説明

免疫調節機能を有する乳酸菌

【課題】インターロイキン−12(IL-12)産生を増強し、かつ、細胞性免疫を活性化させることにより、感染性微生物による疾病への抵抗を高めることができる乳酸菌を提供する。
【解決手段】ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)、及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体は、インターロイキン−12(IL-12)産生を増強し、かつ、細胞性免疫を活性化させることにより、感染性微生物による疾病への抵抗を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節機能を有することを特徴とする、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体、及び、免疫調節機能を有することを特徴とする、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体に関する。
本発明の免疫調節機能を有するラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)、及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体は、摂取することにより、インターロイキン12(以下、IL-12と略記)産生を増強し、かつ、細胞性免疫を活性化させることにより、感染性微生物による疾病への抵抗を高めることができる。
【背景技術】
【0002】
免疫とは、細菌やウイルスあるいは体内で発生する腫瘍等から生体を守るためのシステムである。細菌、ウイルス等の感染、腫瘍、細胞障害等に対して生体は免疫反応によって対応するが、その免疫応答は、免疫担当細胞間のさまざまな相互作用により調節されている。そして、免疫応答の調節にはリンパ球、マクロファージ等が産生するインターロイキン、腫瘍壊死因子α(TNF-α)等のサイトカインが重要な役割を演じている。
【0003】
リンパ球、マクロファージ等が産生するサイトカインのなかで、IL-12は、ヘルパーT前駆細胞(Th0)からヘルパーT細胞タイプ1(Th1)への分化誘導やナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性化等の作用を有する。ヘルパーT細胞には、Th1細胞とTh2細胞があり、Th1細胞は、インターロイキン−2(IL-2)、インターフェロン−γ(IFN-γ、IgE抗体の産生を抑制する)、TNF-α、TNF-β、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IL-3を産生することで、T細胞や単球等の貪食細胞の活性を高め、細菌等の感染に対する抵抗を高める。また、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、がん細胞やウイルス感染細胞等を特異的に殺傷する能力を有する。したがって、IL-12の産生増強により、ウイルス感染への抵抗力増強やがんの予防等が期待できる。これらの作用は、白血球やリンパ球等の免疫細胞が直接病原体を殺傷、貪食するもので、細胞性免疫と呼ばれ、抗体産生による免疫作用(液性免疫)とは区別される。
【0004】
一方、細胞性免疫と液性免疫はバランス関係にあり、細胞性免疫が活性化すると液性免疫が抑制される現象がみられる。現代の人間は、抗体産生(液性免疫)側にバランスが傾いているといわれ、花粉症、アレルギーの増加の一因とされている。IL-12の増強により、これらの症状の緩和も期待できる。
【0005】
近年、この免疫システムを調節する食品成分が注目されている。このような成分として、乳酸菌、麹カビあるいは酵母等の食用微生物やそれらの細胞壁成分、また、シイタケやアガリクスに代表される担子菌類の多糖類等が知られている。
免疫システムを調節する乳酸菌に関して、最近様々な研究が進められている。現在までに、ラクトバチルス・デルブリッキを主成分とする免疫賦活剤(特許文献1)、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属等の乳酸菌の菌体を有効成分とするIL-12産生促進剤(特許文献2)、植物由来のラクトバチルス属に属する乳酸菌及び植物由来のロイコノストック属に属する乳酸菌を有効成分とする免疫機能調節剤(特許文献3)、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属及びストレプトコッカス属に属する乳酸菌からなる群より選択された1種類以上の乳酸菌体の破砕物を有効成分とする、インターロイキン-10産生の維持又は促進作用と、IL-12産生の維持又は抑制作用を有するインターロイキン産生調節剤(特許文献4)、免疫調節作用を有するラクトバチルス・ペントーサスを含む組成物(特許文献5)等が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−228536号公報
【特許文献2】特開平10−139674号公報
【特許文献3】特開2007-70249号公報
【特許文献4】特開2007-269737号公報
【特許文献5】特表2008−501013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属等を含む乳酸菌を有効成分とした免疫機能を調節する剤や医薬品等が開示されている一方で、IL-12産生能を増強し、かつ、免疫抑制処理マウス及び通常マウスにおいて白血球貪食活性、NK細胞活性といった細胞性免疫活性を有する菌株は開示されていない。
本発明は、IL-12産生を増強し、かつ、細胞性免疫を活性化させることにより、感染性微生物による疾病への抵抗を高めることができる乳酸菌を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体は、IL-12産生を高め、かつ、細胞性免疫を活性化させることを見出した。
【0009】
したがって、本発明は、免疫調節機能を有する、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体であり、これら2菌株の死菌体は、IL-12産生を増強し、かつ、細胞性免疫を活性化することを特徴とする。また、本発明はこれら乳酸菌死菌体を配合した免疫調節剤、飲食品及び飼料である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の免疫調節機能を有することを特徴とする、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体又は、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体を摂取する事により、IL-12産生を高め、かつ、細胞性免疫を活性化させることにより、感染性微生物による疾病への抵抗を高めることが期待できる。また、乳酸菌自体を使用するため、極めて安全性が高いという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における免疫調節機能とは、IL-12の産生を増強させ、細胞性免疫を活性化することにより、病原体の感染に対する抵抗力を高めるものである。
