説明

写真処理装置

【課題】 乾燥風の熱の影響による測色精度の悪化を抑えて、自動でセットアップ作業を完了可能な写真処理装置を提供する。
【解決手段】 写真処理装置1において、現像処理が施された印画紙Pを乾燥処理する乾燥処理部60と、乾燥処理部60内において印画紙Pを搬送する搬送部と、搬送部により搬送される印画紙Pを装置1の外部に排出する排出孔68と、印画紙Pに形成されたテスト用画像を測色し、測色の結果に基づいて処理条件の補正を行う濃度測定部80と、乾燥処理部60側における排出部68の近傍に設けられるシャッター67とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストプリントを測色して処理条件の補正を行う写真処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、写真処理装置においては、露光および現像処理を開始する前において、これらの最適な処理を行うために各種処理条件の補正が行われる。この補正を行うことをセットアップ作業という。セットアップ作業は、現像処理されたテストプリント(セットアップ作業に用いられるテスト用の感光材料)の発色状態等を測定して、その結果を基に処理条件を補正することにより行われる。
【0003】
このようなセットアップ作業を行う写真処理装置として、テストプリントの発色状態等の測定手段である測色計を、乾燥処理部における感光材料の排出部に設けて、テストプリントが排出された直後に自動的に測色してセットアップを行うものが提案されている(特許文献1参照)。
これは、例えば、排出されたテストプリントを手作業で測色計にセットして測色する等のように、オペレータが介在することなく、自動でセットアップ作業を完了できるようにするものである。
【特許文献1】特開2000−221649号公報(平成12年8月11日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の写真処理装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、乾燥処理部は高温であり、かつ感光材料の排出部から高温の乾燥風が噴き出すため、測色の際に、測色計がその熱の影響を受けて測定結果が大きく変動してしまう。具体的には、測色計が有するフィルタおよびCCD(Charge−Coupled Device)が熱の影響を受けるため、測色精度が悪化する。これにより、処理条件の補正が適切に行われない場合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、測色精度の悪化を抑えて、自動でセットアップ作業を完了可能な写真処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る写真処理装置は、乾燥処理部と、搬送部と、排出部と、測色部と、熱遮断部とを備えている。乾燥処理部は、現像処理が施された感光材料を乾燥処理する。
搬送部は、乾燥処理部内において感光材料を搬送する。排出部は、搬送部により搬送される感光材料を装置外部に排出する。測色部は、感光材料に形成された各帯体の濃度を測色し、測色の結果に基づいて処理条件の補正を行う。熱遮断部は、乾燥処理部側における排出部の近傍に設けられる。
【0007】
ここでは、乾燥風の熱の影響による測色精度の悪化を抑えつつ、自動で最適なセットアップ作業を完了可能な写真処理装置の構成を示す。
写真処理装置のセットアップ作業は、感光材料の現像処理精度を維持するために不可欠なものである。そのため、写真処理装置の処理の効率化を考慮すると、セットアップ作業も通常の感光材料に対する写真処理工程とともに自動的に行うことが好ましい。
【0008】
従来の写真処理装置においては、人手を介する必要がないように、測色計を乾燥処理部における感光材料の排出部に設けて、搬送部により排出部に搬送されてきたテストプリントが排出された直後に測色等を行うものが提案されている。しかし、この場合、測色部の設置位置の関係上、測色部は乾燥処理部内からの高温の乾燥風にさらされる。その結果、測定結果は乾燥風の熱の影響を受け、ひいてはセットアップ作業の精度が低下する。
そこで、本発明の写真処理装置では、排出部の乾燥処理部側に熱遮断部を設けて、測色部が乾燥風にさらされることを防止する。
これにより、乾燥風の熱の影響による測色精度の悪化を抑えることができる。従って、セットアップ作業の精度低下を防止することが可能となる。
【0009】
第2の発明に係る写真処理装置は、第1の発明に係る写真処理装置であって、熱遮断部は、乾燥処理部からの乾燥風を遮断するシャッターである。
【0010】
ここでは、上記熱遮断部として、シャッター構造を有する写真処理装置について示す。
