免疫抑制された患者のためのワクチン免疫療法
【課題】癌患者を免疫する一貫したそして有効な方法の提供。
【解決手段】弱い〜中程度の免疫抑制を克服するための方法であって、この方法は、ナイーブT細胞の生成を誘導する工程、およびT細胞免疫を回復する工程を包含する。ワクチン免疫療法は、ナイーブT細胞の生成を誘導する工程、およびこのナイーブT細胞を適切な部位で内因性抗原または外因性抗原に曝露する工程を包含する。さらに、局所リンパ節で、免疫の障害を取り除くための方法は、局所リンパ節で未成熟樹状細胞の分化および成熟を促進する工程、ならびに得られた成熟樹状細胞による、プロセシングされたペプチドの提示を可能にし、従って、例えば、腫瘍ペプチドをT細胞に曝露して、T細胞の免疫を得る工程を包含する。
【解決手段】弱い〜中程度の免疫抑制を克服するための方法であって、この方法は、ナイーブT細胞の生成を誘導する工程、およびT細胞免疫を回復する工程を包含する。ワクチン免疫療法は、ナイーブT細胞の生成を誘導する工程、およびこのナイーブT細胞を適切な部位で内因性抗原または外因性抗原に曝露する工程を包含する。さらに、局所リンパ節で、免疫の障害を取り除くための方法は、局所リンパ節で未成熟樹状細胞の分化および成熟を促進する工程、ならびに得られた成熟樹状細胞による、プロセシングされたペプチドの提示を可能にし、従って、例えば、腫瘍ペプチドをT細胞に曝露して、T細胞の免疫を得る工程を包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、癌患者についてのワクチン療法に関する。より詳細には、本発明は、内因性および外因性の腫瘍ペプチドまたはタンパク質の両方に関して、免疫抑制を有している癌患者を免疫するワクチン免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
ヒトの癌は、宿主の免疫システムによって反応すると腫瘍退行を導く抗原を有することが如々に明らかになっている。これらの抗原は、血清学的アプローチおよび細胞免疫アプローチの両方によって定義されている。この定義によって、B細胞およびT細胞の両方のエピトープの定義が導かれている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。これらの結果に基づいて、これが、腫瘍の退行を導くための癌の免疫療法の目的となってきた。しかし、歴史的には、成功した結果はあまりなく、そして一般的には頻度および大きさにおいては数が少ない。
【0003】
癌患者を免疫する試みにおける基本的な問題点は、腫瘍を保有している状態が、腫瘍および宿主の乱れた免疫システムの両方に由来する免疫抑制機構に関係していることである(非特許文献4)。それにより、免疫は難しく、そして現在もなお堅実な主薬には到達していない。免疫抑制または免疫の低下(depletion)は、免疫システムの応答能力の減少に関係している。このような抑制は、薬物誘導型であり得るかまたは疾患誘導型であり得る。このような状態は、処置による薬物誘導型であり得るか、AIDSにおけるようなウイルス誘導型であり得るか、または癌のような疾患状態によって誘導され得る。この状態では免疫システムは事実上オフにされる。
【0004】
種々の腫瘍免疫方法論が開発されている。しかし、これらの方法論の全てが複雑であり、そして感染性疾患について使用される従来の免疫方法論から明らかにそれている(非特許文献5)。1つのこのような腫瘍免疫方法論には、キーホールリンペットヘモシアニンと結合させられ、かつDetox(登録商標)ミコバクテリウムアジュバントおよび低用量のシクロホスファミドとともに投与される、シアリルTNポリサッカライドムチン抗原であるTheratope(登録商標)が関係している(非特許文献6)。しかし、転移性乳癌および卵巣癌の患者でのこのワクチンの使用によって、患者の低い割合においては重大な臨床応答が生じる。重大な応答とは、50%よりも大きな腫瘍の縮小を意味する。
【0005】
パピローマウイルスペプチド16を発現する遺伝子についての発現ベクターが、免疫のためまたは子宮頸癌の患者について使用されており、そして患者の低い割合において重大な臨床応答を生じたので、アデノウイルス構築物を使用する遺伝子治療もまた、試みられている(非特許文献7)。
【0006】
樹状細胞媒介型の治療もまた試みられている。ここでは、樹状細胞は、前立腺特異的抗原(PSA)のオリゴペプチドフラグメントでパルスされた。前立腺特異的膜抗原(PSMA)は転移性前立腺癌の患者に使用されており、患者の低い割合において重大な臨床応答を有する(非特許文献8)。
【0007】
さらに、自己由来の腫瘍が、悪性黒色腫の癌患者を免疫するために、低用量のシクロホスファミドおよびBCGとともに使用されている。しかし、臨床応答はほとんど報告されていない(非特許文献9)。試みられた別の方法論には、MAGE抗原を種々のワクチンアジュバントとともに使用することが含まれた。重ねて、これによっては、たとえあるとしても、悪性黒色腫の患者での応答は、ほとんど生じない(私信 Thiery Boon)。
【0008】
Doyleらのいくつかの特許(第5,503,841号;第5,800,810号;第6,060,068号;第5,643,565号;第5,100,664号)は、インターロイキン−2(IL−2)を使用して患者の免疫応答を強化する方法を開示する。この方法は、免疫原であることが既知の抗原を使用する、感染性疾患および主に機能へ応じた用途を開示する。限定された適応性が実証された。上記で開示されるように、癌の処置は、種々のアプローチを必要とすることが既知である。今日までには、IL−2での処置は2つの癌(腎細胞癌および悪性黒色腫)において一般性の低い効果を有する(20%未満の応答率)。扁平上皮細胞の頭部および頸部の癌、ならびに子宮頸癌、ならびに前立腺癌においては、これは一般的には効果がないと考えられる。よって、IL−2での処置は、これらの用途については照明されていない。従って、Doyleらの特許の方法を、癌の処置において小ペプチドの使用に適応することは当業者の範囲内ではない。
【0009】
健常な患者における複雑な構造かつ大きな分子量の既知の「伝統的な」抗原での予防 対 免疫抑制された患者(一般的には良好ではない)での腫瘍抗原またはペプチド(一般的には良好ではない)での処置(一般的には良好ではない)を対比させることが重要である。前者は容易であり、そして本発明者らの現在のウイルスワクチンは、それらの効率を立証する。後者は、30年間の猛烈な研究にもかかわらず、日常的な基準ではほぼ不可能である。
【0010】
本発明が、樹状細胞によってプロセシングされそして提示される内因性ペプチド、または樹状細胞が調製されそしてT細胞に対してそれらを効率よく提示することができる環境(リンパ節)に対して内因的に投与された内因性ペプチドでの免疫に関する(しかし、これに限定はされない)ことが、重要である。この目的は、多くの免疫学者らによって克服することが不可能と考えられている。ペプチドは、有効な免疫原としてはあまりに小さく、それらの半減期は短く、これらは多くの場合、患者がそれに対して免疫原的に寛容であり、そして応答の獲得が自己免疫の誘導と同等である、非変異型(nonmutated)自己抗原である。
【0011】
上記の方法論のいくつかにおいては、腫瘍関連抗原に対する細胞性免疫および/または腫瘍性免疫が誘導されている(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。このことは特に、腫瘍の退行にそのように関係している。それにもかかわらず、このような処置の成功率は無視できる程度でありそして一貫しない(<30%)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Sahin Uら、Curr Opin Immunol 9:709−715、1997
【非特許文献2】Van der Eynde,B.ら、Curr Opin Immunol 9:684−693、1997
【非特許文献3】Wang RFら、Immunologic Reviews 170:85−100、1999
【非特許文献4】Kavanaugh DYら、Hematol−Oncol Clinics of North Amer 10(4):927−951、1996
【非特許文献5】Waber J.Tumor,Medscape Anthology 3:2、2000
【非特許文献6】Maclean GDら、J Immunother Emphasis Tumor Immunol 19(4):309−316、1996
【非特許文献7】Borysiewickz LKら、Lancet 347:1524−1527、1996
【非特許文献8】Sanda MGら、Urology 52:2、1999;Murphy GPら、The prostate、38:43−78、1999
【非特許文献9】Mastrangelo MJら、Seminars in Oncology 23(6):773−781、1996
【非特許文献10】Weber J.Tumor,Medscape Anthology 3:2、2000
【非特許文献11】Maclean GDら、J Immunother Emphasis Tumor Immunol 19(4):309−316、1996
【非特許文献12】Borysiewickz LKら、Lancet 347:1524−1527、1996;Sanda MGら、Urology 52:2、1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、癌患者を免疫する一環したそして有効な方法を開発することが有用である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明に従うと、ナイーブT細胞の産生を誘導し、T細胞の免疫を回復することによって免疫低下を克服するための方法が提供される。すなわち、本発明は、免疫回復を提供する。本発明はさらに、ナイーブT細胞の産生を誘導する工程、および適切な部位でナイーブT細胞に内因性抗原または外因性抗原へ曝露する工程を包含する、ワクチン免疫療法の方法を提供する。さらに本発明は、局所リンパ節での未成熟な樹状細胞の分化および成熟の促進、ならびに得られる成熟樹状細胞によりプロセシングされたペプチドの提示を可能にし、それによってT細胞の免疫を得るためにT細胞に対して腫瘍ペプチドを曝露することによる、局所リンパ節での免疫の障害を除去するための方法を提供する。さらに本発明は、アジュバントとして有効量の天然のサイトカイン混合物を、癌または他の持続性病巣の内因性抗原または外因的に投与される抗原に与えることによる、癌および他の持続性病巣の処置方法を提供する。
【0015】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 局所リンパ節での免疫の障害を取り除くための方法であって、該方法は、以下:
局所リンパ節中の未成熟の樹状細胞の分化および成熟を促進する工程;ならびに
得られた成熟樹状細胞によるT細胞への抗原の提示を可能にして、該抗原に対するT細胞の免疫を獲得する工程、
による、方法。
(項目2) 前記促進する工程がさらに、処置される病巣に対して、局所リンパ節中に流れ出るリンパ管へと、リンパ管周辺で天然のサイトカイン混合物(NCM)を投与する工程として定義される、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記病巣がガンまたは他の持続性病巣である、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記提示される病巣が感染性である、項目3に記載の方法。
(項目5) 前記抗原が内因性抗原である、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記抗原が外因性抗原である、項目1に記載の方法。
(項目7) 前記投与する工程がさらに、前記NCMを、リンパ管周辺、リンパ管内、結節内、脾臓内、皮下、筋肉内、または皮内で注射する工程として定義される、項目2に記載の方法。
(項目8) ガンまたは持続的病巣に対する免疫の誘導方法であって、該方法は、以下:
外因性抗原および天然のサイトカイン混合物(NCM)からなるアジュバントの有効量を投与する工程、
による、方法。
(項目9) 前記投与する工程がさらに、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、δIFN、およびTNFαを含むNCMを投与する工程として定義される、項目7に記載の方法。
(項目10) 前記投与する工程がさらに、前記NCMを、リンパ管周辺、リンパ管内、結節内、脾臓内、皮下、筋肉内、または皮内で注射する工程として定義される、項目8に記載の方法。
(項目11) ナイーブT細胞の産生を誘導する工程による、弱い〜中程度のT細胞の減少を克服するため、およびT細胞免疫応答を回復させるための、方法。
(項目12) 前記誘導する工程がさらに、天然のサイトカイン混合物(NCM)を投与する工程として定義される、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記投与する工程がさらに、前記NCMを、リンパ管周辺、リンパ管内、結節内、脾臓内、皮下、筋肉内、または皮内で注射する工程として定義される、項目11に記載の方法。
(項目14) 前記投与する工程がさらに、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、δIFN、およびTNFαを含むNCMを注射する工程として定義される、項目12に記載の方法。
(項目15) 前記投与する工程が、前記NCM中、1回の注射について約150〜600単位のIL−2を投与することを含む、項目14に記載の方法。
(項目16) 前記ブロックおよび誘導する工程がさらに、シクロホスファミドおよび非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)を同時送達する工程として定義される、項目11に記載の方法。
(項目17) ガンまたは持続性病巣に由来する内因性抗原または外因的に投与される抗原に対するアジュバントとして有効量の天然のサイトカイン混合物を投与することにより、免疫抑制された患者のガンまたは他の持続性病巣を処置する、方法。
(項目18) 前記投与する工程がさらに、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNFα、およびδIFNを含むNCMを注射する工程として定義される、項目14に記載の方法。
(項目19) 前記投与する工程がさらに、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNFα、およびδIFNを含むNCMを注射する工程として定義される、項目18に記載の方法。
(項目20) 処置される内因性病巣による、直接的または間接的なT細胞の内因性抑制をブロックする工程をさらに包含する、項目17に記載の方法。
(項目21) 前記ブロックおよび誘導する工程がさらに、シクロホスファミドおよび非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)を同時送達する工程として定義される、項目17に記載の方法。
(項目22) 前記NSAIDが、インドメタシン、イブプロフェン、ビオックス、セレブレックス、および他の関連化合物を含む群より選択される、項目21に記載の方法。
(項目23) ワクチン免疫療法の方法であって、該方法は、以下:
ナイーブT細胞の産生を誘導する工程、および
内因性または外因性の抗原に対して該ナイーブT細胞を曝露する工程、
を包含する、方法。
(項目24) 前記曝露する工程が、病巣を有している患者の局所的節中に残存している内因的に処理されたペプチド調製物への前記ナイーブT細胞を曝露する工程としてさらに定義される、項目23に記載の方法。
(項目25) 前記病巣がガンまたは感染性である、項目24に記載の方法。
(項目26) 前記曝露する工程がさらに、外因的に産生される抗原を投与する工程として定義される、項目23に記載の方法。
(項目27) 前記抗原が他の場合には非免疫原性ペプチドである、項目23に記載の方法。
(項目28) 前記曝露する工程がさらに、処置される病巣から遠位のリンパ節において、成熟ペプチドを提示する樹状細胞で前記ナイーブT細胞を免疫する工程として定義される、項目23に記載の方法。
(項目29) 有効量の天然のサイトカイン混合物の投与による、リンパ球減少症の処置方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の他の利点は、添付の図面と組み合わせて考慮すると、以下の詳細な説明を参照してさらに理解されることが容易に認識される。
【図1】図1は、PHAへの持続的な曝露対律動的な曝露を利用する、種々の媒体中のNCMの比較を示すグラフである。
【図2】図2は、PHAへの持続的な曝露に対する、細胞濃度の影響を示すグラフである。
【図3】図3は、2倍の濃度(2μg/ml)でPHAを用いた、図1と同様の棒グラフである。
【図4】図4は、脾臓細胞に関する、チミジンの取り込み対IL2 1mlあたりの単位のグラフである。
【図5】図5は、胸腺細胞に関する図2と同様のグラフである。
【図6】図6は、IL1、IL2、またはILの組み合わせ、NCM、または生理食塩水で処理した退縮した胸腺を有するマウスについての、対照対インビボでの処置の比を示すグラフである。
【図7】図7は、組換えIL1、組換えIL2、組換えIL1および組換えIL2、ならびにNCMでの処置の比較をもまた示すグラフである。
【図8】図8は、脾臓細胞および胸腺細胞のマーカーに対する、インビボでのNCM処置の影響を示すグラフである。
【図9】図9は、脾臓細胞および胸腺細胞のマーカーに対する、インビボでのNCM処置の影響を示す棒グラフである。
【図10】図10は、対照培地またはNCMを用いたインビボでの処置後の、種々の組み換えインターロイキンまたはNCMを含有しているインビトロの培地に対する、脾臓細胞および脾臓細胞の応答を示すグラフである。
【図11】図11は、培地、種々のインターロイキン、またはNCMに対するインビトロでの、あるいは、対照培地またはNCMでのインビボでの、脾臓細胞および胸腺細胞の応答を示す棒グラフである。
【図12】図12は、インビボでの対照またはNCMを用いて処理した後の、ConAおよびPHAに対するインビトロでの脾臓細胞および胸腺細胞の応答を示す。
【図13】図13は、インビボで対照またはNCMを用いて処理した後の、ConAおよびPHAに対するインビトロでの脾臓細胞および胸腺細胞の応答を示す。
【図14】図14は、対照、および扁平上皮細胞の頭部および頸部の癌(H&NSCC)を有する癌の対照、またはIRX−2(NCM)で処置した集団での節の大きさを示す棒グラフである。
【図15A】図15は、2つの棒グラフを示し、一方は、対照、ならびに頭部および頸部の扁平上皮細胞癌の対照、ならびにNCM(IRX−2)で処置した患者における、T細胞の面積を示し、そして他方はその密度を示す。
【図15B】図15は、2つの棒グラフを示し、一方は、対照、ならびに頭部および頸部の扁平上皮細胞癌の対照、ならびにNCM(IRX−2)で処置した患者における、T細胞の面積を示し、そして他方はその密度を示す。
【図16A】図16は、3個の処置群における、B細胞の面積および小胞を示す2つの棒グラフを示す。
【図16B】図16は、3個の処置群における、B細胞の面積および小胞を示す2つの棒グラフを示す。
【図17A】図17は、3個の処置群における、他の細胞および洞組織球増殖症の比較を示す。
【図17B】図17は、3個の処置群における、他の細胞および洞組織球増殖症の比較を示す。
【図18】図18は、節B&TおよびCancer B&Tフィットプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
一般的には、本発明は、ワクチン免疫療法を利用して患者を処置するための方法を提供する。ここでは、患者は免疫抑制される。免疫抑制によって、患者が低下した細胞性免疫を有し、従って新しい抗原に応答する能力が損なわれていることが意味される。さらに詳細には、血液中のTリンパ球の数が減少し、そして/またはこれらの細胞の機能が、例えばPHA増殖アッセイによって示されるように、損なわれる。
【0018】
Tリンパ球減少症(血中T細胞レベルが低い)は、細胞性免疫不全に特徴的な診断である;既存の胸腺細胞の機能の損傷は他の特徴である。Tリンパ球減少症を処置するための一般的に受け入れられている(臨床的に証明されている)方法は存在しない。骨髄移植(±胸腺移植)は重症複合型免疫不全(SCID−先天性、放射線照射または化学療法によって誘導される)の症例において使用されている。組み換えIL2は、大きな毒性によりいくらか影響があるものの、AIDSにおいて試されている。
