説明

分割型軸スリーブ

【目的】 軸スリーブとその固定手段とを含む全体が小型でかつ分割面がずれることがない分割型軸スリーブを提供する。
【構成】 軸スリーブ片1a,1bの軸方向一端部に軸中心に向かって傾斜したテーパー面11を形成し、軸2に軸スリーブ片1a,1bの一端部のテーパー面11に密接するテーパー面12を有した係合部Aを形成し、軸スリーブ片1a,1bの軸方向他端部にこれらを組み合わせた状態で軸の中心線に沿って横から見て頂部から傾斜した主テーパー面15を形成し、かつ主テーパー面15の外周縁に軸中心に向かって傾斜した補助テーパー面13を形成し、主テーパー面15に密接するテーパー面16を有したスリーブ押さえ内輪3と補助テーパー面13に密接するテーパー面14を有したスリーブ押さえ外輪4とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は軸スリーブに係り、特に周方向に複数に分割された分割型軸スリーブに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から分割型軸スリーブを軸に固定するために種々の方法が採用されている。図6は従来の分割型軸スリーブの固定方法を示す1例である。図6においては、軸スリーブ21は軸22の外周に締結手段23によって締結されている。なお、符号24は軸スリーブ21に摺接するセラミック軸受であり、セラミック軸受24はゴム等の弾性体25を介してリテーナ26に保持されている。
【0003】図7は従来の分割型軸スリーブの固定方法を示す他の例である。図7においては、軸スリーブ31は軸32にフランジ33によって固定されている。なお、符号34は軸スリーブ31に摺接するセラミック軸受であり、セラミック軸受34はケース35によって保持されている。またケース35はゴム等の弾性体36を介して軸受ケーシング37に固定されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来の技術は軸スリーブを外周側から他の部品を使用して軸に締め付けたり(図6)、軸と軸スリーブをフランジで固定したりして(図7)、分割型スリーブを一体にし、かつ軸との回り止め機能を持たせていた。しかしながら、どうしても軸スリーブとその固定手段とを含む全体が大きくなったり、分割面がずれたりする問題があった。また、スリーブがセラミックスのような焼結体である場合には、焼結体自身に孔加工を施して軸に固定することは好ましくなかった。
【0005】本発明は上述の事情に鑑みなされたもので、軸スリーブとその固定手段とを含む全体が小型でかつ分割面がずれることがない分割型軸スリーブを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前述した目的を達成するため、本発明の分割型軸スリーブは、周方向に分割された複数の軸スリーブ片からなる軸に取り付けられる分割型軸スリーブにおいて、各軸スリーブ片の軸方向一端部に軸中心に向かって傾斜したテーパー部を形成し、軸に前記各軸スリーブ片の一端部のテーパー部に密接するテーパー部を有した係合部を形成し、前記各軸スリーブ片の軸方向他端部にこれらを組み合わせた状態で軸の中心線に沿って横から見て頂部から傾斜した主テーパー部を形成し、かつ該主テーパー部の外周縁に軸中心に向かって傾斜した補助テーパー部を形成し、前記軸に固定されるとともに前記主テーパー部に密接するテーパー部を有したスリーブ押さえ内輪と前記補助テーパー部に密接するテーパー部を有したスリーブ押さえ外輪とを設けたことを特徴とするものである。
【0007】
【作用】前述した構成からなる本発明によれば、分割された各軸スリーブ片の軸方向一端部には軸中心に向かって傾斜したテーパー部が形成され、またそれを取り付ける軸には軸スリーブの一端部のテーパー部に合うようにテーパー部を有した係合部が形成されており、分割された軸スリーブは軸によって押さえ込まれるようになっている。また軸スリーブの他端部には、軸スリーブ片を組み合わせた状態で軸の中心線に沿って横から見て頂部から傾斜した主テーパー部と、主テーパー部の外周縁に形成された軸中心に向かって傾斜した補助テーパー部とが形成されており、主テーパー部にスリーブ押さえ内輪が密接し補助テーパー部にスリーブ押さえ外輪が密接した状態でスリーブ押さえ内外輪は軸に固定されている。これによって、分割型軸スリーブはスリーブ押さえ内外輪と軸の係合部とにより挟持され、食い違うことなく、またスリーブ自身に軸との回り止め部品を必要とすることなく軸に取り付けられる。
【0008】
【実施例】以下、本発明に係る分割型軸スリーブの一実施例を図1乃至図5を参照して説明する。図1は分割型軸スリーブの全体構成を示す断面図、図2は図1のII矢視図である。
【0009】図1において、符号1は上下に2分割された軸スリーブ片1a,1bからなる軸スリーブである。軸スリーブ片1a,1bは略半円筒状をなしセラミックス等の焼結体にて形成されている。軸スリーブ1が取り付けられる軸2は、軸スリーブ1の端部に相応する箇所に、内周側がテーパー面12に形成された係合部Aを有している。そして、軸スリーブ1の一端部も軸中心に向かって傾斜したテーパー面11を有しており、このテーパー面11が前記軸2のテーパー面12に密接することにより、軸スリーブ1はその分割部が食い違うことなく軸2に取り付けられている。
