説明

内在化

細胞(および、その細胞に特異的に結合する結合因子)内で内在化したターゲットを、結合因子を符号化する遺伝物質を、非内在化ターゲットに結合する結合因子を符号化する遺伝物質から分離する(あるいは、ほぼ分離する)ことによって、効率よく同定することができる。これは、非融合たんぱく質フォーマットを介してゲノタイプ/フェノタイプリンケージを有する結合因子の提示ライブラリィを用いて行うことができ、非内在化ターゲットを符号化する遺伝物質を、細胞を溶解させることなく分離(あるいはほぼ分離)させることができる。次いで、内在化遺伝物質を単離して、増幅することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、様々な文献が引用されている。製造者マニュアルを含めて、これらの従来技術文献の開示内容は、全体的に引用により組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
新しいターゲットは、正常な患者と、異常のある患者の比較及び統計的分析によって、特に、これらの患者の組織及び/又は血漿由来の血液を分析することによって、同定している。通常、比較分析は、DNA−レベル、RNA−レベル、タンパク質−レベル、及び翻訳後のレベル等、様々なレベルで行うことができる。共通に用いられている一つの技術は、識別的遺伝子発現分析に基づくものである。簡単に言えば、異常細胞と正常細胞の双方から抽出したmRNAを標識化し、次いで遺伝子チップにハイブリダイズさせて、定量化する。定量化信号から得られるような、識別的mRNAsのアップ又はダウンレギュレーションによって、新しいターゲットが明らかになる。従来技術においてよく知られているもう一つのアプローチは、正常な患者と異常のある患者から取り出したDNA分子のDNAメチル化パターンの同定と比較に基づくものである。
【0003】
しかしながら、上述のコンテキストにおいて、DNA修飾(すなわち、DNAメチル化パターン)も、識別的遺伝子発現分析(すなわち、細胞中に発現したmRNAのレベル)のいずれも、対応するDNAあるいは対応するmRNAによって符号化された特定のたんぱく質が実際に発現しているか否かを必ずしも反映するものではない。従って、識別的発現レベルの同定、すなわち、異常細胞に比較した正常細胞のたんぱく質発現パターンの定量分析及び定性分析は、興味深いものである。
【0004】
識別的遺伝子発現分析の同定方法は、この分野の当業者には良く知られた技術である質量分析を介して次の分析を行う前記たんぱく質の差分二次元ゲル分析に基づいている。更に、ほんの数例ではあるが、この分野の当業者に知られているたんぱく質チップ、HPLC−及びFPLC−関連技術の使用に基づく技術など、たんぱく質分画に基づく技術が挙げられる。
【0005】
ファージ提示法技術は、例えば、正常ドナーから取り出した組織あるいは細胞などのサンプル上の、例えば、結合因子の発現ライブラリィなどの大きなライブラリィを除去して、例えば、異常ドナーから取り出した組織や細胞などのサンプル上のライブラリィの残留個体群を使用する可能性を提供している。除去の分析によって追跡した結合因子、すなわち、(ポリ)ペプチドターゲット、あるいは、正常組織/細胞ではなく異常組織/細胞のカウンターパートに結合している因子は、通常、ターゲット細胞(例えば、異常細胞)上に独自に(あるいは、少なくともより多く)発現しているターゲットに結合すると考えられる。更に、結合因子/(ポリ)ペプチドターゲット複合体は、例えば、この分野の当業者に良く知られている質量分析法や、たんぱく質分析法によって、同定することができる。
【0006】
特に興味深いのは、ターゲットへの結合時に内在化する結合因子である。当業者は、結合因子が、例えば、このような、好ましくは前述した、その細胞が好ましくは異常ターゲットを発現している異常細胞の殺活をトリガする細胞に対して毒性がある物質あるいは小分子に融合できることを認識している。この分野で知られているように、内在化の対象となるターゲットが例えば異常細胞または癌細胞として同定されると、そのターゲットにより親和性が高い及び/又は前記ターゲットの内在化をトリガする潜在性がより高いさらなる結合因子を決定することが可能である。この改良された結合因子は、例えば、前記ターゲットを発現している異常細胞を治療する薬剤として考えることができる。
【0007】
各結合因子の結合時に細胞に内在化した潜在的ターゲットを効率よく決定するためには、非内在化複合体から内在化複合体を分離することが望まれる。しかしながら、従来技術では、このような分離が定性的及び定量的に満足した状態で達成されておらず、従って、当業者は、内在化する結合因子とターゲットを決定するのに時間がかかり技術が複雑であるという問題に直面している。
【0008】