【0019】
新たなT細胞を作製して、Tリンパ球減少症を治そうとする2つの方法が存在する。1つの方法(rIL−2療法の場合)は、すでに抹消中にあるT細胞(すなわち、記憶T細胞(CD45RO)(血液、リンパ節、および脾臓))を増大させる。他の方法は、胸腺中での骨髄由来の新しいT細胞(得られる前駆体)の処理に関する。これは、子供においては通常に生じるが、成体では生じない。これらの新しい細胞は、最近は「胸腺移住者(thymic emigres)」と呼ばれ、そして「ナイーブ」T細胞(すなわち、CD45RA)の表面マーカーを有する。NCM療法(およびサイモシンα1)は、これらの新しいT細胞の産生、ならびに以前から存在している記憶T細胞の増大を生じる。
【0020】
さらに詳細には、本発明は、内因的または外因的のいずれかで投与される抗原に対する免疫応答を提供するための免疫に関係している、新しい発見を利用する。このような抗原は、過去に免疫原性であると考えられたことがあるが、本発明で使用した他の抗原は、以前には非免疫原性であると考えられ得た。このような抗原の例は、MAGE−1タンパク質由来のEADPTGHSY(黒色腫)、MAGE−3由来のEVDPIGHLY(肺癌腫)、MAGE−3由来のEVDPIGHLY(肺癌腫)などである(Belloneら、Immunology Today、第20巻、No.10、457−462頁、1999を参照のこと)。
【0021】
本発明は、このような免疫が不可能であると以前は考えられた被検体において免疫を得るために、いくつかの一般的な新しく導かされた方法工程を利用する。さらに詳細には、本発明は、ナイーブT細胞の産生の誘導による、免疫低下を克服するための方法を提供する。用語「ナイーブ」T細胞は、新しく産生された(成体においてもなお)T細胞を意味することになる。ここでは、これらのT細胞は抗原に対してはまだ曝露されていない。このようなT細胞はこの段階では、それらに曝露される抗原(例えば、腫瘍ペプチド)を有している成熟樹状細胞による提示の際に特異的になることがまだ可能である、非特異性である。このように、本発明によって、新しいT細胞を補充するかまたは作成する。これは一般的には、天然のサイトカイン混合物(NCM)の投与によって達成される。NCMは、IL1、IL2、IL6、IL8、IL10、IL12、δIFN、TNFα、ならびにG−CSFおよびGM−CSFを含む。これらの構成要素の量および割合は以下に詳細に記載される。好ましくは、約150〜600単位のIL2がNCM中に含まれる。
【0022】
好ましくは、NCMは、病巣(例えば、処置される腫瘍または他の持続的な病巣)に対して局所的なリンパ節中に流れ出るリンパ系周辺に注射される。病巣(例えば、癌)に対して局所であるリンパ節に流れ出るリンパ系へのリンパ管周囲での投与が重要である。腫瘍周辺での注射は、ほとんど応答と関連せず、進行とすら関連するので、禁忌とされている。10日の注射計画が最適であり、そして20日の注射プロトコールは、臨床的には有効ではあるが、TH1応答を低下させる傾向があり、そして癌へのリンパの浸潤によって測定される場合には、所望されるTH2応答を減少させるようにシフトする。両側からの注射が有効である。根治的頚部郭清術が行われる場合は、反対側(contralaterial)での注射が有効である。
【0023】
T細胞の内因性の抑制(例えば、種々の癌の病巣によって引き起こされる)をブロックすることが好ましい。ブロックは、低用量のシクロホスファミドおよび非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)の同時送達によって達成される。選択されるNSAIDはインドメタシンである。インドメタシンは最も有効なNSAIDであるが、これはおそらく最も毒性が強くもある。Celebrex(セレブレックス)(登録商標)およびVioxx(ビオックス)(登録商標)、Cox II NSAIDSはあまり有効ではない。Vioxx(登録商標)はより毒性が強く、それによって多くの患者において胃炎を生じ得る。イブプロフェンは有効であるが、組織学的応答はTH1媒介性応答よりもむしろTH2の特徴であり、これはあまり望ましくない。NSAIDSの副作用は、プロトンインヒビターおよびプロスタグランジンEアナログで集中的に処置される。亜鉛および総合ビタミン剤は、T細胞免疫の回復を助けるための有用な物質である。出願人らは、反対抑制(contrasuppresion)を伴う処置およびNCMを伴わない亜鉛が効果がないことを見出した。
【0024】
まとめると、最少のレジメは、シクロホスファミドおよびNSAIDを使用する反対抑制と組み合わせてNCMを用いるリンパ管周囲での処置である。別のレジメは、亜鉛およびビタミンをさらに含み、可能であればセレニウムの添加を含む、以前に記載されているレジメである。好ましい亜鉛の用量は50から75mgである。標準的な総合ビタミン剤が投与され得る。亜鉛は、利用可能なグルコン酸塩であり得る。
【0025】
臨床応答を最大にするため、および生存率を最も増大させるためには、リンパ球の浸潤の程度および型が重要である。90:10の比のリンパ球:顆粒球またはマクロファージの浸潤が最適である。T細胞および/またはB細胞の浸潤は、好ましくは拡散性であり、かつ激しく、そして周辺にはない。20%未満の軽度の浸潤は、強い臨床応答には関係しない。腫瘍の縮小および組織学的サンプルの断片化が、良好な応答の反映に好ましい。
【0026】
良好な応答に欠かせないリンパ節の変化には、少なくとも5つの局面が含まれる。リンパ節の拡大、および誘導された腫瘍の大きさの縮小の単なる反転ではなく、正常と比較して全体的な大きさの増大が好ましい。増大したT細胞およびB細胞の面積は免疫を示す。洞組織球増殖症(SH)は、摂取されそしてプロセシングされた腫瘍抗原を有するが、成熟することができず、そして細胞毒性T細胞およびB細胞を導くTH1およびTH2効果細胞(effective cell)を刺激することができるナイーブT細胞に対してこれらの腫瘍ペプチドを提示する、未成熟の樹状細胞の蓄積であると考えられている。SHの逆転が好ましい。
【0027】
このように、本発明は、局所リンパ節中での未成熟な樹状細胞の分化および成熟を促進し、従って、得られた成熟樹状細胞が、T細胞へ小ペプチド(一般的には、9アミノ酸の長さ)を提示して、T細胞の免疫を獲得することを可能にすることによる、局所リンパ節での免疫の障害の除去を提供する。さらに、成熟樹状細胞の誘導が必要である。最後に、内因性腫瘍ペプチドを提示する樹状細胞に応答することができるナイーブT細胞の誘導の存在下で、Tリンパ球減少症患者に抹消血Tリンパ球を動員することが所望される(Sprentら、Science、第293巻、2001年7月13日、245−248頁を参照のこと)。
【0028】
上記を考慮して、本発明の鍵となる機構上の特徴は、樹状細胞のインビボでの成熟であり、これによって有効なペプチド抗原の提示を生じる。以下に示される実施例に基づくと、CD45 RAポジティブである確約されていないナイーブT細胞の増大が認められている。抗原を用いると、これによってT細胞およびB細胞クローン性の増大が導かれ、患者において免疫が生じる。これにより生じる血行性の拡散による腫瘍への浸潤によって、確固たる腫瘍の崩壊が導かれる。結果は、以下のデータに見られるように、免疫学的記憶に起因する生存性の増大である(Sprentら(前出)を参照のこと)。
【0029】
外因的に提供される合成のまたは抽出された腫瘍ペプチド(Belloneら(前出)を参照のこと)が、予め感作させられたかもしくは同時に感作された局所リンパ節または遠位リンパ節に送達され得、そして腫瘍抗原特異的T細胞(B細胞を伴うかまたは伴わない)を生じることが、理論上推測される。3つの実験が以下に示される。上記を考慮して、NCMおよび他の薬剤の作用が、任意の腫瘍抗原(合成および内因性のペプチドおよびタンパク質)について有用であると結論付けられ得る。これらのペプチドの多くは通常は免疫原性ではなく、そして成熟した活性化された樹状細胞によって提示された場合にのみ、これらはナイーブT細胞の免疫に有効である。このように、免疫T細胞の出現は、事実上、樹状細胞が生じるかまたは適切に働くようにされることを意味する。また、事実上は、樹状細胞の活性化および成熟は、癌、免疫不全、ならびにT細胞の周知の欠損(例えば、数の減少およびアネルギーを伴う機能、ならびに推定されるアポトーシス)の重要な要因と考えられている。
【0030】
本発明に従って送達されるプロトコールおよび医薬品についてさらに詳細に言及すると、本発明は、患者(例えば、癌患者、ならびに他の病巣または抗原を産生する疾患状態の患者)を免疫するために、天然のサイトカイン混合物(NCM)を利用する。さらに詳細には、本発明は、NCMおよび腫瘍関連抗原をその中に含有している組成物(NCMは、免疫応答を生じるためのアジュバントとして作用する)の有効量の投与によって、癌に対する癌患者の免疫応答を強化する方法を利用する。腫瘍関連抗原は、癌患者の所属節に内在する内因的に処理された腫瘍ペプチド調製物、またはこれらの節もしくはその付近に外部から投与された腫瘍抗原調製物との組み合わせのいずれかであり得る。腫瘍ペプチドならびに抗原は、たとえ腫瘍関連タンパク質抗原が完全であるので、それらが免疫原性である可能性がより高い場合に、免疫原性であるとは予想されないとしても、本明細書中に含まれる。
【0031】
好ましい実施態様においては、本発明の構成には、NCMおよび腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原(低用量のシクロホスファミド、シクロオキシゲナーゼインヒビター、および本発明の組成物の作用をさらに増大させることが示されている他の同様の化合物とともに以下で定義される)の投与が含まれる。
【0032】
上記を明確にし、そしてさらに定義するために、以下の定義が提供される。「アジュバント」によって、特定の抗原に対する免疫応答を強化する能力を有する組成物が意味される。有効であるためには、アジュバントは抗原部位にまたはその付近に送達されなければならない。このような能力は、免疫媒介型の防御の有意な強化によって証明される。免疫の増大は、典型的には、抗原に対して惹起された抗体の力価の有意な増大(通常は10倍を超える)によって証明される。細胞性免疫の強化は、ポジティブ皮膚反応テスト、細胞毒性T細胞アッセイ、δIFNまたはIL−2についてのELISPOTアッセイ、あるいは腫瘍中へのT細胞の浸潤(以下に記載される)によって測定され得る。
【0033】
「腫瘍関連抗原」によって、類似タンパク質またはペプチド(これらは、樹状細胞のエキソビボでのパルスによって作用することが以前に示されている)、あるいは他の同等の抗原が意味される。これには、PSMAペプチド、MAGEペプチド(Sahin Uら、Curr Opin Immunol 9:709−715、1997;Wang RFら、Immunologic Reviews 170:85−100、1999)、パピローマウイルスペプチド(E6およびE7)、MAGEフラグメント、NY ESO−1、または他の同様の抗原が挙げられ得るがこれらに限定されない。以前にはこれらの抗原は、それらの大きさ(すなわち、これらは小さすぎる)またはそれらが免疫原性特性(すなわち、自己抗原)を有さないと以前には考えられていことのいずれかに基づいて、患者の処置には有効ではないと考えられていた。
【0034】
NCM(非組み換えサイトカイン混合物)は、米国特許第5,632,983号および同第5,698,194号に示されているように定義される。簡潔には、NCMは4−アミノキノロン抗生物質の継続的存在の下で、そして有糸分裂促進物質(これは好ましい実施態様においてはPHAである)の継続的存在または律動的存在の下で、調製される。
【0035】
本発明に従うと、高齢の免疫抑制されたマウスにおいてT細胞の発達および機能を促進することにおいて有効であると以前に示されている、部分的に特徴付けられたNCMが提供される。このNCMの頭部および頸部のガンを有する免疫抑制された患者への投与の際に、NCMで処置されたガン患者の血中へのTリンパ球の動員によって、CD2およびCD45 RAの両方を有している未成熟のナイーブT細胞の増大を生じることが、本出願においてはじめて実証された。これは、成体のヒトがナイーブT細胞を作製することができることの最初の実証である。先行する参考文献:Mackallら(New England Journal of Medicine(1995)、第332巻、143−149頁);およびMackallによる総説(Stem Cells 2000、第18巻、10−18頁)は、子供ではなく成体で新しいT細胞を作製することは不可能であると議論しており、そしてガンの化学療法および/または放射線治療後にT細胞を再び補充する試みの問題点を議論している。一般的には、新しいT細胞は成体のヒトでは作製されないという定説が存在する。しかし、強い化学療法のための骨髄移植後には、新しいT細胞が成体において作製され得るという証拠が存在している。今日までには、これを達成することができる分子療法は存在していないが、リンパ球数の増大は、HIV感染した患者において、組み換えインターロイキン−2での延長されたそして強い治療を用いて達成されている。これらは、胸腺由来T細胞であることが明かに実証されてはおらず、そしておそらく既存の末梢T細胞の増大である。
【0036】
以前に、Cortesinaらは、頭部および頸部のガンを有する患者において天然のIL−2をリンパ管周辺で使用し、そしていくつかの腫瘍退行を誘導し(Cortesina Gら、Cancer 62:2482−2485、1988)、白血球によるいくらかの腫瘍の浸潤を伴った(Valente Gら、Modern Pathol 3(6):702−708、1990)。処置することができない再発が生じ、そして応答は非特異的で記憶を伴わず、従って非免疫原性であった(Cortesina Gら、Br J Cancer 69:572−577、1994)。組み換えIL−2を用いた最初の観察を確認するための反復的な試みは、実質的には成功しなかった(Hadden JW、Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644、1997)。
【0037】
本発明の方法は、免疫療法用化合物の十分な局在化を提供するための、局所的なリンパ管周辺での注射、または当業者に公知の他の注射でNCMを使用することを含む。好ましい実施形態においては、注射は頸部に行われるが、処置される疾患によって必要とされる場合には、他の位置に適用され得る。この処置によって、改善され、再発のない生存をもまた示す患者の高い割合において臨床的な退行を誘導した(Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg.120:395−403、1994;Menesses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454、1998;Barrera Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351、2000;Whitesideら、Cancer Res.53:564−5662、1993)。Whitesideら(Cancer Res.53:5654−5662、1993)は、頭部および頸部のガンにおいて、組み換えインターロイキン2の腫瘍注射によって、Tリンパ球の浸潤が生じたが、有意な臨床応答は伴わなかったことを観察した。150人までの患者でのリンパ管周辺での注射と組み合わせたMultikine(Celsci Website)の腫瘍周辺での注射は、有意な腫瘍応答(すなわち、11人の患者のみにおいて50%以上の腫瘍の縮小)を生じた。これによると、それらの応答率は、本研究で観察される高い程度の応答(40%)と比較して、10%未満である。さらに、彼らは、本出願人らがわずか20%と観察した、応答しない人を50%と記録した。
【0038】
本出願人らは、腫瘍周辺注射および腫瘍内注射が、最初にNCMプロトコールに対してポジティブな応答を有した患者においてもなお疾患の進行を伴うことがあり、従ってその利点が取り消され得ることを観察した。従って、腫瘍周辺での注射は禁忌であり、そして本発明の部分から排除される。これによって本出願人らは、腫瘍が免疫の部位ではないという解釈を導き、そして本出願は、限局性リンパ節が免疫の部位である証拠を示す。次いで、限局性リンパ節の未公開の分析によってなお、限局性リンパ節が、仮定される腫瘍抗原についての免疫の部位であることを示すデータを明らかにした(図14〜18)。多数の種々の腫瘍抗原の同定によって、このような抗原の存在を仮定すると、それらが免疫プロトコールにおいて有効には使用されていないという難問がここ10年間にわたって存在していた。時々生じるポジティブな例が報告されているが、主には、データはネガティブである。抗原提示の問題は、ここ10年間に興味が集まっており、そして樹状細胞が、腫瘍由来の小ペプチドの提示における重要な役者として明らかにされている。DeLaughおよびLotts,Current Opinion In Immunology,2000,第12巻、583−588頁;Banchereauら、Annual Reviews of Immunology,(2000)、第18巻、767−811頁;また、Albertら、Nature、第392巻、86−89頁(1998)を参照のこと。
【0039】
簡潔には、腫瘍抗原が適切に抗原性であるためには、これらは壊死性腫瘍細胞ではなくアポトーシスから生じなければならない(Albert、Nature、39、2:86−87、1997)。これらは、大きな組織球の形態を有する未成熟の樹状細胞によって捕捉される必要がある。これらの未成熟の樹状細胞は抗原をプロセシング(エンドサイトーシス、食作用、および消化)し、そしてT細胞への提示のためのMHC溝中に消化された抗原のペプチドフラグメント(一般的には9個のアミノ酸)を提示する成熟樹状細胞に進化する。応答するためには、T細胞はMHC溝中でそれらに対して提示された抗原、および種々の同時刺激シグナルを有さなければならない。参考文献:BanchereauおよびDeLaugh。
【0040】
研究者ら(例えば、Murphyら、1999)は、培養物中で作製され、次いで腫瘍抗原でパルスされた樹状細胞を利用し、そして前立腺特異的膜抗原ペプチドに対して患者を免疫することにおいて小さい程度の成功を達成した。残念なことに、樹状細胞をパルスするこのアプローチは扱いにくく、そしてどちらかといえば不十分である。本発明では、本出願人らは、リンパ節洞(こではガンにおいて蓄積する)に存在する細胞が樹状細胞の系統の細胞であること、そしてNCMプロトコールを用いるインビボでの処置の後、これらの細胞が消滅し、次いで最終的には抗原がT細胞について免疫原性になることを示した。次いで、これらは腫瘍に応答することが可能である。従って、本発明の重要な局面は、限局性リンパ節中に、有効な抗原のプロセシングおよび提示を可能にする微環境を作製することができる。それが誘導する免疫は、T細胞が病巣に移動することを可能にし、そして腫瘍崩壊は、事実上は、樹状細胞による適切な抗原プロセシングの証明である。さらに、NCMで処置した患者は全て、遠位での転移(これは、臨床的には15%まで、そして病理学的には50%までと予想される)を生じなかった。このことは、単なる局所免疫ではなく全身免疫が、処置によって誘導されたことを示す。これは先行技術の組成物を上回る劇的な進歩である。なぜなら、先行技術の組成物は、最良でも、転移性疾患に対しては有効性が一貫しなかったからである。本発明の組成物が全身免疫を作製する能力は、より有効でありそして十分な患者の処置を可能にする。さらに、全身性応答が大きいことは、処置の有効性を制限することなく、そして毒性を有することなく、より少ない用量を個体に投与することを可能にする。
【0041】
文献(Hadden JW、Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644、1997;Hadden JW.Immunology and Immunotherapy of breast cancer:An update:Int’l J Immunopharmacol 21:79−101、1999)は、ガンの2つの主要なタイプであるSCCと腺癌の両方について、限局性リンパ節が、洞組織球増殖症、リンパ減少、および多くの場合はアネルギー性腫瘍関連リンパ球(IL−2を使用してエキソビボでの増大および回復を伴って腫瘍細胞に対して反応することができる)の存在を含む腫瘍に関係する異常を反映する。次いで、転移を伴って、リンパ減少および機能低下が生じる。さらに、このような患者の無関係な頸部リンパ節は、平均の大きさの減少、ならびに頭部および頸部のガンに関係している洞組織球増殖症の増大を示した(図14〜17を参照のこと)。
