製作所社製、UV−3150)を用いて測定することができる。
【0056】
増感色素の具体例としては、金属錯体や有機色素が挙げられる。金属錯体の好ましい例としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン;クロロフィルまたはその誘導体;ヘミン、特開平1−220380号公報や特表平5−504023
号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えばシス−ジシアネート−ビス(2、2’−ビピリジル−4、4’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))、ユーロピウム錯体があげられる。有機色素の好ましい例としては、メタルフリーフタロシアニン、9−フェニルキサンテン系色素、シアニン系色素、メタロシアニン系色素、カルボシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、ポリメチン系色素、インジゴ系色素等が挙げられる。また、増感色素の別の好ましい例としては、GEヘルスケアライフサイエンス社製のCy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、Cy9;モルキュラープローブ社製のAlexaFluor355、AlexaFluor405、AlexaFluor430、AlexaFluor488、AlexaFluor532、AlexaFluor546、AlexaFluor555、AlexaFluor568、AlexaFluor594、AlexaFluor633、AlexaFluor647、AlexaFluor660、AlexaFluor680、AlexaFluor700、AlexaFluor750;Dyomics社製のDY−610、DY−615、DY−630、DY−631、DY−633、DY−635、DY−636、EVOblue10、EVOblue30、DY−647、DY−650、DY−651、DYQ−660、DYQ−661が挙げられる。
【0057】
二本鎖核酸にインターカレーション可能な増感色素の好ましい例としては、アクリジンオレンジ、エチジウムブロマイドが挙げられる。このような増感色素を用いる場合、核酸のハイブリダイゼーション後に試料液に添加するだけで増感色素で標識された二本鎖核酸が形成されるので、予め一本鎖の核酸を標識する必要が無い。
【0058】
作用電極およびその製造
本発明に用いられる作用電極は、上記プローブ物質を表面に備えた電極であり、プローブ物質を介して固定された増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電極である。したがって、作用電極の構成および材料は、使用される増感色素との間で上記電子移動が生じるものであれば限定されず、種々の構成および材料であってよい。
【0059】
本発明の好ましい態様によれば、作用電極が増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる電子受容層を有し、この電子受容層の表面にプローブ物質が備えられてなるのが好ましい。また、本発明のより好ましい態様によれば、作用電極が導電性基材をさらに含んでなり、この導電性基材上に電子受容層が形成されてなるのが好ましい。
【0060】
本発明において電子受容層は、プローブ物質を介して固定された増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる。すなわち、電子受容物質は、光励起された標識色素からの電子注入が可能なエネルギー準位を取り得る物質であることができる。ここで、光励起された標識色素からの電子注入が可能なエネルギー準位(A)とは、例えば、電子受容性材料として半導体を用いる場合には、伝導帯(コンダクションバンド:CB)を意味する。すなわち、本発明に用いる電子受容物質は、このAの準位が、増感色素のLUMOのエネルギー準位よりも卑な準位、換言すれば、増感色素のLUMOのエネルギー準位よりも低いエネルギー準位を有するものであればよい。
【0061】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容物質は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウム、酸化インジウム、インジウム-スズ複合酸化物(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(FTO)からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。最も好ましくはTiO、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)またはフッ素がドープされた酸化スズ(FTO)をもちいることができる。ITOおよびFTOは電子受容層のみならず導電性基材としても機能する性質を有するため、これらの材料を使用することにより導電性基材を用いることなく電子受容層のみで作用電極として機能させることができる。
