説明

冷蔵庫

【課題】 真空断熱材を多く使用する場合において、断熱箱体の外箱表面温度が外気温よりも高い部分や、外箱内側に断熱材以外の介在物がある部分に対しても真空断熱材を効果的に配設することにより、断熱性能の高い冷蔵庫を提供する。
【解決手段】 断熱箱体22の外箱1の表面温度が外気温よりも高い部分や、外箱1の内側に介在物がある部分に対しては、断熱箱体22の外箱1と内箱2の中間で真空断熱材3aを硬質ウレタンフォーム4に埋設することにより、真空断熱材3aを複層した場合における硬質ウレタンフォーム4の充填不足などを解消する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、真空断熱材を利用した冷蔵庫に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、冷蔵庫の省エネルギー化や省スペース化を狙いに、冷蔵庫の断熱性能を高める一手段として、高断熱性能を有する真空断熱材を利用する方法があり、省エネルギーの要請が益々高まる今日では、硬質ウレタンフォームと比較して数倍から10倍程度の断熱性能を有する真空断熱材を適切な範囲内で最大限に利用することにより断熱性能を向上させていくことが急務であるといえる。真空断熱材を利用した高い断熱性能を有する冷蔵庫を実現する手段としては、特開平6−159922号公報、特開平3−233285号公報、特開平10−205989号公報に記載された手段などが知られている。
【0003】図5には、特開平6−159922号公報に記載されている冷蔵庫の側面断面図を示す。本例では、外箱1と内箱2で構成される空間全体を、成形可能な袋状の紙材8で覆い、この紙材8内部に無機多孔質からなる充填材9を充填し、内外箱で囲まれた空間の形状に沿って真空断熱材3が構成されている。本構成により、内外箱間への真空断熱材の収納作業が容易に行えると共に内外箱と真空断熱材との隙間を塞ぐ作業などが廃止できるうえ、硬質ウレタンフォームを使用せず真空断熱材のみで断熱箱体を構成できるため極めて高い断熱性能を確保することができる。
【0004】また図6には、特開平10−205989号公報に記載されている冷蔵庫の水平断面図を示す。本例では、外箱1と内箱2で構成される空間において、外箱に接するように真空断熱材3を配設し、真空断熱材3を配設した後で硬質ウレタンフォーム4を充填発泡する構成としている。本構成では、平滑面からなる外箱に真空断熱材を貼り付けるため、真空断熱材の面積が大きい場合でも貼付け作業が容易である。また、硬質ウレタンフォームと真空断熱材を複層するため、断熱箱体が強度的に非常に弱くなるといった心配はなく、補強材の追加などにより強度を高めることができる。
【0005】また図7には、特開平3−233285号公報に記載されている冷蔵庫の断熱壁の拡大断面図を示す。本例では、外箱1と内箱2で構成される空間において、内箱2に取り付けられた固定具5で支持される挟持板6に真空断熱材3を挿入挟持し、残りの空間に硬質ウレタンフォームを充填し断熱箱体を構成している。本構成では、放熱用の高温冷媒配管や扉の取っ手など、内外箱で形成される空間において外箱側に配設する介在物を問題なく配設できるだけでなく、硬質ウレタンフォームを充填する際に真空断熱材が移動することがないため、真空断熱材の移動に伴う硬質ウレタンフォームの充填状態の劣化を防止することが可能である。更に、硬質ウレタンフォームと真空断熱材を複層するため、断熱箱体が強度的にみて大幅に弱くなる心配もない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来例のうち特開平6−159922号公報に記載されている冷蔵庫では、硬質ウレタンフォームと比較して強度的に劣る真空断熱材のみを使用した冷蔵庫であるため、断熱性能は高いものの強度的には非常に弱くなるといった問題があった。
【0007】また、特開平10−205989号公報に記載されている冷蔵庫では、外箱外面積に対する真空断熱材の被覆率が大きくなると、例えば冷蔵庫の構成要素の一つである放熱用の高温冷媒配管や扉の取っ手など、内外箱で形成される空間において外箱側に配設する部材を配設するための場所が確保できなくなるといった問題がある。また、真空断熱材を外箱に直接貼り付ける構成としているため、冷蔵庫がシステムキッチンに組み込まれた場合や冷蔵庫の左右に家具などが置かれ、外箱に内接されている高温冷媒配管からの放熱により冷蔵庫周囲の外気温度が40℃を超えるような場合には、真空断熱性能の経時的な断熱性能の劣化が著しく、吸熱負荷量の低減効果が大幅に低下してしまい、最悪の場合には冷蔵庫が冷えない事態さえ想定されるという問題があった。また、外箱に直接真空断熱材を貼り付けるため、外箱表面に凹凸や波打ちが生じ外観の美しさを損ないやすいという問題があった。
【0008】また、特開平3−233285号公報に記載されている冷蔵庫では、真空断熱材の周囲部分を挟持板で支持するため、真空断熱材の外側と内側の両面にて発泡する硬質ウレタンフォームの発泡圧差に耐えることがでず、真空断熱材が反ってしまうことがある。その結果、外箱或いは内箱と真空断熱材との隙間が局所的に極めて薄くなり硬質ウレタンフォームが成形されないといった問題が生じ、時には本問題により生じた空隙が原因して外箱表面に凹凸や波打ちが生じ外観の美しさを損なってしまうという問題があった。また、反りを防止するためには真空断熱材を小さく分割して挟持板で支持する必要があるが、この場合には外箱表面に対する真空断熱材の被覆率を高めることができない。更に、ABSからなる1mm以下の薄い内箱に固定具を取り付けるため、固定具の取り付け作業が安定しないといった問題もある。
