説明

冊子及び綴じ機

【課題】展開可能な領域が制限される上に、開いた際に綴じた箇所に大きな力がかかるという不具合を解消または緩和することのできる冊子、及びこの冊子を作るための綴じ機を提供する。
【解決手段】折曲げ線P4を挟んで二つの領域を有する用紙Pが、前記折曲げ線P4を略合致させた状態で複数枚重ね合わせてあり、各用紙Pの一方の領域に、前記折曲げ線P4を基端として切り起こすことが可能な切り出し片P61、P71がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙Pの切り出し片P61、P71が相互に綴じられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新聞等の複数枚の用紙を綴じた冊子、及びこの冊子を作るための綴じ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の用紙を重ね合わせて冊子を作る場合、それら重ね合わせた用紙の綴じ元側の縁部よりも内側をステープル等で綴じ合わせるのが一般的である(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところが、このようなものでは、綴じた箇所よりも縁部側を開くことはできないので、展開可能な領域が狭くならざるを得ない。また、勢いよく開くと、その綴じた箇所に大きな力が作用し、その箇所が破損したり綴じた状態が解除されたりしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−228451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、展開可能な領域が制限される上に、開いた際に綴じた箇所に大きな力がかかるという不具合を解消または緩和することのできる冊子、及びこの冊子を作るための綴じ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る冊子は、折曲げ線を挟んで二つの領域を有する用紙が、前記折曲げ線を略合致させた状態で複数枚重ね合わせてあり、各用紙の一方の領域に、前記折曲げ線を基端として切り起こすことが可能な切り出し片がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙の切り出し片が相互に綴じられていることを特徴とする。
【0007】
ここで、「用紙」とは、シート状になっているものであれば、どのようなものであってもよく、紙製のものの他、プラスチック製、金属製、または木製のものも含まれる。
【0008】
また、「前記折曲げ線を基端として切り起こすことが可能な切り出し片」とは、綴じることが可能なものであれば、どのような形状、大きさのものであってもよく、その基端は、折曲げ線と完全に一致しているものに限らず、その折曲げ線付近に存在すればよい。
【0009】
このようなものであれば、完全な展開状態にすることが可能になるため、綴じられた用紙を大きく開くことができる。さらに、開いた際に、綴じた箇所に大きな力がかかるという不具合を解消または緩和することができる。
【0010】
具体的な一態様としては、前記一方の領域の切り出し片と干渉しない位置において、各用紙の他方の領域にも、前記折曲げ線を基端として切り起こすことが可能な切り出し片がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙の切り出し片が相互に綴じられているものが挙げられる。
【0011】
前記切り出し片としては、フックに掛けるための掛止孔を備えているものが好ましい。
【0012】
前記切り出し片に打ち抜き孔及びカット孔を形成するとともに、この打ち抜き孔から切り起こされた切起片をカット孔に挿通させることにより、複数枚の切り出し片が相互に綴じられているものが好適な一態様として挙げられる。
【0013】
請求項1〜4のいずれか1項記載の冊子を作るための綴じ機としては、用紙の折曲げ線付近に当てるアンビルと、このアンビルに対面させて配置され前記切り出し片を形成する外形抜き刃とを具備してなり、綴じるための操作力を利用して前記外形抜き刃を駆動させるようにしていることを特徴とするものが好ましい。
【0014】
請求項4記載の冊子を作るための綴じ機としては、用紙の折曲げ線付近に当てるアンビルと、このアンビルに対面させて配置され前記切り出し片を形成する外形抜き刃と、この外形抜き刃の内側に配され前記打ち抜き孔を形成するための抜き刃と、前記外形抜き刃の内側に配され前記カット孔を形成するための切込刃とを具備してなり、前記抜き刃及び切込刃により前記切り出し片を綴じるための操作力を利用して前記外形抜き刃を駆動させるようにしていることを特徴とするものが好ましい。
【0015】
また、冊子は、二つの領域を作ることが可能な用紙が、前記二つの領域の境界線を略合致させた状態で複数枚重ね合わせてあり、各用紙の一方の領域に、前記境界線を基端として切り起こすことが可能な切り出し片がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙の切り出し片が相互に綴じられていることを特徴とするものであればよい。
【0016】
請求項7記載の冊子を作るための綴じ機としては、用紙の前記境界線付近に当てるアンビルと、このアンビルに対面させて配置され前記切り出し片を形成する外形抜き刃とを具備してなり、綴じるための操作力を利用して前記外形抜き刃を駆動させるようにしていればよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、展開可能な領域が制限される上に、開いた際に綴じた箇所に大きな力がかかるという不具合を解消または緩和することのできる冊子、及びこの冊子を作るための綴じ機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかる冊子を示す斜視図。
【図2】同実施形態の冊子の平面図。
【図3】図2におけるA−A線断面図。
【図4】図2におけるB−B線断面図。