IL-12の産生は、マウス由来マクロファージ様細胞株J774.1細胞に、乳酸菌死菌体溶液を10μg/mlになるように添加した場合、1,800pg/ml以上のIL-12産生量となることが望ましい。
また、細胞性免疫を活性化するとは、免疫抑制処理マウス及び通常マウスにおいて、白血球貪食活性及びNK細胞活性を有することをいう。
【0012】
本発明者等は、乳製品やヒト由来の数多くの乳酸菌のうち、食品に適用した際に香味や物性も優れている菌株の選定を進め、ラクトバチルス属乳酸菌(Lactobacillus)としてラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクスを選択した。さらに、IL-12産生を高めること、かつ、細胞性免疫を活性化させることの2条件を設定して、これら2条件の活性の高い菌株の選定を進めた結果、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)を選択することができた。
【0013】
これらの菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに2008年9月4日に寄託されている。受託番号はラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株がFERM P-21665、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株がFERM P-21666である。
【0014】
ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)を培養する培地には、乳培地又は乳成分を含む培地、これを含まない半合成培地等種々の培地を用いることができる。このような培地としては、脱脂乳を還元して加熱殺菌した還元脱脂乳培地を例示することができる。
【0015】
これらラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)の培養法は、静置培養あるいはpHを一定にコントロールした中和培養で行うが、菌が良好に生育する条件であれば特に培養法に制限はない。菌体は、乳酸菌培養の常法に従って培養し、得られた培養物から遠心分離等の集菌手段によって分離されたものをそのまま用いることができる。また、死菌体は通常、菌体を加熱することにより得ることができる。加熱条件は菌体が死滅する条件であれば特に限定されないが、一般的には90℃、30分程度の加熱で十分な結果を得ることができる。菌体として純粋に分離された菌体だけでなく、培養物、懸濁物、その他の菌体含有物や、菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分も用いることができる。よって、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体は、培養物あるいはその菌体自体であっても良いし、菌体や培養物自体を配合した飲食品としても良い。
【0016】
ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体は、どのような飲食品に配合しても良く、飲食品の製造工程中に原料に添加しても良い。飲食品の例として、乳飲料、発酵乳、果汁飲料、ゼリー、キャンディー、乳製品、マヨネーズ等の卵加工品、バターケーキ等の菓子・パン類等を挙げることができる。
また、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体や培養物は、家畜用飼料としてどのような飼料に配合しても良く、飼料の製造工程中に原料に添加しても良い。
【0017】
本発明の免疫調節剤は、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体を有効成分としたものである。
製剤化に際しては、製剤上許可されている賦形剤、安定剤、矯味剤等を適宜混合して定法どおり製剤化することができる。また、菌体や培養物の作用を妨げない範囲で、賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、懸濁剤、コーティング剤、その他の任意の薬剤を混合して製剤化することもできる。剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤等が可能であり、これらを経口的に投与することが望ましい。
【0018】
免疫調節作用を発揮させるためには、成人の場合、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体を0.1〜10g、好ましくは0.5〜5g/1日当たりを摂取できるように配合量等を調整すれば良い。乳酸菌の含有割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量等に合わせて適宜調節すれば良い。
【0019】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0020】
[試験例1]
(マクロファージ様細胞株を使用した乳酸菌株のIL-12産生試験)
方法:マウス由来マクロファージ様細胞株J774.1細胞に、乳酸菌約180株の死菌体溶液を10μg /mlになるように添加し、IL-12産生量を評価した。
結果:供試乳酸菌のIL-12産生量を評価した結果、IL-12産生量の高い上位15菌株を図1に示す。ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT10955株のIL-12産生量が高い結果を示した。
【0021】
[試験例2]
(免疫抑制処理マウスによる試験)
方法:試験例1でIL-12産生量が高かった上位3株、すなわち、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT10955株を選び、それらの死菌体粉末をそれぞれ、AIN-93G飼料に0.1%混ぜ、7週齢のBALB/cマウスに1週間自由摂取させた。コントロールには死菌体を添加しない、通常のAIN-93G飼料を用いた。その後、dexamethazone(DEX)を1mg/kgの割合で腹腔内投与して免疫抑制処理を行った。18時間後に血液と脾臓を採取し、白血球貪食細胞活性、NK細胞活性を測定して、コントロール群と比較した。
白血球貪食細胞活性はマウスから採血を行い蛍光標識ラテックス粒子取込み法にて白血球中の貪食細胞率をフローサイトメトリー(BD FACSCanto)で解析した。白血球貪食細胞活性は以下の計算式で算出した。