【0009】本発明は、上記課題に鑑み、真空断熱材を多く使用しても、箱体強度として問題がなく、かつ高い断熱性能を確保した冷蔵庫を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため、本発明は以下のような構成とする。
【0011】本発明の請求項1に係る冷蔵庫は、外箱と内箱の間に硬質ウレタンフォームと真空断熱材とを備え、真空断熱材を両側面,天面,背面,底面,および前面の各面に配置し、外箱の表面積に対して真空断熱材の被覆率が50%を超え80%以下である冷蔵庫において、外箱表面温度が外気温度よりも高くなる面においては、真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設するように構成したものである。
【0012】本発明によれば、真空断熱材を箱体内外の通過熱勾配の大きい箇所から配設して、被覆率が外箱表面積の概ね50%を超える程度になれば冷蔵庫の吸熱負荷量を効果的に抑えることができ、省エネルギー効果を高めることができる。
【0013】一方、被覆率を80%以下にとどめることにより、標準外の形態をした真空断熱材の使用や作業効率の悪い部分への配設作業を強いられることによる真空断熱材の吸熱量低減に対するコスト比率の急激な増加を避けることができ、真空断熱材の利用価値が高い状態で吸熱負荷量を効果的に抑え、省エネルギー効果を高めることができる。
【0014】更に、冷蔵庫がシステムキッチンに組み込まれた場合や冷蔵庫の左右に家具などが置かれた場合や高温冷媒配管からの放熱により冷蔵庫の表面温度が40℃を超えるような場合を想定して、外気温度よりも外箱表面温度が高くなる部分については、真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設するようにしているため、真空断熱性能の経時的な断熱性能の劣化を最低限に抑えることができる。また、真空断熱材を硬質ウレタンフォームに埋設するため、外箱表面の凹凸や波打ちを抑えることができ、外観の美しさを維持することができる。
【0015】本発明の請求項2に係る冷蔵庫は、外箱と内箱の間に硬質ウレタンフォームと真空断熱材とを備え、真空断熱材を両側面,天面,背面,底面,および前面の各面に配置し、外箱の表面積に対して真空断熱材の被覆率が50%を超え80%以下である冷蔵庫において、外箱内側近傍に硬質ウレタンフォームと真空断熱材以外の介在物がある面においては、真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設するように構成したものである。
【0016】本発明によれば、請求項1に記載した冷蔵庫と同様に外箱表面積に対する真空断熱材の被覆率が50%を超え80%以下であることにより真空断熱材の利用価値が高い状態で吸熱負荷量を効果的に抑え、省エネルギー効果を高めることができる。
【0017】更に、扉の取っ手や放熱用の高温冷媒配管など硬質ウレタンフォームと真空断熱材以外の介在物がある面においては、真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設することにより、真空断熱材の被覆率を低減することなく真空断熱材の利用価値が高い状態で吸熱負荷量を効果的に抑えることができる。
【0018】本発明の請求項3に係る冷蔵庫は、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の冷蔵庫において、芯材と、前記芯材を覆うガスバリア性フィルムからなる前記真空断熱材において、前記ガスバリア性フィルムを構成する金属箔層から成るフィルム面とアルミ蒸着層から成るフィルム面のうち前記アルミ蒸着層から成るフィルム面を内箱側に設けるように構成したものである。
【0019】本発明によれば、ガスバリア性能の低いアルミ蒸着層を内箱側にして真空断熱材を配設することにより、真空断熱材の経時的な断熱性能の劣化を抑制することができる。更に、外箱表面温度が外気温度よりも高くなることが想定される部分については、真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設するため、なお一層経時的な断熱性能の劣化を抑制する効果が高まる。
【0020】本発明の請求項4に係る冷蔵庫は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫において、真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設した面について、硬質ウレタンフォームの発泡方向に沿って真空断熱材と外箱または内箱との距離を徐々に大きくしていくように構成したものである。
【0021】本発明によれば、硬質ウレタンフォームが充填後に発泡していく方向に沿って、真空断熱材と外箱または内箱との距離を徐々に大きくしていくことにより、硬質ウレタンフォームの充填後の発泡初期に比べ後半では発泡力が弱くなるといった現象に対応することができ、発泡後半でも硬質ウレタンフォームをよどみなく均一に発泡させることができる。この結果、硬質ウレタンフォームに真空断熱材を複層した場合の断熱性能を最大限に発揮することができ、省エネルギー効果を高めることができる。
