説明

入力装置及び表示システム

【課題】タブレット型コンピュータ等の入力装置における入力操作を指の自然な動作に近づけることにより、入力装置における入力操作を行ない易くする。
【解決手段】フリップセンサ31のPETフィルム31a,31b,31c,31d,31eの裏面に導電膜31aa,31ba,31ca,31da,31eaが形成されている。台座311とプラスチック板312,313,314,315と押え板316は、導電膜31aa,31ba,31ca,31da,31eaの領域31ab,31bb,31cb,31dbの近傍を通りかつ交差方向に横切って指を動かせる状態にPETフィルム31a,31b,31c,31d,31eを支持する。そして、フリップセンサ31に接続される検出部が、交差方向に縁部を横切って指が動くことによってフリップセンサ31に生じる静電容量の変化を検出して入力信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式の入力装置及び、当該入力装置を備える表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハンドヘルド用途のパーソナルコンピュータとして、平板状の筐体に演算装置とともに表示画面(タッチスクリーン)を搭載したタブレット型コンピュータが普及している。そして、このようなタブレット型コンピュータの一つの使い方として、タッチスクリーンに書籍の各頁を表示する電子書籍の表示端末がある。
【0003】
このように電子書籍の表示端末として用いられているタブレット型コンピュータにおいては、タッチスクリーンを指で操作することにより、表示されている書籍の頁をめくることが行なわれるのが一般的である。
【0004】
電子書籍などにおいて、このような頁めくりの操作性を向上させるために、例えば特許文献1(特開2002−169653号公報)に記載されているように、タッチスクリーンに突起を設けてクリック感を感じさせることなどが行なわれている。また、頁めくり速度を上げるために、タッチスクリーンに対して、指先を立てたときと寝かせたときの静電容量の違いを判別して、スクロールの仕方を切換えることが行なわれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているように、タッチスクリーンのタッチパッドに対して平行に動く指によって、あるいはタッチパッドに対して指を立てたり寝かしたりする動きによって、頁めくりの操作を行うと、大きく指を動かさなければならなかったり、頁めくりの応答速度が遅くなってしまう。そのため、電子書籍の頁めくりの操作は、紙製の書籍の頁を実際にめくる操作に比べて違和感が大きくなる。
【0006】
本発明の目的は、タブレット型コンピュータ等の入力装置における入力操作を指の自然な動作に近づけることにより、入力装置における入力操作を行ない易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0008】
本発明の一見地に係る入力装置は、導電膜を支持する導電膜支持基体と、導電膜の縁部の近傍を通りかつ導電膜に対して交差する交差方向に導電膜を横切って指を動かせる状態に導電膜支持基体を支持する支持部材と、交差方向に縁部を横切って指が動くことによって生じる静電容量の変化を検出して入力信号を生成する検出部とを備えるものである。
【0009】
この入力装置では、導電膜に対する交差方向に指が動くので、従来のように導電膜に対して指が平行に動く場合や導電膜に近づいたり遠ざかったりする場合に比べて、検出部で検出される静電容量の変化が急峻になるように操作し易く、指の小さな動作で確実に入力信号を生成することができる。
【0010】
入力装置は、導電膜支持基体又は支持部材に設けられ、交差方向に力が掛かる状態で指を引っ掛け得る引っ掛り部をさらに備えてもよい。
【0011】
この入力装置では、引っ掛かり部に指が引っ掛かって指が静止した状態で交差方向に力が掛かるため、引っ掛かり部から指を解放することで解放の瞬間から指と導電膜支持基体との間の相対速度を大きくすることができる。それにより、静電容量の変化を急峻にすることができる。
【0012】
導電膜支持基体は、導電膜が一方主面に形成されている少なくとも1つの弾性フィルムを含み、引っ掛り部は、少なくとも1つの弾性フィルムの一部領域であり、支持部材は、縁部の近傍を通り交差方向に縁部を横切って指を動かせる状態になるようにかつ、少なくとも1つの弾性フィルムの一部領域が引っ掛り部になるように支持するため、一部領域を露出させて少なくとも1つの弾性フィルムの一部領域以外の領域を固定するものであってもよい。
【0013】
この入力装置では、少なくとも一つの弾性フィルムの一部領域を指で引っ掛けた後に解放するような指で弾く動作を行うと、指で押されて撓んだ(弾性変形した)弾性フィルムが指の移動方向とは反対の方向にその弾性によって戻るため、弾性フィルムに対する指の相対速度が増す。この相対速度の増加によって、静電容量の変化を急峻にすることができる。
【0014】
少なくとも1つの弾性フィルムは、交差方向において互いに離れかつ、交差方向の一方側から見て互いに重なるように配置されている複数の弾性フィルムであり、検出部は、複数の弾性フィルムの各引っ掛り部で起こる指の引っ掛かりと解放によって生じる複数回の静電容量の変化を検出して入力信号を複数生成するものであってもよい。
【0015】
この入力装置では、一方向への指の動きで複数の弾性フィルムによる複数回の静電容量の変化を生じさせることができ、それによる入力信号の複数の生成が可能になる。そのため、1回の指の動きで複数の入力信号が生成されることから、入力時間を短縮することができる。
【0016】
複数の弾性フィルムは、交差方向の一方側から見て全ての一部領域が見えるように、一部領域を順にずらして配置されてもよい。
【0017】
この入力装置では、1回の指の動きで複数の弾性フィルムを弾くときに、指の動きに連れて一方側から順々に弾性フィルムに指がスムーズに掛かるので、複数の弾性フィルムが同時に弾かれることを防止でき、入力時間の短縮が確実になる。
【0018】
