説明

内燃機関およびそれを備えた鞍乗型車両

【課題】ノックセンサが取り付けられた単気筒の内燃機関において、ノックセンサの温度上昇を抑え、ノックセンサの信頼性を向上させる。
【解決手段】エンジン10は、クランク軸17を収容するクランクケース11と、クランクケース11に接続され、内部にシリンダ15が形成されたシリンダブロック12と、シリンダ15を覆うようにシリンダブロック12に接続されたシリンダヘッド13と、シリンダブロック12に形成されたセンサ取付用のボス40と、ボス40に取り付けられ、ノッキングを検出するノックセンサと、少なくともボス40に空気を導くファン28およびエアシュラウド30と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノッキングを検出するセンサが取り付けられた内燃機関およびそれを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、運転状態によってはノッキングが発生する場合がある。ノッキングは異音の発生や内燃機関の性能の低下等を招くため、できるだけ回避すべきである。従来から、ノッキングを検出するセンサ、すなわちノックセンサを内燃機関に取り付け、ノッキングを検出すると、点火時期を変更する等の対応をとることが知られている。
【0003】
特許文献1には、シリンダブロックにノックセンサを取り付けた水冷エンジンが開示されている。
【0004】
ところで、水冷エンジンでは、シリンダブロックやシリンダヘッド等に、冷却水の流路すなわちウォータジャケットを形成することが必要となる。また、冷却水を搬送するためのポンプや、冷却水を冷却するためのラジエータ等も必要となる。そのため、水冷エンジンは構造が複雑である。
【0005】
比較的小型の自動二輪車等に代表されるように、単気筒の内燃機関(以下、単気筒エンジンという)を備えた鞍乗型車両が知られている。単気筒エンジンは、多気筒エンジンに比べて構造が簡単であるという特長を有する。その特長を活かすために、単気筒エンジンでは、比較的簡素な冷却構造が望まれる。そこで従来から、シリンダブロックおよびシリンダヘッドの少なくとも一部を空気で冷却することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−301106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、少なくとも一部を空気で冷却する単気筒エンジンでは、当該エンジン周りの空気の流れによっては、局所的に温度のバラツキが生じる場合がある。すなわち、空気の流れによっては、局所的に温度が高い部分や低い部分が生じる場合がある。ところが、エンジンの高温部分にノックセンサを取り付けると、ノックセンサがエンジンによって過剰に加熱され、ノックセンサの温度が高くなってしまう。その結果、ノックセンサの信頼性が低下するおそれがある。
【0008】
水冷式のエンジンにおいても、ウォータジャケットの形状または寸法、あるいは冷却水の流動状態等によっては、局所的に温度のバラツキが生じる場合がある。そのため、上記と同様の課題が発生する場合がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ノックセンサが取り付けられた単気筒の内燃機関において、ノックセンサの温度上昇を抑え、ノックセンサの信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る内燃機関は、車両用の単気筒の内燃機関であって、クランク軸を収容するクランクケースと、前記クランクケースに接続され、内部にシリンダが形成されたシリンダブロックと、前記シリンダを覆うように前記シリンダブロックに接続されたシリンダヘッドと、前記クランクケース、前記シリンダブロック、または前記シリンダヘッドに形成されたセンサ取付用のボスと、前記ボスに取り付けられ、ノッキングを検出するセンサと、前記クランクケース、前記シリンダブロック、および前記シリンダヘッドの少なくとも一部に取り付けられ、少なくとも前記ボスに空気を導く導風部材と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノックセンサが取り付けられた単気筒の内燃機関において、ノックセンサの温度上昇を抑え、ノックセンサの信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】第1実施形態に係るエンジンの一部分の右側面図である。
【図4】第2実施形態に係るエンジンの一部分の右側面図である。
【図5】第3実施形態に係るエンジンの一部分の右側面図である。
【図6】第4実施形態に係るエンジンユニットの図2に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態に係る鞍乗型車両は、スクータ型の自動二輪車1である。自動二輪車1は本発明に係る鞍乗型車両の一例であるが、本発明に係る鞍乗型車両はスクータ型の自動二輪車1に限定される訳ではない。本発明に係る鞍乗型車両は、いわゆるモペット型、オフロード型、またはオンロード型等の他の型式の自動二輪車であってもよい。また、本発明に係る鞍乗型車両は、乗員が跨って乗車する任意の車両を意味し、二輪車に限られない。本発明に係る鞍乗型車両は、車体を傾けることによって進行方向を変える型式の三輪車等であってもよく、ATV(All Terrain Vehicle)等の他の鞍乗型車両であってもよい。
【0014】
以下の説明において、前、後、左、右は、それぞれ自動二輪車1の乗員から見た前、後、左、右を意味するものとする。図面に付した符号F、Re、L、Rは、それぞれ前、後、左、右を表す。
【0015】
自動二輪車1は、車両本体2と、前輪3と、後輪4と、後輪4を駆動するエンジンユニット5とを備えている。車両本体2は、乗員によって操作されるハンドル6と、乗員が着座するシート7とを備えている。エンジンユニット5は、いわゆるユニットスイング式のエンジンユニットであり、ピボット軸8を中心として揺動可能なように、図示しない車体フレームに支持されている。すなわち、エンジンユニット5は、車体フレームに対して揺動可能に支持されている。
【0016】
図2は、図1のII−II線断面図である。図2に示すように、エンジンユニット5は、本発明に係る内燃機関の一例としてのエンジン10と、Vベルト式無段変速機(以下、CVTという)20とを備えている。本実施形態では、エンジン10とCVT20とが一体となってエンジンユニット5を構成しているが、エンジン10と変速機とが別々であってもよいことは勿論である。
【0017】
エンジン10は、単一の気筒を備えたエンジン、すなわち単気筒エンジンである。エンジン10は、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、および排気行程を順次繰り返す4ストロークエンジンである。エンジン10は、クランクケース11と、クランクケース11から前方に延びるシリンダブロック12と、シリンダブロック12の前部に接続されたシリンダヘッド13と、シリンダヘッド13の前部に接続されたシリンダヘッドカバー14とを備えている。シリンダブロック12の内部には、シリンダ15が形成されている。
