説明

分析装置、分析方法および分析プログラム

【課題】精度管理用試料の吸光度の時間変化パターンを取得しない場合であっても、分注処理に関する異常の有無の検出および異常個所の特定を適切に行うことができる分析装置、分析方法および分析プログラムを提供すること。
【解決手段】本発明にかかる分析装置1は、検体を反応容器に分注する検体分注処理および試薬を反応容器に分注する試薬分注処理を行い、反応容器内の液体の吸光度を測定して検体を分析する分析装置において、検体分注処理前後における吸光度の変化量が所定の第1の許容範囲を満たすか否かをもとに検体分注処理が正常に行われたか否かを判断し、または、試薬分注処理前後における吸光度の変化量が所定の第2の許容範囲を満たすか否かをもとに試薬分注処理が正常に行われたか否かを判断する異常判断部34を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、反応容器内の液体の吸光度を測定して検体を分析する分析装置、分析方法および分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、検体および1種類以上の試薬を反応容器に分注し、検体と試薬との化学変化を生じさせた後、この検体と試薬との反応溶液の吸光度を測定して検体を分析する自動分析装置が知られている。このような自動分析装置においては、検体および試薬の分注処理、攪拌処理、恒温処理および吸光度測定処理の各処理動作に異常が発生した場合、誤った測定結果が出力される場合がある。この場合、自動分析装置の操作者は、出力された測定結果を解析し異常の有無および異常が発生した箇所を特定して装置の異常個所の修理などを行う必要がある。しかし、測定結果の異常には複数の箇所が関与している場合があるため、異常の原因を特定するために多くの時間を要していた。
【0003】
ここで、近年、異常発生時における吸光度の時間変化パターンを複数記憶し、この記憶した吸光度の時間変化パターンと、検体測定時における吸光度の時間変化パターンとの一致度をもとに異常の有無を検出する自動分析装置が提案されている(特許文献1参照)。また、濃度が既知である精度管理用試料の装置動作正常時における吸光度の時間変化パターンおよび各箇所が異常である場合における吸光度の時間変化パターンをそれぞれ記憶し、定期的あるいは任意時に測定した精度管理用試料の吸光度の時間変化パターンと記憶した各時間変化パターンとを比較することによって、異常の有無の検出および異常発生箇所の特定を行う自動分析装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−275252号公報
【特許文献2】特開2003−57248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された自動分析装置においては、異常の発生を認識できるものの、異常が発生した箇所を特定することができなかった。言い換えると、特許文献1に記載された自動分析装置においては、自動分析装置における誤った測定結果が、検体の分注不良、試薬の分注不良、反応容器内の反応溶液の攪拌不良、反応溶液の温度制御不良、測光処理不良または反応容器に対する洗浄不良のいずれに起因するものであるかを特定することができなかった。
【0006】
また、特許文献2に記載された自動分析装置においては、精度管理用試料の吸光度を測定する必要があり、精度管理用試料を測定しない場合および精度管理用試料測定後に異常が発生した場合には、異常の有無の検出および異常が発生した箇所の特定を行うことができなかった。
【0007】
このように、従来技術にかかる自動分析装置においては、異常の有無の検出および異常個所の特定を適切に行うことができない場合があった。特に、試薬または検体の分注を行う分注機構は、微容量の試薬または検体を分注するため複雑かつ緻密な構造を有しており、分注処理の異常を検出するセンサなどを取り付けることが困難であった。このため、従来技術にかかる自動分析装置においては、特に分注処理に関する異常の有無の検出および異常個所の特定を適切に行うことが困難であった。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、精度管理用試料の吸光度の時間変化パターンを取得しない場合であっても、分注処理に関する異常の有無の検出および異常個所の特定を適切に行うことができる分析装置、分析方法および分析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、検体を反応容器に分注する検体分注処理および試薬を反応容器に分注する試薬分注処理を行い、前記反応容器内の液体の吸光度を測定して検体を分析する分析装置において、前記検体分注処理前後における吸光度の変化量が所定の第1の許容範囲を満たすか否かをもとに前記検体分注処理が正常に行われたか否かを判断し、または、前記試薬分注処理前後における吸光度の変化量が所定の第2の許容範囲を満たすか否かをもとに前記試薬分注処理が正常に行われたか否かを判断する判断手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、前記検体分注処理を行う検体分注手段と、前記試薬分注処理を行う試薬分注手段と、をさらに備え、前記判断手段は、前記検体分注処理前後における吸光度の変化量が前記所定の第1の許容範囲を満たさない場合に前記検体分注手段において異常が発生したおそれがあると判断し、または、前記試薬分注処理前後における吸光度の変化量が前記所定の第2の許容範囲を満たさない場合に前記試薬分注手段において異常が発生したおそれがあると判断することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析装置は、前記判断手段が前記検体分注手段において異常が発生したおそれがあると判断した場合に前記検体分注手段において異常が発生したおそれがある旨を出力し、または、前記判断手段が前記試薬分注手段において異常が発生したおそれがあると判断した場合に前記試薬分注手段において異常が発生したおそれがある旨を出力する出力手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる分析装置は、所定波長の光を前記反応容器に発し、該反応容器内の液体を透過した光を受光して分光強度測定を行う測光手段と、前記測光手段によって測定された分光強度をもとに前記反応容器内の液体の吸光度を演算する分析手段と、をさらに備え、前記判断手段は、前記分析手段によって演算された吸光度をもとに前記検体分注処理前後における吸光度の変化量および前記試薬分注処理前後における吸光度の変化量を取得することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる分析装置は、前記所定の第1の許容範囲および前記所定の第2の許容範囲は、前記検体に対する分析方法の内容に応じて予め求められることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる分析装置は、前記所定の第1の許容範囲および前記所定の第2の許容範囲を記憶する記憶手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる分析方法は、反応容器内の液体の吸光度を測定して検体を分析する分析方法において、前記検体を前記反応容器に分注する検体分注ステップと、前記検体分注ステップの前後に前記反応容器内の液体の吸光度を測定する第1の測定ステップと、前記第1の測定ステップにおいて測定された前記検体分注ステップ前後における吸光度の変化量が所定の第1の許容範囲を満たすか否かをもとに前記検体分注ステップが正常に行われたか否かを判断する第1の判断ステップと、前記試薬を前記反応容器に分注する試薬分注ステップと、前記試薬分注ステップの前後に前記反応容器内の液体の吸光度を測定する第2の測定ステップと、前記第2の測定ステップにおいて測定された前記試薬分注ステップ前後における吸光度の変化量が所定の第2の許容範囲を満たすか否かをもとに前記試薬分注ステップが正常に行われたか否かを判断する第2の判断ステップと、を含むことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる分析プログラムは、反応容器内の液体の吸光度を測定して検体を分析する分析プログラムにおいて、前記検体を前記反応容器に分注する分注処理を指示する検体分注手順と、前記検体分注手順の前後に前記反応容器内の液体の吸光度測定を指示する第1の測光手順と、前記第1の測光手順において測定された前記検体分注手順前後における吸光度の変化量が所定の第1の許容範囲を満たすか否かをもとに前記検体分注手順が正常に行われたか否かを判断する第1の判断手順と、前記試薬を前記反応容器に分注する分注処理を指示する試薬分注手順と、前記試薬分注手順の前後に前記反応容器内の液体の吸光度測定を指示する第2の測光手順と、前記第2の測光手順において測定された前記試薬分注手順前後における吸光度の変化量が所定の第2の許容範囲を満たすか否かをもとに前記試薬分注手順が正常に行われたか否かを判断する第2の判断手順と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検体分注処理前後における吸光度の変化量が所定の第1の許容範囲を満たすか否かをもとに検体分注処理が正常に行われたか否かを判断し、または、試薬分注処理前後における吸光度の変化量が所定の第2の許容範囲を満たすか否かをもとに試薬分注処理が正常に行われたか否かを判断するため、精度管理用試料の吸光度の時間変化パターンを取得しない場合であっても、分注処理に関する異常の有無の検出および異常個所の特定を適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である分析装置について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0019】
図1は、本実施の形態にかかる分析装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器21にそれぞれ分注し、反応容器21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学的、免疫学的あるいは遺伝学的な分析を自動的に行う。
【0020】
測定機構2は、大別して反応テーブル10、第1試薬庫11、第1試薬分注機構12、検体移送部13、検体分注機構14、第2試薬庫15、第2試薬分注機構16、攪拌部17、測光部18および洗浄部19を備える。また、制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、異常判断部34、記憶部35、出力部36および送受信部38を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0021】
反応テーブル10は、反応容器21への検体や試薬の分注、反応容器21の攪拌、洗浄または測光を行うために反応容器21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル10は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル10の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル10の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0022】
第1試薬庫11は、反応容器21内に分注される2種類の試薬のうち、最初に分注される第1試薬が収容された第1試薬容器11aを複数収納できる。第1試薬庫11には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には第1試薬容器11aが着脱自在に収納される。第1試薬庫11は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、第1試薬庫11の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の第1試薬容器11aを第1試薬分注機構12による試薬吸引位置まで移送する。第1試薬庫11の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、第1試薬庫11の下方には、恒温槽が設けられている。このため、第1試薬庫11内に第1試薬容器11aが収納され、蓋が閉じられたときに、第1試薬容器11a内に収容された試薬を恒温状態に保ち、第1試薬容器11a内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0023】
第1試薬容器11aの側面部には、第1試薬容器11aに収容された試薬に関する試薬情報が記録された記録媒体が付されている。記録媒体は、符号化された各種の情報を表示しており、光学的に読み取られる。