【図5】図2におけるC−C線断面図。
【図6】同実施形態の冊子及び綴じ機を示す作用説明図。
【図7】同実施形態の冊子の展開状態を示す作用説明図。
【図8】同実施形態の冊子の切り出し片を切り起こした状態を示す作用説明図。
【図9】図6のD−D線断面で示す作動説明図。
【図10】図6のD−D線断面で示す作動説明図。
【図11】図6のD−D線断面で示す作動説明図。
【図12】図6のD−D線断面で示す作動説明図。
【図13】図9の要部を示したE−E線端面図。
【図14】図6のF−F線断面で示す作動説明図。
【図15】図6のF−F線断面で示す作動説明図。
【図16】図6のF−F線断面で示す作動説明図。
【図17】図6のF−F線断面で示す作動説明図。
【図18】図6のG−G線断面で示す作動説明図。
【図19】図6のG−G線断面で示す作動説明図。
【図20】図6のG−G線断面で示す作動説明図。
【図21】図6のG−G線断面で示す作動説明図。
【図22】本発明の他の実施形態を示す図1に対応する斜視図。
【図23】本発明のさらに他の実施形態における要部を示す平面図。
【図24】本発明のさらに他の実施形態における要部を示す平面図。
【図25】本発明のさらに他の実施形態における要部を示す平面図。
【図26】本発明のさらに他の実施形態における要部を示す平面図。
【図27】本発明のさらに他の実施形態における要部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
<冊子>
この実施形態は、本発明を用紙Pの一つである新聞紙に適用した場合のものであり、複数枚の新聞紙を綴じることによって冊子Bを形成したものである。すなわち、この冊子Bは、図1ないし図8に示すように、折曲げ線P4を挟んで二つの領域を有する用紙Pが、前記折曲げ線P4を略合致させた状態で複数枚重ね合わせてあり、各用紙Pの一方の領域に、前記折曲げ線P4を基端として切り起こすことが可能な切り出し片P61がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙Pの切り出し片P61が相互に綴じられている。また、この冊子Bは、前記一方の領域の切り出し片P61と干渉しない位置において、各用紙Pの他方の領域にも、前記折曲げ線P4を基端として切り起こすことが可能な切り出し片P71がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙Pの切り出し片P71が相互に綴じられている。
【0021】
なお、この冊子Bは、切り出し片P61、P71が切り起こされているものには限られない。すなわち、図1ないし図5及び図8に示すように、例えば、重ね合わされた用紙Pのうち最も外側にある用紙Pの他方の領域と、この他方の領域に隣接する一方の領域に形成され前記最も外側にある用紙Pの切り出し片P61とが、略面一になる状態、すなわち、切り出し片P61、P71が完全に切り起こされた状態(以下、「完全切り起こし状態」と言う。)のものに限られない。例えば、図6及び図7に示すように、重ね合わされた用紙Pのうち最も外側にある用紙Pの一方の領域の他の部位P62と、前記最も外側にある用紙Pの一方の領域の切り出し片P61とが、略面一になる状態、すなわち、切り出し片P61、P71が用紙Pの他の部分P62から全く切り起こされていない状態(以下、「非切り起こし状態」と言う。)であってもよいのはもちろんである。以下、図示はしないが、前記完全切り起こし状態と前記非切り起こし状態との間の状態、すなわち、切り出し片P61、P71が少しだけ切り起こされている状態が考えられる。また、重ね合わされた用紙Pのうち最も外側にある用紙Pの他方の領域と、この他方の領域に隣接する一方の領域に形成され前記最も外側にある用紙Pの切り出し片P61とが、近接した状態、すなわち、切り出し片P61、P71が前記完全切り起こし状態を越えた状態も考えられる。さらに、切り出し片P61、P71が内側、すなわち図示実施形態とは逆側に切り起こされている状態であってもよく、その他、種々の姿勢をとり得るものである。
【0022】
前記用紙Pは、図1ないし図8に示すように、左右方向中央に前記折曲げ線P4を有した周知な構成をなす、例えばブランケット判の新聞紙であり、前記折曲げ線P4の右側に位置する一方の領域(以下、「右領域P6」と言う。)と、前記折曲げ線P4の左側に位置する他方の領域(以下、「左領域P7」と言う。)とは、同一の長方形状をなしている。右領域P6から切り出され左領域P7に折曲げ線P4を介して連続する第一の切り出し片P61は、用紙Pの下端付近に形成されている。一方、左領域P7から切り出され右領域P6に折曲げ線P4を介して連続する第二の切り出し片P71は、用紙Pの上端付近に形成されている。
【0023】
第一の切り出し片P61は、図1、図2及び図4ないし図8に示すように、右領域P6に設けられた外形スリットP63の内側に形成されたものである。この外形スリットP63は、両端が折曲げ線P4上に位置する略コ字形をなしている。第一の切り出し片P61は、前記外形スリットP63を介して右領域P6の他の部位P62と切り離されており、折曲げ線P4を基端として右領域P6から切り起こすことが可能な構成をなしている。複数枚の用紙Pの第一の切り出し片P61は、重ね合わせた状態で相互に綴じられている。具体的には、折曲げ線P4からそれぞれ一定距離離間した2箇所に接合部分P3を備えている。
【0024】
各接合部分P3は、図1、図2及び図5ないし図8に示すように、前記切り出し片P61に打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、この打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5をカット孔P2に挿通させることにより、複数枚の切り出し片P61が相互に綴じられている。すなわち、この接合部分P3は、切り出し片P61の一面側から貫入させた抜き刃42により各切り出し片P61に形成された打ち抜き孔P1と、この打ち抜き孔P1に隣接させて前記各切り出し片P61に形成されたスリット状のカット孔P2と、打ち抜き孔P1から切り出し片P61の他面側に切り起こされた切起片P5とから構成されている。そして、切起片P5の先端P51部分を、カット孔P2に貫通させて切り出し片P61の一面側に導出させることによって、複数枚の切り出し片P61が相互に接合されている。打ち抜き孔P1は、フックに掛けるための掛止孔として機能しているようになっている。カット孔P2は、切起片P5を主として係わり合わせるためのコ字状の第一のスリットP21と、この第一のスリットP21の途中から打ち抜き孔P1方向に屈曲して伸び略平行に対をなす第二のスリットP22とを備えている。
