説明

共役ジエン重合体の製造方法

【課題】イットリウム化合物を含有する触媒を用いて、シス−1,4構造含有率が高く、1,2構造含有率を制御した共役ジエン重合体を高効率で製造することを目的とする。
【解決手段】(A)イットリウム化合物、(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物、(C)有機アルミニウム化合物、および(D)特定の構造を有する環状共役ジエン化合物から得られる触媒を用いて共役ジエンを重合することを特徴とする共役ジエン重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
イットリウム化合物を含有する触媒を用いて、シス−1,4構造含有率が高く、1,2構造含有率を制御した共役ジエン重合体を高効率で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンの重合触媒に関しては、従来数多くの提案がなされており、その幾つかは工業化されている。例えば、シス−1,4構造含有率の高い共役ジエン重合体の製造には、チタン、コバルト、ニッケル、ネオジム等の遷移金属化合物と有機アルミニウムを組合せた触媒がよく用いられる。
【0003】
周期律表第3族元素を触媒とする共役ジエンの重合は公知であり、これまでに様々な重合方法が提案されてきた。例えば、特開平7−268013号公報(特許文献1)には、希土類金属の塩、周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物、含フッ素有機ホウ素化合物からなる触媒系が開示されている。また、特開平11−80222号公報(特許文献2)には、周期律表第IIIB族金属の化合物、非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物、周期律表第I〜III族元素の有機金属化合物からなる重合触媒が開示されている。
【0004】
イットリウム化合物を用いた重合触媒としては、国際公開第2006/049016号(特許文献3)に、嵩高い置換基を有するイットリウム化合物を用いた触媒系が開示されている。また、特開2010−285550号公報(特許文献4)では同様の触媒系に、さらにシクロペンタジエンを含むことを特徴とする触媒系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−268013号公報
【特許文献2】特開平11−80222号公報
【特許文献3】国際公開第2006/049016号
【特許文献4】特開2010−285550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イットリウム化合物を含有する触媒を用いて、シス−1,4構造含有率が高く、1,2構造含有率を制御した共役ジエン重合体を高効率で製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のようなものである。
1.(A)イットリウム化合物、(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物、(C)有機アルミニウム化合物、および(D)下記一般式(1)で表される環状共役ジエン化合物から得られる触媒を用いて共役ジエンを重合することを特徴とする共役ジエン重合体の製造方法。
【化1】

(R1〜R6は水素または炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数1〜12のトリアルキルシリル基を表す。ただし、R1〜R6のうち少なくとも2つ以上が水素以外の置換基である。)
2.イットリウム化合物が下記一般式(2)で表されるイットリウム化合物である前記の共役ジエン重合体の製造方法。
【化2】

(Z1、Z2、Z3は水素または炭素数1〜12のアルキル基を表し、Oは酸素原子を表し、Yはイットリウム原子を表す。)
3.共役ジエン重合体が以下の特性を有することを特徴とする前記の共役ジエン重合体の製造方法。
(1) シス−1,4構造含有率が80%以上95%未満
(2) 1,2構造含有率が3%以上15%未満
これらの製造方法においては、30〜120℃で共役ジエンを重合することが好ましく、共役ジエンが1,3−ブタジエンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明により1,4−シス構造含有率が高く、かつ1,2構造含有率を制御した共役ジエン重合体を高効率で得ることができる。得られる共役ジエン重合体は適度な1,2構造含有率でありビニル芳香族系重合体の耐衝撃性付与剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
触媒系の(A)成分であるイットリウム化合物の例として、三塩化イットリウム、三臭化イットリウム、三ヨウ化イットリウム、硝酸イットリウム、硫酸イットリウム、トリフルオロメタンスルホン酸イットリウム、酢酸イットリウム、トリフルオロ酢酸イットリウム、マロン酸イットリウム、オクチル酸(エチルヘキサン酸)イットリウム、ナフテン酸イットリウム、バーサチック酸イットリウム、ネオデカン酸イットリウム等のイットリウム塩や、イットリウムトリメトキシド、イットリウムトリエトキシド、イットリウムトリイソプロポキシド、イットリウムトリブトキシド、イットリウムトリフェノキシドなどのアルコキシド、トリスアセチルアセトナトイットリウム、トリス(ヘキサンジオナト)イットリウム、トリス(ヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(ジメチルヘプタンジオ
ナト)イットリウム、トリス(テトラメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリスアセトアセタトイットリウム、シクロペンタジエニルイットリウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルイットリウムクロライド、トリシクロペンタジエニルイットリウムなどの有機イットリウム化合物、イットリウム塩ピリジン錯体、イットリウム塩ピコリン錯体等の有機塩基錯体、イットリウム塩水和物、イットリウム塩アルコール錯体などを挙げることができる。特に下記の一般式(2)で表されるイットリウム錯体が好ましい。
【0010】
【化3】