【0018】
なお、シリンダ15は、シリンダブロック12の本体(すなわち、シリンダブロック12のうちのシリンダ15以外の部分)内に挿入されたシリンダライナー等によって形成されていてもよく、シリンダブロック12の本体と一体化されていてもよい。言い換えると、シリンダ15は、シリンダブロック12の本体と分離可能に形成されていてもよく、シリンダブロック12の本体と分離できないように形成されていてもよい。シリンダ15内には、図示しないピストンが摺動自在に収容されている。
【0019】
シリンダヘッド13は、シリンダ15を覆っている。シリンダヘッド13には、図示しない凹部と、この凹部につながる図示しない吸気ポートおよび排気ポートとが形成されている。この吸気ポートには吸気管35(図3参照)が接続され、排気ポートには排気管38が接続されている。上記ピストンの頂面とシリンダ15の内周壁と上記凹部とにより、図示しない燃焼室が形成されている。上記ピストンは、コンロッド16を介してクランク軸17に連結されている。クランク軸17は左方および右方に延びており、クランクケース11内に収容されている。
【0020】
本実施形態では、クランクケース11、シリンダブロック12、シリンダヘッド13、およびシリンダヘッドカバー14は別体であり、互いに組み立てられている。しかし、必ずしもそれらは別体でなくてもよく、適宜に一体化されていてもよい。例えば、クランクケース11とシリンダブロック12とが一体的に形成されていてもよく、シリンダブロック12とシリンダヘッド13とが一体的に形成されていてもよい。また、シリンダヘッド13とシリンダヘッドカバー14とが一体的に形成されていてもよい。
【0021】
CVT20は、駆動側のプーリである第1プーリ21と、従動側のプーリである第2プーリ22と、第1プーリ21と第2プーリ22とに巻き掛けられたVベルト23とを備えている。クランク軸17の左端部は、クランクケース11から左方に突出している。第1プーリ21は、クランク軸17の左端部に取り付けられている。第2プーリ22はメイン軸24に取り付けられている。メイン軸24は、図示しないギア機構を介して後輪軸25に連結されている。なお、図2では、第1プーリ21の前側部分と後側部分とでは、変速比が異なる状態を表している。第2プーリ22についても同様である。クランクケース11の左方には、変速機ケース26が設けられている。CVT20は、変速機ケース26内に収容されている。
【0022】
クランク軸17の右側部分には、発電機27が設けられている。クランク軸17の右端部には、ファン28が固定されている。ファン28はクランク軸17と共に回転する。ファン28は、回転することによって空気を左方に吸引するように形成されている。クランクケース11、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13の右方には、エアシュラウド30が配置されている。発電機27およびファン28は、エアシュラウド30内に収容されている。エアシュラウド30は、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13の少なくとも一部を覆っており、ここでは主にクランクケース11、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13に対して空気を導く役割を果たす。エアシュラウド30には、吸入口31が形成されている。吸入口31はファン28の右方に位置している。吸入口31は、ファン28と対向する位置に形成されている。すなわち、クランクケース11の側方に、クランク軸17によって駆動されるファン28が配置され、吸気口31はそのファン28と対向する位置に形成されている。図2の矢印Aのように、ファン28によって吸引される空気は、吸入口31を通じてエアシュラウド30内に導入され、クランクケース11、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13等に供給される。
【0023】
図3は、エンジン10の一部分の右側面図である。図3に示すように、エアシュラウド30は、クランクケース11、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13に取り付けられ、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13に沿うように前方に延びている。エアシュラウド30は、クランクケース11、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13の右側部分を覆っている。また、エアシュラウド30の一部は、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13の上側部分および下側部分の一部も覆っている。
【0024】
図3に示すように、本実施形態に係るエンジン10は、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13が水平方向または水平方向から若干前上がりに傾斜した方向に延びる型式のエンジン、すなわち、いわゆる横置き式のエンジンである。符号L1は、シリンダ15(図2参照)の中心を通る線(以下、シリンダ軸心という)を表している。シリンダ軸心L1は、水平方向または水平方向から若干傾斜した方向に延びている。ただし、シリンダ軸心L1の方向は特に限定される訳ではない。例えば、水平面に対するシリンダ軸心L1の傾斜角度は0〜15°であってもよく、それ以上であってもよい。
【0025】
本実施形態に係るエンジン10は、その全体が空気によって冷却される空冷エンジンである。図2に示すように、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13には、複数の冷却用のフィン33が形成されている。ただし、エンジン10は、冷却用のフィン33を備えつつ、その一部が冷却水によって冷却されるエンジンであってもよい。すなわち、エンジン10は、一部が空気によって冷却され且つ一部が冷却水によって冷却されるエンジンであってもよい。
【0026】
フィン33の具体的形状は特に限定される訳ではないが、本実施形態に係るエンジン10では、フィン33は以下のような形状に形成されている。すなわち、本実施形態に係るフィン33は、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13の表面から突出すると共に、シリンダ軸心L1と直交するように延びている。言い換えると、フィン33は、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13の表面に対して直交する方向に延びている。フィン33は、シリンダ軸心L1の方向に並んでいる。隣り合うフィン33の間には、間隔が設けられている。フィン33の間隔は一定であってもよく、一定でなくてもよい。
【0027】
本実施形態では、シリンダブロック12に形成されたフィン33は、シリンダブロック12の上面12a、右面12b、および下面12c(図3参照)に渡って形成されている。シリンダヘッド13に形成されたフィン33は、シリンダヘッド13の上面13a、右面13b、下面13c(図3参照)、および左面13dに渡って形成されている。ただし、フィン33の位置は特に限定される訳ではない。フィン33は、シリンダブロック12にのみ形成されていてもよく、シリンダヘッド13にのみ形成されていてもよい。
