説明

写真記録媒体から原画像を復元する復元方法

【課題】写真記録媒体の劣化していない部分まで除去してしまう虞がある。
【解決手段】第1の画像データを生成する透過光撮像工程(ステップS50)と、第2の
画像データを生成する散乱光撮像工程(ステップS51)と、パターンを反転することに
より、同じパターンにするパターン反転工程(ステップS52)と、第1の画像データと
第2の画像データの階調値の範囲を変更する階調値範囲変更工程(ステップS53)と、
同じ画素位置で階調値を加算することにより第3の画像データを生成する階調値加算工程
(ステップS54)と、を含む写真記録媒体から原画像を復元する復元方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真記録媒体から原画像を復元する復元方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長期に保存された写真乾板や写真フィルムなどの写真記録媒体は、経年変化により、写
真記録媒体に塗布された乳剤の表面側に銀が拡散してしまう。そのため、銀塩写真を作成
する方法や、スキャナーを用いて画像を読み取る方法により、このような写真記録媒体か
ら撮影当時の原画像を復元しようとすると、不要な線や模様が形成されたり、輪郭がぼけ
たりするため、撮影当時の原画像を復元することができない。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、長期保存されていた写真乾板や写真フィルムの銀が劣
化した表面を、擦り取ったり、溶液を用いて除去したりする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3446174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、表面を擦り取るときの圧力の度合いが大きすぎ
たり、溶液が指定された濃度でなかったり、指定した手順で実施されなかったりした場合
には、写真記録媒体の劣化していない部分まで除去してしまう虞がある。そのような場合
には、原画像の復元が不可能となってしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]透明支持部材に乳剤が塗布された写真記録媒体を、第1の光源によって前
記透明支持部材の平面に対して垂直方向に照射し、前記写真記録媒体を透過した透過光を
撮像部によって撮像し、第1の画像データを生成する透過光撮像工程と、第2の光源によ
って前記透明支持部材の前記平面に対して斜めの方向に照射し、前記写真記録媒体の前記
第2の光源と反対側からの光を遮断し、前記写真記録媒体からの散乱光を前記撮像部によ
って撮像し、第2の画像データを生成する散乱光撮像工程と、画像処理部を用いて、前記
第1の画像データと前記第2の画像データのうちの一方のパターンを反転することにより
、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを同じパターンにするパターン反転工
程と、前記パターン反転工程により同じパターンとなった前記第1の画像データと前記第
2の画像データの階調値の範囲を、前記画像処理部を用いて変更する階調値範囲変更工程
と、前記階調値範囲変更工程により階調値の範囲が変更された、前記第1の画像データと
前記第2の画像データにおいて、前記画像処理部を用いて同じ画素位置で階調値を加算す
ることにより第3の画像データを生成する階調値加算工程と、を含むことを特徴とする写
真記録媒体から原画像を復元する復元方法。
【0008】
この構成によれば、第2の光源によって透明支持部材の平面に対して斜めの方向に照射
し、写真記録媒体の第2の光源と反対側からの光を遮断し、写真記録媒体からの散乱光を
撮像部によって撮像し、第2の画像データを生成する散乱光撮像工程を含む。これにより
、乳剤における透明支持部材側となる深部に撮影当時に形成された銀の析出部分において
散乱光が生じる。そのため、撮像部によってその散乱光を撮像することにより、乳剤にお
ける透明支持部材側となる深部に撮影当時形成された銀の析出状態を第2の画像データと
して取得することができる。
また、階調値範囲変更工程により階調値の範囲が変更された、第1の画像データと第2
の画像データにおいて、画像処理部を用いて同じ画素位置で階調値を加算することにより
第3の画像データを生成する階調値加算工程を含む。これにより、第3の画像データには
、乳剤における透明支持部材側となる深部に撮影当時形成された銀の析出状態が撮像され
た第2の画像データが含まれる。そのため、第3の画像データを用いて、画像印刷装置に