(Z1、Z2、Z3は水素または炭素数1〜12のアルキル基を表し、Oは酸素原子を表し、Yはイットリウム原子を表す。)
【0011】
上記一般式で表されるイットリウム化合物の例として、トリス(アセチルアセトナト)イットリウム、トリス(ヘキサンジオナト)イットリウム、トリス(ヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(ジメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(トリメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(テトラメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(ペンタメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(ジベンゾイルメタネート)イットリウム、トリス(1,3−ビス(4−メチルフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(4,4−ジメチル−1−フェニルペンタン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(4−メトキシフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(2,4,6−トリエチルフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(2,4,6−トリn−プロピルフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(2,4,6−トリn−ブチルフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(2,4,6−トリイソブチルフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(4−(t−ブチル)−2,6−ジメチルフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−メチルプロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(3−フェニル(2,4,6−トリメチルフェニル)プロパン−1,3ジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(1−アダマンチル)−1,3−プロパンジオナト)イットリウム、トリス(1−(1−アダマンチル)−1,3−ブタンジオナト)イットリウム、トリス(1−(1−アダマンチル)−1,3−ペンタンジオナト)イットリウム、トリス(1−(1−アダマンチル)−4−メチル−1,3−ペンタンジオナト)イットリウム、トリス(1−(1−アダマンチル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオナト)イットリウム、トリス(1−(1−アダマンチル)−3−フェニル−1,3−プロパンジオナト)イットリウム、トリス(1,3−ビス(アダマンチル)−2−メチル−1,3−プロパンジオナト)イットリウム、トリス(1−(1−アダマンチル)−2,4,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオナト)イットリウム、トリスアセトアセタトイットリウムなどを挙げることができる。
【0012】
触媒系の(B)成分である非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物は、公知の非配位性アニオン及びカチオンの中から、それぞれ任意に選択して組み合わせたものを用いることができる。
【0013】
非配位性アニオンの例として、テトラ(フェニル)ボレ−ト、テトラ(フルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレ−ト、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレ−ト、テトラ(トルイル)ボレ−ト、テトラ(キシリル)ボレ−ト、トリフェニル(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、トリス(ペンタフルオロフェニル)(フェニル)ボレ−ト、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレ−ト、テトラフルオロボレ−ト、ヘキサフルオロホスフェ−トなどを挙げることができる。
【0014】
一方、カチオンの例として、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、フェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。
【0015】
カルボニウムカチオンの具体例として、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。また、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例として、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどを挙げることができる。
【0016】
アンモニウムカチオンの具体例として、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(i−プロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。
【0017】
ホスホニウムカチオンの具体例として、トリフェニルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、テトラ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン、テトラ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのアリ−ルホスホニウムカチオンを挙げることができる。
【0018】
好ましい非配位性アニオンとカチオンの組み合わせは、ホウ素含有化合物とカルボカチオンであり、イオン性化合物の具体例として、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、トリフェニルカルボニウムテトラキス(フルオロフェニル)ボレ−ト、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、1,1'−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−トなどを挙げることができる。これらイオン性化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
また、(B)成分である非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物の代わりにアルミノキサンを用いることもできる。アルミノキサンは有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものであって、一般式(−Al(R')O−) nで示される鎖状アルミノキサン、あるいは環状アルミノキサンを挙げることができる。(R' は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である)。R' として、メチル、エチル、プロピル、イソブチル基などが挙げられるが、メチル基が好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられる。
【0020】
それらの中でも、トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムの混合物を原料として用いたアルミノキサンを好適に用いることができる。
【0021】
上記の縮合剤の典型的なものとしては水が挙げられるが、この他にもトリアルキルアルミニウムが縮合反応する任意のもの、例えば、無機物などの吸着水やジオールなどが挙げられる。
【0022】
触媒系の(C)成分である有機アルミニウム化合物の例として、トリアルキルアルミニウムのほか、ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド、アルキルアルミニウムジクロライドなどの有機アルミニウムハロゲン化合物、ジアルキルアルミニウムハイドライドなどの水素化有機アルミニウム化合物などを挙げることができる。
【0023】
トリアルキルアルミニウムの具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0024】
有機アルミニウムハロゲン化合物の具体例として、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどを、また、水素化有機アルミニウム化合物の具体例として、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキハイドライドなどを挙げることができる。
【0025】
これらの有機アルミニウム化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
触媒系の(D)成分である環状共役ジエン化合物は、下記一般式(1)で表される環状共役ジエン化合物であるのが好ましい。
【化4】