【0025】
換言すれば、第一の切り出し片P61は、図1、図2及び図4ないし図8に示すように、対をなす打ち抜き孔P1及びカット孔P2を備えており、一方の接合部分P3と他方の接合部分P3とは、互いに切起片P5の先端P51が向かい合うようにして前記折曲げ線P4と平行な仮想線上に配されている。そして、用紙Pを綴じた箇所が折り曲げ線P4よりも切り出し片P61側に設けられており、本実施形態においては、接合部分P3のうち少なくとも切起片P5の基端P52が、切り出し片P61上に設けられているとともに、切起片P5の先端P51が、切り出し片P61に重なり合うようになっている。
【0026】
第二の切り出し片P71は、図1、図2、図4及び図5に示すように、第一の切り出し片P61と用紙Pの中心を基準にして点対称の形態をなしている。そのため、第一の切り出し片P61と同一または対応する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
このような冊子Bであれば、用紙Pの折曲げ線P4に対応する綴じ元側の縁部P8と反綴じ元側の縁部P9との間に用紙Pを綴じた箇所、すなわち前記接合部分P3が存在しなくなるので、折曲げ線P4を境界にして右領域P6及び左領域P7の全面を見開くことができる。しかも、見開いた状態において、右領域P6と左領域P7とに相互に離間する力が作用しても、その力は折曲げ線P4部分に作用することになり、接合部分P3には力が作用しなくなる。そのため、接合部分P3に無理な力が作用して綴じた状態が外れたり破損したりすることを有効に防止することができる。
【0028】
<綴じ機1>
次いで、このような冊子Bを作るための綴じ機1について、図6及び図9ないし図21を参照して説明する。
【0029】
この綴じ機1は、図6及び図9ないし図21に示すように、用紙Pの折曲げ線P4付近に当てるアンビル5と、このアンビル5に対面させて配置され前記切り出し片P61、P71を形成する外形抜き刃45と、この外形抜き刃45の内側に配され前記打ち抜き孔P1を形成するための抜き刃42と、前記外形抜き刃45の内側に配され前記カット孔P2を形成するための切込刃43とを具備してなり、前記抜き刃42及び切込刃43により前記切り出し片P61、P71を綴じるための操作力を利用して前記外形抜き刃45を駆動させるようにしている。詳述すれば、この綴じ機1は、複数枚の用紙Pを接合して冊子Bを作るためのもので、待機位置(S)から一時的に突出側たる下方に移動することによって打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するための抜き刃42及び切込刃43と、抜き刃42及び切込刃43を待機位置(S)で収容する本体フレーム2と、抜き刃42及び切込刃43を保持し本体フレーム2に対して突没方向たる上下方向に昇降可能なスライド部材41と、この本体フレーム2の下端側に用紙Pを挿入するための隙間92を介して配されたアンビル5とを備えてなる。また、本体フレーム2には、操作ハンドル7が回動可能に取り付けてあるとともに、この本体フレーム2の内部には、操作ハンドル7に接続されたリンク機構8が収容してある。
【0030】
本体フレーム2は、図9ないし図12及び図14ないし図21に示すように、内部にスライド部材41及びリンク機構8を配する空間を備えた前ハウジング21と、この前ハウジング21の後側に一体的に形成された後ハウジング22とを備えてなる。
【0031】
前ハウジング21は、図9ないし図12及び図14ないし図21に示すように、上面及び下面を開放された箱形をなすもので、その内部に刃である抜き刃42、切込刃43及び外形抜き刃45を保持した後述するスライド部材41が昇降可能に収容されている。また、前ハウジング21の内部には、前記スライド部材41の下方に位置させて、用紙Pを押圧するための紙押さえ3が昇降可能に収容されている。
【0032】
紙押さえ3は、図9ないし図12及び図14ないし図21に示すように、前記隙間92に臨む底壁31と、この底壁31の周縁から上方に立ち上がる周壁32とを備えたものである。この紙押さえ3は、前記周壁32が前記前ハウジング21に支持されて、底壁31下面が前ハウジング21の下端と合致する退避位置(S)から、底壁31下面が用紙Pの上面に添設する紙押圧位置(P)までの間で、上下方向に移動し得るようになっている。前記底壁31には、前記スライド部材41に保持された抜き刃42、切込刃43及び外形抜き刃45が通過する刃挿通孔33が形成されている。
【0033】
スライド部材41は、図9ないし図21に示すように、抜き刃42、切込刃43及び外形抜き刃45を待機位置(S)と貫通位置(C)との間で昇降させるためのものであり、紙押さえ3の周壁32内側に該紙押さえ3と相対的に上下動可能に収容されている。スライド部材41の上面側には、リンク機構8を接続するためのリンク取付部411を備えている。スライド部材41の下面側には、抜き刃42を固定するための抜き刃取付部412と、切込刃43を固定するための切込刃取付部413と、外形抜き刃45を固定するための外形抜き刃取付部414とを備えている。なお、図9ないし図21では、抜き刃42、切込刃43及び外形抜き刃45を各取付部412、413、414に取り付けるためのピン等の止着具を省略している。また、スライド部材41は、抜き刃42、切込刃43及び外形抜き刃45が待機位置(S)にある状態で、前記紙押さえ3を前ハウジング21内に収容される待機位置(S)に懸吊保持するための係止部415を備えており、このスライド部材41と前記紙押さえ3との間には、その係止状態を維持する方向に弾性付勢するスプリング416が介在させてある。