ここで、測色部に対して熱を遮断するためには、測色部が乾燥風にできるだけさらされないような構成であればよい。
そこで、具体的な構成として、排出部の乾燥処理部側にシャッターを設け、例えば、テストプリントが通過時にのみシャッターを開閉するような構造とする。
【0011】
これにより、乾燥風の熱の影響による測色精度の悪化を抑えることができる。従って、乾燥風を遮断しつつ、セットアップ作業の精度低下を防止することが可能となる。
なお、シャッター構造としては、テストプリント通過時に自動開閉可能なものであれば、その動作や構造は問わない。
【0012】
第3の発明に係る写真処理装置は、第1または第2の発明に係る写真処理装置であって、熱遮断部は、乾燥処理部からの放射熱を遮断する断熱材である。
ここでは、上記熱遮断部の他の例として、断熱材を有する写真処理装置について示す。
ここで、測色部に対して熱を遮断するために、測色部と乾燥処理部との間における乾燥処理部側に断熱材を設け、乾燥処理部からの放射熱を遮断する。
これにより、乾燥風の熱が測色部に伝播することを防止できるため、熱の影響による測色精度の悪化を抑えることができ、セットアップ作業の精度低下を防止可能となる。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係る写真処理装置によれば、セットアップ作業の精度低下を防止可能となる。
第2の発明に係る写真処理装置によれば、乾燥風を遮断しつつ、セットアップ作業の精度低下を防止することが可能となる。
第3の発明に係る写真処理装置によれば、熱を遮断しつつ、セットアップ作業の精度低下を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る写真プリントシステム(写真処理装置)1について、図1〜図5を用いて説明すれば以下の通りである。
[写真プリントシステム1の構成]
本発明の一実施形態に係る写真プリントシステム1は、図1に示すように、いわゆるデジタルミニラボと呼ばれる写真プリントシステムである。
【0015】
写真プリントシステム1は、操作部20と、プリント部50と、を備えている。
操作部20は、現像された写真フィルムFやデジタルカメラ等で撮影されたデジタル画像データが保存されたメモリカード等のメディアから画像データを取り込んでプリントデータを作成し、プリント部50に対して送信する。
プリント部50は、操作部20から受信したプリントデータに基づいて、印画紙(感光材料)P(図2参照)に対して露光処理および現像処理を行って写真プリント画像や、セットアップ用テストプリントTPを形成する。
【0016】
[操作部20の構成]
操作部20は、図1に示すように、モニタ21と、キーボード22と、マウス23と、コンピュータユニット(テストプリント制御部)30と、メディアリーダ31と、フィルムスキャナ40と、を有している。
コンピュータユニット30は、モニタ21、キーボード22、マウス23と接続されており、フィルムスキャナ40およびプリント部50に含まれる各部の動作や画像処理および画像データの入出力等の制御を行う。
【0017】
モニタ21には、各種制御のためのGUI(Graphical User Interface)や処理対象の画像が表示される。
メディアリーダ31は、本写真プリントシステム1のコントローラとして機能するコンピュータユニット30に搭載されており、デジタルカメラ等で撮影された画像のデジタルデータをメモリカードや各種半導体メモリ、CD−R等のメディアから取り込む。
【0018】
フィルムスキャナ40は、写真フィルムFに現像された撮影コマに対応する画像をデジタル画像データとして取り込む。
[プリント部50の構成]
プリント部50は、図1に示すように、操作部20から受信したプリントデータに基づいて、印画紙Pを搬送しながら印画紙Pに対して露光処理および現像処理を行って写真プリント画像を形成する。
【0019】
プリント部50は、図2に示すように、内部に2つの印画紙マガジン51と、シートカッター52と、バックプリント部53と、プリント露光部(露光部)54と、圧接搬送ローラ対57と、チャッカー式搬送ユニット58と、処理槽ユニット(現像処理部)55と、乾燥部(乾燥処理部)60と、コンベア56と、ソータ(図示せず)と、濃度測定部(測色部)80と、を有している。
【0020】
2つの印画紙マガジン51は、プリント部50の内部においてロール状の印画紙Pを1個ずつ収納しており、圧接搬送ローラ対57によって適宜必要な量の印画紙Pが引き出される。
シートカッター52は、印画紙マガジン51から印画紙Pを引き出す複数の圧接搬送ローラ対57の下流側に配置されており、印画紙マガジン51から引き出された印画紙Pを所望のサイズに切断する。
【0021】
