説明

冷凍サイクル装置

【課題】正確かつ短時間に吐出温度センサの脱落異常状態を判別する。
【解決手段】圧縮機1、熱交換器2、減圧手段3、蒸発器4を環状に接続した冷凍回路6と、圧縮機1から吐出する冷媒の温度を検出する吐出温度センサ14と、高圧側の冷媒圧力を検出する圧力センサ15と、を備えた冷凍サイクル装置において、圧縮機1の起動開始後に、吐出温度センサ14が検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、圧力センサ15が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である状態が所定の判別時間継続すると、吐出温度センサ14の脱落異常状態であると判別し、運転を停止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吐出温度センサの脱落異常を判別するようにした冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の冷凍サイクル装置においては、特許文献1のように、圧縮機、熱交換器、減圧手段、蒸発器を環状に接続した冷凍回路と、前記圧縮機から吐出する冷媒の温度を検出する吐出温度センサと、を備え、前記圧縮機の起動開始から所定時間経過後に前記吐出温度センサが検出する吐出温度が所定温度以下である場合は、前記吐出温度センサの脱落異常状態であると判別するようにしたものがあった。
【0003】
また、ヒートポンプ給湯装置において、特許文献2のように、圧縮機、給湯熱交換器、減圧手段、蒸発器を環状に接続した冷凍回路と、前記圧縮機から吐出する冷媒の温度を検出する吐出温度センサと、給湯熱交換器の出口湯温を検出する沸き上げ温度センサと、を備え、前記圧縮機の起動開始から所定時間経過後に前記吐出温度センサが検出する吐出温度が前記沸き上げ温度センサが検出する温度以下である場合は、前記吐出温度センサの脱落異常状態であると判別するようにしたものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−99543号公報
【特許文献2】特開2003−222406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この従来の特許文献1のものでは、所定時間が経過するまでは異常判別ができないため、高温高圧状態を長時間継続してしまう恐れがあった。そこで、所定時間を短時間に設定したり、所定温度を低温度に設定すると、雰囲気温度が低い状況での誤検知が増加してしまう問題がある。
【0006】
また、特許文献2のものでは、沸き上げ目標温度が高温度である場合に、圧縮機の起動開始から所定時間が経過するまでの間に、給湯熱交換器で過熱状態となってしまう可能性があり、機器の耐久性に悪影響を与える可能性があった。そこで、所定時間を短時間に設定すると、雰囲気温度が低い状況での誤検知が増加してしまう問題がある。
【0007】
本発明は、従来よりも正確かつ短時間に吐出温度センサの脱落異常状態を判別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するため、圧縮機、熱交換器、減圧手段、蒸発器を環状に接続した冷凍回路と、前記圧縮機から吐出する冷媒の温度を検出する吐出温度センサと、高圧側の冷媒圧力を検出する圧力検出手段と、を備えた冷凍サイクル装置において、前記圧縮機の起動開始後に、前記吐出温度センサが検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、前記圧力検出手段が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である状態が所定の判別時間継続すると、前記吐出温度センサの脱落異常状態であると判別し、運転を停止するようにした。
【0009】
また、圧縮機、熱交換器、減圧手段、蒸発器を環状に接続した冷凍回路と、前記圧縮機から吐出する冷媒の温度を検出する吐出温度センサと、高圧側の冷媒圧力を検出する圧力検出手段と、を備えた冷凍サイクル装置において、前記圧縮機の起動開始から所定の立ち上げ時間経過後に前記吐出温度センサが検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、前記圧力検出手段が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である場合は、前記吐出温度センサの脱落異常状態であると判別し、運転を停止するようにした。
【0010】
また、圧縮機、熱交換器、減圧手段、蒸発器を環状に接続した冷凍回路と、前記圧縮機から吐出する冷媒の温度を検出する吐出温度センサと、高圧側の冷媒圧力を検出する圧力検出手段と、を備えた冷凍サイクル装置において、前記圧縮機の起動開始後に、前記吐出温度センサが検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、前記圧力検出手段が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である状態が所定の判別時間継続した場合、あるいは、前記圧縮機の起動開始から前記所定の判別時間よりも長い所定の立ち上げ時間経過後に前記吐出温度センサが検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、前記圧力検出手段が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である場合は、前記吐出温度センサの脱落異常状態であると判別し、運転を停止するようにした。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、吐出温度センサの脱落異常の誤検知の可能性を極力減少させられると同時に早期に脱落異常状態を判別することができ、冷凍回路が異常高温高圧状態になることを未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態のヒートポンプ給湯装置の概略構成図