【0022】本発明の請求項5に係る冷蔵庫は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷蔵庫において、真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設した面について、背面側に設けたスペーサの高さを前面側に設けたスペーサの高さ以上とするように構成したものである。
【0023】本発明によれば、外箱と真空断熱材の間に設けたスペーサにより真空断熱材を固定するばかりでなく、冷蔵庫の背面側に設けたスペーサの高さを前面側に設けたスペーサの高さ以上とするだけで、硬質ウレタンフォームの発泡方向に沿って真空断熱材と外箱または内箱との距離を徐々に大きくしていくことができる。また、スペーサはホットメルト接着剤により外箱と真空断熱材を強力に接着できるため、硬質ウレタンフォームの発泡により真空断熱材が移動してしまうといった問題は全く発生しない。更にホットメルト接着剤にて真空断熱材を固定しているため、スペーサを適切な位置に配置することができ、真空断熱材の表裏にて硬質ウレタンフォームの発泡圧が異なる場合に起こり得る真空断熱材の反りを解消することができる。その結果、均質な硬質ウレタンフォーム中に高い被覆率で真空断熱材を埋設することができ、省エネルギー効果を高めることができる。
【0024】本発明の請求項6に係る冷蔵庫は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の冷蔵庫において、両側面,天面,背面,底面,および前面に配設した真空断熱材どうしの離間距離を、外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設した真空断熱材と外箱または内箱との距離のうち何れか小さい方の距離以上にするように構成したものである。
【0025】本発明によれば、真空断熱材どうしの離間距離を硬質ウレタンフォームの充填可能とされる最低厚さ以上にすることにより、硬質ウレタンフォームの流動性を維持することができるため、突き合わせ部分に均質なウレタン層を形成することができる。これにより、硬質ウレタンフォームの荒れや発泡不足による断熱性能の低下を引き起こすことがないばかりか、箱体強度をも維持することができる。
【0026】本発明の請求項7に係る冷蔵庫は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の冷蔵庫において、外箱の前面側折り曲げ端面と両側面に配設する真空断熱材の前面側端面との端面間距離を、外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設した真空断熱材と外箱または内箱との距離のうち何れか小さい方の距離以上にするように構成したものである。
【0027】本発明によれば、前記端面間距離を硬質ウレタンフォームの充填可能とされる最低厚さ以上にすることにより、硬質ウレタンフォームの流動性を維持することができるため、前記端面間に均質なウレタン層を形成することができる。これにより、硬質ウレタンフォームの荒れや発泡不足による断熱性能の低下を引き起こすことがないばかりか、箱体強度をも維持することができる。
【0028】本発明の請求項8に係る冷蔵庫は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の冷蔵庫において、外箱背面に設けた注入口から硬質ウレタンフォームを注入するように構成したものである。
【0029】本発明によれば、外箱と内箱の中間で真空断熱材を硬質ウレタンフォームに埋設することが想定される冷蔵庫の両側壁面に対して直接ウレタンを充填することができるため、外箱または内箱と真空断熱材との間に形成される空間に対して荒れや発泡不足を起こすことなく均質な硬質ウレタンフォームを形成することができる。この結果、断熱性能の低下を引き起こすことがなく省エネルギー効果を高めることができると共に、箱体強度をも維持することができる。
【0030】本発明の請求項9に係る冷蔵庫は、請求項8に記載の冷蔵庫において、真空断熱材と外箱または内箱との空間のうち硬質ウレタンフォームを注入する空間の距離を、背面に設けた硬質ウレタンフォームの注入口径以上とするように構成したものである。
【0031】本発明によれば、硬質ウレタンフォームを注入する側の空間を注入口径以上にすることにより、液状態で注入されるウレタンを発泡させることなく直接外箱の前面折り曲げ端面部分にまで注入することができる。その結果、外箱と内箱との中間位置に配設されている真空断熱材の外側と内側に対して同程度スピードで硬質ウレタンフォームを発泡することができるため、真空断熱材の表裏面において均質なウレタン層を形成し省エネルギー効果を高めることができると共に、箱体強度をも維持することができる。
【0032】本発明の請求項10に係る冷蔵庫は、請求項9に記載の冷蔵庫において、真空断熱材と外箱または内箱との間に形成される空間において、硬質ウレタンフォームを直接注入しない側の空間距離は注入する側の空間距離より小であるように構成したものである。
【0033】本発明によれば、真空断熱材を介して硬質ウレタンフォームを注入する側の空間と反対側にある空間の厚さをウレタンの流動性を維持出来る程度の薄さにすることにより、外箱と内箱との中間で真空断熱材を硬質ウレタンフォームに埋設する場合に最も薄い壁厚を実現することができ、内容積効率が高く、省スペースの要求にも応えた冷蔵庫を提供することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図1から図4を用いて説明する。