バックプリント部53は、シートカッター52の下流側に配置されており、プリントサイズ等所望のサイズに切断された印画紙Pの裏面側に、色補正情報やコマ番号等のプリント処理情報を印刷する。
プリント露光部54は、バックプリント部53の下流側におけるチャッカー式搬送ユニット58に隣接するように配置されており、プリントサイズやテストプリントサイズに切断された印画紙Pの表面に対して、プリントする撮影画像の露光を行う。
【0022】
処理槽ユニット55は、プリント露光部54の下流側における複数の圧接搬送ローラ対57に隣接するように配置されており、発色現像処理液を貯留する発色現像槽55a、漂白定着処理液を貯留する漂白定着槽55bおよび安定処理液を貯留する安定処理槽55cを有している。そして、露光後の印画紙Pが、これらの各処理槽55a〜55cをこの順で経由しながら搬送されることで、所望の写真プリント画像やセットアップ用テストプリント画像(図5参照)が印画紙Pの表面に形成される。
【0023】
乾燥部60は、処理槽ユニット55の下流側に配置されており、現像処理された印画紙Pを乾燥させるために設けられている。なお、乾燥部60の構成については後段にて詳述する。
コンベア56は、プリント部50の上部に露出しており、写真プリント画像が表面に形成されて乾燥処理後に排出された印画紙Pをソータの方向へ搬送する。
【0024】
ソータは、プリント部50の前面側に鉛直方向に複数のトレイを並べた状態で配置されており、コンベア56によって搬送されるプリント済の印画紙Pを、例えば、オーダー単位で各トレイに振り分ける。
圧接搬送ローラ対57と、チャッカー式搬送ユニット58とは、プリント部50の内部において、印画紙マガジン51に収容されたロール状の印画紙Pを引き出すとともに、プリントサイズ等に切断された印画紙Pを、印画紙Pに対して行われる様々な処理に対応した搬送速度で搬送する。圧接搬送ローラ対57は、2つのローラを組み合わせて構成されており、2つのローラの間の隙間に印画紙Pを圧接して回転することで印画紙Pを下流側へと搬送する。チャッカー式搬送ユニット58は、プリントサイズ等に切断された印画紙Pの下流側(先端側)の端部を搬送方向における両側からつまむようにして搬送する。
【0025】
濃度測定部80は、乾燥部60の下流側に配置されており、セットアップ用テストプリントTPの各帯体の濃度を測定(測色)する。なお、濃度測定部80については、後段にて詳述する。
(乾燥部60の構成)
乾燥部60は、ブロワ(図示せず)等の温風を吹き出すための装置が設けられており、現像処理された印画紙Pを搬送しながら乾燥させる。そして、乾燥部60は、図3および図4に示すように、圧接搬送ローラ対61と、ターンローラ対62と、搬送切換ガイド63と、搬出ローラ対64と、ターンガイド66と(以上により搬送部を形成)、シャッター(熱遮断部)67と、を有している。
【0026】
圧接搬送ローラ対61は、駆動ローラおよび当接ローラを組み合わせて構成されており、2つのローラの間隙に印画紙Pを挟みこんで駆動ローラを回転させることで、印画紙Pを下流側へと搬送する。
ターンローラ対62は、上流側から上方に向かって搬送されてくる印画紙Pを下方に向かって搬送させるように搬送方向を変化させるためのローラ群であり、例えば、駆動ローラと複数の従動ローラとで構成されている。
【0027】
搬送切換ガイド63は、ターンローラ対62のすぐ下流側に配置されている。搬送されてくる印画紙Pが普通プリントであれば、図3および図4中に実線で示すように印画紙Pを搬送経路a、セットアップ用テストプリントTPであれば、図3および図4中に破線で示すように印画紙Pを搬送経路bに搬送するように切り換えられる。
搬出ローラ対64は、搬送切換ガイド63により誘導される普通プリントの印画紙Pを、コンベア56に排出するためのローラであり、2つのローラの間隙に印画紙Pを挟みこみ駆動ローラを回転することで印画紙Pを搬出する。そして、印画紙Pは、搬出孔65を通過してコンベア56へ落下搬送される。
【0028】
ターンガイド66は、搬送切換ガイド63により誘導されるセットアップ用テストプリントTPの印画紙Pを、濃度測定部80に誘導するためのガイドである。そして、ターンローラ対62より送り出され垂直上方から搬送されてくる印画紙Pを略水平方向へ搬送方向を変えるためのものである。
シャッター67は、乾燥部60内において図示しないブロワから送られる高温の乾燥風が、搬出孔(排出部)68から濃度測定部80に向かって噴き出すことを防ぐための遮断部である。シャッター67は、図3および図4に示すように、乾燥部60内における搬出孔68の近傍に設置される。印画紙Pが搬送経路bに沿って搬送されてくると、シャッター67は、搬送されてくる印画紙Pのこしによって上方に押し上げられて(図3参照)、搬出孔68へとつながるように印画紙Pの厚み分だけ乾燥部60を開放する。印画紙Pの後端がシャッター67を通過すると、シャッター67は、上方に押し上げられた状態から元の位置に戻り(図4参照)、乾燥部60からの乾燥風を遮断、密閉する。このように、搬送切換ガイド63によって搬送経路bに送り出された印画紙Pは、搬出孔68を通過して連続的に濃度測定部80へ送り出される。