【0024】
第1試薬庫11の外周部には、この記録媒体を光学的に読み取る第1試薬読取部11bが設けられている。第1試薬読取部11bは、記録媒体に対して赤外光または可視光を発し、記録媒体からの反射光を処理することによって、記録媒体の情報を読み取る。また、第1試薬読取部11bは、記録媒体を撮像処理し、撮像処理によって得られた画像情報を解読して、記録媒体の情報を取得してもよい。
【0025】
第1試薬分注機構12は、検体の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアームを備える。アームは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。第1試薬分注機構12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電阻止を用いた吸排機構を備える。第1試薬分注機構12は、第1試薬庫11上の所定位置に移動された第1試薬容器11a内の試薬をプローブによって吸引し、アームを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル10上の所定位置に搬送された反応容器21に第1試薬を吐出して分注を行う。
【0026】
検体移送部13は、血液や尿等、液体である検体を収容した複数の検体容器13aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック13bを備える。検体移送部13上の所定位置に移送された検体容器13a内の検体は、検体分注機構14によって、反応テーブル10上に配列して搬送される反応容器21に分注される。
【0027】
検体分注機構14は、第1試薬分注機構12と同様に、検体の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアーム14aと、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構14は、上述した検体移送部13上の所定位置に移送された検体容器13aの中からプローブによって検体を吸引し、アーム14aを図中反時計回りに旋回させ、反応容器21に検体を吐出して分注を行う。
【0028】
第2試薬庫15は、反応容器21内に分注される2種類の試薬のうち検体が分注された後に分注される第2試薬が収容された第2試薬容器15aを複数収納できる。第2試薬庫15には、第1試薬庫11と同様に、第2試薬容器15aが着脱自在に収納される複数の収納室が設けられている。第2試薬庫15は、第1試薬庫11と同様に、時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の第2試薬容器15aを第2試薬分注機構16による試薬吸引位置まで移送する。第1試薬庫11と同様に、第2試薬庫15の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられ、第2試薬庫15の下方には、恒温槽が設けられている。第2試薬容器15aの側面部には、第1試薬容器11aと同様に、第2試薬容器15aに収容された第2試薬に関する試薬情報が記録された記録媒体が付されている。また、第2試薬庫15の外周部には、第1試薬読取部11bと同様の機能を有し第2試薬容器15aに付された記録媒体を光学的に読み取る第2試薬読取部15bが設けられている。
【0029】
第2試薬分注機構16は、第1試薬分注機構12と同様に、第2試薬の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアーム16aと、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備え、第2試薬庫15上の所定位置に移動された第2試薬容器15a内の試薬をプローブによって吸引後、反応テーブル10上の所定位置に搬送された反応容器21に第2試薬を吐出して分注を行う。反応容器21には、第1試薬、検体、第2試薬の順に各液が分注される。攪拌部17は、反応容器21に分注された第1試薬、検体および第2試薬の攪拌を行い、反応を促進させる。
【0030】
測光部18は、所定波長の光を反応容器21に発し、この反応容器21内の第1試薬、第1試薬と検体との混合溶液、または、第1試薬と検体と第2試薬試薬との反応溶液を通過した光を受光して分光強度測定を行う。測光部18は、所定波長の光を発する発光部18aと、反応容器21内の液体を通過した光を受光する受光部18bとを備える。測光部18は、第1試薬の分注処理、検体の分注処理、第2試薬の分注処理、攪拌処理の一連の処理が行われる間、所定時間ごとに反応容器21内の液体に対して分光強度測定を行う。測光部18は、たとえば、数秒ごとに分光強度測定を行う。測光部18による測定結果は、制御部31に出力され、分析部33において分析される。また、測光部18による測定結果は、異常判断部34における異常の有無の判断に用いられる。
【0031】
洗浄部19は、図示しないノズルによって、測光部18による測定が終了した反応容器21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行う。この洗浄した反応容器21は再利用されるが、検査内容によっては1回の測定終了後に反応容器21を廃棄してもよい。
【0032】
つぎに、制御機構3について説明する。制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部33は、測光部18によって測定された分光強度をもとに反応容器21内の第1試薬、第1試薬と検体との混合溶液、または、第1試薬と検体と第2試薬試薬との反応溶液の吸光度等を演算し、検体の成分分析等を行う。分析部33は、演算した吸光度を制御部31に出力する。測光部18は、第1試薬の分注処理、検体の分注処理、第2試薬の分注処理、攪拌処理の一連の処理が行われる間、所定時間ごとに反応容器21内の液体に対して分光強度測定を行うため、分析部33は、一連の処理の間における反応容器21内の液体における吸光度の時間変化パターンを分析結果として出力する。
【0033】