【0042】
特に組成物に関して、本発明の組成物は、天然のサイトカイン混合物、および内因性または外因性のいずれかの腫瘍関連抗原を含む。さらに、低用量のシクロホスファミド、シクロオキシゲナーゼインヒビター、亜鉛、および他の同様の化合物が、本発明の組成物の作用をさらに増大させることが示されている。
【0043】
ガン、HIV感染、老化、腎臓移植、および他のこのような不全に関係している細胞性免疫不全の患者の処置のための免疫が、本発明の組成物を用いて達成され得る。
【0044】
処置のための投与およびプロトコールは以下のとおりである。
【0045】
遺伝子産物/合成抗原の送達:
本発明の化合物(NCMを含む)および外因性抗原は、個々の患者の臨床的症状、投与部位および方法、投与スケジュール、患者の年齢、性別、体重を考慮して、最適な免疫を達成するように投与されそして服用される。従って、本明細書中の目的のための薬学的「有効量」は、当該分野で公知であるようなこのような考慮によって決定される。この量は、免疫(改善された腫瘍の縮小、断片化、および浸潤、生存率、またはさらに迅速な回復を含むがこれらに限定されない)、あるいは症状の改善または排除を達成するために有効でなければならない。
【0046】
本発明の方法においては、本発明の化合物は、種々の方法で投与され得る。これらが、化合物としてまたは薬学的に受容可能な塩として投与され得、そして単独で、あるは薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、アジュバント、およびビヒクルと組み合わせて有効成分として投与され得ることに留意するべきである。化合物は、皮内または皮下、リンパ管周辺またはリンパ管内、結節内または脾臓内(intrasplenically)または筋肉内、腹腔内、および胸郭内(intrathorasically)で投与され得る。化合物の移植もまた有用であり得る。処置される患者は、温血動物(特に、ヒトを含む哺乳動物)である。薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、アジュバント、およびビヒクル、ならびに移植のキャリアは、一般的には、本発明の有効成分とは反応しない、不活性な非毒性の固体または液体の増量剤、希釈剤、またはカプセル化材料をいう。
【0047】
用量は、単回用量であり得るか、または数日間にわたる複数回の用量であり得る。
【0048】
本発明の化合物の投与の際には、これは一般的には、単位投与量の注射可能な形態(溶液、懸濁物、乳濁物)で処方される。注射に適切な薬学的処方物には、滅菌の水溶液または分散物、および滅菌の注射可能な溶液または分散物への再構成のための滅菌の粉末が含まれる。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体のポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含有している溶媒または分散媒体であり得る。
【0049】
適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散物の場合には必要な粒子の大きさの維持によって、そして界面活性剤の使用によって、維持される。非水溶性のビヒクル(例えば、菜種油、ゴマ油、オリーブオイル、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、またはピーナッツ油)およびエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)もまた、化合物の混合のための溶媒システムとして使用され得る。さらに、種々の添加物(組成物の安定性、滅菌性、および等張性を強化する)(抗菌性保存料、抗酸化剤、キレート化剤、および緩衝剤を含む)が添加され得る。微生物の作用の防御は、種々の抗生物質および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)によって確実にされ得る。多くの場合は、等張化剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を含むことが所望される。注射可能な薬学的形態の吸収の延長は、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によってもたらされ得る。しかし、本発明に従うと、使用されるすべてのビヒクル、希釈剤、または添加物は、化合物と適合性である必要がある。
【0050】
ペプチドは、重合され得るか、または当該分野で周知のようにヒト血清アルブミンのようなキャリアに結合され得る。
【0051】
滅菌の注射可能な溶液は、所望される場合には、種々の他の成分とともに必要量の適切な溶媒中に、本発明の実施に利用される化合物を取り込むことによって調製され得る。
【0052】
本発明の薬理学的処方物は、任意の適合性のキャリア(例えば、種々のビヒクル、添加物、および希釈剤)を含有している注射可能な処方物で患者に投与され得る;または本発明で利用される化合物は、徐放皮下移植物の形態で、または、モノクローナル抗体、ベクターによる送達、イオン導入法、ポリマーマトリックス、リポソーム、およびミクロスフェアのような標的化送達システムで患者に非経口的に投与され得る。本発明において有用な送達システムの例には、以下が含まれる:第5,225,182号;第5,169,383号;第5,167,616号;第4,959,217号;第4,925,678号;第4,487,603号;第4,486,194号;第4,447,233号;第4,447,224号;第4,439,196号;および第4,475,196号。多くの他のこのような移植、送達システム、およびモジュールが、当業者に周知である。
【0053】
上記は、腫瘍抗原(自己由来または定義されたタンパク質もしくはペプチドのいずれか)に対してガン患者を免疫するためのアジュバントとしてNCMを使用するためのプロトコールを提供する。
【0054】
【表1】
【0055】
商業的な抗原の投与経路は、好ましくは頸部である。なぜなら、これは利用しやすく、そして頸部は体のリンパ節の30%より多くを含み、そして全身免疫が得られることが予想され得るからである。
【0056】
低用量のシクロホスファミド:低用量のCYは、ガンのマウスおよびガン患者において、細胞性免疫を増大させるため、およびリンパ球による抑制を減少させるために使用されている(Berd D.,Progress in Clin Biol Res 288:449−458、1989;Berd D.ら、Cancer Research 47:3317−3321、1987)。そしてこれは、ガン患者の有効な免疫療法に使用されている(Weber J.,Medscape Anthology 3:2、2000;Murphy GP、Tjoa BA、Simmons SJ.The prostate.38:43−78、1999;Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg.120:395−403、1994)。
【0057】
亜鉛:亜鉛不足は、細胞性免疫の改善に関係しており、そして亜鉛での処置はマウスにおいては免疫回復的である(Hadden JW.,Int’l J Immunopharmacol 17:696−701、1995;Saha A.,ら、Int’l J Immunopharmacol 17:729−734、1995)。
【0058】
シクロオキシゲナーゼインヒビター(COXi)様インドメタシン:ガンはプロスタグランジンを産生し、そして宿主マクロファージのプロスタグランジン産生を誘導する(Hadden JW.The immunopharmacology of head and neck cancer:An update.Int’l Immunopharmacol 11/12:629−644、1997)。プロスタグランジンはT細胞について免疫抑制性であることが公知であるので、PG合成のシクロオキシゲナーゼインヒビターでの阻害が適切である。
【0059】
組み換えタンパク質の精製
Marshakら「Strategies for Protein Purification and Characterization.A laboratory course manual.」CSHL Press,1996。
【0060】
抗原の用量および頻度
1〜1000μg(好ましくは、10〜500);形態−可溶性(必要な場合には、部分的に重合されるかまたはキャリアに結合させられる)
スケジュール:1日目、12日目、21日目
(Pre−Rx):12日目、21日目、31日目
注射部位:局所注射(すなわち、頸部での注射)
予想される応答:腫瘍の縮小
腫瘍の病理学的変化(縮小、断片化、リンパの浸潤)
抗原に対する体液性免疫(RAIまたはELISA)
抗原に対する細胞性免疫(ELISPOTアッセイの、インビトロでのリンパ球増殖、皮内皮膚反応テスト)
PSMA、MAGEフラグメント、E6、E7ペプチドのようなオリゴペプチドは、樹状細胞に対してパルスされてもなお免疫原として貧弱であることを記憶しておくこと。従って、有効な免疫は、生じるとは予想されない。有効な免疫を用いてもなお、腫瘍退行が、特に前立腺と頸部とのような距離で、この方法によって驚くべきことに認められる。転移性疾患の退行は、常に、免疫療法での驚くべき事象である。臨床応答の程度および頻度は、有効性の要因であり、従ってこのアプローチの新規性である。
【0061】
診断用皮膚反応テストは、我々をさらに有効な免疫へと導くための別の方法である。患者は、IRX−2(NCM)を用いて良好な応答を誘導するように予め処置され得る(NCM、PHA皮膚テスト、およびリンパ球数の増大、ならびにリンパ節の異常の反転)。
【0062】
これによって、アジュバント方法論を作製する
免疫回復とアジュバンシー(adjuvancy)の組み合わせ
ペプチドおよびタンパク質を免疫原性にする
一定の距離で腫瘍退行を達成するための免疫応答の程度を得る。
【0063】
これは、ペプチドおよび/または炭水化物を含有している腫瘍抗原およびハプテンの全ての形態に拡大することができる。
【0064】
これは、HIV+患者のAIDSウイルスワクチン;他の扱いが困難な状況;腎臓移植、老化などのような適用の領域に拡大することができる。
【0065】
患者は、プロトコールの考慮の前に1つ以上の腫瘍ペプチドについて皮膚反応テストされる。100μgの1つ以上の腫瘍ペプチドが、NCMシリーズの1日目および10日目について以下に議論されるように、NCMプロトコールを使用してNCMとともに頸部のリンパ管周辺に投与される。組み合わせが、21日目に繰り返される。腫瘍応答および組織学に加えて、ペプチドに対する免疫反応が、皮膚テストの反復によって、または当該分野で公知の他の手段によってモニターされる。
【実施例】
【0066】
実施例1
細胞培養に関する全ての工程を、滅菌条件下で行う。本明細書中には記載しない細胞免疫学の一般的な方法は、MishellおよびShiigi(Selected Methods in Cellular Immunology,1981)のような細胞免疫学的技術についての一般的な参考文献に記載されているように、そして当該分野で公知であるように行う。
【0067】
天然のサイトカイン混合物(NCM)の調製
複数のHIV陰性肝炎ウイルス陰性ドナー由来のヒト血液の軟膜白血球を回収する。別の実施形態においては、動物が獣医学的用途のための細胞供給源であり得る。ドナー由来の細胞をプールし、そしてficoll hypaque勾配(Phaemacia)上に重層して、好中球および赤血球を含まないリンパ球を得る。当該分野で公知であるように同じ出発リンパ球の集団を生じる別の方法を使用し得る。
【0068】
リンパ球を洗浄し、そして細胞のサブセットの選択のための表面活性化細胞培養フラスコ(MICROCELLECTOR.TM.T−25 Cell Culture Flasks)(その中には、刺激薬(すなわち、PHAのような有糸分裂促進物質)が固定されている)に対して、X vivo−10媒体(Whittaker Bioproducts)中に分配する。1つの実験のセットでは、X vivo−15およびX vivo−20媒体を示すように使用した。刺激薬の固定プロセスは、フラスコ中でのパンニング手順(すなわち、細胞の分離)のための種々の物質の固定について製造業者によって記載されているとおりである。あるいは、リンパ球を、刺激薬(例えば、PHA)に対して2〜4時間曝露し、次いで3回洗浄する。
【0069】
細胞を、X vivo−10培地中で24〜48時間、80μg/mlのシプロフフロキサシン(Miles Lab)とともに、CO2/空気インキュベーター中で37℃でインキュベートする。あるいは、RPMI 1640培地を使用することができる(Webbら、1973)。一般的には、HSAを、0.1から0.5%で(重量/容量)で使用する。インキュベーション後、上清を流し出し、そして回収する。ヒト血清アルブミン(HSA)を含まない培地を作製のために使用する場合には、インターロイキンをさらに安定化させるためにヒト血清アルブミン(HSA)を添加し得る。上清を4℃から−70℃で保存する。
【0070】
上清の特徴づけ
プールした上清を、IL−2については生体アッセイによって、そして残存しているインターロイキンIL−1〜IL−15、CSF、TNF、およびIFNについてはELISAによって、サイトカイン含有量の測定によって特徴付ける。滅菌性を、チオグリコレート培地中での培養によって試験し、そして内毒素を、当該分野で公知であるようにlimulus溶解物アッセイによって測定する。
【0071】
サイトカイン含有量についての上清の標準化:
それぞれの上清を、比較ができるように、投与される濃度または量のいずれかによって標準化する。
【0072】
上清からの混入物の除去:
使用される場合には、DNAおよびウイルスの排除には、限外濾過、カラムクロマトグラフィー、ウイルス保持フィルター、エタノール分配、ポリエチレングリコール/ベントナイト沈殿、ガンマ線照射、および/または溶媒/界面活性剤処理(静脈内でのガンマグロブリンおよびモノクローナル抗体について使用されているような)のような技術を使用する(例えば、IGIV News Updateパンフレット)。
【0073】
モデル
他に記載されていない限りは、高齢のマウスでのヒドロコルチゾンによって誘導した胸腺の縮小のモデルを使用した(Hadden JWら、Int’l J Immunopharmacol 17:821−828、1995)。
【0074】
実験動物
胸腺の退縮が始まっている繁殖引退した年齢の(8〜9ヶ月)を雌性BALB/cマウス(Life Science,St.Petersburg,Fla.)を、インビボ試験で使用した。マウスの体重を合わせ、そして5個のグループにランダムにプールした。動物を、飲料水は制約なく与えて、標準的な研究用食餌を与えた。対象群を除く全てのマウスを、化学的胸腺摘出および脾臓の重量の減少を導くために、ヒドロコルチゾン(0.1mlの0.9%の塩化ナトリウム中で5mg/マウス)で腹腔内(i.p.)で2日間連続して処置した。
【0075】
ヒドロコルチゾンで処置した成体マウスは、2日で急な胸腺の退縮(対照の30%未満)および脾臓の大きさの減少(対照の80%未満)を示し、10日までに徐々に回復した。
【0076】
実験計画
それぞれの処置群は5匹の動物を有し、そしてそれぞれの実験を2〜5回繰返した。処置を、3日目に腹腔内(i.p.)で開始し、そして全部で5日間の間1日に1回続けた。処置群に、本文に示すような以下のインビボ処置の1つを注射した:
・1.発熱物質を含まない生理食塩水(対照);
・2.組換えインターロイキン−1(rIL−1;4ng);
・3.組換えインターロイキン−2(rIL−2;50単位);
・4.rIL−1+rIL−2(それぞれ、4ng+50単位)
・5.天然のサイトカイン混合物(NCM;50単位のIL−2等量)。
【0077】
8日目に、マウスの体重を秤量し、頸部脱臼によって屠殺し、そしてそれらの脾臓および胸腺を回収しそして秤量した。器官を細かく刻み、残っている赤血球を塩化アンモウムを使用して溶解させ(MishellおよびShiigi、1981)、そして細胞を計数した。
【0078】
次いで、種々の物質に対する細胞の増殖応答を決定した。細胞のサンプルを、5%のウシ胎児血清、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、および2−メルカプトエタノール(2×10−5M)を有しているRPMI 1640倍地中での37℃、5%のCO2での細胞培養のために、調製した。細胞を、1.5×106/mlの濃度で4連で0.2mlのマイクロウェル中にプレートし、そして本文に示すように以下の1つとともに72時間インキュベートした:
・1.対照希釈物(完全なRPMI 1640培地)
・2.rIL−1(1ng/ml)
・3.rIL−2(2単位/ml)
・4.NCM(IL−2等量の2単位/ml)
・5.コンカナバリンA(Con A;1.5μg/ml)
・6.フィトヘマグルチニン(PHA;0.5μg/ml)。
【0079】
培養をDNA合成を測定するために停止させ、従って、滴定したチミジン(3H−Thymidine;New England Nuclear,Boston,Mass.;比活性6.7Ci/mM)の18時間のパルスを用いた細胞増殖物を、複合型自動サンプル回収装置を用いて回収し、そして液体シンチレーションカウンティングのために処理した。マーカーの研究をまた、Haddenら(1992)によって記載されているように行った。結果を、それぞれの動物についての3個のサンプルによるcpmの数学的平均として表す。種々の動物を用いて得られたデータの提示を簡単にするために、種々の動物での結果をプールし、そしてまとめて計算し、そしていくつかの場合には、対照に対する比率として表し、そして他のものは平均の標準誤差(SEM)について平均+括弧として表す。
【0080】
(統計学的分析)
StudentのT検定を、適切である場合にはデータを分析するために使用した。
【0081】
結果:
目的は、血清の非存在下で高レベルのインターロイキン−2を産生するようにリンパ球を刺激する方法であって、そしていかなる方法においても、上清中には有意な量のPHAは生じない方法を見つけることである。これを行うために、PHAを、「パンニング」細胞分離について製造業者の説明書に記載されているように、細胞のサブセットの選択のための表面活性化細胞培養フラスコ(AIS MICROCELLECTOR.TM.T−25プレート)上に固定したか、または細胞中へパルスし、続いて洗浄した(パルス技術)。
【0082】
これらの実験に使用した培地は、X vivo−10(Whittaker)であり、そしてこれは、インターロイキン−2−リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞プロトコルについて、米国食品医薬品局によりヒトへの投与について是認されている。最少必須培地(MEM)またはRPMI−1640(Sigma)と同様に、ヒトのリンパ球の増殖をサポートし得る血清を含まない培地もまた、使用することができた。
【0083】
最初の実験は、PHA(HA−16、Murex Diagnostics Ltd.,Dartford,U.K.)を製造業者によって記載されている技術によって固定することができたこと、および7.5〜15×106/mlの細胞数、24時間〜48時間の曝露時間、および25または50μg/mlのPHA濃度の最適条件下で、血清を含まない上清中で高収量のインターロイキン−2を得ることができたことを示した。この収量は、PHA(NI)への簡単な曝露、それに続く洗浄、および続く血清を含まない培地中でのシプロフロキサシン(NIM)との培養を使用するパルス技術よりも優れていた(表1)。
【0084】
【表2】
【0085】
IL−2含有量を、Gillisら(1978)によって記載された方法によってCTLL IL−2依存性細胞株を使用して上清中で測定した。IL−2を、640単位(Pharmacia AB)を含有している既知の標準に対して国際単位で定量した。
【0086】
