刃先交換式切削工具
【課題】円形インサートの切れ刃をインサート取付座の着座面に対して、正確な位置に割り出して装着することができる刃先交換式切削工具を提供する。
【解決手段】円形インサートの底面には、ねじ挿通孔の中心軸から底面の外側方向に向けて同心円状に形成され、凹部とされた装着用割り出し部を備え、この装着用割り出し部の底面との境界部は、滑らかな湾曲形状をなす第1の側壁と、湾曲形状をなす第1の側壁とを順次複数連接した段差側壁部から構成している。インサート取付座の着座面には、この着座面から突出し、円形インサートの装着用割り出し部のうち、湾曲形状をなす第1の側壁に隣接する窪み部内に挿入可能な第2の回動防止部が形成されている。円形インサートを着座面に装着して切れ刃の正確な位置の割り出しを行ったときには、第2の回動防止部は、円形インサートの底面に形成されている窪み部内に挿入される。
【解決手段】円形インサートの底面には、ねじ挿通孔の中心軸から底面の外側方向に向けて同心円状に形成され、凹部とされた装着用割り出し部を備え、この装着用割り出し部の底面との境界部は、滑らかな湾曲形状をなす第1の側壁と、湾曲形状をなす第1の側壁とを順次複数連接した段差側壁部から構成している。インサート取付座の着座面には、この着座面から突出し、円形インサートの装着用割り出し部のうち、湾曲形状をなす第1の側壁に隣接する窪み部内に挿入可能な第2の回動防止部が形成されている。円形インサートを着座面に装着して切れ刃の正確な位置の割り出しを行ったときには、第2の回動防止部は、円形インサートの底面に形成されている窪み部内に挿入される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具本体に形成されたインサート取付座に円形のインサートを着脱自在に取付けるフライス加工用の刃先交換式切削工具において、切削加工を行うために円形インサートの底面をインサート取付座の着座面に固定するときに、この円形インサートの切れ刃を着座面の正しい位置に装着するための手段を備えた刃先交換式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
円形(又は丸駒形)のインサート(以下、「円形インサート」と記載する)は、すくい面となる上面と、この上面と対向する底面、上面と底面との間に形成されて逃げ面となる外周側面とを備え、上面と外周側面とが交差する稜線部の全周にわたって切れ刃が形成されており、その形状は平板状で円形をなしている。円形インサートは、超硬合金からなる粉体を、金型を用いたプレス成形等により成形体を成形し、この成形体を適切な温度に加熱(焼成)して焼結する工程等を経て製造される。
【0003】
また、円形インサートを装着した刃先交換式切削工具においては、被削材に対して、例えば所定の累計加工時間又は所定の累計切削加工長さの切削加工を行うと、この円形インサートをインサート取付座の着座面への固定を解除して、この円形インサートについて未使用の切れ刃の部分が次の切削加工に使用されるように、円形インサートを手作業で所定角度回転させて、再度、このインサートの底面を着座面にねじ部材により装着し直す操作(再装着)が行われる。これにより、一つの円形インサートは、その切れ刃の領域を順次有効に切削加工に利用することができるという利点を備えている。通常、一つの円形インサートについて、インサート取付座に装着し直す回数(再装着回数)は、4〜8回程度とされている。
【0004】
このように、円形インサートをねじ部材を用いて、工具本体のインサート取付座に着脱自在に取付ける(又は「装着する」、あるいは「固定する」)刃先交換式切削工具においては、従来から下記の課題1、2が生じている。
【0005】
(課題1):インサートの回動防止
円形インサートをねじ部材によりインサート取付座の着座面に強固に固定しても、切削加工中における切削加工負荷は円形インサートのねじ部材による締付けを緩める力として作用する場合があり、円形インサートが回動する現象が発生する可能性がある。このため、長時間にわたって精度の高い加工を行うことができなくなるという課題があり、円形インサートの回動を防止する手段(回動防止手段)を設けることが必要になる。
【0006】
(課題2):インサート装着時の切れ刃の正確な割り出し
円形インサートを装着した刃先交換式切削工具においては、被削材に対して、前記したように、例えば所定の累計加工時間又は所定の累計切削加工長さの加工を行うと、円形インサートをインサート取付座の着座面へのねじ部材による締付け固定を解除して、この円形インサートについて未使用の切れ刃の部分が次の切削加工に使用されるように、円形インサートを手作業で着座面の正確な位置に再度固定、すなわち、円形インサートの切れ刃の正確な割り出しを行って、この円形インサートを着座面にねじ部材(止めねじ)を用いて固定し直す再装着の操作が行われる。これにより、一つの円形インサートは、その切れ刃の領域を順次有効に切削加工に使用することができるという利点を備えている。通常、一つの円形インサートについては、インサート取付座に装着し直す回数(再装着回数)は、切り込み量を考慮して4〜8回程度とされている。
【0007】
上記した円形インサートを再装着する操作においては、作業者の「うっかりミス」により、円形インサートが着座面の正しい位置に装着されないとい不具合が発生することがあり得る。例えば、既に使用済みの切れ刃の一部が次の切削加工の切れ刃に含まれるように円形インサートを装着するという装着ミスが発生する場合があり得る。この「うっかりミス」を防止するために、一般に、円形インサートの上面の切れ刃の近傍には、インサートの中心軸から等角度ごとに、例えば再装着回数が「8」の場合、45°ごとに、微小な凸状又は凹状形状をなす割り出しマークを予め形成しておき、一方、インサート取付座の着座面の外側方向であって工具軸線側にこの割り出しマークと位置合せを目視で行うための目印となる位置合せマークを一つ形成しておく手段が採用されている。
【0008】
この割り出しマークと位置合せマークを用いた手段において、円形インサートを再装着するときには、上記した割り出しマークと位置合せマークとを目視で位置合せ、すなわち、円形インサートの底面を着座面上に載置した状態で両マーク間の間隔が最小となる円形インサートの位置を目視で確認した上で、円形インサートを着座面にねじ部材により再装着することが実施されている。このような切れ刃の割り出し手段においても、正確な割り出し位置の決定は作業者の目視に頼っているために、上記した「うっかりミス」が発生する可能性がある。例えば、割出し位置マークと位置合せマークとの位置合せが正確でなくても、ねじ部材により円形インサートを着座面に固定することが可能であるため、使用済みの切れ刃の一部が次回の切削加工に使用されるという不具合が発生することが有り得る。
従って、円形インサートを装着する刃先交換式切削工具においては、上記した円形インサートを再装着するときに、切れ刃の正確な位置の割り出しを行う手段(割り出し手段)を設けることが極めて重要になる。
【0009】
円形インサートを用いた刃先交換式切削工具において、上記した課題1、課題2、または双方の課題を解決する手段としては、例えば、下記の特許文献1〜7に記載の発明が提案されている。
【0010】
特許文献1(特表平11−508192号公報)に記載の発明には、円形の形状を有する切削インサートを取付けたフライス加工用の切削工具において、この切削インサートの回動を阻止する手段として、円形インサートの外周面である円錐形状面を工具本体の受け面に接触させて固定する手段と、円形インサートの底面側を多角形状に形成し、この多角形状とした底面を工具本体と当接させて円形インサートの回動を阻止する手段とを併用することが提案されている。また、円形インサートの底面を多角形状にし、この多角形の1辺を着座面(ポケット)の周辺部に立設した下位部分37と当接させることにより、円形インサートを着座面に装着するときの位置決め(割り出し)手段としている。
【0011】
特許文献2(特表2006−523541号公報)に記載の発明には、円形インサート(円形の切削用チップ)を使用した回転防止工具ホルダー及び切削用チップ工具において、工具ホルダー内に少なくとも1つのチップ用ポケットと、このチップ用ポケットに対応する少なくとも1つの回転防止ストッパであって実質的に平らな面を含む回転防止ストッパを備えた回動防止手段が提案されている。また、特許文献2に記載の円形の切削用チップは、その側壁の周囲に多数の凹部を底面に達するように設け(Fig2参照)、工具ホルダーに設けた回転防止ストッパをこの凹部に当接させて円形の切削用チップの回転を防止する構成としている。さらに、回転防止ストッパの両側には円弧形状をなす側壁を設けていることも開示されている(Fig2参照)。
【0012】
特許文献3(特開2007−210090号公報)に記載の発明には、周面にニック溝を形成した円形インサートを誤装着することなく所定の角度ずつ回転させて取付座に取り付け直すことを可能とした丸駒インサート着脱式切削工具が提案されている。この切削工具は、円形インサートの周面に複数の切欠面とニック溝を等間隔に形成し、この切欠面のうち周方向に一定数おきの一部の切欠面同士は、その周方向の互いに等しい位置に一部のニック溝が延びて、工具本体のインサート取付座への拘束面とし、さらに、このインサート取付座には、この拘束面が当接させられる取付座壁面と、これら取付座壁面から突出して拘束面の一部のニック溝に収容される突起を形成した構成としたものである。
そして、この切削工具においては、円形インサートの拘束面が工具本体の取付座壁面に当接するように取り付けられるため、円形インサートの拘束面と工具本体の取付座壁面との面同士の当接で円形インサートを保持してそのズレ動きや脱落、誤装着することなく所定の角度ずつ正確に回転させて再装着することにより、安定した加工を促すことが可能になっている。また、特許文献3の図5等には、ニック溝は円形インサートの上面まで達する構成としたことも示されている。
【0013】
特許文献4(特開2010−247322号公報)に記載の発明には、円形インサートの回動を防止すると共にインサートの刃先強度を落とすことなく、この円形インサートを工具本体に精度良く取付けることができる刃先交換式切削工具が提案されている。この刃先交換式切削工具は、円錐状をなす外周面に回動防止面となる凹部を設けた円形インサートを、工具本体に固定するためのインサート固定部の構成が開示されており、このインサート固定部の構成は、円形インサートの底面を受ける着座面と、インサートの外周面を受ける2つの受け面と、2つの受け面の中央部に回動防止部材を組み込む手段と、からなる構成とされている。そして、インサートの回動防止面(凹部)とこの回動防止部材とを接触させることにより、円形インサートの回動を防止するための手段としている。
さらに、特許文献4に記載の刃先交換式切削工具においては、刃先強度を含むインサートの強度を低下させないために、円形インサートの厚さをhとしたときに、回動防止面の上端がインサートの底面から(2/3)hの位置より下方にあり、回動防止面の下端がインサートの底面から(1/10)hの位置より上方になるようにすることが開示されている。
【0014】
特許文献5(特許第3777043号公報)には、円形インサートの切れ刃の割り出しの操作を正確に行うことができるとともに、切削抵抗負荷による円形インサートの回動防止機能を備えた円形インサートを装着した切削工具に関する発明が提案されている。
同文献記載の切削工具は、円形インサートを装着するインサート取付座と、インサート取付座に装着した円形インサートの逃げ面をインサート取付座に対して起立して形成したインサート拘束壁で拘束する構成を備えた切削工具において、インサート取付座に装着する円形インサートの底面側には、このインサートの軸中心に対して滑らかな湾曲状凹凸を繰り返して形状した係合ギア(同文献図1(b)参照)を形成し、さらに、この係合ギアに嵌合する辺縁形状を有する段上がり部(同文献図2参照)をインサート取付座とインサート拘束壁との間に形成した切削工具である。このような構成を備えた切削工具においては、円形インサートを再装着するときに係合ギアと段上がり部とを嵌合させることができるので、切れ刃を所定通りの正確な位置に位置決めする(割り出す)ことを可能とするものである。また、同文献には、インサート拘束壁は段上がり部を介してインサート取付座に対して起立するように設けることが記載されている。
【0015】
特許文献6(特開昭64−40205号公報)には、切削加工中における円形インサートの回動をより確実に防止するとともに、インサート取付座へ装着する円形インサートについて多数の割り出し位置を提供することを目的とした切削用工具に関する発明が提案されている。
同文献記載の切削用工具は、インサート取付座に装着された円形インサートの外周側面と係合するキャビティ壁をインサート取付座の周辺部から立設して設けるとともに、インサート取付座の着座面には断面が円形をなす固定用ピンを嵌め込んで、この着座面上に突出させた構成とされている。また、円形インサートは、その底面にインサート孔と同心円状をなす円形凹部を設け、この円形凹部の外周壁は多数の円弧状側壁(円形の凹所)を連接して形成した構成を備えている(FIG4〜FIG6参照)。そして、円形インサートをインサート取付座に装着したときには、固定用ピンが円形インサートの底面に形成されている円弧状側壁の一つと係合させることにより、多数の割り出し位置の提供を可能としたものである。また、同文献には、円弧状側壁は固定用ピンの半径と等しい半径を有する(明細書第2頁左下欄第13行〜第15行)、ことが記載されている。
【0016】
特許文献7(US2011/0103905A1公報)には、円形インサートを装着する刃先交換式切削工具において、切削加工中における円形インサートの回動の防止と、この円形インサートをインサート取付座に装着するときに切削加工に使用する切れ刃の位置の割り出しを行うことができる円形インサートに関する発明が提案されている。
同文献に記載の円形インサートは、円形インサートの上面と底面にインサートの中心軸から同心円状に、かつ等角度で複数の突起(projection)を設けるとともに、この円形インサートを装着するインサート取付座の着座面にこの円形インサートに設けた突起と係合する凹部(dimple)を設けることにより、円形インサートをインサート取付座の着座面に装着するときに、切れ刃の位置の割り出しを確実に行うことができるようにしたものである。
【0017】
一方、円形インサートを着脱自在に装着する刃先交換式切削工具においては、前記したようにこの円形インサートは超硬合金製のインサートが使用されている。超硬合金製からなる円形インサートの製造は、一般に次の手段が採用されている。
微粉末状の超硬合金を、例えば、金型成形等により所定の寸法を備えた円形インサートのプレス成形体(グリーン成形体)を成形し、続いて、このプレス成形体を所定の温度に加熱して焼成して、高硬度・高強度となったプレス成形体を得る。次に、この焼成されたプレス成形体に、必要に応じて所定の箇所に仕上げ加工を実施することにより円形インサートが製造される。また、円形インサートの耐摩耗性を向上させるために、円形インサートの表面に硬質皮膜を被覆することも行われている。
【0018】
上記した円形インサートの製造においては、円形インサートのプレス成形体は焼成時の収縮を考慮して所定の寸法を備えた成形体として成形される。焼成した後の個々のプレス成形体は、その各部の肉厚等により焼成時の収縮にバラツキが発生するため、円形インサートごとに各部位の寸法には微小なバラツキ(寸法差)が生じる。このため、例えば、内接円の直径の仕様を12.0mmとした円形インサートの場合、各部位の寸法の公差は「±0.05mm」等とし、この公差を外れたインサートは規格外として使用されないようになされている。
【0019】
しかし、上記のように、円形インサートの各部位の寸法に厳格な公差を設けても、工具本体のインサートの着座面に装着する個々の円形インサートには公差範囲内の微小な寸法差が生じている。従って、円形インサートを装着する刃先交換式切削工具において、このような公差範囲内の微小な寸法差があっても、各円形インサートを工具本体の着座面を含むインサート取付座に、安定、かつ高精度に取付け手段を設けると、前記した円形インサートの回動をより確実に防止することが可能になり、加工面の加工品質や精度が向上する。
この高精度に取付け手段は、超硬合金製の円形インサートを装着し、かつ、その着座面への取付け角度を再装着するごとに切れ刃の位置を正確に割り出しする必要がある刃先交換式切削工具にとって、被削材の加工面の加工精度を向上させるために極めて重要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特表平11−508192号公報
【特許文献2】特表2006−523541号公報
【特許文献3】特開2007−210090号公報
【特許文献4】特開2010−247322号公報
【特許文献5】特許第3777043号公報(図1、図2)
【特許文献6】特開昭64−40205号公報(FIG.4)
【特許文献7】US2011/0103905 A1 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献1に記載のフライス加工用の切削工具は、円形インサートの回動防止手段と割り出し手段は備えているが、この割り出し手段は円形インサートの底面を多角形状にし、この多角形の1辺を着座面(ポケット)の周辺部に立設した下位部分(37)と当接させる構成とされている。しかし、円形インサートの底面を多角形状にすると、ねじ手段により円形インサートを着座面に装着したときに、底面を円形にした場合と比較して、底面の強度が低下するとともに、着座面との接触面積が減少するので両者の密着力が低下して、切削加工中において円形インサートが回動する可能性が生じる。
【0022】
特許文献2に記載の回動防止ホルダーには、円形の切削用チップの側壁の周囲に多数の凹部を底面に達するように設け、工具ホルダーに設けた回転防止ストッパをこの凹部に当接させて円形の切削用チップの回転を防止する回動防止手段の構成が開示されているが、円形の切削用チップを着座面(ポケット)の正確な位置に割り出して装着する割り出し手段については開示されていない。また、切削用チップの側壁の周囲に多数の凹部を底面に達するように設けているので、底面の強度が低下する可能性が生じる。
【0023】
特許文献3に記載の丸駒インサート着脱式切削工具は、切欠面のうち周方向に一定数おきの一部の切欠面同士は、その周方向の互いに等しい位置に一部のニック溝が延びて、工具本体のインサート取付座への拘束面とし、さらに、このインサート取付座には、拘束面が当接させられる取付座壁面と、これら取付座壁面から突出して拘束面の一部のニック溝に収容される突起を形成した構成とすることにより、円形インサートの拘束面と工具本体の取付座壁面との面同士の当接で円形インサートを保持してそのズレ動きや脱落、誤装着することなく所定の角度ずつ正確に回転させて再装着する手段、すなわち、回動防止手段と割り出し手段を設けた切削工具である。
しかし、この丸駒インサート着脱式切削工具に装着する円形インサートにおいては、その側面に多数の切欠面とニック溝を設けているために、円形インサートの強度を確保することが不十分になるとともに、一部のニック溝は円形インサートのすくい面に達するように形成されているので、切れ刃の仕上げ加工等に工数を要するという不具合がある。
【0024】
特許文献4に記載の刃先交換式切削工具は、インサートの外周面を受ける2つの受け面と、この2つの受け面の中央部に回動防止部材を組み込む手段とを備え、円形インサートの側面に形成した回動防止面(凹部)を、この回動防止部材と接触させるようにした回動防止手段が開示されているが、円形インサートの割り出し手段については開示されていない。
【0025】
特許文献5に記載の切削工具は、円形インサートの底面側に滑らかな湾曲状凹凸を繰り返して形状した係合ギアを、インサート取付座とインサート拘束壁との間に形成した段上がり部と嵌合させることにより、切れ刃を所定の正確な位置に割り出す割り出し手段を備えているが、係合ギアは円形インサートの底面から突出させる構成とされている。
しかし、係合ギアを円形インサートの軸中心に対して底面側から突出させた構成にすると、超硬合金製の円形インサートの製造時において、プレス成形体の成形工程から焼成工程において、この円形インサートのプレス成形体のハンドリングに特別な工夫を必要とする。この理由は、例えば、係合ギアの損傷の防止や、焼成ムラを無くするために焼成用トレイへの円形インサート成形体の配列方法等について工夫を行う必要があるからである。これにより、プレス成形体の成形工程から焼成工程のコスト高を招く可能性が生じる。
【0026】
特許文献6に記載の切削工具は、円形インサートの底面にインサート孔と同心円状をなす円形凹部を設け、この円形凹部の外周壁は多数の円弧状側壁(円形の凹所)を連接して形成し、この円形インサートをインサート取付座に装着したときには、この取付座に固定した固定用ピンが円形インサートの底面に形成した円弧状側壁の一つと係合させることにより、多数の割り出し位置が得られるとともに、円形インサートの回動を防止する構成としたものであるが、次のような不具合がある。
【0027】
(1)取付座に固定した固定用ピンを円形インサートの底面に形成した円弧状側壁の一つと係合させた場合に、切削加工時に円形インサートの回動を防止する防止力が十分に得ることは不可能である。この理由は、固定用ピンの円弧状外周面と円弧状側壁との係合のみでは、円形インサートの回動を防止するための十分な防止力を得ることは不可能であるからである。
(2)FIG.4に示されているように、円弧状側壁を20個、すなわち、20個の割り出し位置を設定した場合には、切削加工に使用する切れ刃の長さが極めて短くなるため、切込み量が少ない切削加工のみ使用可能な切削工具になる。すなわち、切削加工の用途が限定されてしまう。また、円形インサートの底面の強度が十分に確保することができないという不具合もある。
【0028】
特許文献7に記載の円形インサートの回動防止手段は、円形インサートの上面と底面にインサートの中心軸から同心円状に、かつ等角度で複数の平面視で略円形をなす突起(projection)を設け、この円形インサートを装着するインサート取付座の着座面にこの円形インサートに設けた複数の突起と係合する凹部(dimple)を設けることにより、円形インサートをインサート取付座の着座面に装着するときに、切れ刃の位置の割り出しを確実に行うことができるようにしたものであるが、次の不具合がある。
【0029】
(1)円形インサートに設ける突起と、着座面に設ける凹部は同数、例えば、6個とされている。しかし、工具本体の汎用性を考慮すると、工具本体の着座面に形成する凹部の数は1個にすることが望ましい。この理由は、円形インサートに設ける突起の数を8個、あるいは4個に設定した場合にも、着座面に形成する凹部の数を1個にすると、この工具本体の汎用性が発揮され、ユーザにとっては切削工具のコスト低減に貢献することができるからである。
【0030】
(2)前記したように、円形インサートを超硬合金製とした場合、焼成による寸法バラツキが発生する。インサート取付座の着座面に等間隔で複数の凹部の高精度な形成は、NC制御の加工機を用いることにより可能であるが、円形インサートの上面(底面)に複数の突起を形成すると必然的にその寸法にバラツキが生じる。このため、この寸法バラツキを修正するための仕上げ加工が必要になり、円形インサートの製造コストの増加を招くという不具合が発生する。
【0031】
そこで、本発明の目的は、超硬合金製の円形インサートを工具本体のインサート取付座に着脱可能に装着する刃先交換式切削工具において、円形インサートをインサート取付座に装着するときに、切削加工に使用する切れ刃の部分を正確な割り出し位置に装着することができるとともに、切削加工中において、インサート取付座に装着した円形インサートが切削負荷により回動することを防止し、さらに、円形インサートをインサート取付座に高い位置精度で装着することができる刃先交換式切削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の請求項1に係る刃先交換式切削工具は、工具本体のインサート取付座に、すくい面となる上面と、前記上面と対向して形成された底面と、前記上面と前記底面をつなぐ逃げ面となる外周側面と、前記すくい面と前記逃げ面とが交差する稜線部に形成された切れ刃と、前記上面から前記底面を貫通するねじ挿通孔を備えた円形インサートを、前記インサート取付座の着座面に形成されたねじ孔にねじ部材を用いて着脱自在に装着するとともに、前記着座面に装着した前記円形インサートの前記外周側面を前記インサート取付座から立設された2つの円弧状壁面で拘束し、前記円形インサートの前記外周側面の周方向に所定の間隔をおいて形成された複数の外周回動防止面のいずれかを、前記インサート取付座から立設され所定の横幅を有する拘束面を備えた第1の回動防止部に当接させる刃先交換式切削工具において、
前記円形インサートは、前記底面に、前記底面に対して凹部とされた装着用割り出し部を備えているとともに、
前記装着用割り出し部は、前記底面の外側方向に向けて前記ねじ挿通孔の中心軸から同心円状に形成され、前記底面との境界部を、湾曲形状をなす第1の側壁と第2の側壁とを有する段差側壁部を備え、
前記インサート取付座の前記着座面は、前記円形インサートの前記装着用割り出し部内のうち、前記湾曲形状をなす第1の側壁に隣接する前記凹部の窪み部内に挿入可能な第2の回動防止部を備え、
前記円形インサートを前記着座面に装着して前記円形インサートの前記切れ刃の割り出しを行ったときに、
前記第2の回動防止部は前記円形インサートの前記窪み部内に挿入され、前記第1の回動防止部の前記拘束面は前記円形インサートの前記外周回動防止面に当接可能になることを特徴としている。
【0033】
請求項2に記載の発明は請求項1に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記円形インサートの前記段差側壁部は、前記湾曲形状をなす前記第1の側壁と前記第2の側壁の複数を順次連接した構成からなり、
前記湾曲形状をなす第1の側壁における前記ねじ挿通孔の開口端部から最遠部までの長さは、前記湾曲形状をなす第2の側壁における前記ねじ挿通孔の開口端部から最遠部までの長さより大とされ、
前記着座面が備えている前記第2の回動防止部の長さであって、前記ねじ孔の中心軸を通る方向の長さは、前記湾曲形状をなす第1の側壁における前記最遠部までの長さより小さく、かつ、前記湾曲形状をなす第2の側壁における前記最遠部までの長さより大とされていることを特徴としている。
【0034】
請求項3に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2としたときに、
前記第2の回動防止部は前記直線S2に沿って形成され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第1の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第2の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されていることを特徴としている。
【0035】
請求項4に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と時計回転方向又は反時計回転方向に所定の角度α1又はα2の角度で交差する直線を直線S3と直線S4としたときに、
前記角度α1又はα2は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第1の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第2の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されていることを特徴としている。
【0036】
請求項5に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに、前記直線S2と時計回転方向又は反時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D1又は直線D2としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線D1又は前記直線D2に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたときに、α=360°/(2×n)とされ、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、ことを特徴としている。
【0037】
請求項6に記載の発明は請求項1または請求項2記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに前記直線S2と反時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D2とし、さらに、前記直線D2と交差するとともに前記直線D2と時計回転方向または反時計回転方向に角度α1をなす直線を直線S5又は直線S6としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線S5又は直線S6に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたとき、α=360°/(2×n)とされているとともに、前記角度α1は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、ことを特徴としている。
【0038】
請求項7に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに前記直線S2と時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D1とし、さらに、前記直線D1と交差するとともに前記直線D1と時計回転方向または反時計回転方向に角度α2をなす直線を直線S7又は直線S8としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線S7又は直線S8に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたとき、α=360°/(2×n)とされているとともに、前記角度α2は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、ことを特徴としている。
【0039】
請求項8に記載の発明は請求項3または請求項4に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記円形インサートは、前記前記湾曲形状をなす第1の側壁の最突出端部が前記外周回動防止面の中央部と対向するように、前記湾曲形状をなす第1の側壁と前記外周回動防止面が配置されていることを特徴としている。
【0040】
請求項9に記載の発明は請求項5から請求項7のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記前記湾曲形状をなす第2の側壁の最凹み端部が前記外周回動防止面の中央部と対向するように、前記湾曲形状をなす第2の側壁と前記外周回動防止面が配置されていることを特徴としている。
【0041】
請求項10に記載の発明は請求項1から請求項9のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記円形インサートの前記段差側壁部を構成する前記湾曲形状をなす第1の側壁は、前記ねじ挿通孔の中心軸に対して外側方向に突出する半径(r1)の円弧形状をなし、
