説明

分散電源の単独運転検出装置

【課題】 系統過渡変動時の不要検出の抑制と、分散電源の単独運転の高速検出とを両立させることができるようにする。
【解決手段】 この単独運転検出装置100は、分散電源28をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備20が第1群と第2群に分類されて配電系統に接続されている分散電源連系システムを構成する自設備20内の分散電源28の単独運転を検出する装置であり、注入周波数電圧抽出装置60と電圧判定装置70を備えている。注入周波数電圧抽出装置60は、連系点18の電圧Vs から他群の注入周波数の電圧V21、V22および自群の注入周波数の電圧V11、V12を抽出する手段を有している。電圧判定装置70は、電圧V21、V22が所定の判定値を超えたときに検出信号を出力する手段と、電圧V11、V12が所定の判定値を超えたときに検出信号を出力する手段と、両検出信号が共に出力されているときに単独運転検出信号DSを出力する手段とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分散電源をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備が2群に分けて配電系統に接続されており、しかも各群の各分散電源保有設備は、自設備から注入する注入電流が生じさせるうなりを他群に属する分散電源保有設備から注入する注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりに同期させる手段を有している、という分散電源連系システムを構成している自設備内の分散電源の単独運転を検出する単独運転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すような分散電源連系システムが既に提案されている(例えば特許文献1参照)。この分散電源連系システムの構成は次のとおりである。
【0003】
(a)分散電源(図7中の分散電源28参照)をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備200が第1群と第2群との2群に分類されて配電系統1に接続されていて、
(b)数1、表1にも示すように、うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差Δfは両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数f11、f12、f21、f22はそれぞれ異なると共に配電系統1の基本波周波数とも異なる第1組および第2組の注入周波数を用いて、
(c)第1群に属する各分散電源保有設備200は、第1組の注入周波数の電流組I11、I12を含む注入電流を配電系統1に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(d)第2群に属する各分散電源保有設備200は、第2組の注入周波数の電流組I21、I22を含む注入電流を配電系統1に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(e)かつ、自分の分散電源保有設備200を自設備、当該自設備が属する方の群を自群、属さない方の群を他群と呼ぶと、各分散電源保有設備200は、自設備から注入する注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備から注入する注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御手段をそれぞれ有している。
【0004】
[数1]
|f11−f12|=|f21−f22|=Δf
11≠f12≠f21≠f22
【0005】
【表1】

【0006】
なお、この出願では、符号に添字11を有する物理量(周波数、電圧、電流等)と添字12を有する物理量とが第1組を示し、添字21を有する物理量と添字22を有する物理量とが第2組を示している。例えば、上記四つの周波数f11、f12、f21、f22は、それぞれ、132Hz(2.2次)、144Hz(2.4次)、156Hz(2.6次)、168Hz(2.8次)である。括弧内は、配電系統1の基本波(例えば60Hz=1次)に対する次数で表したものである。以下における例では、全て、ここに例示した周波数を用いている。但しこれに限られるものではない。
【0007】
配電系統1は、この例では、上位系統2に変電所4の変圧器6および遮断器8を介して高圧配電線10が接続され、この高圧配電線10に配電用変圧器14を介して低圧配電線16が接続された構成をしていて、この低圧配電線16に各分散電源保有設備200が接続されている。高圧配電線10には、負荷11および力率改善用コンデンサ12が接続されている。高圧配電線10の電圧は例えば6.6kV、低圧配電線16の電圧は例えば210Vである。
【0008】
上記分散電源連系システムによれば、自設備の注入電流が生じさせるうなりと、他群の注入電流が生じさせるうなりとを同期させることを利用して、同一の群に属する複数の分散電源保有設備200から配電系統1に注入する同一周波数の複数の注入電流をそれぞれ同期させることができる。従って同期信号ラインや外部同期信号源を用いなくて済む。
【0009】
更に、各分散電源保有設備200は、自設備200と配電系統1(より具体的にはその低圧配電線16)との連系点における電圧Vs に含まれている上記注入周波数の電圧を測定(抽出)して、当該電圧の増大から、自設備内の分散電源が単独運転になったことを検出する単独運転検出装置を有している。
【0010】
より具体的には、第1群に属する分散電源保有設備200用の単独運転検出装置は、他群の(即ち上記第2組の)注入周波数の電圧V21、V22の内の少なくとも一方の電圧を測定して上記単独運転を検出する。第2群に属する分散電源保有設備200用の単独運転検出装置は、他群の(即ち上記第1組の)注入周波数の電圧V11、V12の内の少なくとも一方の電圧を測定して上記単独運転を検出する。
【0011】
上記単独運転検出装置の構成の従来例を図2に示す。この単独運転検出装置300は第1群用のものである。これとほぼ同様の構成は、上記特許文献1にも記載されている。
【0012】
この単独運転検出装置300は、自設備の上記連系点における電圧Vs をアナログフィルタ301、302、A/D変換器303およびディジタルフィルタ304を通して離散フーリエ変換器305、306に供給し、それらで他群の注入周波数の電圧V21、V22をそれぞれ抽出し、それらの絶対値|V21|、|V22|を絶対値演算器307、308でそれぞれ演算し、当該絶対値を判定器309、310で所定の判定値J1 とそれぞれ比較し、絶対値|V21|、|V22|が判定値J1 を超えたときに検出信号S1 、S2 をそれぞれ出力するよう構成されている。更に、AND回路311で両検出信号S1 、S2 の論理積を取って両検出信号S1 、S2 が共に出力されているときに検出信号S3 を出力し、当該検出信号S3 が所定の継続確認時間(例えば20m秒)のあいだ継続していることを継続時間判定器312で判定して継続したときに、自設備内の分散電源が単独運転になったことを表す単独運転検出信号DSを出力するよう構成されている。
【0013】
アナログフィルタ301は、ディジタル処理用にサンプリングを行う際の折り返し雑音(エイリアシング)防止用のローパスフィルタ(アンチエイリアシングフィルタ)である。
【0014】
アナログフィルタ302は、配電系統1の基本波周波数成分(例えば60Hz)除去用のハイパスフィルタである。
【0015】
ディジタルフィルタ304は、他群の注入周波数の電圧V21、V22が小さいので、それらを離散フーリエ変換器305、306でSN比良く抽出するためのQ値(共振の尖鋭度)の高いバンドパスフィルタであり、電圧V21およびV22を通過させる。
【0016】
第2群用の単独運転検出装置も、抽出する電圧が他群の注入周波数の電圧V11、V12になる以外は、上記単独運転検出装置300と同様の構成をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2009−11142号公報(段落0018−0020、図1、図2、図21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記従来の単独運転検出装置300においては、配電系統1における過渡変動時の不要検出(即ち、単独運転でないのに単独運転と誤検出すること)の抑制と、分散電源の単独運転の高速検出とを両立させることが難しいという課題がある。
【0019】
これを、図3〜図5に示すシミュレーション結果を用いて説明する。
【0020】
このシミュレーションは、図1に示した分散電源連系システムを模擬したシミュレーションモデルを用いて行った。当該シミュレーションモデルでは、高圧配電線10の電圧を6.6kV、変圧器6を含めた上位系統2の短絡容量を100MVA、210Vの低圧バンクを3バンク、変圧器6から低圧3バンクまでの高圧配電線10のインピーダンスを12+j16%(10MVAベース)とし、かつ各低圧バンクごとに、250/3kWの抵抗負荷、250/3kWの分散電源および8Aの電流注入装置を有しているものとした。また、他群の注入周波数の電圧V21、V22の測定には、図2に示した単独運転検出装置300中のものと同様の回路を用いた。
【0021】
そして、図3に示すように、系統過渡変動時の一例として、上記力率改善用コンデンサ12に相当する300kVA6%L(インダクタンス)付力率改善用コンデンサ(略称SC)を時刻t1 (1.5秒。これは測定開始からの時刻である。以下同様)に投入し、時刻t2 (2秒)に開放した。また、時刻t3 (2.3秒)に、上記遮断器8に相当する遮断器を開放して、分散電源保有設備200内の分散電源の単独運転を発生させた。