細胞を含まずにインキュベートしたフラスコ由来の細胞を含まない上清を、残存しているPHAが増殖性応答を生じるための十分な量で存在するかどうかを決定するために、ヒトリンパ球に対して試験した。0.01μg/mlより多い残存しているPHAは、このような応答を生じる。細胞の非存在下では、少量のPHAは、40〜48時間で上清中で観察された。しかし、PHA(25μg/ml)を24時間だけ使用した場合は、これらのレベルはごくわずかであった。従って、24時間のインキュベーションが最適と考えた。本発明においてX vivo−10、X vivo−15、およびX vivo−20(Whittaker)、ならびにMEMの比較を行い、そして図1〜3に示した。X vivo−10およびX vivo−15は、インターロイキン−2−リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞プロトコルについて、米国食品医薬品局によりヒトへの投与について是認されている。NCMの生成を、1μg/mlのPHAに対する持続的な曝露対律動的な曝露を利用して、種々の培地中で比較した(図1)。細胞濃度の影響を、1μg/mlのPHA(図2)および2μg/mlのPHA(図3)への持続的な曝露を用いて調査した。これらの因子の最適な組み合わせが、PHAを2μg/mlで用いて2.5もしくは5.0×106/mlの細胞濃度で、またはPHAを1μg/mlで用いて5×106細胞/mlで、X−vivo−10中での固定化による持続的な曝露であることを見出した。細胞あたりの収量は、2.5×106細胞/mlで最大効率であるので、2μg/mlでPHAを用いるその濃度が、最適として選択される。
【0087】
PHAへの曝露後のヒト白血球からのサイトカインの産生を増強するためのシプロフロキサシンおよび2つの他の4−アミノキノロン抗生物質(ノルフロキサシンおよびオフロキサシン)についてのパラメーターを決定するために、予備実験を、フラスコではなくむしろチューブ内で行った。表IIIは、これらの4−アミノキノロン抗生物質のそれぞれの80μl/mlがIL−1、IL−2、IL−6、IFNγ、TNFα、及びG−CSFの産生を増強したことを示す。IL−8の産生は最大であった。IL−3、IL−4およびIL−7は、全ての上清中でこれらの環境下では検出できなかった。これらの結果は、これらの血清を含まない条件下では、80μg/mlで試験した全ての4−アミノキノロンが、血清を含まない条件下でPHAによって誘導されるサイトカインの産生を増強したことを示す。
【0088】
【表3】
【0089】
モノクローナル抗体OKT−3(Ortho)(これは、Tリンパ球が増殖しそしてインターロイキンを産生するように誘導する)を、これらの条件下で刺激薬として使用することができたこともまた決定した。表IIIは、実施例1に示すように、OKT−3が、フラスコ中でインキュベートした細胞を用いて、PHAおよびシプロフロキサシンによって誘導されるものと同様にサイトカインを誘導したことを示す。IL−3、IL−4、IL−5、およびIL−7は、刺激薬のいずれのセットを用いても検出されなかった。OKT−3は、PHAおよびシプロフロキサシン(CIPRO)と組み合わせた場合に、いくつかのILについての小さい付加的効果を生じた。
【0090】
【表4】
【0091】
インビトロでrIL−2を上回ってNCMが優れていることを示すために、マウスの脾臓細胞および胸腺細胞を、生物アッセイによって決定したIL2および滴定したチミジンの取り込みによって測定したDNA合成に匹敵するレベルで、MEMおよびrIL−2を用いて培養した。NCMは、IL2含有量に基づくrIL−2よりも大きい脾臓細胞(図4)および胸腺細胞(図5)の増殖を誘導した。
【0092】
図6および7に示すような一連の実験において、退縮した胸腺を有するマウスを、rIL−1、rIL−2、これらの因子の組み合わせ、NCM、または生理食塩水(コントロール)を用いてインビボで処置した。脾臓および胸腺を取り出し、インターロイキン(IL−1、IL−2)、NCM、および有糸分裂促進物質ConAに対する細胞増殖性応答について細胞を試験した。結果を、生理食塩水で処理したコントロールに対する比として表す。rIL−1、rIL−2、およびそれらの組み合わせ(rIL−1およびrIL−2)を用いたインビボでの処置は、IL−1、IL−2、NCM、またはConAでのインビトロでの刺激に対しては、脾臓細胞(図6)または胸腺細胞(図7)の増殖性応答を増大させることについて有意な影響を有さなかった。インビボでのNCM処置は、4個の全ての刺激に対して脾臓細胞および胸腺細胞の両方を有意に増大させた。これらの結果は、刺激に対するこれらの細胞の感度の増大、および/または応答性細胞の数の増大と一致する。
【0093】
図8および9は、脾臓細胞および胸腺細胞のマーカーに対するインビボでのNCM処置の影響を示す。未成熟のT細胞を−−によって示し、そしてこれは特に胸腺中にTリンパ球前駆体を提示し得る。NCMは、脾臓および胸腺中の集団を比例的に増大させた。未成熟のT細胞を++によって示し、そしてこの集団は、NCM処置によって胸腺中で比例的に減少される。成熟T細胞を、CD4+およびCD8+によって示す。NCMは、胸腺中の成熟T細胞の割合および脾臓でのそれらの数を増大させた。これらの結果は、T細胞前駆体を増大させ、そして胸腺での成熟T細胞へのそれらの発達を促進するNCMの作用と一致する。
【0094】
図10および図11は、ヒドロコルチゾンモデルでのコントロール媒体またはNCMでのインビボでの処置後の、培地(RPMI)、rIL−1(IL1)、rIL−2(IL2)、またはNCMに対するインビトロでの脾臓細胞および胸腺細胞の応答を示す。マウスを、本明細書中で上記に記載するように処置した。これらのデータは、NCMがバックグラウンドの脾臓細胞応答、IL−1およびIL−2に対する脾臓細胞応答を増大させたが、NCMは、バックグラウンドの胸腺細胞応答、ならびにIL−1、IL−2、およびNCMに対する胸腺細胞応答は増大させなかったことを示す。
【0095】
図12および13は、コントロール媒体またはNCMでのインビボでの処置後の、ConAおよびPHAに対するインビトロでの脾臓細胞および胸腺細胞の応答を示す。マウスを、本明細書中で上記に記載したように処置した。
【0096】
インビトロでの研究は、増殖シグナルに対する脾臓細胞及び胸腺細胞の感作において等量でrIL−2よりもNCMが優れていることを示す。胸腺細胞に対する影響は、分化の十分な促進を反映する。NCM組成物は、rIL−1、rIL−2、さらにこれらの組み合わせとも異なり、インビボでのTリンパ球の作用(IL応答)および発達(有糸分裂促進物質の応答および細胞マーカー)を強力に促進する。これは、免疫システムの刺激を必要とする任意の治療的測定に、またはなお、免疫システムの損傷または不全の部分的な作用の回復にも、治療的に関係している。例えば、化学治療剤は損傷細胞であり得、これには免疫応答に関係しているTリンパ球が含まれる。Tリンパ球の機能および発達を刺激することによる本発明は、損傷した際には、免疫システムのこの特徴を部分的または完全のいずれかに回復させることができる。
【0097】
(実施例2)
NCMおよび低用量のシクロホスファミド、インドメタシン、および亜鉛を有している、頸部の局所的なリンパ管周辺での注射が、扁平上皮細胞頭頸部の癌(H&NSCC)を有する患者の高い割合において臨床的な退行を誘導したことを示す(Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg.120:395−403、1994;Meneses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454、1998;Barrera Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351、2000)。これには、再発を伴わない生存の改善の証拠を伴う。全体的には、主要ではない応答(25%〜50%)、腫瘍の退縮、および病理学的標本中での腫瘍の縮小を含み、90%より多くが応答し、そして大部分は50%を超える腫瘍の縮小を有した。
【0098】
これらの応答は、免疫抑制によって媒介されることが推測される。なぜなら、Bリンパ球およびTリンパ球の両方について、腫瘍への浸潤を観察したからである。この治療は、有意な毒性を伴わなかった。
【0099】
いくつかの未公開の観察によってこの推測の証明を提供し、そして本発明を導く。
1)NCMの組み合わせでのリンパ球減少性の癌患者の処置によって、顕著なリンパ球の固定を生じた;分析した際には、これらの患者は、CD45RAポジティブT細胞(すなわち、ナイーブT細胞)の増大を示した(表IV)。
2)H&NSCCの患者でのNCMの腫瘍内または腫瘍周辺での注射は、可逆性の免疫療法によって誘導された腫瘍の退行、または腫瘍の進行のいずれかを生じた。従って、腫瘍は、免疫部位以外である。
3)所属リンパ節の分析は、所属リンパ節が仮定される腫瘍抗原に対しての免疫部位であることを示す未公開データを明らかにした(図14〜18を参照のこと)。
4)NCMで処置したこれらの患者は全て、臨床的には15%、そして病理学的には50%までにおいて予想される転移は生じなかった。このことは、単なる局所免疫が誘導されることではなく全身免疫が誘導されることを示す。
5)患者を、処置の前に0.1mlのNCMに対する皮膚反応テストを用いて予めテストした。ポジティブ皮膚反応テスト(24時間で>0.3mm)を用いると、これらの90%より多くが、強い臨床応答および病理学的応答を有した。ネガティブ皮膚反応テストを行った患者は、弱い応答を有したかまたは応答を有さなかった。従って、皮膚反応テストは、良好に応答する患者を選択するようである。
【0100】
主要な増大を、これらのTリンパ球減少症の患者において752→1020のTリンパ球数(CD2)において観察した (正常=1600に対してT細胞数752)。「ナイーブ」CD45RAポジティブT細胞(532→782)で対応する増大が存在したことが重要である。上記のように、これらの増大は、一般的には、NCMのような薬理学的治療を用いて、特に成体においては生じるとは考えられない。これらの細胞は、おそらく新生胸腺の移住者であり、そして腫瘍抗原のような新しい抗原に応答する主要な新規の能力が考えられ得る。既存のCD45RAポジティブ細胞は、腫瘍抗原には応答せず、そして腫瘍によって誘導される免疫抑制(アネルギー)に起因して、そのように行うことが十分にはできない場合がある。
【0101】
文献(Hadden JW、Int’l J Immupharmacol 11/12:629−644、1997;Hadden JW、Int’l J Immunopharmacol 21:79−101、1999)は、癌の主用な2つのタイプであるSCCおよびアデノ腺癌の両方について、所属リンパ節が、以下を含む腫瘍に関係している異常を反映することを示す:洞組織球増殖症、リンパ球の減少、および多くの場合は、腫瘍細胞(IL−2を有する)に反応し得る腫瘍関連リンパ球の存在。転移を有する場合は、リンパ球の減少および機能低下が生じる。無関係の頸部のリンパ節10 H&NSCCおよび10個のコントロールの未公開の分析は、平均の大きさの減少およびH&NSCCに関係している洞組織球の増大を示した(図14〜17)。
【0102】
【表5】
【0103】
【0104】
1サイクルのNCM(IRX−2)プロトコルでの処置(Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg.120:395−403、1994;Meneses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454、1998;Barrera Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351、2000)の後、無関係な頸部のリンパ節は、図14〜17に示す変化を示した。NCMで処置しなかったH&NSCC患者の所属リンパ節に対して比較すると、これらの節は大きさ、T細胞の面積および密度において有意な増大を示し、そして胚中心の数、ならびに洞組織球増殖症および密集の低減を示した。処置した患者のリンパ節は全て刺激され、そしてコントロールの節よりも大きく、増大したT細胞面積および密度を有した。従って、これらの節は正常にまで回復しただけではなく、H&NSCCでの生存性との既知のポジティブな相関関係である、T細胞の支配の証拠をまた示した(Hadden JW.Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644、1997)。
【0105】
重要なことは、B細胞およびT細胞の面積に関係しているリンパ節の変化が、T細胞およびB細胞の浸潤を反映するそれらの腫瘍中での変化に関係する場合には、高い程度の相関関係が、T細胞(p.<0.01)およびB細胞(s.<0.01)について、そして存在する全てのリンパについて(p.<0.001)得られた(図18)。次いで、これらの変化は、病理学的および臨床的な基準による腫瘍の縮小に関係する。これらの知見は、腫瘍の反応が、リンパ節の変化に直接およびポジティブに相関していること、および腫瘍の反応が、従属型可変性としてリンパ節の変化を反映することを示す。これらの知見は、一般的に免疫システムがどのように作用するかについての知見(Roitt I,Brostoff J,Male D.Immunology、JB Lippincott Co,Phila,PA,1989)、およびそれに続くサイトカイン遺伝子での腫瘍トランスフェクションについての知見(Maass Gら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995、92:5540−5542)とまとめて、NCMプロトコルが、リンパ節のレベルでいまだ同定されていない腫瘍抗原に対するこれらの患者を免疫することを示す。自己の腫瘍抗原での免疫を反映するリンパ節の変化についての証拠を示した研究者は、以前にはいなかった。これらのデータによって、出願人は、これが、離れた場所の転移の退行を生じる作用において、従来の不十分であるかまたはあまり有効ではない腫瘍抗原での免疫を誘導する試みについての、良好な出発点を構成することを確信する。
【0106】
(実施例3)
頭頸部のリンパ腫を有する2人の患者を処置した。
【0107】
含んだ患者は、このプロトコルへの参加に同意した頭頸部の癌を有する患者であった。以後の計画は以下のとおりであった。
【0108】
処置前に、患者を前腕に皮下で0.1mlのNCMを用いて皮膚反応テストを行った。この場所に印をつけ、そして24時間後にテストを読み取った。テストでは、誘導および紅斑が3mmに等しいかまたはそれよりも大きい場合に、ポジティブと考えた。
【0109】
NCMの各サイクルは、以下のように21日間であった:
1日目:低用量のシクロホスファミド(300mg/m2 i.v.)
1〜21日目:インドメタシン 25mg p.o. 1日3回
硫酸亜鉛 50mg p.o. 1日1回
3〜12日目:頸部のリンパ管周辺で1mlの皮下としてNCMの200単位を5回。
【0110】
(症例#1)
患者は、左の下顎部の領域に3ヶ月の腫瘍の存在の以前の病歴を有し、他の症状は有さない、23歳の男性であった。緊急治療室では、この患者は、深いレベルで部分的に固定された非常に固い約6.5cmの直径の左の顎下三角のリンパ節の腺症が見つかった。残りの身体検査は正常であった。切開による生検によっては、ホジキンリンパ腫を示した。病巣は、ステージECIIAであった。NCMの1サイクルの処置を行い、これによって、直径が1cm減少した大きさの腺腫として、小さい応答を生じた。NCM処置後に得られた生検の報告は、病巣の60%が正常なリンパ浸潤を示したこと、そして残りの新生物(40%)は壊死を示したことを示した。生存可能な腫瘍は見られなかった。
【0111】
この後、患者には、3600radの放射線治療を頸部に行った。患者は現在は疾患を有していない。
【0112】
(症例#2)
患者は、有痛の頸部中央部の腫瘍塊の2ヶ月の病歴、ならびに10kgの体重の減少を示した、82歳の男性である。身体検査では、患者は、右側の口蓋扁桃に腫瘍を示し、これは、扁桃の中心に核を有して約4×3cmにまで大きくなった。頸部では、右側の下顎骨のリンパ節で約2×2cmを測定し、そしてリンパ節の塊は約5×5cmのレベルIIおよびレベルIIIであった。残りの検査では正常であった。扁桃および頸部のリンパ節の1つの切開による生検では、中程度の段階の定義された混合型非ホジキンリンパ腫を示した。
【0113】
患者に、NCMを2サイクル行い、その終わりに、扁桃および頸部の腺腫の直径の1cmの縮小を観察した。NCM処置後の病理学的報告は、生存している腫瘍が20%、断片化されそして壊死性が30%、そして正常なリンパ浸潤が50%であることを示した。
【0114】
患者に、6サイクルの化学療法(CHOP)を行い、そしてその後、4600radの総線量で外部放射線治療(RT)を行った。この患者は、RTの8ヶ月後に再発し、後頭に副腎過形成を有した。患者は、頸部の疾患の兆候の3ヵ月後に死亡した。
【0115】
(実施例4)
未処置の初期段階(臨床段階IB1、IB2、およびIIA)の子宮頸癌の10人の患者を、IRX−2として局所的注射、リンパ管周辺での注射(10回の毎日の注射)、それに続く21日目での放射線子宮摘出術で処置した。IRX2の開始1日前に、患者に、300mg/m2でシクロホスファミドの単回のIV用量を与えた。経口で、インドメタシンまたはイブプロフェンならびに硫酸亜鉛を、1日目から21日目まで投与した。臨床および病理学的応答、毒性および疾患を有さない生存性を評価した。
【0116】
全ての患者のNCM処置を完了し、そして応答および毒性について評価した。臨床応答が50%の患者に見られた(3人で部分的な応答(PR)、2人で小さい応答(MR)(>25%<50%の縮小))。7人の患者に外科手術を行った。腫瘍の断片化を伴う病理学的な腫瘍の縮小が、5つの症例で見られた。むしろ、リンパ球、血漿細胞、好中球、マクロファージ、および好酸球を含む、腫瘍に浸潤する細胞型の異質のパターンが存在した。処置を、注射の間の穏やかな痛みおよび少量の出血、ならびにインドメタシンに対する胃の不耐を除いて、十分に寛容化した。追跡調査の24ヶ月目には、9人の患者が疾患を有していない。
【0117】
この以前には公開されていない研究は、腫瘍周辺のNCMが、初期段階の未処置の子宮頸癌において、免疫媒介性の腫瘍応答を誘導することを示す。
【0118】
(実施例5)
原発性肝細胞癌からの肝臓転移を有する2人の患者を、脾臓内NCM(1回または3回の注射)で処置した。プロトコルは、それ以外は、H&NSCC、子宮頸癌、またはリンパ腫の症例について先に記載したとおりであった。進行した肝細胞癌を有する1人の患者は、断層撮影法によって確認した部分的な応答を有し、病歴は入手することができなかった。他の患者は、外科手術によって確認した部分的な応答を有した。組織学的試験は、腫瘍の縮小、断片化、およびリンパ浸潤を示した。
【0119】
(実施例6)
陰茎の扁平上皮癌(ヒトパピローマウイルスに関係する)の4人の患者を、上記のようなNCMプロトコルで処置した;4人全てが、部分的な応答を臨床的に示し、そして外科手術による検体は、腫瘍の縮小および断片化、ならびにH&NSCC癌患者の特徴であるリンパ浸潤を示した。
【0120】
(実施例7)
マウスを、アジュバントとしてミョウバンを用いて(1:1容量)3つの位置(1日目、14日目、21日目)でオボアルブミン100μgと組み合わせたPMSAペプチドで免疫した(5匹)か、またはNCM(20単位のIL2等量)(5匹)動物を、28日目にオボアルブミン(100μg)(2匹)またはペプチド(100μg)(3匹)を用いて皮膚反応テストした。オボアルブミンおよびNCMで、ペプチドを含まずに処置した2匹の動物は、ポジティブ皮膚反応テストでオボアルブミンに応答した。オボアルブミンおよびミョウバンで処置した2匹の動物は応答しなかった。オボアルブミンとペプチド、およびNCMで処置した3匹の動物のうちの2匹が応答した。オボアルブミンとペプチド、およびミョウバンで処置した動物は全て、応答しなかった。従って、NCMが、抗原としての腫瘍ペプチドおよびオボアルブミンの両方について、ミョウバンより優れたアジュバントであった。
【0121】
本出願を通じて、種々の刊行物(米国特許を含む)が、著者および年号および特許番号によって引用されている。刊行物についての全ての引用文献を以下に列挙する。これらの刊行物および特許の開示は、それらの全体において、本発明が属する分野の状態をより完全に記載するために、本出願中に参考として援用される。
【0122】
本発明は、例示の様式で記載されており、そして使用されている技術用語が限定よりもむしろ記述の言葉の性質において意図されることが理解される。
【0123】
明らかに、本発明の多くの改変およびバリエーションが、上記の教示を参照して可能である。従って、本発明が、詳細に記載されている以外で実施され得ることが、本発明の範囲内であることが理解される。