従って、内在化した複合体と非内在化複合体を効率よく分離する方法と手順を更に発展させ、改善することが継続的に求められている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、Fab結合時のターゲット内在化の効率を示すグラフである。内在化率(%)は、4℃対37℃での細胞表面の細胞外信号比から計算した。蛍光回復率は、4℃対37℃での細胞外及び細胞内染色比によって測定したものであり、内在化プロセス、サポリン処理、及び/又は、染色を行う間にファージ粒子がまったく失われないか、わずかに失われることを示している。FabAは、80%の内在化、FabBは20%のみの内在化、FabCは結合がまったくないことを示している。
【図2】図2は、ファージターゲット複合体内在化の効率と、ファージが結合した表面のDDTによる除去を示すグラフである。大部分が内在化する抗原対ジスルフィド結合FabAを介して提示しているファージの内在化と、大部分が内在化しない抗原対ジスルフィド結合FabBを介して提示しているファージの内在化が示されている。内在化率(%)は、4℃対37℃での細胞表面の細胞外信号比から計算した。蛍光回復率は、4℃対37℃での細胞外及び細胞内染色比によって測定した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、一態様において、細胞中で内在化した複合体の結合因子をコード化する核酸分子を回復させる方法に関するものであり、(a)バクテリオファージ粒子の多様な採取群に細胞を接触させるステップであって、当該バクテリオファージ粒子の各々あるいはほぼ全部がその表面上に結合因子を提示しており、前記結合因子が前記バクテリオファージ粒子のファージ外被たんぱく質との非融合(ポリ)ペプチドとして提示されており、前記バクテリオファージ粒子の各々あるいはほぼ全てが提示された結合因子をコード化する核酸分子を具える、ステップと:(b)前記バクテリオファージ粒子上に提示された結合因子をそのターゲットへ結合させ、これによって、各々がその提示した結合因子とターゲットを伴うバクテリオファージ粒子を具える少なくとも一の複合体が形成されるステップと;(c)前記複合体の少なくとも一つを前記細胞中に内在化させる条件下で前記細胞を培養するステップと;(d)ほとんどの細胞が溶解しないという条件下で内在化しない結合因子を符号化する核酸分子を溶離させるステップと;(e)前記内在化した複合体を含む細胞を溶解させるステップと;(f)前記内在化した複合体の少なくとも一つから取り出した結合因子を符号化する核酸分子を溶解した細胞から回復させるステップとを具える。
【0011】
「細胞」の用語は、真核細胞または原核細胞を意味する。本発明に関連して好ましいのは、哺乳類細胞である。哺乳類細胞には、正常細胞と異常細胞が含まれる。
【0012】
本発明のコンテキストにおいて、「多様な採取群」の用語は、組成、性質、及び/又は、配列が少なくとも部分的に異なる少なくとも二つの粒子または分子の採取群を意味する。
【0013】
本発明に関連して用いられている「バクテリオファージ粒子の多様な採取群」の用語は、複数のバクテリオファージ粒子を意味する。このような複数のファージの各因子またはほぼ全ての因子は、識別可能な結合因子を提示する。バクテリオファージ粒子の多様な採取群の生成方法は、当業者に良く知られている。
【0014】
本発明に関連して用いられている「バクテリオファージ」の用語は、最も広い意味で解釈されるべきである。従って、本発明のコンテキストにおいて、「バクテリオファージ」の用語は、ファージを複製するのに必要な核酸を含むたんぱく質外被を有するパッケージを形成する細菌ウィルスに関連する。この核酸は、DNA又はRNA、二重鎖または短鎖、線状または環状であってもよい。ラムダファージまたは線状ファージ(M13、fd、あるいはf1)などのバクテリオファージが、この分野の当業者に良く知られている。
【0015】
本発明のコンテキストで好ましいものは、例えば、M13バクテリオファージなどの線状ファージである。より好ましいのは、線状バクテリオファージVCSM13である。本発明のコンテキストでは、「バクテリアファージ粒子」の用語は、本発明にかかる粒子、すなわち、(ポリ)ペプチド/たんぱく質を提示する粒子を意味する。
【0016】
上述したコンテキストにおいて、バクテリオファージ粒子の多様な採取群の各々あるいはほぼ全ての因子が、結合因子を提示しており、各結合因子がその配列の少なくとも一のアミノ酸位置が異なることが好ましい。
【0017】
