説明

内視鏡用穿刺装置

【課題】手元側支持本体を、内視鏡の処置具挿入口金に対し使い易い所望の向きに確実かつ簡単に接続固定することができる内視鏡用穿刺装置を提供すること。
【解決手段】接続固定環24が手元側支持本体20に対して軸線方向に可動に配置されると共に、接続固定環24を手元側支持本体20側に引き付ける方向に付勢する付勢手段29と、接続固定環24が付勢手段29により手元側支持本体20に引き付けられた状態の時に手元側支持本体20に対する接続固定環24の軸線周り方向の回転を阻止する回転規制ストッパ30,31が設けられ、接続固定環24が付勢手段29の付勢力に抗して手元側支持本体20から引き離された状態では、接続固定環24が手元側支持本体20に対して軸線周り方向に回転自在となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡用穿刺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波内視鏡等で用いられる内視鏡用穿刺装置は一般に、内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱される可撓性シースを進退操作する必要があるのと同時に、可撓性シース内に挿通配置されている針管を可撓性シースに対して微妙に進退操作できるようにする必要がある。
【0003】
そこで、可撓性シースの基端に連結されたシース操作部材を、内視鏡の処置具挿入口金に着脱自在に接続される手元側支持本体に軸線方向に進退自在に係合させると共に、針管の基端に連結された針管操作部材をシース操作部材に対して軸線方向に進退自在に係合させている。
【0004】
ただし、内視鏡の処置具挿入口金に対する手元側支持本体の軸線周り方向の向きが一義的に規制されてしまうと、手元側支持本体に設けられている手動の操作部材固定摘みの操作等が著しくやり難くなってしまう場合がある。
【0005】
そこで、手元側支持本体の基部に、軸線周り方向に回転自在な接続固定環を設け、接続固定環を処置具挿入口金にきつく締め付け固定することにより、手元側支持本体を処置具挿入口金に対し任意の向きに圧接固定できるようにしている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−275947
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたような構成をとることにより、内視鏡用穿刺装置の手元側支持本体の軸線周り方向の向きが処置具挿入口金との接続部で一義的に規制されてしまうことが避けられる。
【0008】
しかし、特許文献1に記載された発明の構成では、接続固定環を処置具挿入口金にきつく締め付けたとき、その操作の最終段階で手元側支持本体が接続固定環と一緒に回転するいわゆる共回り現象が発生する。
【0009】
そのため、処置具挿入口金に接続固定環を螺合させて手元側支持本体を取り付け固定する作業の際に、手元側支持本体が共回りしないように手元側支持本体を最適の向きに手でしっかりと保持しておく必要が生じる。
【0010】
しかし、一方の手は内視鏡の操作部を保持し、他方の手は接続固定環を回転させる必要があるので、手元側支持本体をしっかり押さえておくためには手が足りず、結局、共回り現象を確実に止めることができずに、処置具挿入口金に対する取り付け作業を何回もやり直さなければならない場合が少なくなかった。
【0011】
本発明は、手元側支持本体を、内視鏡の処置具挿入口金に対し使い易い所望の向きに確実かつ簡単に接続固定することができる内視鏡用穿刺装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用穿刺装置は、可撓性シースの基端に連結されたシース操作部材と、可撓性シース内に軸線方向に進退自在に挿通配置された針管の基端に連結されてシース操作部材に軸線方向に進退自在に係合する針管操作部材と、シース操作部材が軸線方向に進退自在に係合する手元側支持本体と、内視鏡の処置具挿入口金に着脱自在に螺合固定されるように手元側支持本体の基部に取り付けられた接続固定環、とを備えた内視鏡用穿刺装置において、接続固定環が手元側支持本体に対して軸線方向に可動に配置されると共に、接続固定環を手元側支持本体側に引き付ける方向に付勢する付勢手段と、接続固定環が付勢手段により手元側支持本体に引き付けられた状態の時に手元側支持本体に対する接続固定環の軸線周り方向の回転を阻止する回転規制ストッパが設けられ、接続固定環が付勢手段の付勢力に抗して手元側支持本体から引き離された状態では、接続固定環が手元側支持本体に対して軸線周り方向に回転自在となるものである。
【0013】
なお、回転規制ストッパが、互いに係脱自在に接続固定環側と手元側支持本体側とに各々放射状に等間隔で形成された複数の突起と溝であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、手元側支持本体を内視鏡の処置具挿入口金に取り付けた後で、手元側支持本体の軸線周り方向の向きだけを任意に調整して固定状態にすることができ、手元側支持本体を使い易い所望の向きに確実かつ簡単に処置具挿入口金に接続固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る内視鏡用穿刺装置の手元側本体が処置具挿入口金に取り付けられた状態で、その軸線周り方向の向きが調整される状態の側面断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る内視鏡用穿刺装置が超音波内視鏡に取り付けられて使用される状態の側面図である。