異常判断部34は、第1試薬分注処理前後における吸光度の変化量が所定の許容範囲を満たすか否かをもとに第1試薬分注処理が正常に行われたか否を判断する。異常判断部34は、第1試薬分注処理前後における吸光度の変化量が所定の許容範囲を満たさない場合に第1試薬分注機構12において異常が発生したおそれがあると判断する。また、異常判断部34は、検体分注処理前後における吸光度の変化量が所定の許容範囲を満たすか否かをもとに検体分注処理が正常に行われたか否かを判断する。異常判断部34は、検体分注処理前後における吸光度の変化量が所定の許容範囲を満たさない場合に検体分注機構14において異常が発生したおそれがあると判断する。また、異常判断部34は、第2試薬分注処理前後における吸光度の変化量が所定の許容範囲を満たすか否かをもとに第2試薬分注処理が正常に行われたか否かを判断する。異常判断部34は、第2試薬分注処理前後における吸光度の変化量が所定の許容範囲を満たさない場合には、第2試薬分注機構16において異常が発生したおそれがあると判断する。なお、異常判断部34は、第1試薬分注処理、検体分注処理および第2試薬分注処理のそれぞれに対応する所定の許容範囲を参照して、第1試薬分注機構12、検体分注機構14および第2試薬分注機構16における異常の発生の有無を判断する。また、異常判断部34は、分析部33において演算された吸光度を制御部31から入力されることによって、各分注処理前後における吸光度の変化量を取得し各分注機構における異常の発生の有無を判断する。
【0034】
記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。記憶部35は、異常判断部34における異常の有無の判断基準となる第1試薬分注処理、検体分注処理および第2試薬分注処理のそれぞれに対応する所定の許容範囲を記憶する。これらの各所定の許容範囲は、検体に対する分析方法の内容に応じて予め求められたものである。これらの各所定の許容範囲は、使用される第1試薬と第2試薬の種別、使用される第1試薬と第2試薬との分注量、反応容器に発せられる光の波長に応じて設定されるほか、検体を提供した提供者の年齢、検体を提供した提供者の性別などの検体を提供した提供者に関する情報に応じて設定されてもよい。各所定の許容範囲は、測光部18における分光強度測定および分析部33における吸光度演算処理を実際に行うことによって予め求められたものである。
【0035】
出力部36は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部36は、表示部37を有する。表示部37は、ディスプレイ等を用いて構成され、検体の分析結果などを表示する。表示部37は、異常判断部34が第1試薬分注機構12において異常が発生したおそれがあると判断した場合に第1試薬分注機構12において異常が発生したおそれがある旨を表示出力する。表示部37は、異常判断部34が検体分注機構14において異常が発生したおそれがあると判断した場合に検体分注機構14において異常が発生したおそれがある旨を表示出力する。表示部37は、異常判断部34が第2試薬分注機構16において異常が発生したおそれがあると判断した場合に第2試薬分注機構16において異常が発生したおそれがある旨を表示出力する。送受信部38は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行うインターフェースとしての機能を有する。
【0036】
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器21に対して、第1試薬分注機構12が第1試薬容器11a内の第1試薬を分注し、検体分注機構14が検体容器13a中の検体を分注し、第2試薬分注機構16が第2試薬容器15a中の試薬を分注した後、測光部18が検体と試薬とを反応させた状態の液体の分光強度測定を行い、この測定結果を分析部33が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄部19が測光部18による測定が終了した後に搬送される反応容器21を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0037】
つぎに、分析装置1による分注処理における異常の有無の判断および異常個所の特定について説明する。図2は、分析装置1における分注処理の異常の有無を判断する処理手順を示すフローチャートである。
【0038】
図2に示すように、分析装置1においては、制御部31の制御のもと、測定機構2および制御機構3の各構成部位の動作が開始し、測光部18および分析部33における吸光度測定も開始される(ステップS2)。
【0039】
異常判断部34は、第1試薬分注機構12による第1試薬分注処理前における吸光度P0を取得する(ステップS4)。つぎに、第1試薬分注機構12は、反応テーブル10上の所定位置に搬送された反応容器21内に第1試薬容器11a内の第1試薬を分注する第1試薬分注処理を行う(ステップS6)。異常判断部34は、所定時間経過後、第1試薬分注後における吸光度P1を取得する(ステップS8)。異常判断部34は、取得した吸光度P0および吸光度P1の差分値を求め、求めた差分値(P0−P1)が所定の許容範囲を満たすか否かを判断する(ステップS10)。
【0040】
異常判断部34は、差分値(P0−P1)が所定の許容範囲を満たしていないと判断した場合(ステップS10:No)、第1試薬分注機構12において異常が発生したおそれがあると判断し(ステップS12)、判断結果を制御部31に出力する。そして、表示部37は、第1試薬分注機構12において異常が発生したおそれがある旨を報知する警告を表示出力する警告処理を行う(ステップS14)。分析装置1の操作者は、表示部37に表示出力された警告を確認することによって、第1試薬分注機構12に異常が発生したおそれがあることを認識することができる。一方、異常判断部34は、差分値(P0−P1)が所定の許容範囲を満たすと判断した場合(ステップS10:Yes)、第1試薬分注処理は正常に行われたと判断する。
【0041】
そして、所定時間経過後、異常判断部34は、検体分注機構14による検体分注処理前における吸光度P2を取得する(ステップS16)。つぎに、検体分注機構14は、反応テーブル10上の所定位置に搬送された反応容器21内に検体容器13a内の検体を分注する検体分注処理を行う(ステップS18)。異常判断部34は、所定時間経過後、検体分注後における吸光度P3を取得する(ステップS20)。異常判断部34は、取得した吸光度P2および吸光度P3の差分値を求め、求めた差分値(P2−P3)が所定の許容範囲を満たすか否かを判断する(ステップS22)。
【0042】
