説明

再生フロアパネル及びその製造方法並びに製造装置

【課題】パネル本体の頂面に接着層を介して表面材を装着したフロアパネルから表面材及び接着層を剥離した後、そのパネル本体の頂面に新接着層を介して新表面材を装着した際、新品と同等以上の接着強度が得られる再生フロアパネルを提供する。
【解決手段】フロアパネルから劣化した表面材及び接着層を剥離した後、そのパネル本体2の頂面21に塗布される新接着層3は、パネル本体2の縁部22と平行な複数の帯状の接着部31と、各接着部31同士の間の筋状の空隙部32とから構成されている。新接着層3の上に新表面材4を載置して押圧した際、筋状の空隙部32内の空気が圧縮されても、筋状の空隙部32内の空気の容積は非常に小さいため、新表面材4を剥離させる程の復元力は生じない。よって、新表面材4がパネル本体2に適正に接着された状態が安定して長期に亘って保持され、新品のフロアパネルと同等以上の接着強度が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル本体の頂面に接着層を介して表面材を装着したフロアパネルから表面材及び接着層を剥離した後、そのパネル本体の頂面に新接着層を介して新表面材を装着した再生フロアパネル及びその製造方法並びに製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータールーム、電算室、データセンター等の床に敷設されるフロアパネル(フリーアクセスフロアパネル等)として、平面視矩形の頂面を有するパネル本体と、パネル本体の頂面に接着層を介して装着された薄板状の表面材とを備えたものが知られている(特許文献1、2、3参照)。かかるフロアパネルのパネル本体は、丈夫なアルミ合金等から形成されており、頂面が表面材で覆われているため、経年使用によって損傷することは少ない。しかし、表面材は、塩化ビニル樹脂等のプラスチックから形成された所謂Pタイルが用いられることが多く、経年使用によって摩耗や損傷が生じる。
【0003】
フロアパネルの表面材が摩耗・損傷(劣化)した場合、従来、表面材のみを交換するのではなく、傷んでいないパネル本体を含めたフロアパネル全体(表面材+パネル本体)を交換していた。その理由は、劣化した表面材及び接着層をパネル本体から剥離して、そのパネル本体の頂面に新たな表面材を接着してリユース(再利用)する場合、一般的に行われているスプレー接着方式では、以下に述べるような問題が生じるからである。
【0004】
図1(a)はスプレー接着方式によって製造される再生フロアパネル1xの分解斜視図、図1(b)はその再生フロアパネル1xの側面図である。スプレー接着方式においては、経年使用によって劣化した表面材及び接着層(共に図示せず)をパネル本体2から剥離した後、そのパネル本体2の頂面21にスプレーによって霧状の接着剤を吹き付け、吹き付けにより形成された新接着層3xの上に新表面材4を載せて押圧し、その新表面材4をパネル本体2に接着する。
【0005】
ここで、接着剤をスプレーによってパネル本体2の頂面21に隈無く吹き付けるためには、パネル本体2から多少はみ出して吹き付ける必要がある。このため、霧状の接着剤がパネル本体2の周囲に飛散してしまい、作業環境が悪化する。スプレー接着方式により再生フロアパネル1xを量産すると、霧状の接着剤の飛散量が増加して作業環境の悪化が著しく、排気設備等の大規模な対策が必要となってコストアップが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平7−46668号公報
【特許文献2】実用新案登録第3028405号公報
【特許文献3】特開2006−52542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者は、接着剤をスプレーによってパネル本体2の頂面21に吹き付けるのではなく、接着剤をパネル本体2の頂面21に塗布する技術(塗布接着方式)を創案した。図2(a)は塗布接着方式によって製造される再生フロアパネル1yの分解斜視図、図2(b)はその再生フロアパネル1yの側面図、図3は接着剤塗布装置5yの斜視図である。この塗布接着方式においては、劣化した表面材及び接着層(共に図示せず)をパネル本体2から剥離した後、そのパネル本体2の頂面21に接着剤塗布装置5yによって接着剤を間隔を隔てて複数畝状(凸状)に塗布し、こうして塗布された接着剤の畝(凸部)3yの上に新表面材4を載せて押圧し、その新表面材4をパネル本体2に接着するようにしている。
【0008】
