説明

再生鋳物砂の製造方法

【課題】作業中の粉塵の飛散を防止し、かつ粘結剤等の不純物の除去性を向上できる再生鋳物砂の製造方法を提供する。
【解決手段】鋳造後に回収された鋳物砂を再生する再生鋳物砂の製造方法であって、易破砕粒体の存在下に前記回収された鋳物砂を乾式研磨再生機により研磨する研磨工程を有し、前記研磨工程前の前記易破砕粒体の平均粒径が100μm以上である、再生鋳物砂の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造後に回収された鋳物砂を再生する再生鋳物砂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造後の鋳物砂を回収し、該鋳物砂の表面に付着した粘結剤を除去する再生処理を行った上で、再生鋳物砂として再度鋳造に使用することは公知であり、そのための方法も多数公知となっている。例えば、乾式研磨再生機を用い砂粒子間相互の摩擦のみで再生する方法や、乾式研磨再生機を用い砂粒子間相互の摩擦に加えて砂粒子を押圧することでより強固に再生する方法がある。
【0003】
乾式研磨再生機を用いた鋳物砂の再生方法として、特許文献1では、鋳造後に回収された球形ムライト砂を流動層式乾燥機に掛けて乾燥球形ムライト砂にした後、粒子間摩擦式再生機に投入する球形ムライト砂の再生方法において、粒子間摩擦式再生機へ乾燥球形ムライト砂を投入すると同時に研磨剤として球形ムライト砂の粒径よりも小さい粒径のセラミックス粉を投入して球形ムライト砂の再生を促進させる方法が提案されている。上記研磨剤として粒径5〜70μmのセラミックス粉が使用されている。
【0004】
特許文献2では、鋳造後に回収された鋳物砂に微細粒体を添加して、機械式再生装置を用いて再生する方法において、前記微細粒体として、その粒径が5〜50μmであり、その主成分が珪砂、ジルコン砂、クロマイト砂、オリビン砂又は鉄である金属粒を用いる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−167643号公報
【特許文献2】特許第4305833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載の方法では、回収された鋳物砂に研磨剤や微細粒体を添加する際、それらの粒径によっては多量の粉塵が飛散して、作業環境が悪化する可能性があった。また、特許文献1,2に記載の方法では、鋳物砂の表面に付着した粘結剤の除去が未だ不充分であり、再生後の鋳物砂を用いて得られる鋳型の強度が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は、作業中の粉塵の飛散を防止し、かつ粘結剤等の不純物の除去性を向上できる再生鋳物砂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の再生鋳物砂の製造方法は、鋳造後に回収された鋳物砂を再生する再生鋳物砂の製造方法であって、易破砕粒体の存在下に前記回収された鋳物砂を乾式研磨再生機により研磨する研磨工程を有し、前記研磨工程前の前記易破砕粒体の平均粒径が100μm以上である、再生鋳物砂の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の再生鋳物砂の製造方法によれば、作業中の粉塵の飛散を防止できるため、作業環境の悪化を防止できる。また、粘結剤等の不純物の除去性を向上できるため、例えば再生後の鋳物砂を用いて得られる鋳型の強度(以下、鋳型強度ともいう)を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<鋳物砂>
本発明に使用される鋳物砂は、鋳造後に回収された鋳物砂である限り特に限定されない。例えば、シリカ、アルミナ、ムライト、ステアタイト、アルミナシリケート等を成分として含む天然砂や人工砂が使用できる。なかでも、アルミナ、ムライト、ステアタイト及びアルミナシリケートから選択される一種以上を80重量%以上含む鋳物砂は表面が硬く、かつ、形状が球形に近いために、鋳物砂表面に付着した粘結剤が鋳物砂から分離しにくくなる傾向にある。よって、鋳物砂としてアルミナ、ムライト、ステアタイト及びアルミナシリケートから選択される一種以上を80重量%以上含む鋳物砂を用いると、本発明の上記効果(不純物の除去性の向上)がより一層発揮されるため好ましい。なお、本発明に使用される鋳物砂は、1回以上回収された鋳物砂であればよく、回収される回数は限定されない。また、本発明の方法で得られた再生鋳物砂(以下、再生砂ともいう)や、本発明の方法以外の再生方法を用いて再生された鋳物砂を用いて鋳型を作製し、鋳造後、回収した鋳物砂を用いてもよい。
