説明

内燃機関

【目 的】 僅かな重量増加により、ベアリングキャップ部1の各方向への振動を側壁に伝えずに、シリンダブロック全体の剛性を向上させ、このシリンダブロックからの放射音を低減させた内燃機関を提供する。
【構 成】 シリンダブロックの開口面に設けたラダーフレーム3の下面に、ベッドフレーム9を積層し、オイルパン10とシリンダブロックと共締めて一体化した内燃機関。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、内燃機関のシリンダブロックから発生する放射音を低減するためにシリンダブロックの下部に設けたラダーフレームを補強するベッドプレートを設けた内燃機関に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、図2に示すような内燃機関のシリンダブロック7においては、機関燃焼時の衝撃力に起因するクランクシャフトからの加振入力によってベアリングキャップ部1にクランクシャフト軸方向、すなわちX−Yで示す前後方向の振動が生じ易く、これがシリンダブロックスカート部の振動を誘起して、外部へ騒音となって放射されるという問題があり、そのような騒音を低減することを目的としてベアリングビームに関する特開昭58-77941号公報が提案されている。
【0003】
この公知技術は図3に示すように、各ベアリングキャップ部1同士を一体的にビーム部2で連結したもので、一般にベアリングビーム方式と称されており、各ベアリングキャップ部1の捩じり等の振動を抑制し、シリンダブロック7全体としての剛性の向上を図っている。しかしながら、この場合も矢印Zで示すような捩じり振動や、ボア軸線まわりの曲げに対する抑制は不充分であった。
【0004】
そこで、図4の概略正面図及び図4の二重斜線部のみを示す図5の斜視図に示すように、図3の各ベアリングキャップ部1の両側を側壁8で一体化したラダーフレーム3を設けた内燃機関が実用化されてきている。
上記ラダーフレーム3を下部開口部に有するシリンダブロック7は、このブロック下部の剛性が高くなり、スカート部の振動が起こりにくいという特徴を有している。しかし、シリンダブロック左右の側壁とベアリングの前後方向の振動がラダーフレーム3の側壁8に伝達され、この側壁8の振動が大きくなり、また、曲げ方向の振動が抑えきれず、波打つような振動を発生するという問題がある。
【0005】
上記のようなシリンダブロックの欠点の対策として、シリンダブロックスカート部に連なる側壁部の下縁に、図6に示すような厚肉部5を設けるとともに、この厚肉部5とベアリングキャップ部1とが交差する隅部に、両者を斜めに結合する三角形の補強部6を一体に形成した自動車用エンジンのクランクルームの構造が実開昭59-552号公報が提案されている。この考案は、三角形の補強部6によってこのシリンダブロックの下部の剛性が向上するが、そのブロック部の構造が複雑化する上に重量が増加を伴うという問題がある。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、わずかな重量増加により、ベアリングキャップ部の各方向への振動を側壁に伝えず、しかもブロック全体の剛性の向上させることができ、結果的にシリンダブロックからの放射音を低減できる内燃機関を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための、本考案の内燃機関は、シリンダブロックの下部に設けたラダーフレームの下面に、クランクの運動部が通過できる程度の開口を局部的に設けたベッドプレートを装着し、少なくともオイルパンボルトなどの周辺ボルトにより前記シリンダブロックと一体的に固定して構成されている。
【0008】
ラダーフレームの下面に積層されてこれを補強するベッドプレートは、平板状のものであって、なるべく開口部を少なくするためにクランクの運動部分が通過する開口部を最小限に形成している。この開口部は成るべく角のない楕円形であって、プレートの強度を低下させないように配慮されている。
【0009】
【作 用】
この開口部の少ないベッドプレートをラダーフレームの下面の開口部を覆うように積層して設けているので、ラダーフレームで支持するベアリングの振動がこのラダーフレームの側壁に伝達されず、シリンダブロックの下部開口部が強化されることになり、その結果、シリンダブロックブロック振動を側壁に伝えない構造となっている。
【0010】
【実 施 例】
以下、図面を参照して本考案の実施例を説明する。
図1は本考案の一実施例におけるシリンダブロックへ組付前のラダーフレームの状態を示す斜視図である。