【0035】(実施の形態)実施の形態における一実施例の冷蔵庫を図1から図4に示す。図1には冷蔵庫の正面断面図を、図2には冷蔵庫の側面断面図を示す。図1,図2において、21は冷蔵庫本体であり、22は扉10を含めた断熱箱体で、ABSなどの合成樹脂からなる内箱2と鉄板などの金属からなる外箱1とから形成される空間23に硬質ウレタンフォーム4と真空断熱材3a、3b、3cが複層構造で配設されている。断熱箱体22の製造にあたっては、真空断熱材3a〜3cをあらかじめ外箱1または内箱2に直接または間接的に接着固定したあと、硬質ウレタンフォーム4の原料を注入して一体発泡を行う。
【0036】更に、断熱箱体22は各温度帯の部屋に区切られており、12は冷凍室、15は冷蔵室、16は野菜室を構成している。冷凍室12は概ね−15℃〜−25℃の冷凍領域に、冷蔵室15,野菜室16は概ね0〜10℃の冷蔵領域に設定される。17は圧縮機、18は凝縮器、19は冷却器であり冷却装置を構成している。つまり、冷蔵庫本体21は断熱箱体22と、冷凍室12,冷蔵室15,野菜室16と、これら各温度帯の部屋を冷却する圧縮機17、凝縮器18、冷却器19を備えた冷却装置によって構成されている。
【0037】ここで、断熱箱体22の側面と天面における真空断熱材3aは、外箱1に接するように配設され冷却装置の一部を構成する図示していない放熱用の高温冷媒配管を避けて外箱1と内箱2の中間で硬質ウレタンフォーム4に埋設されている。また扉10においては、取っ手10aを避けて扉の外表面と内表面の中間で硬質ウレタンフォーム4に真空断熱材3aが埋設されている。なお、真空断熱材3aは、両面テープを貼り付けたスペーサ24により外箱1および扉10の外表面に接着固定している。また、真空断熱材3bは、断熱箱体22の外箱1の一部を構成する背面板25にホットメルト接着剤を用いて接着固定しており、真空断熱材3cは断熱箱体22の底面において内箱2に両面テープを用いて接着固定している。
【0038】なお、真空断熱材3aと外箱1との距離d1は内箱2との距離d2と同等以上としており、断熱箱体22の両側面、天面、背面、底面に配設した真空断熱材3a〜3cの突き合わせ距離d3は前記距離d1以上を確保して構成している。
【0039】この結果、真空断熱材3a〜3cは、断熱箱体22の両側面,天面,背面,底面,および扉10の各面に万遍なく配置され、外箱1の表面積の80%を占めて配設されている。
【0040】ここで、断熱箱体22の断熱壁厚は、扉10を除き、開口部の壁厚の薄い部分を含めて冷凍室12の冷凍領域において25〜50mmの範囲に、また、冷蔵室15と野菜室16の冷蔵領域においては25〜40mmの範囲にしており、この断熱壁厚中に厚さ15mmの真空断熱材3a〜3cを配設している。このため、外箱1と内箱2の中間で硬質ウレタンフォーム4に埋設される真空断熱材3aの外側の距離d1は、硬質ウレタンフォーム4の充填される厚みが最低でも5mm確保されるよう配慮できており、真空断熱材3bの内側および真空断熱材3cの外側における硬質ウレタンフォーム4の充填される厚みは最低でも10mm確保できている。
【0041】また、図3には冷蔵庫側壁の断熱構造の拡大図を示す。図3において、真空断熱材3aは、グラスウールなどの無機繊維集合体31を加熱乾燥後、アルミ箔により構成された金属箔層フィルム32aとアルミ蒸着を施した蒸着層フィルム32bを貼り合わせた外被材32中に挿入し、内部を真空引きして開口部を封止することにより形成されている。更に、ガスバリア性の高い金属箔層フィルム32aが外箱1側に、蒸着層フィルム32bが内箱2側にくるように配設されている。なお、真空断熱材3b、3cについても外被材32は金属箔層フィルム32aと蒸着層フィルム32bから構成され、外箱1と内箱2に対して同様な位置関係にある。
【0042】ここで、無機繊維集合体31の繊維径は0.1μm〜1.0μmの範囲のものを使用し、硬質ウレタンフォーム4の熱伝導率を0.015W/mKとしたときに、同様の測定基準による熱伝導率が0.0015W/mKである断熱材として真空断熱材3a〜3cを適用している。つまり、硬質ウレタンフォーム4に比べ断熱性能が10倍高い真空断熱材3a〜3cを適用している。
【0043】なお、外被材32を構成している金属箔層フィルム32aは、表面保護層としてポリエチレンテレフタレート(12μm)、中間部にはアルミ箔(6μm)、熱シール層が高密度ポリエチレン(50μm)からなるラミネートフィルムから構成され、もう一方の面である蒸着層フィルム32bは、表面保護層がポリエチレンテレフタレート(12μm)、中間部がエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(15μm)の内側にアルミニウム蒸着を施したフィルム層,熱シール層が高密度ポリエチレン(50μm)からなるラミネートフィルムで構成されている。更に、外被材32には、耐傷つき性を向上させるために表面保護層にナイロン樹脂層を形成させている。
【0044】また、図4には冷蔵庫の水平断面図を示す。図4において、真空断熱材3aを固定しているスペーサ24については、断熱箱体22の背面側に取り付けるスペーサ24の高さが前面側に取り付けられたスペーサ24の高さよりも大となるように構成している。
【0045】また、断熱箱体22に対する真空断熱材3aの前面側端面と外箱1の前面側折り曲げ端面とで構成される端面間距離d5は、真空断熱材3aと外箱1との距離d1以上として構成している。
【0046】また、外箱1の一部を構成する背面板25には硬質ウレタンフォーム4を注入する注入口26を設けており、硬質ウレタンフォーム4が直接注入される真空断熱材3aと内箱2との距離d7は、注入口26の口径以上としている。