【0029】
(濃度測定部80)
濃度測定部80は、搬送されてくるセットアップ用テストプリントTPをコマ送りしながら各帯体の濃度を測定する。そして、図3および図4に示すように、濃度測定部80は、筐体81と、濃度計82と、搬送ローラ83・83とを有している。なお、濃度測定部80において測定するセットアップ用テストプリントTPについては、後段にて詳述する。
【0030】
筐体81は、濃度測定部80内の温度や明るさを一定状態に保つために設けられており、例えば、合成樹脂部材等で形成されている。
濃度計82は、例えば、ラッテンフィルタ(登録商標)のような特定の波長の光に対して透過特性を持つように設計されたフィルタと、CCDとから構成されている。これらにより、図5に示すような、セットアップ用テストプリントTPの各帯体の濃度を測定し、測定結果をコンピュータユニット30に送信する。
【0031】
搬送ローラ83は、濃度計82が、セットアップ用テストプリントTPの各帯体の濃度が測定できるようにコマ送りしながら搬送する。具体的には、最初に図5に示すセットアップ用テストプリントTPの帯体F1の中心が濃度計の直下の位置まで搬送される。そして、濃度計82が帯体F1の濃度を測定し終えると、搬送ローラ83は、帯体幅に相当する距離だけセットアップ用テストプリントTPを搬送方向に搬送する。搬送ローラ83がこの作業を繰り返すことで、濃度計82はセットアップ用テストプリントTPにおける帯体F1からF22までの各濃度を順番に測定することができる。
【0032】
濃度計82によってすべての帯体F1〜F22の濃度の測定を終えたセットアップ用テストプリントTPは、搬送ローラ83によって排出部84へと搬送される。
<写真プリントシステム1による自動セットアップ>
写真プリントシステム1は、毎日の運転開始時ごとにセットアップ用にプリントされたセットアップ用テストプリントTPにおける各帯体の濃度(濃度パターン)を濃度測定部80に搭載された濃度計82で測定する。そして、コンピュータユニット30は、この濃度計82の測定結果に基づいてプリント露光部54の出力状態を調整するセットアップを行う。
【0033】
通常、プリント部50から出力されるプリント品質(プリント濃度)等は、プリント露光部54の光源の発光状態、各処理液の状態(処理液温度、酸化状態、活性化度合等)によって変化してしまう。このため、セットアップ用テストプリントTPに形成された濃度の異なる複数の帯体のそれぞれの濃度を濃度計82によって測定し、この測定結果に基づいてプリント露光部54の出力状態の調整、いわゆるセットアップを行う。このようなセットアップを行うことで、プリント露光部54の状態に関わらず再現性の高い写真プリント行うことができる。なお、一般的に、セットアップとはプリントの状態を左右する前述した原因のうち、プリント露光部54に関連する原因について調整することを言う。
【0034】
本実施形態の写真プリントシステム1におけるセットアップでは、モニタ21に表示されるGUIによってセットアップモードを選択した場合、一連のセットアップが自動的に実施される。具体的には、現在の状態のプリント部50から所定の画像データに基づいてセットアップ用テストプリントTPを出力するようにコンピュータユニット30がプリント露光部54を制御する。このときのセットアップ用テストプリントTPの画像データの内容については、後段にて詳述する。そして、プリント露光部54によって露光され現像処理されたセットアップ用テストプリントTPは、濃度測定部80を構成する濃度計82によって自動的に各帯体の濃度が測定される。さらに、この測定結果と所定の基準濃度との濃度差を算出し、この濃度差に基づいてプリント露光部54の出力状態の調整が行われる。プリント露光部54の調整は、例えば、レーザ露光エンジン(プリント露光部54の一例)の露光制御装置(図示せず)に設けられた画像データのLUTを書き換える等の方法により行うことができる。
【0035】
<セットアップ用テストプリントTP>
本実施形態の写真プリントシステム1において、セットアップのためにプリントされ、各帯体の濃度を測定されるセットアップ用テストプリントTPは、図5で示すように、22階調の帯体F1〜F22で形成されている。
[写真プリントシステム1の特徴]
(1)