【0028】
複数のフィン33同士の厚みは、互いに等しい。ただし、フィン33によって厚みが異なっていてもよい。また、同一のフィン33において、その厚みは場所によらずに一定であってもよいが、場所によって異なっていてもよい。すなわち、フィン33の厚みは局所的に異なっていてもよい。
【0029】
本実施形態では、フィン33は平板状に形成されており、フィン33の表面は平面となっている。しかし、フィン33は湾曲していてもよく、フィン33の表面は曲面であってもよい。また、フィン33の形状は平板状に限定されず、例えば針状、半球状等の他の形状であってもよい。フィン33が平板状に形成されている場合、フィン33は必ずしもシリンダ軸心L1と直交する方向に延びている必要はなく、シリンダ軸心L1と平行な方向に延びていてもよい。また、フィン33は、シリンダ軸心L1に対して傾斜する方向に延びていてもよい。複数のフィン33の延伸方向は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0030】
図2に示すように、シリンダブロック12の上面12aには、センサ取付用のボス40が形成されている。ボス40は、シリンダブロック12の上方に配置されている。言い換えると、ボス40は、エンジン本体(すなわち、エンジン10のうちボス40を除いた部分)の上方に配置されている。平面視において、ボス40はエンジン本体と重なる位置に配置されている。後述するように、シリンダヘッド13の上面には、吸気管35が接続されている。ボス40は、シリンダブロック12のうち、シリンダヘッド13の吸気管35が接続される側の面に対応する面に形成されている。なお、ボス40をシリンダヘッド13に形成することも可能である。ボス40は、シリンダヘッド13の上面に形成されていてもよく、シリンダヘッド13の吸気管35が接続される側の面に形成されていてもよい。
【0031】
図2において、符号19は吸気ポートを示している。図示は省略するが、吸気ポートは湾曲しながら下斜め後ろ向きに延びている。図2に示すように、ボス40の右端部は吸気ポート19の左端部よりも右方に位置し、ボス40の左端部は吸気ポート19の右端部よりも左方に位置している。すなわち、ボス40と吸気ポート19とは、左右方向に関して少なくとも一部が揃った位置に配置されている。言い換えると、ボス40の少なくとも一部と吸気ポート19の少なくとも一部とは、前後に並んでいる。ここでは、ボス40の中心および吸気ポート19の中心は、いずれもシリンダ軸線L1上に位置している。このように、ボス40の少なくとも一部と吸気ポート19の少なくとも一部とが左右方向に関して揃った位置にあることにより、ボス40に取り付けられるノックセンサ41を吸気ポート19によって、前方からの飛び石等から保護することができる。また、吸気ポート19に取り付けられる吸気管35により、ノックセンサ41を保護することができる。
【0032】
シリンダブロック12の左側部分には、チェーンケース99が設けられている。チェーンケース99の内部には、カムチェーンが配置されている。チェーンケース99の一部、すなわちシリンダブロック12の上面12aの左側部分には、カムチェーンテンショナ97が取り付けられる取付部96が設けられている。カムチェーンテンショナ97は、取付部96の孔に挿入され、カムチェーンに当接する。ボス40の後端部はカムチェーンテンショナ97の前端部よりも後方に位置し、ボス40の前端部はカムチェーンテンショナ97の後端部よりも前方に位置している。すなわち、ボス40とカムチェーンテンショナ97とは、前後方向に関して少なくとも一部が揃った位置に配置されている。言い換えると、ボス40の少なくとも一部とカムチェーンテンショナ97の少なくとも一部とは、左右に並んでいる。このことにより、上記取付部96およびカムチェーンテンショナ97によって、ボス40に取り付けられるノックセンサ41を保護することができる。
【0033】
ボス40は、肉厚の大きな円筒形状に形成されている。ボス40の上面は平坦な面となっている。ただし、後述するノックセンサ41を取り付けることができる限り、ボス40の形状は特に限定される訳ではない。本実施形態では、ボス40はフィン33と連続している。すなわち、ボス40とフィン33との間には、隙間は形成されていない。ボス40とフィン33とは一体的に形成されている。
【0034】
本実施形態では、ボス40は、3つのフィン33と連続している。ただし、ボス40と連続するフィン33の個数は3に限定される訳ではない。ボス40は複数のフィン33と連続していてもよく、1つのフィン33と連続していてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、ボス40はフィン33と連続しているが、ボス40とフィン33とは連続していなくてもよい。ボス40は、シリンダブロック12またはシリンダヘッド13におけるフィン33が形成されていない部分に設けられていてもよい。
【0036】
図2に示すように、ボス40は、平面視において、シリンダ軸心L1と重なる位置に形成されている。ボス40は、ボス40の中心の延長線L2(図3参照)とシリンダ軸心L1とが交差するような位置に形成されている。ただし、ボス40は、ボス40の中心の延長線L2とシリンダ軸心L1とが交差しないような位置に形成されていてもよい。例えばボス40は、ボス40の中心に沿った方向から見たときに、シリンダ15の内部とは重なるが、シリンダ軸心L1とは重ならないような位置に形成されていてもよい。なお、ボス40の中心に沿った方向から見たときに、シリンダ15の内部と重ならない位置にボス40を形成することも可能である。
【0037】
ボス40の前後の位置は特に限定されないが、本実施形態では、図2に示すように、ボス40の中心C2がピストンの上死点TDCと下死点BDCとの中間点MCよりも下死点BDC側に位置するようになっている。下死点BDCのより近傍にボス40を配置することも可能である。逆に、ボス40の中心がピストンの上死点TDCと下死点BDCとの中間点MCよりも上死点TDC側に位置するようにボス40を配置することも可能である。
【0038】
図3に示すように、ボス40の高さは、フィン33の高さと等しくてもよい。また、ボス40の高さは、フィン33の高さよりも高くてもよい。すなわち、ボス40の一部は、フィン33よりも突出していてもよい。あるいは、ボス40の高さは、フィン33の高さよりも低くてもよい。ボス40はシリンダブロック12の上面12aと直交する方向に延びている。フィン33はシリンダブロック12の上面12aと直交する方向に突出しているため、ボス40の突出方向とフィン33の突出方向とは平行となっている。ただし、ボス40の突出方向は特に限定されず、シリンダブロック12の上面12aに対して斜めの方向であってもよい。
【0039】