【0062】
電子受容物質として半導体を用いる場合、その半導体は単結晶および多結晶のいずれであってもよいが、多結晶体が好ましく、さらに緻密なものよりも多孔性を有するものが好ましい。これにより、比表面積が大きくなり、被検物質および増感色素を多く吸着させて、より高い感度で被検物質を検出することができる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、電子受容層が多孔性を有しており、各孔の径が3〜1000nmであるのが好ましく、より好ましくは、10〜100nmである。
【0063】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容層を導電性基材上に形成した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以上であることが好ましい。この表面積の上限には特に限定されないが、通常1000倍程度であろう。電子受容層を構成する電子受容物質の微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で一次粒子として5〜200nmであることが好ましく、より好ましくは8〜100nmであり、さらに好ましくは20〜60nmである。また、分散物中の電子受容性物質の微粒子(二次粒子)の平均粒径としては0.01〜100μmであることが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒子サイズの大きな、例えば300nm程度の電子受容物質の微粒子を併用して、電子受容層を形成してもよい。
【0064】
凹凸構造によって、電子受容層の表面積を大きくしてプローブ分子を多く固定化することで検出感度を上げることができる。生体分子の大きさが0.1〜20nm程度であるため、凹凸構造により形成される細孔径は20nm以上150nm以下が好ましい。凹凸構造により生じる空間の入口がそれ以下であれば、比表面積は増大するが生体分子とプローブとの結合ができず、検出信号は低下する。凹凸が粗ければ表面積もあまり増えないため信号強度もそれ程上がらない。生体分子のセンシングに好適な、より好ましい範囲は50nm以上150nm以下である。
【0065】
本発明の好ましい態様によれば、凸構造として、ナノスケールの柱(ピラー)を表面に規則正しく並べたピラー構造を採用するのが好ましい。その製法としては種々、知られているが、ナノメートルスケールの孔を有する陽極酸化アルミナを鋳型として用いる方法が一般的である。鋳型にセラミックのゾルを充填、熱処理した後に、エッチングによりアルミナの鋳型を除去する方法や、充填したセラミックのゾルを鋳型より離型した後に熱処理する方法がある。ピラー状のナノ構造体を製造する方法としては、特開2004−130171で示された透明基体、透明導電層上にナノ構造体を製造する方法が挙げられる。ここでは、陽極酸化アルミナの鋳型にチタニアゾルを充填し、300〜400℃の熱処理を行った後に鋳型をエッチングによって除去する方法が採られている。その結果、ナノ構造体としてチタニアのナノチューブやナノワイアが形成される。
【0066】
本発明の好ましい態様によれば、凹構造として、セラミック成分を含む無機‐有機ハイブリッド前駆体を焼成し、有機物の酸化分解により気相となるために生じる気孔を採用するのが好ましい。無機‐有機ハイブリッド前駆体は、有機金属化合物(金属アルコキシド)の酸化とそれに続く重縮合反応によって生じる金属‐酸素のネットワーク構造と有機ポリマーなどが共存するものである。また、市販の酸化チタン粒子(たとえばテイカ株式会社製アナターゼ型結晶、商品名AMT−600(平均粒径30nm)など)や酸化チタン分散液に有機ポリマーなどを添加する方法もある。これらの組成については種々の提案がなされており、たとえば特開平10‐212120号公報はグライム系溶剤(HO‐(‐CHCHO‐)n‐R、nは1〜10、Rはアルキル基あるいはアリール基)に酸化チタン粒子を分散させ、さらに分散助剤として有機ポリマーを加える組成が提案されている。この組成の分散液を適当な方法(ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、ワイパーバーコーティング法、リバースロールコーティング法)によって支持体上に塗布し、200〜800℃で焼成した場合、1cm2(厚さ1μm)あたり40〜50cm2の比表面積が達成されている。また、特開2001‐233615号公報は、テトラアルコキシチタンとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドブロックコポリマーと安定化剤と溶剤とからなるゾル溶液を基板上に滴下し、基板を高速回転させることで溶剤を蒸発させ、ゲル化させることで得られる三次元構造を有する有機無機複合チタニア薄膜を、高温焼結させてブロックコポリマーを除去することで微細な三次元凹構造を達成している。さらに、有機ポリマーとしてオリゴ糖(トレハロース)を用いる方法も開示されており(特開2004‐83376号公報)、気孔率が38〜56%のセラミック多孔質膜が得られている。
【0067】