【0034】
抜き刃42は、図6及び図9ないし図21に示すように、用紙Pに舌片状の切起片P5を形成するためのものであって、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られている。
【0035】
切込刃43は、図6及び図9ないし図21に示すように、H字形をなすスリットからなるカット孔P2を形成するものであって、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られている。切込刃43は、第1のスリットP21を形成するための第1のブレード431と、第1のブレード431の途中から打ち抜き孔P1の方向に延びる第2のスリットP22を形成するための第2のブレード432とを備えている。切込刃43の中央部分、より具体的には、切込刃43の第1のブレード431には、用紙Pから打ち抜かれた切起片P5を通過させ切起片P5を係わり合わせるための窓433が形成されている。
【0036】
インナーカム44は、図9ないし図12及び図14ないし図21に示すように、基端に軸441を有するとともに、先端に切起片P5を切込刃43に設けられた窓433に挿入させるための押し出し部442を備えたもので、その軸441が抜き刃42に支持されている。インナーカム44の基端には、該インナーカム44を回動させるためのアーム443が突出させてある。
【0037】
これら抜き刃42、切込刃43、及びインナーカム44は、2箇所の接合部分P3に対応させて2組設けられている。
【0038】
外形抜き刃45は、図6及び図9ないし図21に示すように、用紙Pに略コ字形の切り出し片P61を形成するためのものであって、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られている。この外形抜き刃45は、2組の抜き刃42、切込刃43及びインナーカム44を囲うような形状をなしている。
【0039】
以上のようなスライド部材41、抜き刃42、切込刃43、インナーカム44及び外形抜き刃45は、ユニット化されて刃ユニット4を構成しており、前記前ハウジング21内に収容されている。この前ハウジング21の後側には、後ハウジング22が一体に形成されている。
【0040】
後ハウジング22は、図9ないし図12に示すように、上方に開放された箱形をなすもので、その底部にアンビル5を取り付けるためのアンビル取付部23を備えている。
【0041】
アンビル5は、図9ないし図12及び図14ないし図21に示すように、基端部51を前記後ハウジング22に取り付けた状態で片持ち支持されており、アンビル5の上向き面と前記紙押さえ3の底壁31の下面との間に用紙Pを挿入するための隙間92が形成されている。アンビル5は、桿状のものであり、上面52における一側縁に、用紙Pの折曲げ線P4部分に密着して用紙Pを位置決めするための位置決め部58を備えてなる。具体的には、右領域P6に前記切り出し片P61を形成する際に、アンビル5の上面52に、右領域P6を支持する裏当て機能を担わせ、アンビル5の側面53及び底面54に、左領域P7を案内する案内機能を担わせている。そして、案内する左領域P7に折り目がつかないように、側面53と底面54との間に滑らかな面取り部59を形成している。アンビル5は、前記抜き刃42と協働して用紙Pに打ち抜き孔P1を穿設するための刃貫通孔55と、前記切込刃43が通過する孔である穿孔部56と、前記外形抜き刃45と協働して用紙Pに外形スリットP63を穿設するための外形貫通孔57とを備えている。本実施形態においては、アンビル5は、合成樹脂製のものであり、前記外形穿孔部56の縁を形成する部位のみは、金属板が用いられている。
【0042】
なお、符号6は、図9ないし図12及び図14ないし図21に示すように、アンビル5に巻き付けて位置決めされた用紙Pの位置ずれを防止するための押さえハンドルである。この押さえハンドル6は、後ハウジング22に枢着され、前記用紙Pを押さえる押圧位置(P)と、前記用紙Pと干渉しない退避位置(S)との間で回動可能になっている。
【0043】
このようなアンビル5及び押さえハンドル6を支持する本体フレーム2には、操作ハンドル7とリンク機構8とが支持されている。
【0044】
操作ハンドル7は、図9ないし図12に示すように、操作開始位置(S)と操作終了位置(L)との間で回動し得るように構成されたもので、基端部51が本体フレーム2の後ハウジング22に軸71を介して取り付けられている。なお、図15ないし図21では、操作ハンドル7を省略している。
【0045】
リンク機構8は、図9ないし図12に示すように、操作ハンドル7の回動動作をスライド部材41の昇降動作に変換するためのものである。このリンク機構8は、基端が軸を介して本体フレーム2に軸着され先端がスライド部材41のリンク取付部411に軸を介して取り付けられた第一リンクメンバ81と、この第一リンクメンバ81と前記操作ハンドル7とを連結する第二リンクメンバ82とを具備してなる。前記操作ハンドル7並びに前記第一リンクメンバ81及び第二リンクメンバ82は、図示しない復帰スプリングによって、操作ハンドル7が操作開始位置(S)に復帰する方向、換言すれば、抜き刃42、切込刃43及び外形抜き刃45が待機位置(S)に保持される方向に弾性付勢されている。なお、符号91は、押さえハンドル6が落下するのを防止するための懸吊メンバである。また、図19ないし図21では、第一リンクメンバ81を端面のみで模式的に示しているとともに、第二リンクメンバ82と懸吊メンバ91を省略している。
【0046】
<作動説明>
次に、この綴じ機1の作動を、図9ないし図21を参照して説明する。なお、図9と図14と図18、図10と図15と図19、図11と図16と図20、図12と図17と図21は、それぞれ対応している。
【0047】