【0010】図3は軸スリーブ片1aと1bとを組み合わせた状態を示す図であり、図3(a)は断面図、図3(b)は図3(a)の III(b)矢視図,図3(c)は図3(b)の III(c)− III(c)矢視図である。軸スリーブ片1a,1bには、前記テーパー面11の反対側の端部に、これらを組み合わせた状態で円弧状の頂部t1 からこれと対向する円弧状の頂部t2 に向かって外側に傾斜した主テーパー面15が形成されている。また主テーパー面15の外周縁には、軸中心に向かって傾斜した補助テーパー面13が形成されている。
【0011】前記軸スリーブ片1a,1bのテーパー面11の反対側の端部は、分割型の軸スリーブ押さえ内輪3とスリーブ押さえ外輪4とにより押さえられている。図4はスリーブ押さえ内輪3を示す図であり、図4(a)は断面図、図4(b)は図4(a)のIV(b)矢視図、図4(c)は図4(b)のIV(c)矢視図である。スリーブ押さえ内輪3は、その一端部に軸スリーブ1の主テーパー面15に適合するように内側に傾斜したテーパー面16を有している。
【0012】図5はスリーブ押さえ外輪4を示す図であり、図5(a)は断面図、図5(b)は図5(a)のV(b)矢視図、図5(c)は図5(b)のV(c)矢視図である。スリーブ押さえ外輪5は、その一端部に軸スリーブ1の補助テーパー面13に適合するように内側に傾斜したテーパー面14を有している。
【0013】図1に示されるように、スリーブ押さえ内輪4及びスリーブ押さえ外輪5は、それらのテーパー面16及び14がそれぞれ軸スリーブ1のテーパー面15及び13に密接した状態でボルト5により軸2に固定されている。
【0014】このように本実施例によれば、分割された各軸スリーブ片1a,1bの軸方向一端部には軸中心に向かって傾斜したテーパー面11が形成され、またそれを取り付ける軸2には軸スリーブ1のテーパー面11に合うようにテーパー面12を有した係合部Aが形成されている。また軸スリーブ1の他端部には、軸スリーブ片を組み合わせた状態で円弧状の頂部t1 からこれと対向する円弧状の頂部t2に向かって傾斜した主テーパー面15と、この主テーパー面15の外周縁に形成された軸中心に向かって傾斜した補助テーパー面13とが形成されている。そして、主テーパー面15に密接するテーパー面16を有するスリーブ押さえ内輪3と、補助テーパー面13に密接するテーパー面14を有するスリーブ押さえ外輪4とがボルト5により軸2に固定されている。これによって、分割型軸スリーブ1はスリーブ押さえ内外輪3,4と軸2の係合部Aとにより挟持され、食い違うことなく、またスリーブ自身に軸2との回り止め部品を必要とすることなく軸2に取り付けられる。上述の固定方法は、軸スリーブ1がセラミックスのような焼結体で製作されている場合には特に有効である。
【0015】なお、軸スリーブ1の押さえ付けをより確実なものにするために、スリーブ押さえ内輪3と軸2との間にゴム等の柔軟材を介在させることも有効である。また、本実施例においては、軸スリーブを2分割型としたが、本発明は分割数が3以上の場合でも同様である。さらに、本例ではスリーブ押さえ内輪3とスリーブ押さえ外輪4の分割面と軸スリーブ1の分割面の位置が同一であるが、それを違えた場合の方が分割部がずれないためにより有効である。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、分割型軸スリーブの分割部がずれることなく取り付けることができるとともに、軸スリーブとその固定手段とを含む全体をコンパクトにすることができる。また、本発明によれば、軸スリーブに固定用の孔加工を行う必要がなく、かつ軸スリーブの回り止めを行うための部材を別途設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る分割型軸スリーブの一実施例を示す断面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】軸スリーブ片の詳細を示す図である。
【図4】スリーブ押さえ内輪の詳細を示す図である。
【図5】スリーブ押さえ外輪の詳細を示す図である。
【図6】従来の分割型軸スリーブの一例を示す断面図である。
【図7】従来の分割型軸スリーブの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 軸スリーブ
1a,1b 軸スリーブ片
2 軸
3 スリーブ押さえ内輪
4 スリーブ押さえ外輪
11,12,14,16 テーパー面
13 補助テーパー面
15 主テーパー面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 周方向に分割された複数の軸スリーブ片からなる軸に取り付けられる分割型軸スリーブにおいて、各軸スリーブ片の軸方向一端部に軸中心に向かって傾斜したテーパー部を形成し、軸に前記各軸スリーブ片の一端部のテーパー部に密接するテーパー部を有した係合部を形成し、前記各軸スリーブ片の軸方向他端部にこれらを組み合わせた状態で軸の中心線に沿って横から見て頂部から傾斜した主テーパー部を形成し、かつ該主テーパー部の外周縁に軸中心に向かって傾斜した補助テーパー部を形成し、前記軸に固定されるとともに前記主テーパー部に密接するテーパー部を有したスリーブ押さえ内輪と前記補助テーパー部に密接するテーパー部を有したスリーブ押さえ外輪とを設けたことを特徴とする分割型軸スリーブ。
【請求項2】 前記軸スリーブ片は焼結体からなることを特徴とする請求項1記載の分割型軸スリーブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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