前記着座面に形成された前記第2の回動防止部の先端部は、前記ねじ孔の中心軸に対して外側方向に突出する半径(r2)の円弧形状をなし、
前記半径(r1)は前記半径(r2)より大とされていることを特徴としている。
【0042】
請求項11に記載の発明は請求項1から請求項10のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記円形インサートは、その厚さをh1、前記底面から前記外周回動防止面の上端までの高さをh2、前記底面から前記外周回動防止面の下端までの高さをh3としたときに、
前記h2は下記の式を満足し、
(1/2)h1≦h2≦(2/3)h1
前記h3は下記の式を満足することを特徴としている。
(1/10)h1≦h3≦(1/3)h1
【0043】
請求項12に記載の発明は請求項1に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記2つの円弧状壁面の一方は前記第1の回動防止部の一方の端部側に、前記2つの円弧状壁面の他方は前記第1の回動防止部の他方の端部側に立設されており、
前記円弧状壁面の一方は、円弧形状の直径が異なる2つの第1側壁面と第2側壁面とを一体にした壁面から構成され、
前記円弧状壁面の他方は、円弧形状の直径が異なる第3側壁面と第4側壁面とを一体にした壁面からから構成されていることを特徴としている。
【0044】
請求項13に記載の発明は請求項12に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記第1の回動防止部の一方の端部側に前記第1側壁面が配置され、前記第1の回動防止部の他方の端部側に前記第3側壁面が配置され、
前記第1側壁面と前記第3側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d1に設定されているとともに、前記直径d1は前記インサート取付座に装着する円形インサートの内接円の直径d0に設定され、
前記第2側壁面と前記第4側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d2に設定されているとともに、前記直径d2は前記直径d1を超えて大きく設定されていることを特徴としている。
【0045】
請求項14に記載の発明は請求項1、請求項12、請求項13のいずれかに記載のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記2つの円弧状壁面、または前記第1〜第4側壁面は、前記着座面と直交する線分に対して前記工具本体の工具軸線方向に傾斜角度β1をもって傾斜して立設され、
前記着座面に装着する前記円形インサートの前記外周側面の傾斜角度をθ1としたときに、(θ1−β1)は下記の式を満足することを特徴としている。
0≦θ1−β1≦1.0
【0046】
請求項15に記載の発明は請求項1、請求項12から請求項14のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記2つの円弧状壁面、または前記第1〜第4側壁面は、縦方向に複数の加工筋を有していることを特徴としている。
【0047】
請求項16に記載の発明は請求項1、請求項2、請求項7から請求項15のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記着座面と、前記円弧状壁面と、前記第1〜第4側壁面と、前記第1の回動防止部の少なくとも一つには、周期律表4a、5a、6a族金属、Al、Si、Bの元素から選択される1種以上の元素を含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物のいずれかからなる硬質皮膜が被覆されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0048】
本発明の刃先交換式切削工具によれば、円形インサートをインサート取付座の着座面に装着したときに、着座面に形成した第2の回動防止部が円形インサートの底面に形成した装着用割り出し部の窪み部に挿入されて、円形インサートの底面と着座面とが密着した状態になる。これにより、円形インサートをインサート取付座の着座面に対して、正確な割り出し位置に装着することが可能になり、円形インサートの装着時の「うっかりミス」の発生を防止することができる。
【0049】
さらに、円形インサートを、インサート取付座の着座面に対して正確な割り出し位置に装着したときに、着座面に形成した第2の回動防止部は円形インサートの底面に形成した装着用割り出し部の窪み部に挿入されること、及び切削加工中において円形インサートの外周側面に形成した外周回動防止面はインサート取付座に立設した第1の回動防止部に当接することにより、切削加工中において円形インサートの回動を防止することが可能になる。
【0050】
さらに、インサート取付座に立設する円弧形状をなす2つの側壁は、それぞれ円弧形状の直径が異なる少なくとも2つの側壁面を連接した構成としているので、超硬合金製の円形インサートの内接円に公差範囲内の寸法バラツキがあっても、着座面にねじ手段により固定する各円形インサートの外周側面をこれら2つの側壁面で拘束することが可能になる。これにより、円形インサートをインサート取付座に高い位置精度で、かつ、安定した状態で装着することが可能になり、その結果として加工面の加工精度を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の刃先交換式切削工具の一例を示す斜視図であって、工具本体のインサート取付座に円形インサートを装着していない状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す刃先交換式切削工具の工具本体に、円形インサートを装着したときの状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す刃先交換式切削工具について、着座面を含むインサート取付座の構成を示す図である。
【図4】図1に示す円形インサートの側面図である。
【図5】図4に示す円形インサートを、底面方向から見た斜視図である。
【図6】図4に示す円形インサートについて、A方向の水平断面を示す図である。
【図7】図5に示す円形インサートを、底面方向から見た平面図である。
【図8】図1に示す円形インサートについて他の実施形態を示す図であって、(a)は底面方向から見た平面図、(b)は底面の斜め上方から見たときの斜視図である。
【図9】図1に示す工具本体のインサート取付座の構成を示す平面図である。
【図10】図9に示すインサート取付座に円形インサートを装着したときの状態を説明するための模式図である。
【図11】図9に示すB−B線における断面図である。
【図12】図10に示すC−C線における断面図である。
【図13】図10に示すD−D線における断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態を説明するための図であって、インサート取付座の着座面に円形インサートを装着したときの状態を示す平面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態を説明するための図であって、インサート取付座の着座面に円形インサートを装着したときの状態を模式的に示す平面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態を説明するための図であって、インサート取付座の着座面に円形インサートを装着したときの状態を模式的に示す平面図である。
【図17】本発明の第5、及び第6の実施形態を説明するための図であって、インサート取付座の着座面に円形インサートを装着したときの状態を示す平面図である。
【図18】本発明の第7の実施形態を説明するために、インサート取付座の構成を示す平面図である。
【図19】図18に示すインサート取付座に、円形インサートを装着したときの状態を説明するための模式図である。
【図20】図18に示すインサート取付座に円形インサートを装着したときの状態をさらに詳細に説明するための模式図であって、(a)は装着した円形インサートの内接円の公差が下限値の場合、(b)は同じく内接円の公差が中央値の場合、(c)は同じく内接円の公差が上限値の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[第1の実施形態]
まず、本発明の刃先交換式切削工具について、第1の実施形態の基本構成を図1〜図3に基づいて説明する。図1は円形インサートを装着する前の工具本体の構成例を示す斜視図、図2は図1に示す工具本体に円形インサートを装着したときの状態を示す斜視図、図3は図1に示すインサート取付座の構成を示す斜視図である。
【0053】
(工具本体の構成)
図1〜図3に示すように、第1の実施形態となる刃先交換式切削工具1は、その工具本体2の一方の先端部に複数のインサート取付座3が形成されている。図1においては、工具本体2にインサート取付座3を3個設けた例を示している。インサート取付座3は、ほぼ円形の平面状をなす着座面4と、この着座面4の工具軸線O(回転中心軸)側から着座面4に対して上方に立ち上がるように(立設して)設けられ、着座面4方向を向く面を円弧状に形成した2つの側壁5、6と、インサート回動防止部7(以下、「第1の回動防止部7」という)を備えている。第1の回動防止部7は、側壁5と側壁6との間に配置され、第1の回動防止部7の着座面4側を向く面には拘束面7aが形成されている。
【0054】
着座面4には、一つの第2の回動防止部10がこの着座面4上から突出するように形成されている。第2の回動防止部10は、円形インサート8をインサート取付座3に装着するときに、切削加工に使用する切れ刃の部分を正確な割り出し位置に配置されるようにするために設けたものであて、着座面4と一体に切削加工により成形され、本発明の刃先交換式切削工具1にとって特徴的(重要)な構成となる。
【0055】
上記した第2の回動防止部10は、着座面4から所定の高さほど突出するとともに、ねじ孔4aの中心線(O2)を通る直線方向に所定の長さと幅を有するように形成されている。なお、第2の回動防止部10は、工具本体2を小径のエンドミル等を用いた切削加工により製造するときに、着座面4と一体になるように加工により設けることにより、その強度が確保できるようにしている。第2の回動防止部10の具体的な構成と作用については後述する。
【0056】
略円形で平面状をなす着座面4の中央部には、ねじ孔4aが刻設されている。このねじ孔4aは、インサート取付座3に円形インサート8を装着するときに、ねじ部材となる止めねじ9を用いて円形インサート8を着座面4に強固に固定するためのねじ孔である。
【0057】
図2は、図1に示す工具本体2のインサート取付座3の着座面4に、円形インサート8を止めねじ9を用いて装着したときの状態を示している。このとき、止めねじ9は円形インサート8のねじ挿通孔15に挿入されて、円形インサート8の底面12を着座面4に強固に密着させる作用を行う。なお、工具本体2は、その着座面4に装着する円形インサート8の軸方向すくい角が所定の正角(正)又は負角(負)になるように、予め複数種製造される。
【0058】
図3に示すように、着座面4の後方側、すなわち、着座面4の工具軸線O側から立設している側壁5と側壁6の着座面4を向く面は、インサート取付座3に装着した円形インサート8の逃げ面となる外周側面13を拘束するための円弧形状をなす2つの壁面5a、5b(以下、「円弧状壁面5a」、「円弧状壁面5b」と記載する場合がる)を備えている。本発明の第1の実施形態においては、これら円弧状壁面5aと5bのそれぞれは、上面視で、円形インサート8の外周側面13に沿うように一つの円弧形状をなす壁から構成されている。
【0059】
なお、前記した第1の回動防止部7の拘束面7aは着座面4方向に所定の横幅長さK(図19(a)参照)を有している。拘束面7aは円形インサート8をインサート取付座3に装着したときに、後述する円形インサート8の逃げ面に設けた外周回動防止面16と当接可能とさせ、切削加工中において円形インサート8の回動を防止する作用を行うために設けたものである。これら円形インサート8の逃げ面に設けた外周回動防止面16と第1の回動防止部7は、切削加工中において円形インサート8の回動を防止する回動防止手段を構成する。
【0060】
図1から図3に示す19は、円形インサート8をインサート取付座3に装着するときに、円形インサート8を着座面4の正確な位置、すなわち、切れ刃14が正しい割り出し位置に配置されるように目視で確認するための突起、あるいは凹状をなす溝形状(以下、「位置合せ用突起」という)となる目印である。作業者は、新しい円形インサート8をインサート取付座3に装着するとき、あるいは、前回までの切削加工で使用した円形インサート8の切れ刃14部分が摩耗したので、次の切削加工ではこの円形インサート8の未使用の切れ刃14の部分を使用するために止めねじ9を緩めて円形インサート8を所定角度回転させて再装着するときに、この位置合せ用突起19を目視で確認しながら円形インサート8を止めねじ9により着座面3に固定する操作を行う。
なお、円形インサート8の上面11にも、この位置合せ用突起19と目視で位置合せするための微小な突起又は凹部がねじ挿入孔15の中心線から所定の角度ごとに形成されている。
【0061】
(円形インサートの構成)
続いて、本発明の刃先交換式切削工具1に装着する円形インサート8の基本的な構成例を、図4〜図7に基づいて説明する。なお、図4は円形インサート8の側面図、図5は円形インサート8を底面12方向から見たときの斜視図、図6は図4に示す円形インサート8について、底面12と平行な矢印A方向における水平断面図を示している。また、図7は、円形インサート8を底面12方向から見たときの平面図を示している。図4〜図7に示す円形インサート8は、円形インサート8の逃げ面となる外周側面13に8個の外周回動防止面16を設けた例を示している。
【0062】
図4、図5に示すように、円形インサート8は平板状をなし、上面11(底面12)方向からの上面視では円形をなし、その材質はWC−Co系の超硬合金からなっている。超硬合金製の円形インサート8は、前記したように、微粉末状の超硬合金を含む粉体を、例えば、金型成形等により所定の寸法を備えた円形インサートのプレス成形体を成形し、続いて、このプレス成形体を所定の温度に所定時間加熱(焼成)して、高硬度・高強度の円形インサートとした後に、切れ刃14、底面12等の必要な箇所について仕上げ加工を施すことにより製造される。
【0063】
また、図4に示すように、厚さh1を有する円形インサート8は、すくい面となり平面視で円形をなす上面11と、上面11と対向する位置に平面視で円形をなす底面12と、上面11と底面12の間に形成されて円錐形状をなし、逃げ面となる外周側面13と、上面(すくい面)11と外周側面(逃げ面)13との境界部となる稜線部の全周にわたって形成された切れ刃14と、上面11の中央部から底面12の中央部まで貫通するねじ挿通孔15(図5参照)を備えている。ねじ挿通孔15は、止めねじ9により、円形インサート8を着座面4に固定するための孔である。
【0064】
また、円形インサート8の逃げ面となる外周側面13には、少なくとも一つの外周回動防止面16を備え、さらに、図5に示すように、底面12のねじ挿通孔15の回りは、底面12に対して凹状(凹部)とした装着用割り出し部17を形成している。
【0065】
外周側面13の周方向に形成している外周回動防止面16は、インサート取付座3に円形インサート8を装着したときに、インサート取付座3に設けた第1の回動防止部7の拘束面7aと当接可能にして、切削加工中において円形インサート8の回動を防止するために設けている。
図4に示すように、外周回動防止面16の上端面部16bは底面12から高さh2の位置に形成され、上端面部16bと上面11の間(高さh4の間)は、外周側面13が存在するようにしている。なお、外周回動防止面16の上端面部16bの近傍は円弧形状をなすようにしている。また、外周回動防止面16の下端面部16aは、底面12から高さh3の位置に存在するように形成され、下端面部16aと底面12の間には、外周側面13を介在させている。そして、外周回動防止面16は、上端面部16bの近傍の円弧状部から下端面部16aまでが平面状(平坦面)に形成されている。
なお、外周回動防止面16の形状は、図4に示す矢印A方向の水平断面で示すように、緩やかな円弧形状をなす凹状の形状としてもよい。
【0066】
なお、外周回動防止面16は、外周側面13に少なくとも一つ設ければよいが、円錐形状をなす外周側面13の周方向に沿って等間隔で複数個(4個から8個の複数面)設けることが望ましい。この理由は、一つの円形インサート8は、外周側面13に形成した外周回動防止面16の数ほど、切れ刃14の位置を割り出して着座面4に再装着することが可能になるので、一つの円形インサート8に形成されている切れ刃14の領域を、切削加工を行うために有効に使用することができるからである。
【0067】
図6及び図7に示す円形インサート8は、その外周側面13の周方向に8個の外周回動防止面16を等間隔で形成した例を示しているが、8個の外周回動防止面16を設けた場合においても、外周側面13の周方向に幅L1の外周側面13を介在させて、外周側面13の周方向に幅L2を有する外周回動防止面16が等間隔で配置されるようにする。この幅L1をなす外周側面13の存在により、外周回動防止面16を8個設けても、隣接する外周回動防止面16間にはこの外周側面13が存在するので、円形インサート8の強度の確保が有効になるとう効果が生じる。
【0068】
上記したように、全ての外周回動防止面16は、その下端面部16aは円形インサート8の底面12まで達していなく、同様に、全ての外周回動防止面16の上端面部16bも円形インサート8の上面11、すなわち、切れ刃14に達しないように、外周側面13に形成している。これにより、円形インサート8の上面11と底面12の形状は、円形の形状が確保され、かつ、外周回動防止面16の下端面部16aと底面12との間、及び外周回動防止面16の上端面部16bと上面11との間には外周側面13が介在するので円形インサート8の強度、特に外周側面13の切れ刃14の近傍、及び外周側面13の底面12近傍の強度を確保することが可能になる。
【0069】
続いて、円形インサート8の底面12に形成している装着用割り出し部17の構成について説明する。装着用割り出し部17は、着座面4に設けた前記第2の回動防止部10とともに、円形インサート8に形成されている切れ刃14を所定の正確な位置に割り出して円形インサート8を着座面4に装着するための割り出し手段を構成するものであって、本発明にとって特徴的な構成となる。
【0070】
装着用割り出し部17は、図5又は図7に示すように、円形インサート8の底面12に対して、ねじ挿通孔15の中心軸O1を中心として同心円状の凹部をなすように形成され、この凹部の中央部にねじ挿通孔15が位置している。この凹部の底面12に対する深さ(段差)f1は、円形インサート8の厚さ(高さ)h1の5〜20%程度、好ましくは15%程度、例えば0.75mmにする。段差f1がh1の20%を超えると円形インサート8の強度確保が不足し、5%より小さくなると切れ刃14を所定通りの正確な位置に割り出すことができなくなる可能性が生じる。
【0071】
底面12に対して凹状をなす装着用割り出し部17が底面12となす境界部、すなわち段差部18(以下、「段差側壁部18」という)は、図7に示すように、ねじ挿通孔15の中心軸O1から離れる方向を滑らかな凸状湾曲形状をなす側壁18a(以下、「湾曲形状をなす第1の側壁18a」という)と、同じくねじ挿通孔15の中心軸O1に近づく方向を滑らかな凸状湾曲形状をなす側壁18b(以下、「湾曲形状をなす第2の側壁18b」という)とから構成されている。そして、装着用割り出し部17の段差側壁部18は、平面視において湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の側壁18bの複数がこの順序の配列で、ねじ挿通孔15の中心軸O1を中心として、同心円状に滑らかに連接された側壁から構成されている。
【0072】
なお、上記した湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の側壁18bは、平面視で円弧形状、あるいは滑らか凸状、あるいは滑らかな凸状の曲面形状をなすようにする。また、これら湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の側壁18bの上端部、すなわち、底面12と接する部分は、円形インサート8のプレス成形時等の型抜きを考慮してR形状、すなわち、このR形状部を下り傾斜面として形成することが望ましい。また、湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の側壁18bの下端部、すなわち、装着用割り出し部17の底部と接する部分も、プレス成形時等の型抜きを考慮して上記したR形状部、あるいは装着用割り出し部17の底部と適度な傾斜面を設けてこのR形状部と接続する構成にすることが望ましい。
【0073】
湾曲形状をなす第1の側壁18aの上端部である底面12との境界部を円弧形状をなす側壁とする場合には、図7に示すように、この円弧形状の半径はr1を有するようにする。
【0074】
本発明の刃先交換式切削工具1に装着する円形インサート8は、上記した湾曲形状をなす第1の側壁18aを、前記した外周側面に設けた外周回動防止面16の数と同数となるように、4個〜8個ほど備えている。そして、円形インサート8の内接円の直径が同一であれば、湾曲形状をなす第1の側壁18aの形状と寸法は同一、あるいはほぼ同一の仕様にする。
なお、湾曲形状をなす第1の側壁18aを4個設けた場合には、円形インサート8の中心軸O1から90°間隔で、湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18c(図7参照)が配置されるようにしている。同様に、湾曲形状をなす第1の側壁18aを8個設けた場合には、円形インサート8の中心軸O1から45°間隔で、湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18cが配置されるようにし、隣り合う湾曲形状をなす第1の側壁18aの間に、湾曲形状をなす第2の側壁18bが形成されるようにしている。
上記した湾曲形状をなす第1の側壁18aの数は、一つの円形インサート8について、未使用の切れ刃8部分の割り出しを行うことができる回数、すなわち、一つの円形インサート8について再装着可能な回数を示す。
【0075】
図7に示す円形インサート8は、円形インサート8の底面12における装着用割り出し部17の配置、すなわち、装着用割り出し部17を構成する第1の側壁18aと第2の側壁18bと、外周回動防止面16との配置の位置関係について、円形インサート8の第1の実施例を示すものである。
【0076】
図7に示す円形インサート8の第1の実施例を示す平面視において、ねじ挿通孔15の中心軸O1を通る直線S1上に、装着用割り出し部17を構成する湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18c(又は最突出端部18cの近傍)と、外周回動防止面16の外周側面13方向の中央部(又は中央部近傍)が配置され、この配置の状態は、湾曲形状をなす第1の側壁18aと外周回動防止面16とは互いに対向する(相対する)位置になるように形成されて、配置されていることを示している。
なお、図7では、平面視で、第1の側壁18aの最突出端部18cと、外周回動防止面16の外周側面13方向の中央部とが、直線S1上に存在している例を示しているが、円形インサート8の製造の容易性を考慮すると、最突出端部18c等は必ずしも直線S1上に存在させる必要はなく、直線S1上から若干離れた近傍の位置でもよい。
【0077】
さらに、図7に示すように、平面視で、ねじ挿通孔15の中心軸O1を通る他の直線を直線S1aとしたときに、この直線S1a上に装着用割り出し部17を構成する円弧状の湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18d(又は最凹み端部18d近傍)と、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部(又は中央部近傍)が配置され、この配置の状態は、湾曲形状をなす第2の側壁18bと、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部とは互いに対向する位置になるように形成されて、配置されていることを示している。
なお、図7に示す円形インサートの第1の実施例では、第2の側壁18bの最凹み端部18dと、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部が、直線S1a上に存在している例を示しているが、円形インサート8の製造の容易性を考慮すると、最凹み端部18dと、隣り合う外周回動防止面16間に存在する外周側面13の中央部とは必ずしも直線S1a上に存在させる必要はなく、直線S1a上から若干離れた近傍の位置でもよい。
【0078】
図8(a)は、円形インサートについて第2の実施例となる円形インサート8aの平面図を、図18(b)は同じく円形インサート8aを底面12方向から見た斜視図を示している。
円形インサート8aは、第1の実施例となる円形インサート8と比較して、平面視において、ねじ挿通孔15の中心軸O1を通る直線S1上に、装着用割り出し部17を構成する湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18d(又は最凹み端部18d近傍)と、外周回動防止面16の外周側面13方向の中央部(又は中央部近傍)が配置されており、この配置の状態は、第2の側壁18bと外周回動防止面16とは互いに対向する位置になるように形成され、配置されていることを示している。
なお、図8(a)では、第2の側壁18bの最凹み端部18dと外周回動防止面16の外周側面13方向の中央部が直線S1上に存在している例を示しているが、円形インサート8の製造の容易性を考慮すると、最凹み端部18d等は必ずしも直線S1上に存在させる必要はなく、直線S1上から若干離れた近傍の位置でもよい。
【0079】
さらに、図8(a)に示すように、ねじ挿通孔15の中心軸O1を通る他の直線を直線S1bとしたときに、この直線S1b上に、装着用割り出し部17を構成する湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18c(又は最突出端部18c近傍)と、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部(又は中央部近傍)が配置され、この配置の状態で、湾曲形状をなす第1の側壁18aと、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部(又は中央部近傍)とは互いに対向する位置になるように形成され、配置されている。
【0080】
なお、図8(a)に示す円形インサートの第2の実施例では、第1の側壁18aの最突出端部18cと、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部が直線S1b上に存在している例を示しているが、円形インサート8の製造の容易性を考慮すると、最突出端部18cと、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部とは、必ずしも直線S1b上に存在させる必要はなく、直線S1b上から若干離れた近傍の位置でもよい。
【0081】
図7に示す第1の実施例となる円形インサート8において、例えば円弧状の湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18cから外周回動防止面16までの厚さをt1、同じく円弧状の湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18dから外周側面13までの厚さをt2とし、図8に示す第2の実施例となる円形インサート8aにおいて、円弧状の湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18dから外周回動防止面16までの厚さをt3、円弧状の湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18aから外周側面13までの厚さをt4とした場合、(t2−t1)>(t3−t4)となる。
【0082】
上記「(t2−t1)>(t3−t4)」は、第2の実施例となる円形インサート8aの方が、第1の実施例となる円形インサート8よりも、装着用割り出し部17の凹凸形状をなす段差側壁部18から外周側面13までの厚さ(肉厚)の変動が小さいことを示している。この肉厚の変動が小さいことは、第2の実施例となる円形インサート8aの方が、円形インサートの厚さ(肉厚)の変動が小さくなっていることを意味し、このことは円形インサート8aの方が円形インサート8よりも、円形インサートの強度確保のために有効であることを示している。
【0083】
なお、図7、図8(a)に示す「L3」は、ねじ挿通孔15の開口端部15aから湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18cまでの距離、「L4」はねじ挿通孔15の開口端部15aから湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18dまでの距離を示し、当然「L3>L4」になっている。
【0084】
(第2の回動防止部の構成)
続いて、インサート取付座3の着座面4に形成している第2の回動防止部10の構成例を、図3、図9、図10を参照して説明する。
【0085】
図9、図10に示す第2の回動防止部10は、着座面4の中央部に形成しているねじ孔4aの着座面4上における開口端部4bから、ねじ孔4aの中心軸O2を通り、平面視で第1の回動防止部7の拘束面7aの両端部の点R、点Qを結ぶ線分RQの垂直2等分線となる直線S2に沿って、着座面4上を、着座面4の外側方向(工具本体2の外側方向)に向かって所定の長さL5と、幅(横幅)Wと、着座面4から所定の高さを有する凸形状をなすように形成されている。
【0086】
なお、工具本体2のインサート取付座3に装着する円形インサート8の内接円の直径が同一である場合には、前記した円形インサート8に設ける湾曲形状をなす第1の側壁18aの数が異なっていても、上記した第2の回動防止部10の凸形状の寸法仕様は同一、又はほぼ同一にする。これにより、一つの工具本体2について、湾曲形状をなす第1の側壁18aの数が異なっていても、同一の内接円を有する円形インサート8をインサート取付座3に装着した場合には、その切れ刃14の正確な割り出しを行うことが可能になるので、工具本体2の使用上の汎用性が生じることになる。
【0087】
本発明において、作業者が、着座面4に円形インサート8を装着する操作を行うときには、円形インサート8の外周回動防止面16を第1の回動防止部7の拘束面7aに対向させた状態で、円形インサート8の装着用割り出し部17が備えている複数の湾曲形状をなす第1の側壁18aのうちのいずれか一つの側壁18aが、この側壁18aに隣接してねじ挿通孔15との間に存在する窪み部17a(図10参照)に、第2の回動防止部10を挿入させて係合させて、着座面4と円形インサート8の底面12とを密着させることにより、円形インサート8の着座面4に対する切れ刃14の正確な位置の割り出しを行うことが可能になる。