まず、用紙Pの下端近傍に第一の切り出し片P61を形成して、それら第一の切り出し片P61同士を結合する場合について説明する。
【0048】
この場合、図9、図14及び図18に示すように、押さえハンドル6を退避位置(S)に下げた状態で、折曲げ線P4を介して折り畳んだ用紙Pの折り曲げ部分内側に、その用紙Pの下端側から前記本体フレーム2に片持ち支持されているアンビル5の先端側を挿入し、右領域P6の折曲げ線P4近傍部分をアンビル5の上向面により内面側から裏当て支持する。用紙Pの左領域P7は、アンビル5に巻き付けるようにし、その巻き付けた左領域P7をアンビル5と押さえハンドル6とにより挟持して用紙Pを固定する。この状態で操作ハンドル7を操作して、綴じ動作を行う。
【0049】
操作ハンドル7を操作しない状態では、スライド部材41が上限位置に保持されており、インナーカム44が抜き刃42内に収容された初期姿勢(S)を保っている。
【0050】
この状態から、操作ハンドル7を下方に操作すると、この操作ハンドル7に加えられた力が、リンク機構8を通じてスライド部材41の下方への動きに変換して伝えられる。
【0051】
詳述すれば、スライド部材41が下方に移動を始めると、図10、図15及び図19に示すように、スライド部材41とともに紙押さえ3が降下し、紙押さえ3の底壁31下面が用紙Pの上面に当接する。この状態からさらにスライド部材41が下方に移動すると、紙押さえ3が用紙Pを押圧した紙押圧位置(P)で停止する。それとともに、スライド部材41がスプリング416を縮小させながら降下し、このスライド部材41に取り付けられた抜き刃42、切込刃43及び外形抜き刃45の先端P51が用紙Pに貫通し、その用紙Pに打ち抜き孔P1、カット孔P2及び外形スリットP63が穿孔される。穿孔後さらに、抜き刃42、切込刃43及び外形抜き刃45が降下すると、図11、図16及び図20に示すように、抜き刃42の内部に配されるインナーカム44のアーム443が紙押さえ3の底壁31に設けられた係止部34に当接し、インナーカム44とスライド部材41との間に配されるスプリング444の付勢力に抗して、インナーカム44が回動姿勢(K)まで回動する。その結果、打ち抜き孔P1から用紙Pの他面側に切り起こされた切起片P5の先端P51側が、切込刃43の窓433に挿入される。
【0052】
ついで、操作ハンドル7への操作を解除すると、図示しない復帰スプリングの付勢力により刃ユニット4が抜き取り方向に移動を始め、前記スプリング444の付勢力によりインナーカム44が回動姿勢(K)から初期姿勢(S)に復帰する。そして、図12、図17及び図21に示すように、抜き刃42、切込刃43及び外形抜き刃45が、復帰スプリングの付勢力により没入側たる上方に移動し、抜き刃42、切込刃43及び外形抜き刃45が用紙Pから抜き取られる。その際に、切込刃43の窓433に挿入されている切起片P5がカット孔P2を通過して用紙Pの一面側に抜き出され、切込刃43により複数の用紙Pの切り出し片P61が結合される。
【0053】
次に、用紙Pの上端近傍に第二の切り出し片P71を形成して、それら第二の切り出し片P71同士を結合する場合、押さえハンドル6を退避位置(S)に下げた状態で、片持ち支持されているアンビル5の先端側を折曲げ線P4を介して折り畳んだ用紙Pの折り曲げ部分内側に用紙Pの上端側から挿入し、左領域P7の折曲げ線P4近傍部分をアンビル5の上向面により内面側から裏当て支持する。用紙Pの右領域P6は、アンビル5に巻き付けるようにし、その巻き付けた右領域P6をアンビル5と押さえハンドル6とにより挟持して用紙Pを固定する。この状態で上述したのと同様に操作ハンドル7を操作して、綴じ動作を行う。
【0054】
<本実施形態の効果>
以上に述べたように、本実施形態に係る冊子Bは、折曲げ線P4を挟んで二つの領域を有する用紙Pが、前記折曲げ線P4を略合致させた状態で複数枚重ね合わせてあり、各用紙Pの一方の領域に、前記折曲げ線P4を基端として切り起こすことが可能な切り出し片P61がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙Pの切り出し片P61が相互に綴じられているので、従来のような綴じた箇所よりも縁部側を開くことはできないという問題を解消するとともに、勢いよく開いた際にも、その綴じた箇所に大きな力が作用することなく、その箇所が破損したり綴じた状態が解除されたりしまうという問題を解消することができる。そのため、本実施形態に示したような2つ折りにされた新聞紙を、容易にまとめておくことができるとともに、読む際には全面的に展開することができる。また、綴じ状態を解除したい場合には、例えば、前記切り出し片P61を切断または綴じた箇所の解除、具体的には各接合部分P3における切起片P5の先端P51部分とカット孔P2との係わり合いを解く動作をすればよい。このようにすれば、従来の金属製の針を用いた綴じ方法に比べて廃棄の際の分離作業が簡素化される。
【0055】
また、前記一方の領域の切り出し片P61と干渉しない位置において、各用紙Pの他方の領域にも、前記折曲げ線P4を基端として切り起こすことが可能な切り出し片P71がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙Pの切り出し片P71が相互に綴じられているので、本実施形態で示したブランケット判(406mm×546mm)等の比較的大きな用紙Pであっても、綴じ状態を維持することができる。また、上下2箇所を一種類の綴じ機1で綴じることが可能であり、このような綴じ機1を用いた場合には、右領域P6に連続する切り出し片P71と左領域P7に連続する切り出し片P61とをバランス良く形成することができる。
【0056】
本実施形態の切り出し片P61、P71は、フックに掛けるための掛止孔を備えているので、この掛止孔を用いてフック等に引っ掛けることができる。そのため、新聞紙の折曲げ線P4部分に孔を備えたクリップを取り付ける等する必要がなくなる。また、この掛止孔に紐等を通して複数の切り出し片P61、P71を綴じたり、複数の冊子Bを束ねて綴じたりするようにしてもよい。