【0022】
従来の単独運転検出装置300においては、上記判定値J1 は、定常時の電圧V21、V22の約5倍に設定している。これは、例えば定常時の約2倍の判定値J2 を用いると、図3、図4に示すように、力率改善用コンデンサ投入時に、単独運転でないのに電圧V21およびV22が判定値J2 を超えて、不要検出を起こしてしまうので、これを防止するためである。
【0023】
ところが、単独運転発生時は、図3、図5に示すように、上記判定値J2 の場合は、時刻t4 で電圧V22が判定値J2 を超えるので上記検出信号S2 が出力され、時刻t5 (単独運転発生後約50m秒)で電圧V21が判定値J2 を超えるので上記検出信号S1 が出力され、その時点でAND条件が成立して上記検出信号S3 が出力される。これに対して、上記判定値J1 の場合は、時刻t7 (単独運転発生後約65m秒)でAND条件が成立して上記検出信号S3 が出力されるので、単独運転検出が遅くなる。両者の差は約15m秒である。
【0024】
上記継続時間判定器312における継続確認時間の20m秒を加味すると、上記判定値J2 を採用した場合は約70(=約50+20)m秒で、上記判定値J1 を採用した場合は約85(=約65+20)m秒で、単独運転検出信号DSが出力されることになる。
【0025】
いずれにしても、約15m秒の差があり、この約15m秒の差は、分散電源の単独運転検出においては比較的大きいと言える。これは、電気設備技術基準の解釈第19条によれば、地絡事故発生後に分散電源の解列が完了するまでの時間として1秒以内が求められており、変電所4の遮断器8は、通常、地絡事故検出後、約0.9秒で解列するので、残された100m秒以内という高速で分散電源の単独運転を検出することが要請されているからである。
【0026】
上記約15m秒という時間差を短縮することができれば、そのぶん単独運転の高速検出が可能になる。また、継続確認時間を長くして、不要検出抑制性能を高めることもできる。
【0027】
なお、配電系統1の過渡変動は、大きな負荷11の投入等によっても生じる。
【0028】
このように、従来の単独運転検出装置300においては、判定器309、310における判定値を、上記判定値J2 のように小さくすると、系統過渡変動時に不要検出を起こす可能性が高くなり、上記判定値J1 のように大きくすると、分散電源の単独運転の検出が遅くなるので、不要検出抑制と単独運転の高速検出とを両立させることが難しい、という課題がある。
【0029】
そこでこの発明は、系統過渡変動時の不要検出の抑制と、分散電源の単独運転の高速検出とを両立させることができるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0030】
この発明に係る単独運転検出装置の一つは、
(1)(a)分散電源をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備が第1群と第2群との2群に分類されて配電系統に接続されていて、
(b)うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差は両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数はそれぞれ異なると共に前記配電系統の基本波周波数とも異なる第1組および第2組の注入周波数を用いて、
(c)前記第1群に属する各分散電源保有設備は、前記第1組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(d)前記第2群に属する各分散電源保有設備は、前記第2組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(e)かつ、自分の分散電源保有設備を自設備、当該自設備が属する方の群を自群、属さない方の群を他群と呼ぶと、両群の各分散電源保有設備は、自設備から注入する前記注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備から注入する前記注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御手段をそれぞれ有している、
という分散電源連系システムを構成している自設備内の分散電源の単独運転を検出して単独運転検出信号を出力する単独運転検出装置であって、
(2)自設備と前記配電系統との連系点における電圧から、他群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の前記注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を抽出する他群電圧抽出手段と、
(3)自設備と前記配電系統との連系点における電圧から、自群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の前記注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を抽出する手段であって、前記他群電圧抽出手段よりも応答性の速い自群電圧抽出手段と、
(4)前記他群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を他群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第1の検出信号を出力する他群電圧判定手段と、
(5)前記自群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を自群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第2の検出信号を出力する自群電圧判定手段と、
(6)前記第1の検出信号および第2の検出信号の論理積を取って、両検出信号が共に出力されているときに前記単独運転検出信号を出力する論理積手段とを備えている、ことを特徴としている。
【0031】
この単独運転検出装置によれば次の作用効果を奏する。
【0032】
即ち、後でシミュレーション結果等を参照して詳述するけれども、他群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の注入周波数の電圧(以下これを、他群の注入周波数の電圧と略する)と、自群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の注入周波数の電圧(以下これを、自群の注入周波数の電圧と略する)とを比べると、表2に示す特徴のあることが分かった。
【0033】
【表2】

【0034】
このように、自群の注入周波数の電圧は大きいので、自群電圧抽出手段の応答性を速くしてもSN比良く抽出することができる。しかも当該応答性を速くすることによって、自群電圧判定手段による分散電源の単独運転の検出速度を高めることができる。更に、自群の注入周波数の電圧は大きいので、系統過渡変動の影響を受けにくく、従って不要検出を起こしにくい。しかし、分散電源の単独運転時の自群の注入周波数の電圧変化は小さいので、自群の注入周波数の電圧による単独運転検出のみでは、単独運転検出の信頼性は低くなる。
【0035】
一方、単独運転時の他群の注入周波数の電圧変化は大きいので、単独運転検出の信頼性は高い。また、上記のように不要検出を起こしにくい自群の注入周波数の電圧による単独運転検出と論理積(AND)を取ることによって、系統過渡変動時の不要検出を抑制することができるので、他群電圧判定値を小さくして単独運転の検出速度を高めることができる。
【0036】
以上のことをまとめると表3に示すようになり、この発明に係る単独運転検出装置によれば、系統過渡変動時の不要検出の抑制と、分散電源の単独運転の高速検出を両立させることができる。しかも、上記論理積を取るので、単独運転検出の信頼性を高めることができる。
【0037】
【表3】

【0038】
前記他群電圧判定手段および自群電圧判定手段と論理積手段との間に、他群電圧継続判定手段および自群電圧継続判定手段をそれぞれ設けても良い。
【0039】
前記自群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を、前記自群電圧判定値よりも大きい第2の自群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す検出信号を出力する第2の自群電圧判定手段と、それからの検出信号と前記論理積手段からの検出信号の論理和を取って、両検出信号の少なくとも一方が出力されているときに単独運転検出信号を出力する論理和手段とを更に備えていても良い。
【発明の効果】
【0040】
請求項1に記載の発明によれば、他群の注入周波数の電圧が他群電圧判定値を超えたことと、自群の注入周波数の電圧が自群電圧判定値を超えたこととの論理積で単独運転検出信号を出力するよう構成されているので、系統過渡変動時の不要検出の抑制と、分散電源の単独運転の高速検出を両立させることができる。しかも、上記論理積を取るので、単独運転検出の信頼性を高めることができる。
【0041】
請求項2、4に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、他群電圧継続判定手段と自群電圧継続判定手段とを備えているので、両継続判定手段における継続確認時間を、互いに独立して、配電系統に過渡変動が発生しても不要検出を抑制するのに都合の良い時間にすることができる。しかもそのようにしても、無駄な待ち時間を無くすることができるので、単独運転検出時間が長くなるのを抑えることができる。従って、系統過渡変動時の不要検出の抑制と、分散電源の単独運転の高速検出とをより効果的に両立させることができる。