【0047】また、硬質ウレタンフォーム4を直接注入しない真空断熱材3aと外箱1との空間距離d8は、硬質ウレタンフォーム4が直接注入される空間距離d7より小としている。
【0048】以上のような構成において、真空断熱材3a〜3cを多量に配設して被覆率を極限まで高めようとする場合、冷蔵庫本体21の図示しない構成部品や特別な構造がある部分(凹凸形状や配管,排水管の設置部など)では特殊な形態の真空断熱材が必要になると共に、真空断熱材の貼り付け作業性が非常に悪くなる。
【0049】このため、概ね外箱1の表面積の80%を超えて真空断熱材3a〜3cを配設しようとしても、使用効率が悪く利用価値が飽和する箇所にまで真空断熱材を貼り付けることになり、真空断熱材の投入に対する断熱性能の向上効果が著しく低下することとなる。
【0050】したがって、本実施の形態のように、外箱1の外面積に対する真空断熱材3a〜3cの被覆率を80%にとどめることによって、真空断熱材3a〜3cを多量に使用していくことによる効果が飽和せず、利用価値が高い状態で吸熱負荷量を効果的に抑えることができ、省エネルギー効果を高めることができる。
【0051】また、80%の被覆率を実現するためには、断熱箱体22の両側面,天面,背面,底面,および前面すなわち扉10の各表面を概ね覆うことができる大きなサイズの真空断熱材3a〜3cを配設することが好ましく、真空断熱材の断熱効率が良くかつ貼り付け作業性も向上する。
【0052】以上の結果、真空断熱材3a〜3cを断熱箱体22の両側面,天面,背面,底面,および前面の各面に配置し、外箱1の外面積に対する真空断熱材3a〜3cの被覆率を80%にとどめることによって、真空断熱材3a〜3cを使用した冷蔵庫本体21のイニシャルコスト増加と省エネルギー化によるランニングコストの低減とのバランスを確保することができ、ライフサイクルコストとしての価値を高めることができる。
【0053】なお、断熱箱体22内外の通過熱勾配の大きい箇所から真空断熱材3a〜3cを配設することにより被覆率が外箱1の外面積の概ね50%を超える程度になれば断熱箱体の吸熱負荷量を効果的に抑え、省エネルギー効果を高めることができる。但し、本実施の形態では断熱箱体22の外寸を高さ1800mm,幅675mm,奥行き650mmとした。
【0054】また、断熱箱体22の両側面及び天面に配設する真空断熱材3aは、外箱1と内箱2の中間で硬質ウレタンフォーム4に埋設され、外箱1に接して配設され冷却装置の構成部品である図示しない放熱用の高温冷媒配管を外箱1と真空断熱材3aの間に設けている。本構成により、高温冷媒配管から放熱される放熱量の内、冷蔵庫本体21内に侵入する放熱量を概ね1/3に低減することができ、冷蔵庫全体の吸熱負荷量を効果的に低減することができる。
【0055】また、冷蔵庫本体21がシステムキッチンに組み込まれた場合や、冷蔵庫本体21の左右が家具によって塞がれた場合には、前記高温冷媒配管の放熱により冷蔵庫本体21の両側面および天面は概ね40℃を越える温度となり、真空断熱材3aが外箱1に接着固定されている場合には、真空断熱材3aの温度が外箱1の温度と同程度になり、真空断熱材3aの断熱性能が経時的に著しく低下するといった問題が生じる。これに対し、真空断熱材3aを外箱1と内箱2の中間で硬質ウレタンフォーム4に埋設した場合には、外箱1の温度と比較して真空断熱材3aの温度を約3℃以上低く保つことができるため、経時的な断熱性能の低下を抑制することができる。
【0056】更に、真空断熱材3aの外被材32のうち、ガスバリア性に優れた金属箔層フィルム32a側を外箱1側に向けて真空断熱材3aを配設することにより、なお一層、真空断熱材3aの経時的な断熱性能の低下を抑制することができる。
【0057】また、真空断熱材を外箱1に貼り付ける場合に比べ、真空断熱材が外箱1と内箱2の中間に埋設されている場合には、断熱箱体22の外側と内側間の熱通過投影面積をより内側で効果的に覆うことができるため、真空断熱材3aの使用面積が同じでも実質的な被覆率を合理的に高めることができる。
【0058】一方、扉10に対しては、取っ手10aを避けて真空断熱材3aを中間層に埋設することにより、大きな面積の真空断熱材3aを貼り付けることで被覆率を高めることができ、吸熱負荷量を効果的に低減することができる。
【0059】更に、真空断熱材3aの外表面全周が硬質ウレタンフォーム4と密着するため、外箱1や内箱2と真空断熱材を直接接触させる場合に生じる剥離によって断熱箱体22の強度が低下するといった問題が生じない。
【0060】更に、真空断熱材3aは外箱1や扉10の外表面に直接接触しないため、外箱1や扉10の外表面と真空断熱材3aの隙間に硬質ウレタンフォーム4の発泡剤が凝集することがない。この結果、環境温度の変化によって発泡剤が膨張,収縮して外観を変形させることがない。故に、外から目立ちやすい断熱箱体22の側面や扉10の外観を損ねることなく、冷蔵庫の品位や価値を維持することができる。
【0061】なお、外箱1と内箱2との中間への真空断熱材の配置は、可能であれば断熱箱体22の全域に亘ってもよいが、本実施の形態では敢えて、断熱箱体22の背面に配設する真空断熱材3bは背面板25に、また断熱箱体22の底面に配設する真空断熱材3cは内箱2に接着固定している。
【0062】これは、断熱箱体22の背面に真空断熱材3bを配設する場合には、真空断熱材3bが冷却装置の配管や冷却器19の除霜水を排水するドレン管の邪魔になるといった問題に配慮すると共に、背面板25と真空断熱材3bを一体品として組み立てる方が製造工程上好ましいなどの理由からである。