【0057】
特に、前記切り出し片P61、P71に打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、この打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5をカット孔P2に挿通させることにより、複数枚の切り出し片P61、P71が相互に綴じられているので、打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5によって複数の用紙Pを接合しているので、ステープルの役割をなす切起片P5と用紙Pとが同質のものとなる。そのため、廃棄する際にステープルを除去する必要がなく、用紙Pから金属製の針等を除去する細かな作業が不要となり、多くの冊子Bを廃棄する場合であっても多大な労力と時間を要することなく廃棄することが可能になる。
【0058】
また、本実施形態の綴じ機1は、用紙Pの折曲げ線P4付近に当てるアンビル5と、このアンビル5に対面させて配置され前記切り出し片P61、P71を形成する外形抜き刃45と、この外形抜き刃45の内側に配され前記打ち抜き孔P1を形成するための抜き刃42と、前記外形抜き刃45の内側に配され前記カット孔P2を形成するための切込刃43とを具備してなり、前記抜き刃42及び切込刃43により前記切り出し片P61、P71を綴じるための操作力を利用して前記外形抜き刃45を駆動させるようにしているので、一度の動作で切り出し片P61、P71を形成するとともに、それらの切り出し片P61、P71同士を綴じることも可能である。
【0059】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0060】
切り出し片は、一方の領域と他方の領域のそれぞれから切り起こされたものに限られず、例えば、図22で示すような複数の切り出し片P61、P71をともに一方の領域P6から切り起こしたものや、複数の切り出し片をともに他方の領域から切り起こしたものであってもよい。しかしながら、上述した実施形態のようものであれば、一方の領域と他方の領域とに同じ切り出し片形成用の装置を用いて切り出し片を形成することができる。さらに、このようなものであれば、冊子を左右対称形状にすることができるため、冊子を開いたり、フック等に引っ掛けたりするにあたって、冊子としてバランスのよいものとすることができるという効果が得られる。なお、前述した図22ならびに以下説明する図23ないし図27については、上記実施形態に対応する構成要素には、本実施形態と同様の符号を付して示すものとし、具体的な説明を省略する。
【0061】
図23ないし図27に示す実施形態は、切り出し片に設けられる綴じ箇所の形成方法のバリエーションを示している。
【0062】
図23に示すものは、第一の切り出し片P61が、対をなす打ち抜き孔P1及びカット孔P2を備えており、一方の接合部分P3と他方の接合部分P3とは、互いに切起片P5の基端P52が向かい合うようにして前記折曲げ線P4と平行な仮想線上に配されている。具体的に説明すれば、各接合部分P3は、切起片P5の基端P52から先端P51に至る仮想線が前記折り曲げ線P4と平行になるように配されている。
【0063】
図24に示すものは、第一の切り出し片P61が、対をなす打ち抜き孔P1及びカット孔P2を備えており、一方の接合部分P3と他方の接合部分P3とは、互いに切起片P5の先端P51が同じ方向を向くようにして前記折曲げ線P4と平行な仮想線上に配されている。具体的に説明すれば、各接合部分P3は、各切起片P5の先端P51が冊子Bの下端側に向いており、各接合部分P3は、切起片P5の基端P52から先端P51に至る仮想線が前記折り曲げ線P4と平行になるように配されている。
【0064】
図25に示すものは、第一の切り出し片P61が、対をなす打ち抜き孔P1及びカット孔P2を備えており、一方の接合部分P3と他方の接合部分P3とは、互いに切起片P5の先端P51が同じ方向を向くようにして前記折曲げ線P4と平行な仮想線上に配されている。具体的に説明すれば、各接合部分P3は、各切起片P5の先端P51が冊子Bの外側方向、すなわち切り出し片P61の延出方向に向いており、切起片P5の基端P52から先端P51に至る仮想線が前記折り曲げ線P4と直交するように配されている。
【0065】
図26に示すものは、第一の切り出し片P61が、対をなす打ち抜き孔P1及びカット孔P2を備えており、一方の接合部分P3と他方の接合部分P3とは、互いに切起片P5の先端P51が同じ方向を向くようにして前記折曲げ線P4と平行な仮想線上に配されている。具体的に説明すれば、各接合部分P3は、各切起片P5の先端P51が冊子Bの内側方向、すなわち折り曲げ線P4側に向いており、各接合部分P3は、切起片P5の基端P52から先端P51に至る仮想線が前記折り曲げ線P4と直交するように配されている。
【0066】
図27に示すものは、第一の切り出し片P61が、対をなす打ち抜き孔P1及びカット孔P2を備えており、一方の接合部分P3と他方の接合部分P3とは、互いに切起片P5の先端P51が同じ方向を向くようにして前記折曲げ線P4と平行な仮想線上に配されている。具体的に説明すれば、各接合部分P3は、各切起片P5の先端P51が冊子Bの外側方向、すなわち切り出し片P61の延出方向に向いており、切起片P5の基端P52から先端P51に至る仮想線が前記折り曲げ線P4と直交するように配されている。さらに、この実施形態では、打ち抜き孔P1が第一の切り出し片P61と他方の領域P7に亘って形成されている。すなわち、打ち抜き孔P1が前記折り曲げ線P4を挟んで両側に亘って形成されている。
【0067】