本発明の他の見地に係る表示システムは、表示画面と、表示画面の周囲に設けられ、導電膜を支持する導電膜支持基体と、縁部の近傍を通りかつ導電膜に対して交差する交差方向に導電膜の縁部を横切って指を動かせるように導電膜支持基体を支持する支持部材と、交差方向に縁部を横切って指が動くことによって生じる静電容量の変化を検出して入力信号を生成する検出部とを有する入力装置と、表示画面の表示を行わせる表示信号を出力するように構成され、表示信号を変化させるために、入力装置の検出部の入力信号を用いる表示制御部と、を備えるものである。
【0019】
この表示システムでは、入力装置において、導電膜に対する交差方向に指が動くので、従来のように導電膜に対して指が平行に動く場合や導電膜に近づいたり遠ざかったりする場合に比べて、検出部で検出される静電容量の変化が急峻になるように操作し易く、指の小さな動作で確実に入力信号を生成することができる。表示制御部は、入力装置における入力に応じて確実に表示信号を表示画面に出力することができる。
【0020】
導電膜支持基体は、複数であって、表示画面の対向する辺に沿って設けられてもよい。
【0021】
この表示システムでは、対向する辺に左右の手の指がくるように表示システムを持つことで両手による操作が可能になる。
【0022】
入力装置は、少なくとも入力信号を音声信号に変換して表示制御部に対して出力するものであってもよい。
【0023】
この表示システムでは、音声信号に係わる接続部やインターフェースの機能で入力装置からの信号伝達が行えるため、音声信号以外の接続部やインターフェースの機能を他の資源に割り振ることができ、使い勝手がよくなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、指の小さな動作で確実に入力信号を生成することができるので、入力操作を指の自然な動作に近づけて、入力装置における入力操作を行ない易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示システムの一例を示す斜視図。
【図2】入力装置の操作の一例を示す平面図。
【図3】入力装置の筐体の外観を示す正面図。
【図4】タブレット型コンピュータに筐体が取り付けられた状態を示す正面図。
【図5】タブレット型コンピュータに筐体が取り付けられた状態を示す斜視図。
【図6】フリップセンサの構成を示す組み立て図。
【図7】入力装置及びタブレット型コンピュータの構成の一例を示すブロック図。
【図8】(a)指が遠ざかる動作によるフリップセンサの静電容量の変化を示すグラフ。(b)指で弾く動作によるフリップセンサの静電容量の変化を示すグラフ。
【図9】(a)周波数カウンタのイネーブル信号の波形の一例を示すタイミングチャート。(b)RC発振回路のパルス出力の一例を示すタイミングチャート。(c)周波数カウンタの動作を示すタイミングチャート。
【図10】カウント値の比と閾値を用いて、意図しない入力をキャンセルする仕組みを説明するためのグラフ。
【図11】(a)1枚ずつフリップセンサが弾かれている場合のカウント値の差を示すグラフ。(b)連続してフリップセンサが弾かれた場合のカウント値の差を示すグラフ。
【図12】タブレット型コンピュータにおける入力の認識動作を示すフローチャート。
【図13】入力装置及びタブレット型コンピュータの構成の他の例を示すブロック図。
【図14】連続的に弾かれたフリップセンサの静電容量の変化の一例を示すグラフ。
【図15】入力装置の操作の他の例を示す部分斜視図。
【図16】指を挿入したフリップセンサの静電容量の変化の一例を示すグラフ。
【図17】入力装置の操作の他の例を示す部分斜視図。
【図18】一実施形態に係る表示システムの他の例を説明するための部分斜視図。
【図19】カウント値の差と閾値を用いて、意図しない入力をキャンセルする仕組みを説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1)表示システムの概要
以下、本発明の一実施形態に係る表示システムについて図1乃至図12を用いて説明する。図1に示す表示システム10は、電子書籍を表示することができる電子書籍表示機能を有するものであり、タブレット型コンピュータ20と静電容量式の入力装置30とを備えて構成されている。入力装置30は、タブレット型コンピュータ20に対して装脱できるオプション装備である。
【0027】
元々、タブレット型コンピュータ20は、入力と表示を行なうためにタッチスクリーン25を標準装備として備えている。タブレット型コンピュータ20は、図1及び図4に示すオン・オフ・スリープ・スリープ解除ボタン23aや音量調整ボタン23bやホームボタン23cなどの操作ボタン以外に、このタッチスクリーン25を使って入力を行うことができる。
【0028】
従って、タブレット型コンピュータ20は、入力装置30を装着しなくても、指でタッチスクリーン25のタッチパッドを操作してタッチスクリーン25に表示された画面を切換えることができる。例えば、電子書籍がタッチスクリーン25の液晶画面(LCD)に表示された状態で、電子書籍の頁をめくる際にタッチパッドの操作によって、頁めくりを指示するためのボタンをタッチスクリーン25に表示させるモードを選択することができる。例えば、左右2つの頁めくりボタンがLCDに表示されるプログラムをタッチパッドの操作で呼び出し、LCDに表示された右の頁めくりボタン上のタッチパッドを押すと電子書籍の頁が右にめくれるように構成することができる。逆に、左の頁めくりボタン上のタッチパッドが押された場合には、電子書籍の頁が左にめくれる。しかし、このようなタッチスクリーン25の操作をしながら電子書籍を読む場合、操作画面をタッチスクリーン25に表させることによる煩わしさや紙の書籍との違和感が助長される。
【0029】
入力装置30は、このようなタッチスクリーン25による頁めくり操作を代替することが可能であり、電子書籍の頁めくりの操作性を向上させるための装備として使用することができる。入力装置30には、タブレット型コンピュータ20の対向する2つの側面、即ち右側面20aと左側面20bとに、2つのフリップセンサ31,32が設けられている。図2に示すように、右手の親指100をタッチスクリーン25に垂直な向きに動かして親指100で右のフリップセンサ31を弾く動作をすると、図2のタッチスクリーン25に表示されている書籍101の頁が右から左に向かってめくれているような映像が表示される。
【0030】
逆に、図には示されていないが、左手の親指を使ってフリップセンサ32を操作すると、図2に表示されている書籍101が左から右に向かってめくれているような映像が表示される。なお、フリップセンサ31,32の構造及びフリップセンサ31,32を用いた頁めくりの動作については、後程詳しく説明する。