印刷したり、画像表示装置に表示したりすれば、不要な線や模様が形成されたり輪郭がぼ
けたりすることが抑制され、撮影当時の画像品質に近い原画像を得ることが可能となる。
【0009】
[適用例2]前記散乱光撮像工程では、前記第2の光源の姿勢を変えることにより、前
記透明支持部材の前記平面に対する前記照射光の角度を変えることを特徴とする写真記録
媒体から原画像を復元する上記復元方法。
【0010】
この構成によれば、透明支持部材の平面に対する照射光の角度が変わる。これにより、
撮像部に撮像された画像におけるコントラストが高い画像を取得することができる。
【0011】
[適用例3]前記散乱光撮像工程では、前記透明支持部材の前記平面に対する前記照射
光の角度が同じで、前記照射光の向きが反対となる一対の前記第2の光源によって照射す
ることを特徴とする写真記録媒体から原画像を復元する上記復元方法。
【0012】
この構成によれば、写真記録媒体に入射する光量を増加することができる。また、入射
光量の平均化をさらに図る事ができる。これにより、コントラストの高い画像を得る事が
可能となる。また、一方の光源からの照射による影も出来にくくなる。
【0013】
[適用例4]前記写真記録媒体は、写真乾板であることを特徴とする写真記録媒体から
原画像を復元する上記復元方法。
これにより、写真乾板を用いて撮影した当時の原画像の画像品質に近い原画像を復元す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態における画像復元装置を構成する主要構成要素を示した図。
【図2】写真乾板から原画像を復元する工程のフローチャート。
【図3】透過光撮像工程を説明するための模式図。
【図4】(a)は、透過光撮像工程における写真記録媒体の一部断面の模式図、(b)は、一部断面の位置と対応する画素位置における階調値を説明するためのグラフ、(c)は、パターンを反転させた階調値のグラフ。
【図5】散乱光撮像工程を説明するための模式図。
【図6】(a)は、散乱光撮像工程における写真記録媒体の一部断面の模式図、(b)は、一部断面における階調値を説明するためのグラフ。
【図7】(a)、(b)は、階調値の範囲を変更したグラフ、(c)は、階調値を加算することにより描かれたグラフ。
【図8】第2実施形態における画像復元装置を構成する主要構成要素を示した図。
【図9】第3実施形態における画像復元装置を構成する主要構成要素を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態におけ
る画像復元装置1を構成する主要構成要素を示した図である。画像復元装置1は、透明な
ガラスやプラスティックなどの支持台13を備え、支持台13には、透明支持部材である
透明なガラス板22と、ガラス板22に塗布された乳剤21とから構成される写真記録媒
体としての写真乾板20が置かれる。
【0016】
第1の光源11が、支持台13の写真乾板20と反対側に備えられる。第1の光源11
は、ガラス板22の平面23に対して垂直方向から照射光L1を照射する。
【0017】
黒い材質からなる遮光部12は、矢印D1の方向に移動することができる。遮光部12
が、支持台13の写真乾板20と反対側の面を覆う図1に示す位置にあるとき、第1の光
源11からの照射光L1を遮断する。遮光部12が、二点鎖線Bに示す位置にあるとき、
第1の光源11からの照射光L1は、支持台13を通る透過光となって、写真乾板20を
照射する。
【0018】
第2の光源10が、支持台13の写真乾板20側に備えられる。第2の光源10は、写
真乾板20のガラス板22の平面23に対して、斜めの方向から照射光L2を照射する。
第2の光源10は、姿勢を回転方向D2に変えることができる。これにより、ガラス板2
2の平面23に対する照射光L2の角度Aが変わる。
【0019】
支持台13の第1の光源11と反対側には、撮像部としてのデジタルカメラ2が備えら
れる。デジタルカメラ2には、CCDなどのイメージセンサーが備えられ、写真乾板20
における乳剤21側の画像を撮像し、画像データを生成する。
【0020】
画像復元装置1は、制御装置4、液晶パネルからなる画像表示装置7、使用者が操作す
るための入力機器となるキーボード5とマウス6を備える。制御装置4には、CPU(不
図示)、RAM(不図示)、ROM(不図示)などから構成される制御部や、HDD(不
図示)を備える。
【0021】
使用者によるキーボード5やマウス6の操作により、デジタルカメラ2に生成された画
像データは、通信ケーブル3を介して制御装置4のHDDに転送される。
【0022】
HDDには、オペレーティングシステムと、画像編集用アプリケーションソフトウェア
