説明

内装材の製造方法

【課題】本発明は、内装材の製造方法であって、凹状の形状をした基材の凹内部に、浮きやしわがないように表皮材を貼付する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基材支持型21と、型表面14及び型表面可変部材16を備える表皮材支持型22と、を用い、基材支持型21と表皮材支持型22とを互いに近接させることで、基材11に対する表皮材12の貼着を行う工程において、表皮材支持型21の型表面可変部材16により、型表面14を基材支持型21側に部分的に突出させる工程と、当該型表面14に支持された表皮材12を基材11の凹底面に先当りさせる工程と、その先当りの後、基材11の凹形状に沿って型表面14が変形することで、表皮材12を基材11の凹内面に沿って当接させる工程と、当接の後に、当該表皮材12の基材11に対する貼着を行う工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内装材の製造方法として、例えば、特許文献1に記載の方法が知られている。この内装材の製造方法においては、まず、受け台の上面に、凸形の形状をした基材を配し、さらに基材の上方に表皮材を配するとともに、表皮材を基材に押し付けるための弾性膜、及び弾性膜の端を支持する支持板等からなる支持体を表皮材と対向するように配する。
【0003】
次に、弾性膜を膨張させて、支持体を受け台に接近させることで、弾性膜により下方へ押し出された表皮材は基材の表面に押し付けられて、表皮材と基材とが貼付され、内装材が供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−195021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、凸形の形状をした基材の表面に表皮材を貼付させている。しかしながら、上記特許文献1に記載の方法を、凹形の形状をした基材に適用すると、基材の凹部の基端部が、基材の凹部の底面より先に表皮材と接触する。そのため、基材の基端部に表皮材が引っ掛かり、基材の凹部にまで表皮材が行き渡らない場合があり、ひいては基材と表皮材との間に浮きが生じてしまう場合がある。
【0006】
また、基材と表皮材との間に浮きを生じさせないように、予め、表皮材をたるませた状態で、上記特許文献1の方法を、凹形の形状をした基材に適用すると、表皮材が弛んだ状態で貼付けられるため、表皮材にしわを生じさせてしまう場合がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、凹状の形状をした基材の凹内面に表皮材を貼付した構成の内装材の製造方法において、基材と表皮材との間に浮きが生じたり、表皮材にしわが生じたりすることを防止ないし抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の内装材の製造方法は、凹形状を備えた基材の凹内面に表皮材を貼着した構成を備える内装材の製造方法であって、前記基材を支持する基材支持型と、対向する相手部材である前記基材支持型の表面に沿って変形自在な型表面と、前記型表面を前記基材支持型側に対して部分的に突出させるための型表面可変部材とを備えるとともに、前記表皮材を前記型表面において支持可能な表皮材支持型と、を用い、前記基材支持型と前記表皮材支持型とを相対的に接近させることで、前記基材に対する前記表皮材の貼着を行う工程において、前記表皮材支持型の前記型表面可変部材により、前記型表面を前記基材支持型側に部分的に突出させる工程と、当該型表面に支持された前記表皮材を前記基材の凹底面に先当りさせる工程と、その先当りの後、前記基材の凹形状に沿って前記型表面が変形することで、前記表皮材を前記基材の凹内面に沿って当接させる工程と、前記当接の後に、当該表皮材の前記基材に対する貼着を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
この方法によれば、基材支持型と表皮材支持型とを近接させて型閉じするときに、表皮材を基材の凹底面に先当たりさせるものとしているため、表皮材は基材に対して先当たりした部分から外に向かって順次貼付されていく。
【0010】
そのため、表皮材は、基材の凹内面全体に基材の形状に倣って貼付されていくので、表皮材と基材との間に浮きが生じることを防止ないし抑制できる。また、この方法では、上述したように基材と表皮材との間の浮き発生を防止すべく表皮材を予めたるませておく必要がないため、表皮材が弛んだ状態で貼付けられることがなくなり、表皮材にしわが生じることも防止できる。
【0011】
本発明の実施態様として、前記表皮材を前記基材の凹内面に沿って当接させる工程において、前記基材支持型を前記表皮材支持型に接近させるに伴って、前記型表面可変部材を後退させることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、前記表皮材を前記基材の凹内面に沿って当接させる工程において、前記基材支持型と前記表皮材支持型とが接近しているときは、型表面可変部材によって基材支持型側に向かい突出している型表面の最頂部は、基材支持型と表皮材支持型の接近に伴い型表面可変部材が連動して基材に表皮材を押え付けながら後退するため、基材に最初に接着した表皮材の部分を押し続けている状態となる。そのため、基材の凹底面と先当たりして接着した表皮材は、基材から剥がれないようにできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、凹状の形状をした基材の凹内面に、浮きやしわがないように表皮材を貼付することができる内装材の製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態において製造される内装材を用いたドアトリムの斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】基材を基材支持型に配し、表皮材を型表面の上面に配した状態を示す断面図である。