このように、セラミックの微細な凹凸構造制御方法は種々提案されており、本発明に適したセラミック電極材料に応用することで、比表面積の大きい電極材料の創製が可能である。
【0068】
本発明の好ましい態様によれば、作用電極が導電性基材をさらに含んでなり、電子受容層が導電性基材上に形成されてなるのが好ましい。本発明に使用可能な導電性基材としては、チタン等の金属のように支持体そのものに導電性があるもののみならず、ガラスもしくはプラスチックの支持体の表面に導電材層を有するものであってよい。この導電材層を有する導電性基材を使用する場合、電子受容層はその導電材層上に形成される。導電材層を構成する導電材の例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属;炭素、炭化物、窒化物等の導電性セラミックス;およびインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの、酸化スズにアンチモンをドープしたもの、酸化亜鉛にガリウムをドープしたもの、または酸化亜鉛にアルミニウムをドープしたもの等の導電性の金属酸化物が挙げられ、より好ましくは、インジウム-スズ複合酸化物(ITO)、酸化スズにフッ素をドープした金属酸化物(FTO)である。ただし、前述した通り、電子受容層自体が導電性基材としても機能する場合にあっては導電性基材は省略可能である。また、本発明において、導電性基材は、導電性を確保できる材料であれば限定されず、それ自体では支持体としての強度を有しない薄膜状またはスポット状の導電材層も包含するものとする。
【0069】
本発明の好ましい態様によれば、導電性基材が実質的に透明、具体的には、光の透過率が10%以上であるのが好ましく、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。これにより、作用電極の裏側(すなわち導電性基材)から光を照射させて、作用電極(すなわち導電性基材および電子受容層)を透過した光が増感色素を励起するようにセルを構成することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、導電材層の厚みは、0.02〜10μm程度であるのが好ましい。さらに、本発明の好ましい態様によれば、導電性基材の表面抵抗が100Ω/cm以下であり、さらに好ましくは40Ω/cm以下であるのが好ましい。導電性基材の表面抵抗の下限は特に限定されないが、通常0.1Ω/cm程度であろう。
【0070】
導電性基材上への電子受容層の好ましい形成方法の例としては、電子受容物質の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法、半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し空気中の水分によって加水分解して微粒子膜を得る方法(ゾル−ゲル法)、スパッタリング法、CVD法、PVD法、蒸着法などが挙げられる。電子受容物質としての半導体微粒子の分散液を作成する方法としては、前述のゾル−ゲル法の他、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。このときの分散媒としては水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキレート剤などを分散助剤として使用してもよい。
【0071】
電子受容物質の分散液またはコロイド溶液の塗布方法の好ましい例としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分でできるものとして、特公昭58−4589号公報に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパ法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法が挙げられる。
【0072】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容層が半導体微粒子からなる場合、電子受容層の膜厚が0.1〜200μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜100μmであり、さらに好ましくは1〜30μm、最も好ましくは2〜25μmである。これにより、単位投影面積当たりのプローブ物質および固定される増感色素量を増加して光電流量を多くするとともに、電荷再結合による生成した電子の損失をも低減することができる。また、導電性基材1m2当たりの半導体微粒子の塗布量は0.5〜400gであるのが好ましく、より好ましくは5〜100gである。
【0073】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容物質がインジウム-スズ複合酸化物(ITO)または酸化スズにフッ素をドープした金属酸化物(FTO)を含んでなる場合、電子受容層の膜厚が1nm以上であるのが好ましく、より好ましくは10nm〜1μmである。
【0074】