【0031】
(2)入力装置の構成
(2−1)入力装置の外観
入力装置30は、上述のフリップセンサ31,32と、フリップセンサ31,32及びその出力の処理回路を収容するための筐体33と、筐体33をタブレット型コンピュータ20に取り付けるための取付けカバー34とを備えて構成されている。
【0032】
図3に示すように、筐体33は、左右両端部の上部に把持部33a,33bを備えている。図3に示すような正面形状を筐体33が有しているため、この把持部33a,33bの間にタブレット型コンピュータ20を差し入れてスライドさせることにより、図4及び図5に示すように、筐体33にタブレット型コンピュータ20を嵌め込むことができる。
【0033】
筐体33がタブレット型コンピュータ20に嵌め込まれた後、図5に示すように、筐体33から引き出されたプラグ46がタブレット型コンピュータ20のイヤホンジャック23dに差し込まれる。プラグ46がイヤホンジャック23dに差し込まれることにより、タブレット型コンピュータ20と入力装置30とが回路的に接続される。筐体33の中には、後述する検出部が収納されている。筐体33内の検出部によって、フリップセンサ31,32の操作が検出され、その検出結果に基づいた入力信号がイヤホンジャック23dからタブレット型コンピュータ20に入力される。
【0034】
図4及び図5に示す状態は、筐体33がタブレット型コンピュータ20に嵌められているが、取付けカバー34が取り付けられていない状態である。取付けカバー34は、シリコンゴム製の柔らかい材料で構成されていて変形させることができるため、筐体33とタブレット型コンピュータ20とに密着するように装着することができる。取付けカバー34が取り付けられて図1に示す状態になると、筐体33がタブレット型コンピュータ20に対してスライドして筐体33がずれたり、筐体33が抜けたりすることがなくなる。
【0035】
(2−2)フリップセンサの構造
次に、フリップセンサ31の構造の詳細について図6を用いて説明する。フリップセンサ31とフリップセンサ32とが左右対称の構造をしていることから、フリップセンサ32の構造の説明は省略する。フリップセンサ31は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム31a,31b,31c,31d,31e(以下、31a−31eと表記する)を重ねて構成されている。PETフィルム31a−31eの裏面には、銀ペーストが塗布されて導電膜31aa,31ba,31ca,31da,31ea(以下、31aa−31eaと表記する)が形成されている。これらPETフィルム31a−31eの重ねられる方向は、導電膜31aa−31eaの形成されている裏面(xy平面)に対して直交する向き(z方向)である。
【0036】
PETフィルム31a−31eのそれぞれの間には、プラスチック板312,313,314,315(以下、312−315と表記する)がスペーサとして配置されている。これらプラスチック板312−315によって、PETフィルム31a−31eはz方向に所定距離だけ離れて配置される。このような構成により、PETフィルム31a−31eをそれぞれ別々に指で弾くことができる。
【0037】
スペーサとして機能するもの以外に、全体をまとめて綴じるためのプラスチック製台座311と、プラスチック製台座311に全体を留めるためのプラスチック製押え板316とがある。プラスチック板311には、直方体形状をした凸部311aが形成されている。この凸部311aに、プラスチック板312−315及びPETフィルム31a−31eの開口部312a,313a,314a,315a,31ad,31bd,31cd,31dd,31edを嵌め込んだ状態で、押え板316の開口部316aを凸部311aに抜けないように嵌合させて、全体を圧迫して一体化する。
【0038】
筐体33には、図3に示すように嵌合穴33cや嵌合凹部33dが設けられている。これら嵌合穴33cや嵌合凹部33dには、プラスチック板313,315の両端に設けられている突出部313b,315bや台座311の突出部311bが嵌め込まれる。これらの嵌合によって、フリップセンサ31が筐体33に固定される。また、筐体33にタブレット型コンピュータ20が取り付けられることで、タブレット型コンピュータ20の筐体21の背面によって台座311が押えられ、筐体33へのフリップセンサ31の固定が強固なものとなる。
【0039】
このようにフリップセンサ31のPETフィルム31a−31eの一方端部近傍の領域31ac,31bc,31cc,31dc,31ec(以下、31ac−31ecと表記する)がしっかりと固定されることにより、PETフィルム31a−31eは、自身の比較的高い弾性によって片持ち板バネのような挙動を示す。そのため、PETフィルム31a−31eの他方端部近傍の領域31ab,31bb,31cb,31db,31eb(以下、31ab−31ebと表記する)の上面側を指で弾くことによって、これら他方端部近傍の領域31ab−31ebが跳ね上がって素早く指から離れるような動作を行わせることができる。このような指で弾く動作が行われると、指とその弾かれた導電膜31aa−31eaとの位置関係が一瞬のうちに変化する。
【0040】
フリップセンサ31の5枚のPETフィルム31a−31eは、その大きさが互いに異なり、下方に行くほど他方端部近傍の領域31ab−31ebが、固定されている一方端部近傍の領域31ac−31ecから遠くに位置する形状に成形されている。そのため、フリップセンサ31の5枚のPETフィルム31a−31eを、順々に指で弾き易くなっている。このように順々に弾く場合には、弾かれたものと指との間の静電容量が急激に減少する。
【0041】
(2−3)入力装置の回路構成の概要
入力装置20の回路構成の概要について、図7を用いて説明する。入力装置20のフリップセンサ31,32は、人の指の接近によって静電容量を変化させる。入力装置20は、フリップセンサ31,32の静電容量の変化を入力信号に変換するための検出部40を備えている。
【0042】
