説明

内視鏡

【課題】オートクレーブによる滅菌を行っても内蔵チューブが縮まず、十分な滅菌処理を繰り返して行うことができる内視鏡を提供すること。
【解決手段】流体又は処置具類等を通すために内蔵された可撓性チューブ3,4,5,6,8,21,22,23としてフッ素樹脂製チューブが用いられた内視鏡において、上記チューブ3,4,5,6,8,21,22,23が、内視鏡に組み込み前にアニール処理されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、流体や処置具類等を通すための可撓性チューブが内蔵された内視鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】空気や水を通すための送気送水チューブや処置具類を通すための鉗子チャンネル等のように内視鏡に内蔵される可撓性チューブとしては、一般にFEP(パーフロロ(テトラフロロ)エチレンとヘキサフロロプロピレンの共重合体)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフロロエチレン)等のようなフッ素樹脂製チューブが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】フッ素樹脂製チューブに限らず、一般に、合成樹脂材によってチューブを製造する際には、加熱成形されたチューブが、自重や巻き取りのための引っ張りによって僅かに伸ばされた状態で冷却されてその形状が固定される。
【0004】したがって、内視鏡を使用後に滅菌するためにオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)装置に入れて120〜135℃程度に加熱すると、内視鏡に内蔵されたチューブが製造時の伸びの分だけ縮んでしまい、チューブの両端接続部間に無理な力が加わって故障の原因になる場合がある。
【0005】そこで本発明は、オートクレーブによる滅菌を行っても内蔵チューブが縮まず、十分な滅菌処理を繰り返して行うことができる内視鏡を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡は、流体又は処置具類等を通すために内蔵された可撓性チューブとしてフッ素樹脂製チューブが用いられた内視鏡において、上記チューブが、内視鏡に組み込み前にアニール処理されていることを特徴とする。
【0007】なお、上記アニール処理が、上記チューブを、引っ張り力がかからない状態において130〜150℃の雰囲気中に所定時間置いて行われるものでもよく、上記所定時間が30分〜2時間であってもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は内視鏡を示しており、操作部1に連結された挿入部2内には、空気を通すための送気チューブ3、水を通すための送水チューブ4、処置具類を通すための鉗子チャンネルチューブ5、及び噴射水を通すための噴射用送水チューブ6等が挿通配置されている。
【0009】各チューブ3,4,5,6の先端部分は、挿入部2の先端部2aに接続固定されている。7は、送気チューブ3と送水チューブ4の出口に接続された送気送水ノズルである。
【0010】送気チューブ3と送水チューブ4の基端部分は、操作部1に設けられた送気送水操作弁11に接続固定され、鉗子チャンネルチューブ5の基端部分は、操作部1と挿入部2との連結部付近に突設された鉗子挿入口13に接続固定されている。
【0011】噴射用送水チューブ6の基端は操作部1の頭部に設けられた噴射水注入口14に接続固定されており、操作部1に設けられた吸引操作弁12と鉗子チャンネルチューブ5の基端部付近との間が接続チューブ8によって連通接続されている。その結果、鉗子チャンネルチューブ5は吸引管路としても兼用される。
【0012】操作部1に取り付けられた可撓性連結管16の先端には、図示されていないビデオプロセッサに接続されるコネクタ部17が取り付けられており、そのコネクタ部17の側面には、外部装置に接続される送気送水口金18と吸引口金19とが突設されている。
【0013】そして、可撓性連結管16内に挿通配置された給気チューブ21と給水チューブ22の両端が、コネクタ部17の送気送水口金18と操作部1の送気送水操作弁11とに接続固定され、吸引チューブ23の両端がコネクタ部17の吸引口金19と操作部1の吸引操作弁12とに接続固定されている。
【0014】このように内視鏡内に内蔵されたチューブ3,4,5,6,8,21,22,23は、いずれもFEP(パーフロロ(テトラフロロ)エチレンとヘキサフロロプロピレンの共重合体)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、又はPCTFE(ポリクロロトリフロロエチレン)等のフッ素樹脂製の可撓性チューブであり、150℃以上の耐熱性を有している。
【0015】そして、これらのチューブ3,4,5,6,8,21,22,23は、いづれも内視鏡に組み込まれる前に、引っ張り力がかからない状態においてアニール処理(焼きなまし熱処理)が施されている。
【0016】アニール処理が施されることにより、チューブ3,4,5,6,8,21,22,23は製造時に発生した伸び分だけ縮むので、内視鏡に組み込まれた後は、オートクレーブ滅菌等の際に何度加熱されても縮みが発生しない。
【0017】そのアニール処理は、チューブ3,4,5,6,8,21,22,23を、例えばオートクレーブ時の温度より高くてチューブの耐熱限界より低い130〜150℃の範囲(より好ましくは135〜145℃の範囲)の雰囲気中に、30分以上(実用的に2時間以上は無駄であり、好ましくは1時間程度)置くことによって十分な効果が得られる。
【0018】
【発明の効果】本発明によれば、内視鏡に内蔵されるフッ素樹脂製チューブを、内視鏡に組み込み前にアニール処理することにより、チューブが製造時に生じた伸び分だけ縮むので、内視鏡に組み込まれた後は、オートクレーブ滅菌等によって何度加熱されてもチューブに縮みが発生しない。したがって、内視鏡に対してオートクレーブによる十分な滅菌処理を繰り返し行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の内視鏡の全体配管図である。
【符号の説明】
3 送気チューブ
4 送水チューブ
5 鉗子チャンネルチューブ
6 噴射用送水チューブ
8 接続チューブ
21 給気チューブ
22 給水チューブ
23 吸引チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】流体又は処置具類等を通すために内蔵された可撓性チューブとしてフッ素樹脂製チューブが用いられた内視鏡において、上記チューブが、内視鏡に組み込み前にアニール処理されていることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】上記アニール処理は、上記チューブを、引っ張り力がかからない状態において130〜150℃の雰囲気中に所定時間置いて行われる請求項1記載の内視鏡。
【請求項3】上記所定時間が30分〜2時間である請求項2記載の内視鏡。

【図1】
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