図2に示すように、ボス40の中心C2はシリンダヘッド13の中心C3よりも後方に位置している。なお、ここで言うシリンダヘッド13の中心C3とは、シリンダヘッド13におけるシリンダ軸線L1上の一端と他端との間の中間点を意味する。図2に示す符号C3は、シリンダヘッド13の中心の概ねの位置を示す符号であるが、必ずしもシリンダヘッド13の厳密な中心を示している訳ではない。ボス40の中心C2は、シリンダヘッド13の中心C3よりも、エアシュラウド30の吸入口31の中心C1に近くなっている。言い換えると、吸入口31の中心C1とボス40の中心C2との距離は、吸入口31の中心C1とシリンダヘッド13の中心C3との距離よりも短くなっている。
【0040】
図3に示すように、ボス40の上には、ノッキングを検出するノックセンサ41が取り付けられている。ノッキングが生じると、燃焼圧が急激に変動するので、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13等に特有の振動が生じる。ノックセンサ41として、振動を検出し、その振動を電気信号に変換して出力するセンサ等(例えば、圧電素子を備えたセンサ等)を好適に用いることができる。ただし、ノックセンサ41の種類は特に限定されない。
【0041】
ノックセンサ41の形状も特に限定されないが、本実施形態では、ノックセンサ41は上面および下面が平坦な環状に形成されている。ノックセンサ41は、ボルト42によってボス40に取り付けられている。ボルト42は、金属製の材料で形成されている。ボルト42の材料は特に限定されないが、例えば、鋼、アルミニウム合金等を好適に用いることができる。図4に示すように、ノックセンサ41をボス40の上に置き、上方からボルト42をノックセンサ41およびボス40に差し込んだ後、ボルト42を締め付けることにより、ノックセンサ41を取り付けることができる。ボス40の内周面には、ボルト42と係合する螺旋溝が形成されていてもよい。これにより、ボルト42を回転させると、ボルト42とボス40とが直接係合することになる。ただし、ボルト42の固定方法は特に限定されない。他の固定方法として、例えば、予めボス40にボルト42(頭部がなく、軸部のみからなるボルト)を埋め込んでおき、そのボルト42にノックセンサ41およびナットを順に嵌め込んだ後、ナットを締め付けるようにしてもよい。
【0042】
図3に示すように、シリンダヘッド13の上面13aには、吸気管35が接続されている。吸気管35には、図示しないスロットル弁を収容したスロットルボディ36が接続されている。側面視において、ノックセンサ41は、吸気管35またはスロットルボディ36の下方に配置されている。吸気管35の前方には、燃料噴射弁37が配置されている。側面視において、ノックセンサ41は、吸気管35の燃料噴射弁37が配置された側と反対の側に配置されている。シリンダヘッド13の下面13cには、排気管38が接続されている。
【0043】
前述したように、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13の内部には、燃焼室が形成されている。燃焼室内でノッキングが発生すると、そのノッキングに起因する振動が燃焼室からシリンダブロック12およびシリンダヘッド13等に伝播する。本実施形態によれば、ノックセンサ41は、シリンダブロック12に取り付けられている。ノックセンサ41は、燃焼室の近傍、言い換えると、ノッキングの発生箇所の近傍に配置されている。よって、ノックセンサ41によってノッキングを高精度に検出することが可能となる。
【0044】
ところが、燃焼室の近傍は、ノッキングの検出にとって好適な場所であるが、温度の高い場所でもある。シリンダブロック12は、クランクケース11と比べると、温度が高くなる傾向にある。そのため、ノックセンサ41を単にシリンダブロック12に設けただけでは、ノックセンサ41が高温のシリンダブロック12によって加熱され、ノックセンサ41の温度が高くなりすぎるおそれがある。しかし、ノックセンサ41の温度が高くなりすぎると、ノックセンサ41の寿命の低下等を招くおそれがある。
【0045】
燃焼室における燃焼によって発生する熱は、主として、シリンダブロック12からボス40を介してノックセンサ41に伝導される。すなわち、ノックセンサ41は主に、ボス40からの熱伝導によって加熱される。ところが、本実施形態に係るエンジン10によれば、エアシュラウド30によって、ボス40に対して気流が導かれる。そのため、空気によりボス40を効果的に冷却することができる。したがって、ボス40の冷却性が高く、ボス40の温度が過剰に高くなることは防止される。よって、本実施形態によれば、ノックセンサ41がボス40によって加熱されにくくなるので、ノックセンサ41の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0046】
また、エアシュラウド30によって導かれた空気は、ボス40だけでなくノックセンサ41にも供給される。そのため、空気により、ノックセンサ41自体も効果的に冷却することができる。
【0047】
ボス40はクランクケース11に形成されていてもよいが、本実施形態によれば、ボス40はシリンダブロック12に形成されている。そのため、ボス40は、ノッキングの発生箇所により近い箇所に配置されることになる。したがって、ノックセンサ41の検出精度を高めることができる。一方、ノッキングの発生箇所に近い部分ほど、温度は高くなる。しかし本実施形態によれば、シュラウド30によってボス40に空気が導かれ、ボス40の温度上昇は抑制される。そのため、ノックセンサ41の検出精度の向上と温度上昇の抑制との両立を図ることができる。
【0048】
なお、ボス40をシリンダヘッド13に形成することも可能である。この場合、ボス40はノッキングの発生箇所により近い箇所に配置されることになり、ノックセンサ41の検出精度を更に高めることができる。一方、シリンダヘッド13はシリンダブロック12よりも高温になりやすい。しかし、本実施形態に係るエンジン10によれば、シュラウド30によってボス40を効果的に冷却することができるので、ノックセンサ41の温度上昇を抑制することができる。
【0049】
シリンダヘッド13は、上面13aと右面13bと下面13cと左面13dとを有する。吸気管35は上面13aに接続され、排気管38は下面13cに接続されている。シリンダブロック12も、上面12aと右面12bと下面12cと左面12dとを有する。ボス40は、上面12aに形成されている。すなわち、ボス40は、シリンダブロック12の面12a〜12dのうち、シリンダヘッド13の吸気管35が接続された面13aに対応する面12aに形成されている。吸気管35には常温の空気が流れるのに対し、排気管38には、燃焼後の高温の排ガスが流れる。そのため、吸気管35は排気管38よりも低温であり、上面12aおよび13aは下面12cおよび13cよりも低温となる。本実施形態によれば、より低温の上面12aにボス40を設けることとしたので、ノックセンサ41の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0050】
ノックセンサ41は、金属製のボルト42によりボス40に取り付けられている。そのため、シリンダブロック12の熱をボス40およびボルト42に伝え、ボルト42から外部に放出することができる。シリンダブロック12の熱の一部はノックセンサ41を経由せずに放出される。したがって、ノックセンサ41の温度上昇の抑制と、シリンダブロック12の冷却性の向上とを図ることができる。