本発明の好ましい態様によれば、半導体微粒子を導電性基材上に塗布した後に加熱処理を施すのが好ましい。これにより、粒子同士を電気的に接触させ、また、塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させることができる。好ましい加熱処理温度は、40〜700℃であり、より好ましくは100〜600℃である。また、好ましい加熱処理時間は10分〜10時間程度である。
【0075】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、ポリマーフィルムなど融点や軟化点の低い導電性基材を用いる場合にあっては、熱による劣化を防止するため、高温処理を用いない方法により膜形成を行うのが好ましく、そのような膜形成方法の例として、プレス、低温加熱、電子線照射、マイクロ波照射、電気泳動、スパッタリング、CVD、PVD、蒸着等の方法が挙げられる。
【0076】
こうして得られた作用電極の電子受容層の表面にはプローブ物質が担持される。作用電極へのプローブ物質の担持は公知の方法に従い行うことができる。本発明の好ましい態様によれば、プローブ物質として一本鎖の核酸を用いる場合には、作用電極表面に酸化層を形成させておき、この酸化層を介して核酸プローブと作用電極とを結合させることにより行うことができる。このとき、核酸プローブの作用電極への固定化は、核酸の末端に官能基を導入することにより行うことができる。これにより、官能基が導入された核酸プローブはそのまま固定化反応により担体上に固定化されることができる。核酸末端への官能基の導入は、酵素反応もしくはDNA合成機を用いて行なうことができる。酵素反応において用いられる酵素としては、例えば、タ−ミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラ−ゼ、ポリAポリメラ−ゼ、ポリヌクレオチドカイネ−ス、DNAポリメラ−ゼ、ポリヌクレオチドアデニルトランスフェラ−ゼ、RNAリガ−ゼを挙げることができる。また、ポリメラ−ゼチェインリアクション(PCR法)、ニックトランスレ−ション、ランダムプライマ−法により官能基を導入することもできる。官能基は、核酸のどの部分に導入されてもよく、3'末端、5'末端もしくはランダムな位置に導入することができる。
【0077】
本発明の好ましい態様によれば、核酸プローブの作用電極への固定化のため官能基として、アミン、カルボン酸、スルホン酸、チオール、水酸基、リン酸等が好適に使用できる。また、本発明の好ましい態様によれば、核酸プローブを作用電極に強固に固定化するためには、作用電極と核酸プローブの間を架橋する材料を使用することも可能である。そのような架橋材料の好ましい例としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤や、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性ポリマーが挙げられる。
【0078】
本発明の好ましい態様によれば、核酸プロ−ブの固定化を物理吸着という、より簡単な操作で効率よく行うことも可能である。電極表面への核酸プロ−ブの物理吸着は、例えば、以下のように行なうことができる。まず、電極表面を、超音波洗浄器を用いて蒸留水およびアルコ−ルで洗浄する。その後、電極を核酸プロ−ブを含有する緩衝液に挿入して核酸プロ−ブを担体表面に吸着させる。
【0079】
また、核酸プローブの吸着後、ブロッキング剤を添加することにより、非特異的な吸着を抑制することができる。使用可能なブロッキング剤としては、核酸プローブが吸着していない電子受容層表面のサイトを埋めることができ、かつ電子受容物質に対して化学吸着あるいは物理吸着等により吸着可能な物質であれば限定されないが、好ましくは化学結合を介して吸着可能な官能基を有する物質である。例えば、酸化チタンを電子受容層として用いる場合における好ましいブロッキング剤の例としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ピリジル基、アミド等の酸化チタンに吸着可能な官能基を有する物質が挙げられる。
【0080】
本発明の好ましい態様によれば、作用電極上にプローブ物質が互いに分離された複数の領域毎に区分されて担持されてなり、光源による光照射が各領域に対して個別に行われるのが好ましい。これにより、複数の試料を一枚の作用電極上で測定することができるので、DNAチップの集積化等が可能となる。本発明のより好ましい態様によれば、作用電極上にプローブ物質が担持された、互いに分離された複数の領域がパターニングされており、光源から照射される光でスキャニングしながら、各領域の試料について被検物質の検出または定量を一度の操作で連続的に行うことが好ましい。
【0081】
本発明のより好ましい態様によれば、作用電極上の互いに分離された複数の領域の各領域に複数種類のプローブ物質を担持させることができる。これにより、領域の個数に、各領域毎のプローブ物質の種類数を乗じた数の、多数のサンプルの測定を同時に行うことができる。
【0082】