として、例えば、PHOTOSHOP(登録商標)が格納されている。
【0023】
本実施形態における画像処理部(不図示)は、制御装置4に備えられた制御部や、オペ
レーティングシステムと、画像編集用アプリケーションソフトウェアを含んで構成される
。画像処理部は、CPUがHDDからオペレーティングシステムと、画像編集用アプリケ
ーションソフトウェアをRAMに読み出して実行することにより機能する。
【0024】
画像復元装置1は、通信ケーブル8を介して制御装置4に接続され、液体噴射ヘッド(
不図示)からインクを噴射して紙などの印刷記録媒体Pに画像を形成するインクジェット
式プリンターである画像出力部としての画像印刷装置9が備えられる。画像印刷装置9は
、感光体(不図示)にレーザーを照射して画像を形成するレーザー式プリンターであって
もよい。
【0025】
画像復元装置1によって復元された原画像は、画像出力部としての画像表示装置7に表
示される。また、画像復元装置1によって復元された原画像は、画像印刷装置9によって
印刷記録媒体Pに印刷される。
【0026】
次に、写真乾板20から原画像を復元する方法について説明する。図2は、写真乾板2
0から原画像を復元する工程のフローチャートである。図3は、透過光撮像工程を説明す
るための模式図である。
【0027】
図2のステップS50の透過光撮像工程では、図3の第1の光源11を点灯し、ガラス
板22の平面23に対して垂直方向に照射光L1を照射する。遮光部12は、図3の位置
にあるので、照射光L1は、支持台13、写真乾板20を透過する。このとき、第2の光
源10は消灯しておく。
【0028】
透過光撮像工程では、デジタルカメラ2は、支持台13と写真乾板20を透過した照射
光L1によって形成される画像を撮像し、第1の画像データを生成する。
【0029】
図4(a)は、ステップS50の透過光撮像工程における写真乾板20の一部断面の模
式図である。濃く網がけした部分(矢印で示した範囲R1)は、撮影当時の現像処理、定
着処理によって、銀が析出した領域30を示す。薄く網がけした部分(矢印で示した範囲
R2)は、経年変化により、銀が析出した領域30から銀が拡散した領域31を示す。
【0030】
撮影当時に銀が析出した領域30は、乳剤21におけるガラス板22側の深部から表面
に至る。これに対して、経年変化によって銀が拡散した領域31は、深部には形成されず
に表面側のみに形成されている。
【0031】
図3の第1の光源11からの図4(a)の照射光L1は、ガラス板22を透過する。撮
影当時に銀が析出した領域30と、経年変化によって銀が拡散した領域31とに照射する
照射光L10は、乳剤21を透過しない。一方、撮影当時に銀が析出した領域30と、経
年変化によって銀が拡散した領域31とが形成されていない範囲に照射する照射光L11
は、乳剤21を透過する。
【0032】
図4(b)は、ステップS50の透過光撮像工程でデジタルカメラ2によって撮像され
た第1の画像データにおいて、図4(a)の一部断面における階調値を説明するためのグ
ラフである。縦軸は、階調値を示し、横軸は、図4(a)の一部断面の位置と対応する画
素位置を示す。本実施形態では、階調値の範囲は、例えば0から255の値とする。
【0033】
図4(a)の範囲R1,R2においては、照射光L10が乳剤21を透過しないため、
階調値が0となる。範囲R1,R2以外の範囲においては、照射光L11が乳剤21を透
過するため、階調値が255となる。従って、ステップS50の透過光撮像工程では、デ
ジタルカメラ2によって生成された第1の画像データは、ネガパターンである。
【0034】
図5は、図2のステップS51の散乱光撮像工程を説明するための模式図である。散乱
光撮像工程では、第1の光源11は消灯し、遮光部12は、図5に示す位置にある。これ
により、写真乾板20に対して支持台13側からの光を遮断することができる。
【0035】
散乱光撮像工程では、第2の光源10は点灯し、写真乾板20の乳剤21側におけるガ
ラス板22の平面23に対して斜めの方向から照射光L2を照射する。図1、図5の第2
の光源10の姿勢を回転方向D2に変えることができる。シャッター(不図示)を操作す
る前に、デジタルカメラ2の姿勢を調整しているとき、デジタルカメラ2の撮像視野にお
ける画像が画像表示装置7に表示される。画像表示装置7に表示された画像において、コ
ントラストが高くなるときの姿勢でデジタルカメラ2を固定し、シャッターを使用者が操
作して第2の画像データを撮像する。
【0036】
図6(a)は、ステップS51の散乱光撮像工程における写真乾板20の一部断面の模
式図である。撮影当時に銀が析出した領域30と、経年変化によって銀が拡散した領域3