本発明において、これら第2の回動防止部10と円形インサート8の装着用割り出し部17は、切削加工に使用する円形インサート8の切れ刃14の部分を正確な割り出し位置に装着するための手段として設けたものである。
【0088】
図10は、円形インサートの第1の実施例となる円形インサート8が備えている装着用割り出し部17の窪み部17a内に、第2の回動防止部10を挿入して係合させた状態を示している。図10において斜線で示す領域が一つの窪み部17aを示しており、図10に示す装着用割り出し部17は8個の窪み部17aを有しており、一つの円形インサート8について8回の再装着が可能になっている。
【0089】
このように、第2の回動防止部10と円形インサート8の装着用割り出し部17は、円形インサート8を装着するときの割り出し手段を構成するが、さらに、切削加工中において円形インサート8の回動を防止するための回動防止手段の機能も備えている。この理由は、第2の回動防止部10は円形インサート8の内接円の直径が12mmの場合、前記した所定の長さL5を例えば1〜3mm程度、所定の幅Wを例えば1〜3mm程度、高さを例えば0.4〜1.5mm程度に設定することにより、円形インサート8を着座面4に装着して切れ刃14の正確な位置の割り出しを行ったときには、上記した寸法仕様を有する第2の回動防止部10は、円形インサート8の窪み部17a内に挿入される。これにより、切削加工中においても、第2の回動防止部10は円形インサート8の窪み部17aに挿入されて両者は係合状態になっているので、円形インサート8の回動をより防止する作用を発揮することになるからである。
【0090】
第2の回動防止部10の構成例の詳細と、円形インサートの第1の実施例となる円形インサート8を装着して切れ刃14の割り出しを行ったときの状態を、図9〜図10を参照して説明する。
図9に示すように、第2の回動防止部10は、ねじ孔4aの着座面4上における開口端部4bから、着座面4の外側方向に向けて形成されている。具体的には、ねじ孔4aの開口端部4bから第1の回動防止部7から離れる方向であって工具軸線Oと対向する側に、着座面4上のP点まで形成されている。このP点は、インサート取付座3の平面視において、第1の回動防止部7の拘束面7aが着座面4を向く面の両端部における点R、点Qを結ぶ線分RQの垂直2等分線となる直線であって、ねじ孔4aの中心軸O2を通る直線S2上に位置するように形成されている。また、点Pはねじ孔4aの中心軸O2から最も遠い距離となる最遠部に位置している。
【0091】
このように、インサート取付座3の平面視において、第2の回動防止部10は直線S2に沿って形成することにより、前記した構成を備えている円形インサートの第1の実施例となる円形インサート8を、インサート取付座3に装着することが可能になる。この理由は、前記したように円形インサート8は、湾曲形状をなす第1の側壁18aと外周回動防止面16とは互いに対向する(相対する)位置になるように形成されているので、円形インサート8をインサート取付座3に装着したときには、円形インサート8が備えている外周回動防止面16の一つを第1の回動防止部7の拘束面7aに当接可能な状態にして、第2の回動防止部10を、装着用割り出し部17の第1の側壁18aに隣接する窪み部17a内に挿入することができるからである。
【0092】
また、第2の回動防止部10は、直線S2方向の長さがねじ孔4aの開口端部4bからL5を有するように形成されているとともに、P点は第2の回動防止部10の先端部10a、すなわち、ねじ孔4aの中心軸O2からの距離が最も遠くなる部分を示すP点(以下、「第2の回動防止部10の先端部10a」という場合がある)とその近傍は平面視で半径r2を有する円弧形状をなすように形成されている。
【0093】
なお、第2の回動防止部10を着座面4上に設ける位置は、着座面4の外側方向、すなわち、第1の回動防止部7から遠くなる側にするすることが望ましい。この理由は、着座面4と第2の回動防止部10の形成は、小径のボールエンドミル等の切削工具を用いてNC制御により加工するが、この切削加工の容易性を考慮すると、第1の回動防止部7から遠くなる側に形成することが望ましいからである。
同様に切削加工の容易性を考慮すると、第2の回動防止部10は、ねじ孔4aの開口端部4bから直線S2上に沿うように形成することが望ましい。
【0094】
本発明において、第2の回動防止部10の円弧形状をなす先端部10aの半径r2は、前記した円形インサート8の底面12に形成した装着用割り出し部17の円弧状の湾曲形状をなす第1の側壁18aの半径r1より小さくなるようにしている。また、第2の回動防止部10の上面部10bは平面状に形成されており、第2の回動防止部10の基部(着座面4と接する部分)から上面部10bの間は緩やかな上り傾斜となる傾斜面を有するように形成することが望ましい。
【0095】
図10は、切削加工を行うために円形インサート8を着座面4の正しい位置に割り出して装着したときに、円形インサート8の装着用割り出し部17と第2の回動防止部10との係合関係を模式的に示した図である。なお、図10において、装着用割り出し部17の段差側壁部18は点線で示している。
【0096】
図10に示すように、円形インサート8を着座面4の正確な位置に割り出して装着したとき、すなわち、装着用割り出し部17に複数形成している湾曲形状をなす第1の側壁18aに隣接する窪み部17a内に第2の回動防止部10が挿入されたときには、円形インサート8が備えている外周回動防止面16の一つが第1の回動防止部7の拘束面7aに当接可能な状態になっている。さらに、この状態においては、第2の回動防止部10の先端部10aと、円形インサート8の装着用割り出し部17の第1の側壁18aの最突出端部18cとの間には、CL1の隙間(クリアランス)が生じるようにしている。また、円弧状をなす第1の側壁18aの半径r1は、第2の回動防止部10の円弧状をなす先端部10aの半径r2より大きくしているので、湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の回動防止部10の先端部10aの周辺部にもクリアランス(CL1)と同程度あるいはこれより若干大きな隙間が生じるようにしている。
【0097】
本発明においては、円形インサート8を着座面4の正しい位置に割り出して装着したときに、円形インサート8の湾曲形状をなす第1の側壁18aと着座面4の第2の回動防止部10との間には上記したクリアランス(隙間)が生じるようにしているので、確実に円形インサート8を着座面4の正しい位置に装着して切れ刃14の割り出しを行うことが可能になる。また、このクリアランスにより、湾曲形状をなす第1の側壁18aの円弧形状に若干の公差範囲内の寸法差があっても、確実に円形インサート8を着座面4の正しい位置に装着して切れ刃14の割り出しを行うことができるようになる。
【0098】
また、前記したL3、すなわち、ねじ挿通孔15の周面から湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18cまでの距離をL3とし、L4、すなわち、ねじ挿通孔15の周面からから湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18dまでの距離をL4とした場合に、当然に「L3>L4」にするとともに、L3>L5(第2の回動防止部10の長さ)とし、かつ、L4<L5とすることにより、円形インサート8が着座面4に正しく割り出されていない場合には、第2の回動防止部10は、例えば、湾曲形状をなす第2の側壁18bに隣接する窪み部内に挿入することは不可能になり、その結果、着座面4と円形インサート8の底面12との間には隙間が生じ、止めねじ9による正常な締付けもできなくなる。これにより、着座面4への円形インサート8の装着作業時に発生する前記した「うっかりミス」の発生を防止することが可能になる。
【0099】
図11は、図9に示すインサート取付座3において、B−B線における断面図を示している。図11に示すように、側壁6は、平面をなす着座面4の垂直方向に対して傾斜角度β1をもって着座面4から遠ざかる方向に傾斜するように立設され、その立設高さはT1とされている。この高さT1は、着座面4に装着する円形インサート8の厚さh1より若干小さくする。側壁6の着座面4側の面は、前記したように平面視で円弧形状をなす円弧状壁面6aとされている。また、他の側壁5も立設高さT1を有するとともに、その傾斜角度は側壁6と同様にβ1を有し、さらに着座面4側の面は円弧形状をなす円弧状壁面5aとされている。
【0100】
上記した側壁5、6の傾斜角度β1と、着座面4に装着する円形インサート8の外周側面13の傾斜角度θ1(図4参照)との関係も、着座面4に円形インサート8を正確に位置決めして装着するために重要になる。傾斜角度β1と傾斜角度θ1は、下記の式(1)を満足するように設定することが望ましい。
0≦θ1−β1≦1.0 ・・・・・・・・・・・・・・・ 式(1)
【0101】
傾斜角度β1とθ1を、上記の式(1)を満足するように設定することが望ましい理由は、次の通りである。
円形インサート8の外周側面13の傾斜角度θ1と側壁5、6の傾斜角度β1との差が「0°」か「1°」以下と、両者の傾斜角度を極めて近い値に設定することにより、着座面4に円形インサート8を装着したときに、側壁5、6の円弧状壁面5a、6aと円形インサート8の外周側面13とが当接する長さ及び面積を大きくすることが可能になる。これにより、円弧状壁面5a、6aは、円形インサート8を着座面3に精度高く位置決めし、かつ、安定した状態で装着することが可能になるからである。さらに、これにより、切削加工中において、円形インサート8の位置ズレや回動を防止することも可能になるからである。なお、傾斜角度θ1及びβ1は、15°程度に設定すればよい。
【0102】
なお、上記式(1)を満足する条件で傾斜角度β1値を傾斜角度θ1値より小さな値に設定することにより、着座面4の後端に設けた側壁5、6の円弧状壁面5a、6aは、円形インサート8の外周側面13の切れ刃14の稜線に近い上部で当接することになり、円形インサート8の位置ズレや回動を防止することがさらに有効になる。しかし、β1値がθ1値より大きな値となると、着座面4に設けた側壁5、6の円弧状壁面5a、6aは、円形インサート8の外周側面13の下部で当接することになり、円形インサート8の位置ズレが発生する可能性が生じるので、上記したように「傾斜角度β1値<傾斜角度θ1」とすることが望ましい。
【0103】
図12は、図10に示すC−C線(直線S2)における断面図である。なお、図12に示すβ2は、第1の回動防止部7の拘束面7aが着座面4に直交する線(又は面)に対して傾斜する傾斜角度を示している。
図12に示す状態においては、着座面4に形成した第2の回動防止部10が装着用割り出し部17内に挿入され、円形インサート8の底面12と着座面4とは密着した状態になっている。また、円形インサート8の外周側面13に形成した外周回動防止面16と第1の回動防止部7の拘束面7aとの間には、所定の範囲値内の間隔(クリアランス)CL2が生じるように、第1の回動防止部7の拘束部7aの位置を設定している。着座面4に円形インサート8を装着したとき、この所定の値以内のクリアランス(CL2)を生じさせる理由は、次の通りである。
【0104】
図13は、図10に示すD−D線における断面図であって、円形インサート8をインサート取付座3の着座面4に装着して、切れ刃14の割り出しを行ったときの状態(止めねじ9の締付け前の状態)を示している。図13に示す状態において、止めねじ9により円形インサート8を締付けると、円形インサート8は、第1の回動防止部7方向に若干の距離(0.1〜0.2mm程度)移動し、円形インサート8の外周側面13は、円弧形状をなす側壁5、6の円弧状壁面5a、6aに密着して、円形インサート8の外周側面13を強固に拘束することになる。
【0105】
着座面4に装着する円形インサート8は、前記したように、円形インサートごとに微小な寸法差が生じている。例えば、内接円の直径を12.000mmとした円形インサートにおいて、許容できる公差を「±0.050」(12.000±0.050)と設定し、第1の回動防止部7の拘束面7aの位置を、この公差の中央値(12.000mm)を基準に形成した場合に、CL2値が0.100mmとなるように設計している。このとき、円形インサートの外周側面の径の寸法公差も、内接円の直径公差と同じ「±0.050」であると考えられる。
この場合の円形インサートは、例えば、装着時の止めねじが右ねじである場合の締め付けによって角度が約+3.4°程度(符号の+は時計回転方向を示す)、締め付け方向への回動が発生する可能性があるが、円形インサートを装着したときの取り付け(装着)精度への影響は小さい。
【0106】
従って、インサート取付座3に第1の回動防止部7の拘束面7aを設ける位置は、装着する円形インサート8の公差を考慮して、前記したクリアランス(CL2)の値が公差の「(上限値)−(下限値)」の値以内になる位置とすればよい。例えば、上記した内接円が「12.000±0.050」に設定されている場合、クリアランス(CL2)の値を最大で0.130mmになるように拘束面7aを設けておくことで、締め付け方向への円形インサートの回動を最大4度以下に抑えることができる。
これに対して、例えばクリアランス(CL2)の値が0.150mmになると、締め付け方向への円形インサートの回動は5度程度になってしまい、この状態で円形インサートを着座面4に装着して切削加工を行うと、円形インサートの回動により切削加工の精度が得られなくなる。従って、第1の回動防止部7の拘束面7aを設ける位置は、クリアランス(CL2)の値が公差の「(上限値)−(下限値)」の値以内になる位置とすればよい。
【0107】
上記した円形インサートの内接円の直径とクリアランス(CL2)の値を一例として説明すると次のようになる。
内接円が公差の下限値である11.950mmの円形インサート8が着座面4に装着されたときにはクリアランス(CL2)が0.091mm、内接円が公差の中央値である12.000mmの円形インサート8が装着されたときにはクリアランス(CL2)が0.100mm、内接円が公差の上限値である12.050mmの円形インサート8が装着されたときにはクリアランス(CL2)が0.123mmほど生じることになる。
【0108】
なお、円形インサート8を着座面4に装着し、加工を行う前から上記した例えば0.123mm程度のクリアランス(CL2)が生じていても、本発明においては、円形インサート8は、止めねじ9と、前記した側壁5、6の円弧状壁面5a、6aにより拘束されるので、着座面4に安定した状態で、かつ高い位置精度を持って装着される。これにより、切削加工中において円形インサート8の回動を防止することができるようになる。さらに、前記したように、第2の回動防止部10により、円形インサート8の回動を防止することができるので、切削加工中において円形インサート8の回動をより確実に防止することができるようになる。
【0109】
(円形インサートの形状上の特徴)
続いて、円形インサート8(8a)について、外周側面13に形成している外周回動防止面16の配置位置等の形状上の特徴について説明する。この説明においては、円形インサートの第1の実施例である円形インサート8を例にして説明するが、第2の実施例である円形インサート8aについても同様である。
【0110】
円形インサート8の外周側面13に形成されている外周回動防止面16は、図4又は図6等に示すように、例えば、外周側面13に対して窪んだ平面形状になっており、この形状は、超硬合金粉末による円形インサート8の成形時に成形することができる。
図7においては、円形インサート8の外周側面13の周方向に、幅が所定の長さL1となる外周側面13の部分を介して8個の外周回動防止面16が等間隔で形成されている例を示している。このように、円形インサート8の外周側面13の周方向に、複数の外周回動防止面16を設ける場合には、隣り合う外周回動防止面16が互いに交わることなく、かつ長さL1の外周側面13を介して、等間隔で回動防止面16が配置されるように形成することが望ましい。
【0111】
また、円形インサート8の外周側面13に形成する外周回動防止面16の位置は、図4に示すように、外周回動防止面16の下端部16aは円形インサート8の底面12から高さh3の距離をおいた位置に、さらに、外周回動防止面16の上端部16bは円形インサート8の上面11から高さh4の距離をおいた下方の配置されるようにしている。すなわち、全ての外周回動防止面16は、その下端部16aは円形インサート8の底面12まで達していなく、同様に、全ての外周回動防止面16の上端部16bも円形インサート8の上面11、すなわち、切れ刃14に達しないように、外周側面13に形成している。これにより、円形インサート8の上面11と底面12の形状は円形の形状が確保されるのでその強度の低下はなく、さらに、外周側面13の上面11と底面12の近傍における強度も確保されることになる。
【0112】
ここで、図4に示すように、円形インサート8についてその厚さをh1(mm)、底面12から外周回動防止面16の上端部16bまでの高さをh2(mm)、底面12から外周回動防止面16の下端部16aまでの高さをh3(mm)としたときに、本発明の刃先交換式切削工具に装着する円形インサート8は上記h1とh2については、次の式(2)を満足するように、外周側面13に外周回動防止面16を形成することが望ましい。
(1/2)h1≦h2≦(2/3)h1・・・・・・・・式(2)
【0113】
上記した式(2)において、高さh2を「h2≦(2/3)h1」を満たすように規定することにより、円形インサート8の上面11から外周回動防止面16の上端部16bに至るまでの高さh4を(1/3)h1以上確保できるので、切れ刃14の刃先強度を十分に維持することができる。
また、高さh2を「(1/2)h1≦h2」を満たすように規定することにより、外周回動防止面16の高さ、すなわち、円形インサート8の厚さh1方向の長さを十分に確保できるので、工具本体2に設けた第1の回動防止部7の拘束面7aを、円形インサート8の外周回動防止面16に当接させる長さを十分確保して、切削加工中における円形インサート8の回動防止効果を得ることができるようになる。
【0114】
さらに、円形インサート8において、底面12から外周回動防止面16の下端部16aまでの高さh3は、次の式(3)を満足するように、外周回動防止面16の下端部16aの位置を外周側面13に形成することが望ましい。
(1/10)h1≦h3≦(1/3)h1・・・・・・・式(3)
【0115】
上記した式(3)において、高さh3を「(1/10)h1≦h3」を満足するように規定することにより、h3値は、円形インサート8の底面12から(1/10)h1以上の高さを確保することができるので、円形インサート4をインサート取付座3の着座面4に取付ける固定面となる円形をなす底面12、及び底面12近傍の外周側面13の強度を十分確保することができる。
さらに、底面12を着座面3に着座させたときにその接触面積(固定面積)を十分に確保することができるので、円形インサート8の回動防止に有効になる。また、高さh3を「h3≦(1/3)h1」を満たすように規定することにより、底面12から外周回動防止面16の下端部16aまでの高さを制限し、外周回動防止面16の高さ、すなわち、円形インサート8の厚さh1方向の長さの減少を抑制して、前記した第1の回動防止部7の拘束面7aを円形インサート8の外周回動防止面16に当接させる長さを十分確保することができるようになる。
【0116】
また、本発明の刃先交換式切削工具において、図4に示すように、外周側面13の傾斜角度をθ1、すなわち、円形インサート8の上面11と垂直な線分と外周側面13とがなす角度をθ1とし、外周回動防止面16の傾斜角度をθ2、すなわち、円形インサート8の上面11と垂直な線分と外周回動防止面16とがなす角度をθ2としたときに、h3値を(1/10)h1≦h3として、底面12から回転防止面16の下端部16aまでの厚さを十分に確保するためには、0<θ2<θ1とすることが好ましい。
【0117】
このように、本発明の刃先交換式切削工具に用いる円形インサート8は、前記したように、円形インサート8の外周側面13に設けた外周回転防止面16を、その下端部16aの位置は底面12から(1/10)h1以上とし、上端部16bの位置は底面12から(2/3)h1以下の範囲内になるように設けるとともに、さらに、外周回動防止面16の下端部16bの位置は底面12から(1/3)h1以下とし、上端部16bの位置は底面12から(2/3)h1以下の範囲内になるように設けている。
【0118】
また、円形インサート8の外周側面13に設けた外周回動防止面16が外周側面13の円周方向になす幅L2(図7参照)の値は、インサート取付座3に円形インサート8を装着して切削加工を行うときに、工具本体2に設けた第1の回動防止部7の拘束面7aを当接させて、円形インサート8の有効な回動防止効果が得られるように、円形インサート8の大きさ(内接円の寸法)、その厚さh1、外周回動防止面16を設ける数(回動防止面数)に応じて、回動防止部8の強度等を考慮して、適切に設定するようにする。
【0119】
なお、円形インサート8(8a)の外周側面13に設ける外周回動防止面16の数は、円形インサート8の内接円の大きさに応じて4〜8個程度設けることが望ましい。また、この外周回動防止面16の数と同じ数の前記した湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の側壁18bを設けるようにする。
このように、複数個の外周回動防止面16を設けることにより、例えば、切削加工の累計時間が所定の時間値に達すると、止めねじ9を緩めてこの円形インサート8を着座面4に対して所定の角度ほど回転させて、再度、止めねじ9により円形インサート8を着座面4に再装着し、未使用の切れ刃14の部分を次の切削加工に使用することができる。このとき、工具本体2の第1の回動防止部7の拘束面7aは、切削加工中に今回使用する切れ刃14部分に対応する外周回動防止面16に当接可能になり、切削加工中において円形インサート8の回動を防止する効果を発揮することになる。
【0120】
[第2の実施形態]
続いて、本発明の刃先交換式切削工具の第2の実施形態を図14を参照して説明する。前記した第1の実施形態に係る先交換式切削工具は、図7に示す円形インサートの第1の実施例となる円形インサート8をインサート取付座3に、その切れ刃の部分を正確な割り出し位置に装着できるような構成にしたものである。この第1の実施例となる円形インサート8は、湾曲形状をなす第1の側壁18aと外周回動防止面16とは互いに対向する(相対する)位置になるように形成されている。そして、この円形インサート8をインサート取付座3に装着するときには、円形インサート8に形成されている外周側面13の一つを第1の回動防止部7の拘束面a方向に向けて、着座面4に止めねじ9により固定する必要があった。このため、第2の回動防止部10は、図9(図10)に示すように、拘束面7aが着座面4を向く面の両端部における点R、点Qを結ぶ線分RQの垂直2等分線となり、かつ、ねじ挿通孔15の中心軸O1を通る直線S2に沿って設けていた。
【0121】
これに対して、図8(a)に示す円形インサートの第2の実施例となる円形インサート8aをインサート取付座3に、その切れ刃の部分が正確な割り出し位置に装着できるようにするためには、着座面4に形成する第2の回動防止部10は、図14に示すように、着座面4の平面視において、上記直線S2に対して、時計回転方向R1又は反時計回転方向R2に角度αほど回転させた位置に形成する必要がある。
【0122】
この理由は、図8(a)に示しているように、円形インサート8aは第2の側壁18bと外周回動防止面16とは互いに対向する位置になるように形成された構成とされているので、この円形インサート8aをインサート取付座3に装着するときに、上記したようにこの円形インサート8aに形成されている外周側面13の一つを第1の回動防止部7の拘束面a方向に向けるが、この状態においては、円形インサート8aの底面の装着用割り出し部17に形成されている湾曲形状をなす第1の側壁18aは、平面視において、図14に示すように直線S2上には存在せず、直線S2から時計回転方向R1又は反時計回転方向R2に角度αほど回転させた位置に存在するようになるからである。このため、着座面4上に第2の回動防止部10を設ける位置は、図9に示す位置とは異なるようにする必要がある。
【0123】
図14に示す例は、着座面4の平面視において、第2の回動防止部10を直線S2と交差し、反時計回転方向R2に角度αをなす直線D2上に沿って形成している。そして、円形インサート8aをインサート取付座3に装着するときには、この第2の回動防止部10が、円形インサート8aの湾曲形状をなす第1の側壁18aに隣接する窪み部17aに挿入され、第2の回動防止部10と窪み部17aとの間にクリアランスが生じている場合を示している。なお、直線D2はねじ孔4aの中心軸O2を通る直線とすることが望ましい。
また、この第2の実施形態においては、図14に示すように、着座面4の平面視において、第2の回動防止部10を直線S2と交差し、時計回転方向R1に角度αをなす直線D1上に沿って形成する。そして、円形インサート8aをインサート取付座3に装着するときには、この直線D1に沿って位置する円形インサート8aの湾曲形状をなす第1の側壁18aに隣接する窪み部17aに、第2の回動防止部10を挿入するようにしてもよい。なお、直線D1もねじ孔4aの中心軸O2を通る直線とすることが望ましい。
【0124】
上記した第2の実施形態において、直線S2と直線D1又は直線D2とが交差する角度(交差角度)αは、円形インサート8aに設ける湾曲形状をなす第1の側壁18a(外周回動防止面16)の数、例えば、8個、6個、5個、4個に基づいて設定すればよい。
円形インサート8aに設ける湾曲形状をなす第1の側壁18aの数を「n」とした場合、交差角度αは、下記の式を満たす値とすることができる。
α=360°/(2×n)、 但し、nは4≦n≦8の整数
上記式から、例えば、nが4個の場合は交差角度αを45°に、nが8個の場合は交差角度αを22.5°に設定する。
【0125】
円形インサートを装着する刃先交換式切削工具においては、切削加工の用途に応じて円形インサートを工具本体に対して軸方向すくい角が「正(ポジ)」、又は「負(ネガ)」になるように装着するための工具本体が作製される。そして、工具本体のインサート取付座に、軸方向すくい角が「正(ポジ)」になるように円形インサートを装着した場合、切削加工中に生じる切削抵抗は、円形インサートの上面11に対する平面視でこの円形インサートを反時計回転方向に回動させようとする力を発生させる。
これに対して、インサート取付座に軸方向すくい角が「負(ネガ)」になるように円形インサートを装着した場合、切削加工中に生じる切削抵抗は同じく平面視でこの円形インサートを時計回転方向に回動させようとする力を発生させる。
【0126】
一方、前記したように超硬合金製の円形インサート8(8a)は、この円形インサートの成形体の焼成時に発生する収縮量にバラツキが発生する。従って、円形インサート8等をインサート取付座3に装着したときには、インサート取付座3に設けている第1の回動防止部7と円形インサート8の外周回動防止面16とがなすクリアランス(CL2)、インサート装着時に着座面4に形成した第2の回動防止部10と円形インサート8の底面12に設けた装着用割り出し部18の円弧状の側壁18aとがなすクリアランス(CL1)も考慮して、着座面4に形成する第2の回動防止部10の配置位置も適切にした方が、前記した円形インサートの回動防止機能と、円形インサートに形成されている切れ刃14を所定の正確な位置に割り出して円形インサートを装着するための割り出しの機能を、より確実に実現することが可能になる。
【0127】
[第3の実施形態]
続いて、本発明の刃先交換式切削工具の第3の実施形態を、図15に基づいて説明する。この第3の実施形態は、図10に示す第1の実施形態に対して、着座面4に形成する第2の回動防止部10を、直線S2と交差し、着座面4の平面視において、反時計回転方向(R2)に直線S2と角度α1をなす直線S3に沿って形成した例を示している。また、前記した第2の回動防止部10の最遠部となる点Pを直線S3上に設けている。
なお、図15に示す直線S2は、第1の実施形態で説明した図9(図10)に示す線分RQの垂直2等分線となる直線S2を示し、点線で示す符号「18」は円形インサート8の底面12に形成している装着用割り出し部17における段差側壁部18であって、円形インサート8の上面11は示していない。また、直線S3は、ねじ孔4aの中心軸O2を通る直線とすることが望ましい。
【0128】
そして、図15に示す例は、インサート取付座3に円形インサート8をその切れ刃14の位置を割り出して装着した初期状態においては、円形インサート8の外周側面14は、インサート取付座3の側面5、6の円弧状壁面5a、6bに当接して拘束された状態となり、外周回動防止面16の一つは、第1の回動防止部7の拘束面7aに近接して当接可能な状態になっている。さらに、着座面4に形成された第2の回動防止部10は、円形インサート8の底面12に形成されている窪み部17aのいずれかに挿入されている。このとき、第2の回動防止部10は、直線S2に対してねじ孔4aの中心軸O2から角度α1ほど反時計回転方向(R1)に回転させた直線S3上に沿って形成されているので、第2の回動防止部10のR1方向側の端部が、湾曲形状をなす第1の側壁18aとなすクリアランスは、図10に示すクリアランスより小さくなっている。
これにより、第3の実施形態では、作業者が円形インサー8の再装着を行うときに、第2の回動防止部10を円形インサート8の窪み部17aに挿入する操作について、上記したクリアランスが小さいことにより、作業者に前記した装着時の「うっかりミス」が発生しないように注意を促すという効果が生じる。
【0129】
[第4の実施形態]
続いて、本発明の刃先交換式切削工具の第4の実施形態を、図16に基づいて説明する。この第4の実施形態は、前記した図15に示す第3の実施形態に対して、着座面4に形成する第2の回動防止部10を、直線S2と交差し、着座面4の平面視において、時計回転方向(R1)に直線S2と角度α2をなす直線S4に沿って形成した例を示している。また、前記した第2の回動防止部10の最遠部となる点Pを直線S4上に設けている。
なお、図16に示す直線S2は、第1の実施形態で説明した図9(図10)に示す線分RQの垂直2等分線となる直線S2を示し、点線で示す符号「18」は円形インサート8の底面12に形成している装着用割り出し部17における段差側壁部18であって、円形インサート8の上面11は示していない。また、直線S3は、ねじ孔4aの中心軸O2を通る直線とすることが望ましい。
【0130】
図16に示す第4の実施形態においては、インサート取付座3に円形インサート8の切れ刃14を割り出して装着した初期状態においては、円形インサート8の外周側面14は、インサート取付座3の側面5、6の円弧状壁面5a、6aに当接した状態で、着座面4の第2の回動防止部10は、円形インサート8の底面12に形成されている窪み部17aのいずれかに挿入されている。このとき、第2の回動防止部10は、直線S2と交差し、かつ、ねじ孔4aの中心軸O2を通る直線上であって、直線S2と角度α2ほど時計回転方向(R1)に回転させた直線S4上に沿って形成している。
【0131】
この図16に示す第4の実施形態においては、第2の回動防止部10は直線S2に対してねじ孔4aの中心軸O2から角度α2ほど時計回転方向(R1)に回転させた直線S4上に沿って形成されているので、第2の回動防止部10の(R1)方向側の端部が湾曲形状をなす第1の側壁18aとなすクリアランスは、図10に示すクリアランスより小さくなる。
これにより、作業者が円形インサー8の再装着を行うときに、第2の回動防止部10を円形インサート8の窪み部17aに挿入する操作について、前記した第3の実施形態と同様に、作業者に「うっかりミス」が発生しないように注意を促すという効果が生じる。