接着剤塗布装置5yは、表面材及び接着層を剥離したパネル本体2が載置されそのパネル本体2を縁部22に沿って直線状に案内するガイド61を有する送り台6と、送り台6に載置されたパネル本体2の上方にパネル本体2を横切って配置されたダム板7yと、ダム板7yの前方(パネル本体2の送り方向上流側)のパネル本体2の頂面21に貯留された接着剤8とを備えている。ダム板7yは、略長方形状に形成されており、ダム板7yの両端は、ガイド61に設けられた平板状の金具62に取り付けられている。金具62には、接着剤8がパネル本体2の頂面21の両脇から漏れることを防止するための防漏板63が取り付けられている。ダム板7yの下端には、長手方向に間隔を隔てて凹部(山状、三角状等)71yが複数形成されており、凹部71y以外のダム板7yの下端の直線状部分72yがパネル本体2の頂面21に接触されている。
【0009】
かかる構成によれば、パネル本体2の頂面21に接着剤8を貯留させた状態で、そのパネル本体2の手前端部23を図示しないシリンダ(エア、油圧等)により矢印Xで示すようにガイド61に沿って押し出すことで、接着剤8が、パネル本体2の頂面21とダム板7yの下端との間に巻き込まれながら凹部71yを通過し、凹部71yの形状に合わせてパネル本体2の頂面21に間隔を隔てて平行に複数畝状(凸状)に塗布され、接着剤の畝3yが形成される。この塗布接着方式においては、スプレー接着方式と異なり霧状の接着剤が飛散することが無いため作業環境が悪化することはなく、加えて、接着剤8がダム板7yの凹部71yを通過する際にパネル本体2の頂面21に擦り付けられるため、接着剤8がパネル本体2の頂面21に馴染んで食い付きが向上し、スプレー接着方式よりも接着力が増すと考えられた。
【0010】
しかし乍ら、この塗布接着方式においては、本発明者の研究によれば、十分な接着力が得られないという問題が生じることが分かった。この点を図4(a)〜図4(d)を用いて説明する。図4(a)は接着剤塗布装置5yによってパネル本体2の頂面21に塗布された接着剤の畝3yを示す図、図4(b)は接着剤の畝3yの上に新表面材4を載置する様子を示す図、図4(c)は載置した新表面材4を押圧する様子を示す図、図4(d)は押圧によって新表面材4が接着された再生フロアパネル1yの側面図である。
【0011】
図4(c)に示すように、新表面材4を接着剤の畝3yの上に載せると、隣り合う接着剤の畝3yと表面材4の下面41とパネル本体2の頂面21とによって囲われた空間Sが生じる。この状態で表面材4を押圧して図4(d)に示すように表面材4をパネル本体2の頂面21に密着させると、上述した空間Sの容積が小さく潰されることになって内部の空気が圧縮される。ここで、空間S内の空気の一部は隣り合う接着剤の畝3y同士の間の長手方向の端部から排気されるものの十分排気されるとは言えず、また隣り合う畝3y(接着剤)同士が押圧に伴って繋がると排気が妨げられるため、上述した空間S内にて空気が高圧に圧縮される。
【0012】
この結果、表面材4を押圧した直後は、接着剤の接着力によって図4(d)のように表面材4がパネル本体2の頂面21に密着した状態が保持されるものの、時間の経過に伴って空間S内にて圧縮された空気の復元力によって、接着剤の一部が剥離し、表面材4の一部が上方に膨らんでしまう。このため、十分な接着強度(新品と同様の接着強度)が得られないという問題が生じる。また、再生フロアパネル1yの表面材4の所々に膨らみ部が生じると、外観上見苦しい上、物を水平に載せられないという問題も生じる。
【0013】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、パネル本体の頂面に接着層を介して表面材を装着したフロアパネルから表面材及び接着層を剥離した後、そのパネル本体の頂面に新接着層を介して新表面材を装着した際、新品と同等以上の接着強度が得られる再生フロアパネル及びその製造方法並びに製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために創案された本発明に係る再生フロアパネルは、矩形の頂面を有するパネル本体とパネル本体の頂面に接着層を介して装着された薄板状の表面材とを備えたフロアパネルから表面材及び接着層を剥離し、そのパネル本体の頂面に新接着層を介して新表面材を装着して成る再生フロアパネルであって、新接着層が、パネル本体の頂面にその縁部に対して平行に複数配設された帯状の接着部と、これら接着部同士の間に形成され縁部に対して平行な筋状の空隙部とを有することを特徴とする再生フロアパネルである。