【図2】同一実施形態の作動を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の冷凍サイクル装置の一実施形態のヒートポンプ給湯装置を図面に基づいて説明する。
1は冷媒を圧縮する圧縮機、2は圧縮された高温高圧の冷媒と湯水とを熱交換する熱交換器としての給湯熱交換器、3は給湯熱交換器2で放熱した冷媒を減圧する減圧手段としての電子膨張弁、4は低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器としての空気熱交換器、5は空気熱交換器4に外気を送風する送風手段、6は圧縮機1、給湯熱交換器2、電子膨張弁3、空気熱交換器4を冷媒配管7で環状に接続した冷凍回路である。なお、この冷凍回路6は、冷媒に二酸化炭素を用い、高圧側で超臨界状態となるように設計されているものである。
【0014】
8は給湯用の湯水を貯湯する貯湯タンク、9は貯湯タンク8下部に接続された給水管、10は貯湯タンク8上部に接続された出湯管、11は貯湯タンク8下部と給湯熱交換器2の入口側を接続する往き管、12は給湯熱交換器2の出口側と貯湯タンク8上部を接続する戻り管、13は往き管11途中に設けられ貯湯タンク8下部から取り出した湯水を給湯熱交換器2へ循環させ貯湯タンク8上部へ戻す循環ポンプである。
【0015】
14は圧縮機1から吐出された冷媒の温度を検出する吐出温度センサ、15は冷凍回路6の高圧側圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ、16は送風手段5の送風経路に設けられて外気温度を検出する外気温度センサ、17は給湯熱交換器2に流入する湯水の温度を検出する入水温度センサ、18は給湯熱交換器2から流出する湯水の温度を検出する沸き上げ温度センサ、19は貯湯タンク8の側面上下に複数設けられ貯湯温度を検出する貯湯温度センサである。
【0016】
20はこのヒートポンプ給湯装置の制御を行う制御手段で、予め作動を制御するためのプログラムが記憶されていると共に、演算、比較、記憶機能、時計機能を有しているものである。
【0017】
次に、このヒートポンプ給湯装置の作動について説明すると、制御手段20は沸き上げ運転要求を受けると、圧縮機1、送風手段5、循環ポンプ13をそれぞれ所定の初期回転数で駆動し、電子膨張弁3を所定の初期開度に制御して沸き上げ運転を開始する(ステップS1)とともに、運転開始からの時間カウントを開始する。
【0018】
運転開始からの時間のカウントが所定の立ち上げ時間(ここでは10分間)を超える前に(ステップS2でNo)、圧力センサ15で検出する高圧側圧力が圧縮機1および冷凍回路6が正常に作動していると見なせる下限の所定圧力(ここでは8MPa)より高い状態を所定の判別時間(ここでは3分間)継続すると(ステップS3でYes)、次ステップへ進む。
【0019】
そして、ステップS4では、吐出温度センサ14が検出する冷媒の吐出温度が所定の温度(ここでは50℃)よりも高い場合は、圧縮機1および冷凍回路6が正常に作動し、かつ、吐出温度センサ14が正常に機能していると見なせるため、そのまま運転を継続する(ステップS5)。
【0020】
一方、このステップS5で、吐出温度センサ14が検出する冷媒の吐出温度が所定の温度よりも低い場合は、ステップS4でNoとなりステップS6へ進み、再度、圧力センサ15で検出する高圧側圧力が圧縮機1および冷凍回路6が正常に作動していると見なせる下限の所定圧力(ここでは8MPa)より高い状態であるかをチェックする。
【0021】
所定圧力以上あった場合は冷凍回路6の高圧側の圧力は正常に上昇しているにも拘わらず、吐出温度が上昇していない状態であるため、吐出温度センサ14の脱落異常状態であると判別し、ステップS6でYesとなり次のステップS7へ進み、直ちに圧縮機1、電子膨張弁3、送風手段5、循環ポンプ13の作動を停止して運転を停止する。
【0022】
このように、圧縮機1の起動開始後に、吐出温度センサ14が検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、圧力センサ15が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である状態が所定の判別時間継続すると、吐出温度センサ14の脱落異常状態であると判別するので、早期に異常状態を判別することができ、冷凍回路6が異常高温高圧状態になることを未然に防止することができる。また、万が一冷凍回路6が異常高温高圧状態となったとしても、短時間で異常状態を判別することができるため、冷凍回路6への悪影響を及ぼす時間を抑制することができる。
【0023】
一方、吐出温度センサ14が正常な取り付け状態で正常に作動している場合は、高圧側圧力が所定圧力以上まで上昇した状態で所定の判別時間を経過するため、ステップS3でYesとなってステップS4へ進み、吐出温度センサ14で所定温度以上を検出し、圧縮機1および冷凍回路6が正常に作動し、かつ、吐出温度センサ14が正常に機能していると見なせるため、そのまま運転を継続する(ステップS5)。
【0024】
ここで、外気温度が極端に低く冷凍回路6の立ち上げに時間が掛かる場合には、冷媒圧力が所定の圧力まで上がらないままに所定の立ち上げ時間が経過し、ステップS2でYesとなり、次のステップS4で吐出温度センサ14で吐出温度をチェックするが、冷凍回路6の立ち上げに時間が掛かっているために所定温度以下を検出し、ステップS6へ進む。
【0025】