異常判断部34は、差分値(P2−P3)が所定の許容範囲を満たしていないと判断した場合(ステップS22:No)、検体分注機構14において異常が発生したおそれがあると判断し(ステップS24)、判断結果を制御部31に出力する。そして、表示部37は、検体分注機構14において異常が発生したおそれがある旨を報知する警告を表示出力する警告処理を行う(ステップS26)。分析装置1の操作者は、表示部37に表示出力された警告を確認することによって、検体分注機構14に異常が発生したおそれがあることを認識することができる。一方、異常判断部34は、差分値(P2−P3)が所定の許容範囲を満たすと判断した場合(ステップS22:Yes)、検体分注処理は正常に行われたと判断する。
【0043】
そして、所定時間経過後、異常判断部34は、第2試薬分注機構16による第2試薬分注処理前における吸光度P4を取得する(ステップS28)。つぎに、第2試薬分注機構16は、反応テーブル10上の所定位置に搬送された反応容器21内に第2試薬容器15a内の第2試薬を分注する第2試薬分注処理を行う(ステップS30)。異常判断部34は、所定時間経過後、第2試薬分注後における吸光度P5を取得する(ステップS32)。異常判断部34は、取得した吸光度P4および吸光度P5の差分値を求め、求めた差分値(P5−P4)が所定の許容範囲を満たすか否かを判断する(ステップS34)。
【0044】
異常判断部34は、差分値(P5−P4)が所定の許容範囲を満たしていないと判断した場合(ステップS34:No)、第2試薬分注機構16において異常が発生したおそれがあると判断し(ステップS36)、判断結果を制御部31に出力する。そして、表示部37は、第2試薬分注機構16において異常が発生したおそれがある旨を報知する警告を表示出力する警告処理を行う(ステップS38)。分析装置1の操作者は、表示部37に表示出力された警告を確認することによって、第2試薬分注機構16に異常が発生したおそれがあることを認識することができる。一方、異常判断部34は、差分値(P5−P4)が所定の許容範囲を満たすと判断した場合(ステップS34:Yes)、第2試薬分注処理は正常に行われたと判断し、この反応容器21に対する第1試薬、検体、第2試薬の各分注処理は正常に終了した旨を制御部31に出力し、この反応容器21に対する異常の有無の判断処理を終了する。
【0045】
つぎに、異常判断部34における異常の有無の判断処理について具体的に説明する。図3は、分析部33によって出力された一連の処理の間における吸光度の時間変化パターンを例示する図であり、第1試薬、検体および第2試薬が正常に分注された場合に対応する。図3に示すように、吸光度は、第1試薬分注、検体分注および第2試薬分注時に変化する。第1試薬分注処理前には、反応容器21内に液体が収容されていないため、吸光度は大きな値を示す。そして、時間taにおいて第1試薬が反応容器21内に分注されることによって、吸光度は大きく低下する。そして、時間tbにおいて検体が分注されることによって、吸光度はさらに低下する。その後、時間tcにおいて第2試薬が分注されることによって、反応容器21内における検体、第1試薬および第2試薬との間の反応が進行し、この反応の進行にともなって吸光度は上昇する。そして、所定時間経過し反応が終了することによって、吸光度は一定値となる。分析部33は、反応終了後の吸光度をもとに検体に対する各種分析を行う。
【0046】
ここで、第1試薬分注処理が行われる時間ta前後の吸光度の時間変化について詳細に説明する。図4は、第1試薬分注処理前後における吸光度の時間変化を示す図である。図4に示すように、第1試薬分注処理前である時間t0では反応容器21内に液体が収容されていないため大きな吸光度P0を示す。そして、第1試薬が反応容器に正常に分注された場合、図4における曲線lanに示すように第1試薬分注後である時間t1では吸光度がP1の値まで大きく低下する。これに対し、第1試薬が反応容器に正常に分注されなかった場合、直線laeに示すように、反応容器には液体が分注されていないため吸光度に変化は認められず、時間t1においても吸光度はP0の値のままである。
【0047】
このように、第1試薬が反応容器に正常に分注された場合、分注された第1試薬の種別および分注量に応じて第1試薬分注処理前後における吸光度が変化する。分析装置1においては、第1試薬が正常に分注された場合における第1試薬分注処理前後の吸光度の変化量を予め求め、この求めた変化量をもとに第1試薬処理に対応する許容範囲を設定する。異常判断部34は、第1試薬分注処理前後における吸光度の変化量が設定された吸光度変化の許容範囲を満たすか否かを判断することによって第1試薬が正常に反応容器21内に分注されたか否かを判断している。
【0048】
具体的には、図5のテーブルTaに示すように、第1試薬分注処理に対応する許容範囲として、測定内容および測定対象に応じて許容範囲の下限値Ta1および許容範囲の上限値Ta2がそれぞれ設定されている。たとえば、分析装置1が測定内容「A」の測定を行う場合、異常判断部34は、図4に示す第1試薬分注処理前後の吸光度の変化量(P0−P1)の値Daが、図5の第1試薬欄に示す測定内容「A」の許容範囲の下限値150から許容範囲の上限値200の範囲内にあるか否かを判断する。異常判断部34は、変化量Daが許容範囲の下限値150から許容範囲の上限値200の範囲内にあると判断した場合、第1試薬分注処理が正常に行われたと判断する。
【0049】
一方、異常判断部34は、変化量Daが許容範囲の下限値150から許容範囲の上限値200の範囲内にないと判断した場合、第1試薬分注処理が正常に行われず、第1試薬分注処理に関する構成部位に故障が発生したおそれがあると判断する。第1試薬分注処理前後における吸光度の変化量が許容範囲の下限値未満である場合には、吸光度の変化量が小さい場合であるため、第1試薬分注処理において第1試薬が分注されていない分注不良、第1試薬が所定量よりも少ない容量しか分注されていない分注不良が考えられる。また、第1試薬分注処理前後における吸光度の変化量が許容範囲の上限値を超えている場合には、吸光度が大きく変化している場合であるため、第1試薬が所定量を超えて分注されている分注不良、第1試薬の変性、第1試薬の取り違えなどが考えられる。
【0050】