本発明による「結合因子」の用語は、特定のカウンターパート又はターゲットに結合できる(ポリ)ペプチドを意味し、これによって、複合体を形成する。この用語は、本発明に関連して、とりわけ当業者に知られている骨格を具えると解される。本発明に関連する「骨格」は、共通の骨組みと少なくとも一の可変領域を有する(ポリ)ペプチドの採取群を意味する。当業者に知られている骨格には、例えば、フィブロネクチンベースの骨格や、アンキリン反復たんぱく質ベースの骨格がある。ここで使用されている「(ポリ)ペプチド」の用語は、ペプチド群並びにポリペプチド群を含む分子群を意味する。このペプチド群は、最大30のアミノ酸を持つ分子でなり、ポリペプチド群またはたんぱく質は、30のアミノ酸より多い分子である。本発明に関連する「(ポリ)ペプチド」の用語は、抗体または抗体断片あるいはこれらの誘導体も含むと解される。この抗体は、当業者に知られている免疫グロブリンを具えると解される。「免疫グロブリン」(Ig)は、IgG、IgM、IgE、IgA、またはIgDクラス(又はそれらのサブクラス)に属するたんぱく質であり、従来知られているすべての抗体とその機能性断片を含む。ここでいう抗体/免疫グロブリンの「機能性断片」は、抗体−結合領域を有する抗体/免疫グロブリンの断片(すなわち、IgGの可変領域)として定義される。「抗体断片又はその誘導体」の用語は、短鎖抗体、あるいはその断片、合成抗体、Fab、F(ab2)’、FvまたはscFv断片などの抗体断片、単一領域抗体(single domain antibodies)その他、あるいはこれらの化学的に修飾された誘導体を意味する。本発明によって使用されるべき抗体、あるいはその対応する免疫グロブリン鎖は、例えば、アミノ酸欠失、挿入、置換、追加、及び/又は、再構築及び/又は、この分野で知られているその他の修飾(例えば、グリコシル化やリン酸化などの翻訳後の化学的な修飾)を単独であるいは組み合わせて用いて、この分野で公知の従来技術を使用してそのモチーフ外で更に修飾することができる。このような修飾を免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列下部のDNA配列に導入する方法は、この分野の当業者には良く知られている。Sambrook et al.;Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd edition 1989 and 3rd edition 2001参照。
【0018】
ここに記載した抗体分子の断片又は誘導体は、上述の抗体分子の部分である(ポリ)ペプチド、及び/又は、化学/生化学又は分子生物学的方法によって修飾された(ポリ)ペプチドを規定する。同じことが骨格にも適用される。相当の方法がこの分野で知られており、とりわけ研究所マニュアルに記載されている。(Sambrook et al.,loc cit.;Gerhardt et al.;Method for General and Molecular Bacteriology,AMS Press,1994;Lefkovits;Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques;Academic Press,1997;Golemis;Protein−Protein Interactions:A Molecular Cloning Manual;Cold Spring Harbor Labratory Press,2002参照。)
【0019】
本発明のコンテキストにおける「非融合(ポリ)ペプチドとして提示される」の用語は、当業者に知られている従来の融合技術を介して提示されない(ポリ)ペプチドを意味する。従来の提示は、例えば、融合たんぱく質が2つの遺伝子の融合からの発現生成物となる遺伝子融合によって達成することができる。当業者は、このような従来技術の融合たんぱく質は、ハイブリッド遺伝子の発現によって作られるハイブリッドまたはキメラたんぱく質と呼ばれており、遺伝子工学によってできるものであり、好ましくは二つの遺伝子配列が組み合わされていることを認識している。
【0020】
本発明に関連する「ファージ外被たんぱく質」の用語は、当業者に良く知られているファージから取り出したファージ外被たんぱく質のみならず、これから取り出した断片も含むと考えられる。この断片は、バクテリオファージ粒子のたんぱく質外被に組み込むことができる。
【0021】
本発明に関連して使用されている「ターゲット」の用語は、(i)結合因子を結合できる細胞上に発現した(ポリ)ペプチド、又は、(ii)細胞内に内在化することができる分子を意味し、これは結合因子を結合することができる。好ましいのは、細胞表面レセプタであり、より好ましいのは、レセプタチロシンキナーゼである。このターゲットは、当業者に知られていない、同定されていない、あるいは、自体が知られているが内在化能力のコンテキストでは知られていないターゲットを含む。少なくとも一の潜在的なターゲットを発現する細胞も、本発明に関連して、「ターゲット細胞」と呼ばれる。