また、図示はしないが、図2及び図23ないし図27の変形例として、各接合部分に関して、切起片の基端から先端に至る仮想線が前記折り曲げ線と平行、または直交するように配されているもの以外にも、切起片の基端から先端に至る仮想線が前記折り曲げ線と所定の角度をなすように傾斜して配されているものが考えられる。換言すれば、前記打ち抜き孔、カット孔、切起片が前記折り曲げ線に対して斜め方向に伸びて形成されているものであってもよい。特に、図27に対応させて傾斜させる場合には、打ち抜き孔が第一の切り出し片と他方の領域に亘って、すなわち前記折り曲げ線を挟んで両側に亘って形成され、前記切起片の基端全体が切り出し片側に設けられるものであればよい。なお、このように、単一の切り出し片に対して複数の接合部分が設けられるものにおいて、切起片の基端から先端に至る仮想線が前記折り曲げ線と所定の角度をなすように傾斜して配されている場合、各接合部分同士の配置は平行、直交、その他所定の角度をなすもの等種々変更可能である。
【0068】
以上説明した図23ないし図27によれば、切り出し片P61と接合部分P3との関係は、接合部分P3のうち、切起片P5の基端P52が前記折り曲げ線P4上、または、折り曲げ線P4よりも切り出し片P61側に設けられるものであれば、どのようなものであってもよい。このようなものであれば、上述した実施形態に準じた効果が得られる。そのため、切起片P5の基端P52が切り出し片P61上に形成されるものであれば、図示例に限られず、種々変更可能である。特に、切起片P5を用いた綴じ方をする場合には、切起片P5の基端P52全体、換言すれば、打ち抜き孔P1の基端部における幅方向全体が、折り曲げ線P4よりも外側に設けられるとともに、カット孔P2が前記折り曲げ線P4よりも外側に設けられるものであればよい。
【0069】
また、切起片P5を用いない綴じ方を採用する場合には、その綴じた箇所が、前記折り曲げ線P4上、または、折り曲げ線P4よりも切り出し片P61側に設けられるものであればどのようなものであってもよい。さらに、第二の切り出し片P71についても、第一の切り出し片P61と同一の綴じ方には限られず種々変更可能である。
【0070】
また、図2及び図23ないし図27は、単一の切り出し片に対して複数の接合部分を備えたものについて説明したが、単一の切り出し片に対して単一の綴じ箇所を備えたものや、単一の切り出し片に対して3以上の複数の綴じ箇所を備えたものに適用してもよいのはもちろんである。また、単一の切り出し片に対して複数種類の綴じ方法を採用するものであってもよい。
【0071】
上述した実施形態における用紙の「上」、「下」、「左」、「右」という文言は、新聞である用紙を読む姿勢を基準にして便宜上付けたものである。したがって、その方向については、本実施形態に示したものと異なるものであってもよい。
【0072】
また、本発明は、冊子を作るための用紙としては、折り曲げ線を備えていないものであってもよい。すなわち、二つの領域を作ることが可能な用紙が、前記二つの領域の境界線を略合致させた状態で複数枚重ね合わせてあり、各用紙の一方の領域に、前記境界線を基端として切り起こすことが可能な切り出し片がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙の切り出し片が相互に綴じられているものであれば、上述した実施形態に準じた効果が得られる。すなわち、通常の見開き動作において、切り出し片の綴じた箇所には無理な力がかかることがなくなる。このような冊子を作るための綴じ機としては、用紙の前記境界線付近に当てるアンビルを備えたものが好ましい。
【0073】
用紙は、少なくとも2つの領域をもっていればよく、綴じ元側の縁部以外の縁部の外側にさらに他の領域を備えているものであってもよい。一方の領域と他方の領域とは、必ずしも同じ大きさでなくてもよい。また、用紙は、新聞紙に限らず種々変更可能である。
【0074】
冊子は、1または複数の切り出し片を備えたものであってよく、各切り出し片について1または複数の綴じ箇所を備えたものであってもよい。また、切り出し片の形成される位置についても、本実施形態に示したものに限られず種々変更可能である。単一の切り出し片を形成する場合の一例としては、用紙の上下方向中間部に単一の切り出し片を備えたものや、用紙の上端部または下端部のいずれか一方のみに単一の切り出し片を備えたものや、それ以外の用紙の上下方向中間よりやや上側の部位またはやや下側の部位に単一の切り出し片を備えたもの等が考えられる。また、複数の切り出し片を形成する場合であっても、用紙の上端部、下端部、中間部、中間よりやや上側の部位、中間よりやや下側の部位のうち、選択した任意の箇所に切り出し片を備えたものであればどのようなものであってもよい。このように、切り出し片の形成される位置は、用紙の大きさや形状に合わせて変形可能である。
【0075】
また、本発明は、本実施形態で示したような方式で綴じるものに限らず、従来の金属製の針であるステープル、のり、テープ、クリップ、紐、面ファスナ、または縫合等によって綴じるものであってもよい。
【0076】
綴じ機も、前記実施形態のものに限らず、種々変更可能であり、用紙の折曲げ線付近に当てるアンビルと、このアンビルに対面させて配置され前記切り出し片を形成する外形抜き刃とを具備してなり、綴じるための操作力を利用して前記外形抜き刃を駆動させるようにたものであればどのようなものであってもよいが、前記実施形態のようなものであると、用紙の一端近傍と他端近傍に切り出し片を容易に形成して綴じることができる。綴じる動作を利用して切り出し片を形成する綴じ機としては、金属製の針を用いるステープラと外形抜き刃とを組み合わせたものや、のりと外形抜き刃とを組み合わせたものや、紐等を通すための穴あけパンチと外形抜き刃とを組み合わせたもの等も考えられる。
【0077】
本実施形態では、切起片をカット孔に挿入して用紙を綴じる方法について説明したが、この場合、前記実施形態に限られず、以下のようなものであってもよい。
【0078】
すなわち、綴じ機は、複数の切込刃を備えたものや、複数の抜き刃を備えたものであってもよい。例えば、複数の切起片を形成するための単一の抜き刃と、前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記複数の切起片を係止可能なカット孔を形成するための単一の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものであってもよい。