【図3】本発明の実施例に係る内視鏡用穿刺装置の手元側本体付近の側面断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る内視鏡用穿刺装置の図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る内視鏡用穿刺装置の接続固定環の部分斜視図である。
【図6】本発明の実施例に係る内視鏡用穿刺装置の手元側本体が処置具挿入口金に取り付けられた状態の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は、内視鏡用穿刺装置が公知の超音波内視鏡1に取り付けて使用される状態を示している。
【0017】
内視鏡用穿刺装置を構成する可撓性シース11が、超音波内視鏡1の処置具挿通チャンネル2に挿通されて、その先端部分が処置具挿通チャンネル2の先端部分から突出している。4は、超音波内視鏡1の挿入部3の先端に配置された超音波プローブである。
【0018】
内視鏡用穿刺装置は、処置具挿通チャンネル2内に挿脱自在な可撓性シース11内に、軸線方向に進退自在に可撓性の針管12が挿通配置された構成を備えている。針管12としては、例えば薄肉厚のステンレス鋼パイプ又はその他の金属パイプ材等を用いることができる。
【0019】
可撓性シース11としては、例えば四フッ化エチレン樹脂チューブやPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂チューブ等のような可撓性チューブ、又はステンレス鋼線を一定の径で管状に巻いたコイルパイプ等を用いることができる。
【0020】
可撓性シース11の基端には、処置具挿通チャンネル2に対して可撓性シース11を軸線方向に進退操作するためのシース操作筒体21(シース操作部材)が連結され、針管12の基端には、可撓性シース11に対して針管12を軸線方向に進退操作するための針管操作筒体22(針管操作部材)が連結されている。
【0021】
針管操作筒体22は、シース操作筒体21に軸線方向に進退自在に係合している。21aは、シース操作筒体21の端部に取り付けられた操作摘み、23は、針管12内と連通するように針管操作筒体22の端部に設けられた針元口金である。
【0022】
20は、処置具挿通チャンネル2の入口に突設されている処置具挿入口金2aに着脱自在に取り付けられる手元側支持本体であり、手元側支持本体20内にはシース操作筒体21が軸線方向に進退自在に係合している。
【0023】
その結果、手元側支持本体20に対してシース操作筒体21をスライド操作することにより、処置具挿通チャンネル2に対して可撓性シース11を進退させ、シース操作筒体21に対し針元口金23を進退操作することにより、超音波プローブ4の走査範囲5内において、可撓性シース11の先端から針管12の先端を突没させることができる。
【0024】
手元側支持本体20の基端部には、処置具挿入口金2aに着脱自在に螺合固定される接続固定環24が設けられており、接続固定環24を処置具挿入口金2aに螺合させることにより、手元側支持本体20が処置具挿入口金2aに取り付けられた状態になり、接続固定環24と処置具挿入口金2aとの螺合を解くことにより、手元側支持本体20が処置具挿入口金2aから外れた状態になる。25は、シース操作筒体21を手元側支持本体20に対し固定/解除するための手動の操作部材固定摘みである。
【0025】
図3は内視鏡用穿刺装置の手元側部分を拡大して示している。可撓性シース11の基端が連結固着されたシース操作筒体21は、シリンダ状に形成された手元側支持本体20内に軸線方向に進退自在に嵌挿されている。そして、シース操作筒体21の端部に固着された操作摘み21aが手元側支持本体20外に露出している。26は、シール用のOリングである。
【0026】
その結果、手元側支持本体20の側面に形成されたねじ孔に螺合する操作部材固定摘み25を締め付けることによりシース操作筒体21が手元側支持本体20に固定された状態になる。
【0027】
操作部材固定摘み25を緩めると、シース操作筒体21が手元側支持本体20に対して軸線方向にスライド自在になり、操作摘み21aを指先で摘んで操作することにより、可撓性シース11を軸線方向に進退させることができる。
【0028】
針管12の基端が連結固着された針管操作筒体22は、シース操作筒体21内に軸線方向に進退自在に嵌挿されている。したがって、針管操作筒体22を指先で摘んで操作することにより、針管12を可撓性シース11内で軸線方向に進退させることができる。
【0029】
また、図示されていない注射筒等を針元口金23に取り付けて、針管12の先端から注射或いは吸引等を行うことができる。27はシール用のOリングである。なお、針管12の進退操作時には、針元口金23から針管12内に可撓性の芯金が通される場合があるが、その図示は省略されている。
【0030】
処置具挿入口金2aと螺合する螺条24aが内周面に形成された接続固定環24は、外径が細く形成された中間細径部24bを備えていて、その中間細径部24bが手元側支持本体20の基端内に通されて、その奥側の端部に可動ばね受け28が一体に固着されている。
【0031】