【0132】
上記した第3、第4の実施形態において、角度α1及び角度α2の値は、2°〜10°に設定することが望ましい。この理由は、下記の通りである。
【0133】
第1の理由は、角度α1、α2を10°以下とすることによって、図10に示す第2の回動防止部10と湾曲形状をなす第1の側壁18aとがなすクリアランス(CL1)値等を必要以上に大きく設定することを回避できるからである。クリアランス(CL1)等の値を必要以上に大きく設定すると、第2の回動防止部10のサイズが小さくなることによって、第2の回動防止部10の強度確保が困難となるという不具合が生じてしまう。一方、クリアランス(CL1)値を適度に小さく設定することによって、第2の回動防止部10のサイズを大きく設計するできることから、強度確保に有利になる。
【0134】
第2の理由は、2°以上とすることによって、円形インサート8(8a)の切れ刃14の割り出しを行うときに、第2の回動防止部10と湾曲形状をなす第1の側壁18aとがなすクリアランスの寸法的な余裕を適度に確保する(クリアランスを極力小さくする)ことができる。これにより、作業者が円形インサー8の再装着を行うための割り出し操作時に、第2の回動防止部10を円形インサート8の窪み部17aに挿入する操作について、「うっかりミス」が発生しないようにより注意を促すという効果が生じる。
【0135】
[第5及び第6の実施形態]
続いて、本発明の第5及び第6の実施形態を、図17を参照して説明する。これら第5、及び第6の実施形態は、図14に示す第2の実施形態についてさらに改良を施した刃先交換式切削工具である。
【0136】
第5の実施形態は、着座面4に形成する第2の回動防止部10を、着座面4の平面視において、図17に示す直線D2(図14に示す直線D2)と交差し、反時計回転方向(R2)に直線D2と角度α1をなす直線S6に沿って形成した例を示している。また、前記した第2の回動防止部10の最遠部となる点Pを直線S6上に設けている。
なお、図17に示す直線D1及び直線D2は、図14に示す直線D1及び直線D2と同じであって、直線S2と交差し、時計回転方向(R1)または反時計回転方向(R2)と角度αをなす直線である。また、角度αは、前記したように円形インサート8aに設ける湾曲形状をなす第1の側壁18aの数を「n」とした場合、「α=360°/(2×n)」により設定される値である。
【0137】
そして、第5の実施形態において、インサート取付座3に円形インサート8aの切れ刃14を割り出して装着した初期状態においては、円形インサート8aの外周側面14は、インサート取付座3の側面5、6の円弧状壁面5a、6bに当接して拘束された状態となり、外周回動防止面16の一つは、第1の回動防止部7の拘束面7aに近接して当接可能な状態になっている。さらに、着座面4に形成された第2の回動防止部10は、円形インサート8aの底面12に形成されている窪み部17aのいずれかに挿入されている。このとき、第2の回動防止部10は、直線D2に対してねじ孔4aの中心軸O2から角度α1ほど反時計回転方向(R1)に回転させた直線S6上に沿って形成されているので、第2の回動防止部10の反時計回転方向(R1)側が、湾曲形状をなす第1の側壁18aとなすクリアランスは、図14に示すクリアランスより小さくなっている。
【0138】
これにより、第5の実施形態では、作業者が円形インサー8aの再装着を行うときに、第2の回動防止部10を円形インサート8aの窪み部17aに挿入する操作について、上記した第2の回動防止部10と湾曲形状をなす第1の側壁18aとのクリアランスが小さくなることにより、作業者に対して前記した装着時の「うっかりミス」が発生しないように注意を促すという効果が生じる。
【0139】
なお、上記第5の実施形態においては、着座面4に形成する第2の回動防止部10を、着座面4の平面視において、図17に示す直線D2と交差し、時計回転方向(R1)に直線D2と角度α1をなす直線S5に沿って形成した実施例としてもよい。また、前記した第2の回動防止部10の最遠部となる点Pを直線S5上に設ける。この実施例においても、上記した第2の回動防止部10と、湾曲形状をなす第1の側壁18aの時計回転方向(R1)側の端部とのクリアランスが小さくなることにより、作業者に対して装着時の「うっかりミス」が発生しないように注意を促すことができるという効果が生じる。
なお、上記した角度α1は、図15に示す角度α1と同様に、2°〜10°の範囲に設定する。
【0140】
第6の実施形態は、図17に示すように、着座面4に形成する第2の回動防止部10を、着座面4の平面視において、直線D1(図14に示す直線D1)と交差し、時計回転方向(R1)に直線D1と角度α2をなす直線S7に沿って形成するものである。なお、図17には直線S7に沿って形成される第2の回動防止部10は示していない。また、この実施形態においては、第2の回動防止部10を直線D1と交差し、反時計回転方向(R2)に直線D1と角度α2をなす直線S8に沿って形成してもよい。
この第6の実施形態においても、上記した第2の回動防止部10と湾曲形状をなす第1の側壁18aとのクリアランスが小さくなることにより、作業者に対して装着時の「うっかりミス」が発生しないように注意を促すことができるという効果が生じる。
なお、上記した角度α2は、図16に示す角度α2と同様に、2°〜10°の範囲に設定する。
【0141】
[第7の実施形態]
続いて、本発明の第7の実施形態を、図18〜図20に基づいて説明する。第7の実施形態は、インサート取付座3に円形インサート8を装着したときに、円形インサート8の外周側面13を拘束するためにインサート取付座3に立設して設けた側壁5、6の着座面4を向く面に形成している円弧状壁面5a、6bの構成について改善を加えたものである。
【0142】
図18は、本発明の第7の実施形態に係る構成を示す斜視図であって、この第7の実施形態は、図3に示す第1の実施形態が備えているインサート取付座3と同様に、側壁5と側壁6のそれぞれを、第1の回動防止部7の一方の端部側に側壁5を、他方の端部側に側壁6を設けている。そして、側壁5は二つの円弧形状をなす第1側壁面5a1と第2側壁面5a2で構成し、側壁6も二つの円弧形状をなす第3側壁面6a1と第4側壁面6a2から構成し、第1の回動防止部7に近い側壁を第1側壁面5a1及び第3側壁面6a1としている。
【0143】
また、これら第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2についても、前記した式(1)で規定される条件を満足するようにする。すなわち、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2は、着座面4と直交する線分に対して工具軸O方向に傾斜角度β1をもって傾斜して立設され、着座面4に装着する円形インサート8の外周側面13の傾斜角度をθ1としたときに、(θ1−β1)は上記の式(1)を満足させるようにする。
【0144】
なお、図18に示すインサート取付座3は、その着座面3に形成した第2の回動防止部10を、図9に示す直線S2に対して傾斜する方向に形成した例、すなわち、円形インサートについて前記した第2の実施例となる円形インサート8aを装着する着座面3を示しているが、直座面3は第1の実施例となる円形インサート8を装着する構成としてもよい。以下の説明では、インサート取付座3に円形インサート8を装着する場合を例にして説明する。
【0145】
図19(a)は、この第7の実施形態について、インサート取付座とこのインサート取付座に円形インサート8を装着したときの状態を模式的に示す図、図19(b)は図19(a)の部分拡大図を示している。
【0146】
図18、図19に示すように、側壁5は、円弧形状をなす第1側壁面5a1と、同じく円弧形状をなす第2側壁面5a2とが着座面4側において○印(図19(a)参照)で示す段差部5bを介して一体化された構成としている。同様に、側壁6は、円弧形状をなす第3側壁面6a1と、同じく円弧形状をなす第4側壁面6a2とが着座面4側において○印(図19(a)参照)で示す段差部6bを介して一体化された構成としている。また、図19(a)には、円弧形状をなす第1側壁面5a1の直径はd1、円弧形状をなす第2側壁面5a2の直径はd2、円弧形状をなす第3側壁面6a1の直径はd1、円弧形状をなす第4側壁面6a4の直径はd2として示している。なお、段差部5bは、上面視で側壁5の中間位置当たり、すなわち、第1側壁面5a1と第2側壁面5a2の中間、すなわち両者の中間位置に設けるようにする。段差部6bの位置も、第3側壁面6a1と第4側壁面6a2の中間位置に設けるようにする。
【0147】
このように、側壁5と側壁6の着座面3を向く面は、平面視でそれぞれ2つの直径が異なる円弧形状をなす側壁5a1と5a2、及び6a1と6a2が段差部5b、6bを介して一体化された円弧形状をなす内壁面を備えた構成にしている。
【0148】
なお、図19(b)においては、段差部5b及び6bの形状は、円形インサート8の中心方向に直線的に形成した例を示しているが、緩やかなR形状からなる段差部としてもよい。また、段差部5b及び6bの形状を段差で構成するのではなく、凹形状、例えば、微小なU字状、円弧状の形状をなす溝としてもよいが、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2が段差部5b、6bを介して独立して構成されるようにする。
【0149】
この第7の実施形態においては、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2の円弧形状の前記直径d1、d2は、下記(特徴1)及び(特徴2)に記載のように設定していることに特徴がある。
【0150】
(特徴1)
第1側壁面51aの円弧形状の直径と、第3側壁面6a1の円弧形状の直径は同一となる直径d1に設定し、この直径d1は円形インサート8の直径d0、すなわち、上面10の直径(内接円の直径であって公差の中央値)と同一になるように設定する。
【0151】
(特徴2)
第2側壁面5a2の円弧形状の直径と、第4側壁面6a2の円弧形状の直径は同一となる直径d2に設定するとともに、この直径d2は、直径d1(d0)より大きな値になるように設定している。なお、(d2−d1)値は装着する円形インサートの内接円の直径の((公差の上限値)−(公差の中央値))値と同一、又はこの値に近い値にする。
【0152】
上記(特徴1)、(特徴2)に記載したように、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2の円弧形状の直径d1、d2を上記のように適切な値に設定することにより、インサート取付座3に装着する円形インサート8に必然的に生じる内接円の直径や外周側面13の周方向の直径等に微小な公差範囲内の寸法差(寸法のバラツキ)があっても、各インサート8を工具本体2のインサート取付座3に、安定した状態で、かつ高精度に取付けることが可能になる。
【0153】
この第7の実施形態において、円形インサート8を側壁5と側壁6によりインサート取付座3に安定、かつ高精度に取付けことができる作用を、図20に基づいて説明する。なお、この説明においては、円形インサート8の内接円(上面11)の直径の仕様を12.000mmとし、この内接円の寸法の公差は「±0.050mm」に設定した場合を例にして説明する。
【0154】
(1)例えば、内接円の公差が下限値である円形インサート8(内接円の直径は11.950mmとなる)を着座面4に装着したときには、円弧形状をなす第2側壁面5a2と第4側壁面6a2の直径d2はこの装着した円形インサート8の直径より大きいので、この円形インサート8の外周側面13は、図20(a)に示すように、第1側壁面5a1と第3側壁面6a1のP1点近傍において当接した状態で、精度良く着座面4に位置決めされ、この状態で円形インサート8は止めねじ9により着座面4上に固定されることになる。このP1点での当接を、「内当たり状態」と呼ぶことにする。この内当たり状態では、円形インサート8が着座面4に位置決めされた際に微小な位置ズレが懸念されるものの、円形インサート8の止めねじ9による締め付けの固定時に、円形インサート8には第1の回動防止部7方向への押圧力が作用するが、円形インサート8の外周側面13が第1側壁面5a1と第3側壁面6a1を変形させることはない。
【0155】
(2)例えば、内接円の公差が中央値である円形インサート8(内接円の直径は12.000mm)を着座面4に装着したときには、円弧形状をなす第2側壁面5a2と第4側壁面6aの直径d2はこの装着した円形インサート8の直径より大きいので、この円形インサート8の外周側面13は、図20(b)に示すように、この円形インサート8の内接円と等しい直径を有する第1側壁面5a1と第3側壁面6a1のそれぞれのP2の範囲において当接した状態で、精度良く着座面4に位置決めされ、この状態で円形インサート8は止めねじ9により固定されることになる。この状態が最も好ましい装着状態である。
【0156】
(3)例えば、内接円の公差が上限値である円形インサート8(内接円の直径は12.050mm)を着座面4に装着したときには、円弧形状をなす第1側壁面5a1と第3側壁面6a1の直径d1はこの装着した円形インサート8の直径より大きいので、この円形インサート8の外周側面13は、図20(c)に示すように、それぞれP3点、P4点の2点において当接した状態で、精度良く着座面4に位置決めされ、この状態で円形インサート8は止めねじ9により固定されることになる。
【0157】
なお、上記P3点は、第1側壁面5a1(第3側壁面6a1)と第2側壁面5a2(第4側壁面6a2)の段差部5b(6b)よりも第1側壁面5a1(第3側壁面6a1)側にあり、第1側壁面5a1(第3側壁面6a1)の端部(第2側壁面5a2側又は第4側壁面6a2側)又はこの端部近傍になる。P4点は、第2側壁面5a2と第4側壁面6a2の端部又はこの端部近傍になる。このP4での当接を、「外当たり状態」と呼ぶことにする。この外当たり状態では、円形インサート8が着座面4に位置決めされた際に回動防止効果が有効に作用する。ただし、円形インサート8の止めねじ9による締め付け固定時に、円形インサート8の第1の回動防止部7方向への押圧により、第2側壁面5a2と第4側壁面6a2が僅かに変形する可能性がある。
【0158】
このように、本発明の第7の実施形態においては、第1側壁面5a1と第3側壁面6a1の直径d1を、装着する円形インサート8の内接円の仕様、すなわち、公差の中央値d0に設定し、第2側壁面5a2と第4側壁面6a2の直径d2を、装着する円形インサートの内接円の公差の中央値(d0)より大きく、かつ、公差の上限値以内であってこの上限値に近い値、例えば上記例では、公差の中央値(d0)より「0.050mm程度大きい値」に設定することにより、円形インサート8を着座面4に精度良く装着して固定することができるようになる。
【0159】
以上に説明した本発明の第1〜第7の実施形態に係る刃先交換式切削工具においては、その工具本体2の第2の回動防止部10を含む着座面4と、側壁5、6の円弧状壁面5a、6a、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2、第1の回動防止部7(拘束面7a)のうちの少なくとも一つ、望ましくはこれらの全てには、硬質皮膜が被覆されていることが好ましい。この硬質皮膜は、周期律表4a、5a、6a族金属、Al、Si、Bの元素から選択される1種以上の元素を含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物のいずれかであることが好ましい。この理由は硬質皮膜を被覆することにより、円形インサート8、あるいは8aが工具本体2に繰り返して着脱されることで生じる接触部の摩耗、摩滅を抑制することができ、工具本体2の受け面となる着座面4、側壁5、6の円弧状壁面5a、6a、回動防止部7の拘束面7a、等の精度劣化を回避し、円形インサート8を確実に精度良く取付け、かつ、切削加工中における円形インサート8の回動を防止することができるからである。
【0160】
なお、上記した本発明の第1〜第7の実施形態に係る刃先交換式切削工具において、工具本体2の材質は硬度がHRC44〜50の合金工具鋼(SKD61相当材)を使用することが望ましい。また、工具本体2への着座面4、側壁5及び6、第1の回動防止部7、第2の回動防止部10、切屑排出溝等の加工は、この合金工具鋼の素材を3軸NC加工機の制御により、小径のボールエンドミルやラジアスエンドミルなどの切削工具を用いて行うことができる。
【0161】
また、側壁5、6の円弧状壁面5a、6a、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2への円弧形状の加工は、着座面4に対して縦方向(垂直方向)に切削工具、例えば、小径のボールエンドミルを移動制御して行うが、このときに、これら円弧形状の加工においては、円弧形状面に着座面4と垂直となる縦方向に微小な加工筋(微小な凹凸状の加工跡)が生じるようにするとよい。
このように側壁5、6の円弧状壁面5a、6a、又は第1側壁面5a1、第2側壁面5a2、第3側壁面6a1、第4側壁面6a2に、縦方向の微細な加工筋が残っていると、円形インサート8をインサート取付座3に装着して、円形インサート8の外周側面13をこれら円弧状壁面5a、6a等に当接させて拘束したときに、この加工筋により円形インサート8に対する拘束力が増加することになる。これにより、切削加工中において円形インサート8の回動防止への効果を一層発揮することが可能になる。
【0162】
また、円形インサートを装着した刃先交換式切削工具において、工具本体2に軸方向すくい角が「負」になるように円形インサート8を装着した場合には、切削加工時の切削加工負荷は、円形インサートに対して時計回転方向(R1)に作用する。これに対して、工具本体2に軸方向すくい角が「正」になるように円形インサート8を装着した場合には、切削加工時の切削加工負荷は、円形インサートに対して反時計回転方向(R2)に作用する。
【0163】
従って、工具本体2に、軸方向すくい角が「正」になるように円形インサートを装着したときには、止めねじ9として左ねじを用いて円形インサートを着座面4に固定すると、切削加工中に円形インサートを回動させようとする回動力の向きは反時計回転方向(R2)になる。この反時計回転方向(R2)に作用する回動力は、止めねじ9を締付ける方向に作用することになるので止めねじ9の緩みを防止することができるようになる。
一方、工具本体2に、軸方向すくい角が「負」になるように円形インサートを装着したときには、止めねじ9として右ねじを用いて円形インサートを着座面4に固定すると、切削加工中に円形インサートを回動させようとする回動力の向きは時計回転方向(R1)になる。この時計回転方向(R1)に作用する回動力は、止めねじ9を締付ける方向に作用することになるので止めねじ9の緩みを防止することができるようになる。
【0164】
このように、本発明の刃先交換式切削工具においても、工具本体2に装着する円形インサート8がなす軸方向すくい角の「正負」に応じて、止めねじ9のねじ仕様、すなわち、右ねじ、左ねじを適切に使用できる構成にすることにより、切削加工時の円形インサートの回動防止の効果をさらに得ることができるようになる。
【符号の説明】
【0165】
1: 刃先交換式切削工具
2: 工具本体
3: インサート取付座
4: 着座面、4a:ねじ孔、 4b:ねじ孔の開口端部
5: 側壁、 5a:円弧状壁面
5a1:第1側壁面、5a2:第2側壁面
6: 側壁、 6a:円弧状壁面
6a1:第3側壁面、6a2:第4側壁面
7: 第1の回動防止部(インサート回動防止部)、7a:拘束面
8: 円形インサート、 8a:円形インサート
9: 止めねじ
10: 第2の回動防止部、 10a:回動防止部の先端部
11: 上面(すくい面)
12: 底面
13: 外周側面(逃げ面)
14: 切れ刃
15: ねじ挿通孔、15a:ねじ挿通孔の開口端部
16: 外周回動防止面、 16a:下端面部、 16b:上端面部
17: 装着用割り出し部、 17a:窪み部
18: 段差側壁部(境界部)、
18a:湾曲形状をなす第1の側壁、18b:湾曲形状をなす第2の側壁、
18c:最突出端部、 18d:最凹み端部
h1: 円形インサートの厚さ(高さ)
h2: 円形インサートの回動防止面の上端から円形インサートの底面までの高さ
h3: 円形インサートの回動防止面の下端から円形インサートの底面までの高さ
h4: 円形インサートの回動防止面の上端から円形インサート上面までの高さ
L1: 円形インサートの外周面に設けた隣接する回動防止面間の幅
L2: 回動防止面の円周方向の幅
L3: ねじ挿通孔の開口端部から湾曲形状をなす第1の側壁の最突出端部までの距離
L4: ねじ挿通孔の開口端部から湾曲形状をなす第2の側壁の最凹み端部までの距離
O : 工具軸線(回転中心軸)
O1: ねじ挿通孔の中心軸
O2: ねじ孔の中心軸
P : 第2の回動防止部のねじ孔の中心軸から最も遠い距離となる最遠部
r1: 湾曲形状をなす第1の側壁18aの円弧形状の半径
r2: 第1の回動防止部の先端部の円弧形状の半径
β1: 側壁の円弧状壁面、第1側壁面から第4側壁面の傾斜角度
θ1: 円形インサートの外周面の傾斜角度
θ2: 円形インサートの回動防止面の傾斜角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具本体に形成されたインサート取付座に円形のインサートを着脱自在に取付けるフライス加工用の刃先交換式切削工具において、切削加工を行うために円形インサートの底面をインサート取付座の着座面に固定するときに、この円形インサートの切れ刃を着座面の正しい位置に装着するための手段を備えた刃先交換式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
円形(又は丸駒形)のインサート(以下、「円形インサート」と記載する)は、すくい面となる上面と、この上面と対向する底面、上面と底面との間に形成されて逃げ面となる外周側面とを備え、上面と外周側面とが交差する稜線部の全周にわたって切れ刃が形成されており、その形状は平板状で円形をなしている。円形インサートは、超硬合金からなる粉体を、金型を用いたプレス成形等により成形体を成形し、この成形体を適切な温度に加熱(焼成)して焼結する工程等を経て製造される。
【0003】
また、円形インサートを装着した刃先交換式切削工具においては、被削材に対して、例えば所定の累計加工時間又は所定の累計切削加工長さの切削加工を行うと、この円形インサートをインサート取付座の着座面への固定を解除して、この円形インサートについて未使用の切れ刃の部分が次の切削加工に使用されるように、円形インサートを手作業で所定角度回転させて、再度、このインサートの底面を着座面にねじ部材により装着し直す操作(再装着)が行われる。これにより、一つの円形インサートは、その切れ刃の領域を順次有効に切削加工に利用することができるという利点を備えている。通常、一つの円形インサートについて、インサート取付座に装着し直す回数(再装着回数)は、4〜8回程度とされている。
【0004】
このように、円形インサートをねじ部材を用いて、工具本体のインサート取付座に着脱自在に取付ける(又は「装着する」、あるいは「固定する」)刃先交換式切削工具においては、従来から下記の課題1、2が生じている。
【0005】
(課題1):インサートの回動防止
円形インサートをねじ部材によりインサート取付座の着座面に強固に固定しても、切削加工中における切削加工負荷は円形インサートのねじ部材による締付けを緩める力として作用する場合があり、円形インサートが回動する現象が発生する可能性がある。このため、長時間にわたって精度の高い加工を行うことができなくなるという課題があり、円形インサートの回動を防止する手段(回動防止手段)を設けることが必要になる。
【0006】
(課題2):インサート装着時の切れ刃の正確な割り出し
円形インサートを装着した刃先交換式切削工具においては、被削材に対して、前記したように、例えば所定の累計加工時間又は所定の累計切削加工長さの加工を行うと、円形インサートをインサート取付座の着座面へのねじ部材による締付け固定を解除して、この円形インサートについて未使用の切れ刃の部分が次の切削加工に使用されるように、円形インサートを手作業で着座面の正確な位置に再度固定、すなわち、円形インサートの切れ刃の正確な割り出しを行って、この円形インサートを着座面にねじ部材(止めねじ)を用いて固定し直す再装着の操作が行われる。これにより、一つの円形インサートは、その切れ刃の領域を順次有効に切削加工に使用することができるという利点を備えている。通常、一つの円形インサートについては、インサート取付座に装着し直す回数(再装着回数)は、切り込み量を考慮して4〜8回程度とされている。
【0007】
上記した円形インサートを再装着する操作においては、作業者の「うっかりミス」により、円形インサートが着座面の正しい位置に装着されないとい不具合が発生することがあり得る。例えば、既に使用済みの切れ刃の一部が次の切削加工の切れ刃に含まれるように円形インサートを装着するという装着ミスが発生する場合があり得る。この「うっかりミス」を防止するために、一般に、円形インサートの上面の切れ刃の近傍には、インサートの中心軸から等角度ごとに、例えば再装着回数が「8」の場合、45°ごとに、微小な凸状又は凹状形状をなす割り出しマークを予め形成しておき、一方、インサート取付座の着座面の外側方向であって工具軸線側にこの割り出しマークと位置合せを目視で行うための目印となる位置合せマークを一つ形成しておく手段が採用されている。
【0008】
この割り出しマークと位置合せマークを用いた手段において、円形インサートを再装着するときには、上記した割り出しマークと位置合せマークとを目視で位置合せ、すなわち、円形インサートの底面を着座面上に載置した状態で両マーク間の間隔が最小となる円形インサートの位置を目視で確認した上で、円形インサートを着座面にねじ部材により再装着することが実施されている。このような切れ刃の割り出し手段においても、正確な割り出し位置の決定は作業者の目視に頼っているために、上記した「うっかりミス」が発生する可能性がある。例えば、割出し位置マークと位置合せマークとの位置合せが正確でなくても、ねじ部材により円形インサートを着座面に固定することが可能であるため、使用済みの切れ刃の一部が次回の切削加工に使用されるという不具合が発生することが有り得る。
従って、円形インサートを装着する刃先交換式切削工具においては、上記した円形インサートを再装着するときに、切れ刃の正確な位置の割り出しを行う手段(割り出し手段)を設けることが極めて重要になる。
【0009】
円形インサートを用いた刃先交換式切削工具において、上記した課題1、課題2、または双方の課題を解決する手段としては、例えば、下記の特許文献1〜7に記載の発明が提案されている。
【0010】
特許文献1(特表平11−508192号公報)に記載の発明には、円形の形状を有する切削インサートを取付けたフライス加工用の切削工具において、この切削インサートの回動を阻止する手段として、円形インサートの外周面である円錐形状面を工具本体の受け面に接触させて固定する手段と、円形インサートの底面側を多角形状に形成し、この多角形状とした底面を工具本体と当接させて円形インサートの回動を阻止する手段とを併用することが提案されている。また、円形インサートの底面を多角形状にし、この多角形の1辺を着座面(ポケット)の周辺部に立設した下位部分37と当接させることにより、円形インサートを着座面に装着するときの位置決め(割り出し)手段としている。
【0011】
特許文献2(特表2006−523541号公報)に記載の発明には、円形インサート(円形の切削用チップ)を使用した回転防止工具ホルダー及び切削用チップ工具において、工具ホルダー内に少なくとも1つのチップ用ポケットと、このチップ用ポケットに対応する少なくとも1つの回転防止ストッパであって実質的に平らな面を含む回転防止ストッパを備えた回動防止手段が提案されている。また、特許文献2に記載の円形の切削用チップは、その側壁の周囲に多数の凹部を底面に達するように設け(Fig2参照)、工具ホルダーに設けた回転防止ストッパをこの凹部に当接させて円形の切削用チップの回転を防止する構成としている。さらに、回転防止ストッパの両側には円弧形状をなす側壁を設けていることも開示されている(Fig2参照)。
【0012】
特許文献3(特開2007−210090号公報)に記載の発明には、周面にニック溝を形成した円形インサートを誤装着することなく所定の角度ずつ回転させて取付座に取り付け直すことを可能とした丸駒インサート着脱式切削工具が提案されている。この切削工具は、円形インサートの周面に複数の切欠面とニック溝を等間隔に形成し、この切欠面のうち周方向に一定数おきの一部の切欠面同士は、その周方向の互いに等しい位置に一部のニック溝が延びて、工具本体のインサート取付座への拘束面とし、さらに、このインサート取付座には、この拘束面が当接させられる取付座壁面と、これら取付座壁面から突出して拘束面の一部のニック溝に収容される突起を形成した構成としたものである。
そして、この切削工具においては、円形インサートの拘束面が工具本体の取付座壁面に当接するように取り付けられるため、円形インサートの拘束面と工具本体の取付座壁面との面同士の当接で円形インサートを保持してそのズレ動きや脱落、誤装着することなく所定の角度ずつ正確に回転させて再装着することにより、安定した加工を促すことが可能になっている。また、特許文献3の図5等には、ニック溝は円形インサートの上面まで達する構成としたことも示されている。
【0013】
特許文献4(特開2010−247322号公報)に記載の発明には、円形インサートの回動を防止すると共にインサートの刃先強度を落とすことなく、この円形インサートを工具本体に精度良く取付けることができる刃先交換式切削工具が提案されている。この刃先交換式切削工具は、円錐状をなす外周面に回動防止面となる凹部を設けた円形インサートを、工具本体に固定するためのインサート固定部の構成が開示されており、このインサート固定部の構成は、円形インサートの底面を受ける着座面と、インサートの外周面を受ける2つの受け面と、2つの受け面の中央部に回動防止部材を組み込む手段と、からなる構成とされている。そして、インサートの回動防止面(凹部)とこの回動防止部材とを接触させることにより、円形インサートの回動を防止するための手段としている。
さらに、特許文献4に記載の刃先交換式切削工具においては、刃先強度を含むインサートの強度を低下させないために、円形インサートの厚さをhとしたときに、回動防止面の上端がインサートの底面から(2/3)hの位置より下方にあり、回動防止面の下端がインサートの底面から(1/10)hの位置より上方になるようにすることが開示されている。
【0014】
特許文献5(特許第3777043号公報)には、円形インサートの切れ刃の割り出しの操作を正確に行うことができるとともに、切削抵抗負荷による円形インサートの回動防止機能を備えた円形インサートを装着した切削工具に関する発明が提案されている。
同文献記載の切削工具は、円形インサートを装着するインサート取付座と、インサート取付座に装着した円形インサートの逃げ面をインサート取付座に対して起立して形成したインサート拘束壁で拘束する構成を備えた切削工具において、インサート取付座に装着する円形インサートの底面側には、このインサートの軸中心に対して滑らかな湾曲状凹凸を繰り返して形状した係合ギア(同文献図1(b)参照)を形成し、さらに、この係合ギアに嵌合する辺縁形状を有する段上がり部(同文献図2参照)をインサート取付座とインサート拘束壁との間に形成した切削工具である。このような構成を備えた切削工具においては、円形インサートを再装着するときに係合ギアと段上がり部とを嵌合させることができるので、切れ刃を所定通りの正確な位置に位置決めする(割り出す)ことを可能とするものである。また、同文献には、インサート拘束壁は段上がり部を介してインサート取付座に対して起立するように設けることが記載されている。