フリップセンサ31のPETフィルム31a−31eの裏面側にそれぞれ形成されている導電膜31aa−31eaは、RC発振回路41に接続されている。RC発振回路41は、例えばフリップセンサ31の5つの導電膜31aa−31eaとそれぞれ接続された5つの抵抗41aと5つのシュミットトリガ回路41bとを備えており、フリップセンサ31の各導電膜31aa−31eaの静電容量に反比例して各シュミットトリガ回路41bの出力周波数が変化するよう構成されている。同様に、RC発振回路42は、例えばフリップセンサ32の5つの導電膜とそれぞれ接続された5つの抵抗42aと5つのシュミットトリガ回路42bとを備えており、フリップセンサ32の各導電膜の静電容量に反比例して各シュミットトリガ回路42bの出力周波数が変化するよう構成されている。
【0043】
これらRC発振回路41,42の出力が周波数カウンタ43に入力されており、周波数カウンタ43は、RC発振回路41,42の各シュミットトリガ回路41b,42bの出力周波数(パルス数)を別々にカウントするよう構成されている。周波数カウンタ43でのカウント結果は、マイクロプロセッサユニット(MPU)44に対して出力される。
【0044】
MPU44では、RC発振回路41,42の周波数の変化から入力の有無を判別して、左右のフリップセンサ31,32のいずれからの入力か、通常の一枚ずつめくる指示があったか複数枚連続してめくる指示があったかなどの情報を含むデジタル信号をモデム45に対して出力する。そして、モデム45は、MPU44から受けたデジタル信号に基づいてデジタル変調した音声信号を、プラグ46からタブレット型コンピュータ20のイヤホンジャック23dに出力する。
【0045】
(2−4)入力装置における入力の検出
入力装置30における入力の検出の一例について、図8乃至図11を用いて説明する。まず、1枚のPETフィルムの導電膜について、指を自然に離した場合と指で弾いた場合との静電容量の変化の仕方の違いを説明する。指を自然に導電膜から遠ざける場合には、徐々に遠のく速度が上昇し、十分に遠ざかると指の動きが停止する。
【0046】
これを図8(a)に即して説明すると、まず、指が動き出すまでは静電容量が変化しないから、曲線左側の水平な部分に対応する静電容量一定の期間が続く。指が動き始めると、最初は指が遠ざかる速度が緩いため、静電容量の低下の仕方も緩やかである。このような指の動きに対応するのは、曲線が下降し始める辺りである。さらに、指の速度が速くなって最大に達すると、静電容量を示す曲線の傾きも最大になる。その後、指の動きも止まるために静電容量を示す曲線の傾きも再び水平になる。
【0047】
一方、指でPETフィルムを弾く場合には、図8(b)に示すような曲線を描く。図8(a)の曲線と図8(b)の曲線の違いは、主に、曲線が下降している部分にある。指でPETフィルムを弾く場合には、曲線が下降するときの傾きが大きくなる。つまり、図8(a)の時間t3の平均の静電容量C3と時間t4の平均の静電容量C4との比(C4/C3)に比べて、図8(b)の時間t1の平均の静電容量C1と時間t2の平均の静電容量C2との比(C2/C1)が大きくなる。ここで、時間t1〜t4は同じ長さであり、後述する周波数カウンタ43が周波数をカウントする時間の長さに対応している。また、時間t1の終わりから時間t2の始まりまでの間隔は、時間t3の終わりから時間t4の始まりまでの間隔と同じである。また、下降し始めるときの速度変化が急であるため、図8(b)に示すように、下降を始めるときの変曲点部分の変化の割合が大きくなる。
【0048】
以上のような違いに基づいて、指でPETフィルムを弾いたときに頁めくりを指示する入力があり、単にPETフィルムから指が離れたときにはそのような入力がなかったと判断できる。ここでは、曲線の傾きの違いで、PETフィルムを弾いたときに頁めくり指示が入力されたと判断している。なお、図8(a)及び図8(b)に示すいずれの静電容量の変化も、その静電容量の値は、環境や指の近づけ方や個人差などに毎回変化するので、静電容量の絶対値では判断するのが困難である。
【0049】
次に、図9及び図10を用いて、MPU44が行なうこのような判断について説明する。図9(a)は、周波数カウンタ43が行なうカウントのタイミングを決めるイネーブル信号のタイミングチャートである。周波数カウンタ43は、図9(a)に示すイネーブル信号がHレベルのときに図9(b)に示すパルス出力のカウントを行ない、イネーブル信号がLレベルのときには、カウントしたパルス数を記憶している。即ち、図9(a)に示すイネーブル信号がHレベルである期間と、図9(c)に示すカウント動作を行なう期間Cntとが一致する。同様に、図9(a)に示すイネーブル信号のLレベルの期間には、図9(c)に示すようにパルス数のカウント値であるデータDa1,Da2の記憶が保持される。なお、図9(b)に示すパルス出力は、1組の抵抗とシュミットトリガ回路の出力である。
【0050】
図9(a)に示すイネーブル信号がHレベルの時間の長さは、図8に示す時間t1〜t4のそれぞれの長さに等しい。静電容量の変化が、図8(a)に示す静電容量C3,C4の比のように小さいときには、MPU44では頁めくり指示の入力があったと判断せずに、図8(b)に示すように静電容量C1,C2の比のように大きい場合に頁めくり指示の入力があったと判断する。図10の曲線Co1は、(静電容量C1のときのカウント値Da1)÷(静電容量C2のときのカウント値Da2)で与えられ、曲線Co2は、(静電容量C3のときのカウント値Da3)÷(静電容量C4のときのカウント値Da4)で与えられる。つまり、図10に実線で示す曲線Co1(弾く場合)のように閾値を越える変化があった場合は、頁めくり指示の入力があったと判断し、一点鎖線で示す曲線Co2(自然に遠ざかる場合)のように閾値を越えない変化の場合は、頁めくり指示の入力があったとは判断しない。
【0051】
(2−5)入力装置における連続入力の検出
頁数の多い電子書籍の場合、1頁ずつめくっていたのでは、頁めくりに時間ばかりを取られて耐え難い場合がある。そこで、この実施形態では、フリップセンサ31の5枚のPETフィルム31a−31e、又はフリップセンサ32の5枚のPETフィルム32a,32b,32c,32d,32e(以下、32a−32eと表記する)を全て連続して弾いたときには、弾いたフィルム枚数よりも多い枚数の頁をめくるように設定している。
【0052】