【0042】
請求項3、4に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、自群の注入周波数の電圧を、第1の自群電圧判定値よりも大きい第2の自群電圧判定値と比較する第2の自群電圧判定手段および論理和手段を更に備えているので、他群の注入周波数電圧の判定では検出することのできない、低圧バンクにおける単独運転の検出をも行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来の分散電源連系システムの一例を示す単線接続図である。
【図2】従来の単独運転検出装置の一例を示すブロック図である。
【図3】系統過渡変動時および単独運転発生時の、他群の注入周波数の電圧の変化をシミュレーションした結果の一例を示す図であり、電圧は連系点の電圧(210V)中の含有率で表している。
【図4】図3中の時刻t1 前後の拡大図である。
【図5】図3中の時刻t3 前後の拡大図である。
【図6】分散電源保有設備が、この発明に係る単独運転検出装置を備えている場合の分散電源連系システムの一例を示す単線接続図である。
【図7】図6中の分散電源保有設備の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】図7中の電流注入装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】図7中の同期制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図10】図7中の注入周波数電圧抽出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】図7中の電圧判定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図12】図7中の電圧判定装置の構成の他の例を示すブロック図である。
【図13】系統過渡変動時および単独運転発生時の、自群の注入周波数の電圧の変化をシミュレーションした結果の一例を示す図であり、電圧は連系点の電圧(210V)中の含有率で表している。
【図14】図13中の時刻t1 前後の拡大図である。
【図15】図13中の時刻t3 前後の拡大図である。
【図16】分散電源保有設備が、この発明に係る単独運転検出装置を備えている場合の分散電源連系システムの他の例を示す単線接続図である。
【図17】系統過渡変動時および低圧バンクにおける単独運転発生時の、自群の注入周波数の電圧の変化をシミュレーションした結果の一例を示す図であり、電圧は連系点の電圧(210V)中の含有率で表している。
【図18】図7中の電圧判定装置の構成の更に他の例を示すブロック図である。
【図19】図7中の電圧判定装置の構成の更に他の例を示すブロック図である。
【図20】図6および図16に示す分散電源連系システムを簡略化して示す等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(1)分散電源連系システムについて
図6に、分散電源保有設備20がこの発明に係る単独運転検出装置を備えている場合の分散電源連系システムの一例を示す。この分散電源連系システムは、簡単に言えば、分散電源保有設備20以外は、図1に示した従来の分散電源連系システムと同じ構成をしている。
【0045】
以下においては、自分の分散電源保有設備20を自設備20、当該自設備20が属する方の群を自群、属さない方の群を他群と呼んでいる。
【0046】
この分散電源連系システムは、分散電源をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備20が配電系統1に接続された構成をしている。より具体的には、配電系統1は、この実施形態では、上位系統2に変電所4の変圧器6および遮断器8を介して高圧配電線10が接続され、この高圧配電線10に配電用変圧器14を介して低圧配電線16が接続された構成をしていて、この低圧配電線16に各分散電源保有設備20が接続されている。例えば、多数の分散電源保有設備20が高い密度で接続されている(これを低圧高密度連系と言う)。
【0047】
高圧配電線10には、負荷11および力率改善用コンデンサ12が接続されている。これらは、幾つかの負荷および力率改善用コンデンサを、それぞれまとめて図示したものである。
【0048】
高圧配電線10の電圧は例えば6.6kV、低圧配電線16の電圧は例えば210Vであるが、これらに限られるものではない。各配電用変圧器14は、例えば6600V/210Vの柱上変圧器である。
【0049】
一つの配電用変圧器14に一つの分散電源保有設備20が接続されていても良いし、この実施形態のように複数の分散電源保有設備20が接続されていても良い。後者がより現実に近い。
【0050】
各分散電源保有設備20は、例えば、分散電源を有する発電設備、家庭、スーパーマーケット、工場、その他の設備である。
【0051】
各分散電源保有設備20の構成の一例を図7に示す。この分散電源保有設備20は、分散電源28およびスイッチ22を有していて、連系点18において低圧配電線16に接続されている。分散電源28は、例えば、太陽光発電設備、コージェネレーション発電設備、燃料電池発電設備、風力発電設備等である。
【0052】
分散電源保有設備20は、更に、配電系統1(具体的にはその低圧配電線16)に後述する注入周波数の注入電流Iinj を注入する電流注入手段としての電流注入装置40と、うなりの同期制御を行う同期制御手段としての同期制御装置50と、自設備20内の分散電源28の単独運転を検出して単独運転検出信号DSを出力する単独運転検出装置100とを備えている。
【0053】
この分散電源連系システムでは、複数の分散電源保有設備20は、この実施形態のように低圧配電線16に接続されている場合は、配電用変圧器14単位で2群に分類されている。即ち、同じ配電用変圧器14に接続されるものは同一群にするという条件の下で第1群と第2群との2群に分類されている。他群に属する分散電源保有設備20全体からの注入電流との間で同期を取りやすくするためである。
【0054】
第1群および第2群を構成する分散電源保有設備20の数は、それぞれ、少なくとも2台ずつ以上あれば良い。分散電源連系システムを構築した後に、第1群および/または第2群を構成する分散電源保有設備20の数を変更(増加または減少)しても良い。
【0055】
そしてこの分散電源連系システムは、先に数1、表1にも示したように、うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差Δfは両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数f11、f12、f21、f22はそれぞれ異なる第1組および第2組の注入周波数を用いている。
【0056】
この四つの周波数f11、f12、f21、f22は、いずれも、配電系統1の基本波周波数(例えば60Hz)とは異なる周波数にする。当該基本波周波数と区別(分離)を容易にするためである。各組を成す周波数は、うなりを生じさせる程度に互いに近い周波数にする。周波数差Δfは、うなりの周波数でもある。
【0057】
上記四つの周波数f11、f12、f21、f22を、それらと一定の関係(即ち、ω=2πfの関係)にある四つの角周波数ω11、ω12、ω21、ω22で表しても良いし、配電系統1の基本波に対する四つの次数で表しても良い。
【0058】
上記第1組および第2組の注入周波数を構成する各注入周波数は、いずれも、配電系統1の基本波周波数の1倍よりも大きい非整数倍(即ち帯小数倍)の周波数にするのが好ましい。そのようにすると、配電系統1に本来は存在しない(存在しても極めて僅かな)、基本波周波数の非整数倍の周波数を用いることになるので、注入電流による電圧を測定することが容易になる。即ち、SN比が良くなる。その結果、後述する電流注入装置40の小容量化を図ることができる。
【0059】
上記四つの周波数f11、f12、f21、f22の例は前述したとおりである。例えば、周波数f11、f12、f21、f22は、それぞれ、2.2次、2.4次、2.6次、2.8次である。
【0060】
第1群に属する各分散電源保有設備20の電流注入装置40は、自設備が接続された低圧配電線16に上記第1組の周波数f11、f12の電流組を含む注入電流Iinj を注入する。
【0061】
第2群に属する各分散電源保有設備20の電流注入装置40は、自設備が接続された低圧配電線16に上記第2組の周波数f21、f22の電流組を含む注入電流Iinj を注入する。
【0062】
両群の各分散電源保有設備20の同期制御装置50は、自設備20から注入する注入電流Iinj を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流Iinj が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備20から注入する注入電流Iinj の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる。
【0063】
従ってこの分散電源連系システムも、自設備20の注入電流Iinj が生じさせるうなりと、他群の注入電流Iinj が生じさせるうなりとを同期させることを利用して、同一の群に属する複数の分散電源保有設備20から配電系統1に注入する同一周波数の複数の注入電流をそれぞれ同期させることができる。従って同期信号ラインや外部同期信号源を用いなくて済む。