【0022】
「少なくとも一の複合体を細胞内に内在化させる」の用語は、細胞内に複合体の内在化をトリガする当業者によく知られた技術を意味する。好ましいのは、例えば、温度を4℃から37℃に上げるなどの、温度シフトによる技術である。
【0023】
本発明に関連して使用されている「ほとんどの細胞が溶解していない状態で内在化しない結合因子をコード化する核酸分子の溶解」の用語における 「ほとんどの細胞が溶解していない」の用語は、約50%より少なく、好ましくは約40%より少なく、より好ましくは約30%より少なく、より好ましくは約20%より少なく、より好ましくは10%より少なく、より好ましくは約5%より少なく、さらにより好ましくは約1%より少ない細胞が溶解しており、最も好ましくは細胞がまったく溶解していない、と解するべきである。
【0024】
本発明に関連して使用されている「内在化した複合体を含む細胞の溶解」の用語は、当業者に知られている細胞を溶解させるあらゆる技術を含む。哺乳類の細胞については、トリエチルアミンの存在による溶解が好ましい。
【0025】
上記の及びその他の用語で概略を述べたとおり、本発明は、当業者が信頼性をもって効率よく内在化した複合体と非内在化複合体を区別できる方法を提供することによって、上述の技術的課題を解決している。融合たんぱく質に基づく提示技術を用いた場合、内在化複合体と非内在化複合体の分離は、通常、親和性の高い結合因子をなくすためにも、pH−又は塩勾配を用いるなどにより、適宜の緩衝剤を用いて、強い溶解ステップを適用することによって達成することができる。予測できない細胞溶解事象の結果、内在化複合体と非内在化複合体の混合が生じ、さらなる分析が複雑なものになるか、あるいは、妨げられることさえある。本発明は、例えば、緩やかな溶解条件と結合因子とターゲット間の特定の親和性の独立性といった、非溶融提示システムの利点を複合体の内在化の分野に取り入れることによって、上述の事態を克服している。
【0026】
好ましい実施態様では、本発明の方法は更に、内在化した複合体のターゲット配列を決定するステップを具える。当業者は、内在化した複合体のターゲット配列を決定する方法を認識している。好ましくは、(ポリ)ペプチドターゲットのアミノ酸配列を決定する技術を意図している。以下の実施態様もを参照されたい。
【0027】
本発明の方法の更なる好ましい実施態様では、非融合(ポリ)ペプチドとしての前記提示は、ファージ外被たんぱく質と結合因子との間の非ペプチド結合によって特徴付けられる。
【0028】
本発明の方法のより好ましい実施態様では、この非ペプチド結合はジスルフィド結合である。
【0029】
本発明の最も好ましい実施態様では、このジスルフィド結合が前記ファージ外被たんぱく質中に含まれる第1のシステイン残渣と前記結合因子中に含まれる第2のシステイン残渣の間で発生する。
【0030】
本発明の方法のもう一つの最も好ましい実施態様では、前記内在化していない結合因子をコード化している核酸分子の溶解が、前記ジスルフィド結合が開裂した低い状態で行われる。
【0031】
この実施態様及び前の実施態様は、ジスルフィド結合がアタッチメントに関与している状態を意味する。上述のシステムの詳細は、国際特許出願WO01/05950に開示されており、この内容は、本明細書に明確に組み込まれる。
【0032】
本発明の方法の好ましい実施態様では、結合因子を符号化している前記核酸分子の溶解細胞からの回復が、PCRによって行われる。本実施態様のコンテキストでは、例えば、対象となる結合因子を増幅することができるPCRプライマを用いることができる。ポリメラーゼ鎖反応(PCR)による核酸分子の増幅用の特定のプライマに基づく技術は、当業者には良く知られている。
【0033】
本発明の方法の更なる実施態様では、内在化した複合体中のターゲット配列を決定するステップが質量分析法で行われる。
【0034】
当業者は、溶解細胞核酸分子からの回復及び複合体中の(ポリ)ペプチドの配列を決定する技術に関して認識している。
【0035】
本発明は、また、本発明の方法によって得られるターゲット及び/又は結合因子に関する。
【0036】
最後に、本発明は、毒性物質を細胞中に送達する方法に関し、この方法は、(a)請求項1の回復した核酸分子によって符号化した(ポリ)ペプチドを得るステップと、(b)この毒性物質を請求項1の回復した核酸分子によって符号化した前記(ポリ)ペプチドと結合させるステップと、(c)ステップ(b)から得た毒性物質を細胞に投与するステップとを具え、前記毒性物質の細胞中への内在化をトリガする。
【0037】