【0051】
図3に示すように本実施形態では、ノックセンサ41の上方に吸気管35またはスロットルボディ36が配置されている。車両上方から見たときに、ボス40およびノックセンサ41は吸気管35またはスロットルボディ36と重なる位置に配置されている。吸気管35やスロットルボディ36は、ノックセンサ41よりも強度の大きな部品である。万一、上方から落下物が落下してきたとしても、吸気管35またはスロットルボディ36により、ノックセンサ41を保護することができる。
【0052】
ところで、自動二輪車1の走行に伴って、前方から後方に向かう気流が発生する。本実施形態では、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13は、クランクケース11から前方斜め上向きに延びている。図3に示すように、シリンダ軸心L1は水平面から傾斜している。そのため、そのままではシリンダブロック12の上面12aは、右面12b、下面12cおよび左面12dに比べると、空気が円滑に流れにくい。しかし本実施形態によれば、エアシュラウド30によって、ボス40に空気を供給することができる。したがって、本来は空気が円滑に供給されにくい上面12aにボス40を設けているにも拘わらず、ボス40を十分に冷却することができ、ノックセンサ41の温度上昇を抑制することができる。
【0053】
エアシュラウド30は、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13の少なくとも一部を覆っている。エアシュラウド30は、ボス40だけでなく、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13等にも空気を供給する。そのため、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13等を効果的に冷却することができる。そのことによっても、ボス40の温度上昇を抑えることができ、ノックセンサ41の温度上昇を抑制することができる。
【0054】
図2に示すように、ボス40はシリンダブロック12に形成されており、シリンダヘッド13よりも後方に位置している。エアシュラウド30は、概ね空気を左方に導くと共に、前方に導くように構成されている。そのため、エアシュラウド30は、ボス40、シリンダヘッド13の順に空気を導くように構成されている。シリンダヘッド13はシリンダブロック12よりも高温となる傾向がある。しかし、本実施形態によれば、ボス40に供給される空気は、シリンダヘッド13に供給される前の空気である。ボス40には、シリンダヘッド13によって加熱される前の比較的低温の空気が供給されることになる。したがって、ボス40をより効果的に冷却することができる。
【0055】
図2に示すように、本実施形態によれば、吸入口31の中心C1とボス40の中心C2との距離は、吸入口31の中心C1とシリンダヘッド13の中心C3との距離よりも短くなっている。概ねボス40には、シリンダヘッド13によって加熱される前の比較的低温の空気が供給されることになる。したがって、ボス40を効果的に冷却することができる。
【0056】
図3に示すように、ボス40は、側面視において、シリンダ軸線L1よりも上方に配置されている。エアシュラウド30は、シリンダ軸線L1の上方の方が下方に比べて流路面積が大きくなるように形成されている。そのため、エアシュラウド30内において、シリンダ軸線L1の上方の方が、下方よりも多くの空気が流れる。ボス40は空気量が多い方に配置されているので、ボス40を効率的に冷却することができる。
【0057】
シリンダブロック12およびシリンダヘッド13には、フィン33が形成されている。そのため、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13の冷却性能を高めることができる。また、本実施形態に係るエンジン10によれば、ボス40はフィン33と連続している。そのため、ボス40の熱は、ボス40自体に滞留するのではなく、フィン33を通じて活発に放出される。したがって、ボス40の冷却性が高まり、ボス40の温度が過剰に高くなることは防止される。よって、ノックセンサ41の温度上昇を更に抑制することが可能となる。
【0058】
なお、図3に示すように、ボス40の上方には、吸気管35またはスロットルボディ36が配置されている。そのため、エアシュラウド30を設けない場合、シリンダブロック12の上面12aにおけるボス40の周囲において、吸気管35およびスロットルボディ36の影響により、空気の流れが淀んでしまう場合がある。しかし、本実施形態によれば、エアシュラウド30を設けることとしたので、吸気管35またはスロットルボディ36の下方に位置するボス40に対して、良好な流れの空気を供給することができる。したがって、ボス40を効果的に冷却することができ、ノックセンサ41の温度上昇を抑制することができる。
【0059】
なお、自動二輪車1の走行に伴って、前方から後方に空気が流れることになる。ファン28を用いずに、走行に伴って自然に発生する気流でボス40等を冷却することも可能である。ただし、自動二輪車1が一時的に停止している際、すなわちアイドリングの際には、そのような気流は発生しない。本実施形態によれば、クランク軸17が回転している限り、ファン28によって空気を供給することができる。アイドリング時にもボス40等に空気を供給することができるので、ノックセンサ41の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0060】
図3に示すように、ノックセンサ41はフィン33よりも高い位置に配置されている。ノックセンサ41のシリンダブロック12の上面12aからの突出量は、フィン33のシリンダブロック12の上面12aからの突出量よりも大きくなっている。そのため、ノックセンサ41に対して、空気が当たりやすくなっている。供給された空気により、ノックセンサ41自体を効果的に冷却することができる。本実施形態によれば、ボス40からノックセンサ41への熱伝導を抑制すると共に、ノックセンサ41自体を効果的に冷却することができるので、ノックセンサ41の温度上昇を更に抑制することができる。
【0061】
ところで、自動二輪車1の走行に伴って、地面から小石や泥等が跳ね上げられることがある。そのように跳ね上がられた小石等がノックセンサ41に衝突すると、ノックセンサ41の取付状態が悪化し、検出精度が低下するおそれがある。また、ノックセンサ41の故障を招くおそれがある。しかし、本実施形態によれば、ボス40はシリンダブロック12の上面12aに設けられている。シリンダブロック12の上面12aは、右面12b、下面12c、および左面12dに比べて、地面から跳ね上げられる小石等が当たりにくい。そのため、小石等がノックセンサ41に当たることを抑制することができる。
【0062】
図2に示すように本実施形態によれば、ボス40は、ボス40の中心の延長線L2がシリンダ15内を通るような位置に配置され、特に、延長線L2がシリンダ軸心L1と交わるような位置に配置されている。そのため、ノックセンサ41は、ノッキングをより検出しやすい位置に配置されることになる。したがって、本実施形態によれば、ノックセンサ41の検出精度をより高めることができる。