【0015】
特許文献6(特開昭64−40205号公報)には、切削加工中における円形インサートの回動をより確実に防止するとともに、インサート取付座へ装着する円形インサートについて多数の割り出し位置を提供することを目的とした切削用工具に関する発明が提案されている。
同文献記載の切削用工具は、インサート取付座に装着された円形インサートの外周側面と係合するキャビティ壁をインサート取付座の周辺部から立設して設けるとともに、インサート取付座の着座面には断面が円形をなす固定用ピンを嵌め込んで、この着座面上に突出させた構成とされている。また、円形インサートは、その底面にインサート孔と同心円状をなす円形凹部を設け、この円形凹部の外周壁は多数の円弧状側壁(円形の凹所)を連接して形成した構成を備えている(FIG4〜FIG6参照)。そして、円形インサートをインサート取付座に装着したときには、固定用ピンが円形インサートの底面に形成されている円弧状側壁の一つと係合させることにより、多数の割り出し位置の提供を可能としたものである。また、同文献には、円弧状側壁は固定用ピンの半径と等しい半径を有する(明細書第2頁左下欄第13行〜第15行)、ことが記載されている。
【0016】
特許文献7(US2011/0103905A1公報)には、円形インサートを装着する刃先交換式切削工具において、切削加工中における円形インサートの回動の防止と、この円形インサートをインサート取付座に装着するときに切削加工に使用する切れ刃の位置の割り出しを行うことができる円形インサートに関する発明が提案されている。
同文献に記載の円形インサートは、円形インサートの上面と底面にインサートの中心軸から同心円状に、かつ等角度で複数の突起(projection)を設けるとともに、この円形インサートを装着するインサート取付座の着座面にこの円形インサートに設けた突起と係合する凹部(dimple)を設けることにより、円形インサートをインサート取付座の着座面に装着するときに、切れ刃の位置の割り出しを確実に行うことができるようにしたものである。
【0017】
一方、円形インサートを着脱自在に装着する刃先交換式切削工具においては、前記したようにこの円形インサートは超硬合金製のインサートが使用されている。超硬合金製からなる円形インサートの製造は、一般に次の手段が採用されている。
微粉末状の超硬合金を、例えば、金型成形等により所定の寸法を備えた円形インサートのプレス成形体(グリーン成形体)を成形し、続いて、このプレス成形体を所定の温度に加熱して焼成して、高硬度・高強度となったプレス成形体を得る。次に、この焼成されたプレス成形体に、必要に応じて所定の箇所に仕上げ加工を実施することにより円形インサートが製造される。また、円形インサートの耐摩耗性を向上させるために、円形インサートの表面に硬質皮膜を被覆することも行われている。
【0018】
上記した円形インサートの製造においては、円形インサートのプレス成形体は焼成時の収縮を考慮して所定の寸法を備えた成形体として成形される。焼成した後の個々のプレス成形体は、その各部の肉厚等により焼成時の収縮にバラツキが発生するため、円形インサートごとに各部位の寸法には微小なバラツキ(寸法差)が生じる。このため、例えば、内接円の直径の仕様を12.0mmとした円形インサートの場合、各部位の寸法の公差は「±0.05mm」等とし、この公差を外れたインサートは規格外として使用されないようになされている。
【0019】
しかし、上記のように、円形インサートの各部位の寸法に厳格な公差を設けても、工具本体のインサートの着座面に装着する個々の円形インサートには公差範囲内の微小な寸法差が生じている。従って、円形インサートを装着する刃先交換式切削工具において、このような公差範囲内の微小な寸法差があっても、各円形インサートを工具本体の着座面を含むインサート取付座に、安定、かつ高精度に取付け手段を設けると、前記した円形インサートの回動をより確実に防止することが可能になり、加工面の加工品質や精度が向上する。
この高精度に取付け手段は、超硬合金製の円形インサートを装着し、かつ、その着座面への取付け角度を再装着するごとに切れ刃の位置を正確に割り出しする必要がある刃先交換式切削工具にとって、被削材の加工面の加工精度を向上させるために極めて重要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特表平11−508192号公報
【特許文献2】特表2006−523541号公報
【特許文献3】特開2007−210090号公報
【特許文献4】特開2010−247322号公報
【特許文献5】特許第3777043号公報(図1、図2)
【特許文献6】特開昭64−40205号公報(FIG.4)
【特許文献7】US2011/0103905 A1 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献1に記載のフライス加工用の切削工具は、円形インサートの回動防止手段と割り出し手段は備えているが、この割り出し手段は円形インサートの底面を多角形状にし、この多角形の1辺を着座面(ポケット)の周辺部に立設した下位部分(37)と当接させる構成とされている。しかし、円形インサートの底面を多角形状にすると、ねじ手段により円形インサートを着座面に装着したときに、底面を円形にした場合と比較して、底面の強度が低下するとともに、着座面との接触面積が減少するので両者の密着力が低下して、切削加工中において円形インサートが回動する可能性が生じる。
【0022】
特許文献2に記載の回動防止ホルダーには、円形の切削用チップの側壁の周囲に多数の凹部を底面に達するように設け、工具ホルダーに設けた回転防止ストッパをこの凹部に当接させて円形の切削用チップの回転を防止する回動防止手段の構成が開示されているが、円形の切削用チップを着座面(ポケット)の正確な位置に割り出して装着する割り出し手段については開示されていない。また、切削用チップの側壁の周囲に多数の凹部を底面に達するように設けているので、底面の強度が低下する可能性が生じる。
【0023】
特許文献3に記載の丸駒インサート着脱式切削工具は、切欠面のうち周方向に一定数おきの一部の切欠面同士は、その周方向の互いに等しい位置に一部のニック溝が延びて、工具本体のインサート取付座への拘束面とし、さらに、このインサート取付座には、拘束面が当接させられる取付座壁面と、これら取付座壁面から突出して拘束面の一部のニック溝に収容される突起を形成した構成とすることにより、円形インサートの拘束面と工具本体の取付座壁面との面同士の当接で円形インサートを保持してそのズレ動きや脱落、誤装着することなく所定の角度ずつ正確に回転させて再装着する手段、すなわち、回動防止手段と割り出し手段を設けた切削工具である。
しかし、この丸駒インサート着脱式切削工具に装着する円形インサートにおいては、その側面に多数の切欠面とニック溝を設けているために、円形インサートの強度を確保することが不十分になるとともに、一部のニック溝は円形インサートのすくい面に達するように形成されているので、切れ刃の仕上げ加工等に工数を要するという不具合がある。
【0024】
特許文献4に記載の刃先交換式切削工具は、インサートの外周面を受ける2つの受け面と、この2つの受け面の中央部に回動防止部材を組み込む手段とを備え、円形インサートの側面に形成した回動防止面(凹部)を、この回動防止部材と接触させるようにした回動防止手段が開示されているが、円形インサートの割り出し手段については開示されていない。
【0025】
特許文献5に記載の切削工具は、円形インサートの底面側に滑らかな湾曲状凹凸を繰り返して形状した係合ギアを、インサート取付座とインサート拘束壁との間に形成した段上がり部と嵌合させることにより、切れ刃を所定の正確な位置に割り出す割り出し手段を備えているが、係合ギアは円形インサートの底面から突出させる構成とされている。
しかし、係合ギアを円形インサートの軸中心に対して底面側から突出させた構成にすると、超硬合金製の円形インサートの製造時において、プレス成形体の成形工程から焼成工程において、この円形インサートのプレス成形体のハンドリングに特別な工夫を必要とする。この理由は、例えば、係合ギアの損傷の防止や、焼成ムラを無くするために焼成用トレイへの円形インサート成形体の配列方法等について工夫を行う必要があるからである。これにより、プレス成形体の成形工程から焼成工程のコスト高を招く可能性が生じる。
【0026】
特許文献6に記載の切削工具は、円形インサートの底面にインサート孔と同心円状をなす円形凹部を設け、この円形凹部の外周壁は多数の円弧状側壁(円形の凹所)を連接して形成し、この円形インサートをインサート取付座に装着したときには、この取付座に固定した固定用ピンが円形インサートの底面に形成した円弧状側壁の一つと係合させることにより、多数の割り出し位置が得られるとともに、円形インサートの回動を防止する構成としたものであるが、次のような不具合がある。
【0027】
(1)取付座に固定した固定用ピンを円形インサートの底面に形成した円弧状側壁の一つと係合させた場合に、切削加工時に円形インサートの回動を防止する防止力が十分に得ることは不可能である。この理由は、固定用ピンの円弧状外周面と円弧状側壁との係合のみでは、円形インサートの回動を防止するための十分な防止力を得ることは不可能であるからである。
(2)FIG.4に示されているように、円弧状側壁を20個、すなわち、20個の割り出し位置を設定した場合には、切削加工に使用する切れ刃の長さが極めて短くなるため、切込み量が少ない切削加工のみ使用可能な切削工具になる。すなわち、切削加工の用途が限定されてしまう。また、円形インサートの底面の強度が十分に確保することができないという不具合もある。
【0028】
特許文献7に記載の円形インサートの回動防止手段は、円形インサートの上面と底面にインサートの中心軸から同心円状に、かつ等角度で複数の平面視で略円形をなす突起(projection)を設け、この円形インサートを装着するインサート取付座の着座面にこの円形インサートに設けた複数の突起と係合する凹部(dimple)を設けることにより、円形インサートをインサート取付座の着座面に装着するときに、切れ刃の位置の割り出しを確実に行うことができるようにしたものであるが、次の不具合がある。
【0029】
(1)円形インサートに設ける突起と、着座面に設ける凹部は同数、例えば、6個とされている。しかし、工具本体の汎用性を考慮すると、工具本体の着座面に形成する凹部の数は1個にすることが望ましい。この理由は、円形インサートに設ける突起の数を8個、あるいは4個に設定した場合にも、着座面に形成する凹部の数を1個にすると、この工具本体の汎用性が発揮され、ユーザにとっては切削工具のコスト低減に貢献することができるからである。
【0030】
(2)前記したように、円形インサートを超硬合金製とした場合、焼成による寸法バラツキが発生する。インサート取付座の着座面に等間隔で複数の凹部の高精度な形成は、NC制御の加工機を用いることにより可能であるが、円形インサートの上面(底面)に複数の突起を形成すると必然的にその寸法にバラツキが生じる。このため、この寸法バラツキを修正するための仕上げ加工が必要になり、円形インサートの製造コストの増加を招くという不具合が発生する。
【0031】
そこで、本発明の目的は、超硬合金製の円形インサートを工具本体のインサート取付座に着脱可能に装着する刃先交換式切削工具において、円形インサートをインサート取付座に装着するときに、切削加工に使用する切れ刃の部分を正確な割り出し位置に装着することができるとともに、切削加工中において、インサート取付座に装着した円形インサートが切削負荷により回動することを防止し、さらに、円形インサートをインサート取付座に高い位置精度で装着することができる刃先交換式切削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の請求項1に係る刃先交換式切削工具は、工具本体のインサート取付座に、すくい面となる上面と、前記上面と対向して形成された底面と、前記上面と前記底面をつなぐ逃げ面となる外周側面と、前記すくい面と前記逃げ面とが交差する稜線部に形成された切れ刃と、前記上面から前記底面を貫通するねじ挿通孔を備えた円形インサートを、前記インサート取付座の着座面に形成されたねじ孔にねじ部材を用いて着脱自在に装着するとともに、前記着座面に装着した前記円形インサートの前記外周側面を前記インサート取付座から立設された2つの円弧状壁面で拘束し、前記円形インサートの前記外周側面の周方向に所定の間隔をおいて形成された複数の外周回動防止面のいずれかを、前記インサート取付座から立設され所定の横幅を有する拘束面を備えた第1の回動防止部に当接させる刃先交換式切削工具において、
前記円形インサートは、前記底面に、前記底面に対して凹部とされた装着用割り出し部を備えているとともに、
前記装着用割り出し部は、前記底面の外側方向に向けて前記ねじ挿通孔の中心軸から同心円状に形成され、前記底面との境界部を、湾曲形状をなす第1の側壁と第2の側壁とを有する段差側壁部を備え、
前記インサート取付座の前記着座面は、前記円形インサートの前記装着用割り出し部内のうち、前記湾曲形状をなす第1の側壁に隣接する前記凹部の窪み部内に挿入可能な第2の回動防止部を備え、
前記円形インサートを前記着座面に装着して前記円形インサートの前記切れ刃の割り出しを行ったときに、
前記第2の回動防止部は前記円形インサートの前記窪み部内に挿入され、前記第1の回動防止部の前記拘束面は前記円形インサートの前記外周回動防止面に当接可能になることを特徴としている。
【0033】
請求項2に記載の発明は請求項1に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記円形インサートの前記段差側壁部は、前記湾曲形状をなす前記第1の側壁と前記第2の側壁の複数を順次連接した構成からなり、
前記湾曲形状をなす第1の側壁における前記ねじ挿通孔の開口端部から最遠部までの長さは、前記湾曲形状をなす第2の側壁における前記ねじ挿通孔の開口端部から最遠部までの長さより大とされ、
前記着座面が備えている前記第2の回動防止部の長さであって、前記ねじ孔の中心軸を通る方向の長さは、前記湾曲形状をなす第1の側壁における前記最遠部までの長さより小さく、かつ、前記湾曲形状をなす第2の側壁における前記最遠部までの長さより大とされていることを特徴としている。
【0034】
請求項3に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2としたときに、
前記第2の回動防止部は前記直線S2に沿って形成され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第1の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第2の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されていることを特徴としている。
【0035】
請求項4に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と時計回転方向又は反時計回転方向に所定の角度α1又はα2の角度で交差する直線を直線S3と直線S4としたときに、
前記角度α1又はα2は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第1の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第2の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されていることを特徴としている。
【0036】
請求項5に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに、前記直線S2と時計回転方向又は反時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D1又は直線D2としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線D1又は前記直線D2に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたときに、α=360°/(2×n)とされ、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、ことを特徴としている。
【0037】
請求項6に記載の発明は請求項1または請求項2記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに前記直線S2と反時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D2とし、さらに、前記直線D2と交差するとともに前記直線D2と時計回転方向または反時計回転方向に角度α1をなす直線を直線S5又は直線S6としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線S5又は直線S6に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたとき、α=360°/(2×n)とされているとともに、前記角度α1は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、ことを特徴としている。
【0038】
請求項7に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに前記直線S2と時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D1とし、さらに、前記直線D1と交差するとともに前記直線D1と時計回転方向または反時計回転方向に角度α2をなす直線を直線S7又は直線S8としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線S7又は直線S8に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたとき、α=360°/(2×n)とされているとともに、前記角度α2は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、ことを特徴としている。
【0039】
請求項8に記載の発明は請求項3または請求項4に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記円形インサートは、前記前記湾曲形状をなす第1の側壁の最突出端部が前記外周回動防止面の中央部と対向するように、前記湾曲形状をなす第1の側壁と前記外周回動防止面が配置されていることを特徴としている。
【0040】
請求項9に記載の発明は請求項5から請求項7のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記前記湾曲形状をなす第2の側壁の最凹み端部が前記外周回動防止面の中央部と対向するように、前記湾曲形状をなす第2の側壁と前記外周回動防止面が配置されていることを特徴としている。
【0041】
請求項10に記載の発明は請求項1から請求項9のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記円形インサートの前記段差側壁部を構成する前記湾曲形状をなす第1の側壁は、前記ねじ挿通孔の中心軸に対して外側方向に突出する半径(r1)の円弧形状をなし、
前記着座面に形成された前記第2の回動防止部の先端部は、前記ねじ孔の中心軸に対して外側方向に突出する半径(r2)の円弧形状をなし、
前記半径(r1)は前記半径(r2)より大とされていることを特徴としている。
【0042】
請求項11に記載の発明は請求項1から請求項10のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記円形インサートは、その厚さをh1、前記底面から前記外周回動防止面の上端までの高さをh2、前記底面から前記外周回動防止面の下端までの高さをh3としたときに、
前記h2は下記の式を満足し、
(1/2)h1≦h2≦(2/3)h1
前記h3は下記の式を満足することを特徴としている。
(1/10)h1≦h3≦(1/3)h1
【0043】
請求項12に記載の発明は請求項1に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記2つの円弧状壁面の一方は前記第1の回動防止部の一方の端部側に、前記2つの円弧状壁面の他方は前記第1の回動防止部の他方の端部側に立設されており、
前記円弧状壁面の一方は、円弧形状の直径が異なる2つの第1側壁面と第2側壁面とを一体にした壁面から構成され、
前記円弧状壁面の他方は、円弧形状の直径が異なる第3側壁面と第4側壁面とを一体にした壁面からから構成されていることを特徴としている。
【0044】
請求項13に記載の発明は請求項12に記載の刃先交換式切削工具に係り、前記第1の回動防止部の一方の端部側に前記第1側壁面が配置され、前記第1の回動防止部の他方の端部側に前記第3側壁面が配置され、
前記第1側壁面と前記第3側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d1に設定されているとともに、前記直径d1は前記インサート取付座に装着する円形インサートの内接円の直径d0に設定され、
前記第2側壁面と前記第4側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d2に設定されているとともに、前記直径d2は前記直径d1を超えて大きく設定されていることを特徴としている。
【0045】
請求項14に記載の発明は請求項1、請求項12、請求項13のいずれかに記載のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記2つの円弧状壁面、または前記第1〜第4側壁面は、前記着座面と直交する線分に対して前記工具本体の工具軸線方向に傾斜角度β1をもって傾斜して立設され、
前記着座面に装着する前記円形インサートの前記外周側面の傾斜角度をθ1としたときに、(θ1−β1)は下記の式を満足することを特徴としている。
0≦θ1−β1≦1.0
【0046】
請求項15に記載の発明は請求項1、請求項12から請求項14のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記2つの円弧状壁面、または前記第1〜第4側壁面は、縦方向に複数の加工筋を有していることを特徴としている。
【0047】
請求項16に記載の発明は請求項1、請求項2、請求項7から請求項15のいずれかに記載の刃先交換式切削工具に係り、前記着座面と、前記円弧状壁面と、前記第1〜第4側壁面と、前記第1の回動防止部の少なくとも一つには、周期律表4a、5a、6a族金属、Al、Si、Bの元素から選択される1種以上の元素を含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物のいずれかからなる硬質皮膜が被覆されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0048】
本発明の刃先交換式切削工具によれば、円形インサートをインサート取付座の着座面に装着したときに、着座面に形成した第2の回動防止部が円形インサートの底面に形成した装着用割り出し部の窪み部に挿入されて、円形インサートの底面と着座面とが密着した状態になる。これにより、円形インサートをインサート取付座の着座面に対して、正確な割り出し位置に装着することが可能になり、円形インサートの装着時の「うっかりミス」の発生を防止することができる。
【0049】
さらに、円形インサートを、インサート取付座の着座面に対して正確な割り出し位置に装着したときに、着座面に形成した第2の回動防止部は円形インサートの底面に形成した装着用割り出し部の窪み部に挿入されること、及び切削加工中において円形インサートの外周側面に形成した外周回動防止面はインサート取付座に立設した第1の回動防止部に当接することにより、切削加工中において円形インサートの回動を防止することが可能になる。
【0050】
さらに、インサート取付座に立設する円弧形状をなす2つの側壁は、それぞれ円弧形状の直径が異なる少なくとも2つの側壁面を連接した構成としているので、超硬合金製の円形インサートの内接円に公差範囲内の寸法バラツキがあっても、着座面にねじ手段により固定する各円形インサートの外周側面をこれら2つの側壁面で拘束することが可能になる。これにより、円形インサートをインサート取付座に高い位置精度で、かつ、安定した状態で装着することが可能になり、その結果として加工面の加工精度を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の刃先交換式切削工具の一例を示す斜視図であって、工具本体のインサート取付座に円形インサートを装着していない状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す刃先交換式切削工具の工具本体に、円形インサートを装着したときの状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す刃先交換式切削工具について、着座面を含むインサート取付座の構成を示す図である。
【図4】図1に示す円形インサートの側面図である。
【図5】図4に示す円形インサートを、底面方向から見た斜視図である。
【図6】図4に示す円形インサートについて、A方向の水平断面を示す図である。
【図7】図5に示す円形インサートを、底面方向から見た平面図である。
【図8】図1に示す円形インサートについて他の実施形態を示す図であって、(a)は底面方向から見た平面図、(b)は底面の斜め上方から見たときの斜視図である。
【図9】図1に示す工具本体のインサート取付座の構成を示す平面図である。
【図10】図9に示すインサート取付座に円形インサートを装着したときの状態を説明するための模式図である。
【図11】図9に示すB−B線における断面図である。
【図12】図10に示すC−C線における断面図である。
【図13】図10に示すD−D線における断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態を説明するための図であって、インサート取付座の着座面に円形インサートを装着したときの状態を示す平面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態を説明するための図であって、インサート取付座の着座面に円形インサートを装着したときの状態を模式的に示す平面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態を説明するための図であって、インサート取付座の着座面に円形インサートを装着したときの状態を模式的に示す平面図である。
【図17】本発明の第5、及び第6の実施形態を説明するための図であって、インサート取付座の着座面に円形インサートを装着したときの状態を示す平面図である。
【図18】本発明の第7の実施形態を説明するために、インサート取付座の構成を示す平面図である。
【図19】図18に示すインサート取付座に、円形インサートを装着したときの状態を説明するための模式図である。
【図20】図18に示すインサート取付座に円形インサートを装着したときの状態をさらに詳細に説明するための模式図であって、(a)は装着した円形インサートの内接円の公差が下限値の場合、(b)は同じく内接円の公差が中央値の場合、(c)は同じく内接円の公差が上限値の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[第1の実施形態]
まず、本発明の刃先交換式切削工具について、第1の実施形態の基本構成を図1〜図3に基づいて説明する。図1は円形インサートを装着する前の工具本体の構成例を示す斜視図、図2は図1に示す工具本体に円形インサートを装着したときの状態を示す斜視図、図3は図1に示すインサート取付座の構成を示す斜視図である。
【0053】
(工具本体の構成)
図1〜図3に示すように、第1の実施形態となる刃先交換式切削工具1は、その工具本体2の一方の先端部に複数のインサート取付座3が形成されている。図1においては、工具本体2にインサート取付座3を3個設けた例を示している。インサート取付座3は、ほぼ円形の平面状をなす着座面4と、この着座面4の工具軸線O(回転中心軸)側から着座面4に対して上方に立ち上がるように(立設して)設けられ、着座面4方向を向く面を円弧状に形成した2つの側壁5、6と、インサート回動防止部7(以下、「第1の回動防止部7」という)を備えている。第1の回動防止部7は、側壁5と側壁6との間に配置され、第1の回動防止部7の着座面4側を向く面には拘束面7aが形成されている。
【0054】
着座面4には、一つの第2の回動防止部10がこの着座面4上から突出するように形成されている。第2の回動防止部10は、円形インサート8をインサート取付座3に装着するときに、切削加工に使用する切れ刃の部分を正確な割り出し位置に配置されるようにするために設けたものであて、着座面4と一体に切削加工により成形され、本発明の刃先交換式切削工具1にとって特徴的(重要)な構成となる。
【0055】
上記した第2の回動防止部10は、着座面4から所定の高さほど突出するとともに、ねじ孔4aの中心線(O2)を通る直線方向に所定の長さと幅を有するように形成されている。なお、第2の回動防止部10は、工具本体2を小径のエンドミル等を用いた切削加工により製造するときに、着座面4と一体になるように加工により設けることにより、その強度が確保できるようにしている。第2の回動防止部10の具体的な構成と作用については後述する。
【0056】
略円形で平面状をなす着座面4の中央部には、ねじ孔4aが刻設されている。このねじ孔4aは、インサート取付座3に円形インサート8を装着するときに、ねじ部材となる止めねじ9を用いて円形インサート8を着座面4に強固に固定するためのねじ孔である。
【0057】
図2は、図1に示す工具本体2のインサート取付座3の着座面4に、円形インサート8を止めねじ9を用いて装着したときの状態を示している。このとき、止めねじ9は円形インサート8のねじ挿通孔15に挿入されて、円形インサート8の底面12を着座面4に強固に密着させる作用を行う。なお、工具本体2は、その着座面4に装着する円形インサート8の軸方向すくい角が所定の正角(正)又は負角(負)になるように、予め複数種製造される。
【0058】
図3に示すように、着座面4の後方側、すなわち、着座面4の工具軸線O側から立設している側壁5と側壁6の着座面4を向く面は、インサート取付座3に装着した円形インサート8の逃げ面となる外周側面13を拘束するための円弧形状をなす2つの壁面5a、5b(以下、「円弧状壁面5a」、「円弧状壁面5b」と記載する場合がる)を備えている。本発明の第1の実施形態においては、これら円弧状壁面5aと5bのそれぞれは、上面視で、円形インサート8の外周側面13に沿うように一つの円弧形状をなす壁から構成されている。
【0059】
なお、前記した第1の回動防止部7の拘束面7aは着座面4方向に所定の横幅長さK(図19(a)参照)を有している。拘束面7aは円形インサート8をインサート取付座3に装着したときに、後述する円形インサート8の逃げ面に設けた外周回動防止面16と当接可能とさせ、切削加工中において円形インサート8の回動を防止する作用を行うために設けたものである。これら円形インサート8の逃げ面に設けた外周回動防止面16と第1の回動防止部7は、切削加工中において円形インサート8の回動を防止する回動防止手段を構成する。