【0011】
<易破砕粒体>
本発明における「易破砕粒体」とは、研磨工程において破砕し易い粒体を指す。例えば、中空粒子、小粒子の凝集粒子、内部亀裂のある粒子などを易破砕粒体として用いることができる。粒体が破砕し易いか否かは、以下に示す破砕性指数Aで評価できる。即ち、研磨工程前の試料(粒体)を目開きが53μmのメッシュで篩い、該メッシュ上にたまった部分、すなわち粒径が53μm以上の試料50gと、直径10mmの真球状のアルミナ製ボール1000gとを、内径120mm、内のり105mmのアルミナ製ボールミルに入れ、ユニバーサルボールミル型式UB−32(ヤマト科学社製)を用いて、回転速度120rpmで10分間粉砕する。そして、破砕した試料を目開きが53μmのメッシュで篩い、該メッシュを通過した試料の重量(篩下重量)を測定し、下式から算出される値を破砕性指数Aとする。なお、破砕性指数Aが高いほど、破砕し易い粒体であると評価できる。
破砕性指数A=粉砕後の53μmメッシュの篩下重量(g)/50×100
【0012】
上記のように、易破砕粒体は破砕しやすいものなので、通常研磨には向かないと考えられるが、破砕されて微細な粉末になると、被研磨物と接触することによって、意外な事に、被研磨物の表面に存在する不純物が効率よく除去される。しかも、易破砕粒体は通常の作業時には、粉塵を発生することなく、乾式研磨再生機の内部では容易に微細な粉末になりやすく、乾式研磨再生機外への微細な粉末の除去も容易であるという特徴がある。
【0013】
本発明では、易破砕粒体の存在下に前記回収された鋳物砂を乾式研磨再生機により研磨する研磨工程を行う。本発明では、研磨工程において、鋳物砂表面に残存した粘結剤等の不純物が易破砕粒体の破砕片に付着することによって、該不純物が鋳物砂へ再付着するのを防ぐと共に鋳物砂との分離を促進できると考えられる。これにより、本発明は不純物の除去性を向上できると考えられ、その結果、鋳型強度が向上するものと考えられる。
【0014】
本発明で使用される易破砕粒体は、易破砕性の観点、即ち、鋳物砂表面に残存した粘結剤等の不純物を易破砕粒体の破砕片に付着させて不純物の除去性を向上させる観点から、破砕性指数Aが50以上であることが好ましく、55以上であることがより好ましく、60以上であることが更に好ましい。なお、粉塵発生を防止する観点からは、易破砕粒体の破砕性指数Aは、95以下であることが好ましい。
【0015】
易破砕粒体の具体例としては、シラスバルーン、内部亀裂を多く持つ珪砂やオリビン砂、あるいは素焼陶片、バーキュライト、軽石等が例示できる。また、上記粉砕性指数Aが50以上になるように粒子強度が調整された粒子を製造しても構わない。例えば、粒径53μm未満の細かい粒子から造粒物を製造したり、粒径70μm超の粒子に粉砕しやすいように傷を入れる等の方法が考えられる。造粒法としては、粒径53μm未満の細かい粒子をスラリー状にし、スプレードライ法で適度な粒子強度の造粒物を作る方法や、造粒時に気体を熱膨張させて粒子内部に空間を形成する方法などが挙げられる。本発明で使用される易破砕粒体は、鋳物砂表面に残存した粘結剤等の不純物の除去性向上の観点から、シラスバルーン、内部亀裂を多く持つ珪砂、及び素焼陶片から選択される一種以上が好ましい。
【0016】
易破砕粒体の平均粒径は、粉塵の飛散防止の観点、及び易破砕粒体の流動性を向上させて定量的な添加を容易にする観点から、100μm以上であり、150μm以上であることが好ましく、170μm以上であることがより好ましい。また、砂再生機への投入の容易さ、及び砂再生機内で効率良く破砕を達成させる観点から、易破砕粒体の平均粒径は、2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。なお、易破砕粒体の平均粒径は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0017】
粉塵の飛散は、回収された鋳物砂に易破砕粒体を添加する際に最も多くなる傾向にあるため、本発明により奏される粉塵の飛散防止効果を有効に発揮させるには、回収された鋳物砂に易破砕粒体を添加して研磨工程を行うことが好ましい。
【0018】
また、上記易破砕粒体は、研磨工程前の該易破砕粒体の粒度分布において、粒径53μm未満の粒体の割合が9.0重量%以下の粒体であることが好ましい。この場合、粉塵の原因となる粒径の小さな粒体の割合が少ないため、回収された鋳物砂に易破砕粒体を添加する際、あるいは、回収された鋳物砂と易破砕粒体とを含む添加剤混合砂を乾式研磨再生機に投入する際、粉塵の飛散を効果的に防止できる。これにより、作業環境の悪化を効果的に防止できる。
【0019】
本発明では、粉塵の飛散防止の観点から、上記粒径53μm未満の粒体の割合は、7.0重量%以下であることがより好ましく、2.0重量%以下であることが更に好ましい。なお、易破砕粒体の生産性向上の観点から、上記粒径53μm未満の粒体の割合は、0.01重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましい。
【0020】
回収された鋳物砂100重量部に対する易破砕粒体の添加量は、鋳物砂表面に残存した粘結剤等の不純物の除去性向上の観点、及びコスト低減の観点から、1〜10重量部であることが好ましく、2〜7重量部であることがより好ましく、3〜5重量部であることが更に好ましい。
【0021】
<乾式研磨再生機>
研磨工程で使用される乾式研磨再生機としては、鋳物砂の再生に使用できるものであれば特に限定されず、例えば垂直軸回転型再生機や水平軸回転型再生機等が使用できる。また、上記乾式研磨再生機は、特公昭57−42411号公報に示すような粒子間相互の摩擦のみで再生を行う乾式研磨再生機であってもよく、特許第3125272号公報に示すような粒子間相互の摩擦に加えて粒子を押圧することでより強固に再生を行う乾式研磨再生機であってもよい。なかでも、再生機内で易破砕粒体が破砕され微粉となった後に易破砕粒体を除去する観点から、砂を研磨する工程の後にダストを除去する手段をもつ再生機を使用することが好ましい。
【0022】
<研磨工程>
以下に、本発明の研磨工程の一例について説明する。まず、回収された鋳物砂に易破砕粒体を添加する。この際、易破砕粒体は、鋳物砂全体に均等に添加されるのが望ましい。均等に添加するためには、例えば、振動フィーダ上で鋳物砂を搬送しながら易破砕粒体を定量添加するなど、公知の方法を使用して行えばよい。
【0023】
次に、前記易破砕粒体を添加した前記鋳物砂を、乾式研磨再生機を使用して研磨する。研磨の際、鋳物砂は、砂粒子間相互の摩擦作用により砂粒子表面に付着した粘結剤等の不純物が剥離されるが、上記不純物が易破砕粒体の破砕片に付着することによって、易破砕粒体を添加しない場合と比較してより強力に上記不純物の剥離・除去を行うことができると考えられる。
【0024】
研磨の際、上記不純物の除去性向上の観点から、乾式研磨再生機の回転ドラムの回転数が200rpm以上であることが好ましく、300rpm以上であることがより好ましく、400rpm以上であることが更に好ましい。また、再生機の発熱や再生機の部品の消耗を防止する観点から、上記回転ドラムの回転数が3000rpm以下であることが好ましく、2000rpm以下であることがより好ましく、1000rpm以下であることが更に好ましい。
【0025】
なお、本発明では、易破砕粒体を添加する前に、予め鋳物砂のみで研磨を行い(予備研磨)、該予備研磨を行った後の鋳物砂に易破砕粒体を添加し、上述した研磨工程を行ってもよい。
【0026】
また、本発明では、鋳型強度の向上の観点から、研磨工程中及び/又は研磨工程後において、破砕された易破砕粒体を除去することが好ましい。なお、破砕された易破砕粒体を除去する方法は、特に限定されず、篩分けにより除去する方法、風力分級により除去する方法等で行うことができる。
【0027】
上述した方法によって得られた再生砂は、鋳型強度が低下しない程度に残存した易破砕粒体を含んでいてもよいが、鋳型強度を向上させる観点から、再生砂中に残存した易破砕粒体の含有量が、再生砂中、2.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以下であることが更に好ましい。なお、易破砕粒体の除去に要するコストを低減する観点からは、残存した易破砕粒体の含有量が、再生砂中、0.001重量%以上であることが好ましく、0.01重量%以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。なお、各粒体の平均粒径は以下に示す方法で測定した
【0029】
<シリカ粉の平均粒径>
シリカ粉の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−920、堀場製作所社製)を使用し、下記の測定条件で測定されたメジアン径(D50)とした。測定条件は下記の通りである。
測定方法:フロー法
分散媒:蒸留水
分散方法:攪拌、内蔵超音波3分
試料濃度:2mg/100mL
相対屈折率:1.16
【0030】
<シラスバルーン、珪砂(アルバニー8号)、回収砂及び再生砂の平均粒径>
シラスバルーン及びアルバニー8号の平均粒径は、下記表1に示した目開きのメッシュを用いて試料を篩にかけ、累積篩下重量の割合(重量%)を測定した後、横軸を目開きの対数値、縦軸を累積篩下重量の割合(重量%)とする累積グラフを作成し、該累積グラフから読み取ったメジアン径(D50)とした。回収砂及び再生砂の平均粒径は、下記表2に示した目開きのメッシュを用いて同様に測定した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
表2に示すように、各実施例及び各比較例から得られた再生砂において75μm以下の微粉の残留は殆どなかった。
【0034】
(実施例1)
球状人工セラミック鋳物砂(ルナモスMS#50、花王クエーカー社製)100重量部に、アルカリフェノール樹脂用硬化剤(カオーステップDH−25、花王クエーカー社製)0.39重量部と、アルカリフェノール樹脂(カオーステップSL−6010、花王クエーカー社製)1.3重量部とを加えて攪拌し、サンド/メタルの重量比が4の鋳型を造型した。前記球状人工セラミック鋳物砂は、球形度が0.99、Al/SiO(重量比)が1.9、SiO及びAlの合計量が94重量%(その他は、TiO:2.9重量%、Fe:1.3重量%、及び微量のCaO、MgO、NaO、KOを含む。)であった。本鋳型に1400℃にて鋳鉄溶湯(FC200)を注湯し、冷却後、鋳型をクラッシャーで処理して、平均粒径247μmの回収砂を得た。前記回収砂100重量部に、添加剤としてシラスバルーン(ウインライトWB−9011、アクシーズケミカル社製、平均粒径181μm、粒径53μm未満の粒体の割合:6.5重量%)4重量部を添加して混合し、得られた混合砂をUSR型乾式研磨再生機(新東工業社製)に投入速度25kg/分にて投入し、回転ドラムの回転数を500rpmに設定し、乾式研磨及び流動槽と集塵機によるダストの除去からなる処理を2回繰返して再生砂を得た。なお、再生砂中のシラスバルーンの残存量は0.2重量%であった。該残存量は、再生砂を顕微鏡にて観察し、残存するシラスバルーン粒子の個数及び大きさから算出した。以下で説明する他の例における添加剤の残存量についても同様に算出した。
【0035】
(比較例1)
シラスバルーンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に行い比較例1の再生砂を得た。
【0036】
(比較例2)
添加剤としてシラスバルーンの代わりにシリカ粉(平均粒径22μm)を添加したこと以外は、実施例1と同様に行い比較例2の再生砂を得た。
【0037】
(比較例3)
添加剤としてシラスバルーンの代わりにシリカ粉(平均粒径22μm)を2重量部添加したこと以外は、実施例1と同様に行い比較例3の再生砂を得た。
【0038】
(比較例4)
添加剤としてシラスバルーンの代わりに珪砂(アルバニー8号、トウチュウ社製、平均粒径119μm、粒径53μm未満の粒体の割合:1.2重量%)を添加したこと以外は、実施例1と同様に行い比較例4の再生砂を得た。再生砂中の珪砂の残存量は2.2重量%であった。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様にして鋳型をクラッシャーで処理して得られた回収砂を、USR型乾式研磨再生機(新東工業社製)に投入速度25kg/分にて投入し、回転ドラムの回転数を500rpmに設定し、乾式研磨及び流動槽と集塵機によるダストの除去からなる処理(予備処理)を2回繰返し、中間再生砂を得た。前記中間再生砂100重量部に対して、添加剤としてシラスバルーン(ウインライトWB−9011、アクシーズケミカル社製、粒径53μm未満の粒体の割合:6.5重量%)4重量部を添加して混合し、得られた混合砂をUSR型乾式研磨再生機(新東工業社製)に投入速度25kg/分にて投入し、回転ドラムの回転数を500rpmに設定し、乾式研磨及び流動槽と集塵機によるダストの除去からなる処理を1回行い、実施例2の再生砂を得た。再生砂中のシラスバルーンの残存量は0.3重量%であった。