【0063】
<第2実施形態>
図3に示すように、第1実施形態に係るエンジン10では、ボス40はフィン33と連続するように形成されていた。しかし、必ずしもボス40とフィン33とが連続している必要はない。図4に示すように、第2実施形態に係るエンジン10は、ボス40がフィン33から独立したものである。
【0064】
本実施形態では、シリンダブロック12の根元部分(言い換えると、後側部分)12rにはフィン33が形成されていない。ボス40は、シリンダブロック12の上面の根元部分12r、すなわちフィン33が形成されていない部分に設けられている。ただし、ボス40はシリンダブロック12の上面に限らず、他の面に設けられていてもよい。
【0065】
本実施形態では、ボス40の上に断熱材45が設けられている。断熱材45は環状に形成されている。断熱材45は、シリンダブロック12の材料よりも熱伝導率の低い材料によって形成されている。ただし、ノックセンサ41は振動を検出するセンサであるため、断熱材45は振動を減衰させにくい材料によって形成されていることが好ましい。断熱材45は、熱伝導を抑制する一方、振動を減衰させにくい材料で形成されていることが好ましい。断熱材45の材料は特に限定されないが、例えば、シリンダブロック12の材料よりも熱伝導率が1/10以下(好ましくは1/100以下)かつ密度が1/10以上の材料を好適に用いることができる。
【0066】
シリンダブロック12の材料は特に限定されないが、例えば、JISR1611に基づいて測定された熱伝導率が96W/(m・K)程度かつ密度が2.68kg/m程度のADC12(DC材)、熱伝導率が134W/(m・K)程度かつ密度が2.77kg/m程度のAC4B(LP)、熱伝導率が50W/(m・K)程度かつ密度が7.3kg/m程度のFC250(鋳鉄)、熱伝導率が29W/(m・K)程度かつ密度が3.9kg/m程度のアルミナセラミックス等を用いることができる。断熱材45の材料として、例えば、フェノール樹脂等を好適に用いることができる。JISA1412に基づいて測定されたフェノール樹脂の熱伝導率は0.2W/(m・K)程度であり、上記各材料の熱伝導率の1/100以下である。また、フェノール樹脂の密度は1.25kg/m程度であり、上記各材料の密度の1/10以上である。
【0067】
断熱材45をボス40の上に置き、そのボス40の上にノックセンサ41を置いた後、上方からボルト42をノックセンサ41と断熱材45とボス40とに挿入して、ボルト42を締め付けることにより、ノックセンサ41を固定することができる。
【0068】
図4に示すように、クランク軸17の回転に伴ってファン28が回転すると、エアシュラウドの30の外部の空気は吸入口31を通じて、エアシュラウド30の内部に吸い込まれる。吸い込まれた空気Aは概ね前方に導かれ、ボス40およびノックセンサ41に供給される。ボス40およびノックセンサ41は、この空気によって冷却される。ボス40およびノックセンサ41を冷却した空気は、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13の周囲を前方から左方にわたって流れ、それらシリンダブロック12およびシリンダヘッド13を冷却する。
【0069】
図4に示すように、ボス40の前方にはフィン33が形成されている。エアシュラウド30は、ボス40、フィン33の順に空気を導くように構成されている。吸入口31の中心C1とボス40の中心C2との距離は、吸入口31の中心C1とフィン33との最短距離よりも短くなっている。ここで、吸入口31の中心C1とフィン33との最短距離とは、フィン33のうち最も吸入口31の中心C1に近い部分33tと吸入口31の中心C1との距離のことである。吸入口31から吸い込まれた比較的低温の空気は、ボス40およびノックセンサ41の周囲を流れる。この際、空気はボス40およびノックセンサ41を冷却することにより、自らは加熱され、温度が上昇する。温度が上昇した後の空気は、フィン33に供給される。フィン33は、温度が上昇した後の空気によって冷却される。
【0070】
本実施形態においても、エアシュラウド30がボス40およびノックセンサ41に気流を供給するので、ノックセンサ41の温度上昇を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、エアシュラウド30は、空気をボス40、フィン33の順に導くように構成されている。そのため、ボス40およびノックセンサ41には、フィン33を冷却する前の比較的低温の空気が供給される。したがって、ノックセンサ41の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0072】
エンジン10の温度は、クランクケース11、シリンダブロック12、シリンダヘッド13の順に高くなっていく。本実施形態においても、エアシュラウド30は、空気をボス40、シリンダヘッド13の順に導くように構成されている。そのため、ボス40およびノックセンサ41には、シリンダヘッド13によって加熱される前の空気が供給される。したがって、ノックセンサ41の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0073】
エアシュラウド30は、概ね、クランクケース11、シリンダブロック12、シリンダヘッド13の順に空気を供給する。そのため、空気は概ね低温の部分から高温の部分に順に流れるので、エンジン10を効率よく冷却することができる。
【0074】
また、本実施形態では、ボス40とノックセンサ41との間に、断熱材45が介在している。そのため、ノックセンサ41がボス40によって加熱されることを、更に抑制することができる。したがって、ノックセンサ41の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0075】
<第3実施形態>
第1および第2実施形態では、ボス40はシリンダブロック12に形成されていた。しかし、ボス40は、シリンダブロック12以外の部分に形成されていてもよい。図5に示すように、第3実施形態に係るエンジン10は、ボス40がクランクケース11に形成されているものである。
【0076】
ボス40の位置は特に限定されないが、本実施形態では、ボス40はクランクケース11の前側部分に形成されている。すなわち、ボス40は、クランクケース11におけるシリンダブロック12の近傍部分に形成されている。ボス40は、クランクケース11の上面11aに設けられており、前方斜め上向きに延びるように形成されている。
【0077】
その他の構成は第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。本実施形態においても、クランクケース11、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13には、エアシュラウド30が取り付けられている。
【0078】
エアシュラウド30の吸入口31の中心C1とボス40の中心C2との距離は、吸入口31の中心C1とシリンダブロック12の中心C4との距離よりも短くなっている。なお、シリンダブロック12の中心とは、シリンダブロック12におけるシリンダ軸線L1上の一端と他端との間の中間点を意味する。