【0124】
(参考文献)
【0125】
【表6】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、癌患者についてのワクチン療法に関する。より詳細には、本発明は、内因性および外因性の腫瘍ペプチドまたはタンパク質の両方に関して、免疫抑制を有している癌患者を免疫するワクチン免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
ヒトの癌は、宿主の免疫システムによって反応すると腫瘍退行を導く抗原を有することが如々に明らかになっている。これらの抗原は、血清学的アプローチおよび細胞免疫アプローチの両方によって定義されている。この定義によって、B細胞およびT細胞の両方のエピトープの定義が導かれている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。これらの結果に基づいて、これが、腫瘍の退行を導くための癌の免疫療法の目的となってきた。しかし、歴史的には、成功した結果はあまりなく、そして一般的には頻度および大きさにおいては数が少ない。
【0003】
癌患者を免疫する試みにおける基本的な問題点は、腫瘍を保有している状態が、腫瘍および宿主の乱れた免疫システムの両方に由来する免疫抑制機構に関係していることである(非特許文献4)。それにより、免疫は難しく、そして現在もなお堅実な主薬には到達していない。免疫抑制または免疫の低下(depletion)は、免疫システムの応答能力の減少に関係している。このような抑制は、薬物誘導型であり得るかまたは疾患誘導型であり得る。このような状態は、処置による薬物誘導型であり得るか、AIDSにおけるようなウイルス誘導型であり得るか、または癌のような疾患状態によって誘導され得る。この状態では免疫システムは事実上オフにされる。
【0004】
種々の腫瘍免疫方法論が開発されている。しかし、これらの方法論の全てが複雑であり、そして感染性疾患について使用される従来の免疫方法論から明らかにそれている(非特許文献5)。1つのこのような腫瘍免疫方法論には、キーホールリンペットヘモシアニンと結合させられ、かつDetox(登録商標)ミコバクテリウムアジュバントおよび低用量のシクロホスファミドとともに投与される、シアリルTNポリサッカライドムチン抗原であるTheratope(登録商標)が関係している(非特許文献6)。しかし、転移性乳癌および卵巣癌の患者でのこのワクチンの使用によって、患者の低い割合においては重大な臨床応答が生じる。重大な応答とは、50%よりも大きな腫瘍の縮小を意味する。
【0005】
パピローマウイルスペプチド16を発現する遺伝子についての発現ベクターが、免疫のためまたは子宮頸癌の患者について使用されており、そして患者の低い割合において重大な臨床応答を生じたので、アデノウイルス構築物を使用する遺伝子治療もまた、試みられている(非特許文献7)。
【0006】
樹状細胞媒介型の治療もまた試みられている。ここでは、樹状細胞は、前立腺特異的抗原(PSA)のオリゴペプチドフラグメントでパルスされた。前立腺特異的膜抗原(PSMA)は転移性前立腺癌の患者に使用されており、患者の低い割合において重大な臨床応答を有する(非特許文献8)。
【0007】
さらに、自己由来の腫瘍が、悪性黒色腫の癌患者を免疫するために、低用量のシクロホスファミドおよびBCGとともに使用されている。しかし、臨床応答はほとんど報告されていない(非特許文献9)。試みられた別の方法論には、MAGE抗原を種々のワクチンアジュバントとともに使用することが含まれた。重ねて、これによっては、たとえあるとしても、悪性黒色腫の患者での応答は、ほとんど生じない(私信 Thiery Boon)。
【0008】
Doyleらのいくつかの特許(第5,503,841号;第5,800,810号;第6,060,068号;第5,643,565号;第5,100,664号)は、インターロイキン−2(IL−2)を使用して患者の免疫応答を強化する方法を開示する。この方法は、免疫原であることが既知の抗原を使用する、感染性疾患および主に機能へ応じた用途を開示する。限定された適応性が実証された。上記で開示されるように、癌の処置は、種々のアプローチを必要とすることが既知である。今日までには、IL−2での処置は2つの癌(腎細胞癌および悪性黒色腫)において一般性の低い効果を有する(20%未満の応答率)。扁平上皮細胞の頭部および頸部の癌、ならびに子宮頸癌、ならびに前立腺癌においては、これは一般的には効果がないと考えられる。よって、IL−2での処置は、これらの用途については照明されていない。従って、Doyleらの特許の方法を、癌の処置において小ペプチドの使用に適応することは当業者の範囲内ではない。
【0009】
健常な患者における複雑な構造かつ大きな分子量の既知の「伝統的な」抗原での予防 対 免疫抑制された患者(一般的には良好ではない)での腫瘍抗原またはペプチド(一般的には良好ではない)での処置(一般的には良好ではない)を対比させることが重要である。前者は容易であり、そして本発明者らの現在のウイルスワクチンは、それらの効率を立証する。後者は、30年間の猛烈な研究にもかかわらず、日常的な基準ではほぼ不可能である。
【0010】
本発明が、樹状細胞によってプロセシングされそして提示される内因性ペプチド、または樹状細胞が調製されそしてT細胞に対してそれらを効率よく提示することができる環境(リンパ節)に対して内因的に投与された内因性ペプチドでの免疫に関する(しかし、これに限定はされない)ことが、重要である。この目的は、多くの免疫学者らによって克服することが不可能と考えられている。ペプチドは、有効な免疫原としてはあまりに小さく、それらの半減期は短く、これらは多くの場合、患者がそれに対して免疫原的に寛容であり、そして応答の獲得が自己免疫の誘導と同等である、非変異型(nonmutated)自己抗原である。
【0011】
上記の方法論のいくつかにおいては、腫瘍関連抗原に対する細胞性免疫および/または腫瘍性免疫が誘導されている(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。このことは特に、腫瘍の退行にそのように関係している。それにもかかわらず、このような処置の成功率は無視できる程度でありそして一貫しない(<30%)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Sahin Uら、Curr Opin Immunol 9:709−715、1997
【非特許文献2】Van der Eynde,B.ら、Curr Opin Immunol 9:684−693、1997
【非特許文献3】Wang RFら、Immunologic Reviews 170:85−100、1999
【非特許文献4】Kavanaugh DYら、Hematol−Oncol Clinics of North Amer 10(4):927−951、1996
【非特許文献5】Waber J.Tumor,Medscape Anthology 3:2、2000
【非特許文献6】Maclean GDら、J Immunother Emphasis Tumor Immunol 19(4):309−316、1996
【非特許文献7】Borysiewickz LKら、Lancet 347:1524−1527、1996
【非特許文献8】Sanda MGら、Urology 52:2、1999;Murphy GPら、The prostate、38:43−78、1999
【非特許文献9】Mastrangelo MJら、Seminars in Oncology 23(6):773−781、1996
【非特許文献10】Weber J.Tumor,Medscape Anthology 3:2、2000
【非特許文献11】Maclean GDら、J Immunother Emphasis Tumor Immunol 19(4):309−316、1996
【非特許文献12】Borysiewickz LKら、Lancet 347:1524−1527、1996;Sanda MGら、Urology 52:2、1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、癌患者を免疫する一環したそして有効な方法を開発することが有用である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明に従うと、ナイーブT細胞の産生を誘導し、T細胞の免疫を回復することによって免疫低下を克服するための方法が提供される。すなわち、本発明は、免疫回復を提供する。本発明はさらに、ナイーブT細胞の産生を誘導する工程、および適切な部位でナイーブT細胞に内因性抗原または外因性抗原へ曝露する工程を包含する、ワクチン免疫療法の方法を提供する。さらに本発明は、局所リンパ節での未成熟な樹状細胞の分化および成熟の促進、ならびに得られる成熟樹状細胞によりプロセシングされたペプチドの提示を可能にし、それによってT細胞の免疫を得るためにT細胞に対して腫瘍ペプチドを曝露することによる、局所リンパ節での免疫の障害を除去するための方法を提供する。さらに本発明は、アジュバントとして有効量の天然のサイトカイン混合物を、癌または他の持続性病巣の内因性抗原または外因的に投与される抗原に与えることによる、癌および他の持続性病巣の処置方法を提供する。
【0015】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 局所リンパ節での免疫の障害を取り除くための方法であって、該方法は、以下:
局所リンパ節中の未成熟の樹状細胞の分化および成熟を促進する工程;ならびに
得られた成熟樹状細胞によるT細胞への抗原の提示を可能にして、該抗原に対するT細胞の免疫を獲得する工程、
による、方法。
(項目2) 前記促進する工程がさらに、処置される病巣に対して、局所リンパ節中に流れ出るリンパ管へと、リンパ管周辺で天然のサイトカイン混合物(NCM)を投与する工程として定義される、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記病巣がガンまたは他の持続性病巣である、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記提示される病巣が感染性である、項目3に記載の方法。
(項目5) 前記抗原が内因性抗原である、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記抗原が外因性抗原である、項目1に記載の方法。
(項目7) 前記投与する工程がさらに、前記NCMを、リンパ管周辺、リンパ管内、結節内、脾臓内、皮下、筋肉内、または皮内で注射する工程として定義される、項目2に記載の方法。
(項目8) ガンまたは持続的病巣に対する免疫の誘導方法であって、該方法は、以下:
外因性抗原および天然のサイトカイン混合物(NCM)からなるアジュバントの有効量を投与する工程、
による、方法。
(項目9) 前記投与する工程がさらに、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、δIFN、およびTNFαを含むNCMを投与する工程として定義される、項目7に記載の方法。
(項目10) 前記投与する工程がさらに、前記NCMを、リンパ管周辺、リンパ管内、結節内、脾臓内、皮下、筋肉内、または皮内で注射する工程として定義される、項目8に記載の方法。
(項目11) ナイーブT細胞の産生を誘導する工程による、弱い〜中程度のT細胞の減少を克服するため、およびT細胞免疫応答を回復させるための、方法。
(項目12) 前記誘導する工程がさらに、天然のサイトカイン混合物(NCM)を投与する工程として定義される、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記投与する工程がさらに、前記NCMを、リンパ管周辺、リンパ管内、結節内、脾臓内、皮下、筋肉内、または皮内で注射する工程として定義される、項目11に記載の方法。
(項目14) 前記投与する工程がさらに、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、δIFN、およびTNFαを含むNCMを注射する工程として定義される、項目12に記載の方法。
(項目15) 前記投与する工程が、前記NCM中、1回の注射について約150〜600単位のIL−2を投与することを含む、項目14に記載の方法。
(項目16) 前記ブロックおよび誘導する工程がさらに、シクロホスファミドおよび非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)を同時送達する工程として定義される、項目11に記載の方法。
(項目17) ガンまたは持続性病巣に由来する内因性抗原または外因的に投与される抗原に対するアジュバントとして有効量の天然のサイトカイン混合物を投与することにより、免疫抑制された患者のガンまたは他の持続性病巣を処置する、方法。
(項目18) 前記投与する工程がさらに、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNFα、およびδIFNを含むNCMを注射する工程として定義される、項目14に記載の方法。
(項目19) 前記投与する工程がさらに、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNFα、およびδIFNを含むNCMを注射する工程として定義される、項目18に記載の方法。
(項目20) 処置される内因性病巣による、直接的または間接的なT細胞の内因性抑制をブロックする工程をさらに包含する、項目17に記載の方法。
(項目21) 前記ブロックおよび誘導する工程がさらに、シクロホスファミドおよび非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)を同時送達する工程として定義される、項目17に記載の方法。
(項目22) 前記NSAIDが、インドメタシン、イブプロフェン、ビオックス、セレブレックス、および他の関連化合物を含む群より選択される、項目21に記載の方法。
(項目23) ワクチン免疫療法の方法であって、該方法は、以下:
ナイーブT細胞の産生を誘導する工程、および
内因性または外因性の抗原に対して該ナイーブT細胞を曝露する工程、
を包含する、方法。
(項目24) 前記曝露する工程が、病巣を有している患者の局所的節中に残存している内因的に処理されたペプチド調製物への前記ナイーブT細胞を曝露する工程としてさらに定義される、項目23に記載の方法。
(項目25) 前記病巣がガンまたは感染性である、項目24に記載の方法。
(項目26) 前記曝露する工程がさらに、外因的に産生される抗原を投与する工程として定義される、項目23に記載の方法。
(項目27) 前記抗原が他の場合には非免疫原性ペプチドである、項目23に記載の方法。
(項目28) 前記曝露する工程がさらに、処置される病巣から遠位のリンパ節において、成熟ペプチドを提示する樹状細胞で前記ナイーブT細胞を免疫する工程として定義される、項目23に記載の方法。
(項目29) 有効量の天然のサイトカイン混合物の投与による、リンパ球減少症の処置方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の他の利点は、添付の図面と組み合わせて考慮すると、以下の詳細な説明を参照してさらに理解されることが容易に認識される。
【図1】図1は、PHAへの持続的な曝露対律動的な曝露を利用する、種々の媒体中のNCMの比較を示すグラフである。
【図2】図2は、PHAへの持続的な曝露に対する、細胞濃度の影響を示すグラフである。
【図3】図3は、2倍の濃度(2μg/ml)でPHAを用いた、図1と同様の棒グラフである。
【図4】図4は、脾臓細胞に関する、チミジンの取り込み対IL2 1mlあたりの単位のグラフである。
【図5】図5は、胸腺細胞に関する図2と同様のグラフである。
【図6】図6は、IL1、IL2、またはILの組み合わせ、NCM、または生理食塩水で処理した退縮した胸腺を有するマウスについての、対照対インビボでの処置の比を示すグラフである。
【図7】図7は、組換えIL1、組換えIL2、組換えIL1および組換えIL2、ならびにNCMでの処置の比較をもまた示すグラフである。
【図8】図8は、脾臓細胞および胸腺細胞のマーカーに対する、インビボでのNCM処置の影響を示すグラフである。
【図9】図9は、脾臓細胞および胸腺細胞のマーカーに対する、インビボでのNCM処置の影響を示す棒グラフである。
【図10】図10は、対照培地またはNCMを用いたインビボでの処置後の、種々の組み換えインターロイキンまたはNCMを含有しているインビトロの培地に対する、脾臓細胞および脾臓細胞の応答を示すグラフである。
【図11】図11は、培地、種々のインターロイキン、またはNCMに対するインビトロでの、あるいは、対照培地またはNCMでのインビボでの、脾臓細胞および胸腺細胞の応答を示す棒グラフである。
【図12】図12は、インビボでの対照またはNCMを用いて処理した後の、ConAおよびPHAに対するインビトロでの脾臓細胞および胸腺細胞の応答を示す。
【図13】図13は、インビボで対照またはNCMを用いて処理した後の、ConAおよびPHAに対するインビトロでの脾臓細胞および胸腺細胞の応答を示す。
【図14】図14は、対照、および扁平上皮細胞の頭部および頸部の癌(H&NSCC)を有する癌の対照、またはIRX−2(NCM)で処置した集団での節の大きさを示す棒グラフである。
【図15A】図15は、2つの棒グラフを示し、一方は、対照、ならびに頭部および頸部の扁平上皮細胞癌の対照、ならびにNCM(IRX−2)で処置した患者における、T細胞の面積を示し、そして他方はその密度を示す。
【図15B】図15は、2つの棒グラフを示し、一方は、対照、ならびに頭部および頸部の扁平上皮細胞癌の対照、ならびにNCM(IRX−2)で処置した患者における、T細胞の面積を示し、そして他方はその密度を示す。
【図16A】図16は、3個の処置群における、B細胞の面積および小胞を示す2つの棒グラフを示す。
【図16B】図16は、3個の処置群における、B細胞の面積および小胞を示す2つの棒グラフを示す。
【図17A】図17は、3個の処置群における、他の細胞および洞組織球増殖症の比較を示す。
【図17B】図17は、3個の処置群における、他の細胞および洞組織球増殖症の比較を示す。
【図18】図18は、節B&TおよびCancer B&Tフィットプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
一般的には、本発明は、ワクチン免疫療法を利用して患者を処置するための方法を提供する。ここでは、患者は免疫抑制される。免疫抑制によって、患者が低下した細胞性免疫を有し、従って新しい抗原に応答する能力が損なわれていることが意味される。さらに詳細には、血液中のTリンパ球の数が減少し、そして/またはこれらの細胞の機能が、例えばPHA増殖アッセイによって示されるように、損なわれる。
【0018】
Tリンパ球減少症(血中T細胞レベルが低い)は、細胞性免疫不全に特徴的な診断である;既存の胸腺細胞の機能の損傷は他の特徴である。Tリンパ球減少症を処置するための一般的に受け入れられている(臨床的に証明されている)方法は存在しない。骨髄移植(±胸腺移植)は重症複合型免疫不全(SCID−先天性、放射線照射または化学療法によって誘導される)の症例において使用されている。組み換えIL2は、大きな毒性によりいくらか影響があるものの、AIDSにおいて試されている。
【0019】
新たなT細胞を作製して、Tリンパ球減少症を治そうとする2つの方法が存在する。1つの方法(rIL−2療法の場合)は、すでに抹消中にあるT細胞(すなわち、記憶T細胞(CD45RO)(血液、リンパ節、および脾臓))を増大させる。他の方法は、胸腺中での骨髄由来の新しいT細胞(得られる前駆体)の処理に関する。これは、子供においては通常に生じるが、成体では生じない。これらの新しい細胞は、最近は「胸腺移住者(thymic emigres)」と呼ばれ、そして「ナイーブ」T細胞(すなわち、CD45RA)の表面マーカーを有する。NCM療法(およびサイモシンα1)は、これらの新しいT細胞の産生、ならびに以前から存在している記憶T細胞の増大を生じる。
【0020】
さらに詳細には、本発明は、内因的または外因的のいずれかで投与される抗原に対する免疫応答を提供するための免疫に関係している、新しい発見を利用する。このような抗原は、過去に免疫原性であると考えられたことがあるが、本発明で使用した他の抗原は、以前には非免疫原性であると考えられ得た。このような抗原の例は、MAGE−1タンパク質由来のEADPTGHSY(黒色腫)、MAGE−3由来のEVDPIGHLY(肺癌腫)、MAGE−3由来のEVDPIGHLY(肺癌腫)などである(Belloneら、Immunology Today、第20巻、No.10、457−462頁、1999を参照のこと)。