【0060】
図1から図3に示す19は、円形インサート8をインサート取付座3に装着するときに、円形インサート8を着座面4の正確な位置、すなわち、切れ刃14が正しい割り出し位置に配置されるように目視で確認するための突起、あるいは凹状をなす溝形状(以下、「位置合せ用突起」という)となる目印である。作業者は、新しい円形インサート8をインサート取付座3に装着するとき、あるいは、前回までの切削加工で使用した円形インサート8の切れ刃14部分が摩耗したので、次の切削加工ではこの円形インサート8の未使用の切れ刃14の部分を使用するために止めねじ9を緩めて円形インサート8を所定角度回転させて再装着するときに、この位置合せ用突起19を目視で確認しながら円形インサート8を止めねじ9により着座面3に固定する操作を行う。
なお、円形インサート8の上面11にも、この位置合せ用突起19と目視で位置合せするための微小な突起又は凹部がねじ挿入孔15の中心線から所定の角度ごとに形成されている。
【0061】
(円形インサートの構成)
続いて、本発明の刃先交換式切削工具1に装着する円形インサート8の基本的な構成例を、図4〜図7に基づいて説明する。なお、図4は円形インサート8の側面図、図5は円形インサート8を底面12方向から見たときの斜視図、図6は図4に示す円形インサート8について、底面12と平行な矢印A方向における水平断面図を示している。また、図7は、円形インサート8を底面12方向から見たときの平面図を示している。図4〜図7に示す円形インサート8は、円形インサート8の逃げ面となる外周側面13に8個の外周回動防止面16を設けた例を示している。
【0062】
図4、図5に示すように、円形インサート8は平板状をなし、上面11(底面12)方向からの上面視では円形をなし、その材質はWC−Co系の超硬合金からなっている。超硬合金製の円形インサート8は、前記したように、微粉末状の超硬合金を含む粉体を、例えば、金型成形等により所定の寸法を備えた円形インサートのプレス成形体を成形し、続いて、このプレス成形体を所定の温度に所定時間加熱(焼成)して、高硬度・高強度の円形インサートとした後に、切れ刃14、底面12等の必要な箇所について仕上げ加工を施すことにより製造される。
【0063】
また、図4に示すように、厚さh1を有する円形インサート8は、すくい面となり平面視で円形をなす上面11と、上面11と対向する位置に平面視で円形をなす底面12と、上面11と底面12の間に形成されて円錐形状をなし、逃げ面となる外周側面13と、上面(すくい面)11と外周側面(逃げ面)13との境界部となる稜線部の全周にわたって形成された切れ刃14と、上面11の中央部から底面12の中央部まで貫通するねじ挿通孔15(図5参照)を備えている。ねじ挿通孔15は、止めねじ9により、円形インサート8を着座面4に固定するための孔である。
【0064】
また、円形インサート8の逃げ面となる外周側面13には、少なくとも一つの外周回動防止面16を備え、さらに、図5に示すように、底面12のねじ挿通孔15の回りは、底面12に対して凹状(凹部)とした装着用割り出し部17を形成している。
【0065】
外周側面13の周方向に形成している外周回動防止面16は、インサート取付座3に円形インサート8を装着したときに、インサート取付座3に設けた第1の回動防止部7の拘束面7aと当接可能にして、切削加工中において円形インサート8の回動を防止するために設けている。
図4に示すように、外周回動防止面16の上端面部16bは底面12から高さh2の位置に形成され、上端面部16bと上面11の間(高さh4の間)は、外周側面13が存在するようにしている。なお、外周回動防止面16の上端面部16bの近傍は円弧形状をなすようにしている。また、外周回動防止面16の下端面部16aは、底面12から高さh3の位置に存在するように形成され、下端面部16aと底面12の間には、外周側面13を介在させている。そして、外周回動防止面16は、上端面部16bの近傍の円弧状部から下端面部16aまでが平面状(平坦面)に形成されている。
なお、外周回動防止面16の形状は、図4に示す矢印A方向の水平断面で示すように、緩やかな円弧形状をなす凹状の形状としてもよい。
【0066】
なお、外周回動防止面16は、外周側面13に少なくとも一つ設ければよいが、円錐形状をなす外周側面13の周方向に沿って等間隔で複数個(4個から8個の複数面)設けることが望ましい。この理由は、一つの円形インサート8は、外周側面13に形成した外周回動防止面16の数ほど、切れ刃14の位置を割り出して着座面4に再装着することが可能になるので、一つの円形インサート8に形成されている切れ刃14の領域を、切削加工を行うために有効に使用することができるからである。
【0067】
図6及び図7に示す円形インサート8は、その外周側面13の周方向に8個の外周回動防止面16を等間隔で形成した例を示しているが、8個の外周回動防止面16を設けた場合においても、外周側面13の周方向に幅L1の外周側面13を介在させて、外周側面13の周方向に幅L2を有する外周回動防止面16が等間隔で配置されるようにする。この幅L1をなす外周側面13の存在により、外周回動防止面16を8個設けても、隣接する外周回動防止面16間にはこの外周側面13が存在するので、円形インサート8の強度の確保が有効になるとう効果が生じる。
【0068】
上記したように、全ての外周回動防止面16は、その下端面部16aは円形インサート8の底面12まで達していなく、同様に、全ての外周回動防止面16の上端面部16bも円形インサート8の上面11、すなわち、切れ刃14に達しないように、外周側面13に形成している。これにより、円形インサート8の上面11と底面12の形状は、円形の形状が確保され、かつ、外周回動防止面16の下端面部16aと底面12との間、及び外周回動防止面16の上端面部16bと上面11との間には外周側面13が介在するので円形インサート8の強度、特に外周側面13の切れ刃14の近傍、及び外周側面13の底面12近傍の強度を確保することが可能になる。
【0069】
続いて、円形インサート8の底面12に形成している装着用割り出し部17の構成について説明する。装着用割り出し部17は、着座面4に設けた前記第2の回動防止部10とともに、円形インサート8に形成されている切れ刃14を所定の正確な位置に割り出して円形インサート8を着座面4に装着するための割り出し手段を構成するものであって、本発明にとって特徴的な構成となる。
【0070】
装着用割り出し部17は、図5又は図7に示すように、円形インサート8の底面12に対して、ねじ挿通孔15の中心軸O1を中心として同心円状の凹部をなすように形成され、この凹部の中央部にねじ挿通孔15が位置している。この凹部の底面12に対する深さ(段差)f1は、円形インサート8の厚さ(高さ)h1の5〜20%程度、好ましくは15%程度、例えば0.75mmにする。段差f1がh1の20%を超えると円形インサート8の強度確保が不足し、5%より小さくなると切れ刃14を所定通りの正確な位置に割り出すことができなくなる可能性が生じる。
【0071】
底面12に対して凹状をなす装着用割り出し部17が底面12となす境界部、すなわち段差部18(以下、「段差側壁部18」という)は、図7に示すように、ねじ挿通孔15の中心軸O1から離れる方向を滑らかな凸状湾曲形状をなす側壁18a(以下、「湾曲形状をなす第1の側壁18a」という)と、同じくねじ挿通孔15の中心軸O1に近づく方向を滑らかな凸状湾曲形状をなす側壁18b(以下、「湾曲形状をなす第2の側壁18b」という)とから構成されている。そして、装着用割り出し部17の段差側壁部18は、平面視において湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の側壁18bの複数がこの順序の配列で、ねじ挿通孔15の中心軸O1を中心として、同心円状に滑らかに連接された側壁から構成されている。
【0072】
なお、上記した湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の側壁18bは、平面視で円弧形状、あるいは滑らか凸状、あるいは滑らかな凸状の曲面形状をなすようにする。また、これら湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の側壁18bの上端部、すなわち、底面12と接する部分は、円形インサート8のプレス成形時等の型抜きを考慮してR形状、すなわち、このR形状部を下り傾斜面として形成することが望ましい。また、湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の側壁18bの下端部、すなわち、装着用割り出し部17の底部と接する部分も、プレス成形時等の型抜きを考慮して上記したR形状部、あるいは装着用割り出し部17の底部と適度な傾斜面を設けてこのR形状部と接続する構成にすることが望ましい。
【0073】
湾曲形状をなす第1の側壁18aの上端部である底面12との境界部を円弧形状をなす側壁とする場合には、図7に示すように、この円弧形状の半径はr1を有するようにする。
【0074】
本発明の刃先交換式切削工具1に装着する円形インサート8は、上記した湾曲形状をなす第1の側壁18aを、前記した外周側面に設けた外周回動防止面16の数と同数となるように、4個〜8個ほど備えている。そして、円形インサート8の内接円の直径が同一であれば、湾曲形状をなす第1の側壁18aの形状と寸法は同一、あるいはほぼ同一の仕様にする。
なお、湾曲形状をなす第1の側壁18aを4個設けた場合には、円形インサート8の中心軸O1から90°間隔で、湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18c(図7参照)が配置されるようにしている。同様に、湾曲形状をなす第1の側壁18aを8個設けた場合には、円形インサート8の中心軸O1から45°間隔で、湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18cが配置されるようにし、隣り合う湾曲形状をなす第1の側壁18aの間に、湾曲形状をなす第2の側壁18bが形成されるようにしている。
上記した湾曲形状をなす第1の側壁18aの数は、一つの円形インサート8について、未使用の切れ刃8部分の割り出しを行うことができる回数、すなわち、一つの円形インサート8について再装着可能な回数を示す。
【0075】
図7に示す円形インサート8は、円形インサート8の底面12における装着用割り出し部17の配置、すなわち、装着用割り出し部17を構成する第1の側壁18aと第2の側壁18bと、外周回動防止面16との配置の位置関係について、円形インサート8の第1の実施例を示すものである。
【0076】
図7に示す円形インサート8の第1の実施例を示す平面視において、ねじ挿通孔15の中心軸O1を通る直線S1上に、装着用割り出し部17を構成する湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18c(又は最突出端部18cの近傍)と、外周回動防止面16の外周側面13方向の中央部(又は中央部近傍)が配置され、この配置の状態は、湾曲形状をなす第1の側壁18aと外周回動防止面16とは互いに対向する(相対する)位置になるように形成されて、配置されていることを示している。
なお、図7では、平面視で、第1の側壁18aの最突出端部18cと、外周回動防止面16の外周側面13方向の中央部とが、直線S1上に存在している例を示しているが、円形インサート8の製造の容易性を考慮すると、最突出端部18c等は必ずしも直線S1上に存在させる必要はなく、直線S1上から若干離れた近傍の位置でもよい。
【0077】
さらに、図7に示すように、平面視で、ねじ挿通孔15の中心軸O1を通る他の直線を直線S1aとしたときに、この直線S1a上に装着用割り出し部17を構成する円弧状の湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18d(又は最凹み端部18d近傍)と、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部(又は中央部近傍)が配置され、この配置の状態は、湾曲形状をなす第2の側壁18bと、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部とは互いに対向する位置になるように形成されて、配置されていることを示している。
なお、図7に示す円形インサートの第1の実施例では、第2の側壁18bの最凹み端部18dと、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部が、直線S1a上に存在している例を示しているが、円形インサート8の製造の容易性を考慮すると、最凹み端部18dと、隣り合う外周回動防止面16間に存在する外周側面13の中央部とは必ずしも直線S1a上に存在させる必要はなく、直線S1a上から若干離れた近傍の位置でもよい。
【0078】
図8(a)は、円形インサートについて第2の実施例となる円形インサート8aの平面図を、図18(b)は同じく円形インサート8aを底面12方向から見た斜視図を示している。
円形インサート8aは、第1の実施例となる円形インサート8と比較して、平面視において、ねじ挿通孔15の中心軸O1を通る直線S1上に、装着用割り出し部17を構成する湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18d(又は最凹み端部18d近傍)と、外周回動防止面16の外周側面13方向の中央部(又は中央部近傍)が配置されており、この配置の状態は、第2の側壁18bと外周回動防止面16とは互いに対向する位置になるように形成され、配置されていることを示している。
なお、図8(a)では、第2の側壁18bの最凹み端部18dと外周回動防止面16の外周側面13方向の中央部が直線S1上に存在している例を示しているが、円形インサート8の製造の容易性を考慮すると、最凹み端部18d等は必ずしも直線S1上に存在させる必要はなく、直線S1上から若干離れた近傍の位置でもよい。
【0079】
さらに、図8(a)に示すように、ねじ挿通孔15の中心軸O1を通る他の直線を直線S1bとしたときに、この直線S1b上に、装着用割り出し部17を構成する湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18c(又は最突出端部18c近傍)と、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部(又は中央部近傍)が配置され、この配置の状態で、湾曲形状をなす第1の側壁18aと、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部(又は中央部近傍)とは互いに対向する位置になるように形成され、配置されている。
【0080】
なお、図8(a)に示す円形インサートの第2の実施例では、第1の側壁18aの最突出端部18cと、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部が直線S1b上に存在している例を示しているが、円形インサート8の製造の容易性を考慮すると、最突出端部18cと、隣り合う外周回動防止面16の間の外周側面13の中央部とは、必ずしも直線S1b上に存在させる必要はなく、直線S1b上から若干離れた近傍の位置でもよい。
【0081】
図7に示す第1の実施例となる円形インサート8において、例えば円弧状の湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18cから外周回動防止面16までの厚さをt1、同じく円弧状の湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18dから外周側面13までの厚さをt2とし、図8に示す第2の実施例となる円形インサート8aにおいて、円弧状の湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18dから外周回動防止面16までの厚さをt3、円弧状の湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18aから外周側面13までの厚さをt4とした場合、(t2−t1)>(t3−t4)となる。
【0082】
上記「(t2−t1)>(t3−t4)」は、第2の実施例となる円形インサート8aの方が、第1の実施例となる円形インサート8よりも、装着用割り出し部17の凹凸形状をなす段差側壁部18から外周側面13までの厚さ(肉厚)の変動が小さいことを示している。この肉厚の変動が小さいことは、第2の実施例となる円形インサート8aの方が、円形インサートの厚さ(肉厚)の変動が小さくなっていることを意味し、このことは円形インサート8aの方が円形インサート8よりも、円形インサートの強度確保のために有効であることを示している。
【0083】
なお、図7、図8(a)に示す「L3」は、ねじ挿通孔15の開口端部15aから湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18cまでの距離、「L4」はねじ挿通孔15の開口端部15aから湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18dまでの距離を示し、当然「L3>L4」になっている。
【0084】
(第2の回動防止部の構成)
続いて、インサート取付座3の着座面4に形成している第2の回動防止部10の構成例を、図3、図9、図10を参照して説明する。
【0085】
図9、図10に示す第2の回動防止部10は、着座面4の中央部に形成しているねじ孔4aの着座面4上における開口端部4bから、ねじ孔4aの中心軸O2を通り、平面視で第1の回動防止部7の拘束面7aの両端部の点R、点Qを結ぶ線分RQの垂直2等分線となる直線S2に沿って、着座面4上を、着座面4の外側方向(工具本体2の外側方向)に向かって所定の長さL5と、幅(横幅)Wと、着座面4から所定の高さを有する凸形状をなすように形成されている。
【0086】
なお、工具本体2のインサート取付座3に装着する円形インサート8の内接円の直径が同一である場合には、前記した円形インサート8に設ける湾曲形状をなす第1の側壁18aの数が異なっていても、上記した第2の回動防止部10の凸形状の寸法仕様は同一、又はほぼ同一にする。これにより、一つの工具本体2について、湾曲形状をなす第1の側壁18aの数が異なっていても、同一の内接円を有する円形インサート8をインサート取付座3に装着した場合には、その切れ刃14の正確な割り出しを行うことが可能になるので、工具本体2の使用上の汎用性が生じることになる。
【0087】
本発明において、作業者が、着座面4に円形インサート8を装着する操作を行うときには、円形インサート8の外周回動防止面16を第1の回動防止部7の拘束面7aに対向させた状態で、円形インサート8の装着用割り出し部17が備えている複数の湾曲形状をなす第1の側壁18aのうちのいずれか一つの側壁18aが、この側壁18aに隣接してねじ挿通孔15との間に存在する窪み部17a(図10参照)に、第2の回動防止部10を挿入させて係合させて、着座面4と円形インサート8の底面12とを密着させることにより、円形インサート8の着座面4に対する切れ刃14の正確な位置の割り出しを行うことが可能になる。
本発明において、これら第2の回動防止部10と円形インサート8の装着用割り出し部17は、切削加工に使用する円形インサート8の切れ刃14の部分を正確な割り出し位置に装着するための手段として設けたものである。
【0088】
図10は、円形インサートの第1の実施例となる円形インサート8が備えている装着用割り出し部17の窪み部17a内に、第2の回動防止部10を挿入して係合させた状態を示している。図10において斜線で示す領域が一つの窪み部17aを示しており、図10に示す装着用割り出し部17は8個の窪み部17aを有しており、一つの円形インサート8について8回の再装着が可能になっている。
【0089】
このように、第2の回動防止部10と円形インサート8の装着用割り出し部17は、円形インサート8を装着するときの割り出し手段を構成するが、さらに、切削加工中において円形インサート8の回動を防止するための回動防止手段の機能も備えている。この理由は、第2の回動防止部10は円形インサート8の内接円の直径が12mmの場合、前記した所定の長さL5を例えば1〜3mm程度、所定の幅Wを例えば1〜3mm程度、高さを例えば0.4〜1.5mm程度に設定することにより、円形インサート8を着座面4に装着して切れ刃14の正確な位置の割り出しを行ったときには、上記した寸法仕様を有する第2の回動防止部10は、円形インサート8の窪み部17a内に挿入される。これにより、切削加工中においても、第2の回動防止部10は円形インサート8の窪み部17aに挿入されて両者は係合状態になっているので、円形インサート8の回動をより防止する作用を発揮することになるからである。
【0090】
第2の回動防止部10の構成例の詳細と、円形インサートの第1の実施例となる円形インサート8を装着して切れ刃14の割り出しを行ったときの状態を、図9〜図10を参照して説明する。
図9に示すように、第2の回動防止部10は、ねじ孔4aの着座面4上における開口端部4bから、着座面4の外側方向に向けて形成されている。具体的には、ねじ孔4aの開口端部4bから第1の回動防止部7から離れる方向であって工具軸線Oと対向する側に、着座面4上のP点まで形成されている。このP点は、インサート取付座3の平面視において、第1の回動防止部7の拘束面7aが着座面4を向く面の両端部における点R、点Qを結ぶ線分RQの垂直2等分線となる直線であって、ねじ孔4aの中心軸O2を通る直線S2上に位置するように形成されている。また、点Pはねじ孔4aの中心軸O2から最も遠い距離となる最遠部に位置している。
【0091】
このように、インサート取付座3の平面視において、第2の回動防止部10は直線S2に沿って形成することにより、前記した構成を備えている円形インサートの第1の実施例となる円形インサート8を、インサート取付座3に装着することが可能になる。この理由は、前記したように円形インサート8は、湾曲形状をなす第1の側壁18aと外周回動防止面16とは互いに対向する(相対する)位置になるように形成されているので、円形インサート8をインサート取付座3に装着したときには、円形インサート8が備えている外周回動防止面16の一つを第1の回動防止部7の拘束面7aに当接可能な状態にして、第2の回動防止部10を、装着用割り出し部17の第1の側壁18aに隣接する窪み部17a内に挿入することができるからである。
【0092】
また、第2の回動防止部10は、直線S2方向の長さがねじ孔4aの開口端部4bからL5を有するように形成されているとともに、P点は第2の回動防止部10の先端部10a、すなわち、ねじ孔4aの中心軸O2からの距離が最も遠くなる部分を示すP点(以下、「第2の回動防止部10の先端部10a」という場合がある)とその近傍は平面視で半径r2を有する円弧形状をなすように形成されている。
【0093】
なお、第2の回動防止部10を着座面4上に設ける位置は、着座面4の外側方向、すなわち、第1の回動防止部7から遠くなる側にするすることが望ましい。この理由は、着座面4と第2の回動防止部10の形成は、小径のボールエンドミル等の切削工具を用いてNC制御により加工するが、この切削加工の容易性を考慮すると、第1の回動防止部7から遠くなる側に形成することが望ましいからである。
同様に切削加工の容易性を考慮すると、第2の回動防止部10は、ねじ孔4aの開口端部4bから直線S2上に沿うように形成することが望ましい。
【0094】
本発明において、第2の回動防止部10の円弧形状をなす先端部10aの半径r2は、前記した円形インサート8の底面12に形成した装着用割り出し部17の円弧状の湾曲形状をなす第1の側壁18aの半径r1より小さくなるようにしている。また、第2の回動防止部10の上面部10bは平面状に形成されており、第2の回動防止部10の基部(着座面4と接する部分)から上面部10bの間は緩やかな上り傾斜となる傾斜面を有するように形成することが望ましい。
【0095】
図10は、切削加工を行うために円形インサート8を着座面4の正しい位置に割り出して装着したときに、円形インサート8の装着用割り出し部17と第2の回動防止部10との係合関係を模式的に示した図である。なお、図10において、装着用割り出し部17の段差側壁部18は点線で示している。
【0096】
図10に示すように、円形インサート8を着座面4の正確な位置に割り出して装着したとき、すなわち、装着用割り出し部17に複数形成している湾曲形状をなす第1の側壁18aに隣接する窪み部17a内に第2の回動防止部10が挿入されたときには、円形インサート8が備えている外周回動防止面16の一つが第1の回動防止部7の拘束面7aに当接可能な状態になっている。さらに、この状態においては、第2の回動防止部10の先端部10aと、円形インサート8の装着用割り出し部17の第1の側壁18aの最突出端部18cとの間には、CL1の隙間(クリアランス)が生じるようにしている。また、円弧状をなす第1の側壁18aの半径r1は、第2の回動防止部10の円弧状をなす先端部10aの半径r2より大きくしているので、湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の回動防止部10の先端部10aの周辺部にもクリアランス(CL1)と同程度あるいはこれより若干大きな隙間が生じるようにしている。
【0097】
本発明においては、円形インサート8を着座面4の正しい位置に割り出して装着したときに、円形インサート8の湾曲形状をなす第1の側壁18aと着座面4の第2の回動防止部10との間には上記したクリアランス(隙間)が生じるようにしているので、確実に円形インサート8を着座面4の正しい位置に装着して切れ刃14の割り出しを行うことが可能になる。また、このクリアランスにより、湾曲形状をなす第1の側壁18aの円弧形状に若干の公差範囲内の寸法差があっても、確実に円形インサート8を着座面4の正しい位置に装着して切れ刃14の割り出しを行うことができるようになる。
【0098】
また、前記したL3、すなわち、ねじ挿通孔15の周面から湾曲形状をなす第1の側壁18aの最突出端部18cまでの距離をL3とし、L4、すなわち、ねじ挿通孔15の周面からから湾曲形状をなす第2の側壁18bの最凹み端部18dまでの距離をL4とした場合に、当然に「L3>L4」にするとともに、L3>L5(第2の回動防止部10の長さ)とし、かつ、L4<L5とすることにより、円形インサート8が着座面4に正しく割り出されていない場合には、第2の回動防止部10は、例えば、湾曲形状をなす第2の側壁18bに隣接する窪み部内に挿入することは不可能になり、その結果、着座面4と円形インサート8の底面12との間には隙間が生じ、止めねじ9による正常な締付けもできなくなる。これにより、着座面4への円形インサート8の装着作業時に発生する前記した「うっかりミス」の発生を防止することが可能になる。
【0099】
図11は、図9に示すインサート取付座3において、B−B線における断面図を示している。図11に示すように、側壁6は、平面をなす着座面4の垂直方向に対して傾斜角度β1をもって着座面4から遠ざかる方向に傾斜するように立設され、その立設高さはT1とされている。この高さT1は、着座面4に装着する円形インサート8の厚さh1より若干小さくする。側壁6の着座面4側の面は、前記したように平面視で円弧形状をなす円弧状壁面6aとされている。また、他の側壁5も立設高さT1を有するとともに、その傾斜角度は側壁6と同様にβ1を有し、さらに着座面4側の面は円弧形状をなす円弧状壁面5aとされている。
【0100】
上記した側壁5、6の傾斜角度β1と、着座面4に装着する円形インサート8の外周側面13の傾斜角度θ1(図4参照)との関係も、着座面4に円形インサート8を正確に位置決めして装着するために重要になる。傾斜角度β1と傾斜角度θ1は、下記の式(1)を満足するように設定することが望ましい。
0≦θ1−β1≦1.0 ・・・・・・・・・・・・・・・ 式(1)
【0101】
傾斜角度β1とθ1を、上記の式(1)を満足するように設定することが望ましい理由は、次の通りである。
円形インサート8の外周側面13の傾斜角度θ1と側壁5、6の傾斜角度β1との差が「0°」か「1°」以下と、両者の傾斜角度を極めて近い値に設定することにより、着座面4に円形インサート8を装着したときに、側壁5、6の円弧状壁面5a、6aと円形インサート8の外周側面13とが当接する長さ及び面積を大きくすることが可能になる。これにより、円弧状壁面5a、6aは、円形インサート8を着座面3に精度高く位置決めし、かつ、安定した状態で装着することが可能になるからである。さらに、これにより、切削加工中において、円形インサート8の位置ズレや回動を防止することも可能になるからである。なお、傾斜角度θ1及びβ1は、15°程度に設定すればよい。
【0102】
なお、上記式(1)を満足する条件で傾斜角度β1値を傾斜角度θ1値より小さな値に設定することにより、着座面4の後端に設けた側壁5、6の円弧状壁面5a、6aは、円形インサート8の外周側面13の切れ刃14の稜線に近い上部で当接することになり、円形インサート8の位置ズレや回動を防止することがさらに有効になる。しかし、β1値がθ1値より大きな値となると、着座面4に設けた側壁5、6の円弧状壁面5a、6aは、円形インサート8の外周側面13の下部で当接することになり、円形インサート8の位置ズレが発生する可能性が生じるので、上記したように「傾斜角度β1値<傾斜角度θ1」とすることが望ましい。
【0103】
図12は、図10に示すC−C線(直線S2)における断面図である。なお、図12に示すβ2は、第1の回動防止部7の拘束面7aが着座面4に直交する線(又は面)に対して傾斜する傾斜角度を示している。
図12に示す状態においては、着座面4に形成した第2の回動防止部10が装着用割り出し部17内に挿入され、円形インサート8の底面12と着座面4とは密着した状態になっている。また、円形インサート8の外周側面13に形成した外周回動防止面16と第1の回動防止部7の拘束面7aとの間には、所定の範囲値内の間隔(クリアランス)CL2が生じるように、第1の回動防止部7の拘束部7aの位置を設定している。着座面4に円形インサート8を装着したとき、この所定の値以内のクリアランス(CL2)を生じさせる理由は、次の通りである。
【0104】
図13は、図10に示すD−D線における断面図であって、円形インサート8をインサート取付座3の着座面4に装着して、切れ刃14の割り出しを行ったときの状態(止めねじ9の締付け前の状態)を示している。図13に示す状態において、止めねじ9により円形インサート8を締付けると、円形インサート8は、第1の回動防止部7方向に若干の距離(0.1〜0.2mm程度)移動し、円形インサート8の外周側面13は、円弧形状をなす側壁5、6の円弧状壁面5a、6aに密着して、円形インサート8の外周側面13を強固に拘束することになる。
【0105】
着座面4に装着する円形インサート8は、前記したように、円形インサートごとに微小な寸法差が生じている。例えば、内接円の直径を12.000mmとした円形インサートにおいて、許容できる公差を「±0.050」(12.000±0.050)と設定し、第1の回動防止部7の拘束面7aの位置を、この公差の中央値(12.000mm)を基準に形成した場合に、CL2値が0.100mmとなるように設計している。このとき、円形インサートの外周側面の径の寸法公差も、内接円の直径公差と同じ「±0.050」であると考えられる。