【0079】
図5において、点MCは、シリンダ軸線L1上の点であって、かつピストンの上死点と下死点との間の中間に位置する点を表している。吸入口31の中心C1とボス40の中心C2との距離は、吸入口31の中心C1と上記点MCとの距離よりも短くなっている。
【0080】
吸入口31からファン28によって吸い込まれた空気は、概ね、クランクケース11、シリンダブロック12、シリンダヘッド13の順に流れる。ボス40およびノックセンサ41には、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13を冷却する前の空気が供給される。ボス40およびノックセンサ41を冷却した空気は、その後、シリンダブロック12およびシリンダヘッド13に供給され、それらシリンダブロック12およびシリンダヘッド13を冷却する。
【0081】
本実施形態においても、エアシュラウド30がボス40およびノックセンサ41に空気を供給するので、ノックセンサ41の温度上昇を抑制することができる。
【0082】
また、前述したように、クランクケース11はシリンダブロック12およびシリンダヘッド13に比べると、温度が低い。そのため、本実施形態によれば、ボス40の温度上昇をより抑えることができ、ノックセンサ41の温度上昇を更に抑制することができる。
【0083】
ボス40およびノックセンサ41には、シリンダブロック12またはシリンダヘッド13によって加熱される前の比較的低温の空気が供給される。したがって、ボス40およびノックセンサ41を効果的に冷却することができる。
【0084】
<第4実施形態>
第1および第2実施形態では、ボス40はシリンダブロック12の上面12aに形成されていた。第3実施形態では、ボス40はクランクケース11の上面11aに形成されていた。しかし、ボス40は、シリンダブロック12等の上面12aに限らず、他の面に形成されていてもよい。図6に示すように、第4実施形態に係るエンジン10は、ボス40がシリンダブロック12の右面12bに形成されているものである。
【0085】
本実施形態では、シリンダブロック12の根元部分にはフィン33が形成されておらず、ボス40は、その根元部分の右面12bに形成されている。ボス40はフィン33から独立している。ただし、第1実施形態と同様、ボス40とフィン33とが連続していてもよい。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0086】
本実施形態においても、エアシュラウド30がボス40およびノックセンサ41に気流を供給するので、ノックセンサ41の温度上昇を抑制することができる。
【0087】
ボス40は、シリンダブロック12またはシリンダヘッド13の側面であってかつエアシュラウド30の吸入口31が形成された方の側面に形成されていてもよい。本実施形態では、吸入口31はエアシュラウド30の右側部分に形成され、空気は右方から左方に向かって導入される。ボス40はシリンダブロック12の右面12bに形成され、ノックセンサ41はシリンダブロック12の右方に配置されている。そのため、吸入口31から導入した空気を、ボス40およびノックセンサ41に直ちに供給することができる。したがって、ボス40およびノックセンサ41を効果的に冷却することができる。
【0088】
平面視において、ファン28は吸入口31に対向し、また、シリンダ軸線L1の右方に配置されている。ボス40は、平面視において、シリンダ軸線L1よりも右方に配置されている。すなわち、ボス40は、平面視において、シリンダ軸線L1に対しファン28側に配置されている。そのため、吸入口31から吸い込まれた比較的温度の低い空気をボス40に供給することができる。
【0089】
本実施形態においても、ボス40およびノックセンサ41には、フィン33を冷却する前の比較的低温の空気が供給される。そのため、ボス40およびノックセンサ41を効果的に冷却することができ、ノックセンサ41の温度上昇を十分に抑制することができる。
【0090】
<その他の実施形態>
図2に示すように、第1実施形態に係るエンジン10では、ボス40は、ボス40の中心の延長線L2がシリンダ軸心L1と交差するような位置に形成されていた。しかし、ボス40の位置は特に限定されない。例えば、ボス40をシリンダ軸心L1から右方または左方に偏倚させることも可能である。
【0091】
前記各実施形態に係るエンジン10は、シリンダ軸心L1が水平またはほぼ水平に延びる横置き式のエンジンであった。しかし、シリンダ軸心L1の方向は、水平またはほぼ水平に限定されない。エンジン10は、シリンダ軸心L1がほぼ垂直に延びるいわゆる縦置き式のエンジンであってもよい。例えば、シリンダ軸心L1の水平面からの傾斜角は、45°以上または60°以上であってもよい。
【0092】
エンジン10は、車体フレームに対して揺動するユニットスイング式のエンジンに限らず、車体フレームに揺動不能に固定されたエンジンであってもよい。
【0093】
前記各実施形態に係るエンジン10は、クランク軸17と共に回転するファン28を備えていた。前記各実施形態では、ファン28によって、ボス40に対して空気を強制的に供給していた。しかし、本発明に係る内燃機関は、必ずしもファン28を備えていなくてもよい。自動二輪車1等の鞍乗型車両では、走行に伴って、前方から後方に向かう気流が発生する。エアシュラウド30は、走行に伴って自然に発生する気流をボス40に供給するように構成されていてもよい。また、エアシュラウド30は、ファン28による気流と走行に伴って発生する気流との両方をボス40等に供給するものであってもよい。
【0094】
前記各実施形態では、ファン28はクランク軸17により駆動されるものであった。しかし、気流を生成するファンは、クランク軸17によって駆動されるものに限定される訳ではない。例えば、電動モータによって駆動されるファンを用いることも可能である。また、エアシュラウド30の吸入口31の位置、形状、および寸法は、前記実施形態のものに限定されない。
【0095】
本発明に係るシュラウドは、シリンダブロック12等の一部を覆うエアシュラウド30に限定される訳ではない。シュラウドは、単一の部品で形成されたものに限らず、複数の部品を組み合わせたものであってもよい。
【0096】
前記各実施形態では、エンジン10は空冷エンジンであった。しかし、本発明に係る内燃機関は、水冷エンジンであってもよい。また、一部が空気によって冷却され、一部が冷却水によって冷却されるエンジンであってもよい。例えば、シリンダブロックにフィンが形成されると共に、シリンダヘッドにウォータジャケットが形成され、シリンダブロックが空気によって冷却され、シリンダヘッドが冷却水によって冷却されるようになっていてもよい。
【0097】
前記各実施形態では、エンジン10は、4ストロークエンジンであった。しかし、本発明に係る内燃機関は、2ストロークエンジンであってもよい。
【0098】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前記各実施形態は例示にすぎず、ここに開示される発明には前述の各実施形態を様々に変形または変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
10 エンジン(内燃機関)
11 クランクケース
12 シリンダブロック
13 シリンダヘッド
14 シリンダヘッドカバー
15 シリンダ
28 ファン(導風部材)
30 エアシュラウド(導風部材)
31 吸入口(流入口)
33 フィン
40 ボス(センサ取付用ボス)
41 ノックセンサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の単気筒の内燃機関であって、
クランク軸を収容するクランクケースと、
前記クランクケースに接続され、内部にシリンダが形成されたシリンダブロックと、
前記シリンダを覆うように前記シリンダブロックに接続されたシリンダヘッドと、
前記クランクケース、前記シリンダブロック、または前記シリンダヘッドに形成されたセンサ取付用のボスと、
前記ボスに取り付けられ、ノッキングを検出するセンサと、
前記クランクケース、前記シリンダブロック、および前記シリンダヘッドの少なくとも一部に取り付けられ、少なくとも前記ボスに空気を導く導風部材と、
を備えた内燃機関。
【請求項2】
前記ボスは、前記シリンダブロックまたは前記シリンダヘッドに形成されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドは、上面と下面と左面と右面とを有し、
前記シリンダヘッドの上面、下面、左面、および右面のいずれか一つの面には吸気管が接続され、吸気管が接続された面と反対側の面には排気管が接続され、
前記ボスは、前記シリンダヘッドの前記吸気管が接続された面、または、前記シリンダブロックにおける前記面に対応する面に形成されている、請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記導風部材は、少なくとも前記ボスの周囲を覆うシュラウドと、前記クランク軸の回転に伴って空気を前記シュラウド内に導入するファンと、によって構成されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドの少なくとも一部には、フィンが形成され、
前記導風部材は、前記ボス、前記フィンの順に空気を導くように構成されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記ボスは、前記クランクケースまたは前記シリンダブロックに形成され、
前記導風部材は、前記ボス、前記シリンダヘッドの順に空気を導くように構成されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記ボスは、前記クランクケースに形成され、
前記導風部材は、前記ボス、前記シリンダブロックの順に空気を導くように構成されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記ボスは、前記クランクケースまたは前記シリンダブロックに形成され、
前記導風部材は、空気が流入する流入口が形成され、前記クランクケースと前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの少なくとも一部を覆うシュラウドと、前記クランク軸の回転に伴って空気を前記シュラウド内に導入するファンと、によって構成され、
前記流入口の中心と前記ボスの中心との距離は、前記流入口の中心と前記シリンダヘッドの中心との距離よりも短い、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項9】
前記ボスは、前記クランクケースに形成され、
前記導風部材は、空気が流入する流入口が形成され、前記クランクケースと前記シリンダブロックとの少なくとも一部を覆うシュラウドと、前記クランク軸の回転に伴って空気を前記シュラウド内に導入するファンと、によって構成され、
前記流入口の中心と前記ボスの中心との距離は、前記流入口の中心と前記シリンダブロックの中心との距離よりも短い、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項10】
前記ボスは、前記クランクケースまたは前記シリンダブロックに形成され、
前記シリンダブロックには、フィンが形成され、
前記導風部材は、空気が流入する流入口が形成され、前記クランクケースと前記シリンダブロックとの少なくとも一部を覆うシュラウドと、前記クランク軸の回転に伴って空気を前記シュラウド内に導入するファンと、によって構成され、
前記流入口の中心と前記ボスの中心との距離は、前記流入口の中心と前記フィンとの最短距離よりも短い、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項11】
前記ボスは、前記クランクケースまたは前記シリンダブロックに形成され、
前記導風部材は、空気が流入する流入口が形成され、前記クランクケースと前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの少なくとも一部を覆うシュラウドと、前記クランク軸の回転に伴って空気を前記シュラウド内に導入するファンと、によって構成され、
前記流入口の中心と前記ボスの中心との距離は、前記流入口の中心と、シリンダ軸線上の点であってかつピストンの上死点と下死点との中間に位置する点との距離よりも短い、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項12】
前記センサは、ボルトにより前記ボスに取り付けられ、
前記ボルトは、金属製の材料で形成されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項13】
前記導風部材は、空気が流入する流入口が形成され、前記クランクケースと前記シリンダブロックとの少なくとも一部を覆うシュラウドと、前記クランク軸の回転に伴って空気を前記シュラウド内に導入するファンと、によって構成され、
前記ボスは、平面視において、シリンダ軸線に対して前記ファン側に配置されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項14】
前記導風部材は、空気が流入する流入口が形成され、前記クランクケースと前記シリンダブロックとの少なくとも一部を覆うシュラウドと、前記クランク軸の回転に伴って空気を前記シュラウド内に導入するファンと、によって構成され、
前記ボスは、側面視において、シリンダ軸線よりも上方に配置され、
前記シュラウドは、シリンダ軸線の上方の方が下方に比べて流路面積が大きい、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項15】
請求項1に記載の内燃機関を備えた鞍乗型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−24100(P2013−24100A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158622(P2011−158622)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)