本発明のより好ましい態様によれば、作用電極上の互いに分離された複数の領域の各領域毎に異なるプローブ物質を担持させることができる。これにより、区分された領域の数に相当する種類数のプローブ物質を担持させることができるので、多種類の被検物質の測定を同時に行うことができる。
【0083】
対電極
本発明に用いられる対電極は、電解質媒体に接触させた場合に作用電極との間に電流が流れることができるものであれば特に限定されず、ガラス、プラスチック、セラミックス、SUS等の支持体に、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したものが使用可能である。また、対電極としての金属薄膜を5μm以下、好ましくは3nm〜3μmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成して作成することもできる。対電極に使用可能な材料の好ましい例としては、白金、金、パラジウム、ニッケル、カーボン、ポリチオフェン等の導電性ポリマー、酸化物、炭化物、窒化物等の導電性セラミックス等が挙げられ、より好ましくは、白金、カーボンであり、最も好ましくは白金である。これらの材料は電子受容層の形成方法と同様の方法により薄膜形成が可能である。
【実施例】
【0084】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
使用したDNA
本発明による装置、作用電極、検出方法を用いて、一塩基多型を検出した。それぞれの塩基配列は下記の通りとした。
プローブDNA(検出部位):5’-TGTAGGAGCTGCTGGTGCA-3’(配列番号1)
プローブDNA(コントロールプローブ):5’-GCTTCATCTGGACCTGGGT -3’(配列番号2)
このプローブDNAとハイブリダイゼーションさせる完全一致ターゲットDNA、一塩基違いターゲットDNAをPCR法によって増幅した。PCRによるターゲットDNA増幅に用いたプライマーおよび鋳型DNAは下記の通りとした。
完全一致および一塩基違いターゲットDNA増幅用プライマー:
Forward Primer:5’-Cy5-GATATTGAACAATGGTTCACTGAAGAC-3’配列番号3)
Reverse Primer:5’- GCCCCTCAGGGCAACTGAC-3’(配列番号4)
5’末端側がCy5標識してあるForward Primerを用いて増幅するため、ターゲットDNA1分子あたりCy5色素が1分子標識されている。
完全一致ターゲットDNA:
PM−DNA:
5’-GATATTGAACAATGGTTCACTGAAGACCCAGGTCCAGATGAAGCTCCCAGAATGCCAGAGGCTGCTCCCCGCGTGGCCCCTGCACCAGCAGCTCCTACACCGGCGGCCCCTGCACCAGCCCCCTCCTGGCCCCTGTCATCTTCTGTCCCTTCCCAGAAAACCTACCAGGGCAGCTACGGTTTCCGTCTGGGCTTCTTGCATTCTGGGACAGCCAAGTCTGTGACTTGCACGGTCAGTTGCCCTGAGGGGC(配列番号5)
一塩基違いターゲットDNA:
SNP−DNA:
5’-GATATTGAACAATGGTTCACTGAAGACCCAGGTCCAGATGAAGCTCCCAGAATGCCAGAGGCTGCTCCCCGCGTGGCCCCTGCACCAGCTGCTCCTACACCGGCGGCCCCTGCACCAGCCCCCTCCTGGCCCCTGTCATCTTCTGTCCCTTCCCAGAAAACCTACCAGGGCAGCTACGGTTTCCGTCTGGGCTTCTTGCATTCTGGGACAGCCAAGTCTGTGACTTGCACGGTCAGTTGCCCTGAGGGGC(配列番号6)
ここで、下線塩基がPM、SNPの一塩基違いを示す。
また、色素標識スポットとして増感色素を固定した色素標識DNAの配列は以下の通りとした。
色素標識DNA:5’-TGAGCAAGTTCAGCCTGGT-3’ (配列番号7)
【0086】
実施例1.コントロールプローブ固定化スポットから得られる電流値とターゲットDNA濃度の関係把握
コントロールプローブ固定化作用電極と予め濃度測定したターゲットDNA(上記完全一致ターゲットDNAを使用)を用いて、ターゲットDNA濃度とコントロールプローブ固定化スポットから得られる電流値の関係を明らかにした。
【0087】
作用電極用のガラス基材として、フッ素をドープした酸化スズ(F−SnO:FTO)コートガラス(AGCファブリテック株式会社製、U膜、シート抵抗:12Ω/□、形状:75mm×25mm)を用意した。このガラス基材をアセトン中で15分間、続いて超純水中で15分間超音波洗浄を施して、汚れおよび残存有機物の除去を行った。このガラス基材を0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液中で15分間振盪させた。その後、水酸化ナトリウムの除去のために超純水中での5分間の振盪洗浄を水を入れ替えて3回行った。ガラス基材を取り出して空気を吹き付けて残水を飛散させた後、ガラス基材を無水メタノールに浸漬させて脱水した。95%メタノール5%超純水を溶媒として、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)を0.2vol%となるように加え、室温下で5分間の攪拌を行って、カップリング処理用の溶液を調製した。このカップリング処理用溶液に上記ガラス基材を浸漬させ、ゆっくりと15分間振盪させた。