【0064】
(2)分散電源保有設備20の構成要素の具体例
以下の説明では、第1群の分散電源保有設備20の構成要素(即ち、第1組の注入周波数f11、f12の電流組I11、I12を含む注入電流Iinj を注入するもの)を例にしているが、第2群の分散電源保有設備20の構成要素も、周波数の組が反対になる以外は、以下に説明するものと同じである。
【0065】
なお、注入電流Iinj 、電圧V11、V12、V21、V22等は、時間的に変化する(即ち時間tによって変化する)物理量であるが、この出願では特に必要がない限り、時間的に変化する量であることを表す(t)や、ベクトル量であることを表す符号は省略している。
【0066】
上記電流注入装置40の構成の一例を図8に示す。この電流注入装置40は、クロック装置42、位相発生器43、44、注入信号発生器45、46、加算器47および注入電流形成器48を備えている。この電流注入装置40は、上記特許文献1に記載の技術とほぼ同様のものである。
【0067】
クロック装置42は、時刻tを表す信号を発生してそれを位相発生器43、44に与える。
【0068】
位相発生器43、44は、上記時刻t、一致位相θe および同期制御装置50から与えられる位相一致時刻Te を用いて、数2に示す位相θ11、θ12をそれぞれ発生させる。両位相θ11、θ12は、図9に示す同期制御装置50にも供給される。
【0069】
位相一致時刻Te は、図9を参照して説明する自設備うなりの位相Δθinj が0度となる時刻(即ち、組を成す電流I11、I12の位相が一致する時刻)である。一致位相θe は、自設備うなりの位相Δθinj が0度となる時刻Te での組を成す電流I11、I12の位相が一致するときの位相であり、同一群内で共通の値(例えば0度)にする。ω11=2πf11、ω12=2πf12である。
【0070】
[数2]
θ11=ω11・(t−Te )+θe
θ12=ω12・(t−Te )+θe
【0071】
注入信号発生器45、46は、上記各位相を用いて、次式に示す正弦波交流信号S11、S12をそれぞれ発生させる。S11p 、S12p は、それぞれの振幅のピーク値である。
【0072】
[数3]
11=S11p・sinθ11
12=S12p・sinθ12
【0073】
加算器47は、両注入信号発生器45、46からの信号を加算して、注入信号Sinj (=S11+S12)を形成して出力する。
【0074】
注入電流形成器48は、例えば増幅器であり、加算器47から与えられる信号を増幅して、次式に示す注入電流Iinj を出力する。I11p 、I12p は、それぞれの振幅のピーク値である。
【0075】
[数4]
inj =I11p・sinθ11+I12p・sinθ12
=I11+I12
【0076】
上記同期制御装置50の構成の一例を図9に示す。この同期制御装置50は、上記特許文献1に記載の技術とほぼ同様のものである。
【0077】
この同期制御装置50は、位相演算器52、減算器54、56および位相一致時刻発生器58を備えている。
【0078】
位相演算器52は、この実施形態では単独運転検出装置100を構成する注入周波数電圧抽出装置60から与えられる二つの電圧V21、V22の商を取り、かつその商の偏角argを取り出して、次式で表される他群うなりの位相Δθm を演算して出力する。即ち、この実施形態では、電圧V21、V22を抽出する電圧抽出手段を、同期制御装置50と単独運転検出装置100とで共用しているけれども、そのようにせずにそれぞれ別に設けても良い。
【0079】
[数5]
Δθm =arg(V12/V11)=θ12−θ11
【0080】
減算器54は、電流注入装置40から与えられる二つの位相θ11、θ12の差を求めて、次式で表される自設備うなりの位相Δθinj を演算して出力する。
【0081】
[数6]
Δθinj =θ12−θ11
【0082】
減算器56は、位相演算器52から与えられる他群うなりの位相Δθm と減算器54から与えられる自設備うなりの位相Δθinj との差であるうなり位相差dθを次式に従って演算して出力する。
【0083】
[数7]
dθ=Δθm −Δθinj
【0084】
位相一致時刻発生器58は、減算器56から与えられるうなり位相差dθに基づいて次式で表される積分を行って、前述した位相一致時刻Te を演算して出力する。Kは係数である。
【0085】
[数8]
e =∫K・dθ(t)
【0086】
そしてこの同期制御装置50は、上記位相一致時刻Te を電流注入装置40(より具体的にはその位相発生器43、44)に与えることによって、組を成す位相θ11、θ12を、自設備うなりの位相Δθinj に対して同一群内で共通した一定の位相関係(即ち一致位相θe )に保ちつつ、それらの位相θ11、θ12を進めたり遅らせたりして、自設備うなりの位相Δθinj を他群うなりの位相Δθm に同期させることができる。
【0087】
単独運転検出装置100については以下に説明する。
【0088】
(3)単独運転検出装置100の構成の説明
以下においては、第1群の分散電源保有設備20用の単独運転検出装置100を例にしており、従って自群とは第1群のことであり、他群とは第2群のことである。第2群用の分散電源保有設備20用の単独運転検出装置も、周波数の組が反対になる以外は、以下に説明するものと同様である。
【0089】
単独運転検出装置100は、図7に示したように、注入周波数電圧抽出装置60と電圧判定装置70とを備えている。
【0090】
注入周波数電圧抽出装置60の構成の一例を図10に示す。この注入周波数電圧抽出装置60は、アナログフィルタ61、62、A/D変換器63、ディジタルフィルタ64および離散フーリエ変換器65〜68を備えている。アナログフィルタ61から離散フーリエ変換器66までの構成は、図2に示した技術とほぼ同様のものである。
【0091】
自設備20の上記連系点18における電圧Vs は、アナログフィルタ61、62およびA/D変換器63を通した後、2経路に分岐され、一つはディジタルフィルタ64を通して離散フーリエ変換器65、66に与えられる。もう一つはディジタルフィルタ64を通さずに離散フーリエ変換器67、68に与えられる。
【0092】
アナログフィルタ61は、ディジタル処理用にサンプリングを行う際の折り返し雑音(エイリアシング)防止用のローパスフィルタ(アンチエイリアシングフィルタ)であり、例えば1kHz以上の信号を除去する。
【0093】
アナログフィルタ62は、配電系統1の基本波周波数成分(例えば60Hz)除去用のハイパスフィルタである。このアナログフィルタ62は必須ではないけれども、それを設ける方が好ましい。また、このアナログフィルタ62と上記アナログフィルタ61とを、両者の機能を有する一つのバンドパスフィルタで置き換えても良い。
【0094】
A/D変換器63は、アナログ信号をディジタル信号に変換するものである。
【0095】
ディジタルフィルタ64は、他群の注入周波数の電圧V21、V22のレベルが小さいので、それらを離散フーリエ変換器65、66でSN比良く抽出するためのQ値(共振の尖鋭度)の高いバンドパスフィルタであり、電圧V21およびV22を通過させる。
【0096】
離散フーリエ変換器65、66は、与えられた信号を離散フーリエ変換して、他群の注入周波数f21、f22の電圧V21、V22をそれぞれ抽出して出力する。両電圧V21、V22は、前述したように、図9に示した同期制御装置50にも供給される。
【0097】
離散フーリエ変換器67、68は、与えられた信号を離散フーリエ変換して、自群の注入周波数f11、f12の電圧V11、V12をそれぞれ抽出して出力する。
【0098】
上記アナログフィルタ61から離散フーリエ変換器66までが、自設備20の連系点18における電圧Vs から、他群の注入周波数の電圧V21、V22を抽出する他群電圧抽出手段を構成している。
【0099】
上記アナログフィルタ61、62、A/D変換器63および離散フーリエ変換器67、68が、自設備20の連系点18における電圧Vs から、自群の注入周波数の電圧V11、V12を抽出する手段であって、上記他群電圧抽出手段よりも応答性の速い自群電圧抽出手段を構成している。一般的にQ値の高いフィルタ64は応答性が悪く、そのようなQ値の高いフィルタ64を含んでいないので、この自群電圧抽出手段の方が応答性が速い。
【0100】
上記Q値の高いフィルタ64を設ける代わりに、離散フーリエ変換器65、66における計測期間を長くして周波数分解能を高くしても良く、そのようにすればQ値の高いフィルタを設けたのと同様の効果が得られる。その場合は、この離散フーリエ変換器65、66よりも上記離散フーリエ変換器67、68の計測期間を短くすれば良く、それによって、自群電圧抽出手段の方の応答性を速くすることができる。
【0101】
自群の注入周波数の電圧V11、V12は、他群の注入周波数の電圧V21、V22よりも電圧レベルが大きいので(その詳しい説明は後述する)、Q値の高いフィルタ64を設けなくても、あるいは離散フーリエ変換器67、68の計測期間を短くしても、当該電圧V11、V12を離散フーリエ変換器67、68でSN比良く抽出することができる。
【0102】
電圧判定装置70の構成の一例を図11に示す。この電圧判定装置70は、絶対値演算器72、73、判定器74、75、AND回路76、絶対値演算器78、79、判定器80、81、AND回路82、83および継続時間判定器84を備えている。絶対値演算器72からAND回路76までの構成は、図2に示した技術とほぼ同様のものであるが、判定値を他群電圧判定値J3 としている点が異なる。
【0103】
絶対値演算器72、73は、それぞれ、注入周波数電圧抽出装置60から与えられる電圧V21、V22の絶対値|V21|、|V22|を演算して出力する。