上述したとおり、また、換言すると、本発明は、結合因子及び/又は細胞中に内在化する可能性を有するターゲットを同定するのに用いることができる。好ましくは、上記に説明したとおり、前記結合因子及び/又はターゲットは、例えば、癌細胞などの異常細胞の殺活に適用することができる。しかし、当業者に知られており、結合因子と細胞内に内在化させることができるターゲットの同定に基づくアプリケーションは、本発明の範囲に含まれると解される。
【0038】
以下の実施例により本発明を説明するが、これは、限定を意味するものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1
本発明の方法を使用して、内在化ターゲットを同定する実験手順である。
【0040】
ターゲット及びコントロール細胞の準備
1.ターゲット細胞(トランスフェクトまたは抗原陽性)と、コントロール細胞(偽トランスフェクトまたは抗原陰性)3xを5%FCS/PBSで、又は、細胞が固定される場合はPBSで洗浄する(2.2.3参照)。
FCS;ウシ胎児血清;0.1μm滅菌フィルタした、マイクロプラズマ試験をした。PAN BiotechGmbH、Aidenbach、#3302−P97610(又は、そのほかのサプライヤから入手したマイクロプラズマテストを行ったFCS)
PBS Dulbecco‘s:w/oカルシウム及びマグネシウム、及びw/o重炭酸ナトリウム、Gibco BRL Life Techonologies、#14190−094)
Ca2+を全ての緩衝液に加えなくてはならない場合は、TBS又はHBSを使用すべきである(セクション1.3参照;カルシウム−リン酸としてリン酸の存在下では、カルシウムが沈殿する)。
2.ターゲット細胞を計数し、各選択について、2mlの微小遠心管内で5%FCS/PBS1ml中5x10乃至1x10に調整する。
3.次に続くステップを氷上4℃の適宜の温度で2時間維持し、4℃のオーバーヘッドローテータでブロッキングする。
4.結合させたライブラリファージのファージ滴定濃度を1ml5%FCS/PBS(+補液)中1−2x1013ファージに調整する。4℃で2時間インキュベートして、オーバーヘッドローテータ上でファージをブロックする。
【0041】
ターゲット細胞の選択
5.ブロックしたターゲット細胞を2000rpmで2分間遠心分離して、予めファージを吸収させた溶液0.5−1mlに再懸濁させる。
6.ロッカ上で、4℃で2時間インキュベートする。
7.細胞を2000rpmで2分間スピンにかける。
8.浮遊物をピペットで注意深く取り出して、廃棄する。
9.第1洗浄:ピペットを用いて1ml 5%FCS/PBS(+補液)中に細胞ペレットを注意深く再懸濁させる。
10.4℃で5分間インキュベートさせる。
11.細胞を2000rpmで2分間スピンにかける。
12.浮遊物をピペットで注意深く取り出して、廃棄する。
13.第2洗浄:ピペットを用いて1ml 5%FCS/PBS(+補液)中に細胞ペレットを注意深く再懸濁させる。
14.生細胞は4℃で、あるいはロッカ上の固定細胞は20℃で、5分間インキュベートする。
15.細胞を2000rpmで2分間スピンにかける。
16.浮遊物をピペットで注意深く取り出して、廃棄する。
17.第3洗浄:ピペットを用いて1ml 5%FCS/PBS(+補液)中に細胞ペレットを注意深く再懸濁させる。5%FCS/PBSでブロックした細胞を新しい無菌の2ml管に移す。
このステップは、選択した管に特に結合しないファージが再び強化することを防ぐ)
18.生細胞は4℃で、あるいはロッカ上の固定細胞は20℃で、5分間インキュベートする。
19.細胞を2000rpmで2分間スピンにかける。
20.浮遊物をピペットで注意深く取り出して、廃棄する。
【0042】
ファージの内在化
21.ピペットを用いて1ml、5%FCS/PBS(+補液)中に細胞ペレットを注意深く再懸濁させる。
22.温度を37℃に上げて、30分間インキュベートする。
【0043】
被内在化ファージの除去
23.10mM Tris/HCl pH8.0中の300μl20mM DTT(このDTTは常に−20℃で保存しなければならない。溶液の多発凍結及び融解を防ぐ。)細胞に加え、RT(HuCAL GOLD(登録商標)ライブラリィに推奨されるDTTの溶解に代えて、従来の溶解法も使用できる(例えば、Krebs et al.,2001を参照))で10分間インキュベートさせ、2000rpmで2分間スピンに掛けて、浮遊物を廃棄する。
24.第4洗浄:ピペットを用いて1ml 5%FCS/PBS(+補液)中に細胞ペレットを注意深く再懸濁させる。
25.4℃で、5分間インキュベートする。
26.細胞を2000rpmで2分間スピンにかける。
27.浮遊物をピペットで注意深く取り出して、廃棄する。
28.第5洗浄:ピペットを用いて1ml 5%FCS/PBS(+補液)中に細胞ペレットを注意深く再懸濁させる。
29.生細胞は4℃で、あるいはロッカ上の固定細胞はで20℃で、5分間インキュベートする。