この場合、表示部37の表示画面上には、図6に示すように、「第1試薬が正常に分注されていないおそれがあります。第1試薬分注機構に故障がないか確認してください。」と示されたエラーメニューM1が表示され、操作者に第1試薬分注処理の異常および第1試薬分注機構の故障のおそれを報知する。このエラーメニューM1を確認することによって、操作者は、第1試薬分注処理の異常および第1試薬分注機構の故障のおそれを認識することができる。第1試薬分注処理の異常原因として、第1試薬分注機構12におけるプローブの詰まりによって所定量の第1試薬が分注されていない場合が考えられるほか、プローブの破損、第1試薬の変性、試薬取り違えが考えられる。さらに、測光部18の設定ズレ発生などが考えられる場合もある。操作者は、第1試薬分注機構の確認のほか、第1試薬の確認、測光部18の設定の確認を行うことによって、故障が発生した箇所を迅速に特定することができる。
【0051】
つぎに、検体分注処理が行われる時間tb前後の吸光度の時間変化について詳細に説明する。図7は、検体分注処理前後における吸光度の時間変化を示す図である。図7に示すように、検体分注処理前である時間t2においては吸光度P2を示す。そして、検体分注処理が終了し所定時間が経過した時間t3では、検体が正常に分注された場合、図7における曲線lbnに示すように吸光度がP3nの値まで低下する。これに対し、検体が正常に分注されなかった場合、反応容器21内には検体が分注されていないため、直線lbeに示すように吸光度に変化は認められず、時間t3においても吸光度はP2の値のままである。このように、検体が正常に分注された場合には検体分注処理前後における吸光度が変化する。このため、分析装置1においては、検体が正常に分注された場合における検体分注処理前後の吸光度の変化量を予め求め、この求めた変化量をもとに検体分注処理に対応する許容範囲を設定する。
【0052】
具体的には、図5のテーブルTaに示すように、検体分注処理に対応する許容範囲として、測定内容および測定対象に応じて許容範囲の下限値Tb1および許容範囲の上限値Tb2がそれぞれ設定されている。たとえば、分析装置1が測定内容「A」の測定を行う場合、異常判断部34は、図7に示す検体分注処理前後の吸光度の変化量(P2−P3n)の値Dbが、図5の行Rsの検体欄に示す測定内容「A」の許容範囲の下限値15から許容範囲の上限値25の範囲内にあるか否かを判断する。そして、異常判断部34は、変化量Dbが許容範囲の下限値15から許容範囲の上限値25の範囲内にないと判断した場合、検体分注処理が正常に行われず、検体分注処理に関する構成部位に故障が発生したおそれがあると判断する。検体分注処理前後における吸光度の変化量が、許容範囲の下限値未満である場合には検体が所定量よりも少ない容量しか分注されていない分注不良などが発生したおそれがあり、許容範囲の上限値を超えている場合には検体が所定量を超えて分注される分注不良が発生したおそれが考えられるためである。
【0053】
この場合、表示部37の表示画面上には、図8に示すように、「検体が正常に分注されていないおそれがあります。検体分注機構に故障がないか確認してください。」と示されたエラーメニューM2が表示され、操作者に検体分注処理の異常および検体分注機構の故障のおそれを報知する。なお、検体分注処理の異常原因として、検体分注機構14におけるプローブの詰まりやプローブの破損などが考えられる。
【0054】
そして、第2試薬分注処理が行われる時間tc前後の吸光度の時間変化について詳細に説明する。図9は、第2試薬分注処理前後における吸光度の時間変化を示す図である。図9に示すように、第2試薬分注処理前である時間t4においては吸光度P4nを示す。そして、第2試薬が正常に分注された場合には反応容器21内で反応が進行するため、第2試薬分注処理が終了し所定時間が経過した時間t5では、図9における曲線lcnに示すように吸光度がP5nの値まで大きく上昇する。これに対し、第2試薬が正常に分注されなかった場合、反応容器21内には第2試薬が分注されていないため、曲線lceに示すように吸光度に変化は認められず、時間t5においても吸光度はP4nの値のままである。このように、第2試薬が正常に反応容器に分注された場合も同様に、第2試薬分注処理前後における吸光度が変化する。このため、分析装置1においては、第2試薬が正常に分注された場合における第2試薬分注処理前後の吸光度の変化量を予め求め、この求めた変化量をもとに第2試薬分注処理時に対応する所定の許容範囲を設定する。
【0055】
具体的には、図5のテーブルTaに示すように、第2試薬分注処理前後における所定の許容範囲として、測定内容および測定対象に応じて許容範囲の下限値Tc1および許容範囲の上限値Tc2がそれぞれ設定されている。たとえば、分析装置1が測定内容「A」の測定を行う場合、異常判断部34は、図9に示す第2試薬分注処理前後の吸光度の変化量(P5n−P4n)の値Dcnが、図5の行Rsの第2試薬欄に示す測定内容「A」の許容範囲の下限値90から許容範囲の上限値120の範囲内にあるか否かを判断する。そして、異常判断部34は、変化量Dcnが許容範囲の下限値90から許容範囲の上限値120の範囲内にないと判断した場合、第2試薬分注処理が正常に行われず、第2試薬分注処理に関する構成部位に故障が発生したおそれがあると判断する。第2試薬分注処理前後における吸光度の変化量が、許容範囲の下限値未満である場合には第2試薬が所定量よりも少ない容量しか分注されていない分注不良などが発生したおそれがあり、許容範囲の上限値を超えている場合には第2試薬が所定量を超えて分注される分注不良が発生したおそれが考えられるためである。この場合、表示部37の表示画面上には、第2試薬分注処理の異常および第2試薬分注機構の故障のおそれを報知する警告が表示される。なお、第2試薬分注処理の異常原因として、第2試薬分注機構16におけるプローブの詰まり、プローブの破損、第2試薬の変性および試薬取り違えなどが考えられる。
【0056】
本実施の形態にかかる分析装置1は、第1試薬、検体および第2試薬の分注処理前後における吸光度の変化量が各所定の許容範囲を満たすか否かをもとに、第1試薬、検体および第2試薬の各分注処理に関する異常の有無の検出および分注処理に関する構成部位における異常個所の特定を行っている。このように、分析装置1は、従来技術においては困難であった分注処理における異常の有無の検出および異常個所の特定を簡易な判断処理で行うことができる。また、分析装置1は、検出した分注処理の異常および異常個所を報知する警告を表示出力するため、操作者は、この警告を確認することによって発生した分注処理の異常および異常個所を迅速に認識することができ、故障箇所の修理等を行うことが可能になる。