図11(a)には、書籍を読みながら1枚ずつフリップセンサ31が弾かれている場合の曲線Co3が示されている。曲線Co3では、カウント値の差の大きな変化の現れる間隔t20が比較的長く、その長さが大きくばらつく。一方、図11(b)の曲線Co4のように、フリップセンサ31を連続して弾くと、カウント値の差の大きな変化の現れる間隔t21が比較的短く、その長さが同じ程度になる。例えば、間隔t21の4倍に誤差を加えた期間を連続めくり判定期間t22として設定し、その判定期間t22内に5回の変化が検出できれば連続頁めくりの指示があったとMPU44が判断する。
【0053】
このように、連続頁めくりの指示があったと判断された場合には、MPU44からモデム45に対して、1枚ずつの頁めくりの指示とは異なる他の入力信号が入力される。モデム45から受けたデジタルの他の入力信号に基づいてデジタル変調した音声信号を、プラグ46からタブレット型コンピュータ20のイヤホンジャック23dに出力する。
【0054】
(2−6)タブレット型コンピュータの構成と動作の概要
図7には、タブレット型コンピュータ20の構成の概要がブロック図で描かれている。タブレット型コンピュータ20は、上述のように、LCD25aとタッチパッド25bとを含むタッチスクリーン25を備えている。
【0055】
タッチスクリーン25のLCD25aに表示される画像は、画像処理部27から出力される。また、画像処理部27には表示制御部27aが設けられており、タッチスクリーン25は、表示制御部27aから出力される表示制御信号によって表示画制御される。表示制御部27aは、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などの演算装置で構成される。特に、表示制御部27aが入力装置30からの入力信号に基づいて行なう制御について、後程フローチャートを用いて説明する。画像処理部27は、メモリ27bも備えており、画像表示に必要な情報以外に、表示制御部27aで用いられる情報も記憶する。
【0056】
タブレット型コンピュータ20は、タッチスクリーン25のタッチパッド25bや操作ボタン23a,23b,23cやイヤホンジャック23dなどから入力される入力信号を受け取るためのインターフェース26を備えている。このインターフェース26は、デジタル変調された音声信号をデジタル信号に復調するモデムの機能を備えている。そのため、タブレット型コンピュータ20は、MPU44で生成される入力に関する情報を、モデム45及びインターフェース26を介して表示制御部27aで得ることができる。
【0057】
次に、図12を用いて、入力装置20を使って入力を行う場合について、タブレット型コンピュータ20の動作の概要を説明する。タブレット型コンピュータ20では、イヤホンジャック23dに接続されたプラグ46から、モデム45の音声信号を受け取る(ステップS10)。イヤホンジャック23dで受け取った音声信号は、インターフェース26でデジタル信号に変換されて画像処理部27に出力される(ステップS11)。
【0058】
画像処理部27は、入力信号を入力タイミングとともにメモリ27bに記憶する(ステップS12)。入力タイミングを記憶するのは、連続して入力される入力信号の入力間隔も考慮して入力の指示内容を判断するためである。
【0059】
画像処理部27は、メモリ27bから過去の入力信号に係わるデータの読み出しを行なう。メモリ27bから読み出されたデータは、表示制御部27aに渡される(ステップS13)。
【0060】
表示制御部27aでは、上述の入力信号とそれに係わる情報に基づいて頁めくりの指示の内容を判断する。まず、新たに入力されてきた入力信号が、左右いずれの方向への頁めくりを指示しているかを表示制御部27aは判断する(ステップS14)。入力装置30のMPU44はフリップセンサ31,32のいずれから入力があったかという情報をデジタル信号に含めているので、表示制御部27aは、入力信号の左右を示す情報に基づいてめくる方向を判断する。即ち、フリップセンサ31からの入力であれば右にめくり、フリップセンサ32からの入力であれば左にめくると、表示制御部27aが判断する。以下の説明は、書籍を右にめくると頁数が増える場合を例に取っている。
【0061】
次に、連続めくりか否かを表示制御部27aが判断する(ステップS15,S21)。図11(b)に示したように、カウント値の差が閾値を所定時間内に所定回数、例えば1秒以内に5回超えた場合には、表示制御部27aは、連続めくりと判断して次の判断(ステップS16,S22)に進み、それ以外の場合には連続めくりではないと判断して次の判断に進む(ステップS18,S24)。
【0062】
連続めくりを行う場合には、残り頁数が連続してめくろうとする頁数以上であるか否かを判断する(ステップS16,S22)。ここでは、連続めくりの指示が確認される度に、10枚ずつ連続でめくるよう設定されているものとする。そのように設定されている場合には、残りの頁数が10枚に満たなければ、10枚めくる制御を表示制御部27aが行うとエラーになるか、あるいは白紙になるなどの不具合が生じる。そのため、表示制御部27aは、メモリ27bに記憶されている書籍の頁数と現在表示されている頁とを比較して、その差が10頁以上であるか否かを判断する。差が10頁以上あれば、左めくりの場合には10頁戻し(ステップS17)、右めくりの場合には10頁進める(ステップS23)。差が10頁に満たないと判断されたときは、左めくりの場合には最初の頁にもどし(ステップS19)、右めくりの場合には最後の頁まで進める(ステップS25)。
【0063】
1頁ずつめくる指示の場合、表示制御部27aは、現在表示されている頁が最初の頁か又は最後の頁か否かを判断する(ステップS18,S24)。左めくりの場合に最初の頁でなければ1頁戻し(ステップS20)、右めくりの場合に最後の頁でなければ1頁進める(ステップS26)。左めくりの場合に最初の頁と判断されたときは、最初の頁であることを表示して最初の頁を再度表示し(ステップS19)、右めくりの場合に最後の頁と判断されたときは、最後の頁であることを表示して最後の頁を再度表示する(ステップS25)。
【0064】
<変形例1−1>
上記実施形態の入力装置30では、フリップセンサ31,32の各導電膜に対して、それぞれ1つずつのシュミットトリガ回路41b,42bを用いて個別に静電容量を検出する場合について説明した。しかし、図13のRC発振回路41A,42Aのように、フリップセンサ31,32に1つずつの抵抗41a,42aとシュミットトリガ回路41b,42bとを用いて構成するようにしてもよい。この場合に、周波数カウンタ43Aは、2組の抵抗41a,42aとシュミットトリガ回路41b,42bの出力パルスをカウントする。この場合も、各フリップセンサ31,32を構成するPETフィルム数やRC発振回路数は、任意の数に設定することができる。
【0065】
図14は、例えば5枚のPETフィルム31a−31eが全て連続的に弾かれたときの静電容量の変化の一例を示すグラフである。まず、一番上のPETフィルム32aに指が係った状態(t10)では、静電容量の値C10で一定になっている期間が続く。最も上にあるPETフィルム32aを指で弾いたとき(t11)には、RC発振回路41に接続されている静電容量が、急激にPETフィルム4枚分の値C11まで減少する。一枚ずつPETフィルムが弾かれるたびに、静電容量が、残り3枚になったとき(t12)の値C12、残り2枚になったとき(t13)の値C13、残り1枚になったとき(t14)の値C14、そして残りがなくなったとき(t15)の値C15へと順に変化する。
【0066】
このような場合も、静電容量は、環境や個人差などによって変化するが、静電容量の変化の割合(傾き)は比較的安定している。
【0067】
<変形例1−2>
上記実施形態では、RC発振器を用いて静電容量の変化を検出し、所定の傾きよりも急な変化を検出して入力の有無を判断しているが、静電容量の変化の検出はRC発振器を用いる場合に限られない。マルチバイブレータの出力パルスの幅など他の検出方法で検出してもよく、静電容量の変化の検出方法は上記実施形態の例に限られるものではない。
【0068】
<変形例1−3>
上記実施形態では、フリップセンサ31,32を指で弾いて頁めくりを指示する場合について説明したが、図15に示すようなフリップセンサ31,32に対して指を差し込む操作で、別の指示をすることもできる。例えば、フリップセンサ31,32に指を差し込むと、表示されている頁に栞を付する指示とすることができる。
【0069】
図16は、3枚目と4枚目の間に指150を差し込んで、続けて指150を引き抜いたときのフリップセンサ31の各PETフィルムの静電容量の検出結果を模式的に示した図である。1枚目と5枚目のPETフィルムの静電容量の検出結果は、曲線Co5のようになり、ほぼ変化がない。2枚目と4枚目のPETフィルムの静電容量の検出結果は、曲線Co6のようになり、僅かな変化が認められる。3枚目のPETフィルムの静電容量の検出結果は、曲線Co7のようになり、大きな変化が認められる。以上のような変化は、指150が3枚目の導電膜に接触することにより生じたものである。
【0070】
このような検出結果が得られるため、1枚目から4枚目までのPETフィルムの静電容量の検出結果のみが所定時間内において上昇と下降を起した場合に栞を付する入力としてMPU45が認識するように設定しておくことができる。つまり、PETフィルムの間に指が差し込まれたことによる静電容量の変化を、検出部40,40Aにおいて指で弾くときの静電容量の変化と区別して検出して、指で弾かれた場合とは異なる入力信号を生成する。それにより、入力のバリエーションを豊富にすることができる。
【0071】
<変形例1−4>
上記実施形態では、フリップセンサ31,32を指で弾いて頁めくりを指示する場合について説明したが、図17に示すようなフリップセンサ31,32を摘む操作で、別の指示をすることもできる。例えば、フリップセンサ31,32を摘むと、表示されている頁に栞を付する指示とすることができる。この場合には、PETフィルムを摘むことによる静電容量の変化を、検出部40,40Aにおいて指で弾くときの静電容量の変化と区別して検出して入力信号を生成することになる。それにより、入力のバリエーションを豊富にすることができる。
【0072】
<変形例1−5>
上記実施形態では、フリップセンサ31,32を別々に操作する場合について説明したが、同時に操作することによって、別の指示をすることもできる。例えば、所定時間内、具体的には例えば0.3秒以内にフリップセンサ31,32の両方で入力があった場合には、書籍の中央の頁を開くような異なる指示とすることができる。
【0073】
例えば、フリップセンサ31,32のように、タブレット型コンピュータ20の互いに対向する辺(右側面20aと左側面20b)に沿って設けられる一対のセンサの導電膜が、所定時間内に同時に静電容量の変化を示したときに、指で弾かれた場合とは異なる入力信号を生成するようにすればよい。それにより、入力のバリエーションを豊富にすることができる。
【0074】
<変形例1−6>
上記実施形態では、弾性のあるPETフィルムを用いてフリップセンサ31,32を構成したが、指から勢いよく離すための弾性を与える部材と、導電膜を支持する部材とを分けてもよい。例えば、フィルムよりも厚く、剛性の高いプラスチック板とバネとによってフリップを構成することもできる。この場合には、バネによって指から離れるための付勢をプラスチック板に対して行ない、導電膜はプラスチック板に形成される。付勢は、プラスチック板を指でバネを変形させる向きに押えることによって行なわれる。
【0075】
<変形例1−7>
上記実施形態では、PETフィルム31a−31e,32a−32eが、変形した後に弾性によって勢いよく指から離れる場合について説明したが、弾性変形を利用しない場合であってもよく、指を引っ掛けるところは必ずしも導電膜が形成されている部材には限られない。
【0076】
図18に示す導電膜を支持しているプラスチック板51a,51b,51c,51d(以下、51a−51dと表記する)は、タブレット型コンピュータ20Aの側面部21Aの内部に配置され、側面部21Aに支持されるように形成されている。ただし、プラスチック板51a−51dの導電膜の縁部は、側面部21Aで覆われているが側面部21Aの側面近傍に達している。そして、側面部21Aの一部が窪んで、導電膜に対する交差方向に動く指100が引っ掛かるように凹部61a,61b,61c,61dが形成されている。プラスチック板51a−51dが静電容量センサ51を構成し、凹部61a,61b,61c,61dが引っ掛り部61を構成する。なお、入力装置30Bの検出部は、入力装置30の検出部40と同様に構成されており、タブレット型コンピュータ20Aの回路構成は、タブレット型コンピュータ20と同じに構成されている。
【0077】
この場合でも、指100が凹部61a,61b,61c,61dに引っ掛かって止まっているときと、凹部61a,61b,61c,61dから離れて勢いよく動くときとで、状態が急激に変化するために静電容量の変化が大きくなるのは、上記実施形態と同様である。
【0078】
<変形例1−8>
上記実施形態では、モデム45を介して接続しているが、接続の仕方はモデム45を介する場合に限定されない。例えばユニバーサル・シリアル・バスやBluetooth(登録商標)などの他の規格を用いて接続してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、入力装置30をタブレット型コンピュータ20にオプション装備として後付けする場合について説明したが、標準装備として表示システムに一体的に組み込まれていてもよい。
【0080】
<変形例1−9>
上記実施形態では、図8に示した静電容量の変化の割合(傾き)を静電容量の変化を比(C1/C2やC3/C4)で比較する場合について説明したが、静電容量の変化の割合から入力の有無を判定する方法は、このような判定方法には限らず、他の判定方法を採用することもできる。
【0081】
例えば、連続して測定される静電容量の差が静電容量C3,C4の差(C3−C4)のように小さいときには、MPU44において頁めくり指示の入力があったとは判断せずに、静電容量C1,C2の差(C1−C2)のように大きい場合に頁めくり指示の入力があったと判断することもできる。図19の曲線Co5は、(静電容量C1のときのカウント値Da1)−(静電容量C2のときのカウント値Da2)で与えられ、(静電容量C3のときのカウント値Da3)−(静電容量C4のときのカウント値Da4)で与えられる。図19に実線で示す曲線Co5(弾く場合)のように閾値を越える変化があった場合は、頁めくり指示の入力があったと判断し、一点鎖線で示す曲線Co6(自然に遠ざかる場合)のように閾値を越えない変化の場合は、頁めくり指示の入力があったとは判断しない。このような場合も、指を接地された電極と等価(シュミットトリガ回路の基準電位にあるもの)とみなしていることから環境や個人差などによって静電容量が変化することがあるにしても、指で弾く場合の静電容量の変化の割合(図8(b)のグラフの傾き)は比較的安定しているので、静電容量の差で検出する場合と同様に、安定して入力の有無の検出が行なえる。
【0082】
また、静電容量C1乃至C4も平均値ではなく、中央値やカウントがイネーブルの間のカウント値の総和を用いて比較するなど、他の統計的な数値や実測値を用いることもできる。さらに、連続して頁をめくる指示があったか否かの判断方法も、図11を用いて説明した方法を用い、静電容量の比に代えて静電容量の差を比較することで上記実施形態と同様に行なえる。
【0083】
<特徴>
(1)フリップセンサ31,32は、PETフィルム31a−31e,32a−32e(導電膜支持基体)と、台座311とプラスチック板312−315と押え板316(支持部材)とを備えている。フリップセンサ31,32が取り付けられている入力装置30には、フリップセンサ31,32の静電容量の変化を検出する検出部40,40Aが設けられている。また、静電容量センサ51の場合には、プラスチック板51a−51d(導電膜支持基体)と側面部21A(支持部材)とを備えて構成されている。静電容量センサ51の場合も、検出部40,40Aと同様の検出部によって静電容量の変化が検出される。
【0084】
そして、フリップセンサ31,32や静電容量センサ51を構成するフィルム31a−31e,32a−32eやプラスチック板51a−51dの領域31ac−31ecなどがコンピュータ側のみが固定されているので、フィルム31a−31e,32a−32eやプラスチック板51a−51dの縁部近傍(領域31ab−31ebの外側など)には指100が交差方向に動くときに障害となる部材が存在しない。そのため、指100のフィルムに対する相対速度を大きくし易く、図8(a)及び図8(b)を用いて説明したように、静電容量の変化を急峻にすることができる。それに対して、例えば、従来のように導電膜の中央部に対して指が遠ざかったり、離れたりすると、導電膜やその支持部材自身が障害物となって、指を素早く動かせない。また、一般的なタッチパネルのように、導電膜に対して平行に指を動かす場合には、導電膜と指とが重なる面積の変化によって静電容量が変化するため、導電膜を交差方向に横切るような急峻な変化を起し難い。
【0085】
上述のような作用によって、実施形態の入力装置20,20Aは、単にフリップセンサ31,32や静電容量センサ51に自然に指が近づいたり遠のいたりする行為とフィルム近傍で交差方向に指を速く動かす行為とを区別して誤動作を防ぎながら、入力を行わせることができる。
【0086】
ここで、指100が導電膜31aa−31eaの近傍を交差方向に横切って動くというのは、導電膜31aa−31ea(PETフィルム31a−31e)の延長面の一方面側から他方面側に延長面を超えて移動する場合だけでなく、延長面上に指100がある状態から延長面の一方面側あるいは他方面側に移動する場合も含む概念である。
【0087】
ところで、静電容量の変化の検出結果に基づいて検出部40,40Aは、入力信号を生成して音声信号に変換し、タブレット型コンピュータ20,20Aの表示制御部27aにその入力を認識させるために出力する。モデム45で音声信号に変換して出力することで、タブレット型コンピュータ20,20Aのイヤホンジャック23dを用いて入力でき、ユニバーサル・シリアル・バスやBluetoothなどの他の入出力コネクタを他用途のために自由に使える状態にしておくことができる。このような音声入力に応じてタブレット型コンピュータ20,20Aは、画像処理部27がLCD25bに出力する表示信号を表示制御部27aの元で変化させて、LCD25b(表示画面)の頁めくりを行なわせることができる。
【0088】
(2)フリップセンサ31では、PETフィルム31a−31e(導電膜支持基体)の他方端部近傍の領域31ab,31bb,31cb,31db(引っ掛かり部)に指100を引っ掛けて、指100を引っ掛ける動作と指を解放して素早く動かす動作を行うことができる。フリップセンサ32の場合も同様である。また、静電容量センサ51の場合には、側面部21A(支持部材)の凹部61a,61b,61c,61d(引っ掛かり部)に指100を引っ掛けて同様の動作を行わせることができる。指100が引っ掛かっているときには、導電膜31aa−31eaの交差方向に力を加えた状態で引っ掛かっているため、その引っ掛かりが外れると指100が交差方向に高速で移動する。