1に照射光L2が照射すると、散乱光L12が発生する。上述したように、撮影当時に銀
が析出した領域30は、乳剤21の深部から表面に至る領域に形成されているため、平面
のみ銀が拡散した領域31より、散乱光L12が多く発生する。
【0037】
また、撮影当時に銀が析出した領域30における銀の濃度は、経年変化によって銀が拡
散した領域31における銀の濃度より高い。そのため、領域31で発生する散乱光より、
領域30で発生する散乱光の方が多い。従って、図1のデジタルカメラ2側に向かう範囲
R1における散乱光L13は、デジタルカメラ2側に向かう範囲R2における散乱光L1
4より強い。
【0038】
図6(b)は、ステップS51の散乱光撮像工程でデジタルカメラ2によって撮像され
た第2の画像データにおいて、図6(a)の一部断面における階調値を説明するためのグ
ラフである。図4(b)と同様に、縦軸は、階調値を示し、横軸は、図6(a)の一部断
面の位置と対応する画素位置を示す。
【0039】
図6(b)に示すように、範囲R1,R2以外の範囲は、遮光部12によってガラス板
22側からの光が遮断されているため、階調値が0となる。範囲R2においては、階調値
は0から255の値となる。撮影当時に感光して銀が析出した領域30では、階調値が2
55となる。従って、散乱光撮像工程では、デジタルカメラ2によって生成された第2の
画像データは、ポジパターンである。
【0040】
図4(c)は、第1の画像データをネガパターンからポジパターンにパターンを反転さ
せた階調値のグラフである。図4(c)は、図4(b)の階調値のグラフを、図面上下方
向に反転させたグラフである。図2のステップS52のパターン反転工程では、使用者は
、画像編集用アプリケーションソフトウェアを用いて、ステップS50の透過光撮像工程
で生成された第1の画像データにおける階調値を変更してネガパターンからポジパターン
に反転させる(図4(b)、図4(c)参照)。
【0041】
図2のステップS53の階調値範囲変更工程では、使用者は、画像編集用アプリケーシ
ョンソフトウェアを用いて、図4(c)に示すポジパターンの第1の画像データと、図6
(b)に示すポジパターンの第2の画像データの階調値の範囲を変更する。
【0042】
図7(a)は、図4(c)の第1の画像データの階調値のグラフから階調値の範囲を変
更したグラフである。階調値範囲変更工程では、図4(c)の階調値が0から255まで
の範囲にあるポジパターンの第1の画像データを、図7(a)の階調値が0からK1まで
の範囲にあるポジパターンの第1の画像データに変更する。
【0043】
図7(b)は、図6(b)の第2の画像データの階調値のグラフから階調値の範囲を変
更したグラフである。階調値範囲変更工程では、図6(b)の階調値が0から255まで
の範囲にあるポジパターンの第2の画像データを、図7(b)の階調値が0からK2まで
の範囲にあるポジパターンの第2の画像データに変更する。
【0044】
図7(c)は、図7(a)の階調値のグラフと図7(b)の階調値のグラフにおいて、
同じ画素位置での階調値を加算することにより描かれたグラフである。図2のステップS
54の階調値加算工程では、使用者は、ステップS53の階調値範囲変更工程で階調値の
範囲を変更した、第1の画像データと第2の画像データにおける階調値を、同じ画素位置
で加算することによりポジパターンの第3の画像データを生成する。
【0045】
本実施形態では、K1とK2との和は255である。従って、第3の画像データの階調
値の範囲は0から255となる。本実施形態では、K1とK2との和を255と置いたが
、写真乾板20の状態により、K1及びK2の値を調整することができる。また、K1及
びK2の値を調整することにより、汚染された不要な画像を抑制することが可能である。
【0046】
図2のステップS55の画像出力工程では、図1の制御装置4は、画像印刷装置9によ
って、第3の画像データを用いて、印刷記録媒体Pに原画像を印刷する。また、制御装置
4は、第3の画像データを用いて、画像表示装置7に原画像を表示する。
【0047】
以上、本実施形態で説明した、写真記録媒体としての写真乾板20から原画像を復元す
る復元方法では、透明支持部材としてのガラス板22に乳剤21が塗布された写真記録媒
体としての写真乾板20を、第1の光源11によってガラス板22の平面23に対して垂
直方向に照射し、写真乾板20を透過した透過光を撮像部であるデジタルカメラ2によっ
て撮像し、ネガパターンである第1の画像データを生成する透過光撮像工程(ステップS
50)と、第2の光源10によってガラス板22の平面23に対して斜めの方向に照射し