【0104】
判定器74、75は、それぞれ、絶対値演算器72、73から与えられる上記絶対値|V21|、|V22|を他群電圧判定値J3 と比較して、絶対値|V21|、|V22|が他群電圧判定値J3 を超えているときに、自設備20の分散電源28が単独運転になったことを表す検出信号D1 、D2 をそれぞれ出力する。
【0105】
なお、両判定器74、75における他群電圧判定値J3 は、互いに同じ値にするのが簡単で良いけれども、互いに異なる値にしても良い。後述する判定器80、81における自群電圧判定値J4 および判定器90、91における第2の自群電圧判定値J5 についても同様である。
【0106】
AND回路76は、両検出信号D1 、D2 の論理積を取って、両検出信号D1 、D2 が共に出力されているときに、自設備20の分散電源28が単独運転になったことを表す検出信号D3 を出力する。自設備20の分散電源28が単独運転になると、自設備20の連系点18から見た配電系統1のアドミタンスが小さくなって、上記他群の注入周波数の電圧V21、V22が上昇するので、上記検出信号D3 が出力される。
【0107】
上記絶対値演算器72からAND回路76までが、他群の注入周波数の電圧V21、V22を用いて、自設備20の分散電源28が単独運転になったことを判定する他群電圧判定手段を構成している。
【0108】
なお、注入周波数の電圧については、上記注入周波数電圧抽出装置60のように、一組の注入周波数の両方の注入周波数の電圧V21、V22を抽出し、かつ上記電圧判定装置70のように、当該両方の電圧V21、V22の判定結果のAND条件で検出信号D3 を出力するようにすると、単独運転検出を慎重に行って不要検出をより確実に防止することができるので好ましいけれども、いずれか一方の周波数の電圧(V21またはV22)のみを抽出して判定するようにしても良い。その場合はAND回路76は不要である。
【0109】
上記のことは、自群の注入周波数の電圧V11、V12の抽出および判定についても同様である。また、電圧判定装置70の後述する他の例においても同様である。
【0110】
絶対値演算器78、79は、それぞれ、注入周波数電圧抽出装置60から与えられる電圧V11、V12の絶対値|V11|、|V12|を演算して出力する。
【0111】
判定器80、81は、それぞれ、絶対値演算器78、79から与えられる上記絶対値|V11|、|V12|を自群電圧判定値J4 と比較して、絶対値|V11|、|V12|が自群電圧判定値J4 を超えているときに、自設備20の分散電源28が単独運転になったことを表す検出信号D4 、D5 をそれぞれ出力する。
【0112】
AND回路82は、両検出信号D4 、D5 の論理積を取って、両検出信号D4 、D5 が共に出力されているときに、自設備20の分散電源28が単独運転になったことを表す検出信号D6 を出力する。自設備20の分散電源28が単独運転になると、自設備20の連系点18から見た配電系統1のアドミタンスが小さくなって、上記自群の注入周波数の電圧V11、V12が上昇するので、上記検出信号D6 が出力される。
【0113】
上記絶対値演算器78からAND回路82までが、自群の注入周波数の電圧V11、V12を用いて、自設備20の分散電源28が単独運転になったことを判定する自群電圧判定手段を構成している。
【0114】
AND回路83(論理積手段)は、上記二つの検出信号D3 、D6 の論理積を取って、両検出信号D3 、D6 が共に出力されているときに検出信号D7 を出力する。
【0115】
上記検出信号D7 を単独運転検出信号としてこの電圧判定装置70から出力しても良いけれども、それよりも、この例のように、継続時間判定器84によって、検出信号D7 が所定の継続確認時間T1 のあいだ継続していることを判定して継続したときに単独運転検出信号DSを出力するようにするのが好ましい。そのようにすると、単独運転以外の何らかの原因による電圧Vs 等の瞬時の変動による誤検出を防止することができる。この継続確認時間T1 は、それを長くすると、その分、単独運転検出が遅くなるので、例えば20m秒程度にすれば良い。この例ではこの単独運転検出信号DSの出力によって、単独運転検出装置100は、最終的に、それが設けられている自設備20内の分散電源28が単独運転になったことを検出したことになる。
【0116】
単独運転検出装置100による単独運転検出後に分散電源28の解列を行うには、例えば、上記単独運転検出信号DSによって図7に示すスイッチ22を開放すれば良い。
【0117】
上記他群の注入周波数の電圧V21、V22と、自群の注入周波数の電圧V11、V12とを比べると、先に表2に示した特徴のあることが分かった。
【0118】
これを図20を参照して説明する。図20は、図6および図16に示す分散電源連系システムを簡略化して示す等価回路図である。この図20では、説明を簡単にするために次のように表している。
【0119】
即ち、上記変圧器6のインピーダンスを含めた上位系統2のインピーダンスをZs 、それに注入電流から見て並列な高圧の負荷11のインピーダンスをZHL、変圧器14のインピーダンスをZt 、それに注入電流から見て並列な低圧の負荷のインピーダンスをZLLで表している。
【0120】
また、自群および他群の注入周波数は、それぞれ、一つの周波数で代表させている(即ちこの例では前述したf11とf21で代表させているが、f12とf22の場合も同様である)。そして、同じ配電用変圧器14に接続されている自群の分散電源保有設備20の電流注入装置40からの注入電流の合計をI11、高圧配電線10への他群の分散電源保有設備20の電流注入装置40からの注入電流の合計をI21、自設備20の連系点18における自群の注入周波数の電圧をV11、他群の注入周波数の電圧をV21で表している。
【0121】
更に、上記各インピーダンス、各電圧および各電流は、統一して、全て高圧側に換算した値として扱う。
【0122】
一般的にZHL≫Zs 、ZLL≫Zt であるので、定常時は、それらZHL、ZLLを無視すると、連系点18における上記電圧V11、V21は次式で表される。
【0123】
[数9]
11≒(Zs +Zt )・I11
21≒Zs ・I21
【0124】
ここで、I11≒I21とすると、一般的にZt ≫Zs であるから、V11≫V21となる。即ち、連系点18における電圧レベルは、表2に示したように、他群の注入周波数の電圧V21よりも自群の注入周波数の電圧V11の方が遥かに大きくなる。
【0125】
定常時の電圧レベルの大小と、系統過渡変動の影響の受けやすさの大小とは逆の関係にあるので、表2に示したように、自群の注入周波数の電圧V11よりも他群の注入周波数の電圧V21の方が系統過渡変動の影響を受けやすい。
【0126】
変電所4の遮断器8が開放されて単独運転が発生したときの、連系点18における上記電圧V11、V21は次式で表される。ここでも、上述したようにZLL≫Zt であるのでZLLは無視している。
【0127】
[数10]
11≒(ZHL+Zt )・I11
21≒ZHL・I21
【0128】
上記数9の状態から数10の状態への変化の際、大まかに言えばZt ≒ZHL≫Zs であるので、電圧V11は約2倍程度になるのに対して、電圧V21は数十倍程度にもなる。即ち、単独運転発生時の電圧の変化は、表2に示したように、自群の注入周波数の電圧V11よりも他群の注入周波数の電圧V21の方が遥かに大きくなる。
【0129】
各組を成す他の周波数の電圧、即ち、自群の注入周波数の電圧V12と他群の注入周波数の電圧V22との関係についても、上記と同様である。
【0130】
図20中の開閉器13については後述する。
【0131】
図3〜図5の場合と同じ前記シミュレーションモデルを用いて、自群の注入周波数の電圧V11、V12の変化をシミュレーションした結果の一例を図13〜図15に示す。自群の注入周波数の電圧V11、V12の測定には、図10に示した注入周波数電圧抽出装置60中のものと同様の回路を用いた。これと先の(即ち図3〜図5の)シミュレーション結果を比べると次のことが分かる。
【0132】
定常時の自群の注入周波数の電圧V11、V12のレベルは、図3〜図5に示した他群の注入周波数の電圧V21、V22に比べて数十倍程度大きいことが分かる。
【0133】
力率改善用コンデンサ(略称SC)の投入時、即ち系統過渡変動時の自群の注入周波数の電圧V11、V12の変化は定常時の1.5倍以下であり、定常時の3〜4倍程度になる前記他群の注入周波数の電圧V21、V22の変化に比べて小さく、従って自群の注入周波数の電圧V11、V12は系統過渡変動の影響を受けにくいことが分かる。
【0134】
反面、単独運転発生時の自群の注入周波数の電圧V11、V12の変化は、定常時の約2倍程度であり、定常時の数十倍程度になる前記他群の注入周波数の電圧V21、V22の変化に比べて小さいことが分かる。
【0135】
以上を総合すると、上記電圧判定装置70を構成する自群電圧判定手段用の上記自群電圧判定値J4 は、例えば定常時の電圧V11、V12の1.5倍程度に設定すれば良く、そのようにすれば、系統過渡変動時の不要検出を防止すると共に、自設備20の分散電源28の単独運転を確実に検出することができる。図13〜図15中の自群電圧判定値J4 は、定常時の1.5倍にした例である。
【0136】
このように、シミュレーションによっても、上記表2に示した特徴が確かめられた。
【0137】
以上の説明から分かるように、自群の注入周波数の電圧V11、V12は大きいので、前述したように、注入周波数電圧抽出装置60を構成している自群電圧抽出手段の応答性を速くしても、当該電圧V11、V12をSN比良く抽出することができる。しかも当該応答性を速くすることによって、自群電圧判定手段による分散電源28の単独運転の検出速度を高めることができる。