この場合の円形インサートは、例えば、装着時の止めねじが右ねじである場合の締め付けによって角度が約+3.4°程度(符号の+は時計回転方向を示す)、締め付け方向への回動が発生する可能性があるが、円形インサートを装着したときの取り付け(装着)精度への影響は小さい。
【0106】
従って、インサート取付座3に第1の回動防止部7の拘束面7aを設ける位置は、装着する円形インサート8の公差を考慮して、前記したクリアランス(CL2)の値が公差の「(上限値)−(下限値)」の値以内になる位置とすればよい。例えば、上記した内接円が「12.000±0.050」に設定されている場合、クリアランス(CL2)の値を最大で0.130mmになるように拘束面7aを設けておくことで、締め付け方向への円形インサートの回動を最大4度以下に抑えることができる。
これに対して、例えばクリアランス(CL2)の値が0.150mmになると、締め付け方向への円形インサートの回動は5度程度になってしまい、この状態で円形インサートを着座面4に装着して切削加工を行うと、円形インサートの回動により切削加工の精度が得られなくなる。従って、第1の回動防止部7の拘束面7aを設ける位置は、クリアランス(CL2)の値が公差の「(上限値)−(下限値)」の値以内になる位置とすればよい。
【0107】
上記した円形インサートの内接円の直径とクリアランス(CL2)の値を一例として説明すると次のようになる。
内接円が公差の下限値である11.950mmの円形インサート8が着座面4に装着されたときにはクリアランス(CL2)が0.091mm、内接円が公差の中央値である12.000mmの円形インサート8が装着されたときにはクリアランス(CL2)が0.100mm、内接円が公差の上限値である12.050mmの円形インサート8が装着されたときにはクリアランス(CL2)が0.123mmほど生じることになる。
【0108】
なお、円形インサート8を着座面4に装着し、加工を行う前から上記した例えば0.123mm程度のクリアランス(CL2)が生じていても、本発明においては、円形インサート8は、止めねじ9と、前記した側壁5、6の円弧状壁面5a、6aにより拘束されるので、着座面4に安定した状態で、かつ高い位置精度を持って装着される。これにより、切削加工中において円形インサート8の回動を防止することができるようになる。さらに、前記したように、第2の回動防止部10により、円形インサート8の回動を防止することができるので、切削加工中において円形インサート8の回動をより確実に防止することができるようになる。
【0109】
(円形インサートの形状上の特徴)
続いて、円形インサート8(8a)について、外周側面13に形成している外周回動防止面16の配置位置等の形状上の特徴について説明する。この説明においては、円形インサートの第1の実施例である円形インサート8を例にして説明するが、第2の実施例である円形インサート8aについても同様である。
【0110】
円形インサート8の外周側面13に形成されている外周回動防止面16は、図4又は図6等に示すように、例えば、外周側面13に対して窪んだ平面形状になっており、この形状は、超硬合金粉末による円形インサート8の成形時に成形することができる。
図7においては、円形インサート8の外周側面13の周方向に、幅が所定の長さL1となる外周側面13の部分を介して8個の外周回動防止面16が等間隔で形成されている例を示している。このように、円形インサート8の外周側面13の周方向に、複数の外周回動防止面16を設ける場合には、隣り合う外周回動防止面16が互いに交わることなく、かつ長さL1の外周側面13を介して、等間隔で回動防止面16が配置されるように形成することが望ましい。
【0111】
また、円形インサート8の外周側面13に形成する外周回動防止面16の位置は、図4に示すように、外周回動防止面16の下端部16aは円形インサート8の底面12から高さh3の距離をおいた位置に、さらに、外周回動防止面16の上端部16bは円形インサート8の上面11から高さh4の距離をおいた下方の配置されるようにしている。すなわち、全ての外周回動防止面16は、その下端部16aは円形インサート8の底面12まで達していなく、同様に、全ての外周回動防止面16の上端部16bも円形インサート8の上面11、すなわち、切れ刃14に達しないように、外周側面13に形成している。これにより、円形インサート8の上面11と底面12の形状は円形の形状が確保されるのでその強度の低下はなく、さらに、外周側面13の上面11と底面12の近傍における強度も確保されることになる。
【0112】
ここで、図4に示すように、円形インサート8についてその厚さをh1(mm)、底面12から外周回動防止面16の上端部16bまでの高さをh2(mm)、底面12から外周回動防止面16の下端部16aまでの高さをh3(mm)としたときに、本発明の刃先交換式切削工具に装着する円形インサート8は上記h1とh2については、次の式(2)を満足するように、外周側面13に外周回動防止面16を形成することが望ましい。
(1/2)h1≦h2≦(2/3)h1・・・・・・・・式(2)
【0113】
上記した式(2)において、高さh2を「h2≦(2/3)h1」を満たすように規定することにより、円形インサート8の上面11から外周回動防止面16の上端部16bに至るまでの高さh4を(1/3)h1以上確保できるので、切れ刃14の刃先強度を十分に維持することができる。
また、高さh2を「(1/2)h1≦h2」を満たすように規定することにより、外周回動防止面16の高さ、すなわち、円形インサート8の厚さh1方向の長さを十分に確保できるので、工具本体2に設けた第1の回動防止部7の拘束面7aを、円形インサート8の外周回動防止面16に当接させる長さを十分確保して、切削加工中における円形インサート8の回動防止効果を得ることができるようになる。
【0114】
さらに、円形インサート8において、底面12から外周回動防止面16の下端部16aまでの高さh3は、次の式(3)を満足するように、外周回動防止面16の下端部16aの位置を外周側面13に形成することが望ましい。
(1/10)h1≦h3≦(1/3)h1・・・・・・・式(3)
【0115】
上記した式(3)において、高さh3を「(1/10)h1≦h3」を満足するように規定することにより、h3値は、円形インサート8の底面12から(1/10)h1以上の高さを確保することができるので、円形インサート4をインサート取付座3の着座面4に取付ける固定面となる円形をなす底面12、及び底面12近傍の外周側面13の強度を十分確保することができる。
さらに、底面12を着座面3に着座させたときにその接触面積(固定面積)を十分に確保することができるので、円形インサート8の回動防止に有効になる。また、高さh3を「h3≦(1/3)h1」を満たすように規定することにより、底面12から外周回動防止面16の下端部16aまでの高さを制限し、外周回動防止面16の高さ、すなわち、円形インサート8の厚さh1方向の長さの減少を抑制して、前記した第1の回動防止部7の拘束面7aを円形インサート8の外周回動防止面16に当接させる長さを十分確保することができるようになる。
【0116】
また、本発明の刃先交換式切削工具において、図4に示すように、外周側面13の傾斜角度をθ1、すなわち、円形インサート8の上面11と垂直な線分と外周側面13とがなす角度をθ1とし、外周回動防止面16の傾斜角度をθ2、すなわち、円形インサート8の上面11と垂直な線分と外周回動防止面16とがなす角度をθ2としたときに、h3値を(1/10)h1≦h3として、底面12から回転防止面16の下端部16aまでの厚さを十分に確保するためには、0<θ2<θ1とすることが好ましい。
【0117】
このように、本発明の刃先交換式切削工具に用いる円形インサート8は、前記したように、円形インサート8の外周側面13に設けた外周回転防止面16を、その下端部16aの位置は底面12から(1/10)h1以上とし、上端部16bの位置は底面12から(2/3)h1以下の範囲内になるように設けるとともに、さらに、外周回動防止面16の下端部16bの位置は底面12から(1/3)h1以下とし、上端部16bの位置は底面12から(2/3)h1以下の範囲内になるように設けている。
【0118】
また、円形インサート8の外周側面13に設けた外周回動防止面16が外周側面13の円周方向になす幅L2(図7参照)の値は、インサート取付座3に円形インサート8を装着して切削加工を行うときに、工具本体2に設けた第1の回動防止部7の拘束面7aを当接させて、円形インサート8の有効な回動防止効果が得られるように、円形インサート8の大きさ(内接円の寸法)、その厚さh1、外周回動防止面16を設ける数(回動防止面数)に応じて、回動防止部8の強度等を考慮して、適切に設定するようにする。
【0119】
なお、円形インサート8(8a)の外周側面13に設ける外周回動防止面16の数は、円形インサート8の内接円の大きさに応じて4〜8個程度設けることが望ましい。また、この外周回動防止面16の数と同じ数の前記した湾曲形状をなす第1の側壁18aと第2の側壁18bを設けるようにする。
このように、複数個の外周回動防止面16を設けることにより、例えば、切削加工の累計時間が所定の時間値に達すると、止めねじ9を緩めてこの円形インサート8を着座面4に対して所定の角度ほど回転させて、再度、止めねじ9により円形インサート8を着座面4に再装着し、未使用の切れ刃14の部分を次の切削加工に使用することができる。このとき、工具本体2の第1の回動防止部7の拘束面7aは、切削加工中に今回使用する切れ刃14部分に対応する外周回動防止面16に当接可能になり、切削加工中において円形インサート8の回動を防止する効果を発揮することになる。
【0120】
[第2の実施形態]
続いて、本発明の刃先交換式切削工具の第2の実施形態を図14を参照して説明する。前記した第1の実施形態に係る先交換式切削工具は、図7に示す円形インサートの第1の実施例となる円形インサート8をインサート取付座3に、その切れ刃の部分を正確な割り出し位置に装着できるような構成にしたものである。この第1の実施例となる円形インサート8は、湾曲形状をなす第1の側壁18aと外周回動防止面16とは互いに対向する(相対する)位置になるように形成されている。そして、この円形インサート8をインサート取付座3に装着するときには、円形インサート8に形成されている外周側面13の一つを第1の回動防止部7の拘束面a方向に向けて、着座面4に止めねじ9により固定する必要があった。このため、第2の回動防止部10は、図9(図10)に示すように、拘束面7aが着座面4を向く面の両端部における点R、点Qを結ぶ線分RQの垂直2等分線となり、かつ、ねじ挿通孔15の中心軸O1を通る直線S2に沿って設けていた。
【0121】
これに対して、図8(a)に示す円形インサートの第2の実施例となる円形インサート8aをインサート取付座3に、その切れ刃の部分が正確な割り出し位置に装着できるようにするためには、着座面4に形成する第2の回動防止部10は、図14に示すように、着座面4の平面視において、上記直線S2に対して、時計回転方向R1又は反時計回転方向R2に角度αほど回転させた位置に形成する必要がある。
【0122】
この理由は、図8(a)に示しているように、円形インサート8aは第2の側壁18bと外周回動防止面16とは互いに対向する位置になるように形成された構成とされているので、この円形インサート8aをインサート取付座3に装着するときに、上記したようにこの円形インサート8aに形成されている外周側面13の一つを第1の回動防止部7の拘束面a方向に向けるが、この状態においては、円形インサート8aの底面の装着用割り出し部17に形成されている湾曲形状をなす第1の側壁18aは、平面視において、図14に示すように直線S2上には存在せず、直線S2から時計回転方向R1又は反時計回転方向R2に角度αほど回転させた位置に存在するようになるからである。このため、着座面4上に第2の回動防止部10を設ける位置は、図9に示す位置とは異なるようにする必要がある。
【0123】
図14に示す例は、着座面4の平面視において、第2の回動防止部10を直線S2と交差し、反時計回転方向R2に角度αをなす直線D2上に沿って形成している。そして、円形インサート8aをインサート取付座3に装着するときには、この第2の回動防止部10が、円形インサート8aの湾曲形状をなす第1の側壁18aに隣接する窪み部17aに挿入され、第2の回動防止部10と窪み部17aとの間にクリアランスが生じている場合を示している。なお、直線D2はねじ孔4aの中心軸O2を通る直線とすることが望ましい。
また、この第2の実施形態においては、図14に示すように、着座面4の平面視において、第2の回動防止部10を直線S2と交差し、時計回転方向R1に角度αをなす直線D1上に沿って形成する。そして、円形インサート8aをインサート取付座3に装着するときには、この直線D1に沿って位置する円形インサート8aの湾曲形状をなす第1の側壁18aに隣接する窪み部17aに、第2の回動防止部10を挿入するようにしてもよい。なお、直線D1もねじ孔4aの中心軸O2を通る直線とすることが望ましい。
【0124】
上記した第2の実施形態において、直線S2と直線D1又は直線D2とが交差する角度(交差角度)αは、円形インサート8aに設ける湾曲形状をなす第1の側壁18a(外周回動防止面16)の数、例えば、8個、6個、5個、4個に基づいて設定すればよい。
円形インサート8aに設ける湾曲形状をなす第1の側壁18aの数を「n」とした場合、交差角度αは、下記の式を満たす値とすることができる。
α=360°/(2×n)、 但し、nは4≦n≦8の整数
上記式から、例えば、nが4個の場合は交差角度αを45°に、nが8個の場合は交差角度αを22.5°に設定する。
【0125】
円形インサートを装着する刃先交換式切削工具においては、切削加工の用途に応じて円形インサートを工具本体に対して軸方向すくい角が「正(ポジ)」、又は「負(ネガ)」になるように装着するための工具本体が作製される。そして、工具本体のインサート取付座に、軸方向すくい角が「正(ポジ)」になるように円形インサートを装着した場合、切削加工中に生じる切削抵抗は、円形インサートの上面11に対する平面視でこの円形インサートを反時計回転方向に回動させようとする力を発生させる。
これに対して、インサート取付座に軸方向すくい角が「負(ネガ)」になるように円形インサートを装着した場合、切削加工中に生じる切削抵抗は同じく平面視でこの円形インサートを時計回転方向に回動させようとする力を発生させる。
【0126】
一方、前記したように超硬合金製の円形インサート8(8a)は、この円形インサートの成形体の焼成時に発生する収縮量にバラツキが発生する。従って、円形インサート8等をインサート取付座3に装着したときには、インサート取付座3に設けている第1の回動防止部7と円形インサート8の外周回動防止面16とがなすクリアランス(CL2)、インサート装着時に着座面4に形成した第2の回動防止部10と円形インサート8の底面12に設けた装着用割り出し部18の円弧状の側壁18aとがなすクリアランス(CL1)も考慮して、着座面4に形成する第2の回動防止部10の配置位置も適切にした方が、前記した円形インサートの回動防止機能と、円形インサートに形成されている切れ刃14を所定の正確な位置に割り出して円形インサートを装着するための割り出しの機能を、より確実に実現することが可能になる。
【0127】
[第3の実施形態]
続いて、本発明の刃先交換式切削工具の第3の実施形態を、図15に基づいて説明する。この第3の実施形態は、図10に示す第1の実施形態に対して、着座面4に形成する第2の回動防止部10を、直線S2と交差し、着座面4の平面視において、反時計回転方向(R2)に直線S2と角度α1をなす直線S3に沿って形成した例を示している。また、前記した第2の回動防止部10の最遠部となる点Pを直線S3上に設けている。
なお、図15に示す直線S2は、第1の実施形態で説明した図9(図10)に示す線分RQの垂直2等分線となる直線S2を示し、点線で示す符号「18」は円形インサート8の底面12に形成している装着用割り出し部17における段差側壁部18であって、円形インサート8の上面11は示していない。また、直線S3は、ねじ孔4aの中心軸O2を通る直線とすることが望ましい。
【0128】
そして、図15に示す例は、インサート取付座3に円形インサート8をその切れ刃14の位置を割り出して装着した初期状態においては、円形インサート8の外周側面14は、インサート取付座3の側面5、6の円弧状壁面5a、6bに当接して拘束された状態となり、外周回動防止面16の一つは、第1の回動防止部7の拘束面7aに近接して当接可能な状態になっている。さらに、着座面4に形成された第2の回動防止部10は、円形インサート8の底面12に形成されている窪み部17aのいずれかに挿入されている。このとき、第2の回動防止部10は、直線S2に対してねじ孔4aの中心軸O2から角度α1ほど反時計回転方向(R1)に回転させた直線S3上に沿って形成されているので、第2の回動防止部10のR1方向側の端部が、湾曲形状をなす第1の側壁18aとなすクリアランスは、図10に示すクリアランスより小さくなっている。
これにより、第3の実施形態では、作業者が円形インサー8の再装着を行うときに、第2の回動防止部10を円形インサート8の窪み部17aに挿入する操作について、上記したクリアランスが小さいことにより、作業者に前記した装着時の「うっかりミス」が発生しないように注意を促すという効果が生じる。
【0129】
[第4の実施形態]
続いて、本発明の刃先交換式切削工具の第4の実施形態を、図16に基づいて説明する。この第4の実施形態は、前記した図15に示す第3の実施形態に対して、着座面4に形成する第2の回動防止部10を、直線S2と交差し、着座面4の平面視において、時計回転方向(R1)に直線S2と角度α2をなす直線S4に沿って形成した例を示している。また、前記した第2の回動防止部10の最遠部となる点Pを直線S4上に設けている。
なお、図16に示す直線S2は、第1の実施形態で説明した図9(図10)に示す線分RQの垂直2等分線となる直線S2を示し、点線で示す符号「18」は円形インサート8の底面12に形成している装着用割り出し部17における段差側壁部18であって、円形インサート8の上面11は示していない。また、直線S3は、ねじ孔4aの中心軸O2を通る直線とすることが望ましい。
【0130】
図16に示す第4の実施形態においては、インサート取付座3に円形インサート8の切れ刃14を割り出して装着した初期状態においては、円形インサート8の外周側面14は、インサート取付座3の側面5、6の円弧状壁面5a、6aに当接した状態で、着座面4の第2の回動防止部10は、円形インサート8の底面12に形成されている窪み部17aのいずれかに挿入されている。このとき、第2の回動防止部10は、直線S2と交差し、かつ、ねじ孔4aの中心軸O2を通る直線上であって、直線S2と角度α2ほど時計回転方向(R1)に回転させた直線S4上に沿って形成している。
【0131】
この図16に示す第4の実施形態においては、第2の回動防止部10は直線S2に対してねじ孔4aの中心軸O2から角度α2ほど時計回転方向(R1)に回転させた直線S4上に沿って形成されているので、第2の回動防止部10の(R1)方向側の端部が湾曲形状をなす第1の側壁18aとなすクリアランスは、図10に示すクリアランスより小さくなる。
これにより、作業者が円形インサー8の再装着を行うときに、第2の回動防止部10を円形インサート8の窪み部17aに挿入する操作について、前記した第3の実施形態と同様に、作業者に「うっかりミス」が発生しないように注意を促すという効果が生じる。
【0132】
上記した第3、第4の実施形態において、角度α1及び角度α2の値は、2°〜10°に設定することが望ましい。この理由は、下記の通りである。
【0133】
第1の理由は、角度α1、α2を10°以下とすることによって、図10に示す第2の回動防止部10と湾曲形状をなす第1の側壁18aとがなすクリアランス(CL1)値等を必要以上に大きく設定することを回避できるからである。クリアランス(CL1)等の値を必要以上に大きく設定すると、第2の回動防止部10のサイズが小さくなることによって、第2の回動防止部10の強度確保が困難となるという不具合が生じてしまう。一方、クリアランス(CL1)値を適度に小さく設定することによって、第2の回動防止部10のサイズを大きく設計するできることから、強度確保に有利になる。
【0134】
第2の理由は、2°以上とすることによって、円形インサート8(8a)の切れ刃14の割り出しを行うときに、第2の回動防止部10と湾曲形状をなす第1の側壁18aとがなすクリアランスの寸法的な余裕を適度に確保する(クリアランスを極力小さくする)ことができる。これにより、作業者が円形インサー8の再装着を行うための割り出し操作時に、第2の回動防止部10を円形インサート8の窪み部17aに挿入する操作について、「うっかりミス」が発生しないようにより注意を促すという効果が生じる。
【0135】
[第5及び第6の実施形態]
続いて、本発明の第5及び第6の実施形態を、図17を参照して説明する。これら第5、及び第6の実施形態は、図14に示す第2の実施形態についてさらに改良を施した刃先交換式切削工具である。
【0136】
第5の実施形態は、着座面4に形成する第2の回動防止部10を、着座面4の平面視において、図17に示す直線D2(図14に示す直線D2)と交差し、反時計回転方向(R2)に直線D2と角度α1をなす直線S6に沿って形成した例を示している。また、前記した第2の回動防止部10の最遠部となる点Pを直線S6上に設けている。
なお、図17に示す直線D1及び直線D2は、図14に示す直線D1及び直線D2と同じであって、直線S2と交差し、時計回転方向(R1)または反時計回転方向(R2)と角度αをなす直線である。また、角度αは、前記したように円形インサート8aに設ける湾曲形状をなす第1の側壁18aの数を「n」とした場合、「α=360°/(2×n)」により設定される値である。
【0137】
そして、第5の実施形態において、インサート取付座3に円形インサート8aの切れ刃14を割り出して装着した初期状態においては、円形インサート8aの外周側面14は、インサート取付座3の側面5、6の円弧状壁面5a、6bに当接して拘束された状態となり、外周回動防止面16の一つは、第1の回動防止部7の拘束面7aに近接して当接可能な状態になっている。さらに、着座面4に形成された第2の回動防止部10は、円形インサート8aの底面12に形成されている窪み部17aのいずれかに挿入されている。このとき、第2の回動防止部10は、直線D2に対してねじ孔4aの中心軸O2から角度α1ほど反時計回転方向(R1)に回転させた直線S6上に沿って形成されているので、第2の回動防止部10の反時計回転方向(R1)側が、湾曲形状をなす第1の側壁18aとなすクリアランスは、図14に示すクリアランスより小さくなっている。
【0138】
これにより、第5の実施形態では、作業者が円形インサー8aの再装着を行うときに、第2の回動防止部10を円形インサート8aの窪み部17aに挿入する操作について、上記した第2の回動防止部10と湾曲形状をなす第1の側壁18aとのクリアランスが小さくなることにより、作業者に対して前記した装着時の「うっかりミス」が発生しないように注意を促すという効果が生じる。
【0139】
なお、上記第5の実施形態においては、着座面4に形成する第2の回動防止部10を、着座面4の平面視において、図17に示す直線D2と交差し、時計回転方向(R1)に直線D2と角度α1をなす直線S5に沿って形成した実施例としてもよい。また、前記した第2の回動防止部10の最遠部となる点Pを直線S5上に設ける。この実施例においても、上記した第2の回動防止部10と、湾曲形状をなす第1の側壁18aの時計回転方向(R1)側の端部とのクリアランスが小さくなることにより、作業者に対して装着時の「うっかりミス」が発生しないように注意を促すことができるという効果が生じる。
なお、上記した角度α1は、図15に示す角度α1と同様に、2°〜10°の範囲に設定する。
【0140】
第6の実施形態は、図17に示すように、着座面4に形成する第2の回動防止部10を、着座面4の平面視において、直線D1(図14に示す直線D1)と交差し、時計回転方向(R1)に直線D1と角度α2をなす直線S7に沿って形成するものである。なお、図17には直線S7に沿って形成される第2の回動防止部10は示していない。また、この実施形態においては、第2の回動防止部10を直線D1と交差し、反時計回転方向(R2)に直線D1と角度α2をなす直線S8に沿って形成してもよい。
この第6の実施形態においても、上記した第2の回動防止部10と湾曲形状をなす第1の側壁18aとのクリアランスが小さくなることにより、作業者に対して装着時の「うっかりミス」が発生しないように注意を促すことができるという効果が生じる。
なお、上記した角度α2は、図16に示す角度α2と同様に、2°〜10°の範囲に設定する。
【0141】
[第7の実施形態]
続いて、本発明の第7の実施形態を、図18〜図20に基づいて説明する。第7の実施形態は、インサート取付座3に円形インサート8を装着したときに、円形インサート8の外周側面13を拘束するためにインサート取付座3に立設して設けた側壁5、6の着座面4を向く面に形成している円弧状壁面5a、6bの構成について改善を加えたものである。
【0142】
図18は、本発明の第7の実施形態に係る構成を示す斜視図であって、この第7の実施形態は、図3に示す第1の実施形態が備えているインサート取付座3と同様に、側壁5と側壁6のそれぞれを、第1の回動防止部7の一方の端部側に側壁5を、他方の端部側に側壁6を設けている。そして、側壁5は二つの円弧形状をなす第1側壁面5a1と第2側壁面5a2で構成し、側壁6も二つの円弧形状をなす第3側壁面6a1と第4側壁面6a2から構成し、第1の回動防止部7に近い側壁を第1側壁面5a1及び第3側壁面6a1としている。
【0143】
また、これら第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2についても、前記した式(1)で規定される条件を満足するようにする。すなわち、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2は、着座面4と直交する線分に対して工具軸O方向に傾斜角度β1をもって傾斜して立設され、着座面4に装着する円形インサート8の外周側面13の傾斜角度をθ1としたときに、(θ1−β1)は上記の式(1)を満足させるようにする。
【0144】
なお、図18に示すインサート取付座3は、その着座面3に形成した第2の回動防止部10を、図9に示す直線S2に対して傾斜する方向に形成した例、すなわち、円形インサートについて前記した第2の実施例となる円形インサート8aを装着する着座面3を示しているが、直座面3は第1の実施例となる円形インサート8を装着する構成としてもよい。以下の説明では、インサート取付座3に円形インサート8を装着する場合を例にして説明する。
【0145】
図19(a)は、この第7の実施形態について、インサート取付座とこのインサート取付座に円形インサート8を装着したときの状態を模式的に示す図、図19(b)は図19(a)の部分拡大図を示している。
【0146】
図18、図19に示すように、側壁5は、円弧形状をなす第1側壁面5a1と、同じく円弧形状をなす第2側壁面5a2とが着座面4側において○印(図19(a)参照)で示す段差部5bを介して一体化された構成としている。同様に、側壁6は、円弧形状をなす第3側壁面6a1と、同じく円弧形状をなす第4側壁面6a2とが着座面4側において○印(図19(a)参照)で示す段差部6bを介して一体化された構成としている。また、図19(a)には、円弧形状をなす第1側壁面5a1の直径はd1、円弧形状をなす第2側壁面5a2の直径はd2、円弧形状をなす第3側壁面6a1の直径はd1、円弧形状をなす第4側壁面6a4の直径はd2として示している。なお、段差部5bは、上面視で側壁5の中間位置当たり、すなわち、第1側壁面5a1と第2側壁面5a2の中間、すなわち両者の中間位置に設けるようにする。段差部6bの位置も、第3側壁面6a1と第4側壁面6a2の中間位置に設けるようにする。
【0147】
このように、側壁5と側壁6の着座面3を向く面は、平面視でそれぞれ2つの直径が異なる円弧形状をなす側壁5a1と5a2、及び6a1と6a2が段差部5b、6bを介して一体化された円弧形状をなす内壁面を備えた構成にしている。
【0148】
なお、図19(b)においては、段差部5b及び6bの形状は、円形インサート8の中心方向に直線的に形成した例を示しているが、緩やかなR形状からなる段差部としてもよい。また、段差部5b及び6bの形状を段差で構成するのではなく、凹形状、例えば、微小なU字状、円弧状の形状をなす溝としてもよいが、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2が段差部5b、6bを介して独立して構成されるようにする。
【0149】
この第7の実施形態においては、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2の円弧形状の前記直径d1、d2は、下記(特徴1)及び(特徴2)に記載のように設定していることに特徴がある。
【0150】
(特徴1)
第1側壁面51aの円弧形状の直径と、第3側壁面6a1の円弧形状の直径は同一となる直径d1に設定し、この直径d1は円形インサート8の直径d0、すなわち、上面10の直径(内接円の直径であって公差の中央値)と同一になるように設定する。
【0151】
(特徴2)
第2側壁面5a2の円弧形状の直径と、第4側壁面6a2の円弧形状の直径は同一となる直径d2に設定するとともに、この直径d2は、直径d1(d0)より大きな値になるように設定している。なお、(d2−d1)値は装着する円形インサートの内接円の直径の((公差の上限値)−(公差の中央値))値と同一、又はこの値に近い値にする。
【0152】
上記(特徴1)、(特徴2)に記載したように、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2の円弧形状の直径d1、d2を上記のように適切な値に設定することにより、インサート取付座3に装着する円形インサート8に必然的に生じる内接円の直径や外周側面13の周方向の直径等に微小な公差範囲内の寸法差(寸法のバラツキ)があっても、各インサート8を工具本体2のインサート取付座3に、安定した状態で、かつ高精度に取付けることが可能になる。
【0153】
この第7の実施形態において、円形インサート8を側壁5と側壁6によりインサート取付座3に安定、かつ高精度に取付けことができる作用を、図20に基づいて説明する。なお、この説明においては、円形インサート8の内接円(上面11)の直径の仕様を12.000mmとし、この内接円の寸法の公差は「±0.050mm」に設定した場合を例にして説明する。
【0154】
(1)例えば、内接円の公差が下限値である円形インサート8(内接円の直径は11.950mmとなる)を着座面4に装着したときには、円弧形状をなす第2側壁面5a2と第4側壁面6a2の直径d2はこの装着した円形インサート8の直径より大きいので、この円形インサート8の外周側面13は、図20(a)に示すように、第1側壁面5a1と第3側壁面6a1のP1点近傍において当接した状態で、精度良く着座面4に位置決めされ、この状態で円形インサート8は止めねじ9により着座面4上に固定されることになる。このP1点での当接を、「内当たり状態」と呼ぶことにする。この内当たり状態では、円形インサート8が着座面4に位置決めされた際に微小な位置ズレが懸念されるものの、円形インサート8の止めねじ9による締め付けの固定時に、円形インサート8には第1の回動防止部7方向への押圧力が作用するが、円形インサート8の外周側面13が第1側壁面5a1と第3側壁面6a1を変形させることはない。
【0155】