、写真乾板20の第2の光源10と反対側からの光を遮断し、写真乾板20からの散乱光
をデジタルカメラ2によって撮像し、ポジパターンである第2の画像データを生成する散
乱光撮像工程(ステップS51)と、画像編集用アプリケーションソフトウェアを含む画
像処理部を用いて、第1の画像データと第2の画像データのうちの一方である第1の画像
データを、ネガパターンからポジパターンにパターンを反転することにより、第1の画像
データと第2の画像データとを同じポジパターンにするパターン反転工程(ステップS5
2)と、パターン反転工程により同じポジパターンとなった第1の画像データと第2の画
像データの階調値の範囲を、画像処理部を用いて変更する階調値範囲変更工程(ステップ
S53)と、階調値範囲変更工程により階調値の範囲が変更された、第1の画像データと
第2の画像データにおいて、画像処理部を用いて同じ画素位置で階調値を加算することに
よりポジパターンである第3の画像データを生成する階調値加算工程(ステップS54)
と、を含む。
【0048】
この構成によれば、乳剤21におけるガラス板22側となる深部に撮影当時に形成され
た銀の析出部分において散乱光が生じる。そのため、デジタルカメラ2によってその散乱
光を撮像することにより、乳剤21におけるガラス板22側となる深部に撮影当時形成さ
れた銀の析出状態を第2の画像データとして取得することができる。
【0049】
また、第3の画像データには、乳剤21におけるガラス板22側となる深部に撮影当時
形成された銀の析出状態が撮像された第2の画像データが含まれる。そのため、第3の画
像データを用いて、画像印刷装置9に印刷したり、画像表示装置7に表示したりすれば、
不要な線や模様が形成されたり輪郭がぼけたりすることが抑制され、撮影当時の画像品質
に近い原画像を得ることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態における写真乾板20から原画像を復元する復元方法によれば、写真
乾板20の乳剤21と直接、触れることがない。そのため、写真乾板20の乳剤21を損
傷させることを抑制できる。
【0051】
また、散乱光撮像工程では、第2の光源10の回転方向D2における姿勢を変えること
により、ガラス板22の平面23に対する照射光L2の角度Aを変える。
【0052】
これにより、デジタルカメラ2に撮像される画像において、撮影当時に感光して銀が析
出した領域30と、領域30以外の領域とのコントラストが高い画像を取得することがで
きる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態では、一対の第2の光源を備えた、写真乾板20から原画像を復元する復
元装置について説明する。図8は、第2実施形態における画像復元装置1aを構成する主
要構成要素を示した図である。
【0054】
画像復元装置1aは、図1の画像復元装置1の支持台13の写真乾板20側に、さらに
第2の光源14を備える。第1実施形態と同様に、第2の光源14の姿勢を回転方向D6
に変えることができる。第2の光源14以外の構成は、第1実施形態で説明した画像復元
装置1の構成と同じである。
【0055】
第2の光源14は、ガラス板22の平面23に対する照射光L3の角度Aが、第2の光
源10によってガラス板22の平面23に対する照射光L2の角度Aと同じである。第2
の光源14からの照射光L3の向きが、第2の光源10からの照射光L2の向きと反対に
なる位置に、第2の光源10と第2の光源14とが備えられる。
【0056】
第2実施形態における散乱光撮像工程では、ガラス板22の平面23に対する照射光の
角度Aが同じで、照射光L2と照射光L3の向きが反対となる一対の第2の光源10,1
4によって照射する。
【0057】
この構成によれば、写真乾板20に入射する光量を増加することができる。また、入射
光量の平均化をさらに図る事ができる。これにより、コントラストの高い画像を得る事が
可能となる。また、一方の光源からの照射による影も出来にくくなる。
【0058】
本実施形態では、ガラス板22の平面23に対する照射光の角度Aが同じで、照射光L
2と照射光L3の向きが反対となる一対の第2の光源10,14を一組備えた画像復元装
置1aを用いて説明したが、一対の第2の光源10,14を複数組備えた画像復元装置を
用いて、写真乾板20から原画像を復元する方法でもよい。
【0059】
このようにすることにより、写真乾板20に入射する光量をさらに増加することができ
る。また、入射光量の平均化をさらに図る事ができる。これにより、よりコントラストの
高い画像を得る事が可能となる。また、一方の光源からの照射による影もさらに出来にく
くなる。
【0060】