【0088】
次いで、ガラス基材を取り出し、メタノール中での3分間の振盪をメタノールを入れ替えて3回行い、余剰なカップリング処理用溶液を除く操作を行った。その後、ガラス基材を110℃で30分間保持してカップリング剤をガラス基材に結合させた。ガラス基材を室温下で冷却した後、上記のコントロールプローブDNA、色素標識DNAをそれぞれ10μMに調製し、95℃で10分間保持した後、直ちに氷上に移して10分間保持してDNAを変性させた。この変性後のDNAをそれぞれ、マイクロアレイヤー(フィルジェン株式会社製LT-BA、スポットピン径=1.5mm)にて、4スポット、スポットの中心間隔が5mmとなるようスポットした。その後、95℃で3分保持して溶媒を蒸発させ、UVクロスリンカー(UVP社CL−1000型)で120mJの紫外光を照射して、プローブDNA及び色素標識DNAをガラス基材に固定化した。なお、色素標識DNAは図5に示すようなスポット30−1および30−2の位置に固定化した。それから、0.2%SDS溶液中で5分間振盪洗浄を3回繰り返し、さらに超純水で5分間振盪洗浄を3回繰り返した。このガラス基材を沸騰水に2分間浸漬させて取り出した後、空気を吹き付けて残水を飛散させた。続いて、ガラス基材を4℃の無水エタノールに1分間浸漬させて脱水し、空気を吹き付けて残留エタノールを飛散させた。こうして、プローブDNA及び色素標識DNA固定化作用電極を得た。
【0089】
このプローブDNA固定化電極を作用電極として、図1に示す装置に設置し、図2に示すセンサセル1を構成した。さらに図3に示される構成において、作用電極11と対電極12の距離が0.1mmとなるようにOリング21を対電極凹部22に設置した。このOリングは作用電極と対電極との接触による短絡を防ぐための機能も備えている。そして、センサセルの流体送入口15及び排出口16は、センサセル内での空気と溶液との置換が行われやすいよう、Oリング内の両端に設けている。なお、対電極として、白金電極としてステンレス(SUS316)表面に白金薄膜をスパッタリングにより形成したものを使用した。また、押さえ部材20には、検出スポットへの光照射用の開口部19が設けられている。このOリングを介して対電極と作用電極となるプローブ固定化電極が対向して配置され、対極とOリングと作用電極からなるセンサセルとが構成されている。そして、このセンサセルはOリング内部と両電極によって形成される流路を有するフローセル構造となっている。また、この流路に接続する対極に設けた流体供給口と流体排出口とが形成されている。流体供給口は、センサセル内へと流体を供給するためのポンプに接続された配管チューブが接続され、流体排出口にはセンサセル内へと供給された流体を排出するための配管チューブが接続されている。今回使用したセンサセル内の面積は約1032mm2であるため、センサセル内の容量は約103.2mm3となっている。
【0090】
次に、50nM、100nM、200nMに調整した完全一致ターゲットDNA溶液100μLと、2mM EDTAを含む0.2M NaOHのアルカリ変性溶液100μLとをそれぞれ混合して室温で5分間保持し、二本鎖DNAをアルカリ変性によって一本鎖DNAにした。これら溶液に、ハイブリダイゼーション設定温度で温度調整されたハイブリダイゼーション希釈液である5×SSC/0.1%SDS溶液700μLと、アルカリ溶液を中和させるための0.2M HCl中和液100μLを添加して混合した。この混合後の溶液1mLをセンサセル内へと送液して、10分間、45℃でセンサセル内温度を保持して、作用電極上に固定化したプローブDNAとハイブリダイゼーションを行わせた。このとき、センサセル内にハイブリダイゼーション溶液を送液する前に、温度調整部材であるセラミックヒーター、温調器、測温抵抗体を用いてセンサセル内をハイブリダイゼーション設定温度で保持しておいた。10分間経過後、ハイブリダイゼーション溶液を、ポンプを用いて空気を供給することにより、センサセル内から完全に排出した。次に、ハイブリダイゼーションを行わなかった余剰のターゲットDNA等を洗浄するために、0.5×SSC/溶液を1500μLセンサセル内へ送液した。その後、電解質含有溶液をセンサセル内へと送液してセンサセル内を満たして光電流を検出した。なお、電解質含有溶液には、0.4Mのテトラプロピルアンモニウムヨージド(NPrI)/アセトニトリルを使用した。
【0091】
センサセル1の押さえ部材に並行して設けられたXYステージに取り付けた光源(波長:658nm、光径:約0.2mm、出力40mW)を作用電極上のプローブDNA固定化スポットに順次5秒ずつ照射し、また、開口部の間で観察される電流値(すなわち、光が遮られて作用電極に照射されない状態での電流値)をベース電流値とし、各スポット由来の光電流値とその直前のベース電流値との差分を観察値として、各スポットの光電流値として記録した。
【0092】