【0015】
この再生フロアパネルにおいては、新表面材を剥離することで露出する空隙部の幅が0.05mm以上0.7mm以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る再生フロアパネルの製造方法は、矩形の頂面を有するパネル本体とパネル本体の頂面に接着層を介して装着された薄板状の表面材とを備えたフロアパネルから表面材及び接着層を剥離した後、そのパネル本体の頂面に新接着層を介して新表面材を装着する再生フロアパネルの製造方法であって、パネル本体をその縁部に沿って直線状に案内するガイドを有する送り台と、送り台に載置されたパネル本体の上方に、パネル本体を横切って配置されたダム板とを用い、ダム板が、長手方向に間隔を隔てて下方に突出された複数の突起を有し、突起がパネル本体の頂面に接触されており、ダム板の前方のパネル本体の頂面に接着剤を貯留させた状態で、パネル本体を送り台上にて直線状に送り出すことで、接着剤をダム板の各突起同士の間にてパネル本体の頂面に帯状に塗布して接着部を形成すると共に突起の部分にて接着剤を塗布しない筋状の空隙部を形成し、これら帯状の接着部及び筋状の空隙部から成る新接着層の上に新表面材を載置して押圧することを特徴とする再生フロアパネルの製造方法である。
【0017】
また、本発明に係る再生フロアパネルの製造装置は、矩形の頂面を有するパネル本体とパネル本体の頂面に接着層を介して装着された薄板状の表面材とを備えたフロアパネルから表面材及び接着層を剥離した後、そのパネル本体の頂面に新接着層を介して新表面材を装着する際に用いる再生フロアパネルの製造装置であって、パネル本体をその縁部に沿って直線状に案内するガイドを有する送り台と、送り台に載置されたパネル本体の上方に、パネル本体を横切って配置されたダム板と、ダム板の前方のパネル本体の頂面に貯留される接着剤とを備え、ダム板が、長手方向に間隔を隔てて下方に突出された複数の突起を有し、突起がパネル本体の頂面に接触していることを特徴とする再生フロアパネルの製造装置である。
【0018】
この再生フロアパネルの製造装置においては、突起の幅が0.1mm以上1mm以下であることが好ましく、また、突起の幅と高さとが等しくてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、フロアパネルから劣化した表面材及び接着層を剥離した後、そのパネル本体の頂面に塗布される新接着層は、帯状の接着部と、接着部同士の間の筋状の空隙部とから構成されている。このため、新接着層の上に新表面材を載置して押圧した際に、筋状の空隙部内の空気が圧縮されても、筋状の空隙部内の空気の容積は従来の畝状の接着剤同士の間の空間(図4(c)参照)内の空気の容積よりも遙かに小さいため、新表面材を剥離させる程の復元力は生じない。この結果、本発明に係る再生フロアパネルは、新表面材がパネル本体に適正に接着された状態が安定して長期に亘って保持され、新品のフロアパネルと同等以上の接着強度が得られる。また、再生フロアパネルの新表面材に、見苦しく且つ物を水平に置くことを妨げる膨らみ部が生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態ではない第1比較例を示す再生フロアパネルの説明図であり、(a)は第1比較例に係る再生フロアパネルの分解斜視図、(b)はその再生フロアパネルの側面図である。
【図2】本発明の実施形態ではない第2比較例を示す再生フロアパネルの説明図であり、(a)は第2比較例に係る再生フロアパネルの分解斜視図、(b)はその再生フロアパネルの側面図である。
【図3】第2比較例に係る再生フロアパネルのパネル本体に新接着層を塗布する再生フロアパネルの製造装置(接着剤塗布装置)を示す斜視図である。
【図4】第2比較例に係る再生フロアパネルのパネル本体に新接着層を介して新表面材を装着する工程を示す説明図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程、(d)は第4工程を夫々示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る再生フロアパネルの説明図であり、(a)は本実施形態に係る再生フロアパネルの分解斜視図、(b)はその再生フロアパネルの側面図である。
【図6】本実施形態に係る再生フロアパネルのパネル本体に新接着層を塗布する再生フロアパネルの製造装置(接着剤塗布装置)を示す斜視図である。
【図7】本実施形態に係る再生フロアパネルのパネル本体に新接着層を介して新表面材を装着する工程を示す説明図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程、(d)は第4工程を夫々示す側面図である。
【図8】本実施形態に係る再生フロアパネルの接着強度(剥離強度)を測定するための試験片の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
(再生フロアパネル)
本発明の一実施形態に係る再生フロアパネル1を図5(a)、図5(b)を用いて説明する。図5(a)は本実施形態に係る再生フロアパネル1の分解斜視図、図5(b)はその再生フロアパネル1の側面図である。再生フロアパネル1は、既述のように、経年使用したフロアパネルの表面材及び接着層(共に図示せず)をパネル本体2から剥離した後、そのパネル本体2の頂面21に新接着層3を介して新表面材4を装着して構成される。
【0023】
パネル本体2は、矩形(本実施形態では正方形)の頂面21を有する上部パネル本体24と、四隅に下方に突出した脚部25が形成された下部パネル本体26とを有し、例えばアルミ合金を原料とした鋳造又はダイカスト等により、上部パネル本体24及び下部パネル本体26が一体的に成形されている。但し、パネル本体2の材料はアルミ合金に限定されることはなく、鉄や樹脂等を用いてパネル本体2を成形してもよい。
【0024】
パネル本体2の頂面21には、新接着層3を介して新表面材4が装着される。新表面材4は、パネル本体2の頂面21の形状・大きさに応じて形成された矩形(本実施形態では正方形)の薄板状の板体から成り、例えば塩化ビニル樹脂等のプラスチックから形成された所謂Pタイルが用いられる。新表面材4には、Pタイルの他、帯電防止タイル、導電タイル、長尺シート、タイルカーペット等、様々な素材のものを用いることができる。新表面材4は、経年使用により劣化して剥離した元の表面材と同様の素材・色彩・模様であってもよいが、異なった素材・色彩・模様でもよい。素材・色彩・模様を異ならせることで、内装替えの効果が得られる。
【0025】
パネル本体2の頂面21に塗布される新接着層3は、パネル本体2の頂面21にその縁部22に対して平行に複数配設された帯状の接着部31と、これら接着部31同士の間に形成され縁部22に対して平行な筋状の空隙部32とを有している。このような帯状の接着部31と筋状の空隙部32とから成る新接着層3の上に新表面材4が載置され、押圧されることで新表面材4がパネル本体2の頂面21に接着され、再生フロアパネル1となる。この再生フロアパネル1から新表面材4を剥離することで露出する空隙部32の幅は、本実施形態では0.15mmであり、後述するように0.05mm以上0.7mm以下の範囲が好ましい。また、本実施形態の新接着層3においては、空隙部32の幅と接着部31の接着剤の厚さとが等しくなっているが、これらは異なっていてもよい。
【0026】
(再生フロアパネルの製造装置)
上述の再生フロアパネル1は、図6に示す再生フロアパネル1の製造装置(接着剤塗布装置)5を用いて製造される。すなわち、この製造装置5は、表面材及び接着層を剥離したパネル本体2の頂面に新接着層3を介して新表面材4を装着するに際して、上述した新接着層3をパネル本体2の頂面21に形成(塗布)するために用いられる。
【0027】
本実施形態に係る製造装置(接着剤塗布装置)5は、図3を用いて既述した接着剤塗布装置5yと比べると、ダム板7の構成が異なり、その他は同一の構成となっている。よって、同一の構成要素には同一の符号を付して簡単な説明に止め、ダム板7の部分について詳細に説明する。この製造装置5は、パネル本体2をその縁部22に沿って直線状に案内する送り台6と、送り台6に載置されたパネル本体2の上方に、パネル本体2を横切って配置されたダム板7と、ダム板7の前方のパネル本体2の頂面21に貯留される接着剤8とを備えている。
【0028】
送り台6は、パネル本体2がスライド可能に載置される送り台本体64と、送り台本体64の幅方向両側に設けられパネル本体2の縁部(上部パネル本体24の側部)22に接してパネル本体2を直線状に案内するガイド(ガイド板)61とを有する。ガイド61には、ダム板7の両端を支持するための平板状の金具62が設けられている。金具62には、パネル本体2の頂面21に貯留された接着剤8がパネル本体2の送り出しに伴って頂面21の両脇から漏れることを防止するための防漏板63が取り付けられている。なお、防漏板63は、金具62及びガイド61の少なくとも一方に取り付けられていればよい。
【0029】
ダム板7は、略長方形状に形成されており、長手方向に間隔を隔てて下方に突出された複数の突起71を有し、突起71がパネル本体2の頂面21に接触している。詳しくは、ダム板7は、可撓性を有する材質(バネ鋼等)から成り、突起71がパネル本体2の頂面21に押し付けられて僅かに撓むように金具62に取り付けられており、突起71以外のダム板7の下端の直線状部分72がパネル本体2の頂面21から突起71の高さに応じて離間している。突起71の幅は、本実施形態では0.2mmに設定されており、後述するように0.1mm以上1mm以下の範囲が好ましい。また、突起71の幅と高さとを等しくしてもよい。なお、ダム板7の下端に上述の如き突起71を設けてもよい。
【0030】
(再生フロアパネルの製造方法)
上述の製造装置5を用いた再生フロアパネル1の製造方法を述べる。経年使用したフロアパネルから劣化した表面材及び接着層を剥離した後、そのパネル本体2を図6に示すように送り台6にセットする。そして、ダム板7の前方のパネル本体2の頂面21に接着剤8を貯留させた状態で、パネル本体2の端部23を図示しないシリンダ(エア、油圧等)により矢印Xで示すようにガイド61に沿って押し出す。
【0031】
すると、接着剤8が、パネル本体2の頂面21とダム板7の下端との間に巻き込まれながら突起71同士の間の直線状部分72を通過する。これにより、パネル本体2の頂面21に、接着剤がダム板7の各突起71同士の間にて帯状に塗布されて接着部31が形成されると共に、突起71の部分にて接着剤が塗布されない筋状の空隙部32が形成される。帯状の接着部31の厚さは、突起71の高さに応じた厚さとなり、筋状の空隙部32の幅は、突起71の幅に応じた幅となる。帯状の接着部31と筋状の空隙部32とは、パネル本体2の縁部22に対して平行に複数交互に形成され、これらが新接着層3となる。
【0032】
パネル本体2をある程度(例えばパネル本体2の長さの80%程度)押し出したならば、そのパネル本体2の頂面21にダム板7の下端の突起71が押し付けられている状態で、押し出しを一旦中止し、押し出し用のシリンダを縮退させて送り台6上に次のパネル本体(次に新接着層を塗布するパネル本体)をセットするためのスペースを作り、そのスペースに次のパネル本体2をセットし、同様の押し出し作業を再開する。このように、前のパネル本体2に次のパネル本体2を連ねるようにセットしてそれらを一体的に押し出すことで、セットされるパネル本体2の頂面21に新接着層3を次々と連続して塗布できる。
【0033】
図7(a)〜図7(d)に、新接着層3の上に新表面材4を装着する工程を示す。上述の製造装置5を用いて、図7(a)に示すように帯状の接着部31と筋状の空隙部32とから成る新接着層3をパネル本体2の頂面21に形成した後、図7(b)に示すようにその新接着層3の上に新表面材4を載置し、図7(c)に示すように新表面材4を押圧して、図7(d)に示すように新表面材4をパネル本体2に接着する。こうして、図5に示す本実施形態に係る再生フロアパネル1が製造される。
【0034】
(作用・効果)
本実施形態に係る再生フロアパネル1においては、経年使用したフロアパネルから劣化した表面材及び接着層を剥離した後、そのパネル本体2の頂面21に塗布される新接着層3は、帯状の接着部31と、接着部31同士の間の筋状の空隙部32とから構成されている。よって、図7(c)に示すように新接着層3の上に新表面材4を載置して押圧した際に、筋状の空隙部32内の空気が圧縮されても、筋状の空隙部32内の空気の容積は従来の接着剤の畝3y同士の間の空間S(図4(c)参照)内の空気の容積よりも遙かに小さいため、図7(d)において新表面材4を剥離させる程の復元力は生じない。この結果、本実施形態に係る再生フロアパネル1は、新表面材4がパネル本体2に適正に接着された状態が安定して長期に亘って保持され、新品のフロアパネルと同等以上の接着強度が得られる。また、再生フロアパネル1の新表面材4に、圧縮された空気が復元することで部分的に生じる膨らみ部が形成されることはない。
【0035】
図7(a)〜図7(c)において、新表面材4が押圧される前の空隙部32の幅は、図6に示す接着剤塗布装置5のダム板7の突起71の幅に相当する。ここで、突起71の幅が1mmを超えて大きく、筋状の空隙部32の幅が1mmを超えて広い場合、空隙部32内の空気の容積が大きくなって図7(d)に示すようにその空気が圧縮された際の復元力が新表面材4を剥離させる程度に大きくなる可能性がある。このため、ダム板7の突起71の幅は1mm以下が好ましい。また、突起71の幅が0.1mmよりも小さい場合、図6に示すように突起71がパネル本体2の頂面21に押し付けられた状態でパネル本体2が送り出されると、突起71が短期間で損傷又は摩滅してしまうという問題が生じる。このため、ダム板7の突起71の幅は、0.1mm以上が好ましい。すなわち、ダム板7の突起71の幅は、0.1mm以上1mm以下が好ましい。
【0036】
ダム板7の突起71の幅を0.1mmとすると、図7(a)〜図7(c)に示すように新表面材4が押圧される前の空隙部32の幅は0.1mmとなるが、図7(d)に示すように新表面材4が押圧されると帯状の接着部31が押し潰されて横に広がるため、空隙部32の幅は0.05mm程度(50%程度)まで狭まる。よって、再生フロアパネル1から新表面材4を剥離することで露出する空隙部32の幅は0.05mmとなる。また、ダム板7の突起71の幅を1mmとすると、同様に、新表面材4が押圧される前の空隙部32の幅は1mmとなるが、新表面材4が押圧されると空隙部32の幅は0.7mm程度(70%程度)となる。よって、再生フロアパネル1から新表面材4を剥離することで露出する空隙部32の幅は0.7mmとなる。すなわち、再生フロアパネル1から新表面材4を剥離することで露出する空隙部32の幅は、0.05mm以上0.7mm以下が好ましい。本実施形態では、ダム板7の突起71の幅が0.2mm、再生フロアパネル1から新表面材4を剥離することで露出する空隙部32の幅が0.15mmとなっている。なお、本段落においては、ダム板7の突起71の幅と高さとは等しいものとする。
【0037】
本実施形態に係る再生フロアパネル1における新表面材4のパネル本体2に対する接着強度(剥離強度)を測定した。測定手順を説明すると、先ず、上述した実施形態により製造された正方形(60cm×60cm)の再生フロアパネル1の新表面材4の上にローラーを載置し、200kgの負荷を加えて3万回往復移動させる(ローリングロード)。その後、図8に示すように、再生フロアパネル1の新表面材4の任意の部分(例えば9箇所)に、パネル本体2の頂面21に達するまで4cm×4cmの正方形の切れ込みを入れ、それらを試験片(4a〜4i)とする。そして、各試験片4a〜4iを上方に引っ張り上げて各試験片4a〜4iがパネル本体2から剥離するときの力を測定した。その結果を以下に記す。
【0038】
試験片(4cm×4cm) 剥離するときの力(kN:キロニュートン)
4a 4.39
4b 5.09
4c 4.07
4d 4.43
4e 5.13
4f 4.57
4g 3.95
4h 4.41
4i 4.11
(平均) (4.46)
【0039】
一方、図2〜図4に示すように接着剤を畝3yとした場合の再生フロアパネル1yにおいても、同様にして新表面材4のパネル本体2に対する接着強度(剥離強度)を測定した所、4cm×4cm試験片(4a〜4i)が剥離するときの力は、試験片の場所によってばらつきが大きく、2kN或いはそれを下回る力で剥離してしまう試験片もあった。その理由は、図4(d)にて、接着剤の畝3y同士の間の空間Sに空気(圧縮された空気)が閉じ込められた部分における新表面材4上に試験片が位置すると、その試験片の接着強度が著しく低下することによる。
【0040】
これに対し、図5〜図7に示す本実施形態の再生フロアパネル1においては、試験片(4a〜4i)が剥離するときの力は、前々段落に記したように試験片の場所によってそれ程ばらつくことなく安定しており、略4kN以上となっている。その理由は、既述のように、図7(c)において筋状の空隙部32内の空気の容積は従来の接着剤の畝3y同士の間の空間S(図4(c)参照)内の空気の容積よりも遙かに小さいため、新表面材4が押圧されて筋状の空隙部32内の空気が圧縮されても、新表面材4を剥離させる程の復元力が生じず、その筋状の空隙部32上の新表面材4に試験片が位置しても、その試験片の接着強度が極端に低下しないからである。
【0041】
この結果、本実施形態に係る再生フロアパネル1の試験片(4a〜4i)の接着強度は、ばらつくことなく略4〜5kN/(4cm×4cm)となり、平均4.46kN/(4cm×4cm)となって、試験片の場所によらず安定して十分な接着強度を有することになった。
【0042】