【0021】
本発明は、このような免疫が不可能であると以前は考えられた被検体において免疫を得るために、いくつかの一般的な新しく導かされた方法工程を利用する。さらに詳細には、本発明は、ナイーブT細胞の産生の誘導による、免疫低下を克服するための方法を提供する。用語「ナイーブ」T細胞は、新しく産生された(成体においてもなお)T細胞を意味することになる。ここでは、これらのT細胞は抗原に対してはまだ曝露されていない。このようなT細胞はこの段階では、それらに曝露される抗原(例えば、腫瘍ペプチド)を有している成熟樹状細胞による提示の際に特異的になることがまだ可能である、非特異性である。このように、本発明によって、新しいT細胞を補充するかまたは作成する。これは一般的には、天然のサイトカイン混合物(NCM)の投与によって達成される。NCMは、IL1、IL2、IL6、IL8、IL10、IL12、δIFN、TNFα、ならびにG−CSFおよびGM−CSFを含む。これらの構成要素の量および割合は以下に詳細に記載される。好ましくは、約150〜600単位のIL2がNCM中に含まれる。
【0022】
好ましくは、NCMは、病巣(例えば、処置される腫瘍または他の持続的な病巣)に対して局所的なリンパ節中に流れ出るリンパ系周辺に注射される。病巣(例えば、癌)に対して局所であるリンパ節に流れ出るリンパ系へのリンパ管周囲での投与が重要である。腫瘍周辺での注射は、ほとんど応答と関連せず、進行とすら関連するので、禁忌とされている。10日の注射計画が最適であり、そして20日の注射プロトコールは、臨床的には有効ではあるが、TH1応答を低下させる傾向があり、そして癌へのリンパの浸潤によって測定される場合には、所望されるTH2応答を減少させるようにシフトする。両側からの注射が有効である。根治的頚部郭清術が行われる場合は、反対側(contralaterial)での注射が有効である。
【0023】
T細胞の内因性の抑制(例えば、種々の癌の病巣によって引き起こされる)をブロックすることが好ましい。ブロックは、低用量のシクロホスファミドおよび非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)の同時送達によって達成される。選択されるNSAIDはインドメタシンである。インドメタシンは最も有効なNSAIDであるが、これはおそらく最も毒性が強くもある。Celebrex(セレブレックス)(登録商標)およびVioxx(ビオックス)(登録商標)、Cox II NSAIDSはあまり有効ではない。Vioxx(登録商標)はより毒性が強く、それによって多くの患者において胃炎を生じ得る。イブプロフェンは有効であるが、組織学的応答はTH1媒介性応答よりもむしろTH2の特徴であり、これはあまり望ましくない。NSAIDSの副作用は、プロトンインヒビターおよびプロスタグランジンEアナログで集中的に処置される。亜鉛および総合ビタミン剤は、T細胞免疫の回復を助けるための有用な物質である。出願人らは、反対抑制(contrasuppresion)を伴う処置およびNCMを伴わない亜鉛が効果がないことを見出した。
【0024】
まとめると、最少のレジメは、シクロホスファミドおよびNSAIDを使用する反対抑制と組み合わせてNCMを用いるリンパ管周囲での処置である。別のレジメは、亜鉛およびビタミンをさらに含み、可能であればセレニウムの添加を含む、以前に記載されているレジメである。好ましい亜鉛の用量は50から75mgである。標準的な総合ビタミン剤が投与され得る。亜鉛は、利用可能なグルコン酸塩であり得る。
【0025】
臨床応答を最大にするため、および生存率を最も増大させるためには、リンパ球の浸潤の程度および型が重要である。90:10の比のリンパ球:顆粒球またはマクロファージの浸潤が最適である。T細胞および/またはB細胞の浸潤は、好ましくは拡散性であり、かつ激しく、そして周辺にはない。20%未満の軽度の浸潤は、強い臨床応答には関係しない。腫瘍の縮小および組織学的サンプルの断片化が、良好な応答の反映に好ましい。
【0026】
良好な応答に欠かせないリンパ節の変化には、少なくとも5つの局面が含まれる。リンパ節の拡大、および誘導された腫瘍の大きさの縮小の単なる反転ではなく、正常と比較して全体的な大きさの増大が好ましい。増大したT細胞およびB細胞の面積は免疫を示す。洞組織球増殖症(SH)は、摂取されそしてプロセシングされた腫瘍抗原を有するが、成熟することができず、そして細胞毒性T細胞およびB細胞を導くTH1およびTH2効果細胞(effective cell)を刺激することができるナイーブT細胞に対してこれらの腫瘍ペプチドを提示する、未成熟の樹状細胞の蓄積であると考えられている。SHの逆転が好ましい。
【0027】
このように、本発明は、局所リンパ節中での未成熟な樹状細胞の分化および成熟を促進し、従って、得られた成熟樹状細胞が、T細胞へ小ペプチド(一般的には、9アミノ酸の長さ)を提示して、T細胞の免疫を獲得することを可能にすることによる、局所リンパ節での免疫の障害の除去を提供する。さらに、成熟樹状細胞の誘導が必要である。最後に、内因性腫瘍ペプチドを提示する樹状細胞に応答することができるナイーブT細胞の誘導の存在下で、Tリンパ球減少症患者に抹消血Tリンパ球を動員することが所望される(Sprentら、Science、第293巻、2001年7月13日、245−248頁を参照のこと)。
【0028】
上記を考慮して、本発明の鍵となる機構上の特徴は、樹状細胞のインビボでの成熟であり、これによって有効なペプチド抗原の提示を生じる。以下に示される実施例に基づくと、CD45 RAポジティブである確約されていないナイーブT細胞の増大が認められている。抗原を用いると、これによってT細胞およびB細胞クローン性の増大が導かれ、患者において免疫が生じる。これにより生じる血行性の拡散による腫瘍への浸潤によって、確固たる腫瘍の崩壊が導かれる。結果は、以下のデータに見られるように、免疫学的記憶に起因する生存性の増大である(Sprentら(前出)を参照のこと)。
【0029】
外因的に提供される合成のまたは抽出された腫瘍ペプチド(Belloneら(前出)を参照のこと)が、予め感作させられたかもしくは同時に感作された局所リンパ節または遠位リンパ節に送達され得、そして腫瘍抗原特異的T細胞(B細胞を伴うかまたは伴わない)を生じることが、理論上推測される。3つの実験が以下に示される。上記を考慮して、NCMおよび他の薬剤の作用が、任意の腫瘍抗原(合成および内因性のペプチドおよびタンパク質)について有用であると結論付けられ得る。これらのペプチドの多くは通常は免疫原性ではなく、そして成熟した活性化された樹状細胞によって提示された場合にのみ、これらはナイーブT細胞の免疫に有効である。このように、免疫T細胞の出現は、事実上、樹状細胞が生じるかまたは適切に働くようにされることを意味する。また、事実上は、樹状細胞の活性化および成熟は、癌、免疫不全、ならびにT細胞の周知の欠損(例えば、数の減少およびアネルギーを伴う機能、ならびに推定されるアポトーシス)の重要な要因と考えられている。
【0030】
本発明に従って送達されるプロトコールおよび医薬品についてさらに詳細に言及すると、本発明は、患者(例えば、癌患者、ならびに他の病巣または抗原を産生する疾患状態の患者)を免疫するために、天然のサイトカイン混合物(NCM)を利用する。さらに詳細には、本発明は、NCMおよび腫瘍関連抗原をその中に含有している組成物(NCMは、免疫応答を生じるためのアジュバントとして作用する)の有効量の投与によって、癌に対する癌患者の免疫応答を強化する方法を利用する。腫瘍関連抗原は、癌患者の所属節に内在する内因的に処理された腫瘍ペプチド調製物、またはこれらの節もしくはその付近に外部から投与された腫瘍抗原調製物との組み合わせのいずれかであり得る。腫瘍ペプチドならびに抗原は、たとえ腫瘍関連タンパク質抗原が完全であるので、それらが免疫原性である可能性がより高い場合に、免疫原性であるとは予想されないとしても、本明細書中に含まれる。
【0031】
好ましい実施態様においては、本発明の構成には、NCMおよび腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原(低用量のシクロホスファミド、シクロオキシゲナーゼインヒビター、および本発明の組成物の作用をさらに増大させることが示されている他の同様の化合物とともに以下で定義される)の投与が含まれる。
【0032】
上記を明確にし、そしてさらに定義するために、以下の定義が提供される。「アジュバント」によって、特定の抗原に対する免疫応答を強化する能力を有する組成物が意味される。有効であるためには、アジュバントは抗原部位にまたはその付近に送達されなければならない。このような能力は、免疫媒介型の防御の有意な強化によって証明される。免疫の増大は、典型的には、抗原に対して惹起された抗体の力価の有意な増大(通常は10倍を超える)によって証明される。細胞性免疫の強化は、ポジティブ皮膚反応テスト、細胞毒性T細胞アッセイ、δIFNまたはIL−2についてのELISPOTアッセイ、あるいは腫瘍中へのT細胞の浸潤(以下に記載される)によって測定され得る。
【0033】
「腫瘍関連抗原」によって、類似タンパク質またはペプチド(これらは、樹状細胞のエキソビボでのパルスによって作用することが以前に示されている)、あるいは他の同等の抗原が意味される。これには、PSMAペプチド、MAGEペプチド(Sahin Uら、Curr Opin Immunol 9:709−715、1997;Wang RFら、Immunologic Reviews 170:85−100、1999)、パピローマウイルスペプチド(E6およびE7)、MAGEフラグメント、NY ESO−1、または他の同様の抗原が挙げられ得るがこれらに限定されない。以前にはこれらの抗原は、それらの大きさ(すなわち、これらは小さすぎる)またはそれらが免疫原性特性(すなわち、自己抗原)を有さないと以前には考えられていことのいずれかに基づいて、患者の処置には有効ではないと考えられていた。
【0034】
NCM(非組み換えサイトカイン混合物)は、米国特許第5,632,983号および同第5,698,194号に示されているように定義される。簡潔には、NCMは4−アミノキノロン抗生物質の継続的存在の下で、そして有糸分裂促進物質(これは好ましい実施態様においてはPHAである)の継続的存在または律動的存在の下で、調製される。
【0035】
本発明に従うと、高齢の免疫抑制されたマウスにおいてT細胞の発達および機能を促進することにおいて有効であると以前に示されている、部分的に特徴付けられたNCMが提供される。このNCMの頭部および頸部のガンを有する免疫抑制された患者への投与の際に、NCMで処置されたガン患者の血中へのTリンパ球の動員によって、CD2およびCD45 RAの両方を有している未成熟のナイーブT細胞の増大を生じることが、本出願においてはじめて実証された。これは、成体のヒトがナイーブT細胞を作製することができることの最初の実証である。先行する参考文献:Mackallら(New England Journal of Medicine(1995)、第332巻、143−149頁);およびMackallによる総説(Stem Cells 2000、第18巻、10−18頁)は、子供ではなく成体で新しいT細胞を作製することは不可能であると議論しており、そしてガンの化学療法および/または放射線治療後にT細胞を再び補充する試みの問題点を議論している。一般的には、新しいT細胞は成体のヒトでは作製されないという定説が存在する。しかし、強い化学療法のための骨髄移植後には、新しいT細胞が成体において作製され得るという証拠が存在している。今日までには、これを達成することができる分子療法は存在していないが、リンパ球数の増大は、HIV感染した患者において、組み換えインターロイキン−2での延長されたそして強い治療を用いて達成されている。これらは、胸腺由来T細胞であることが明かに実証されてはおらず、そしておそらく既存の末梢T細胞の増大である。
【0036】
以前に、Cortesinaらは、頭部および頸部のガンを有する患者において天然のIL−2をリンパ管周辺で使用し、そしていくつかの腫瘍退行を誘導し(Cortesina Gら、Cancer 62:2482−2485、1988)、白血球によるいくらかの腫瘍の浸潤を伴った(Valente Gら、Modern Pathol 3(6):702−708、1990)。処置することができない再発が生じ、そして応答は非特異的で記憶を伴わず、従って非免疫原性であった(Cortesina Gら、Br J Cancer 69:572−577、1994)。組み換えIL−2を用いた最初の観察を確認するための反復的な試みは、実質的には成功しなかった(Hadden JW、Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644、1997)。
【0037】
本発明の方法は、免疫療法用化合物の十分な局在化を提供するための、局所的なリンパ管周辺での注射、または当業者に公知の他の注射でNCMを使用することを含む。好ましい実施形態においては、注射は頸部に行われるが、処置される疾患によって必要とされる場合には、他の位置に適用され得る。この処置によって、改善され、再発のない生存をもまた示す患者の高い割合において臨床的な退行を誘導した(Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg.120:395−403、1994;Menesses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454、1998;Barrera Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351、2000;Whitesideら、Cancer Res.53:564−5662、1993)。Whitesideら(Cancer Res.53:5654−5662、1993)は、頭部および頸部のガンにおいて、組み換えインターロイキン2の腫瘍注射によって、Tリンパ球の浸潤が生じたが、有意な臨床応答は伴わなかったことを観察した。150人までの患者でのリンパ管周辺での注射と組み合わせたMultikine(Celsci Website)の腫瘍周辺での注射は、有意な腫瘍応答(すなわち、11人の患者のみにおいて50%以上の腫瘍の縮小)を生じた。これによると、それらの応答率は、本研究で観察される高い程度の応答(40%)と比較して、10%未満である。さらに、彼らは、本出願人らがわずか20%と観察した、応答しない人を50%と記録した。
【0038】
本出願人らは、腫瘍周辺注射および腫瘍内注射が、最初にNCMプロトコールに対してポジティブな応答を有した患者においてもなお疾患の進行を伴うことがあり、従ってその利点が取り消され得ることを観察した。従って、腫瘍周辺での注射は禁忌であり、そして本発明の部分から排除される。これによって本出願人らは、腫瘍が免疫の部位ではないという解釈を導き、そして本出願は、限局性リンパ節が免疫の部位である証拠を示す。次いで、限局性リンパ節の未公開の分析によってなお、限局性リンパ節が、仮定される腫瘍抗原についての免疫の部位であることを示すデータを明らかにした(図14〜18)。多数の種々の腫瘍抗原の同定によって、このような抗原の存在を仮定すると、それらが免疫プロトコールにおいて有効には使用されていないという難問がここ10年間にわたって存在していた。時々生じるポジティブな例が報告されているが、主には、データはネガティブである。抗原提示の問題は、ここ10年間に興味が集まっており、そして樹状細胞が、腫瘍由来の小ペプチドの提示における重要な役者として明らかにされている。DeLaughおよびLotts,Current Opinion In Immunology,2000,第12巻、583−588頁;Banchereauら、Annual Reviews of Immunology,(2000)、第18巻、767−811頁;また、Albertら、Nature、第392巻、86−89頁(1998)を参照のこと。
【0039】
簡潔には、腫瘍抗原が適切に抗原性であるためには、これらは壊死性腫瘍細胞ではなくアポトーシスから生じなければならない(Albert、Nature、39、2:86−87、1997)。これらは、大きな組織球の形態を有する未成熟の樹状細胞によって捕捉される必要がある。これらの未成熟の樹状細胞は抗原をプロセシング(エンドサイトーシス、食作用、および消化)し、そしてT細胞への提示のためのMHC溝中に消化された抗原のペプチドフラグメント(一般的には9個のアミノ酸)を提示する成熟樹状細胞に進化する。応答するためには、T細胞はMHC溝中でそれらに対して提示された抗原、および種々の同時刺激シグナルを有さなければならない。参考文献:BanchereauおよびDeLaugh。
【0040】
研究者ら(例えば、Murphyら、1999)は、培養物中で作製され、次いで腫瘍抗原でパルスされた樹状細胞を利用し、そして前立腺特異的膜抗原ペプチドに対して患者を免疫することにおいて小さい程度の成功を達成した。残念なことに、樹状細胞をパルスするこのアプローチは扱いにくく、そしてどちらかといえば不十分である。本発明では、本出願人らは、リンパ節洞(こではガンにおいて蓄積する)に存在する細胞が樹状細胞の系統の細胞であること、そしてNCMプロトコールを用いるインビボでの処置の後、これらの細胞が消滅し、次いで最終的には抗原がT細胞について免疫原性になることを示した。次いで、これらは腫瘍に応答することが可能である。従って、本発明の重要な局面は、限局性リンパ節中に、有効な抗原のプロセシングおよび提示を可能にする微環境を作製することができる。それが誘導する免疫は、T細胞が病巣に移動することを可能にし、そして腫瘍崩壊は、事実上は、樹状細胞による適切な抗原プロセシングの証明である。さらに、NCMで処置した患者は全て、遠位での転移(これは、臨床的には15%まで、そして病理学的には50%までと予想される)を生じなかった。このことは、単なる局所免疫ではなく全身免疫が、処置によって誘導されたことを示す。これは先行技術の組成物を上回る劇的な進歩である。なぜなら、先行技術の組成物は、最良でも、転移性疾患に対しては有効性が一貫しなかったからである。本発明の組成物が全身免疫を作製する能力は、より有効でありそして十分な患者の処置を可能にする。さらに、全身性応答が大きいことは、処置の有効性を制限することなく、そして毒性を有することなく、より少ない用量を個体に投与することを可能にする。
【0041】
文献(Hadden JW、Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644、1997;Hadden JW.Immunology and Immunotherapy of breast cancer:An update:Int’l J Immunopharmacol 21:79−101、1999)は、ガンの2つの主要なタイプであるSCCと腺癌の両方について、限局性リンパ節が、洞組織球増殖症、リンパ減少、および多くの場合はアネルギー性腫瘍関連リンパ球(IL−2を使用してエキソビボでの増大および回復を伴って腫瘍細胞に対して反応することができる)の存在を含む腫瘍に関係する異常を反映する。次いで、転移を伴って、リンパ減少および機能低下が生じる。さらに、このような患者の無関係な頸部リンパ節は、平均の大きさの減少、ならびに頭部および頸部のガンに関係している洞組織球増殖症の増大を示した(図14〜17を参照のこと)。
【0042】
特に組成物に関して、本発明の組成物は、天然のサイトカイン混合物、および内因性または外因性のいずれかの腫瘍関連抗原を含む。さらに、低用量のシクロホスファミド、シクロオキシゲナーゼインヒビター、亜鉛、および他の同様の化合物が、本発明の組成物の作用をさらに増大させることが示されている。
【0043】
ガン、HIV感染、老化、腎臓移植、および他のこのような不全に関係している細胞性免疫不全の患者の処置のための免疫が、本発明の組成物を用いて達成され得る。
【0044】
処置のための投与およびプロトコールは以下のとおりである。
【0045】
遺伝子産物/合成抗原の送達:
本発明の化合物(NCMを含む)および外因性抗原は、個々の患者の臨床的症状、投与部位および方法、投与スケジュール、患者の年齢、性別、体重を考慮して、最適な免疫を達成するように投与されそして服用される。従って、本明細書中の目的のための薬学的「有効量」は、当該分野で公知であるようなこのような考慮によって決定される。この量は、免疫(改善された腫瘍の縮小、断片化、および浸潤、生存率、またはさらに迅速な回復を含むがこれらに限定されない)、あるいは症状の改善または排除を達成するために有効でなければならない。