このとき、圧力センサ15で検出する高圧側圧力が圧縮機1および冷凍回路6が正常に作動していると見なせる下限の所定圧力より低い状態であるため、吐出温度センサ14の脱落異常状態であるとは判別せずに、ステップS4とステップS6を繰り返して運転を継続し、吐出温度が所定温度以上に昇温されると、ステップS5へ進み、圧縮機1および冷凍回路6が正常に作動していると見なせるため、そのまま運転を継続する。
【0026】
このように、外気温度や冷凍回路6の雰囲気温度が低く冷凍回路6の立ち上げに時間が掛かるような場合には、吐出温度センサ14の脱落異常状態と誤検知することがなく、不用意に運転を停止してしまうことがない。
【0027】
また、冷媒圧力が所定圧力に上がってから所定の判別時間を経過する前に運転開始からの所定の立ち上げ時間が経過した際に、ステップS4で吐出温度センサ14で検出する吐出温度が所定温度以上に達していない場合は、ステップS6で圧力センサ15で検出する高圧側圧力が圧縮機1および冷凍回路6が正常に作動していると見なせる下限の所定圧力より高い状態であることを検出すると、吐出温度センサ14の脱落異常状態であると判別して、ステップS6でYesとなり次のステップS7へ進み、直ちに圧縮機1、電子膨張弁3、送風手段5、循環ポンプ13の作動を停止して運転を停止する。
【0028】
このように、圧縮機1の起動開始から所定の立ち上げ時間経過後に吐出温度センサ14が検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、圧力センサ15が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である場合は、吐出温度センサ14の脱落異常状態であると判別するので、外気温度や冷凍回路6の雰囲気温度が低く、冷凍回路6の立ち上げに時間が掛かるような場合であっても、正確に吐出温度センサ14の脱落異常状態を検知することができ、安全に運転停止することができる。
【0029】
以上のように、本発明によれば、吐出温度センサの脱落異常状態の誤検知の可能性を極力減少でき、不用意に運転停止に至ることを防止するとともに、早期に脱落異常状態を判別することができ、冷凍回路が異常高温高圧状態になることを未然に防止することが可能となる。
【0030】
なお、本発明は上記の一実施形態に限定されず、要旨を変更しない範囲で種々の改変が可能なもので、例えば、空気調和機に適用することや、冷媒として炭化水素冷媒を利用して高圧側で超臨界以下の圧力で作動するようにすることも可能なものである。また、前記圧力センサ15の代わりに所定圧力以上で作動する圧力スイッチを用いるようにしてもよいものである。
【符号の説明】
【0031】
1 圧縮機
2 給湯熱交換器(熱交換器)
3 電子膨張弁(減圧手段)
4 空気熱交換器(蒸発器)
6 冷凍回路
14 吐出温度センサ
15 圧力センサ(圧力検出手段)
20 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、熱交換器、減圧手段、蒸発器を環状に接続した冷凍回路と、前記圧縮機から吐出する冷媒の温度を検出する吐出温度センサと、高圧側の冷媒圧力を検出する圧力検出手段と、を備えた冷凍サイクル装置において、前記圧縮機の起動開始後に、前記吐出温度センサが検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、前記圧力検出手段が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である状態が所定の判別時間継続すると、前記吐出温度センサの脱落異常状態であると判別し、運転を停止するようにしたことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
圧縮機、熱交換器、減圧手段、蒸発器を環状に接続した冷凍回路と、前記圧縮機から吐出する冷媒の温度を検出する吐出温度センサと、高圧側の冷媒圧力を検出する圧力検出手段と、を備えた冷凍サイクル装置において、前記圧縮機の起動開始から所定の立ち上げ時間経過後に前記吐出温度センサが検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、前記圧力検出手段が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である場合は、前記吐出温度センサの脱落異常状態であると判別し、運転を停止するようにしたことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項3】
圧縮機、熱交換器、減圧手段、蒸発器を環状に接続した冷凍回路と、前記圧縮機から吐出する冷媒の温度を検出する吐出温度センサと、高圧側の冷媒圧力を検出する圧力検出手段と、を備えた冷凍サイクル装置において、前記圧縮機の起動開始後に、前記吐出温度センサが検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、前記圧力検出手段が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である状態が所定の判別時間継続した場合、あるいは、前記圧縮機の起動開始から前記所定の判別時間よりも長い所定の立ち上げ時間経過後に前記吐出温度センサが検出する吐出温度が所定温度以下であり、かつ、前記圧力検出手段が検出する高圧側圧力が所定圧力以上である場合は、前記吐出温度センサの脱落異常状態であると判別し、運転を停止するようにしたことを特徴とする冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−242065(P2011−242065A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114857(P2010−114857)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)