このとき、色素標識スポット30−1および30−2由来の光電流値とその直前のベース電流値との差分が、所定の範囲内にあることを確認し、センサセル1の取付け位置が正常であること、測定装置に異常がないことを確認した。
【0093】
各濃度のターゲットDNAに対する光電流値とその直前のベース電流値との差分をまとめた結果(N=4)は、図7に示されるとおりであった。なお、各スポット由来の光電流値及びベース電流値は、各中心部の点5点の平均をそれぞれ値として算出した。得られた電流値を見ると、今回の条件ではコントロールプローブ固定化スポットの電流値はターゲットDNA濃度に対して以下の式を満たしていることが確認された。
(コントロールプローブ固定化スポットの電流値)= 0.3364×(ターゲットDNA濃度) + 83.65
【0094】
実施例2:検出部位を含むプローブDNA固定化スポットから得られる電流値とターゲットDNA濃度の関係把握
検出部位を含むプローブDNA固定化作用電極と予め濃度測定した完全一致ターゲットDNAを用いて、完全一致ターゲットDNA濃度と検出部位を含むプローブDNA固定化スポットから得られる電流値の関係を明らかにした。
【0095】
実施例1と同様の処理で、作用電極側に検出部位を含むプローブDNAを4スポット固定化し、実施例1と同様の装置及び検出方法により、完全一致ターゲットDNAを用いた際の電流値を取得した。
【0096】
実施例1と同様に、色素標識スポット30−1および30−2由来の光電流値とその直前のベース電流値との差分が、所定の範囲内にあることを確認し、センサセル1の取付け位置が正常であること、測定装置に異常がないことを確認した。
【0097】
スポット由来の光電流値とその直前のベース電流値との差分をターゲットDNAについてまとめた結果(N=4)は、図8に示される通りであった。得られた電流値を見ると、今回の条件では、検出部位を含むプローブDNA固定化スポットから得られた電流値は完全一致ターゲットDNA濃度に対して以下の式を満たしていることが確認された。
(検出部位を含むプローブDNA固定化スポットから得られた電流値)= 61.459ln(完全一致ターゲットDNA濃度) - 140.29
【0098】
今回得られた電流値から(標準偏差×3)を差し引いた値を基に作成した以下の近似曲線を完全一致と一塩基違いの境界ラインに定めた。
(完全一致と一塩基違いの境界ライン)=
52.37ln(完全一致ターゲットDNA濃度) - 129.34
上記の結果を用いると、ターゲットDNA濃度が算出できれば(上述したようにコントロールプローブDNA固定化スポットから得られる電流値により算出)、検出部位を含むプローブDNA固定化スポットから得られる電流値により、検出したターゲットDNAが完全一致か一塩基違いかを見極めることが可能である。
【0099】
実施例3:一塩基多型の見極め
コントロールプローブ固定化スポットから得られた電流値からターゲットDNA濃度を算出し、検出部位を含むプローブDNA固定化スポットから得られる電流値により、用いたターゲットDNAがプローブDNAに対して、完全一致または一塩基違いの見極めが正しく行われているかを確認した。
【0100】
実施例1と同様の処理で、作用電極側にコントロールプローブ固定化DNAと、検出部位を含むプローブDNAをそれぞれ4スポットずつ固定化し、実施例1と同様の装置及び検出方法により、今回の実験では75nMに調整した完全一致ターゲットDNAと一塩基違いターゲットDNAを用いた際の電流値をそれぞれ取得した。
【0101】
実施例1と同様に、色素標識スポット30−1および30−2由来の光電流値とその直前のベース電流値との差分が、所定の範囲内にあることを確認し、センサセル1の取付け位置が正常であること、測定装置に異常がないことを確認した。
【0102】
スポット由来の光電流値とその直前のベース電流値との差分を各ターゲットDNAについてまとめた結果(N=4)は、図9に示される通りであった。得られた電流値を見ると、コントロールプローブ固定化スポットの電流値は完全一致ターゲットDNA、一塩基違いターゲットDNAそれぞれ110.2nA、108.3nAであることから、実施例1にて示した式より、ターゲットDNA濃度はそれぞれ78.9nM、73.3nMと算出された。実施例2にて定義した、完全一致ターゲットDNA、一塩基違いターゲットDNAの境界ラインを表す式にターゲットDNA濃度、78.9nM、73.3nMを当てはめると、それぞれ、99.4nA、95.6nAとなり、各ターゲットDNAでの検出部位を含むプローブDNA固定化スポットから得られた電流値はそれぞれ、130.2nA、62.8nAで、完全一致ターゲットDNA、一塩基違いターゲットDNAいずれにおいても、正しい見極めができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増感色素が結合した被検物質がプローブ物質を介して固定された作用電極を、対電極と共に電解質媒体に接触させ、前記作用電極に光を照射して前記増感色素を光励起させ、光励起された増感色素から作用電極への電子移動に起因して作用電極と対電極との間に流れる光電流を検出することを含んでなる被検物質の特異的検出方法であって、