【0046】
本発明の方法においては、本発明の化合物は、種々の方法で投与され得る。これらが、化合物としてまたは薬学的に受容可能な塩として投与され得、そして単独で、あるは薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、アジュバント、およびビヒクルと組み合わせて有効成分として投与され得ることに留意するべきである。化合物は、皮内または皮下、リンパ管周辺またはリンパ管内、結節内または脾臓内(intrasplenically)または筋肉内、腹腔内、および胸郭内(intrathorasically)で投与され得る。化合物の移植もまた有用であり得る。処置される患者は、温血動物(特に、ヒトを含む哺乳動物)である。薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、アジュバント、およびビヒクル、ならびに移植のキャリアは、一般的には、本発明の有効成分とは反応しない、不活性な非毒性の固体または液体の増量剤、希釈剤、またはカプセル化材料をいう。
【0047】
用量は、単回用量であり得るか、または数日間にわたる複数回の用量であり得る。
【0048】
本発明の化合物の投与の際には、これは一般的には、単位投与量の注射可能な形態(溶液、懸濁物、乳濁物)で処方される。注射に適切な薬学的処方物には、滅菌の水溶液または分散物、および滅菌の注射可能な溶液または分散物への再構成のための滅菌の粉末が含まれる。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体のポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含有している溶媒または分散媒体であり得る。
【0049】
適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散物の場合には必要な粒子の大きさの維持によって、そして界面活性剤の使用によって、維持される。非水溶性のビヒクル(例えば、菜種油、ゴマ油、オリーブオイル、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、またはピーナッツ油)およびエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)もまた、化合物の混合のための溶媒システムとして使用され得る。さらに、種々の添加物(組成物の安定性、滅菌性、および等張性を強化する)(抗菌性保存料、抗酸化剤、キレート化剤、および緩衝剤を含む)が添加され得る。微生物の作用の防御は、種々の抗生物質および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)によって確実にされ得る。多くの場合は、等張化剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を含むことが所望される。注射可能な薬学的形態の吸収の延長は、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によってもたらされ得る。しかし、本発明に従うと、使用されるすべてのビヒクル、希釈剤、または添加物は、化合物と適合性である必要がある。
【0050】
ペプチドは、重合され得るか、または当該分野で周知のようにヒト血清アルブミンのようなキャリアに結合され得る。
【0051】
滅菌の注射可能な溶液は、所望される場合には、種々の他の成分とともに必要量の適切な溶媒中に、本発明の実施に利用される化合物を取り込むことによって調製され得る。
【0052】
本発明の薬理学的処方物は、任意の適合性のキャリア(例えば、種々のビヒクル、添加物、および希釈剤)を含有している注射可能な処方物で患者に投与され得る;または本発明で利用される化合物は、徐放皮下移植物の形態で、または、モノクローナル抗体、ベクターによる送達、イオン導入法、ポリマーマトリックス、リポソーム、およびミクロスフェアのような標的化送達システムで患者に非経口的に投与され得る。本発明において有用な送達システムの例には、以下が含まれる:第5,225,182号;第5,169,383号;第5,167,616号;第4,959,217号;第4,925,678号;第4,487,603号;第4,486,194号;第4,447,233号;第4,447,224号;第4,439,196号;および第4,475,196号。多くの他のこのような移植、送達システム、およびモジュールが、当業者に周知である。
【0053】
上記は、腫瘍抗原(自己由来または定義されたタンパク質もしくはペプチドのいずれか)に対してガン患者を免疫するためのアジュバントとしてNCMを使用するためのプロトコールを提供する。
【0054】
【表1】
【0055】
商業的な抗原の投与経路は、好ましくは頸部である。なぜなら、これは利用しやすく、そして頸部は体のリンパ節の30%より多くを含み、そして全身免疫が得られることが予想され得るからである。
【0056】
低用量のシクロホスファミド:低用量のCYは、ガンのマウスおよびガン患者において、細胞性免疫を増大させるため、およびリンパ球による抑制を減少させるために使用されている(Berd D.,Progress in Clin Biol Res 288:449−458、1989;Berd D.ら、Cancer Research 47:3317−3321、1987)。そしてこれは、ガン患者の有効な免疫療法に使用されている(Weber J.,Medscape Anthology 3:2、2000;Murphy GP、Tjoa BA、Simmons SJ.The prostate.38:43−78、1999;Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg.120:395−403、1994)。
【0057】
亜鉛:亜鉛不足は、細胞性免疫の改善に関係しており、そして亜鉛での処置はマウスにおいては免疫回復的である(Hadden JW.,Int’l J Immunopharmacol 17:696−701、1995;Saha A.,ら、Int’l J Immunopharmacol 17:729−734、1995)。
【0058】
シクロオキシゲナーゼインヒビター(COXi)様インドメタシン:ガンはプロスタグランジンを産生し、そして宿主マクロファージのプロスタグランジン産生を誘導する(Hadden JW.The immunopharmacology of head and neck cancer:An update.Int’l Immunopharmacol 11/12:629−644、1997)。プロスタグランジンはT細胞について免疫抑制性であることが公知であるので、PG合成のシクロオキシゲナーゼインヒビターでの阻害が適切である。
【0059】
組み換えタンパク質の精製
Marshakら「Strategies for Protein Purification and Characterization.A laboratory course manual.」CSHL Press,1996。
【0060】
抗原の用量および頻度
1〜1000μg(好ましくは、10〜500);形態−可溶性(必要な場合には、部分的に重合されるかまたはキャリアに結合させられる)
スケジュール:1日目、12日目、21日目
(Pre−Rx):12日目、21日目、31日目
注射部位:局所注射(すなわち、頸部での注射)
予想される応答:腫瘍の縮小
腫瘍の病理学的変化(縮小、断片化、リンパの浸潤)
抗原に対する体液性免疫(RAIまたはELISA)
抗原に対する細胞性免疫(ELISPOTアッセイの、インビトロでのリンパ球増殖、皮内皮膚反応テスト)
PSMA、MAGEフラグメント、E6、E7ペプチドのようなオリゴペプチドは、樹状細胞に対してパルスされてもなお免疫原として貧弱であることを記憶しておくこと。従って、有効な免疫は、生じるとは予想されない。有効な免疫を用いてもなお、腫瘍退行が、特に前立腺と頸部とのような距離で、この方法によって驚くべきことに認められる。転移性疾患の退行は、常に、免疫療法での驚くべき事象である。臨床応答の程度および頻度は、有効性の要因であり、従ってこのアプローチの新規性である。
【0061】
診断用皮膚反応テストは、我々をさらに有効な免疫へと導くための別の方法である。患者は、IRX−2(NCM)を用いて良好な応答を誘導するように予め処置され得る(NCM、PHA皮膚テスト、およびリンパ球数の増大、ならびにリンパ節の異常の反転)。
【0062】
これによって、アジュバント方法論を作製する
免疫回復とアジュバンシー(adjuvancy)の組み合わせ
ペプチドおよびタンパク質を免疫原性にする
一定の距離で腫瘍退行を達成するための免疫応答の程度を得る。
【0063】
これは、ペプチドおよび/または炭水化物を含有している腫瘍抗原およびハプテンの全ての形態に拡大することができる。
【0064】
これは、HIV+患者のAIDSウイルスワクチン;他の扱いが困難な状況;腎臓移植、老化などのような適用の領域に拡大することができる。
【0065】
患者は、プロトコールの考慮の前に1つ以上の腫瘍ペプチドについて皮膚反応テストされる。100μgの1つ以上の腫瘍ペプチドが、NCMシリーズの1日目および10日目について以下に議論されるように、NCMプロトコールを使用してNCMとともに頸部のリンパ管周辺に投与される。組み合わせが、21日目に繰り返される。腫瘍応答および組織学に加えて、ペプチドに対する免疫反応が、皮膚テストの反復によって、または当該分野で公知の他の手段によってモニターされる。
【実施例】
【0066】
実施例1
細胞培養に関する全ての工程を、滅菌条件下で行う。本明細書中には記載しない細胞免疫学の一般的な方法は、MishellおよびShiigi(Selected Methods in Cellular Immunology,1981)のような細胞免疫学的技術についての一般的な参考文献に記載されているように、そして当該分野で公知であるように行う。
【0067】
天然のサイトカイン混合物(NCM)の調製
複数のHIV陰性肝炎ウイルス陰性ドナー由来のヒト血液の軟膜白血球を回収する。別の実施形態においては、動物が獣医学的用途のための細胞供給源であり得る。ドナー由来の細胞をプールし、そしてficoll hypaque勾配(Phaemacia)上に重層して、好中球および赤血球を含まないリンパ球を得る。当該分野で公知であるように同じ出発リンパ球の集団を生じる別の方法を使用し得る。
【0068】
リンパ球を洗浄し、そして細胞のサブセットの選択のための表面活性化細胞培養フラスコ(MICROCELLECTOR.TM.T−25 Cell Culture Flasks)(その中には、刺激薬(すなわち、PHAのような有糸分裂促進物質)が固定されている)に対して、X vivo−10媒体(Whittaker Bioproducts)中に分配する。1つの実験のセットでは、X vivo−15およびX vivo−20媒体を示すように使用した。刺激薬の固定プロセスは、フラスコ中でのパンニング手順(すなわち、細胞の分離)のための種々の物質の固定について製造業者によって記載されているとおりである。あるいは、リンパ球を、刺激薬(例えば、PHA)に対して2〜4時間曝露し、次いで3回洗浄する。
【0069】
細胞を、X vivo−10培地中で24〜48時間、80μg/mlのシプロフフロキサシン(Miles Lab)とともに、CO2/空気インキュベーター中で37℃でインキュベートする。あるいは、RPMI 1640培地を使用することができる(Webbら、1973)。一般的には、HSAを、0.1から0.5%で(重量/容量)で使用する。インキュベーション後、上清を流し出し、そして回収する。ヒト血清アルブミン(HSA)を含まない培地を作製のために使用する場合には、インターロイキンをさらに安定化させるためにヒト血清アルブミン(HSA)を添加し得る。上清を4℃から−70℃で保存する。
【0070】
上清の特徴づけ
プールした上清を、IL−2については生体アッセイによって、そして残存しているインターロイキンIL−1〜IL−15、CSF、TNF、およびIFNについてはELISAによって、サイトカイン含有量の測定によって特徴付ける。滅菌性を、チオグリコレート培地中での培養によって試験し、そして内毒素を、当該分野で公知であるようにlimulus溶解物アッセイによって測定する。
【0071】
サイトカイン含有量についての上清の標準化:
それぞれの上清を、比較ができるように、投与される濃度または量のいずれかによって標準化する。
【0072】
上清からの混入物の除去:
使用される場合には、DNAおよびウイルスの排除には、限外濾過、カラムクロマトグラフィー、ウイルス保持フィルター、エタノール分配、ポリエチレングリコール/ベントナイト沈殿、ガンマ線照射、および/または溶媒/界面活性剤処理(静脈内でのガンマグロブリンおよびモノクローナル抗体について使用されているような)のような技術を使用する(例えば、IGIV News Updateパンフレット)。
【0073】
モデル
他に記載されていない限りは、高齢のマウスでのヒドロコルチゾンによって誘導した胸腺の縮小のモデルを使用した(Hadden JWら、Int’l J Immunopharmacol 17:821−828、1995)。
【0074】
実験動物
胸腺の退縮が始まっている繁殖引退した年齢の(8〜9ヶ月)を雌性BALB/cマウス(Life Science,St.Petersburg,Fla.)を、インビボ試験で使用した。マウスの体重を合わせ、そして5個のグループにランダムにプールした。動物を、飲料水は制約なく与えて、標準的な研究用食餌を与えた。対象群を除く全てのマウスを、化学的胸腺摘出および脾臓の重量の減少を導くために、ヒドロコルチゾン(0.1mlの0.9%の塩化ナトリウム中で5mg/マウス)で腹腔内(i.p.)で2日間連続して処置した。
【0075】
ヒドロコルチゾンで処置した成体マウスは、2日で急な胸腺の退縮(対照の30%未満)および脾臓の大きさの減少(対照の80%未満)を示し、10日までに徐々に回復した。
【0076】
実験計画
それぞれの処置群は5匹の動物を有し、そしてそれぞれの実験を2〜5回繰返した。処置を、3日目に腹腔内(i.p.)で開始し、そして全部で5日間の間1日に1回続けた。処置群に、本文に示すような以下のインビボ処置の1つを注射した:
・1.発熱物質を含まない生理食塩水(対照);
・2.組換えインターロイキン−1(rIL−1;4ng);
・3.組換えインターロイキン−2(rIL−2;50単位);
・4.rIL−1+rIL−2(それぞれ、4ng+50単位)
・5.天然のサイトカイン混合物(NCM;50単位のIL−2等量)。
【0077】
8日目に、マウスの体重を秤量し、頸部脱臼によって屠殺し、そしてそれらの脾臓および胸腺を回収しそして秤量した。器官を細かく刻み、残っている赤血球を塩化アンモウムを使用して溶解させ(MishellおよびShiigi、1981)、そして細胞を計数した。
【0078】
次いで、種々の物質に対する細胞の増殖応答を決定した。細胞のサンプルを、5%のウシ胎児血清、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、および2−メルカプトエタノール(2×10−5M)を有しているRPMI 1640倍地中での37℃、5%のCO2での細胞培養のために、調製した。細胞を、1.5×106/mlの濃度で4連で0.2mlのマイクロウェル中にプレートし、そして本文に示すように以下の1つとともに72時間インキュベートした:
・1.対照希釈物(完全なRPMI 1640培地)
・2.rIL−1(1ng/ml)
・3.rIL−2(2単位/ml)
・4.NCM(IL−2等量の2単位/ml)
・5.コンカナバリンA(Con A;1.5μg/ml)
・6.フィトヘマグルチニン(PHA;0.5μg/ml)。
【0079】
培養をDNA合成を測定するために停止させ、従って、滴定したチミジン(3H−Thymidine;New England Nuclear,Boston,Mass.;比活性6.7Ci/mM)の18時間のパルスを用いた細胞増殖物を、複合型自動サンプル回収装置を用いて回収し、そして液体シンチレーションカウンティングのために処理した。マーカーの研究をまた、Haddenら(1992)によって記載されているように行った。結果を、それぞれの動物についての3個のサンプルによるcpmの数学的平均として表す。種々の動物を用いて得られたデータの提示を簡単にするために、種々の動物での結果をプールし、そしてまとめて計算し、そしていくつかの場合には、対照に対する比率として表し、そして他のものは平均の標準誤差(SEM)について平均+括弧として表す。
【0080】
(統計学的分析)
StudentのT検定を、適切である場合にはデータを分析するために使用した。
【0081】
結果:
目的は、血清の非存在下で高レベルのインターロイキン−2を産生するようにリンパ球を刺激する方法であって、そしていかなる方法においても、上清中には有意な量のPHAは生じない方法を見つけることである。これを行うために、PHAを、「パンニング」細胞分離について製造業者の説明書に記載されているように、細胞のサブセットの選択のための表面活性化細胞培養フラスコ(AIS MICROCELLECTOR.TM.T−25プレート)上に固定したか、または細胞中へパルスし、続いて洗浄した(パルス技術)。
【0082】
これらの実験に使用した培地は、X vivo−10(Whittaker)であり、そしてこれは、インターロイキン−2−リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞プロトコルについて、米国食品医薬品局によりヒトへの投与について是認されている。最少必須培地(MEM)またはRPMI−1640(Sigma)と同様に、ヒトのリンパ球の増殖をサポートし得る血清を含まない培地もまた、使用することができた。
【0083】
最初の実験は、PHA(HA−16、Murex Diagnostics Ltd.,Dartford,U.K.)を製造業者によって記載されている技術によって固定することができたこと、および7.5〜15×106/mlの細胞数、24時間〜48時間の曝露時間、および25または50μg/mlのPHA濃度の最適条件下で、血清を含まない上清中で高収量のインターロイキン−2を得ることができたことを示した。この収量は、PHA(NI)への簡単な曝露、それに続く洗浄、および続く血清を含まない培地中でのシプロフロキサシン(NIM)との培養を使用するパルス技術よりも優れていた(表1)。
【0084】
【表2】
【0085】
IL−2含有量を、Gillisら(1978)によって記載された方法によってCTLL IL−2依存性細胞株を使用して上清中で測定した。IL−2を、640単位(Pharmacia AB)を含有している既知の標準に対して国際単位で定量した。
【0086】
細胞を含まずにインキュベートしたフラスコ由来の細胞を含まない上清を、残存しているPHAが増殖性応答を生じるための十分な量で存在するかどうかを決定するために、ヒトリンパ球に対して試験した。0.01μg/mlより多い残存しているPHAは、このような応答を生じる。細胞の非存在下では、少量のPHAは、40〜48時間で上清中で観察された。しかし、PHA(25μg/ml)を24時間だけ使用した場合は、これらのレベルはごくわずかであった。従って、24時間のインキュベーションが最適と考えた。本発明においてX vivo−10、X vivo−15、およびX vivo−20(Whittaker)、ならびにMEMの比較を行い、そして図1〜3に示した。X vivo−10およびX vivo−15は、インターロイキン−2−リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞プロトコルについて、米国食品医薬品局によりヒトへの投与について是認されている。NCMの生成を、1μg/mlのPHAに対する持続的な曝露対律動的な曝露を利用して、種々の培地中で比較した(図1)。細胞濃度の影響を、1μg/mlのPHA(図2)および2μg/mlのPHA(図3)への持続的な曝露を用いて調査した。これらの因子の最適な組み合わせが、PHAを2μg/mlで用いて2.5もしくは5.0×106/mlの細胞濃度で、またはPHAを1μg/mlで用いて5×106細胞/mlで、X−vivo−10中での固定化による持続的な曝露であることを見出した。細胞あたりの収量は、2.5×106細胞/mlで最大効率であるので、2μg/mlでPHAを用いるその濃度が、最適として選択される。
【0087】
PHAへの曝露後のヒト白血球からのサイトカインの産生を増強するためのシプロフロキサシンおよび2つの他の4−アミノキノロン抗生物質(ノルフロキサシンおよびオフロキサシン)についてのパラメーターを決定するために、予備実験を、フラスコではなくむしろチューブ内で行った。表IIIは、これらの4−アミノキノロン抗生物質のそれぞれの80μl/mlがIL−1、IL−2、IL−6、IFNγ、TNFα、及びG−CSFの産生を増強したことを示す。IL−8の産生は最大であった。IL−3、IL−4およびIL−7は、全ての上清中でこれらの環境下では検出できなかった。これらの結果は、これらの血清を含まない条件下では、80μg/mlで試験した全ての4−アミノキノロンが、血清を含まない条件下でPHAによって誘導されるサイトカインの産生を増強したことを示す。
【0088】
【表3】
【0089】
モノクローナル抗体OKT−3(Ortho)(これは、Tリンパ球が増殖しそしてインターロイキンを産生するように誘導する)を、これらの条件下で刺激薬として使用することができたこともまた決定した。表IIIは、実施例1に示すように、OKT−3が、フラスコ中でインキュベートした細胞を用いて、PHAおよびシプロフロキサシンによって誘導されるものと同様にサイトカインを誘導したことを示す。IL−3、IL−4、IL−5、およびIL−7は、刺激薬のいずれのセットを用いても検出されなかった。OKT−3は、PHAおよびシプロフロキサシン(CIPRO)と組み合わせた場合に、いくつかのILについての小さい付加的効果を生じた。
【0090】
【表4】
【0091】
インビトロでrIL−2を上回ってNCMが優れていることを示すために、マウスの脾臓細胞および胸腺細胞を、生物アッセイによって決定したIL2および滴定したチミジンの取り込みによって測定したDNA合成に匹敵するレベルで、MEMおよびrIL−2を用いて培養した。NCMは、IL2含有量に基づくrIL−2よりも大きい脾臓細胞(図4)および胸腺細胞(図5)の増殖を誘導した。
【0092】
図6および7に示すような一連の実験において、退縮した胸腺を有するマウスを、rIL−1、rIL−2、これらの因子の組み合わせ、NCM、または生理食塩水(コントロール)を用いてインビボで処置した。脾臓および胸腺を取り出し、インターロイキン(IL−1、IL−2)、NCM、および有糸分裂促進物質ConAに対する細胞増殖性応答について細胞を試験した。結果を、生理食塩水で処理したコントロールに対する比として表す。rIL−1、rIL−2、およびそれらの組み合わせ(rIL−1およびrIL−2)を用いたインビボでの処置は、IL−1、IL−2、NCM、またはConAでのインビトロでの刺激に対しては、脾臓細胞(図6)または胸腺細胞(図7)の増殖性応答を増大させることについて有意な影響を有さなかった。インビボでのNCM処置は、4個の全ての刺激に対して脾臓細胞および胸腺細胞の両方を有意に増大させた。これらの結果は、刺激に対するこれらの細胞の感度の増大、および/または応答性細胞の数の増大と一致する。
【0093】
図8および9は、脾臓細胞および胸腺細胞のマーカーに対するインビボでのNCM処置の影響を示す。未成熟のT細胞を−−によって示し、そしてこれは特に胸腺中にTリンパ球前駆体を提示し得る。NCMは、脾臓および胸腺中の集団を比例的に増大させた。未成熟のT細胞を++によって示し、そしてこの集団は、NCM処置によって胸腺中で比例的に減少される。成熟T細胞を、CD4+およびCD8+によって示す。NCMは、胸腺中の成熟T細胞の割合および脾臓でのそれらの数を増大させた。これらの結果は、T細胞前駆体を増大させ、そして胸腺での成熟T細胞へのそれらの発達を促進するNCMの作用と一致する。
【0094】
図10および図11は、ヒドロコルチゾンモデルでのコントロール媒体またはNCMでのインビボでの処置後の、培地(RPMI)、rIL−1(IL1)、rIL−2(IL2)、またはNCMに対するインビトロでの脾臓細胞および胸腺細胞の応答を示す。マウスを、本明細書中で上記に記載するように処置した。これらのデータは、NCMがバックグラウンドの脾臓細胞応答、IL−1およびIL−2に対する脾臓細胞応答を増大させたが、NCMは、バックグラウンドの胸腺細胞応答、ならびにIL−1、IL−2、およびNCMに対する胸腺細胞応答は増大させなかったことを示す。
【0095】
図12および13は、コントロール媒体またはNCMでのインビボでの処置後の、ConAおよびPHAに対するインビトロでの脾臓細胞および胸腺細胞の応答を示す。マウスを、本明細書中で上記に記載したように処置した。
【0096】
インビトロでの研究は、増殖シグナルに対する脾臓細胞及び胸腺細胞の感作において等量でrIL−2よりもNCMが優れていることを示す。胸腺細胞に対する影響は、分化の十分な促進を反映する。NCM組成物は、rIL−1、rIL−2、さらにこれらの組み合わせとも異なり、インビボでのTリンパ球の作用(IL応答)および発達(有糸分裂促進物質の応答および細胞マーカー)を強力に促進する。これは、免疫システムの刺激を必要とする任意の治療的測定に、またはなお、免疫システムの損傷または不全の部分的な作用の回復にも、治療的に関係している。例えば、化学治療剤は損傷細胞であり得、これには免疫応答に関係しているTリンパ球が含まれる。Tリンパ球の機能および発達を刺激することによる本発明は、損傷した際には、免疫システムのこの特徴を部分的または完全のいずれかに回復させることができる。
【0097】
(実施例2)
NCMおよび低用量のシクロホスファミド、インドメタシン、および亜鉛を有している、頸部の局所的なリンパ管周辺での注射が、扁平上皮細胞頭頸部の癌(H&NSCC)を有する患者の高い割合において臨床的な退行を誘導したことを示す(Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg.120:395−403、1994;Meneses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454、1998;Barrera Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351、2000)。これには、再発を伴わない生存の改善の証拠を伴う。全体的には、主要ではない応答(25%〜50%)、腫瘍の退縮、および病理学的標本中での腫瘍の縮小を含み、90%より多くが応答し、そして大部分は50%を超える腫瘍の縮小を有した。
【0098】
これらの応答は、免疫抑制によって媒介されることが推測される。なぜなら、Bリンパ球およびTリンパ球の両方について、腫瘍への浸潤を観察したからである。この治療は、有意な毒性を伴わなかった。
【0099】
いくつかの未公開の観察によってこの推測の証明を提供し、そして本発明を導く。
1)NCMの組み合わせでのリンパ球減少性の癌患者の処置によって、顕著なリンパ球の固定を生じた;分析した際には、これらの患者は、CD45RAポジティブT細胞(すなわち、ナイーブT細胞)の増大を示した(表IV)。
2)H&NSCCの患者でのNCMの腫瘍内または腫瘍周辺での注射は、可逆性の免疫療法によって誘導された腫瘍の退行、または腫瘍の進行のいずれかを生じた。従って、腫瘍は、免疫部位以外である。
3)所属リンパ節の分析は、所属リンパ節が仮定される腫瘍抗原に対しての免疫部位であることを示す未公開データを明らかにした(図14〜18を参照のこと)。
4)NCMで処置したこれらの患者は全て、臨床的には15%、そして病理学的には50%までにおいて予想される転移は生じなかった。このことは、単なる局所免疫が誘導されることではなく全身免疫が誘導されることを示す。
5)患者を、処置の前に0.1mlのNCMに対する皮膚反応テストを用いて予めテストした。ポジティブ皮膚反応テスト(24時間で>0.3mm)を用いると、これらの90%より多くが、強い臨床応答および病理学的応答を有した。ネガティブ皮膚反応テストを行った患者は、弱い応答を有したかまたは応答を有さなかった。従って、皮膚反応テストは、良好に応答する患者を選択するようである。
【0100】
主要な増大を、これらのTリンパ球減少症の患者において752→1020のTリンパ球数(CD2)において観察した (正常=1600に対してT細胞数752)。「ナイーブ」CD45RAポジティブT細胞(532→782)で対応する増大が存在したことが重要である。上記のように、これらの増大は、一般的には、NCMのような薬理学的治療を用いて、特に成体においては生じるとは考えられない。これらの細胞は、おそらく新生胸腺の移住者であり、そして腫瘍抗原のような新しい抗原に応答する主要な新規の能力が考えられ得る。既存のCD45RAポジティブ細胞は、腫瘍抗原には応答せず、そして腫瘍によって誘導される免疫抑制(アネルギー)に起因して、そのように行うことが十分にはできない場合がある。
【0101】
文献(Hadden JW、Int’l J Immupharmacol 11/12:629−644、1997;Hadden JW、Int’l J Immunopharmacol 21:79−101、1999)は、癌の主用な2つのタイプであるSCCおよびアデノ腺癌の両方について、所属リンパ節が、以下を含む腫瘍に関係している異常を反映することを示す:洞組織球増殖症、リンパ球の減少、および多くの場合は、腫瘍細胞(IL−2を有する)に反応し得る腫瘍関連リンパ球の存在。転移を有する場合は、リンパ球の減少および機能低下が生じる。無関係の頸部のリンパ節10 H&NSCCおよび10個のコントロールの未公開の分析は、平均の大きさの減少およびH&NSCCに関係している洞組織球の増大を示した(図14〜17)。
【0102】
【表5】
【0103】
【0104】
1サイクルのNCM(IRX−2)プロトコルでの処置(Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg.120:395−403、1994;Meneses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454、1998;Barrera Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351、2000)の後、無関係な頸部のリンパ節は、図14〜17に示す変化を示した。NCMで処置しなかったH&NSCC患者の所属リンパ節に対して比較すると、これらの節は大きさ、T細胞の面積および密度において有意な増大を示し、そして胚中心の数、ならびに洞組織球増殖症および密集の低減を示した。処置した患者のリンパ節は全て刺激され、そしてコントロールの節よりも大きく、増大したT細胞面積および密度を有した。従って、これらの節は正常にまで回復しただけではなく、H&NSCCでの生存性との既知のポジティブな相関関係である、T細胞の支配の証拠をまた示した(Hadden JW.Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644、1997)。
【0105】
重要なことは、B細胞およびT細胞の面積に関係しているリンパ節の変化が、T細胞およびB細胞の浸潤を反映するそれらの腫瘍中での変化に関係する場合には、高い程度の相関関係が、T細胞(p.<0.01)およびB細胞(s.<0.01)について、そして存在する全てのリンパについて(p.<0.001)得られた(図18)。次いで、これらの変化は、病理学的および臨床的な基準による腫瘍の縮小に関係する。これらの知見は、腫瘍の反応が、リンパ節の変化に直接およびポジティブに相関していること、および腫瘍の反応が、従属型可変性としてリンパ節の変化を反映することを示す。これらの知見は、一般的に免疫システムがどのように作用するかについての知見(Roitt I,Brostoff J,Male D.Immunology、JB Lippincott Co,Phila,PA,1989)、およびそれに続くサイトカイン遺伝子での腫瘍トランスフェクションについての知見(Maass Gら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995、92:5540−5542)とまとめて、NCMプロトコルが、リンパ節のレベルでいまだ同定されていない腫瘍抗原に対するこれらの患者を免疫することを示す。自己の腫瘍抗原での免疫を反映するリンパ節の変化についての証拠を示した研究者は、以前にはいなかった。これらのデータによって、出願人は、これが、離れた場所の転移の退行を生じる作用において、従来の不十分であるかまたはあまり有効ではない腫瘍抗原での免疫を誘導する試みについての、良好な出発点を構成することを確信する。
【0106】
(実施例3)
頭頸部のリンパ腫を有する2人の患者を処置した。
【0107】
含んだ患者は、このプロトコルへの参加に同意した頭頸部の癌を有する患者であった。以後の計画は以下のとおりであった。
【0108】
処置前に、患者を前腕に皮下で0.1mlのNCMを用いて皮膚反応テストを行った。この場所に印をつけ、そして24時間後にテストを読み取った。テストでは、誘導および紅斑が3mmに等しいかまたはそれよりも大きい場合に、ポジティブと考えた。
【0109】
NCMの各サイクルは、以下のように21日間であった:
1日目:低用量のシクロホスファミド(300mg/m2 i.v.)
1〜21日目:インドメタシン 25mg p.o. 1日3回
硫酸亜鉛 50mg p.o. 1日1回
3〜12日目:頸部のリンパ管周辺で1mlの皮下としてNCMの200単位を5回。
【0110】
(症例#1)
患者は、左の下顎部の領域に3ヶ月の腫瘍の存在の以前の病歴を有し、他の症状は有さない、23歳の男性であった。緊急治療室では、この患者は、深いレベルで部分的に固定された非常に固い約6.5cmの直径の左の顎下三角のリンパ節の腺症が見つかった。残りの身体検査は正常であった。切開による生検によっては、ホジキンリンパ腫を示した。病巣は、ステージECIIAであった。NCMの1サイクルの処置を行い、これによって、直径が1cm減少した大きさの腺腫として、小さい応答を生じた。NCM処置後に得られた生検の報告は、病巣の60%が正常なリンパ浸潤を示したこと、そして残りの新生物(40%)は壊死を示したことを示した。生存可能な腫瘍は見られなかった。
【0111】
この後、患者には、3600radの放射線治療を頸部に行った。患者は現在は疾患を有していない。
【0112】
(症例#2)
患者は、有痛の頸部中央部の腫瘍塊の2ヶ月の病歴、ならびに10kgの体重の減少を示した、82歳の男性である。身体検査では、患者は、右側の口蓋扁桃に腫瘍を示し、これは、扁桃の中心に核を有して約4×3cmにまで大きくなった。頸部では、右側の下顎骨のリンパ節で約2×2cmを測定し、そしてリンパ節の塊は約5×5cmのレベルIIおよびレベルIIIであった。残りの検査では正常であった。扁桃および頸部のリンパ節の1つの切開による生検では、中程度の段階の定義された混合型非ホジキンリンパ腫を示した。
【0113】
患者に、NCMを2サイクル行い、その終わりに、扁桃および頸部の腺腫の直径の1cmの縮小を観察した。NCM処置後の病理学的報告は、生存している腫瘍が20%、断片化されそして壊死性が30%、そして正常なリンパ浸潤が50%であることを示した。
【0114】
患者に、6サイクルの化学療法(CHOP)を行い、そしてその後、4600radの総線量で外部放射線治療(RT)を行った。この患者は、RTの8ヶ月後に再発し、後頭に副腎過形成を有した。患者は、頸部の疾患の兆候の3ヵ月後に死亡した。
【0115】
(実施例4)
未処置の初期段階(臨床段階IB1、IB2、およびIIA)の子宮頸癌の10人の患者を、IRX−2として局所的注射、リンパ管周辺での注射(10回の毎日の注射)、それに続く21日目での放射線子宮摘出術で処置した。IRX2の開始1日前に、患者に、300mg/m2でシクロホスファミドの単回のIV用量を与えた。経口で、インドメタシンまたはイブプロフェンならびに硫酸亜鉛を、1日目から21日目まで投与した。臨床および病理学的応答、毒性および疾患を有さない生存性を評価した。
【0116】
全ての患者のNCM処置を完了し、そして応答および毒性について評価した。臨床応答が50%の患者に見られた(3人で部分的な応答(PR)、2人で小さい応答(MR)(>25%<50%の縮小))。7人の患者に外科手術を行った。腫瘍の断片化を伴う病理学的な腫瘍の縮小が、5つの症例で見られた。むしろ、リンパ球、血漿細胞、好中球、マクロファージ、および好酸球を含む、腫瘍に浸潤する細胞型の異質のパターンが存在した。処置を、注射の間の穏やかな痛みおよび少量の出血、ならびにインドメタシンに対する胃の不耐を除いて、十分に寛容化した。追跡調査の24ヶ月目には、9人の患者が疾患を有していない。
【0117】
この以前には公開されていない研究は、腫瘍周辺のNCMが、初期段階の未処置の子宮頸癌において、免疫媒介性の腫瘍応答を誘導することを示す。
【0118】
(実施例5)
原発性肝細胞癌からの肝臓転移を有する2人の患者を、脾臓内NCM(1回または3回の注射)で処置した。プロトコルは、それ以外は、H&NSCC、子宮頸癌、またはリンパ腫の症例について先に記載したとおりであった。進行した肝細胞癌を有する1人の患者は、断層撮影法によって確認した部分的な応答を有し、病歴は入手することができなかった。他の患者は、外科手術によって確認した部分的な応答を有した。組織学的試験は、腫瘍の縮小、断片化、およびリンパ浸潤を示した。
【0119】
(実施例6)
陰茎の扁平上皮癌(ヒトパピローマウイルスに関係する)の4人の患者を、上記のようなNCMプロトコルで処置した;4人全てが、部分的な応答を臨床的に示し、そして外科手術による検体は、腫瘍の縮小および断片化、ならびにH&NSCC癌患者の特徴であるリンパ浸潤を示した。
【0120】
(実施例7)
マウスを、アジュバントとしてミョウバンを用いて(1:1容量)3つの位置(1日目、14日目、21日目)でオボアルブミン100μgと組み合わせたPMSAペプチドで免疫した(5匹)か、またはNCM(20単位のIL2等量)(5匹)動物を、28日目にオボアルブミン(100μg)(2匹)またはペプチド(100μg)(3匹)を用いて皮膚反応テストした。オボアルブミンおよびNCMで、ペプチドを含まずに処置した2匹の動物は、ポジティブ皮膚反応テストでオボアルブミンに応答した。オボアルブミンおよびミョウバンで処置した2匹の動物は応答しなかった。オボアルブミンとペプチド、およびNCMで処置した3匹の動物のうちの2匹が応答した。オボアルブミンとペプチド、およびミョウバンで処置した動物は全て、応答しなかった。従って、NCMが、抗原としての腫瘍ペプチドおよびオボアルブミンの両方について、ミョウバンより優れたアジュバントであった。
【0121】
本出願を通じて、種々の刊行物(米国特許を含む)が、著者および年号および特許番号によって引用されている。刊行物についての全ての引用文献を以下に列挙する。これらの刊行物および特許の開示は、それらの全体において、本発明が属する分野の状態をより完全に記載するために、本出願中に参考として援用される。
【0122】
本発明は、例示の様式で記載されており、そして使用されている技術用語が限定よりもむしろ記述の言葉の性質において意図されることが理解される。
【0123】
明らかに、本発明の多くの改変およびバリエーションが、上記の教示を参照して可能である。従って、本発明が、詳細に記載されている以外で実施され得ることが、本発明の範囲内であることが理解される。
【0124】
(参考文献)
【0125】
【表6】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【公開番号】特開2013−75922(P2013−75922A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−14029(P2013−14029)
【出願日】平成25年1月29日(2013.1.29)
【分割の表示】特願2012−20558(P2012−20558)の分割
【原出願日】平成13年10月26日(2001.10.26)
【出願人】(503156286)アイアールエックス セラピューティクス, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月29日(2013.1.29)
【分割の表示】特願2012−20558(P2012−20558)の分割
【原出願日】平成13年10月26日(2001.10.26)
【出願人】(503156286)アイアールエックス セラピューティクス, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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