可動ばね受け28は、手元側支持本体20内に軸線方向に進退自在に嵌合しており、可動ばね受け28及びそれと一体に設けられた接続固定環24とが手元側支持本体20に対して軸線方向に可動に配置された状態になっている。
【0032】
そして、可動ばね受け28と手元側支持本体20側に形成された固定バネ受け座20aとの間に圧縮コイルスプリング29(付勢手段)が配置され、それによって接続固定環24が手元側支持本体20側に引き付けられる方向に付勢されている。
【0033】
圧縮コイルスプリング29の付勢力により引き付け合う接続固定環24と手元側支持本体20との当接部には、接続固定環24が圧縮コイルスプリング29により手元側支持本体20に引き付けられた状態の時に手元側支持本体20に対する接続固定環24の軸線周り方向の回転を阻止する回転規制ストッパ30,31が設けられている。
【0034】
この実施例の回転規制ストッパ30,31は、図3におけるIV−IV断面を図示する図4に示されるように、互いに係脱自在に接続固定環24側と手元側支持本体20とに各々放射状に等間隔(例えば軸線周りの45°間隔)で形成された複数の突起30と溝31とで形成されており、係合状態では突起30が溝31内に嵌まり込む。
【0035】
図5は、接続固定環24側に形成された突起30の斜視図であり、手元側支持本体20側の溝31は、接続固定環24側の突起30がガタつきなく嵌まり込む形状及び寸法に形成されている。ただし、回転規制ストッパがこのような突起30と溝31以外のストッパで構成されていてもよい。
【0036】
このような突起30と溝31との係合により、通常は、手元側支持本体20に対する接続固定環24の軸線周り方向の回転が阻止されており、接続固定環24が圧縮コイルスプリング29の付勢力に抗して手元側支持本体20から引き離されると、突起30と溝31との係合が外れ、接続固定環24が手元側支持本体20に対して軸線周り方向に回転自在になる。
【0037】
そこで、手元側支持本体20を処置具挿入口金2aに取り付ける際には、手元側支持本体20の軸線周り方向の向きを気にすることなく、図6に示されるように、接続固定環24を適宜の向きのまま処置具挿入口金2aに取り付ける。
【0038】
そして、接続固定環24を処置具挿入口金2aにきつく締め付け固定してから、手元側支持本体20を指先で摘み、図1に示されるように、圧縮コイルスプリング29の付勢力に抗して手元側支持本体20を接続固定環24から引き離した状態で、手元側支持本体20を最も好ましい向きに回転させてから指を離す。
【0039】
そうすることにより、圧縮コイルスプリング29の付勢力で手元側支持本体20が接続固定環24側に引き寄せられて、回転規制ストッパである突起30と溝31とが係合し、手元側支持本体20が望ましい向きの状態で処置具挿入口金2aに回転できないように固定された状態になる。
【0040】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、突起30と溝31を小さな間隔で多数形成すれば、手元側支持本体20が固定される際の向きをより細かく規制することができる。また、本発明は超音波内視鏡用の穿刺装置に限らず、内視鏡用穿刺装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
2 処置具挿通チャンネル
2a 処置具挿入口金
11 可撓性シース
12 針管
20 手元側支持本体
21 シース操作筒体(シース操作部材)
22 針管操作筒体(針管操作部材)
24 接続固定環
25 操作部材固定摘み
29 圧縮コイルスプリング(付勢手段)
30 突起(回転規制ストッパ)
31 溝(回転規制ストッパ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性シースの基端に連結されたシース操作部材と、上記可撓性シース内に軸線方向に進退自在に挿通配置された針管の基端に連結されて上記シース操作部材に軸線方向に進退自在に係合する針管操作部材と、上記シース操作部材が軸線方向に進退自在に係合する手元側支持本体と、内視鏡の処置具挿入口金に着脱自在に螺合固定されるように上記手元側支持本体の基部に取り付けられた接続固定環、とを備えた内視鏡用穿刺装置において、
上記接続固定環が上記手元側支持本体に対して軸線方向に可動に配置されると共に、上記接続固定環を上記手元側支持本体側に引き付ける方向に付勢する付勢手段と、上記接続固定環が上記付勢手段により上記手元側支持本体に引き付けられた状態の時に上記手元側支持本体に対する上記接続固定環の軸線周り方向の回転を阻止する回転規制ストッパが設けられ、
上記接続固定環が上記付勢手段の付勢力に抗して上記手元側支持本体から引き離された状態では、上記接続固定環が上記手元側支持本体に対して軸線周り方向に回転自在となることを特徴とする内視鏡用穿刺装置。
【請求項2】
上記回転規制ストッパが、互いに係脱自在に上記接続固定環側と上記手元側支持本体側とに各々放射状に等間隔で形成された複数の突起と溝である請求項1記載の内視鏡用穿刺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−194011(P2010−194011A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40730(P2009−40730)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】