【0057】
また、分析装置1は、各分注処理前後の吸光度の変化量と各分注処理に対応する所定の許容範囲とをもとに、分注処理における異常の有無の検出および異常個所の特定を行っている。このため、分析装置1においては、従来技術にかかる分析装置において必要とされた精度管理用試料の測定を、分注処理の異常判断のために行う必要がない。したがって、精度管理用試料を測定しない場合においても、分注処理における異常の有無の検出および異常個所の特定を適切に行うことができる。
【0058】
なお、本実施の形態にかかる分析装置1においては、分析対象の検体のみならず、キャリブレーションに要する濃度が既知である標準検体および検体の代わりに水を分注するブランク試料の測定時においても同様に、分注処理前後の吸光度の変化量と所定の許容範囲とをもとに分注処理における異常の有無の検出および異常個所の特定を行うことができる。標準検体およびブランク試料は、演算された吸光度を検体における分析対象成分の濃度に換算するために測定されるものであり、第1試薬および第2試薬のロットの変更時に測定され、または、定期的に測定されている。
【0059】
具体的に、第1試薬分注後、ブランク試料が分注される場合について図5および図7を参照し説明する。ブランク試料が反応容器21内に正常に分注された場合、図7の曲線lbbに示すように、ブランク試料分注前の時間t2においてはP2の値を示していた吸光度は、時間t3においてP3bの値を示す。また、ブランク試料が正常に反応容器21内に分注されなかった場合、直線lbeに示すように吸光度に変化は認められない。検体が分注される場合と同様に、ブランク試料においてもブランク試料分注前後で吸光度は変化するため、分析装置1は、図5のテーブルTaの行Rbに示すように、ブランク試料に対しても許容範囲の下限値Tb1および許容範囲の上限値Tb2を設定している。たとえば、分析装置1が測定内容「A」の測定を行う場合、異常判断部34は、図7における吸光度の変化量(P2−P3b)の値Dbbが、図5の行Rbの検体欄に示す測定内容「A」の許容範囲の下限値30から許容範囲の上限値40の範囲内にあるか否かを判断する。そして、異常判断部34は、変化量Dbbが30から40の範囲内にないと判断した場合、ブランク試料の分注処理が正常に行われず、検体分注処理に関する構成部位に故障が発生したおそれがあると判断し、図8に示すメニューM2と同様の警告を表示出力する。
【0060】
また、ブランク試料分注後に第2試薬が分注される場合も同様に、ブランク試料分注後に第2試薬が正常に反応容器21内に分注されたときは、図9の曲線lcbに示すように、第2試薬分注処理前後において吸光度に変化が生じる。このため、分析装置1は、図5に示すテーブルTaの行Rbに示すように、ブランク試料に対しても許容範囲の下限値Tc1および許容範囲の上限値Tc2を設定することができる。そして、分析装置1が測定内容「A」の測定を行う場合、異常判断部34は、第2試薬分注処理前後の吸光度の変化量(P5b−P4b)の値Dcbが、図5の行Rbの第2試薬欄に示す許容範囲の下限値60から許容範囲の上限値65の範囲内にあるか否かを判断する。そして、異常判断部34は、変化量Dcbが60から65の範囲内にないと判断した場合、第2試薬分注処理が正常に行われず、第2試薬分注処理に関する構成部位に故障が発生したおそれがあると判断し、警告を表示出力する。また、標準検体を測定する場合も同様であり、たとえば測定内容「A」の測定を行う場合、図5の行Raに示す各許容範囲の下限値および上限値と、各分注処理前後における吸光度の変化量とを比較することによって、各分注処理ごとに異常の有無の検出を行うことができる。
【0061】
このように、分析装置1によれば、検体、ブランク試料および標準検体のいずれの測定中においても分注処理における異常の有無の検出および分注処理に関する構成部位における異常個所の特定を行うことができる。このため、操作者は、分析装置1の動作処理中に分注処理において異常が発生した場合であっても即時に異常の有無および異常個所を認識でき、分析装置1の故障箇所の確認および修理などを迅速に行うことが可能になる。
【0062】
また、本実施の形態にかかる分析装置1においては、分注処理の異常および異常個所を報知する警告を表示部37に表示出力する場合について説明したが、出力部36は、分注処理の異常および異常個所を報知する警報を音声出力してもよい。
【0063】
また、本実施の形態にかかる分析装置として、第1試薬、検体および第2試薬をそれぞれ分注し測光する分析装置について説明したが、試薬の種類は2種類に限らず、1種類または3種類以上であってもよい。
【0064】
また、上記実施の形態で説明した分析装置は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。以下、上記実施の形態で説明した分析装置と同様の機能を有する分析プログラムを実行するコンピュータシステムについて説明する。
【0065】
図10は、上述した実施の形態を用いたコンピュータシステムの構成を示すシステム構成図であり、図11は、このコンピュータシステムにおける本体部の構成を示すブロック図である。図10に示すように、本実施の形態にかかるコンピュータシステム100は、本体部101と、本体部101からの指示によって表示画面102aに画像などの情報を表示するためのディスプレイ102と、このコンピュータシステム100に種々の情報を入力するためのキーボード103と、ディスプレイ102の表示画面102a上の任意の位置を指定するためのマウス104とを備える。
【0066】
また、このコンピュータシステム100における本体部101は、図11に示すように、CPU121と、RAM122と、ROM123と、ハードディスクドライブ(HDD)124と、CD−ROM109を受け入れるCD−ROMドライブ125と、フレキシブルディスク(FD)108を受け入れるFDドライブ126と、ディスプレイ102、キーボード103並びにマウス104を接続するI/Oインターフェース127と、ローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワーク(LAN/WAN)106に接続するLANインターフェース128とを備える。
【0067】
さらに、このコンピュータシステム100には、インターネットなどの公衆回線107に接続するためのモデム105が接続されるとともに、LANインターフェース128およびLAN/WAN106を介して、他のコンピュータシステム(PC)111、サーバ112、プリンタ113などが接続される。
