説明

内燃機関の主軸受け装置

【目的】 シリンダ下部のクランクケースの剛性を高めつつ機関運転時のクランク軸揺動によるクランクケース壁の振動を抑制する。
【構成】 シリンダブロック11の下部両側のクランクケース12をベッドプレート15により連結する。また、シリンダブロック11下部のベアリング保持部13とベアリングキャップ17とにより調心用アウタレース19を略垂直面内を揺動自由に挟持すると共に、アウタレース19にクランク軸21のジャーナル部をメタルベアリング20を介して回転自由に取付ける。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、内燃機関の主軸受け装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の主軸受け装置の従来例として、図6に示すようなものがある(実開昭61−29127号公報,実公昭60−39466号公報、特開平3−64655号公報参照等)。
すなわち、シリンダブロック1の下部両側にはクランクケース2が下方に突出して夫々形成され、クランクケース2下壁にはベッドプレート3が両クランクケース2間に差渡して取付けられている。前記ベッドプレート3にはクロスメンバ4が両クランクケース2間に差渡すように複数形成されている。
【0003】
そして、前記シリンダブロック1下部とベッドプレート3上壁とにより軸受部5を形成し、この軸受部5にメタルベアリング部を回転自由に取付ける。6はボルト7によりベッドプレート3と共にシリンダブロック1に取付けられる補強部材である。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の主軸受け装置においては、両クランクケース2間に差渡すようにベッドプレート3を取付けているのでクランクケース2部の剛性が高まり振動,騒音の低減に有利であるが、クランク軸をシリンダブロック1下部とベッドプレート3のベアリングキャップ部とにより挟持しているので、機関運転時におけるクランク軸の縦曲げ振動(図7参照)に起因する主軸受け部の前後振動(図7参照)がクランクケース1に直接伝達され、クランクケース2壁の振動が大きくなって機関振動が大きくなるという不具合がある。
【0005】
本考案は、このような実状に鑑みてなされたもので、クランクケースの剛性を高く保持しつつクランク軸の振動がクランクケース等に伝達されるのを抑制するようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本考案は、シリンダブロック下部両側に下方に突出して夫々形成されるクランクケースと、これらクランクケース間に差渡してクランクケース下端部に取付けられるベッドプレートと、前記シリンダブロック下部のベアリング保持部とベアリングキャップとによりジャーナル部がベアリングを介して回転自由に挟持されるクランク軸と、を備えるものにおいて、 筒状のアウタレースを少なくとも一方向に揺動自由に前記ベアリング保持部とベアリングキャップとにより挟持すると共に、前記アウタレースに前記クランク軸のジャーナル部をベアリングを介して回転自由に取付けるようにした。
【0007】
【作用】
そして、クランクケース下端部をベッドプレートにより保持し剛性を高めると共に、機関運転時のクランク軸揺動をアウタレースを揺動させることにより吸収しクランクケース壁の振動を抑制するようにした。
【0008】
【実施例】
以下に、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は本考案の一実施例を示す。
図1において、シリンダブロック11の下部両側にはクランクケース12が下方に突出して夫々形成され、クランクケース12の間にはベアリング保持部13がシリンダブロック11の前後方向(図1中奥行方向)に所定間隔で複数形成されている。
前記ベアリング保持部13の中央下端部には図2に示すように内周壁が球面状のベアリング取付孔14が半円状に形成されている。
【0009】
前記クランクケース12の下端部にはベッドプレート15が両クランクケース12間に差渡して取付けられ、前記ベッドプレート15には従来と同様にクロスメンバ16が両クランクケース12間に差渡されると共にシリンダブロック11の前後方向に所定間隔で離間させて複数形成されている。
前記ベッドプレート15のクロスメンバ16の中央部にはベアリングキャップ17が夫々形成され、各ベアリングキャップ17の中央下端部には図2に示すように内周壁が球面状のベアリング取付孔18が半円状に形成されている。各ベアリングキャップ17のベアリング取付孔18は前記ベアリング保持部13のベアリング取付孔14に対向させて取付けられ、これらベアリング取付け孔14,18により円形状の取付孔が形成される。