白血球貪食細胞活性(%)={(ラテックス粒子貪食細胞数)/(白血球20000cells)}×100

NK細胞活性の測定には、標的細胞としてマウス胸腺細胞腫(YAC-1細胞)を、エフェクター細胞としてマウスから採取した脾臓細胞を用いた。あらかじめ蛍光色素で染色したYAC-1細胞と脾臓細胞を1:50の割合になるよう96穴平底培養プレートに播き、37℃、5%CO2条件下で4時間混合培養し、その後、回収した細胞浮遊液に死細胞検出用の蛍光色素を添加しフローサイトメトリー(BD FACSCanto;BD Biosciences社製)でYAC-1細胞の死細胞率を測定した。NK細胞活性は以下の計算式で算出した。

NK細胞活性(%)=YAC-1全死細胞率(%)-YAC-1自然死細胞率(%)

結果:免疫抑制処理マウスにおけるラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)、及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT10955株の各摂取群について、白血球貪食細胞活性、NK細胞活性の測定結果を図2、3及び表1に示す。ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)摂取群、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)摂取群ともコントロールと比較して白血球貪食細胞活性が上昇する傾向を示し、NK細胞活性は有意に増強された。一方、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT10955株摂取群では白血球貪食細胞活性、NK細胞活性のいずれも上昇を示さなかった。
【0022】

【表1】

【0023】
[試験例3]
(通常マウスによる試験)
方法:ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)、及びコントロールとしてラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT10955株のそれぞれの死菌体粉末をAIN-93G飼料に0.1%混ぜ、7週齢のBALB/cマウスに 1週間自由摂取させた。コントロールには死菌体を添加しない、通常のAIN-93G飼料を用いた。1週間後、免疫抑制処理は行わず血液と脾臓を採取し、白血球貪食細胞活性、NK細胞活性を測定してコントロール群と比較した。白血球貪食細胞活性及びNK細胞活性の測定方法は試験例1と同じである。
結果:通常マウスでの白血球貪食細胞活性、NK細胞活性の測定結果を図4、5及び表2に示す。ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)摂取群ではNK細胞活性が有意に上昇した。ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)摂取群では白血球貪食細胞活性、NK細胞活性ともに有意に上昇した。一方、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri) SBT10955株摂取群では白血球貪食細胞活性、NK活性のいずれも上昇を示さなかった。
【0024】