本実施形態の写真プリントシステム1は、現像処理されたセットアップ用テストプリントTPを乾燥させる乾燥部60の搬出孔68の部分に、セットアップ用テストプリントTPに形成された帯体F1〜F22の濃度を測定するための濃度測定部80を近接配置したシステムであって、その乾燥部60内において乾燥処理側における搬出孔68の近傍に、シャッター67を有している。
【0036】
通常、セットアップ用テストプリントTPの印画紙Pが濃度測定部80に向けて排出される際、濃度測定部80は、搬出孔68から噴き出す乾燥部60内からの高温の乾燥風にさらされてしまう。濃度測定部80は、測定に用いるフィルタおよびCCDを有しているが、これらの性能は熱の影響を受け易い。そのため、上記乾燥風の熱により、高い精度が要求される、セットアップ用テストプリントTPに形成される22階調の帯体F1〜F22の濃度差の測定精度が大きく低下する。その結果、処理条件の補正が適切に行われなくなってしまう。
【0037】
そこで、本実施形態の写真プリントシステム1では、乾燥部60におけるセットアップ用テストプリントTPの搬出孔68の付近にシャッター67を設けている。
これにより、乾燥部60内から濃度測定部80に対して乾燥風が吹き付けるのを最小限に抑えることで、濃度測定部80が乾燥風にさらされることによるセットアップ用テストプリントTPの印画紙Pに形成されている各帯体の濃度に対する測定精度の悪化を防ぐことができる。この結果、乾燥部60の直下流側に濃度測定部80を近接配置した構成であっても、セットアップ用テストプリントTPに含まれる各帯体F1〜F22の濃度を正確に測定して、セットアップ作業の精度低下を防止することができる。
【0038】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、写真プリントシステム1が、乾燥部60側の搬出孔68近傍に、印画紙Pのこしによって開閉するシャッター67を有している構成の例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
例えば、図6に示すように、乾燥部60の筐体において、濃度測定部80側の壁面に断熱材(熱遮断部)59を設けた構成であってもよい。
この構成によって、濃度測定部80に対して乾燥部60内からの乾燥風による熱の伝播を抑えることが可能となるため、高熱による各帯体の濃度に対する測定結果の変動を抑えることができる。その結果、セットアップ作業の精度低下を防止可能となる。
【0040】
また、上記実施形態において説明したシャッター67と、図6に示す断熱材とを組み合わせて用いてもよい。この場合には、乾燥部の直下流側に配置された濃度測定部に対する熱の影響をより効果的に低減して、高精度な濃度測定を実施することができる。
(B)
上記実施形態では、写真プリントシステム1において、シャッター67が、印画紙Pのこしを利用して押し上げられることにより開閉する構成の例を挙げて説明した。しかし、シャッター67の形態は、これに限定されるものではない。
【0041】
例えば、シャッター67は、のれん型のものであってもよい。
通常、印画紙Pとしては、様々な材質および厚み等を有するものが用いられることを想定する必要がある。そのため、印画紙Pとして、こしが弱いものもあり得る。その場合でも、印画紙Pの通過厚み分を確保できるように、印画紙Pがシャッター67を確実に押しのけられるような構成でなければならない。
【0042】
そこで、シャッター67をのれん型とすることにより、シャッター67を押しのけるために必要な負荷が小さくなり、こしの弱い印画紙Pであってもシャッター67の最適な開閉を行うことができる。そして、乾燥部60から濃度測定部80に対して吹き付けられる乾燥風も防ぐことができる。その結果、セットアップ作業の精度低下を防止可能となる。
(C)
上記実施形態および上記(B)では、写真プリントシステム1において、シャッター67が、印画紙Pのこしを利用して押し上げられることにより開閉する構成の例を挙げて説明した。しかし、シャッター67の形態は、これに限定されるものではない。
【0043】
例えば、シャッター67は、自動制御により開閉するものであってもよい。この場合、印画紙Pの先端がシャッター67に到達することをセンサが感知し、その情報を基にシャッター67を開閉させるシステムであればよい。
これによっても、乾燥部60から濃度測定部80に対して吹き付けられる乾燥風を防ぐことができる。その結果、セットアップ作業の精度低下を防止可能となる。
【0044】
(D)
上記実施形態では、写真プリントシステム1において、シャッター67を用いて乾燥風を遮断する構成の例を挙げて説明した。しかし、乾燥風を遮断する構成は、これに限定されるものではない。
例えば、シャッター67の代わりに、図7に示すように、搬送孔68に開閉部(扉69)を直接設け、その扉69を開閉することで乾燥部60からの乾燥部の噴き出しを抑える構成であってもよい。