【図4】基材の凹底面に表皮材が先当たりした状態を示す断面図である。
【図5】基材の凹内面全体に表皮材が貼着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の内装材の製造方法についての一実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の製造方法によって提供される内装材に相当する加飾部材10が取り付けられたドアトリム50の斜視図である。このドアトリム50には、上方にインサイドハンドル31、下方にスピーカーグリル32、インサイドハンドル31の後方にアームレスト部33、アームレスト部33の上方にオーナメント部34が備えられている。
【0016】
そして、本実施形態により提供される加飾部材10は、アームレスト部33とオーナメント部34とが一体となったものであり、図2に示すように、基材11上に表皮材12が貼付された構成を有している。また、基材11は、繊維に合成樹脂を含浸させたものからなり、断面略L字をなし、凹内面11Aを具備した構成を有している。表皮材12は、基材11の意匠性を高めるために、基材11の表面に貼付されるものである。表皮材12としては、合成樹脂製のシート、織布、不織布、皮革等を用いることが可能である。
【0017】
このような加飾部材10の製造方法は、以下の通りである。
まず、当該製造に用いる装置としては、図3に示すように、一対の型21,22を含んだものが採用されている。型21は、基材11を支持可能な基材支持型(以下、基材支持型21という)として構成される。一方、型22は、表皮材12を支持可能な表皮材支持型(以下、表皮材支持型22という)として構成されている。
【0018】
基材支持型21は、型を主体的に構成する本体部13と、型の表面を構成し、基材11を配置するための部分である基材配置部13Aと、基材着脱部13Bと、を有している。
【0019】
基材配置部13Aは、基材11と同様の凹形状を有しており、基材着脱部13Bと連通している。
基材着脱部13Bは、基材配置部13Aから基材支持型13の内部を貫通して、基材支持型13の外部に連通し、基材11を空気の吸引ないし噴射等により基材配置部13Aとの間で着脱可能にするためのものである。
【0020】
表皮材支持型22は、型を主体的に構成する本体部15と、型の表面を構成し、表皮材12を配置するための部分である表皮材配置部14と、を有している。
表皮材配置部14は、弾性変形可能な弾性膜からなり、相手方の型である基材支持型21の表面形状に沿って変形可能な型表面(以下、表皮材配置部14を型表面14という)を構成している。
【0021】
一方、本体部15は、型表面14を固定するための型表面固定冶具18を備え、その固定された型表面14の裏面側に空間19を形成すべく、凹形状の溝20を備えている。型表面固定冶具18は、弾性膜からなる型表面14の端部を挟み込むことで、当該型表面14を本体部15に対して固定している。
【0022】
また、表皮材支持型22には、表皮材支持型22の外部から、型表面14と本体部15とによって囲まれた領域の空間19へと通じる流動体移動通路17が形成されている。この流動体移動通路17は、表皮材支持型22の外部にある図示しない流動体注入・吸引装置から、流動体、例えば、空気を流入出するための通路である。そして、流動体注入・吸引装置を用いて、空気を流動体移動通路17に送り込むに伴い、空間19に空気が充填されてゆき、型表面14が上方に向かって膨らむことができる構造になっている。
【0023】
さらに、表皮材支持型22には、型表面14を基材支持型21側に対して部分的に突出させる型表面可変部材16が形成されている。型表面可変部材16は、例えば空気圧式のピストンから構成され、表皮材支持型15と型表面14との間、すなわち空間19に配されている。型表面可変部材16の先端部は、上下動可能であり、型表面可変部材16の先端部を上方に動かすことで型表面14を部分的に突出させることができる。
【0024】
次に、基材支持型21及び表皮材支持型22を用いた加飾部材10の製造手順を示す。
図3に示すように、まず、基材配置部13Aに基材11を配する。なお、基材11の凹内面11Aには接着剤を塗布しておく。次に、基材着脱部13Bの吸引作用によって、基材11を基材支持型21に支持させる。
一方、表皮材支持型22において、基材支持型21と対向する型表面14の上面には、表皮材12を配する。
【0025】
(型表面14を基材支持型21側に部分的に突出させる工程)
次に、型表面可変部材16の先端部を上昇させる。すると、型表面可変部材16と接触している型表面14を基材支持型21側いわゆる上方に向かって突出させることができる。このとき、表皮材12も、型表面14の形状に倣って上方に突出した形状になる。
【0026】
(表皮材12を基材11の凹底面に先当りさせる工程)
次に、図4に示すように、基材支持型21を下降または表皮材支持型22を上昇させることにより、両型を接近させる。この接近が所定距離まで達すると、上方に突出している表皮材12の最頂部が基材11の凹底面に先当たりする。
【0027】
(表皮材12を基材11の凹内面11Aに沿って当接させる工程)
その後、図4に示すように、基材支持型21を下降または表皮材支持型22を上昇させることにより、基材支持型21を表皮材支持型22に近接させて型閉じする。このとき、基材支持型21の下降または表皮材支持型22の上昇する速度と略同じ速度で型表面可変部材16を下降させる。
【0028】
このように基材支持型21が下降または表皮材支持型22が上昇する速度と略同じ速度で型表面可変部材16を下降させることにより、表皮材12のうち、基材11に先当たりした部分は、型表面可変部材16と基材支持型21とにより挟まれた状態で維持される。そのため、基材11の凹底面と先当たりして接着した表皮材12は、基材11から剥がれないようにできる。