【表2】

【0025】
以上のことから、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体、及びラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体は、IL-12産生を高め、かつ、細胞性免疫を活性化させることが明らかとなった。
【実施例1】
【0026】
(死菌体粉末の調製1)
MRS培地(Difco社)を121℃で15分間殺菌した後、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)を接種し、37℃で16時間培養した。得られた培養物を4℃、7,000rpmで15分間遠心分離した後、滅菌水に懸濁した。懸濁液を95℃、30分加熱した後、噴霧乾燥してラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)の死菌体粉末を得た。これは、そのまま本発明の免疫調節剤として使用し得る。
【実施例2】
【0027】
(死菌体粉末の調製2)
MRS培地(Difco社)を121℃で15分間殺菌した後、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)を接種し、37℃で16時間培養した。得られた培養物を4℃、7,000rpmで15分間遠心分離した後、滅菌水に懸濁した。懸濁液を95℃、30分加熱した後、噴霧乾燥してラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)の死菌体粉末を得た。これは、そのまま本発明の免疫調節剤として使用し得る。
【実施例3】
【0028】
(スティック状健康食品の製造)
実施例2で得られたラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) SBT10577株(FERM P-21666)の死菌体粉末30gに、ビタミンCとクエン酸の等量混合物40g、グラニュー糖100g、コーンスターチと乳糖の等量混合物60gを加えて混合した。混合物をスティック状の袋に詰め、本発明の免疫調節機能を有するスティック状健康食品を製造した。
【実施例4】
【0029】
(カプセル剤の製造)
表3に示した配合により原料を混合し、造粒した後、カプセルに充填して本発明の免疫調節機能を有するカプセル剤を製造した。
【0030】

【表3】

【実施例5】
【0031】
(錠剤の製造)
ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)の液体培養物を、4℃、7,000rpmで15分間遠心分離した後、滅菌水による洗浄と遠心分離を3回繰り返して行い、洗浄菌体を得た。この洗浄菌体を115℃、15分間加熱した後、凍結乾燥処理して死菌体粉末を得た。この死菌体粉末1部に脱脂粉乳4部を混合し、この混合粉末を打錠機により1gずつ常法により打錠して、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)の死菌体200mgを含む本発明の免疫調節機能を有する錠剤を調製した。
【実施例6】
【0032】
(イヌ飼育用飼料の製造)
表4に示した配合により原料を混合し、本発明の免疫調節機能を有す
るイヌ飼育用飼料を製造した。
【0033】

【表4】

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】乳酸菌のIL-12産生量を評価した結果を示した図である。(試験例1)
【図2】白血球貪食細胞活性を測定した結果を示した図である。(試験例2)
【図3】NK細胞活性を測定した結果を示した図である。(試験例2)
【図4】白血球貪食細胞活性を測定した結果を示した図である。(試験例3)
【図5】NK細胞活性を測定した結果を示した図である。(試験例3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫調節機能を有することを特徴とする、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体。
【請求項2】
免疫調節機能を有することを特徴とする、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体。
【請求項3】
インターロイキン−12(IL-12)産生を増強し、かつ、細胞性免疫を活性化することを特徴とする、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)SBT2083株(FERM P-21665)死菌体。
【請求項4】
インターロイキン−12(IL-12)産生を増強し、かつ、細胞性免疫を活性化することを特徴とする、ラクトバチルス・デルブルッキイ・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)SBT10577株(FERM P-21666)死菌体。
【請求項5】
請求項1乃至4記載のいずれかに記載の乳酸菌死菌体を配合した免疫調節剤。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の乳酸菌死菌体を配合した飲食品。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載の乳酸菌死菌体を配合した飼料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−132579(P2010−132579A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307913(P2008−307913)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】