【0010】
前記ベアリング取付孔14,18には図2に示すように外周壁が球面状のアウタレース19が揺動自由に取付けられ、アウタレース19にはメタルベアリング20を介してクランク軸21のジャーナル部が回転自由に取付けられている。前記ベアリングキャップ17上部とアウタレース19下端部とに跨がって回止めのキー22が取付けられており、これによりアウタレース19は前記ベアリング取付孔14、18内にて略垂直面内を揺動できるように構成されている。
【0011】
また、前記ベアリング保持部13のリブ部材には潤滑油供給通路23が形成され、この供給通路23は図3に示すようにアウタレース19の周方向を長径とする略長円形状に形成されている。また、アウタレース19にはメタルベアリング20に潤滑油を供給する潤滑油孔24が前記潤滑油供給通路23と連通させて貫通形成され、この孔24は前記供給通路23と略同一形状の長円形に形成されている。
【0012】
かかる構成によれば、機関運転中にクランク軸21にピストンを介して爆発力が作用しクランク軸21に縦曲げ振動(図7参照)が発生しても、アウタケース19がベアリング保持部13及びベアリングキャップ17に対して略垂直面内を揺動し前記縦曲げ振動を吸収する。このため、その振動がベアリング保持部13を介してクランクケース12に伝達されるのを大幅に抑制できるので、クランクケース12壁の振動を大幅に抑制でき、もって機関振動を抑制できる。
【0013】
また、ベアリング保持部13の潤滑油供給通路23とアウタレース19の潤滑油孔24とを長円形にして連通させると共に、アウタレース19をキー22により回り止めするようにしたので、メタルベアリング20に潤滑油を軸受け外部から確実に供給でき摺動部の潤滑を良好に行うことができる。
勿論、両クランクケース12下端部をベッドプレート15により連結するようにしているので、クランクケース12部材の剛性を従来と同様に高く保持できるため、これによってもクランクケース12壁の振動を抑制できる。
【0014】
図4及び図5は本考案の他の実施例を示す。尚、前記実施例と同一要素には図1及び図2と同一符号を付して説明を省略する。
本実施例は、図4に示すように、クランク軸21右側方にアウタレース19の回止めキー31を取付け、クランク軸21の横曲げ振動をアウタレース19にて吸収しクランクケース12に伝達されるのを抑制するようにした。
【0015】
尚、実施例では、ベッドプレートにベアリングキャップが一体的に取付けられたものを説明したが、それらが別体の場合にも本考案は適用できる。
【0016】
【考案の効果】
本考案は、以上説明したように、シリンダブロック下部両側のクランクケースをベッドプレートにより連結すると共に、クランク軸をベアリングを介してアウタレースに取付けこのアウタレースを揺動させるようにしたので、クランクケースの剛性を高く保持しつつ機関運転時のクランク軸の揺動をアウタレースにて吸収できるため、クランクケース壁の振動を大幅に抑制でき、よって機関振動を大幅に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本考案の一実施例を示す構成図
【図2】 同上の要部断面図
【図3】 同上のIII−III矢視図
【図4】 本考案の他の実施例を示す構成図
【図5】 同上の要部断面図
【図6】 主軸受け装置の従来例を示す分解図
【図7】 同上の作用を説明するための図
【符号の説明】
11 シリンダブロック
12 クランクケース
13 ベアリング保持部
15 ベッドプレート
17 ベアリングキャップ
19 アウタレース
20 メタルベアリング
21 クランク軸

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】シリンダブロック下部両側に下方に突出して夫々形成されるクランクケースと、これらクランクケース間に差渡してクランクケース下端部に取付けられるベッドプレートと、前記シリンダブロック下部のベアリング保持部とベアリングキャップとによりジャーナル部がベアリングを介して回転自由に挟持されるクランク軸と、を備える内燃機関の主軸受け装置において、筒状のアウタレースを少なくとも一方向に揺動自由に前記ベアリング保持部とベアリングキャップとにより挟持すると共に、前記アウタレースに前記クランク軸のジャーナル部をベアリングを介して回転自由に取付けたことを特徴とする内燃機関の主軸受け装置

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate