説明

写像型電子顕微鏡、電子顕微鏡、試料面観察方法及びマイクロデバイスの製造方法

カソード(1)から射出した照射ビーム(4)は、偏向器(3)に入射する。偏向器(3)に電圧が印加された状態では、照射ビーム(4)は、偏向器(3)によって、その光路が変更された後、共通電子光学系(7)を通過して、試料(6)を面照明する。偏向器(3)に電圧が印加されない場合は、照射ビーム(4)は、偏向器(3)を直進して通り抜け、電子吸収板(17)に吸収される。共通電子光学系(7)を通る際に、照射ビーム(4)は減速され、試料(6)の表面に達した時点ではそのエネルギーは0[eV]近くになっている。試料(6)に照射ビーム(4)が入射すると試料(6)からは、反射電子(8)が発生する。この反射電子(8)は、共通電子光学系(7)を通って、偏向器(3)に電圧が印加されていなりとき、結像電子光学系(9)を通して、MCP検出器(10)上に投影される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電子線を試料面に照射させ、その結果発生する反射電子を用いて、物体面の観察、検査等を行う写像型電子顕微鏡、電子顕微鏡、試料面観察方法及びこの写像型電子顕微鏡を用いたマイクロデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
写像型電子顕微鏡は、電子光学系を使用して、電子線を試料面に照射し、その結果発生する2次電子や反射電子を、電子光学系を使用して検出装置の検出面に結像させ、2次元的に試料面を観察するものである。これは、SEMと異なり走査回数を減らすことができるので、試料観察時間を短縮することができ、半導体等のマイクロデバイスの検査装置として注目されている。
このような写像型電子顕微鏡として考えられているものの例を、図5に示す。カソード21から出射した照射ビーム24は、ウェネルト電極34、第1アノード35、第2アノード36、照明専用電子光学系22を通過して、電磁プリズム23に入射する。照射ビーム24は、電磁プリズム23によって、その光路が変更された後、カソードレンズ27を通過して、試料26を面照明する。
試料26に照射ビー厶24が入射すると試料26からは、その表面形状、材質分布、電位の変化などに応じた分布の2次電子、後方散乱電子及び反射電子(発生電子28と総称する)が発生する。この発生電子28は、カソードレンズ27、電磁プリズ厶23、結像専用電子光学系29を通して、MCP(Micro Channel Plate)検出器30上に投影され、光写像光学系32を通過して、CCDカメラ33に画像が投影される。25は試料ステージである。なお、結像電子光学系は、結像専用電子光学系29、電磁プリズム23、カソードレンズ27からなり、照明電子光学系は、照明専用電子光学系22、カソードレンズ27、電磁プリズム23から構成される。
図5を見ると分かるように、このような写像型電子顕微鏡では、電磁プリズム23(E×B)によって、試料26に入射する電子線の光路と、試料26から放出される電子線の光路を切り分けている。そのため、試料26と電磁プリズム23との間の光路において、照明用電子線中の電子と試料から発生し観察用として使用される電子の間にクーロン効果が発生するため、結像する像がボケるという問題点があった。
また、電磁プリズム23は、大きな非点収差を発生させる。この収差を補正するために、照明電子光学系と結像電子光学系の双方を調整することには非常な困難が伴う。よって、従来は、結像電子光学系に視点を合わせて設計・調整を行い、照明電子光学系の調整が十分でないことが多かった。
また、図5を見ると分かるように、照明電子光学系と結像電子光学系とは、全く別々に設計されており、それだけ多くの電子線光学部材を必要としていた。
【発明の開示】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、反射電子を観察用電子線として使用する方式の写像型電子顕微鏡であって、クーロン効果の影響の小さい写像型電子顕微鏡、電子顕微鏡を提供すること、使用する電子光学部材の数を少なくしたものを提供することを課題とし、加えて、このような写像型電子顕微鏡、電子顕微鏡を使用した試料面観察方法、マイクロデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するための第1の発明は、電子源から発した照射用電子線を照明電子光学系を介して試料面に入射させ、当該試料面から放出される電子を観察用電子線として、結像電子光学系を介して検出手段に結像させる写像型電子顕微鏡であって、前記照射用電子線又は観察用電子線の方向を切り換える光路切換手段とを有し、前記光路切換手段は、所定のタイミングで、前記照射用電子線が前記試料面に入射し、別の所定のタイミングで前記観察用電子線が前記検出手段に到達するように、前記各電子線の方向を切り換える機能を有することを特徴とする写像型電子顕微鏡である。
本発明においては、図5に示したような写像型電子顕微鏡と異なり、電磁プリズムを使用せず、光路切換手段により、電子光学系を介して試料面に照射される照射用電子線が光路切換手段を通過するタイミングと、試料面から放出され、電子光学系を介して検出装置に到達する反射電子が光路切換手段を通過するタイミングとを異ならせている。これにより、照射用電子線と反射電子の間でのクーロン効果を低減することができ、結像のボケを小さくすることができる。光路切換手段としては、例えば偏向器のような単純な電子光学要素を使用することができる。
前記目的を達成するための第2の発明は、前記第1の発明であって、前記観察用電子線が、前記照明用電子線とエネルギーの等しい反射電子からなり、前記照明電子光学系は、前記電子源と前記光路切換手段との間に設けられた照明専用電子光学系と、前記光路切換手段と前記試料面との間に設けられた電子光学系とからなり、前記結像電子光学系は、前記検出手段と前記光路切換手段との間に設けられた結像専用電子光学系と、前記電子光学系とからなり、前記電子光学系は、前記照明電子光学系と前記結像電子光学系の機能の一部を共用していることを特徴とするものである。
本発明によれば、観察用電子線として照射用電子線とエネルギーの等しい反射電子を用いているため、結像電子光学系と照明電子光学系の一部を共通の光学系として用いた場合、拡大系である結像電子光学系の収差を抑えて設計しておけば、逆に縮小系となっている照明電子光学系も精度よく設計されていることになる。光路切換手段と試料面の間では、照明用電子線が入射した方向に放出される観察用電子線は、照明用電子線が入射した経路をたどって、光路切換手段に達することになる。
すなわち、観察用電子として反射電子を使用していることにより、従来、別々に設計されていた照明電子光学系と結像電子光学系の少なくとも一部の要素を、共通の要素として、光路切換手段と試料面との間に設けることができる。
例えば、結像電子光学系の倍率変更機能を前記電子光学系(共通の電子光学系)に持たせ、結像電子光学系の倍率を変えてズームした場合や視野形状(アスペクト比)を変更する場合には、同時に照明電子光学系も連動して照野を拡大、縮小、及び照野形状(アスペクト比)変更することができる。しかも、光学系の共通化により、光学系全体を従来のものより小さく抑えることができる。
前記目的を達成するための第3の発明は、前記第1の発明であって、前記観察用電子線が前記照明用電子線とエネルギーの等しい反射電子からなり、前記照明電子光学系及び前記結像電子光学系は、前記光路切換手段と前記試料面との間に設けられた電子光学系のみからなることを特徴とするものである。
本発明においては、照明電子光学系と前記結像電子光学系が、完全に光路切換手段と試料面との間に設けられた電子光学系として共通化されるので、装置の構成を、さらに単純化することができる。
前記目的を達成するための第4の発明は、前記第1の発明から第3の発明のいずれかであって、前記光路切換手段は、前記照射用電子線中の電子が、前記光路切換手段から前記試料面に到達するまでの時間以下の時間だけ、前記照射用電子線を前記試料面に導く機能を有することを特徴とするものである。
本発明においては、光路切換手段は、照射用電子線中の電子が、光路切換手段から試料面に到達するまでの時間より短い時間だけ、照射用電子線を前記試料面に導く機能を有する。よって、例えば、照射用電子線中の電子が、光路切換手段から試料面に到達するまでの時間をTとすれば、Tの間だけ照射用電子線を前記試料面に導き、次のTの間は、試料から放出された反射電子を検出手段に導いて、これを交互に繰り返す。照射用電子線を前記電子光学系に導く時間をTより短くすればするほど、クーロン効果の影響を小さくできる。
前記目的を達成するための第5の発明は、前記第1の発明から第3の発明のいずれかであって、前記光路切換手段は、前記照射用電子線中の電子が、前記電子光学系において電子線が最も絞られる点と試料の間を往復する時間以下の時間だけ、前記照射用電子線を前記試料面に導く機能を有することを特徴とするものである。
本発明も、前記第4の発明と同じ作用効果を目的としたものであるが、電子線の照射時間をさらに短くし、前記電子光学系において電子線が最も絞られる点と試料の間を往復する時間以下の時間だけ電子線を照射するようにしている。クーロン効果が最も著しく発生するのは、前記電子光学系において電子線が最も絞られる点であるので、電子線がこの点と試料との間を往復する時間以下の時間だけ、電子線を試料に照射することにより、より有効にクーロン効果の影響を小さくすることができる。
前記目的を達成するための第6の発明は、電子源から発した照明用電子線を照明電子光学系を介して試料面に入射させ、当該試料面から放出される電子を観察用電子線として、結像電子光学系を介して検出手段に結像させる写像型電子顕微鏡であって、前記観察用電子線が、前記照明用電子線とエネルギーの等しい反射電子からなり、前記照明電子光学系は、前記電子源と前記光路切換手段との間に設けられた照明専用電子光学系と、前記光路切換手段と前記試料面との間に設けられた電子光学系とからなり、前記結像電子光学系は、前記検出手段と前記光路切換手段との間に設けられた結像専用電子光学系と、前記電子光学系とからなり、前記電子光学系は、前記照明電子光学系と前記結像電子光学系の機能の一部を共用していることを特徴とする写像型電子顕微鏡である。
前記目的を達成するための第7の発明は、前記第1の発明から第6の発明のいずれかの写像型電子顕微鏡を用いて、マイクロデバイス又はその中間製品の表面を検査する工程を有することを特徴とするマイクロデバイスの製造方法である。
本発明においては、構成の簡単な写像型電子顕微鏡を用いて検査を行っているので、製造費用を安価とすることができる。
前記目的を達成するための第8の発明は、電子顕微鏡であって、照射用電子線を試料面に入射させる電子源と、前記試料面から放出される電子を観察用電子線として検出する検出器と、所定のタイミングで前記照射用電子線を試料面に入射させ、別の所定のタイミングで前記観察用電子線を前記検出器に到達させる光路切換手段とを有することを特徴とする電子顕微鏡である。
前記目的を達成するための第9の発明は、前記第8の発明であって、前記光路切り換え手段は、当該光路切り替え手段に電圧を印可するかしないかで、前記所定のタイミングと前記別の所定のタイミングとを切換える機能を有することを特徴とするものである。
前記目的を達成するための第10の発明は、試料面を観察する方法であって、照明用電子線を射出し、所定のタイミングで前記照射用電子線を前記試料面に入射させ、前記試料面から放出された観察用電子を、前記所定のタイミングとは別のタイミングで検出器に到達させ、前記検出器で前記観察用電子を検出して前記試料面の画像を取得することを特徴とする試料面観察方法である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態である写像型顕微鏡の光学系の概要を示す図である。
図2は、本発明の第2の実施の形態である写像型顕微鏡の光学系の概要を示す図である。
図3は、本発明の第3の実施の形態である写像型顕微鏡の光学系の概要を示す図である。
図4は、本発明の実施形態である半導体デバイス製造方法の一例を示すフローチャートである。
図5は、従来考えられていた写像型顕微鏡の光学系の概要を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態である写像型顕微鏡の光学系の概要を示す図である。カソード1から射出した照射ビーム4は、ウェネルト電極14、第1アノード15、第2アノード16、照明専用電子光学系2を通過して、偏向器3に入射する。偏向器3に電圧が印加された状態では、照射ビーム4は、偏向器3によって、その光路が変更された後、カソードレンズを主体とする共通電子光学系7を通過して、試料6を面照明する。偏向器3に電圧が印加されない場合は、照射ビーム4は、偏向器3を直進して通り抜け、電子吸収板17に吸収される。
このようにすると、照射ビーム4中の電子と発生電子8との間で発生するクーロン効果を低減させることができ、結像電子光学系のボケを小さくすることが可能となる。
この実施の形態において、カソード1と試料ステージ5に印加する電位差を0V、又は0Vに近い値(但し、カソード1の電位V1の方が試料ステージ5の電位V2より小さいか又は略等しい。すなわちV1≦V2)にしておく。カソード1から射出した照明ビーム4はウェネルト電極14、第1アノード15、第2アノード16、照明専用電子光学系2を通過して偏向器3に入射する。偏向器3に電圧が印加された状態では、照射ビーム4は、偏向器3によって、その光路が偏向された後、共通電子光学系7を通過して試料6を面照明する。偏向器3に電圧が印加されない場合は、照射ビーム4は、偏向器3を直進して通り抜け、電子吸収板17を吸収される。
カソード1と試料ステージ5を同電位とするか、又は数V以下の電位差としているため、照射ビーム4が試料6の表面に達した時点ではそのエネルギーは0[eV]、又は(V2−V1)[eV]になっている。
試料6に照射ビーム4が入射すると試料6からは、その表面形状、材質分布、電位の変化などに応じた分布の反射電子8が発生する。照射ビームのエネルギーが低いので、2次電子はほとんど発生しない。この反射電子8は、共通電子光学系7を通って、偏向器3に電圧が印加されていないとき、結像電子光学系9を通して、MCP(Micro Channel Plate)検出器10上に投影され、光写像光学系12を通過して、CCDカメラ13に画像が投影される。なお、5は試料ステージである。
前述のように、照射ビーム4のエネルギーが試料6の面でほとんど0[eV]となっているので、反射電子の初期エネルギーも、ほとんど0[eV]である。よって、この反射電子は、共通電子光学系7によって加速されることになるが、その際、エネルギーが照射ビーム4とほとんど同じであるので、照射ビーム4が入射した方向に放出される反射電子8は、照射ビーム4が入射した光路を逆にたどることになる。
共通電子光学系7をズーム光学系にしておけば、観察系の拡大倍率を上げるために、共通電子光学系7の拡大倍率を上げると、照明ビーム4の照明領域が同時に狭められることになり、照明ビームを別の電子レンズ系により調整することを必要としない。
このように、従来、照明専用電子光学系22と結像専用電子光学系29とに別々に設けられていた光学系の一部を、共通電子光学系7における機能とすることにより共通化できるので、電子光学部材の数を少なくすることができ、そのようにしても、光路の切換に偏向器3を使用しているので、光学特性にさほどの影響を与えない。
照明専用電子光学系2と結像専用電子光学系9とには、共通化できない電子光学部材が配置される。たとえば、カソード1もしくは照明電子光学系の視野絞りの大きさと、MCP検出器110の大きさに差が有る場合、倍率比を調整する簡単な光学系を照明専用電子光学系2の中に設ければよい。なお、カソード1もしくは照明電子光学系の視野絞りの大きさとMCP検出器10の大きさの比は固定となるため、倍率比調整用の光学系は必要ない。
なお、試料6をクリティカル照明したい場合は、電子源のクロスオーバ面と試料6面を共役とし、試料6をケーラー照明したい場合は、照明電子光学系の視野絞りと試料6面を共役とする。
なお、偏向器3に電圧を印加して、照射ビーム4を共通電子光学系7側に偏向する時間は、照射ビーム4中の電子が、偏向器3から試料6に達する時間T以下とすることが望ましい。このようにすると、照射ビー厶4中の電子と反射電子8との間で発生するクーロン効果を低減させることができ、結像電子光学系のボケを小さくすることが可能となる。
さらに、偏向器3に電圧を印加する時間を、共通電子光学系7によって電子線が一番絞られる位置(クロスオーバ位置)と試料6の間を電子線が往復する時間以下とすることにより、より有効にクーロン効果の発生を抑え、結像電子光学系のボケを小さくすることができる。
また、偏向器3が励磁されている場合に偏向器3で偏向された反射電子8が迷光となって障害を及ぼすようなことがある場合でも、このようにすることにより、偏向器3が励磁されているときに反射電子8が偏向器3を通過することがないようにすることができ、上述のような迷光の発生を防止することができる。
図2は、本発明の第2の実施の形態である写像型顕微鏡の光学系の概要を示す図である。以下の説明においては、原則として、本欄において既に示された図中の構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略する。
図2に示す実施の形態は、図1に示す実施の形態とは、照明専用電子光学系2と、結像専用電子光学系9が完全に省略されているところが異なり、残りの部分は同一であるので、異なる部分のみを説明する。
すなわち、この実施の形態においては、図1における照明専用電子光学系2と、結像専用電子光学系9が完全に共通化されて、共通電子光学系11として示される部分に収納されている。そして、電子線源(カソード1、ウェネルト電極14、第1アノード15、第2アノード16)のクロスオーバ位置と試料6面、及びMCP検出器10の検出面と試料6面とは、それぞれ共通電子光学系11について共役とされている。よって、電子線源からの照射ビーム4は、共通電子光学系11の作用により試料6面をクリティカル照明、又はケーラー照明し、試料6の像は、共通電子光学系11の作用によりMCP検出器10の検出面に結像される。
図3は、本発明の第3の実施の形態である写像型顕微鏡の光学系の概要を示す図である。この実施の形態は、図1に示す実施の形態とは、第2の偏向器3’が設けられ、電子吸収板17が第2の偏向器の後に設けられている点のみが異なるので、異なる点のみの説明を行う。
この実施の形態は、図1に示す第1の実施の形態では、電子吸収板17による電子の吸収が不十分で、電子吸収板17での反射電子や2次電子が結像専用電子光学系9に入り込み、ノイズとなるような場合に用いられるものである。
この実施の形態では、偏向器3と偏向器3’は同期して作動し、偏向器3に電圧が印加されているときに、偏向器3’には電圧が印加されず、偏向器3に電圧が印加されていないときに偏向器3’に電圧が印加されるようになっている。よって、偏向器3に電圧が印加されている場合には、照射ビーム4は偏向器3’中を直進して偏向器3で偏向され、試料6面に達する。偏向器3に電圧が印加されている場合には、照射ビーム4は、偏向器3’で偏向され、電子吸収板17で吸収される。
この場合、電子吸収板17が、結像専用電子光学系9と離れた場所に設置可能であるので、そこで2次電子や反射電子が発生しても、結像専用電子光学系9のノイズとなる可能性が少なくなる。
以下、本発明の実施の形態の一例である半導体デバイスの製造方法の実施の形態の例を説明する。図4は、本発明の実施形態である半導体デバイス製造方法の一例を示すフローチャートである。この例の製造工程は以下の各主工程を含む。
(1)ウェハを製造するウェハ製造工程(又はウェハを準備するウェハ準備工程)
(2)露光に使用するマスクを製作するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)
(3)ウェハに必要な加工処理を行うウェハプロセッシング工程
(4)ウェハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程
(5)できたチップを検査するチップ検査工程
なお、それぞれの工程はさらにいくつかのサブ工程からなっている。
これらの主工程の中で、半導体のデバイスの性能に決定的な影響を及ぼす主工程がウェハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウェハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウェハプロセッシング工程は以下の各工程を含む。
(1)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、あるいは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
(2)この薄膜層やウェハ基板を酸化する酸化工程
(3)薄膜層やウェハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストのパターンを形成するリソグラフィー工程
(4)レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(5)イオン・不純物注入拡散工程
(6)レジスト剥離工程
(7)さらに加工されたウェハを検査する検査工程
なお、ウェハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
本実施の形態においては、できたチップを検査するチップ検査工程と加工されたウェハを検査する検査工程において、本発明の写像型電子顕微鏡による検査を行っている。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源から発した照射用電子線を照明電子光学系を介して試料面に入射させ、当該試料面から放出される電子を観察用電子線として、結像電子光学系を介して検出手段に結像させる写像型電子顕微鏡であって、前記照射用電子線又は観察用電子線の方向を切り換える光路切換手段とを有し、前記光路切換手段は、所定のタイミングで、前記照射用電子線が前記試料面に入射し、別の所定のタイミングで前記観察用電子線が前記検出手段に到達するように、前記各電子線の方向を切り換える機能を有することを特徴とする写像型電子顕微鏡。
【請求項2】
請求の範囲第1項に記載の写像型電子顕微鏡であって、前記観察用電子線が、前記照明用電子線とエネルギーの等しい反射電子からなり、前記照明電子光学系は、前記電子源と前記光路切換手段との間に設けられた照明専用電子光学系と、前記光路切換手段と前記試料面との間に設けられた電子光学系とからなり、前記結像電子光学系は、前記検出手段と前記光路切換手段との間に設けられた結像専用電子光学系と、前記電子光学系とからなり、前記電子光学系は、前記照明電子光学系と前記結像電子光学系の機能の一部を共用していることを特徴とする写像型電子顕微鏡。
【請求項3】
請求の範囲第2項に記載の写像型電子顕微鏡であって、前記観察用電子線が前記照明用電子線とエネルギーの等しい反射電子からなり、前記照明電子光学系及び前記結像電子光学系は、前記光路切換手段と前記試料面との間に設けられた電子光学系のみからなることを特徴とする写像型電子顕微鏡。
【請求項4】
請求の範囲第1項に記載の写像型電子顕微鏡であって、前記光路切換手段は、前記照射用電子線中の電子が、前記光路切換手段から前記試料面に到達するまでの時間以下の時間だけ、前記照射用電子線を前記試料面に導く機能を有することを特徴とする写像型電子顕微鏡。
【請求項5】
請求の範囲第1項に記載の写像型電子顕微鏡であって、前記光路切換手段は、前記照射用電子線中の電子が、前記電子光学系において電子線が最も絞られる点と試料の間を往復する時間以下の時間だけ、前記照射用電子線を前記試料面に導く機能を有することを特徴とする写像型電子顕微鏡。
【請求項6】
電子源から発した照明用電子線を照明電子光学系を介して試料面に入射させ、当該試料面から放出される電子を観察用電子線として、結像電子光学系を介して検出手段に結像させる写像型電子顕微鏡であって、前記観察用電子線が、前記照明用電子線とエネルギーの等しい反射電子からなり、前記照明電子光学系は、前記電子源と前記光路切換手段との間に設けられた照明専用電子光学系と、前記光路切換手段と前記試料面との間に設けられた電子光学系とからなり、前記結像電子光学系は、前記検出手段と前記光路切換手段との間に設けられた結像専用電子光学系と、前記電子光学系とからなり、前記電子光学系は、前記照明電子光学系と前記結像電子光学系の機能の一部を共用していることを特徴とする写像型電子顕微鏡。
【請求項7】
請求の範囲第1項か第6項のうちいずれか1項に記載の写像型電子顕微鏡を用いて、マイクロデバイス又はその中間製品の表面を検査する工程を有することを特徴とするマイクロデバイスの製造方法。
【請求項8】
電子顕微鏡であって、照射用電子線を試料面に入射させる電子源と、前記試料面から放出される電子を観察用電子線として検出する検出器と、所定のタイミングで前記照射用電子線を試料面に入射させ、別の所定のタイミングで前記観察用電子線を前記検出器に到達させる光路切換手段とを有することを特徴とする電子顕微鏡。
【請求項9】
前記光路切り換え手段は、当該光路切り替え手段に電圧を印可するかしないかで、前記所定のタイミングと前記別の所定のタイミングとを切換える機能を有することを特徴とする請求の範囲第8項に記載の電子顕微鏡。
【請求項10】
試料面を観察する方法であって、照明用電子線を射出し、所定のタイミングで前記照射用電子線を前記試料面に入射させ、前記試料面から放出された観察用電子を、前記所定のタイミングとは別のタイミングで検出器に到達させ、前記検出器で前記観察用電子を検出して前記試料面の画像を取得することを特徴とする試料面観察方法。

【国際公開番号】WO2005/069346
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517117(P2005−517117)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000625
【国際出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)