前記作用電極が、前記増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる電子受容層を有し、この電子受容層の表面に前記プローブ物質が担持されてなり、
前記作用電極上に、前記プローブ物質を担持したスポットに加えて、前記増感色素を担持した色素標識スポットを備え、
前記作用電極を前記被検物質と接触させることを少なくとも含んでなる、前記増感色素が結合した被検物質がプローブ物質を介して固定された作用電極を得る反応工程と、
前記電解質媒体を供給して、光を照射し、光電流を測定する測定工程と、
測定の結果を表示する結果報知工程とを有し、
前記結果報知工程において、色素標識スポットに光を照射した場合の電流値が所定範囲外の場合装置の不具合を報知することを特徴とする、被検物質の特異的検出方法。
【請求項2】
前記作用電極が、複数の色素標識スポットを備えてなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の色素標識スポットが、前記作用電極上に設けられたスポットのうち相対的に最も離れた位置の二点である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記色素標識スポットにおいて、前記増感色素がプローブ物質と同一種類の物質を介して作用電極に固定されてなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プローブ物質がDNAであるとき、前記増感色素が、前記DNAと同じ塩基数のDNAを介して作用電極に固定されてなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記作用電極が、前記プローブ物質が被検物質の遺伝的多型を検出するものであるとき、塩基置換が生じていない領域に対して完全に一致する配列を有しかつ増感色素が結合されたプローブ物資を担持した完全一致プローブDNAスポットをさらに有してなり、
前記被検物質に対して遺伝子多型ではない物質の濃度と、完全一致プローブDNAスポットにおける光電流値との第一の検量線を作成し、
前記被検物質に対して遺伝子多型ではない物質の濃度と、前記プローブ物質を担持したスポットにおける光電流値との第二の検量線を作成し、
前記測定工程により得られた完全一致プローブDNAスポットにおける電流値と前記第一の検量線と対比して、前記被検物質の濃度を決定し、当該濃度に対応する電流値を、第二の検量線から得て、当該電流値と、前記測定工程で得られたプローブ物質を担持したスポットにおける電流値とを対比して、その差が所定の範囲外の場合に、被検物質に対して遺伝子多型ではない物質は検出されなかったと判定する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝的多型が、一塩基多型である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記結果報知工程において、前記完全一致プローブDNAスポットに光を照射した場合の電流値が所定範囲外の場合試料または作用電極の不備を報知する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記被験物質が生体分子である、請求項1〜8いずれか一項に記載の被検物質の特異的検出方法。
【請求項10】
前記プローブ物質が生体分子である、請求項9に記載の被検物質の特異的検出方法。
【請求項11】
前記生体分子がDNAである、請求項9または10に記載の被検物質の特異的検出方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法に用いられる作用電極であって、
導電性基材と、
前記導電性基材上に形成される、増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる電子受容層と、
前記電子受容層上に、前記プローブ物質を担持したスポットに加えて、前記増感色素を担持した色素標識スポットを備えてなることを特徴とする、作用電極。
【請求項13】
前記色素標識スポットが複数設けられてなる、請求項12に記載の作用電極。
【請求項14】
前記複数の色素標識スポットが、前記作用電極上に設けられたスポットのうち相対的に最も離れた位置の二点である、請求項13に記載の作用電極。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置であって、
前記作用電極に光を照射する単一又は複数の光源と、
前記作用電極と前記対電極との間を流れる電流を測定する電流計と、
測定結果を報知する放置手段とを備えてなることを特徴とする、装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72665(P2013−72665A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209984(P2011−209984)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)