本実施形態に再生フロアパネル1によれば、経年使用によって劣化した表面材のみを交換しても新品と同等以上の接着強度が得られる。よって、フロアパネル全体(表面材+パネル本体2)を交換する必要はなく、パネル本体2を再利用でき、フロアパネル全体を交換する従来施工と比べて50%程度のコストダウンを推進できる。また、パネル本体2をそのまま再利用することで、フロアパネル全体を交換する従来施工の場合に行われていたパネル本体(アルミ合金製等)2の再溶融や再鋳造等が不要となるので、従来施工と比べCO2排出量を大幅に削減できる。また、アルミ合金を再利用することは、限りある天然資源の有効利用にも資する。再生フロアパネル1は、パネル本体2が劣化しない限り、これまで説明したようにして更に再生でき、繰り返し再生することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、パネル本体の頂面に接着層を介して表面材を装着したフロアパネルから表面材及び接着層を剥離した後、そのパネル本体の頂面に新接着層を介して新表面材を装着した再生フロアパネル及びその製造方法並びに製造装置に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 再生フロアパネル
2 パネル本体
21 頂面
22 縁部
3 新接着層
31 帯状の接着部
32 筋状の空隙部
4 新表面材
5 再生フロアパネルの製造装置(接着剤塗布装置)
6 送り台
61 ガイド
7 ダム板
71 突起
8 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の頂面を有するパネル本体と該パネル本体の頂面に接着層を介して装着された薄板状の表面材とを備えたフロアパネルから前記表面材及び前記接着層を剥離し、そのパネル本体の頂面に新接着層を介して新表面材を装着して成る再生フロアパネルであって、
前記新接着層が、前記パネル本体の頂面にその縁部に対して平行に複数配設された帯状の接着部と、これら接着部同士の間に形成され前記縁部に対して平行な筋状の空隙部とを有することを特徴とする再生フロアパネル。
【請求項2】
前記新表面材を剥離することで露出する前記空隙部の幅が0.05mm以上0.7mm以下である請求項1に記載の再生フロアパネル。
【請求項3】
矩形の頂面を有するパネル本体と該パネル本体の頂面に接着層を介して装着された薄板状の表面材とを備えたフロアパネルから前記表面材及び前記接着層を剥離した後、そのパネル本体の頂面に新接着層を介して新表面材を装着する再生フロアパネルの製造方法であって、
前記パネル本体をその縁部に沿って直線状に案内するガイドを有する送り台と、該送り台に載置されたパネル本体の上方に、該パネル本体を横切って配置されたダム板とを用い、該ダム板が、長手方向に間隔を隔てて下方に突出された複数の突起を有し、該突起が前記パネル本体の頂面に接触されており、
前記ダム板の前方の前記パネル本体の頂面に接着剤を貯留させた状態で、前記パネル本体を前記送り台上にて直線状に送り出すことで、前記接着剤を前記ダム板の各突起同士の間にて前記パネル本体の頂面に帯状に塗布して接着部を形成すると共に前記突起の部分にて前記接着剤を塗布しない筋状の空隙部を形成し、
これら帯状の接着部及び筋状の空隙部から成る新接着層の上に新表面材を載置して押圧することを特徴とする再生フロアパネルの製造方法。
【請求項4】
矩形の頂面を有するパネル本体と該パネル本体の頂面に接着層を介して装着された薄板状の表面材とを備えたフロアパネルから前記表面材及び前記接着層を剥離した後、そのパネル本体の頂面に新接着層を介して新表面材を装着する際に用いる再生フロアパネルの製造装置であって、
前記パネル本体をその縁部に沿って直線状に案内するガイドを有する送り台と、該送り台に載置されたパネル本体の上方に、該パネル本体を横切って配置されたダム板と、該ダム板の前方の前記パネル本体の頂面に貯留される接着剤とを備え、
前記ダム板が、長手方向に間隔を隔てて下方に突出された複数の突起を有し、該突起が前記パネル本体の頂面に接触していることを特徴とする再生フロアパネルの製造装置。
【請求項5】
前記突起の幅が0.1mm以上1mm以下である請求項4に記載の再生フロアパネルの製造装置。
【請求項6】
前記突起の幅と高さとが等しい請求項4又は5に記載の再生フロアパネルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−40470(P2013−40470A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176912(P2011−176912)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(511198081)インテリアいとう有限会社 (1)
【Fターム(参考)】