【0029】
また、前工程で、表皮材12を基材11の凹底面に先当たりさせているため、その後に基材支持型21と表皮材支持型22とを近接させることで、表皮材12は、基材11に対して先当たりした凹底面から外に向かって順次当接されていく。そのため、基材支持型21と表皮材支持型22とが型閉じされた状態では、表皮材12は、基材11の凹内面11A全体に基材11の形状に倣って当接されていくので、表皮材22と基材21との間に浮きが生じることを防止できる。
【0030】
さらに、本実施形態の方法では、例えば基材11と表皮材12との間の浮き発生を防止すべく、表皮材12を予めたるませておくような必要性も生じないので、表皮材が弛んだ状態で貼付けられることがなくなり、表皮材12にしわが生じることも防止できる。
【0031】
(表皮材12の基材11に対する貼着を行う工程)
次に、流動体注入・吸引装置から空気を流動体移動通路17へ送り、空間19に空気を充填する。空気を空間19に充填することにより、型表面14は上方へ膨らむ。しかし、基材支持型21と表皮材支持型22とが型閉じされた状態にあるので、型表面14は、基材支持型21内に支持されている基材11の凹内面11Aに倣って膨らむ。そのため、基材11の凹内面11A全体と当接している表皮材12は、型表面14によって基材11に押し付けられるので、基材11と表皮材12とを、強固に貼着することができる。
【0032】
その後、加飾部材10を基材支持型13から脱型することにより、凹内面に表皮材12が装着された加飾部材10を得ることができる。
【0033】
以上のような本実施形態の製造方法においては、表皮材支持型22の空間19内に型表面可変部材16を配し、型表面可変部材16の先端を上昇させて表皮材12を部分的に突出させた後に、この突出部分を基材11の凹底面に先当たりさせ、基材11の凹内面11A全体に表皮材12を当接させることで、基材11に表皮材12を貼着させるものとしているため、基材11と表皮材12との間に浮きが生じることを防止できる。また、浮きを防止する方策を考慮する必要がないので、表皮材12にしわが生じることも防止できるものとなっている。
【0034】
また、基材支持型21を下降または表皮材支持型22を上昇させて、型閉じする際に、基材支持型21の下降速度と略同じ速度で型表面可変部材16を後退させることによって、基材11の凹底面と先当たりして接着した表皮材12は、基材11から剥がれないようできる。
【0035】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
(1)上記実施形態では、型閉じするときに、型表面可変部材16を基材支持型21と同じ速度で下降または表皮材支持型22を上昇させていたが、本発明はこのような態様に制限されるものではない。例えば、まず、型表面可変部材16を後退させ、その後に基材支持型21を下降または表皮材支持型22を上昇させることも可能である。
【0037】
(2)上記実施形態では、空間19に充填する流動体として空気を用いていたが、本発明はこのような態様に制限されるものではない。例えば、水や油等でも可能である。
【0038】
(3)上記実施形態では、型表面可変部材16として空気圧式のシリンダーを用いたが、本発明はこのような態様に制限されるものではない。本発明は、例えば、油圧式のシリンダーでも可能である。
【0039】
(4)上記実施形態では、基材11の凹底面に表皮材12を先当たりさせる工程および基材11の凹内面11A全体に表皮材12を当接させる工程において、基材支持型21または表皮材支持型22のどちらか一方を動かすことにより、両型を接近させていたが、本発明はこのような態様に制限されるものではない。例えば、表皮材支持型22、基材固定型21の両型を作動させて両型を接近させることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…加飾部材(内装材)
11…基材
12…表皮材
14…型表面
16…型表面可変部材
21…基材支持型
22…表皮材支持型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹形状を備えた基材の凹内面に表皮材を貼着した構成を備える内装材の製造方法であって、
前記基材を支持する基材支持型と、
対向する相手部材である前記基材支持型の表面に沿って変形自在な型表面と、前記型表面を前記基材支持型側に対して部分的に突出させるための型表面可変部材とを備えるとともに、前記表皮材を前記型表面において支持可能な表皮材支持型と、
を用い、
前記基材支持型と前記表皮材支持型とを相対的に接近させることで、前記基材に対する前記表皮材の貼着を行う工程において、
前記表皮材支持型の前記型表面可変部材により、前記型表面を前記基材支持型側に部分的に突出させる工程と、
当該型表面に支持された前記表皮材を前記基材の凹底面に先当りさせる工程と、
その先当りの後、前記基材の凹形状に沿って前記型表面が変形することで、前記表皮材を前記基材の凹内面に沿って当接させる工程と、
前記当接の後に、当該表皮材の前記基材に対する貼着を行う工程と、を含むことを特徴とする内装材の製造方法。
【請求項2】
前記表皮材を前記基材の凹内面に沿って当接させる工程において、前記基材支持型を前記表皮材支持型に接近させるに伴って、前記型表面可変部材を後退させることを特徴とする請求項1に記載の内装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−280126(P2010−280126A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135055(P2009−135055)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】