30.細胞を2000rpmで2分間スピンにかける。
31.浮遊物をピペットで注意深く取り出して、廃棄する。
【0044】
内在化したファージの回復
32.500μl 100mMトリエチルアミン(10ml PBS中の140μl TEA)を加えて、RTで10分間インキュベートさせる(セルは即刻溶融する傾向にある)。400μl 1MTris pH7.0を加えて、中和する。中和後に、pH指示スティックを用いてpHをチェックする。
33.溶出液を用いて、TG1を感染させる(DWCP)。
34.標準的な手順によって、クローンを発現しているFabを同定し、発現させる。
【0045】
実施例2
抗原A、B及びCを試験して細胞の罹患率を調べ、FabA、B、Cを試験して内在化特性を調べた。
【0046】
材料及び方法
試験に用いたFab:
Fab_C_FH(リゾチーム結合剤、陰性コントロール)
Fab_B_FS(ICAM結合剤、非内在化コントロール)
Fab_A_FH(抗原A、内在化)
Fabsは1μg/mlで試験を行った。
【0047】
細胞:
NCI H226:肺がん細胞
1x10E5 細胞/測定
【0048】
その他の材料:
10%サポリン:1gサポリンを10ml PBSに溶解させ、0.5%サポリン/PBSとし、4℃で保存した。
4%PFA:原液16%をPBS中で1:4に希釈した。原液:16%w/vのAlpha Aesar,LotE10S015
FACS緩衝液(FB):PBS/3%FCS、4℃で保存
ヤギ抗ヒトIgG(H+L)−PE、Jackson Dianova、109−116−088、FACS緩衝液(PBS/3%FCS)中で1:200で希釈した。
【0049】
手順:
1.100μlのFab(1μg/ml)を、FACS緩衝液で2.5*10NCI H226細胞のペレットに加えて、氷上で一時間インキュベートした。200μl FACS緩衝液を用いて細胞を2回洗浄し、遠心分離(2000rpm)に掛けて、200μlの媒体中に再懸濁させた。
2.100μlを96ウエルプレートに移して、4℃で1時間、更に、氷上で10分間インキュベートした。
3.200μl FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した;200rpm
4.200μl FACS緩衝液に再懸濁させて、2回、100μlに分けて、1200rpmで2分間遠心分離を行った。
【0050】
非内在化状態(4℃)
細胞外染色:
5.細胞を100μlのヤギ抗ヒトIgG−PEと共に再懸濁させ、4℃で1時間インキュベートして、200μl FACS緩衝液で2回洗浄した;200rpm
6.100μlFACS緩衝液に再懸濁させた
7.次いで、FACSをBD FACSARRAY FSC50上で測定した;SSC;280;黄色420
【0051】
細胞内染色:
8.ステップ(4)の細胞を100μl 4%PFAに、4℃で、30分再懸濁させた。
9.200μl FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した;2000rpm
10.0.5%のサポリンに、RTで10分間細胞を再懸濁させた。
11.100μl抗ヒトIgG−PEを加え、RTで1時間インキュベートした。
12.0.5%のサポリンを用いて、200rpmで細胞を2回洗浄した。
13.100μlのFACS緩衝液に再懸濁させた。
14.BD FACSARRAY FSC50で、FACSを測定した;SSC;280;黄色420
【0052】
内在化条件(37℃)
細胞外染色
15.ステップ(4)の細胞を100μlのヤギ抗ヒトIgG−PEを用いて再懸濁させ、37℃で1時間インキュベートし、200μl FACS緩衝液で2回洗浄した;200rpm
16.100μl FACS緩衝液に再懸濁させた。
17.BD FACSARRAY FSC50で、FACSを測定した;SSC;280;黄色420
【0053】
細胞内染色:
18.ステップ(4)の細胞を100μl 4%PFAに、4℃、30分再懸濁させた。
19.200μl FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した;2000rpm
20.0.5%のサポリンに細胞を再懸濁させた、RT10分
21.100μl抗ヒトIgG−PEを加え、RTで1時間インキュベートした。
22.0.5%のサポリンを用いて、細胞を2回洗浄した;200rpm
23.100μlのFACS緩衝液に再懸濁させた。
24.BD FACSARRAY FSC50で、FACSを測定した;SSC;280;黄色420
【0054】
結果
図1に示すように、FabターゲットB複合体は20%内在化したのみであったのに対して、FabターゲットAは、80%内在化した。内在化手順、細胞の透過化、及び染色は、全体のファージ数に影響を及ぼさなかった。