【0138】
例えば、図15に示すように、自群電圧判定値J4 を定常時の1.5倍に設定している場合、単独運転発生時は、時刻t8 で電圧V12が判定値J4 を超えるので上記検出信号D5 が出力され、時刻t9 (単独運転発生後約25m秒)で電圧V11が判定値J4 を超えるので上記検出信号D4 が出力され、その時点でAND条件が成立して、単独運転検出を表す上記検出信号D6 が出力される。この場合は、前述した図5において定常時の5倍の判定値J1 を採用している従来技術の単独運転検出に要する時間(約65m秒)に比べて約40(=65−25)m秒速い。
【0139】
更に、自群の注入周波数の電圧V11、V12は大きいので、配電系統1の過渡変動の影響を受けにくく、従って不要検出を起こしにくい。しかし、分散電源28の単独運転時の自群の注入周波数の電圧変化は小さいので、自群の注入周波数の電圧V11、V12による単独運転検出のみでは、単独運転検出の信頼性は低くなる。
【0140】
一方、単独運転時の他群の注入周波数の電圧V21、V22の変化は大きいので、単独運転検出の信頼性は高い。また、上記のように不要検出を起こしにくい自群の注入周波数の電圧V11、V12による単独運転検出と論理積(AND)を取ることによって、配電系統1の過渡変動時の不要検出を抑制することができるので、電圧判定装置70を構成する他群電圧判定手段の上記他群電圧判定値J3 を小さくして単独運転の検出速度を高めることができる。例えば、当該判定値J3 を、図3〜図5に示した判定値J2 と同じ、定常時の2倍程度に設定することができる。2倍に設定した場合は、図5を参照して説明したように、単独運転発生後の時刻t5 (約50m秒)で単独運転を検出することができるので、定常時の約5倍の判定値J1 を採用している従来技術の単独運転検出時間(約65m秒)に比べて約15(=65−50)m秒速い。この約15m秒の差が持つ効果が大きいことは、前述したとおりである。
【0141】
即ち、検出時間を約15m秒短縮することができるので、単独運転の高速検出が可能になる。また、上記継続確認時間T1 を長くして、不要検出抑制の性能を高めることもできる。
【0142】
上記シミュレーション結果および表2に示した特徴からも分かるように、自群の注入周波数の電圧V11、V12の方が変化が小さいので、定常時電圧に対する上記自群電圧判定値J4 の倍率は、上記他群電圧判定値J3 の倍率よりも小さくするのが好ましい。この実施形態では、上記のように、自群電圧判定値J4 の倍率を1.5倍、他群電圧判定値J3 の倍率を2倍にしている。
【0143】
上記のことをまとめると、前述した表3となる。即ち、この実施形態の単独運転検出装置100では、電圧判定装置70を構成する他群電圧判定手段の他群電圧判定値J3 を小さくして、他群の注入周波数の電圧V21、V22による単独運転検出を行うことができる。そのようにすると、先に図3〜図5を参照して説明したように、系統過渡変動時の不要検出の可能性は高まるけれども、上述したように単独運転の検出速度を高めることができる。
【0144】
一方、上記単独運転検出と併用している自群の注入周波数電圧V11、V12による単独運転検出では、注入周波数電圧抽出装置60を構成する自群電圧抽出手段の応答性を速くしているので、当該電圧V11、V12による単独運転の検出速度は高い。しかも、上記のように自群の注入周波数の電圧V11、V12は系統過渡変動の影響を受けにくいので、不要検出の可能性は小さい。
【0145】
そして、電圧判定装置70において、上記のような特徴を有する他群の注入周波数の電圧V21、V22による判定結果(即ち検出信号D3 )と、自群の注入周波数の電圧V11、V12による判定結果(即ち検出信号D6 )との論理積を取って単独運転を検出する(即ち検出信号D7 ひいては単独運転検出信号DSを出力する)ようにしているので、配電系統1の過渡変動時の不要検出の抑制と、分散電源28の単独運転の高速検出を両立させることができる。しかも、上記2要素の論理積を取ることによって、1要素(例えば自群の注入周波数電圧のみによる単独運転検出)の場合に比べて不要検出の可能性を減らすことができるので、単独運転検出の信頼性を高めることができる。
【0146】
(4)電圧判定装置70の構成の他の例
以下においては、電圧判定装置70の構成の他の例を、図11に示したものとの相違点を主体に説明する。
【0147】
電圧判定装置70は、図12に示す構成でも良い。この電圧判定装置70においては、上記絶対値演算器72からAND回路76までの他群電圧判定手段のすぐ後に、上記検出信号D3 が継続確認時間T2 のあいだ継続していることを判定して継続したときに検出信号D8 を出力する継続時間判定器85(他群電圧継続判定手段)を設け、上記絶対値演算器78からAND回路82までの自群電圧判定手段のすぐ後に、上記検出信号D6 が継続確認時間T3 のあいだ継続していることを判定して継続したときに検出信号D9 を出力する継続時間判定器86(自群電圧継続判定手段)を設けている。そして、AND回路88(論理積手段)において両検出信号D8 、D9 の論理積を取って両検出信号D8 、D9 が共に出力されているときに上記単独運転検出信号DSを出力するようにしている。
【0148】
図12に示す電圧判定装置70によれば、他群電圧継続判定用の継続時間判定器85と自群電圧継続判定用の継続時間判定器86とを備えているので、両継続時間判定器85、86における継続確認時間T2 、T3 を、互いに独立して、配電系統1に過渡変動が発生しても不要検出を抑制するのに都合の良い時間にすることができる。しかもそのようにしても、無駄な待ち時間を無くすることができるので、単独運転検出時間が長くなるのを抑えることができる。従って、系統過渡変動時の不要検出の抑制と、分散電源28の単独運転の高速検出とをより効果的に両立させることができる。
【0149】
例えば、図5を参照して説明したように、他群電圧判定値J3 の場合の他群の注入周波数電圧による単独運転検出時刻t5 (約50m秒)よりも、図15を参照して説明したように、自群電圧判定値J4 の場合の自群の注入周波数電圧による単独運転検出時刻t9 (約25m秒)の方が速いので、T2 <T3 に設定することができる。より具体例を挙げると、T2 は20m秒、T3 は40m秒に設定しても良い。その場合に、上記検出信号D8 が出力されるまでの時間は約70(=約50+20)m秒となり、上記検出信号D9 が出力されるまでの時間は約65(=約25+40)m秒となるので、上記単独運転検出信号DSは単独運転発生後約70m秒で出力されることになる。これは、前述した100m秒以内を十分に満たしている。
【0150】
上記約70m秒というのは、図11に示した電圧判定装置70中の継続時間判定器84における継続確認時間T1 を20m秒に設定した場合と同じ速さであるけれども、図12に示す電圧判定装置70では継続時間判定器86における継続確認時間T3 を40m秒というように長く取ることができるので、自群の注入周波数電圧側の不要検出抑制の性能をより高めることができる。従って単独運転検出の信頼性をより向上させることができる。
【0151】
ところで、図16に示す例のように、高圧配電線10と配電用変圧器14との間に開閉器(例えば高圧カットアウト)13が設けられている場合がある。この開閉器13が開放されると、その開閉器13のラインの低圧配電線16に接続されている分散電源保有設備20内の分散電源28は単独運転になる。これを低圧バンクにおける単独運転と呼ぶことにする。
【0152】
この低圧バンクにおける単独運転は、他群の注入周波数の電圧の増大を検出する前述したような手段では検出することはできない。開閉器13の開放によって他群の注入周波数の電圧を測定することができなくなるからである(図20も参照)。
【0153】
ところが、上記低圧バンクにおける単独運転時は、自群の注入周波数の電圧が大きく増大するので、これを利用することによって当該単独運転を検出することができる。
【0154】
これを前述した図20を参照して先と同じ条件で説明すると、自設備の連系点18における自群の注入周波数の電圧V11は、開閉器13が開放されると次式で表される。
【0155】
[数11]
11≒ZLL・I11
【0156】
これと、先に数9に示した定常時の電圧V11とを比べると、一般的にZLL≫Zt ≫Zs であるので、数11の電圧V11の方が遥かに大きくなる。
【0157】
図3〜図5および図13〜図15の場合と同じ前記シミュレーションモデルを用いて、力率改善用コンデンサ(略称SC)の投入時と低圧バンクにおける単独運転発生時の、自群の注入周波数の電圧V11、V12の変化をシミュレーションした結果の一例を図17に示す。この図17は図13に対応しているが、縦軸の目盛の違いに注目されたい。低圧バンクにおける単独運転発生時に、電圧V11、V12は、定常時の約4倍程度に上昇している。
【0158】
上述した低圧バンクにおける単独運転をも検出することができるようにした電圧判定装置70の例を次に説明する。
【0159】
図18に示す電圧判定装置70は、図11に示した電圧判定装置70に、判定器90、91、AND回路92、継続時間判定器93およびOR回路94を追加したものである。この場合、上記継続時間判定器84から出力される信号は、単独運転検出信号DSとはせずに検出信号D10とし、それをOR回路94に供給する。
【0160】