【0040】
(比較例5)
シラスバルーンを添加しなかったこと以外は、実施例2と同様に行い比較例5の再生砂を得た。
【0041】
(実施例3)
実施例1で用いたシラスバルーンをスーパーミキサー(太洋鋳機社製、型番MS−1A)により撹拌することで粉砕処理して、平均粒径126μm、粒径53μm未満の粒体の割合を15.0重量%とした添加剤を、実施例1で用いたシラスバルーンに代えて用いたこと以外は、実施例1と同様に行い実施例3の再生砂を得た。再生砂中のシラスバルーンの残存量は0.2重量%であった。
【0042】
上記各実施例及び各比較例について、下記に示す評価を行った。結果を表3に示す。
【0043】
<混合砂の粉塵の量>
各実施例及び各比較例において研磨工程前の添加剤を回収砂又は中間再生砂と混合して得られた混合砂を、気温25℃、相対湿度55%の雰囲気下、振動フィーダを用いて投入速度25kg/分にて乾式研磨再生機に投入する際に、投入口近傍に設置した小型掃除機を用いて2分間集塵し、捕集された粉塵の量を測定した。
【0044】
<LOI及びLOI減少率>
JACT試験法S−2に基づき回収砂(又は中間再生砂)及び再生砂の強熱減量(LOI)を測定した。また、以下の式によりLOI減少率を算出した。なお、LOIは砂中の有機物の量(残留樹脂量)を示す。即ち、LOI減少率が高いほど、粘結剤等の有機物の除去性に優れていると評価できる。
LOI減少率(%)=(1−再生砂のLOI(重量%)/回収砂(又は中間再生砂)のLOI(重量%))×100
【0045】
<鋳型強度>
得られた再生砂100重量部に対して、アルカリフェノール樹脂(カオーステップSL−6010、花王クエーカー社製)1.3重量部、及びアルカリフェノール樹脂用硬化剤(カオーステップDH−25、花王クエーカー社製)0.39重量部を添加して、鋳型を造型した。得られた鋳型について、25℃、55%RHの条件下にて24時間放置し、JACT試験法HM−1に基づいて圧縮強度を測定し、得られた値を鋳型強度とした。
【0046】
【表3】

【0047】
表3に示すように、実施例は、いずれの評価項目についても良好な結果が得られた。一方、比較例は、少なくとも1つの評価項目について実施例に比べ顕著に劣る結果が得られた。この結果から、本発明によれば、作業中の粉塵の飛散を防止し、かつ粘結剤等の不純物の除去性を向上できる再生鋳物砂の製造方法を提供できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造後に回収された鋳物砂を再生する再生鋳物砂の製造方法であって、
易破砕粒体の存在下に前記回収された鋳物砂を乾式研磨再生機により研磨する研磨工程を有し、
前記研磨工程前の前記易破砕粒体の平均粒径が100μm以上である、再生鋳物砂の製造方法。
【請求項2】
前記研磨工程前の前記易破砕粒体の破砕性指数Aが50以上である、請求項1記載の再生鋳物砂の製造方法。
【請求項3】
前記回収された鋳物砂に前記易破砕粒体を添加して、前記研磨工程を行う、請求項1又は2記載の再生鋳物砂の製造方法。
【請求項4】
前記研磨工程前の前記易破砕粒体の粒度分布において、粒径53μm未満の粒体の割合が9.0重量%以下である、請求項1〜3の何れか1項記載の再生鋳物砂の製造方法。
【請求項5】
前記回収された鋳物砂100重量部に対し前記易破砕粒体を1〜10重量部添加して、前記研磨工程を行う、請求項3又は4記載の再生鋳物砂の製造方法。

【公開番号】特開2012−125785(P2012−125785A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278120(P2010−278120)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)