この実施例のシリンダブロックは、図5の従来例と同様に各ベアリングキャップ部1の両側を側壁8で連結して一体化し、そのブロック下部が開口したラダーフレーム3で図示されていないクランクシャフトの下方を支持するようになっている。
【0011】
次に、このラダーフレーム3の下面に、本考案において採用したベッドプレート9を装着し、さらにその底面にオイルパン10を取付けるようにしており、図示しているベアリングキャップボルト穴11、オイルパンボルト穴12などの周辺ボルト穴に、図示されていないベアリングボルト、オイルパンボルト等の周辺ボルトを螺着して締付けることにより、ベッドプレート9をオイルパン10と共にラダーフレーム3に一体に共締めにより固定している。従って、このラダーフレーム3の下方には底板が設けられた状態になっている。
【0012】
このベッドプレート9は、なるべく重量を少なくして強度を増加するように大きな開口部を設けないように配慮されており、この開口部9aはクランクの運動部分が通過する部分やオイルが通過する部分等を考慮して最小限に形成されている。また、この開口部9aは図示したようになるべく角がない円形や楕円形のものであって、場合によっては隅部を大きな円弧で連結した矩形状のものを採用することもできる。
【0013】
以上のごとく、各ベアリングキャップ部1を有するラダーフレーム3にベッドプレート9を共締めするなどにより固定することにより、ベアリングキャップ部1の矢印X−Yの前後方向の振動が抑えられ、その結果、ベアリングの振動がシリンダブロックの側面に伝わらなくなる。
また、このベッドプレート9を装着し、固定することで、シリンダブロックの低部の開口部が狭くなり、ブロック全体の剛性が向上する。
【0014】
さらに、ラダーフレーム3に密度の小さいアルミ材などで作ったベッドプレート9を装着することによって、ラダーフレーム3の形状を変更した場合よりも重量の軽いシリンダブロックが提供できる。
【0015】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案の内燃機関は、シリンダブロックの下部に設けたラダーフレームの下面に、クランクの運動部が通過できる程度の開口を局部的に設けたベッドプレートを装着し、少なくともオイルパンボルトなどの周辺ボルトにより前記シリンダブロックと一体的に固定して構成されている。
【0016】
したがって、クランクシャフトを支持するベアリングキャップ部の前後方向の振動が抑えられ、ベアリングの振動がブロックの側面に伝わらなくなるので、側壁の振動が発生しづらくなく。
また、ベッドプレートの装着によってシリンダブロックの下部の開口部が狭くなり、それによってブロック全体の剛性が向上し、ねじり振動やバルクヘッド振動およびベアリング振動が発生しづらくなく。
【0017】
その結果、本考案の内燃機関は、シリンダブロックから発生する放射騒音の低減を図ることができる。また、本考案において、アルミ材などの軽量のラダーフレームを採用すれば、ラダーフレーム形状を変更した場合よりも重量を軽くすることができ、しかも充分な剛性が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例に係る内燃機関のシリンダブロックの下部構造を構成するラダーフレームとベッドプレートとオイルパンの組付前の状態を示す斜視図である。
【図2】従来の内燃機関のシリンダブロックにベアリングキャップ取付前の状態の要部を示す斜視図である。
【図3】従来のシリンダブロックのベアリングビーム方式を示す要部斜視図である。
【図4】従来のシリンダブロックのラダーフレーム方式の採用部位を示す概略正面図である。
【図5】図4のラダーフレームの斜視図である。
【図6】他の従来例のシリンダブロックスカート部の要部平面図である。
【符号の説明】
1 ベアリングキャップ 3 ラダーフレーム 9 ベッドプレート
9a 開口部 10 オイルパン。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 シリンダブロックの下部に設けたラダーフレームの下面に、クランクの運動部が通過できる程度の開口を局部的に設けたベッドプレートを装着し、少なくともオイルパンボルトなどの周辺ボルトにより前記シリンダブロックと一体的に固定した内燃機関。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【公開番号】実開平6−60749
【公開日】平成6年(1994)8月23日
【考案の名称】内燃機関
【国際特許分類】
【出願番号】実願平5−2124
【出願日】平成5年(1993)1月29日
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)