(R1〜R6は水素または炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数1〜12のトリアルキルシリル基を表す。ただし、R1〜R6のうち少なくとも2つ以上が水素以外の置換基である。)
【0027】
上記一般式で表される環状共役ジエン化合物の例として、1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエン、1,2,3,4−テトラエチルシクロペンタジエンなどの1,2,3,4−テトラアルキルシクロペンタジエン、または1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタエチルシクロペンタジエン、5−エチル−1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエン、1,2,3,4−テトラメチル−5−n−プロピルシクロペンタジエン、1,2,3,4−テトラメチル−5−イソプロピルシクロペンタジエン、1,2,3,4−テトラメチル−5−n−ブチルシクロペンタジエン、1,2,3,4−テトラメチル−5−イソブチルシクロペンタジエン、1,2,3,4−テトラメチル−5−t−ブチルシクロペンタジエンなどの1,2,3,4,5−ペンタアルキルシクロペンタジエン、または1,2,3,4,−テトラメチル−5−(トリメチルシリル)シクロペンタジエン、1,2,3,4,−テトラメチル−5−(トリエチルシリル)シクロペンタジエン、1,2,3,4,−テトラメチル−5−(t−ブチルジメチルシリル)シクロペンタジエン、1,2,3,4,−テトラメチル−5−(トリイソプロピルシリル)シクロペンタジエン、1,2,3,4,−テトラメチル−5−(t−ブチルジフェニルシリル)シクロペンタジエンなどの1,2,3,4−テトラアルキル−5−(トリアルキルシリル)シクロペンタジエン、または1,2,3,4,5−ペンタメチル−5−(トリメチルシリル)シクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタメチル−5−(トリエチルシリル)シクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタメチル−5−(t−ブチルジメチルシリル)シクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタメチル−5−(トリイソプロピルシリル)シクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタメチル−5−(t−ブチルジフェニルシリル)シクロペンタジエンなどの1,2,3,4,5−ペンタアルキル−5−(トリアルキルシリル)シクロペンタジエンなどを挙げることができる。特に1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタメチル−5−(トリメチルシリル)シクロペンタジエンが好ましい。
【0028】
触媒成分(A)〜(C)の量およびこれら相互の比は、得られる重合体が目的とする物性を有するよう必要に応じて調整する。通常、(A)成分の量は共役ジエンモノマー100gに対し0.0001〜0.5mmolが好ましく、0.0005〜0.1mmolが特に好ましい。(A)成分と(B)成分のモル比(A)/(B)は1/1.0〜1/5.0が好ましく、1/1.0〜1/3.0が特に好ましい。(A)成分と(C)成分のモル比(A)/(C)は1/1〜1/5000が好ましく、1/10〜1/2000が特に好ましい。
【0029】
触媒成分の(D)成分である環状共役ジエン化合物の量は、得られる重合体の物性と生産性が最適となるよう調整する。通常は、(A)成分に対するモル比(D)/(A)で0.01〜500の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜100、特に好ましくは0.1〜50である。添加量が少なすぎると1,2−構造含有率が低く、添加量が多すぎると生産性が低下する。
【0030】
上述のようにして得られる触媒は、無機化合物または有機高分子化合物などに担持して用いることもできる。
【0031】
重合溶媒に制限はなく、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、上記のオレフィン化合物やシス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素等を用いることができる。特にベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、あるいは、シス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合物などが好ましい。また、モノマーそのものを重合溶媒とする塊状重合(バルク重合)を行うこともできる。
【0032】
溶液重合における共役ジエンモノマーの濃度は5〜70重量%が好ましく、10〜50重量%が特に好ましい。
【0033】
本発明における重合温度は30〜120℃の範囲であり、40〜100℃がより好ましく、60〜90℃が特に好ましい。50℃以下では生産性および1,2−構造含有率が低く、120℃以上ではゲル分が多くなる。また、重合時間は1分〜12時間の範囲が好ましく、5分〜5時間が特に好ましい。重合温度および重合時間は、得られる重合体が目的とする物性を有するよう必要に応じて調整する。
【0034】
重合することができる共役ジエンの例として、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン(ピペリレン)、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて共重合体を得ることもできる。好ましくは1,3−ブタジエンまたはイソプレンである。
【0035】
共役ジエンを重合する際、水素、水素化金属化合物、または水素化有機金属化合物を分子量調節剤として用いることができるが、特に水素を用いて分子量を調節することが好ましい。
【0036】
各触媒成分の混合は、重合しようとする共役ジエンの存在下または不存在下のいずれにおいても行うことができる。混合方法にも特に制限はないが、中でも以下の添加順序が好ましい。
(1)不活性有機溶媒に(C)成分と(D)成分を添加し、(A)成分と(B)成分を任意の順序で添加する。
(2)不活性有機溶媒に上述した分子量調節剤を添加し、(C)成分と(D)成分を添加した後、(A)成分、(B)成分および(D)成分を任意の順序で添加する。
【実施例】
【0037】
以下に本発明に基づく実施例について具体的に記載する。測定方法は次に示した通りである。
(1)ムーニー粘度(ML1+4):JIS K 6300に準じて100℃で測定した。
(2)5重量%トルエン溶液粘度(Tcp):25℃における5重量%トルエン溶液の粘度を測定した。
(3)ミクロ構造:赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス740cm-1、トランス967cm-1、ビニル910cm-1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
(4)固有粘度([η]):トルエン溶液を使用して30℃で測定した。
(5)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn):40℃でテトラヒドロフランを溶媒としたGPC(カラム:Shodex KF−805L×2本)により測定した重合体の溶出曲線より、標準ポリスチレン換算の値として求めた。
また、重合条件および重合結果を表1および2にまとめた。