【0063】また、断熱箱体22の底面に配設する真空断熱材3cを内箱2に接着固定しているのは、圧縮機17や凝縮器18からの放熱により概ね40℃を超える機械室20の温度の影響が真空断熱材3cに至り、真空断熱材の経時的な断熱性能の低下が生じることを防止するためである。
【0064】一方、真空断熱材3aの外側に構成している硬質ウレタンフォーム4の厚さd1は、内側に構成している硬質ウレタンフォーム4の厚さd2以下の5mmを確保し、真空断熱材3b、3cの外側または内側に構成している硬質ウレタンフォームの厚さは10mmを確保している。このため硬質ウレタンフォーム4の発泡時の流動性を妨げることなく、フォームの荒れや充填不良による断熱性能の低下を引き起こすことはなく、断熱箱体の強度低下を招くこともない。
【0065】また、断熱箱体22の両側面、天面、背面および底面に配設する真空断熱材3a〜3cの突き合わせ距離d3は、真空断熱材3a外側の硬質ウレタンフォーム4の厚さd1以上としているため、突き合わせ部における硬質ウレタンフォーム4の発泡時の流動性を妨げることなく、フォームの荒れや充填不良による断熱性能の低下や、断熱箱体22の強度低下を生じることはない。
【0066】以上のように、真空断熱材3a〜3cの厚みを確保し真空断熱材の断熱性能を十分に発揮させながら、かつ硬質ウレタンフォーム4の断熱性能をも堅持しているため、複層断熱壁としての断熱性能を効果的に高めることができ、特に、庫内外の温度勾配が大きい冷凍温度領域においては一層効果的である。
【0067】また、冷凍室12の断熱壁厚を50mm以下にすることで、比較的容積比率の小さい冷凍室12に対して真空断熱材3a〜3cを適用して外観レイアウトに影響を与えないで容積効率を増加させることにも活用でき、真空断熱材の利用価値をより高めることができる。
【0068】また、冷蔵室15と野菜室16の断熱壁厚を40mm以下にすることで、庫内外の温度勾配が比較的小さい冷蔵温度領域においても、真空断熱材3a〜3cの適用により容積効率の向上の効果を得ることができる。
【0069】また、真空断熱材3aの内容積への貢献分を内容積の拡大に利用せずに外容積のコンパクト化に転用すれば冷蔵庫本体21の設置スペースの省スペース化に繋げることができる。
【0070】なお、ドア10の断熱壁厚をこれらの範囲内に敢えて規定しないのは、庫内の収納物を支えるドア10の強度確保や取っ手10aやデザイン上の凹凸部の存在を考慮すべき場合があるからである。
【0071】なお、真空断熱材3a〜3cの厚みは10mm程度までなら外被材32を介しての所謂ヒートブリッジの影響が比較的大きくならず単品の断熱性能も概ね維持できるので、期待通りの断熱効果を得ることができる。一方、真空断熱材3a〜3cの厚みを増して断熱効果を高めることも可能であるが、この場合には硬質ウレタンフォーム4の流動性を阻害する危険性があるため、むしろ厚みを分割して他の面に展開した方が合理的である。よって、真空断熱材3a〜3cの厚みは10mm〜15mmが適切である。
【0072】一方、硬質ウレタンフォーム4を断熱箱体22の背面板25に設けた注入口より注入することにより、断熱箱体22の両側面に配設した真空断熱材3aの周囲に直接ウレタンを注入することができる。このとき、硬質ウレタンフォーム4を直接注入する真空断熱材3aと内箱2との距離d7を硬質ウレタンフォーム4の注入口径d6以上の幅とすることにより、液状で注入される硬質ウレタンフォーム4を断熱箱体22の前面部に直接注入することができ、注入後の発泡プロセスを円滑に進めることができる。
【0073】また、断熱箱体22に対する真空断熱材3aの前面側端面と外箱1の前面側折り曲げ端面との端面間距離d5を真空断熱材3aと外箱1との距離d1以上とすることにより、液状で注入された硬質ウレタンフォーム4を滞留なく真空断熱材3aの表裏に発泡させることができる。
【0074】また、真空断熱材3aと硬質ウレタンフォーム4を直接注入しない外箱1との空間距離を発泡方向に沿って徐々に大きくしていくことにより、発泡力が弱まる発泡プロセスの後半においても充填不足などの問題を生じることはない。
【0075】また、発泡方向に沿って真空断熱材3aと外箱1との空間距離を徐々に大きくする方法としては、真空断熱材3aを固定しているスペーサ24の高さを調整するだけでよく、簡便な方法で硬質ウレタンフォームの流動性を確保することができる。
【0076】この結果、注入後の硬質ウレタンフォーム4は、真空断熱材3aの表裏を同じ程度の発泡スピードで発泡され、真空断熱材3aの表裏共に均質な硬質ウレタンフォーム4を形成することができる。
【0077】更に、この場合には、真空断熱材3aの表裏にかかる発泡圧が同程度であるため、真空断熱材3aが発泡圧の差によって反ってしまうといった問題も生じないため、真空断熱材3aの表裏において硬質ウレタンフォーム4の充填不足による断熱性能や強度の低下を生じることがなく、剥離など外観上問題となる現象を引き起こすこともない。
【0078】また、硬質ウレタンフォームを直接注入しない外箱1と真空断熱材3aとの距離d8を直接注入する内箱側の距離d7より小さくすることにより、断熱箱体22の両側面の壁厚を前述した壁厚以内にとどめ、壁厚を薄くして容積効率の向上や冷蔵庫本体21の設置スペースの省スペース化を達成することができる。