【0089】
それにより、フリップセンサ31,32や静電容量センサ51の入力動作時の静電容量の変化を急峻にすることができる。静電容量の変化が急峻になると(図8(b)のような場合)、静電容量の変化が入力を示すものか否かの判別が容易になる。
【0090】
(3)PETフィルム31a−31e(少なくとも1つの弾性フィルム)の他方端部近傍の領域31ab,31bb,31cb,31db(一部領域)及び、PETフィルム32a−32e(少なくとも1つの弾性フィルム)の他方端部近傍の領域に相当する領域(一部領域)は、指100で弾けるように露出している。
【0091】
そして、他方端部近傍の領域(一部領域)を露出させるために、フリップセンサ31であれば、その反対側の一方端部近傍の領域31ac−31ec(一部領域以外の領域)が、台座311とプラスチック板312−315と押え板316(支持部材)によってしっかりと固定される。
【0092】
このように片持ち板バネのような構成にすることで、フリップセンサ31の他方端部近傍の領域31ac−31ecを指で弾くと、フィルムの弾性によってこの領域が勢いよく指100とは反対の方向に移動することができる。このような簡単な構造で、入力時における指100と他方端部近傍の領域31ac−31ecとの相対速度を大きくして、静電容量の変化を急峻なものにすることができ、入力の検出の確度向上が容易になる。
【0093】
(4)PETフィルム31a−31e(複数の弾性フィルム)に導電膜31aa−31eaを形成することやPETフィルム32a−32e(複数の弾性フィルム)に導電膜を形成することにより、複数の薄膜状のもの(フィルム)をめくる動作が入力信号の生成に繋がる。このように、複数の薄膜状のものをめくる動作が、紙製の書籍の頁を実際にめくっている感覚を使用者に体感させる。この体感によって、使用者は、タブレット型コンピュータ20,20Aの存在を忘れて、紙製の書籍を読むときと同じようにストレスなく読書を楽しむことができる。
【0094】
(5)PETフィルム31a−31e,32a−32e(複数の弾性フィルム)は、タッチスクリーン25のほぼ上方(交差方向の一方側)から見て、他方端部近傍の領域31ab−31eb及びこれらに相当する領域が見えるように、PETフィルム31a−31e,32a−32eの形状が、下方に行くに従って外に張り出すように大きく成形されている。このように、指100で弾くときに、1枚ずつ弾くことが容易な構成となっている。
【符号の説明】
【0095】
20,20A タブレット型コンピュータ
23d イヤホンジャック
25 タッチスクリーン
30,30A,30B 入力装置
31,32 フリップセンサ
45 モデム
46 プラグ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【特許文献1】特開2002−169653号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電膜を支持する導電膜支持基体と、
前記導電膜の縁部の近傍を通りかつ前記導電膜に対して交差する交差方向に前記導電膜を横切って指を動かせる状態に前記導電膜支持基体を支持する支持部材と、
前記交差方向に前記縁部を横切って前記指が動くことによって生じる静電容量の変化を検出して入力信号を生成する検出部と、
を備える、入力装置。
【請求項2】
前記導電膜支持基体又は前記支持部材に設けられ、前記交差方向に力が掛かる状態で前記指を引っ掛け得る引っ掛り部をさらに備える、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記導電膜支持基体は、前記導電膜が一方主面に形成されている少なくとも1つの弾性フィルムを含み、
前記引っ掛り部は、前記少なくとも1つの弾性フィルムの一部領域であり、
前記支持部材は、前記縁部の近傍を通り前記交差方向に前記縁部を横切って指を動かせる状態になるようにかつ、前記少なくとも1つの弾性フィルムの前記一部領域が前記引っ掛り部になるように支持するため、前記一部領域を露出させて前記少なくとも1つの弾性フィルムの前記一部領域以外の領域を固定する、
請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの弾性フィルムは、前記交差方向において互いに離れかつ、前記交差方向の一方側から見て互いに重なるように配置されている複数の弾性フィルムであり、
前記検出部は、前記複数の弾性フィルムの各引っ掛り部で起こる前記指の引っ掛かりと解放によって生じる複数回の静電容量の変化を検出して入力信号を複数生成する、
請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記複数の弾性フィルムは、前記交差方向の前記一方側から見て全ての前記一部領域が見えるように、前記一部領域を順にずらして配置されている、
請求項4に記載の入力装置。
【請求項6】
表示画面と、
前記表示画面の周囲に設けられ、導電膜を支持する導電膜支持基体と、前記縁部の近傍を通りかつ前記導電膜に対して交差する交差方向に前記導電膜の縁部を横切って指を動かせるように前記導電膜支持基体を支持する支持部材と、前記交差方向に前記縁部を横切って前記指が動くことによって生じる静電容量の変化を検出して入力信号を生成する検出部とを有する入力装置と、
前記表示画面の表示を行わせる表示信号を出力するように構成され、前記表示信号を変化させるために、前記入力装置の前記検出部の入力信号を用いる表示制御部と、
を備える、表示システム。
【請求項7】
前記導電膜支持基体は、複数であって、前記表示画面の対向する辺に沿って設けられている、
請求項6に記載の表示システム。
【請求項8】
前記入力装置は、少なくとも前記1入力信号を音声信号に変換して前記表示制御部に対して出力する、
請求項6又は請求項7に記載の表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−118629(P2012−118629A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265657(P2010−265657)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【出願人】(391016842)岐阜県 (70)
【Fターム(参考)】