判定器90、91は、それぞれ、絶対値演算器78、79から与えられる上記絶対値|V11|、|V12|を第2の自群電圧判定値J5 と比較して、絶対値|V11|、|V12|が自群電圧判定値J5 を超えているときに、自設備20の分散電源28が単独運転になったことを表す検出信号D11、D12をそれぞれ出力する。第2の自群電圧判定値J5 は、例えば定常時の電圧V11、V12の2倍程度に設定すれば良い。図17中の判定値J5 は2倍にした例である。
【0161】
AND回路92は、両検出信号D11、D12の論理積を取って、両検出信号D11、D12が共に出力されているときに、自設備20の分散電源28が単独運転になったことを表す検出信号D13を出力する。図17の例では、時刻t10にAND条件が成立するので検出信号D13が出力される。
【0162】
上記絶対値演算器78、79および絶対値演算器90からAND回路92までが、自群の注入周波数の電圧V11、V12を用いて、自設備20の分散電源28が単独運転になったことを判定する第2の自群電圧判定手段を構成している。
【0163】
この図18に示す電圧判定装置70の場合も、OR回路94(論理和手段)によって上記検出信号D7 およびD13の論理和を取って、両検出信号D7 、D13の少なくとも一方が出力されているときに前記単独運転検出信号DSを出力するようにしても良いけれども、継続時間判定器84について図7を参照して説明したのと同様の理由によって、この例のように上記継続時間判定器84(他群電圧継続判定手段)および継続時間判定器93(自群電圧継続判定手段)を設けておいて、OR回路94によって両継続時間判定器84、93からの検出信号D10、D14の論理和を取って、両検出信号D10、D14の少なくとも一方が出力されているときに上記単独運転検出信号DSを出力するのが好ましい。
【0164】
継続時間判定器93における継続確認時間T4 は、例えば0.5秒に設定すれば良い。これは、次の非特許文献1において、この発明のような能動的方式の単独運転検出装置においては、低圧バンクにおける単独運転時の解列時限は0.5秒以上1秒以内に整定することが記載されており、上記継続確認時間T4 を0.5秒にすればこれに従うことができるからである。
【0165】
非特許文献1:「系統連系規程」、JEAC 9701−2006、社団法人日本電気協会 系統連系専門部会、平成18年8月30日第4版第2刷発行、50頁
【0166】
以上のように、図18に示す電圧判定装置70によれば、図11に示した電圧判定装置70が奏する効果に加えて、他群の注入周波数の電圧V21、V22の判定では検出することのできない、低圧バンクにおける単独運転の検出をも行うことができる、という効果を奏することができる。
【0167】
図19に示す電圧判定装置70は、図12に示した電圧判定装置70に、上記判定器90、91、AND回路92、継続時間判定器93およびOR回路94を追加したものである。この場合、上記AND回路88から出力される信号は、単独運転検出信号DSとはせずに検出信号D15とし、それをOR回路94に供給する。
【0168】
従ってこの電圧判定装置70も、図18に示した電圧判定装置70の場合と同様の作用効果を奏することができる。即ち、図19に示す電圧判定装置70によれば、図12に示した電圧判定装置70が奏する効果に加えて、他群の注入周波数の電圧V21、V22の判定では検出することのできない、低圧バンクにおける単独運転の検出をも行うことができる、という効果を奏することができる。
【0169】
なお、上記分散電源保有設備20の全てが、必ずしも上記単独運転検出装置100を採用している必要はない。例えば、上記単独運転検出装置100の代わりに、図2に示した従来の単独運転検出装置300または上記特許文献1に記載の単独運転検出装置等を採用していても良い。上記単独運転検出装置100は、それが適用される分散電源保有設備20について、上述した効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0170】
1 配電系統
10 高圧配電線
16 低圧配電線
18 連系点
20 分散電源保有設備
28 分散電源
40 電流注入装置
50 同期制御装置
60 注入周波数電圧抽出装置
70 電圧判定装置
100 単独運転検出装置
s 連系点の電圧
inj 注入電流
11、V12、V21、V22 注入周波数の電圧
DS 単独運転検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(a)分散電源をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備が第1群と第2群との2群に分類されて配電系統に接続されていて、
(b)うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差は両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数はそれぞれ異なると共に前記配電系統の基本波周波数とも異なる第1組および第2組の注入周波数を用いて、
(c)前記第1群に属する各分散電源保有設備は、前記第1組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(d)前記第2群に属する各分散電源保有設備は、前記第2組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(e)かつ、自分の分散電源保有設備を自設備、当該自設備が属する方の群を自群、属さない方の群を他群と呼ぶと、両群の各分散電源保有設備は、自設備から注入する前記注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備から注入する前記注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御手段をそれぞれ有している、
という分散電源連系システムを構成している自設備内の分散電源の単独運転を検出して単独運転検出信号を出力する単独運転検出装置であって、
(2)自設備と前記配電系統との連系点における電圧から、他群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の前記注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を抽出する他群電圧抽出手段と、
(3)自設備と前記配電系統との連系点における電圧から、自群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の前記注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を抽出する手段であって、前記他群電圧抽出手段よりも応答性の速い自群電圧抽出手段と、
(4)前記他群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を他群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第1の検出信号を出力する他群電圧判定手段と、
(5)前記自群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を自群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第2の検出信号を出力する自群電圧判定手段と、
(6)前記第1の検出信号および第2の検出信号の論理積を取って、両検出信号が共に出力されているときに前記単独運転検出信号を出力する論理積手段とを備えている、ことを特徴とする分散電源の単独運転検出装置。
【請求項2】
(1)(a)分散電源をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備が第1群と第2群との2群に分類されて配電系統に接続されていて、
(b)うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差は両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数はそれぞれ異なると共に前記配電系統の基本波周波数とも異なる第1組および第2組の注入周波数を用いて、
(c)前記第1群に属する各分散電源保有設備は、前記第1組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(d)前記第2群に属する各分散電源保有設備は、前記第2組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(e)かつ、自分の分散電源保有設備を自設備、当該自設備が属する方の群を自群、属さない方の群を他群と呼ぶと、両群の各分散電源保有設備は、自設備から注入する前記注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備から注入する前記注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御手段をそれぞれ有している、
という分散電源連系システムを構成している自設備内の分散電源の単独運転を検出して単独運転検出信号を出力する単独運転検出装置であって、
(2)自設備と前記配電系統との連系点における電圧から、他群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の前記注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を抽出する他群電圧抽出手段と、
(3)自設備と前記配電系統との連系点における電圧から、自群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の前記注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を抽出する手段であって、前記他群電圧抽出手段よりも応答性の速い自群電圧抽出手段と、