【0045】
この場合、扉69を開閉するために、例えば、乾燥部60側において搬送孔68の近傍に扉69に接するようローラ対70を設置する。印画紙Pが搬送されてくると、ローラ対70が図中矢印方向に回転して扉69を開き、印画紙Pの後端が扉69を通過すると、逆方向に回転して扉69を閉じる。ローラ対70を設けることにより扉69の開閉がよりスムーズになる。
【0046】
この構成によっても、濃度測定部80に対して乾燥部60内から吹き付けられる乾燥風を遮断することが可能となるため、高熱による測定結果の変動を抑えることができる。その結果、セットアップ作業の精度低下を防止可能となる。
(E)
上記実施形態および上記(B)〜(D)では様々な形態のシャッター67を、上記(A)では、断熱材59の例を挙げて説明した。シャッター67と断熱材59とはそれぞれ個別に設置されるものとして説明されているが、しかし、それに限定されるものではない。
【0047】
例えば、上記実施形態および上記(B)〜(D)のそれぞれと、断熱材59を共に設置してもよい。
これによって、乾燥風の遮断と共に、筐体からの熱の遮断も同時に行うことができるの、より確実に乾燥部60からの乾燥風を防ぐとともに熱の伝播も防ぐことができる。その結果、高精度な濃度測定を実施することができ、セットアップ作業の精度低下を防止可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、乾燥部からの乾燥風を防ぎ、その結果、セットアップ作業の精度低下を防止するという効果を奏することから、乾燥部を搭載した写真処理装置、画像形成装置および印刷装置等に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る写真プリントシステムの外観図。
【図2】図1の写真プリントシステムの内部構成を示す断面図。
【図3】図1の写真プリントシステムに搭載された乾燥部周辺の側面拡大図。
【図4】図1の写真プリントシステムに搭載された乾燥部周辺の側面拡大図。
【図5】図1の写真プリントシステムによって出力されるセットアップ用テストプリント。
【図6】本発明の他の実施形態に係る写真プリントシステムに搭載された乾燥部の側面拡大図。
【図7】本発明のさらに他の実施形態に係る写真プリントシステムに搭載された乾燥部の側面拡大図。
【符号の説明】
【0050】
1 写真プリントシステム
20 操作部
21 モニタ
22 キーボード
23 マウス
30 コンピュータユニット
31 メディアリーダ
40 フィルムスキャナ
50 プリント部
51 印画紙マガジン
52 シートカッター
53 バックプリント部
54 プリント露光部(露光部)
55 処理槽ユニット(現像処理部)
55a 発色現像槽
55b 漂白定着槽
55c 安定処理槽
56 コンベア
57 圧接搬送ローラ対
58 チャッカー式搬送ユニット
59 断熱材(熱遮断部)
60 乾燥部(乾燥処理部)
61 圧接搬送ローラ対(搬送部)
62 ターンローラ対(搬送部)
63 搬送切換ガイド
64 搬出ローラ対(搬送部)
65 搬出孔
66 ターンガイド(搬送部、排出部)
67 シャッター(熱遮断部)
68 搬出孔
69 開閉部(扉)
70 ローラ対
80 濃度測定部(測色部)
81 筐体
82 濃度計(測色部)
83 搬送ローラ
84 排出部
P 印画紙
F 写真フィルム
F1〜F22 帯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像処理が施された感光材料を乾燥処理する乾燥処理部と、
前記乾燥処理部内において前記感光材料を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記感光材料を装置外部に排出する排出部と、
前記感光材料に形成された各帯体の濃度を測色し、前記測色の結果に基づいて処理条件の補正を行う測色部と、
前記乾燥処理部側における前記排出部の近傍に設けられる熱遮断部と、
を備えている、写真処理装置。
【請求項2】
前記熱遮断部は、前記乾燥処理部からの乾燥風を遮断するシャッターである、
請求項1に記載の写真処理装置。
【請求項3】
前記熱遮断部は、前記乾燥処理部からの放射熱を遮断する断熱材である、
請求項1または2に記載の写真処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−171313(P2007−171313A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365673(P2005−365673)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】