(第3実施形態)
第1実施形態、第2実施形態では、写真乾板20における乳剤21側からデジタルカメ
ラ2によって撮像したが、第3実施形態では、写真乾板20におけるガラス板22側から
デジタルカメラ2によって撮像する。
【0061】
図9は、第3実施形態における画像復元装置を構成する主要構成要素を示した図である
。図9に示すように、写真乾板20の乳剤21は透明な支持台13に接し、ガラス板22
はデジタルカメラ2側に向くようにして置かれる。その他の構成は、図1の第1実施形態
における画像復元装置を構成する主要構成要素と同じである。
【0062】
第3実施形態における写真乾板20から原画像を復元する方法は、第1実施形態の図2
のフローチャートを用いて説明した工程と同じである。
【0063】
第1実施形態から第3実施形態では、パターン反転工程では、ネガパターンである第1
の画像データをポジパターンに反転させたが、パターン反転工程において、ポジパターン
である第2の画像データをネガパターンに反転させ、階調値範囲変更工程、階調値加算工
程では、パターンが同じネガパターンの第1の画像データと第2の画像データを用いて、
ネガパターンである第3の画像データを生成する方法でもよい。
【0064】
また、第1実施形態から第3実施形態では、撮像部としてのデジタルカメラ2を備えた
画像復元装置1,1aについて説明したが、撮像部としてのスキャナーを備えた画像復元
装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
2…デジタルカメラ、10,14…第2の光源、11…第1の光源、12…遮光部、2
0…写真乾板、21…乳剤、22…ガラス板、23…平面、A…角度、K1,K2…階調
値、L1,L2,L3,L10,L11…照射光、L12,L13,L14…散乱光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持部材に乳剤が塗布された写真記録媒体を、第1の光源によって前記透明支持部
材の平面に対して垂直方向に照射し、前記写真記録媒体を透過した透過光を撮像部によっ
て撮像し、第1の画像データを生成する透過光撮像工程と、
第2の光源によって前記透明支持部材の前記平面に対して斜めの方向に照射し、前記写
真記録媒体の前記第2の光源と反対側からの光を遮断し、前記写真記録媒体からの散乱光
を前記撮像部によって撮像し、第2の画像データを生成する散乱光撮像工程と、
画像処理部を用いて、前記第1の画像データと前記第2の画像データのうちの一方のパ
ターンを反転することにより、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを同じパ
ターンにするパターン反転工程と、
前記パターン反転工程により同じパターンとなった前記第1の画像データと前記第2の
画像データの階調値の範囲を、前記画像処理部を用いて変更する階調値範囲変更工程と、
前記階調値範囲変更工程により階調値の範囲が変更された、前記第1の画像データと前
記第2の画像データにおいて、前記画像処理部を用いて同じ画素位置で階調値を加算する
ことにより第3の画像データを生成する階調値加算工程と、を含むことを特徴とする写真
記録媒体から原画像を復元する復元方法。
【請求項2】
請求項1に記載の写真記録媒体から原画像を復元する復元方法であって、
前記散乱光撮像工程では、前記第2の光源の姿勢を変えることにより、前記透明支持部
材の前記平面に対する照射光の角度を変えることを特徴とする写真記録媒体から原画像を
復元する復元方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の写真記録媒体から原画像を復元する復元方法であって

前記散乱光撮像工程では、前記透明支持部材の前記平面に対する前記照射光の角度が同
じで、前記照射光の向きが反対となる一対の前記第2の光源によって照射することを特徴
とする写真記録媒体から原画像を復元する復元方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の写真記録媒体から原画像を復元する復元
方法であって、
前記写真記録媒体は、写真乾板であることを特徴とする写真記録媒体から原画像を復元
する復元方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−180486(P2011−180486A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46297(P2010−46297)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】