【0079】なお、本発明の形態では、真空断熱材3a〜3cの熱伝導率を硬質ウレタンフォーム4の熱伝導率を0.015W/mKとしたときに0.0015と1/10のものを適用したが、無機繊維集合体31の繊維径の異なるものを採用するなどし、0.0010W/mK〜0.0030W/mKとして、1/15〜1/5の比率の範囲としてもよい。これは、硬質ウレタンフォーム4と真空断熱材3a〜3cとの複層断熱壁厚が比較的薄い場合において、硬質ウレタンフォーム4の流動性を阻害しないために真空断熱材3a〜3cの厚みを薄くしたとしても複層断熱壁としての断熱性能を効果的に発揮するためである。更に、高被覆率化を実現するために断熱箱体22の比較的壁厚の薄い箇所にも真空断熱材3a〜3cを配設し、省エネルギー効果を期待通り発揮させるためである。
【0080】
【発明の効果】以上のように請求項1の発明によれば、外箱表面積に対する真空断熱材の被覆率が50%を超え80%以下であることにより真空断熱材の利用価値が高い状態で吸熱負荷量を効果的に抑えて省エネルギー効果を高めることができる。更に、冷蔵庫がシステムキッチンに組み込まれた場合や高温冷媒配管からの放熱により冷蔵庫の表面温度が外気温度よりも外箱表面温度が高くなる場合において、真空断熱性能の経時的な断熱性能の劣化を最低限に抑えることができる。また、外箱表面の凹凸や波打ちを抑えることができ、外観の美しさを維持することができるという有利な効果が得られる。
【0081】また、請求項2の発明によれば、外箱表面積に対する真空断熱材の被覆率が50%を超え80%以下であることにより真空断熱材の利用価値が高い状態で吸熱負荷量を効果的に抑え、省エネルギー効果を高めることができる。更に、扉の取っ手や放熱用の高温冷媒配管など硬質ウレタンフォームと真空断熱材以外の介在物がある面においても真空断熱材の被覆率を低減することなく真空断熱材の利用価値が高い状態で吸熱負荷量を効果的に抑えることができる。また、外箱表面の凹凸や波打ちを抑えることができ、外観の美しさを維持することができるという有利な効果が得られる。
【0082】また、請求項3の発明によれば、ガスバリア性能の低いアルミ蒸着層を内箱側にして真空断熱材を配設することにより、真空断熱材の経時的な断熱性能の劣化を抑制することができる。更に、外箱表面温度が外気温度よりも高くなることが想定される部分については、真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設するため、なお一層経時的な断熱性能の劣化を抑制する効果が高まる。
【0083】また、請求項4の発明によれば、硬質ウレタンフォームが充填後に発泡していく方向に沿って、真空断熱材と外箱または内箱との距離を徐々に大きくしていくことにより、硬質ウレタンフォームの充填後の発泡初期に比べ後半では発泡力が弱くなるといった現象に対応することができ、発泡後半でも硬質ウレタンフォームをよどみなく均一に発泡させることができる。この結果、真空断熱材を複層した場合の硬質ウレタンフォームの断熱性能を最大限に発揮することができ、省エネルギー効果を高めることができる。
【0084】また、請求項5の発明によれば、外箱と真空断熱材の間に設けたスペーサにより真空断熱材を固定するばかりでなく、冷蔵庫の背面側に設けたスペーサの高さを前面側に設けたスペーサの高さ以上とするだけで、硬質ウレタンフォームの発泡方向に沿って真空断熱材と外箱または内箱との距離を徐々に大きくしていくことができる。また、スペーサはホットメルト接着剤により外箱と真空断熱材を強力に接着できるため、硬質ウレタンフォームの発泡により真空断熱材が移動してしまうといった問題は全く発生しない。更にホットメルト接着剤にて真空断熱材を固定しているため、スペーサを適切な位置に配置することができ、真空断熱材の表裏にて硬質ウレタンフォームの発泡圧が異なる場合に起こり得る真空断熱材の反りを解消することができる。その結果、均質な硬質ウレタンフォーム中に高い被覆率で真空断熱材を埋設することができ、省エネルギー効果を高めることができる。
【0085】また、請求項6の発明によれば、真空断熱材どうしの離間距離を硬質ウレタンフォームの充填可能とされる最低厚さ以上にすることにより、硬質ウレタンフォームの流動性を維持することができるため、突き合わせ部分に均質なウレタン層を形成することができる。これにより、硬質ウレタンフォームの荒れや発泡不足による断熱性能の低下を引き起こすことがないばかりか、箱体強度をも維持することができる。
【0086】また、請求項7の発明によれば、断熱箱体に対する真空断熱材の前面側端面と外箱前面の折り曲げ端面とで構成される端面間距離を硬質ウレタンフォームの充填可能とされる最低厚さ以上にすることにより、硬質ウレタンフォームの流動性を維持することができるため、前記端面間に均質なウレタン層を形成することができる。これにより、硬質ウレタンフォームの荒れや発泡不足による断熱性能の低下を引き起こすことがないばかりか、箱体強度をも維持することができる。
【0087】また、請求項8の発明によれば、外箱の背面に設けられた硬質ウレタンフォームの注入口から、外箱と内箱の中間に埋設された真空断熱材に対して直接ウレタンを注入することができるため、効率よくかつ均質な硬質ウレタンフォームを形成することができる。この結果、省エネルギー効果を高めることができると共に、箱体強度をも維持することができる。
【0088】また、請求項9の発明によれば、硬質ウレタンフォームを注入する側の空間を注入口径以上にすることにより、液状態で注入されるウレタンを発泡させることなく直接外箱の前面折り曲げ端面部分にまで注入することができる。その結果、外箱と内箱との中間位置に配設されている真空断熱材の外側と内側に対して同程度スピードで硬質ウレタンフォームを発泡することができるため、真空断熱材の表裏面において均質なウレタン層を形成し省エネルギー効果を高めることができると共に、箱体強度をも維持することができる。