【0038】
(実施例1)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。溶液の温度を30℃とした後、1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエン(Me4Cp)のトルエン溶液(10mmol/L)0.15mlおよびトリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(5mmol/L)1.50mlを添加した。30℃で3分撹拌したのち、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.75mlを添加した。80℃で15分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0039】
(実施例2)
Me4Cpのトルエン溶液を1.0mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。
【0040】
(実施例3)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。次いで水素ガス0.11MPa/cm2を添加した。溶液の温度を30℃とした後、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン(Me5Cp)のトルエン溶液(10mmol/L)1.0mlおよびトリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(20mmol/L)0.38mlを添加した。その直後にトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.8mlを添加した。60℃で30分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0041】
(実施例4)
イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液を0.76ml、Me5Cpのトルエン溶液を1.22mlとしたほかは、実施例3と同様に重合を行った。
【0042】
(実施例5)
Me5Cpのトルエン溶液を0.6ml、重合温度を70℃としたほかは、実施例3と同様に重合を行った。
【0043】
(実施例6)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。次いで水素ガス0.04MPa/cm2を添加した。溶液の温度を30℃とした後、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン(Me5Cp)のトルエン溶液(5mmol/L)0.15mlおよびトリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(20mmol/L)0.38mlを添加した。その直後に、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.8mlを添加した。80℃で15分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0044】
(実施例7)
Me5Cpのトルエン溶液を0.3mlとしたほかは、実施例6と同様に重合を行った。
【0045】
(実施例8)
Me5Cpのトルエン溶液を0.6mlとしたほかは、実施例6と同様に重合を行った。
【0046】
(実施例9)
Me5Cpのトルエン溶液を0.76mlとしたほかは、実施例6と同様に重合を行った。
【0047】
(実施例10)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。次いで水素ガス0.04MPa/cm2を添加した。溶液の温度を30℃とした後、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン(Me5Cp)のトルエン溶液(10mmol/L)0.76mlおよびトリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(20mmol/L)0.38mlを添加した。その直後に、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.8mlを添加した。80℃で30分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0048】
(実施例11)
トルエンを440ml、ブタジエンを160mlとしたほかは、実施例10と同様に重合を行った。
【0049】
(実施例12)
TEAのトルエン溶液を2.25mlとしたほかは、実施例10と同様に重合を行った。
【0050】
(実施例13)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン440ml及びブタジエン160mlからなる溶液を仕込んだ。溶液の温度を30℃とした後、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン(Me5Cp)のトルエン溶液(10mmol/L)0.76mlおよびトリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(20mmol/L)0.38mlを添加した。その直後に、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.8mlを添加した。90℃で30分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0051】
(実施例14)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。溶液の温度を30℃とした後、1,2,3,4,5−ペンタメチル−5−(トリメチルシリル)シクロペンタジエン(Me5(SiMe3)Cp)のトルエン溶液(10mmol/L)0.6mlおよびトリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(20mmol/L)0.3mlを添加した。その直後に、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.0mlを添加した。80℃で30分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0052】
(実施例15)
Me5(SiMe3)Cp(10mmol/L)のトルエン溶液を3.0mlとしたほかは、実施例14と同様に重合を行った。
【0053】
(実施例16)
Me5(SiMe3)Cp(0.1mol/L)のトルエン溶液を0.6mlとしたほかは、実施例14と同様に重合を行った。
【0054】
(実施例17)
Me5(SiMe3)Cp(0.1mol/L)のトルエン溶液を0.9mlとしたほかは、実施例14と同様に重合を行った。
【0055】
(実施例18)
Me5(SiMe3)Cp(0.1mol/L)のトルエン溶液を1.5mlとしたほかは、実施例14と同様に重合を行った。
【0056】
(実施例19)
Me5(SiMe3)Cp(0.1mol/L)のトルエン溶液を3.0mlとしたほかは、実施例14と同様に重合を行った。
【0057】
(比較例1)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。次いで水素ガス0.04MPa/cm2を添加した。溶液の温度を30℃とした後、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(50mmol/L)0.15mlを添加して40℃まで加温した。2分間攪拌したのち、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.75mlを添加し、60℃まで昇温した。60℃で25分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0058】
(比較例2)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。次いで水素ガス0.035MPa/cm2を添加した。溶液の温度を30℃とした後、トリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(20mmol/L)0.38mlを添加した。3分間攪拌したのち、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.80mlを添加し、70℃まで昇温した。70℃で15分重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液をエタノールに投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0059】
(比較例3)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。次いで水素ガス0.04MPa/cm2を添加した。溶液の温度を30℃とした後、トリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(20mmol/L)0.38mlを添加した。その直後に、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.8mlを添加した。80℃で15分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0060】
(比較例4)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。次いで水素ガス0.03MPa/cm2を添加した。溶液の温度を30℃とした後、シクロペンタジエン(Cp)のトルエン溶液(10mmol/L)0.06mlおよびトリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.2mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(5mmol/L)1.2mlを添加した。その直後に、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.0mlを添加した。80℃で15分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0061】
(比較例5)
Cpのトルエン溶液を0.12mlとしたほかは、比較例4と同様に重合を行った。
【0062】
(比較例6)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン650ml及びブタジエン350mlからなる溶液を仕込んだ。次いで水素ガス0.01MPa/cm2を添加した。溶液の温度を30℃とした後、シクロペンタジエン(Cp)のトルエン溶液(10mmol/L)0.6mlおよびトリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)2.0mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(5mmol/L)2.0mlを添加した。その直後に、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)5.0mlを添加した。80℃で15分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0063】
(比較例7)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。溶液の温度を30℃とした後、1−メチルシクロペンタジエン(MeCp)のトルエン溶液(10mmol/L)0.08mlおよびトリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(5mmol/L)1.5mlを添加した。その直後に、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(4mmol/L)3.75mlを添加した。80℃で15分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0064】
(比較例8)
MeCpのトルエン溶液を0.22mlとしたほかは、比較例7と同様に重合を行った。
【0065】
(比較例9)
MeCpのトルエン溶液を0.45mlとしたほかは、比較例7と同様に重合を行った。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
上記の結果より、CpおよびMeCpを(D)成分として添加した場合、比較例4〜9のように1,2構造含有率は2%より低い値となる。一方、Me4Cp、Me5CpおよびMe5(SiMe3)Cpを(D)成分として添加すると、1,2構造含有率は3%以上となることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イットリウム化合物、(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物、(C)有機アルミニウム化合物、および(D)下記一般式(1)で表される環状共役ジエン化合物から得られる触媒を用いて共役ジエンを重合することを特徴とする共役ジエン重合体の製造方法。
【化1】

(R1〜R6は水素または炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数1〜12のトリアルキルシリル基を表す。ただし、R1〜R6のうち少なくとも2つ以上が水素以外の置換基である。)
【請求項2】
イットリウム化合物が下記一般式(2)で表されるイットリウム化合物である請求項1に記載の共役ジエン重合体の製造方法。
【化2】

(Z1、Z2、Z3は水素または炭素数1〜12のアルキル基を表し、Oは酸素原子を表し、Yはイットリウム原子を表す。)
【請求項3】
共役ジエン重合体が以下の特性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の共役ジエン重合体の製造方法。
(1) シス−1,4構造含有率が80%以上95%未満
(2) 1,2構造含有率が3%以上15%未満
【請求項4】
30〜120℃で共役ジエンを重合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共役ジエン重合体の製造方法。
【請求項5】
共役ジエンが1,3−ブタジエンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の共役ジエン重合体の製造方法。

【公開番号】特開2013−35981(P2013−35981A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174799(P2011−174799)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】