(2)例えば、内接円の公差が中央値である円形インサート8(内接円の直径は12.000mm)を着座面4に装着したときには、円弧形状をなす第2側壁面5a2と第4側壁面6aの直径d2はこの装着した円形インサート8の直径より大きいので、この円形インサート8の外周側面13は、図20(b)に示すように、この円形インサート8の内接円と等しい直径を有する第1側壁面5a1と第3側壁面6a1のそれぞれのP2の範囲において当接した状態で、精度良く着座面4に位置決めされ、この状態で円形インサート8は止めねじ9により固定されることになる。この状態が最も好ましい装着状態である。
【0156】
(3)例えば、内接円の公差が上限値である円形インサート8(内接円の直径は12.050mm)を着座面4に装着したときには、円弧形状をなす第1側壁面5a1と第3側壁面6a1の直径d1はこの装着した円形インサート8の直径より大きいので、この円形インサート8の外周側面13は、図20(c)に示すように、それぞれP3点、P4点の2点において当接した状態で、精度良く着座面4に位置決めされ、この状態で円形インサート8は止めねじ9により固定されることになる。
【0157】
なお、上記P3点は、第1側壁面5a1(第3側壁面6a1)と第2側壁面5a2(第4側壁面6a2)の段差部5b(6b)よりも第1側壁面5a1(第3側壁面6a1)側にあり、第1側壁面5a1(第3側壁面6a1)の端部(第2側壁面5a2側又は第4側壁面6a2側)又はこの端部近傍になる。P4点は、第2側壁面5a2と第4側壁面6a2の端部又はこの端部近傍になる。このP4での当接を、「外当たり状態」と呼ぶことにする。この外当たり状態では、円形インサート8が着座面4に位置決めされた際に回動防止効果が有効に作用する。ただし、円形インサート8の止めねじ9による締め付け固定時に、円形インサート8の第1の回動防止部7方向への押圧により、第2側壁面5a2と第4側壁面6a2が僅かに変形する可能性がある。
【0158】
このように、本発明の第7の実施形態においては、第1側壁面5a1と第3側壁面6a1の直径d1を、装着する円形インサート8の内接円の仕様、すなわち、公差の中央値d0に設定し、第2側壁面5a2と第4側壁面6a2の直径d2を、装着する円形インサートの内接円の公差の中央値(d0)より大きく、かつ、公差の上限値以内であってこの上限値に近い値、例えば上記例では、公差の中央値(d0)より「0.050mm程度大きい値」に設定することにより、円形インサート8を着座面4に精度良く装着して固定することができるようになる。
【0159】
以上に説明した本発明の第1〜第7の実施形態に係る刃先交換式切削工具においては、その工具本体2の第2の回動防止部10を含む着座面4と、側壁5、6の円弧状壁面5a、6a、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2、第1の回動防止部7(拘束面7a)のうちの少なくとも一つ、望ましくはこれらの全てには、硬質皮膜が被覆されていることが好ましい。この硬質皮膜は、周期律表4a、5a、6a族金属、Al、Si、Bの元素から選択される1種以上の元素を含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物のいずれかであることが好ましい。この理由は硬質皮膜を被覆することにより、円形インサート8、あるいは8aが工具本体2に繰り返して着脱されることで生じる接触部の摩耗、摩滅を抑制することができ、工具本体2の受け面となる着座面4、側壁5、6の円弧状壁面5a、6a、回動防止部7の拘束面7a、等の精度劣化を回避し、円形インサート8を確実に精度良く取付け、かつ、切削加工中における円形インサート8の回動を防止することができるからである。
【0160】
なお、上記した本発明の第1〜第7の実施形態に係る刃先交換式切削工具において、工具本体2の材質は硬度がHRC44〜50の合金工具鋼(SKD61相当材)を使用することが望ましい。また、工具本体2への着座面4、側壁5及び6、第1の回動防止部7、第2の回動防止部10、切屑排出溝等の加工は、この合金工具鋼の素材を3軸NC加工機の制御により、小径のボールエンドミルやラジアスエンドミルなどの切削工具を用いて行うことができる。
【0161】
また、側壁5、6の円弧状壁面5a、6a、第1〜第4側壁面5a1、5a2、6a1、6a2への円弧形状の加工は、着座面4に対して縦方向(垂直方向)に切削工具、例えば、小径のボールエンドミルを移動制御して行うが、このときに、これら円弧形状の加工においては、円弧形状面に着座面4と垂直となる縦方向に微小な加工筋(微小な凹凸状の加工跡)が生じるようにするとよい。
このように側壁5、6の円弧状壁面5a、6a、又は第1側壁面5a1、第2側壁面5a2、第3側壁面6a1、第4側壁面6a2に、縦方向の微細な加工筋が残っていると、円形インサート8をインサート取付座3に装着して、円形インサート8の外周側面13をこれら円弧状壁面5a、6a等に当接させて拘束したときに、この加工筋により円形インサート8に対する拘束力が増加することになる。これにより、切削加工中において円形インサート8の回動防止への効果を一層発揮することが可能になる。
【0162】
また、円形インサートを装着した刃先交換式切削工具において、工具本体2に軸方向すくい角が「負」になるように円形インサート8を装着した場合には、切削加工時の切削加工負荷は、円形インサートに対して時計回転方向(R1)に作用する。これに対して、工具本体2に軸方向すくい角が「正」になるように円形インサート8を装着した場合には、切削加工時の切削加工負荷は、円形インサートに対して反時計回転方向(R2)に作用する。
【0163】
従って、工具本体2に、軸方向すくい角が「正」になるように円形インサートを装着したときには、止めねじ9として左ねじを用いて円形インサートを着座面4に固定すると、切削加工中に円形インサートを回動させようとする回動力の向きは反時計回転方向(R2)になる。この反時計回転方向(R2)に作用する回動力は、止めねじ9を締付ける方向に作用することになるので止めねじ9の緩みを防止することができるようになる。
一方、工具本体2に、軸方向すくい角が「負」になるように円形インサートを装着したときには、止めねじ9として右ねじを用いて円形インサートを着座面4に固定すると、切削加工中に円形インサートを回動させようとする回動力の向きは時計回転方向(R1)になる。この時計回転方向(R1)に作用する回動力は、止めねじ9を締付ける方向に作用することになるので止めねじ9の緩みを防止することができるようになる。
【0164】
このように、本発明の刃先交換式切削工具においても、工具本体2に装着する円形インサート8がなす軸方向すくい角の「正負」に応じて、止めねじ9のねじ仕様、すなわち、右ねじ、左ねじを適切に使用できる構成にすることにより、切削加工時の円形インサートの回動防止の効果をさらに得ることができるようになる。
【符号の説明】
【0165】
1: 刃先交換式切削工具
2: 工具本体
3: インサート取付座
4: 着座面、4a:ねじ孔、 4b:ねじ孔の開口端部
5: 側壁、 5a:円弧状壁面
5a1:第1側壁面、5a2:第2側壁面
6: 側壁、 6a:円弧状壁面
6a1:第3側壁面、6a2:第4側壁面
7: 第1の回動防止部(インサート回動防止部)、7a:拘束面
8: 円形インサート、 8a:円形インサート
9: 止めねじ
10: 第2の回動防止部、 10a:回動防止部の先端部
11: 上面(すくい面)
12: 底面
13: 外周側面(逃げ面)
14: 切れ刃
15: ねじ挿通孔、15a:ねじ挿通孔の開口端部
16: 外周回動防止面、 16a:下端面部、 16b:上端面部
17: 装着用割り出し部、 17a:窪み部
18: 段差側壁部(境界部)、
18a:湾曲形状をなす第1の側壁、18b:湾曲形状をなす第2の側壁、
18c:最突出端部、 18d:最凹み端部
h1: 円形インサートの厚さ(高さ)
h2: 円形インサートの回動防止面の上端から円形インサートの底面までの高さ
h3: 円形インサートの回動防止面の下端から円形インサートの底面までの高さ
h4: 円形インサートの回動防止面の上端から円形インサート上面までの高さ
L1: 円形インサートの外周面に設けた隣接する回動防止面間の幅
L2: 回動防止面の円周方向の幅
L3: ねじ挿通孔の開口端部から湾曲形状をなす第1の側壁の最突出端部までの距離
L4: ねじ挿通孔の開口端部から湾曲形状をなす第2の側壁の最凹み端部までの距離
O : 工具軸線(回転中心軸)
O1: ねじ挿通孔の中心軸
O2: ねじ孔の中心軸
P : 第2の回動防止部のねじ孔の中心軸から最も遠い距離となる最遠部
r1: 湾曲形状をなす第1の側壁18aの円弧形状の半径
r2: 第1の回動防止部の先端部の円弧形状の半径
β1: 側壁の円弧状壁面、第1側壁面から第4側壁面の傾斜角度
θ1: 円形インサートの外周面の傾斜角度
θ2: 円形インサートの回動防止面の傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体のインサート取付座に、すくい面となる上面と、前記上面と対向して形成された底面と、前記上面と前記底面をつなぐ逃げ面となる外周側面と、前記すくい面と前記逃げ面とが交差する稜線部に形成された切れ刃と、前記上面から前記底面を貫通するねじ挿通孔を備えた円形インサートを、前記インサート取付座の着座面に形成されたねじ孔にねじ部材を用いて着脱自在に装着するとともに、前記着座面に装着した前記円形インサートの前記外周側面を前記インサート取付座から立設された2つの円弧状壁面で拘束し、前記円形インサートの前記外周側面の周方向に所定の間隔をおいて形成された複数の外周回動防止面のいずれかを、前記インサート取付座から立設され所定の横幅を有する拘束面を備えた第1の回動防止部に当接させる刃先交換式切削工具において、
前記円形インサートは、前記底面に、前記底面に対して凹部とされた装着用割り出し部を備えているとともに、
前記装着用割り出し部は、前記底面の外側方向に向けて前記ねじ挿通孔の中心軸から同心円状に形成され、前記底面との境界部を、湾曲形状をなす第1の側壁と第2の側壁とを有する段差側壁部を備え、
前記インサート取付座の前記着座面は、前記円形インサートの前記装着用割り出し部内のうち、前記湾曲形状をなす第1の側壁に隣接する前記凹部の窪み部内に挿入可能な第2の回動防止部を備え、
前記円形インサートを前記着座面に装着して前記円形インサートの前記切れ刃の割り出しを行ったときに、
前記第2の回動防止部は前記円形インサートの前記窪み部内に挿入され、前記第1の回動防止部の前記拘束面は前記円形インサートの前記外周回動防止面に当接可能になることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項2】
前記円形インサートの前記段差側壁部は、前記湾曲形状をなす前記第1の側壁と前記第2の側壁の複数を順次連接した構成からなり、
前記湾曲形状をなす第1の側壁における前記ねじ挿通孔の開口端部から最遠部までの長さは、前記湾曲形状をなす第2の側壁における前記ねじ挿通孔の開口端部から最遠部までの長さより大とされ、
前記着座面が備えている前記第2の回動防止部の長さであって、前記ねじ孔の中心軸を通る方向の長さは、前記湾曲形状をなす第1の側壁における前記最遠部までの長さより小さく、かつ、前記湾曲形状をなす第2の側壁における前記最遠部までの長さより大とされていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項3】
前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2としたときに、
前記第2の回動防止部は前記直線S2に沿って形成され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第1の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第2の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項4】
前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と時計回転方向又は反時計回転方向に所定の角度α1又はα2の角度で交差する直線を直線S3と直線S4としたときに、
前記角度α1又はα2は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第1の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第2の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項5】
前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに、前記直線S2と時計回転方向又は反時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D1又は直線D2としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線D1又は前記直線D2に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたときに、α=360°/(2×n)とされ、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項6】
前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに前記直線S2と反時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D2とし、さらに、前記直線D2と交差するとともに前記直線D2と時計回転方向または反時計回転方向に角度α1をなす直線を直線S5又は直線S6としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線S5又は直線S6に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたとき、α=360°/(2×n)とされているとともに、前記角度α1は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項7】
前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに前記直線S2と時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D1とし、さらに、前記直線D1と交差するとともに前記直線D1と時計回転方向または反時計回転方向に角度α2をなす直線を直線S7又は直線S8としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線S7又は直線S8に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたとき、α=360°/(2×n)とされているとともに、前記角度α2は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項8】
請求項3または請求項4に記載の円形インサートは、
前記前記湾曲形状をなす第1の側壁の最突出端部が前記外周回動防止面の中央部と対向するように、前記湾曲形状をなす第1の側壁と前記外周回動防止面が配置されていることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項9】
請求項5から請求項7のいずれかに記載の円形インサートは、
前記前記湾曲形状をなす第2の側壁の最凹み端部が前記外周回動防止面の中央部と対向するように、前記湾曲形状をなす第2の側壁と前記外周回動防止面が配置されていることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項10】
前記円形インサートの前記段差側壁部を構成する前記湾曲形状をなす第1の側壁は、前記ねじ挿通孔の中心軸に対して外側方向に突出する半径(r1)の円弧形状をなし、
前記着座面に形成された前記第2の回動防止部の先端部は、前記ねじ孔の中心軸に対して外側方向に突出する半径(r2)の円弧形状をなし、
前記半径(r1)は前記半径(r2)より大とされていることを特徴と請求項1から請求項9のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
【請求項11】
前記円形インサートは、その厚さをh1、前記底面から前記外周回動防止面の上端までの高さをh2、前記底面から前記外周回動防止面の下端までの高さをh3としたときに、
前記h2は下記の式を満足し、
(1/2)h1≦h2≦(2/3)h1
前記h3は下記の式を満足することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
(1/10)h1≦h3≦(1/3)h1
【請求項12】
前記2つの円弧状壁面の一方は前記第1の回動防止部の一方の端部側に、前記2つの円弧状壁面の他方は前記第1の回動防止部の他方の端部側に立設されており、
前記円弧状壁面の一方は、円弧形状の直径が異なる2つの第1側壁面と第2側壁面とを一体にした壁面から構成され、
前記円弧状壁面の他方は、円弧形状の直径が異なる第3側壁面と第4側壁面とを一体にした壁面からから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項13】
前記第1の回動防止部の一方の端部側に前記第1側壁面が配置され、前記第1の回動防止部の他方の端部側に前記第3側壁面が配置され、
前記第1側壁面と前記第3側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d1に設定されているとともに、前記直径d1は前記インサート取付座に装着する円形インサートの内接円の直径d0に設定され、
前記第2側壁面と前記第4側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d2に設定されているとともに、前記直径d2は前記直径d1を超えて大きく設定されていることを特徴とする請求項12に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項14】
前記2つの円弧状壁面、または前記第1〜第4側壁面は、前記着座面と直交する線分に対して前記工具本体の工具軸線方向に傾斜角度β1をもって傾斜して立設され、
前記着座面に装着する前記円形インサートの前記外周側面の傾斜角度をθ1としたときに、(θ1−β1)は下記の式を満足することを特徴とする請求項1、請求項12、請求項13のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
0≦θ1−β1≦1.0
【請求項15】
前記2つの円弧状壁面、または前記第1〜第4側壁面は、縦方向に複数の加工筋を有していることを特徴とする請求項1、請求項12から請求項14のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
【請求項16】
前記着座面と、前記円弧状壁面と、前記第1〜第4側壁面と、前記第1の回動防止部の少なくとも一つには、周期律表4a、5a、6a族金属、Al、Si、Bの元素から選択される1種以上の元素を含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物のいずれかからなる硬質皮膜が被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項7、請求項12から請求項15のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
【請求項1】
工具本体のインサート取付座に、すくい面となる上面と、前記上面と対向して形成された底面と、前記上面と前記底面をつなぐ逃げ面となる外周側面と、前記すくい面と前記逃げ面とが交差する稜線部に形成された切れ刃と、前記上面から前記底面を貫通するねじ挿通孔を備えた円形インサートを、前記インサート取付座の着座面に形成されたねじ孔にねじ部材を用いて着脱自在に装着するとともに、前記着座面に装着した前記円形インサートの前記外周側面を前記インサート取付座から立設された2つの円弧状壁面で拘束し、前記円形インサートの前記外周側面の周方向に所定の間隔をおいて形成された複数の外周回動防止面のいずれかを、前記インサート取付座から立設され所定の横幅を有する拘束面を備えた第1の回動防止部に当接させる刃先交換式切削工具において、
前記円形インサートは、前記底面に、前記底面に対して凹部とされた装着用割り出し部を備えているとともに、
前記装着用割り出し部は、前記底面の外側方向に向けて前記ねじ挿通孔の中心軸から同心円状に形成され、前記底面との境界部を、湾曲形状をなす第1の側壁と第2の側壁とを有する段差側壁部を備え、
前記インサート取付座の前記着座面は、前記円形インサートの前記装着用割り出し部内のうち、前記湾曲形状をなす第1の側壁に隣接する前記凹部の窪み部内に挿入可能な第2の回動防止部を備え、
前記円形インサートを前記着座面に装着して前記円形インサートの前記切れ刃の割り出しを行ったときに、
前記第2の回動防止部は前記円形インサートの前記窪み部内に挿入され、前記第1の回動防止部の前記拘束面は前記円形インサートの前記外周回動防止面に当接可能になることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項2】
前記円形インサートの前記段差側壁部は、前記湾曲形状をなす前記第1の側壁と前記第2の側壁の複数を順次連接した構成からなり、
前記湾曲形状をなす第1の側壁における前記ねじ挿通孔の開口端部から最遠部までの長さは、前記湾曲形状をなす第2の側壁における前記ねじ挿通孔の開口端部から最遠部までの長さより大とされ、
前記着座面が備えている前記第2の回動防止部の長さであって、前記ねじ孔の中心軸を通る方向の長さは、前記湾曲形状をなす第1の側壁における前記最遠部までの長さより小さく、かつ、前記湾曲形状をなす第2の側壁における前記最遠部までの長さより大とされていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項3】
前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2としたときに、
前記第2の回動防止部は前記直線S2に沿って形成され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第1の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第2の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項4】
前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と時計回転方向又は反時計回転方向に所定の角度α1又はα2の角度で交差する直線を直線S3と直線S4としたときに、
前記角度α1又はα2は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第1の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第2の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項5】
前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに、前記直線S2と時計回転方向又は反時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D1又は直線D2としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線D1又は前記直線D2に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたときに、α=360°/(2×n)とされ、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項6】
前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに前記直線S2と反時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D2とし、さらに、前記直線D2と交差するとともに前記直線D2と時計回転方向または反時計回転方向に角度α1をなす直線を直線S5又は直線S6としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線S5又は直線S6に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたとき、α=360°/(2×n)とされているとともに、前記角度α1は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項7】
前記インサート取付座の平面視において、前記第1の回動防止部が備えている前記拘束面の前記横幅の端部を点Rと点Qとし、前記点Rと点Qを結ぶ線分RQの中点と前記着座面に形成された前記ねじ孔の中心軸を通る直線を直線S2とし、前記直線S2と交差するとともに前記直線S2と時計回転方向に所定の角度αをなす直線を直線D1とし、さらに、前記直線D1と交差するとともに前記直線D1と時計回転方向または反時計回転方向に角度α2をなす直線を直線S7又は直線S8としたときに、
前記第2の回動防止部は、前記直線S7又は直線S8に沿って形成され、
前記角度αは、前記円形インサートの前記装着用割り出し部が備えている前記湾曲形状をなす第1の側壁の数をnとしたとき、α=360°/(2×n)とされているとともに、前記角度α2は、2°〜10°の範囲に設定され、
前記インサート取付座に装着する前記円形インサートは、前記円形インサートの前記上面又は底面の平面視において、
前記底面に形成された前記湾曲形状をなす第2の側壁と、前記外周側面に形成された外周回動防止面とは、互いに対向する位置になるように形成されているとともに、
前記湾曲形状をなす第1の側壁と、隣り合う前記外周回動防止面との間の外周側面とは、互いに対向する位置になるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項8】
請求項3または請求項4に記載の円形インサートは、
前記前記湾曲形状をなす第1の側壁の最突出端部が前記外周回動防止面の中央部と対向するように、前記湾曲形状をなす第1の側壁と前記外周回動防止面が配置されていることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項9】
請求項5から請求項7のいずれかに記載の円形インサートは、
前記前記湾曲形状をなす第2の側壁の最凹み端部が前記外周回動防止面の中央部と対向するように、前記湾曲形状をなす第2の側壁と前記外周回動防止面が配置されていることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項10】
前記円形インサートの前記段差側壁部を構成する前記湾曲形状をなす第1の側壁は、前記ねじ挿通孔の中心軸に対して外側方向に突出する半径(r1)の円弧形状をなし、
前記着座面に形成された前記第2の回動防止部の先端部は、前記ねじ孔の中心軸に対して外側方向に突出する半径(r2)の円弧形状をなし、
前記半径(r1)は前記半径(r2)より大とされていることを特徴と請求項1から請求項9のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
【請求項11】
前記円形インサートは、その厚さをh1、前記底面から前記外周回動防止面の上端までの高さをh2、前記底面から前記外周回動防止面の下端までの高さをh3としたときに、
前記h2は下記の式を満足し、
(1/2)h1≦h2≦(2/3)h1
前記h3は下記の式を満足することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
(1/10)h1≦h3≦(1/3)h1
【請求項12】
前記2つの円弧状壁面の一方は前記第1の回動防止部の一方の端部側に、前記2つの円弧状壁面の他方は前記第1の回動防止部の他方の端部側に立設されており、
前記円弧状壁面の一方は、円弧形状の直径が異なる2つの第1側壁面と第2側壁面とを一体にした壁面から構成され、
前記円弧状壁面の他方は、円弧形状の直径が異なる第3側壁面と第4側壁面とを一体にした壁面からから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項13】
前記第1の回動防止部の一方の端部側に前記第1側壁面が配置され、前記第1の回動防止部の他方の端部側に前記第3側壁面が配置され、
前記第1側壁面と前記第3側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d1に設定されているとともに、前記直径d1は前記インサート取付座に装着する円形インサートの内接円の直径d0に設定され、
前記第2側壁面と前記第4側壁面の前記円弧形状の直径は同一の直径d2に設定されているとともに、前記直径d2は前記直径d1を超えて大きく設定されていることを特徴とする請求項12に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項14】
前記2つの円弧状壁面、または前記第1〜第4側壁面は、前記着座面と直交する線分に対して前記工具本体の工具軸線方向に傾斜角度β1をもって傾斜して立設され、
前記着座面に装着する前記円形インサートの前記外周側面の傾斜角度をθ1としたときに、(θ1−β1)は下記の式を満足することを特徴とする請求項1、請求項12、請求項13のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
0≦θ1−β1≦1.0
【請求項15】
前記2つの円弧状壁面、または前記第1〜第4側壁面は、縦方向に複数の加工筋を有していることを特徴とする請求項1、請求項12から請求項14のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
【請求項16】
前記着座面と、前記円弧状壁面と、前記第1〜第4側壁面と、前記第1の回動防止部の少なくとも一つには、周期律表4a、5a、6a族金属、Al、Si、Bの元素から選択される1種以上の元素を含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物のいずれかからなる硬質皮膜が被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項7、請求項12から請求項15のいずれかに記載の刃先交換式切削工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−75337(P2013−75337A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215893(P2011−215893)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000233066)日立ツール株式会社 (299)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000233066)日立ツール株式会社 (299)
【Fターム(参考)】
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