【0089】また、請求項10の発明によれば、真空断熱材を介して硬質ウレタンフォームを注入する側の空間と反対側にある空間の厚さをウレタンの流動性を維持出来る厚さにすることにより、外箱と内箱との中間で真空断熱材を硬質ウレタンフォームに埋設する場合においても薄い壁厚を実現することができ、内容積効率が高く、省スペースの要求にも応えた冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面断面図
【図2】同実施の形態の冷蔵庫の側面断面図
【図3】同実施の形態の冷蔵庫側壁の断熱構造の拡大図
【図4】同実施の形態の冷蔵庫の水平断面図
【図5】従来の冷蔵庫の側面断面図
【図6】従来の冷蔵庫の水平断面図
【図7】従来の冷蔵庫の断熱壁の拡大断面図
【符号の説明】
1 外箱
2 内箱
3a 中間層に配設する真空断熱材
3b 断熱箱体背面に配設する真空断熱材
3c 断熱箱体底面に配設する真空断熱材
4 硬質ウレタンフォーム
21 冷蔵庫本体
22 断熱箱体
24 スペーサ
25 背面板(外箱)
31 無機繊維集合体
32 外被材
32a 金属箔層フィルム
32b 蒸着層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外箱と内箱の間に硬質ウレタンフォームと真空断熱材とを備え、真空断熱材を両側面,天面,背面,底面,および前面の各面に配置し、外箱の表面積に対して真空断熱材の被覆率が50%を超え80%以下である冷蔵庫において、外箱表面温度が外気温度よりも高くなる面においては、真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】 外箱と内箱の間に硬質ウレタンフォームと真空断熱材とを備え、真空断熱材を両側面,天面,背面,底面,および前面の各面に配置し、外箱の表面積に対して真空断熱材の被覆率が50%を超え80%以下である冷蔵庫において、外箱内側近傍に硬質ウレタンフォームと真空断熱材以外の介在物がある面においては、真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】 芯材と、前記芯材を覆うガスバリア性フィルムからなる前記真空断熱材において、前記ガスバリア性フィルムを構成する金属箔層から成るフィルム面とアルミ蒸着層から成るフィルム面のうち前記アルミ蒸着層から成るフィルム面を内箱側に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項4】 真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設した面において、硬質ウレタンフォームの発泡方向に沿って真空断熱材と外箱または内箱との距離を徐々に大きくしていくことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】 真空断熱材を外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設した面において、背面側に設けたスペーサの高さを前面側に設けたスペーサの高さ以上とすることを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】 両側面,天面,背面,底面,および前面に配設した真空断熱材どうしの離間距離を、外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設した真空断熱材と外箱または内箱との距離のうち何れか小さい方の距離以上にすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】 外箱の前面側折り曲げ端面と両側面に配設する真空断熱材の前面側端面との端面間距離を、外箱と内箱の中間で硬質ウレタンフォームに埋設した真空断熱材と外箱または内箱との距離のうち何れか小さい方の距離以上にすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】 外箱背面に設けた注入口から硬質ウレタンフォームを注入することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項9】 真空断熱材と外箱または内箱との空間のうち硬質ウレタンフォームを注入する空間の距離を、背面に設けた硬質ウレタンフォームの注入口径以上とすることを特徴とする請求項8に記載の冷蔵庫。
【請求項10】 真空断熱材と外箱または内箱との間に形成される空間において、硬質ウレタンフォームを直接注入しない側の空間距離は注入する側の空間距離より小であることを特徴とする請求項8または請求項9のいずれか一項に記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2003−14368(P2003−14368A)
【公開日】平成15年1月15日(2003.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−196060(P2001−196060)
【出願日】平成13年6月28日(2001.6.28)
【出願人】(000004488)松下冷機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】