【0079】
また、これら切込刃及び抜き刃の突没方向は、上述した実施形態に示すように、切込刃及び抜き刃の突出側を下方とし没入側を上方とするものに限られず、例えば、上下を逆向きにして、切込刃及び抜き刃の突出側を上方とし、没入側を下方として使用することも可能である。さらに、抜き刃及び切込刃の移動方向は、一時的に上方に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものや、左右方向、または斜め方向に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものであってもよい。例えば、上述した実施形態のものと上下を逆にした仕様のものも考えられる。この仕様の綴じ機は、前述した実施形態における「上方」、「下方」、「上昇」、「降下」、「上面」、「下面」、「上側」、または「下側」を、それぞれ「下方」、「上方」、「降下」、「上昇」、「下面」、「上面」、「下側」、または「上側」と読み替えた構造をなしている。
【0080】
刃ユニットは、切込刃、抜き刃、及びインナーカムの3ピース構造のみならず、切込刃及び抜き刃の2ピース構造であってもよい。この際、抜き刃は、穿孔姿勢から回動姿勢までの間で回動可能に設けられ穿孔姿勢において打ち抜き孔を形成し得るものとするのが好ましい。
【0081】
カット孔、及びこれに対応する切込刃の形状は、上述したものに限られない。例えば、メインスリットのみを有する一直線状、または曲線状のものや、略コ字状をなすもの等種々変更可能である。また、打ち抜き孔、及びこれに対応する抜き刃や切起片の形状は、上述した先端部を円弧状にしたものの他に、三角形状にしたものや矢尻形状にしたもの等種々変更可能である。
【0082】
また、前記実施形態では、操作ハンドル及び押さえハンドルを手動で操作するものについて説明したが、電動等別の動力で作動させるものであってもよい。
【0083】
アンビルは、一端が本体フレームに取り付けられたものに限られず、例えば、本体フレームと機械的に分離しているものであってもよい。このようなものであれば、用紙の下端や上端の特定箇所に限られず、用紙の端から少し離れた所望の箇所でも綴じ動作を行うことができる。すなわち、用紙の一面側に配したアンビルの上向き面と、用紙の他面側に配した本体フレームまたは紙押さえの下向き面との間に隙間が形成されることとなる。
【0084】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0085】
B…冊子
P…用紙
P1…打ち抜き孔
P2…カット孔
P4…折曲げ線
P5…切起片
P6…一方の領域(右領域)
P7…他方の領域(左領域)
P61、P71…切り出し片
1…綴じ機
42…抜き刃
43…切込刃
45…外形抜き刃
5…アンビル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折曲げ線を挟んで二つの領域を有する用紙が、前記折曲げ線を略合致させた状態で複数枚重ね合わせてあり、各用紙の一方の領域に、前記折曲げ線を基端として切り起こすことが可能な切り出し片がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙の切り出し片が相互に綴じられていることを特徴とする冊子。
【請求項2】
前記一方の領域の切り出し片と干渉しない位置において、各用紙の他方の領域にも、前記折曲げ線を基端として切り起こすことが可能な切り出し片がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙の切り出し片が相互に綴じられている請求項1記載の冊子。
【請求項3】
前記切り出し片が、フックに掛けるための掛止孔を備えている請求項1または2記載の冊子。
【請求項4】
前記切り出し片に打ち抜き孔及びカット孔を形成するとともに、この打ち抜き孔から切り起こされた切起片をカット孔に挿通させることにより、複数枚の切り出し片が相互に綴じられている請求項1、2または3記載の冊子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の冊子を作るための綴じ機であって、
用紙の折曲げ線付近に当てるアンビルと、このアンビルに対面させて配置され前記切り出し片を形成する外形抜き刃とを具備してなり、綴じるための操作力を利用して前記外形抜き刃を駆動させるようにしていることを特徴とする綴じ機。
【請求項6】
請求項4記載の冊子を作るための綴じ機であって、
用紙の折曲げ線付近に当てるアンビルと、このアンビルに対面させて配置され前記切り出し片を形成する外形抜き刃と、この外形抜き刃の内側に配され前記打ち抜き孔を形成するための抜き刃と、前記外形抜き刃の内側に配され前記カット孔を形成するための切込刃とを具備してなり、前記抜き刃及び切込刃により前記切り出し片を綴じるための操作力を利用して前記外形抜き刃を駆動させるようにしていることを特徴とする綴じ機。
【請求項7】
二つの領域を作ることが可能な用紙が、前記二つの領域の境界線を略合致させた状態で複数枚重ね合わせてあり、各用紙の一方の領域に、前記境界線を基端として切り起こすことが可能な切り出し片がそれぞれ形成されており、前記複数枚の用紙の切り出し片が相互に綴じられていることを特徴とする冊子。
【請求項8】
請求項7記載の冊子を作るための綴じ機であって、
用紙の前記境界線付近に当てるアンビルと、このアンビルに対面させて配置され前記切り出し片を形成する外形抜き刃とを具備してなり、綴じるための操作力を利用して前記外形抜き刃を駆動させるようにしていることを特徴とする綴じ機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2012−218175(P2012−218175A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82726(P2011−82726)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】