【0055】
実施例3
細胞外結合ファージのDTT開裂によるファージ内在化の充実
【0056】
材料及び方法
試験に用いたファージ:
FabA、B、Cを符号化した遺伝子(実施例1を参照)をCys−Displayベクタ中でサブクローン化し、pMORPH23とVCSM13由来のファージを、標準的手順に従って生成した。
ファージ_Fab_C(リゾチーム結合剤、陰性コントロール)
ファージ_Fab_B(ICAM結合剤、非内在化コントロール)
ファージ_Fab_A(抗原A、内在化)
1x10E10ファージを各々使用した。
【0057】
ストリッピング:
10nM Tris/HCl pH8.0中20mM DTT、Roch Cat#1583786
【0058】
抗体:
抗M13mab:Amersham Biosceiences,27−9420−01,1mg/ml,をFACS緩衝液FB(PBS/3%FCS)1μg/mlで希釈した。
ヤギ抗マウスIgG Fcガンマフラグメント特異的PE,Jackson Dianova,115−116−071,R14を,FACS緩衝液(PBS/3%FCS)で1:200に希釈した。
【0059】
細胞:
NCI H226: 肺がん細胞
1x10E5 細胞/測定
【0060】
その他の材料:
10%サポリン:1gサポリンを10ml PBSに溶解させ、0.5% サポリン/PBSとした。
4%PFA:原液16%をPBS中で1:4に希釈した。原液:16%w/vのAlpha Aesar,Lot E10S015
FACS緩衝液(FB):PBS/3%FCS
ヤギ抗マウスIgG Fcガンマフラグメント特異的−PE,Jackson Dainova,115−116−071,R14を,FACS緩衝液(PBS/3%FCS)中に1:200で希釈した。
【0061】
手順:
1.1x10E10ファージを、FACS緩衝液中の5*10NCI H226細胞ペレットに加え、4℃で一時間インキュベートした。細胞を400μl FACS緩衝液で2回洗浄し、遠心分離して(2000rpm)、600μlの媒体に再懸濁させた。
【0062】
非内在化条件(4℃)
2.2x100μlを96ウエルプレートに移して、4℃で1時間、更に氷上で5分間インキュベートした。
3.細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄した;200rpm
4.200μlのFACS緩衝液中に再懸濁させ、2000rpmで2分間遠心分離した。
5.一のコントロールアリコート100μl中に再懸濁させ、第2のアリコートを50μl DDT中に再懸濁させた。
6.細胞を氷上で5分間保存し、200μlFACS緩衝液を用いて、1200rpmで2回洗浄した。
7.50μlの抗−M13抗体(5μg/ml FACS緩衝液)に細胞を再懸濁させた。
8.細胞を4℃で、45分間インキュベートした。
9.細胞を200μl FACS緩衝液で2回洗浄した。
10.細胞を100μlのヤギ抗マウスIgG Fcガンマフラグメント特異的−PEに再懸濁させた(1:100)。
11.細胞を200μl FACS緩衝液で2回洗浄した。
12.FACSをBD FACSARRAY FSC10上で測定した;SSC335;黄色330
【0063】
内在化条件(37℃
13.2x100μlを96ウエルプレートに移して、37℃で1時間、更に氷上で5分間インキュベートした。
14.細胞を200μl FACS緩衝液で2回洗浄した;200rpm
15.200μl FACS緩衝液に再懸濁させ、2000rpmで2分間遠心分離した。
16.一のコントロールアリコート 100μl中に再懸濁させ、第2のアリコートを50μl DDT中に再懸濁させた。
17.細胞を氷上で5分間保存し、200μl FACS緩衝液、1200rpmで2回洗浄した。
18.50μl抗−M13抗体(5μg/ml FACS緩衝液)に細胞を再懸濁させた。
19.細胞を4℃で45分間インキュベートした。
20.200μl FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。
21.100μl ヤギ抗マウスIgG Fcガンマフラグメント特異的−PE(1:100)に細胞を再懸濁させた。
22.200μl FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。
23.FACSを、BD FACSARRAY FSC10上で測定した;SSC335;黄色330
【0064】
結果:
実験条件(4℃又は37℃で、DTTを用いて/用いることなく)の下で、細胞は無傷であった。予想通り、FabCに関連するファージの細胞結合は検出できなかった。
図2に示すように、約65%のファージAと、20%のファージBが、温度が4℃から37℃に上がると内在化した。
【0065】
細胞の表面のファージは、4℃で、20mM DTTを用いた5分間のトリートメントで、細胞の完全性に影響することなく、効果的に剥がすことができる。
【0066】
内在化時にDTTを加えることで、表面結合ファージが剥がれた一方、内在化したファージは無傷のまま残り、内在化ターゲットへのファージの結合が促進された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞中に内在化した複合体の結合因子を符号化する核酸分子を回復させる方法において:
(a)細胞をバクテリオファージ粒子の多様な採取群に接触させるステップであって、前記バクテリオファージ粒子の各々またはほぼ全てが、その表面に結合因子を提示しており、前記結合因子が前記バクテリオファージのファージ外被たんぱく質との非融合(ポリ)ペプチドとして提示されており、前記バクテリオファージ粒子の各々またはほぼ全てが提示された結合因子をコード化する核酸分子を具えている、ステップと;
(b)前記バクテリオファージ粒子に提示された結合因子をそのターゲットへ結合させるステップであって、これによって、少なくとも一の複合体が形成され、当該各複合体が、提示した結合因子とターゲットを伴うバクテリオファージ粒子を具えている、ステップと;
(c)前記複合体の少なくとも一つを細胞中に内在化させる条件の下で前記細胞を培養するステップと;
(d)細胞の溶融がほとんど生じない条件下で内在化されない結合因子を符号化する前記核酸分子を溶融させるステップと;
(e)前記内在化した複合体を含む細胞を溶融させるステップと;
(f)前記内在化した複合体の少なくとも一つから取り出した結合因子を符号化する前記核酸分子を前記溶融した細胞から回復させるステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法が更に、前記内在化した複合体のターゲット配列を決定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、非溶融(ポリ)ペプチドとしての前記提示が、前記ファージ外被たんぱく質と前記結合因子との間の非ペプチド結合により特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記非ペプチド結合がジスルフィド結合であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記ジスルフィド結合が、前記ファージ外被たんぱく質中に含まれる第1のシステイン残渣と、前記結合因子中に含まれる第2のシステイン残渣との間で生じることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の方法において、内在化していない結合因子をコード化する前記核酸分子を溶融させるステップが、前記ジスルフィド結合が開裂するような低条件下で行われることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法において、前記結合因子を符号化する核酸分子の溶解した細胞からの前記回復が、PCRによって行われることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法において、前記内在化した複合体中のターゲット配列を決定するステップが、質量分析法によって行われることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法によって入手できるターゲット及び/又は結合因子。
【請求項10】
細胞へ毒性物質を送達する方法において:
(a)請求項1に記載の核酸分子によって符号化された(ポリ)ペプチドを得るステップと;
(b)前記毒性物質を、請求項1に記載の回復した核酸分子によって符号化した(ポリ)ペプチドと結合させるステップと;
(c)細胞に、ステップ(b)から得た毒性物質を投与して、これによって、前記毒性物質の細胞内への内在化をトリガするステップと;
を具えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−522538(P2010−522538A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540769(P2009−540769)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063843
【国際公開番号】WO2008/071749
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(502247787)モルフォシス・アー・ゲー (8)
【Fターム(参考)】