(4)前記他群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を他群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第1の検出信号を出力する他群電圧判定手段と、
(5)前記自群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を自群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第2の検出信号を出力する自群電圧判定手段と、
(6)前記第1の検出信号が第1の継続確認時間のあいだ継続していることを判定して継続したときに第3の検出信号を出力する他群電圧継続判定手段と、
(7)前記第2の検出信号が第2の継続確認時間のあいだ継続していることを判定して継続したときに第4の検出信号を出力する自群電圧継続判定手段と、
(8)前記第3の検出信号および第4の検出信号の論理積を取って、両検出信号が共に出力されているときに前記単独運転検出信号を出力する論理積手段とを備えている、ことを特徴とする分散電源の単独運転検出装置。
【請求項3】
(1)(a)分散電源をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備が第1群と第2群との2群に分類されて配電系統に接続されていて、
(b)うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差は両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数はそれぞれ異なると共に前記配電系統の基本波周波数とも異なる第1組および第2組の注入周波数を用いて、
(c)前記第1群に属する各分散電源保有設備は、前記第1組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(d)前記第2群に属する各分散電源保有設備は、前記第2組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(e)かつ、自分の分散電源保有設備を自設備、当該自設備が属する方の群を自群、属さない方の群を他群と呼ぶと、両群の各分散電源保有設備は、自設備から注入する前記注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備から注入する前記注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御手段をそれぞれ有している、
という分散電源連系システムを構成している自設備内の分散電源の単独運転を検出して単独運転検出信号を出力する単独運転検出装置であって、
(2)自設備と前記配電系統との連系点における電圧から、他群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の前記注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を抽出する他群電圧抽出手段と、
(3)自設備と前記配電系統との連系点における電圧から、自群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の前記注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を抽出する手段であって、前記他群電圧抽出手段よりも応答性の速い自群電圧抽出手段と、
(4)前記他群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を他群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第1の検出信号を出力する他群電圧判定手段と、
(5)前記自群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を第1の自群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第2の検出信号を出力する第1の自群電圧判定手段と、
(6)前記第1の検出信号および第2の検出信号の論理積を取って、両検出信号が共に出力されているときに第3の検出信号を出力する論理積手段と、
(7)前記自群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を、前記第1の自群電圧判定値よりも大きい第2の自群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第4の検出信号を出力する第2の自群電圧判定手段と、
(8)前記第3の検出信号および第4の検出信号の論理和を取って、両検出信号の少なくとも一方が出力されているときに前記単独運転検出信号を出力する論理和手段とを備えている、ことを特徴とする分散電源の単独運転検出装置。
【請求項4】
(1)(a)分散電源をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備が第1群と第2群との2群に分類されて配電系統に接続されていて、
(b)うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差は両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数はそれぞれ異なると共に前記配電系統の基本波周波数とも異なる第1組および第2組の注入周波数を用いて、
(c)前記第1群に属する各分散電源保有設備は、前記第1組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(d)前記第2群に属する各分散電源保有設備は、前記第2組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入手段をそれぞれ有しており、
(e)かつ、自分の分散電源保有設備を自設備、当該自設備が属する方の群を自群、属さない方の群を他群と呼ぶと、両群の各分散電源保有設備は、自設備から注入する前記注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備から注入する前記注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御手段をそれぞれ有している、
という分散電源連系システムを構成している自設備内の分散電源の単独運転を検出して単独運転検出信号を出力する単独運転検出装置であって、
(2)自設備と前記配電系統との連系点における電圧から、他群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の前記注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を抽出する他群電圧抽出手段と、
(3)自設備と前記配電系統との連系点における電圧から、自群の分散電源保有設備が注入電流に採用している組の前記注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を抽出する手段であって、前記他群電圧抽出手段よりも応答性の速い自群電圧抽出手段と、
(4)前記他群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を他群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第1の検出信号を出力する他群電圧判定手段と、
(5)前記自群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を第1の自群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第2の検出信号を出力する第1の自群電圧判定手段と、
(6)前記第1の検出信号が第1の継続確認時間のあいだ継続していることを判定して継続したときに第3の検出信号を出力する他群電圧継続判定手段と、
(7)前記第2の検出信号が第2の継続確認時間のあいだ継続していることを判定して継続したときに第4の検出信号を出力する第1の自群電圧継続判定手段と、
(8)前記第3の検出信号および第4の検出信号の論理積を取って、両検出信号が共に出力されているときに第5の検出信号を出力する論理積手段と、
(9)前記自群電圧抽出手段で抽出した前記注入周波数の電圧を、前記第1の自群電圧判定値よりも大きい第2の自群電圧判定値と比較して、前者が後者を超えているときに、自設備の分散電源が単独運転になったことを表す第6の検出信号を出力する第2の自群電圧判定手段と、
(10)前記第6の検出信号が第3の継続確認時間のあいだ継続していることを判定して継続したときに第7の検出信号を出力する第2の自群電圧継続判定手段と、
(11)前記第5の検出信号および第7の検出信号の論理和を取って、両検出信号の少なくとも一方が出力されているときに前記単独運転検出信号を出力する論理和手段とを備えている、ことを特徴とする分散電源の単独運転検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−244578(P2011−244578A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113917(P2010−113917)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】