【0068】
そして、このコンピュータシステム100は、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)108、CD−ROM109、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステム100の内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)124や、RAM122、ROM123などの「固定用の物理媒体」、さらに、モデム105を介して接続される公衆回線107や、他のコンピュータシステム111並びにサーバ112が接続されるLAN/WAN106などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステム100によって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。
【0069】
すなわち、分析プログラムは、上記した「可搬用の物理媒体」、「固定用の物理媒体」、「通信媒体」などの記録媒体に、コンピュータ読み取り可能に記録されるものであり、コンピュータシステム100は、このような記録媒体から分析プログラムを読み出して実行することで分析装置および分析方法を実現する。なお、分析プログラムは、コンピュータシステム100によって実行されることに限定されるものではなく、他のコンピュータシステム111またはサーバ112が分析プログラムを実行する場合や、これらが協働して分析プログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施の形態にかかる分析装置の要部構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す分析装置における分注処理の異常の有無を判断する処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す分析部によって出力された一連の処理の間における吸光度の時間変化パターンを例示する図である。
【図4】第1試薬分注処理前後における吸光度の時間変化を示す図である。
【図5】図1に示す異常判断部における判断基準となる吸光度の変化量の許容範囲一覧が設定されたテーブルを示す図である。
【図6】図1に示す表示部の表示画面の一例を示す図である。
【図7】検体分注処理前後における吸光度の時間変化を示す図である。
【図8】図1に示す表示部の表示画面の一例を示す図である。
【図9】第2試薬分注処理前後における吸光度の時間変化を示す図である。
【図10】実施の形態を用いたコンピュータシステムの構成を示す構成図である。
【図11】図10に示したコンピュータシステムにおける本体部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
1 分析装置
2 測定機構
3 制御機構
10 反応テーブル
11 第1試薬庫
11a 第1試薬容器
11b 第1試薬読取部
12 第1試薬分注機構
13 検体移送部
13a 検体容器
13b 検体ラック
14 検体分注機構
14a,16a アーム
15 第2試薬庫
15a 第2試薬容器
15b 第2試薬読取部
16 第2試薬分注機構
17 攪拌部
18 測光部
18a 発光部
18b 受光部
19 洗浄部
21 反応容器
31 制御部
32 入力部
33 分析部
34 異常判断部
35 記憶部
36 出力部
37 表示部
38 送受信部
100 コンピュータシステム
101 本体部
102 ディスプレイ
102a 表示画面
103 キーボード
104 マウス
105 モデム
106 ローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワーク(LAN/WAN)
107 公衆回線
108 フレキシブルディスク(FD)
109 CD−ROM
111 他のコンピュータシステム(PC)
112 サーバ
113 プリンタ
121 CPU
122 RAM
123 ROM
124 ハードディスクドライブ(HDD)
125 CD−ROMドライブ
126 FDドライブ
127 I/Oインターフェース
128 LANインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を反応容器に分注する検体分注処理および試薬を反応容器に分注する試薬分注処理を行い、前記反応容器内の液体の吸光度を測定して検体を分析する分析装置において、
前記検体分注処理前後における吸光度の変化量が所定の第1の許容範囲を満たすか否かをもとに前記検体分注処理が正常に行われたか否かを判断し、または、前記試薬分注処理前後における吸光度の変化量が所定の第2の許容範囲を満たすか否かをもとに前記試薬分注処理が正常に行われたか否かを判断する判断手段を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記検体分注処理を行う検体分注手段と、
前記試薬分注処理を行う試薬分注手段と、
をさらに備え、前記判断手段は、前記検体分注処理前後における吸光度の変化量が前記所定の第1の許容範囲を満たさない場合に前記検体分注手段において異常が発生したおそれがあると判断し、または、前記試薬分注処理前後における吸光度の変化量が前記所定の第2の許容範囲を満たさない場合に前記試薬分注手段において異常が発生したおそれがあると判断することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記判断手段が前記検体分注手段において異常が発生したおそれがあると判断した場合に前記検体分注手段において異常が発生したおそれがある旨を出力し、または、前記判断手段が前記試薬分注手段において異常が発生したおそれがあると判断した場合に前記試薬分注手段において異常が発生したおそれがある旨を出力する出力手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
所定波長の光を前記反応容器に発し、該反応容器内の液体を透過した光を受光して分光強度測定を行う測光手段と、
前記測光手段によって測定された分光強度をもとに前記反応容器内の液体の吸光度を演算する分析手段と、
をさらに備え、前記判断手段は、前記分析手段によって演算された吸光度をもとに前記検体分注処理前後における吸光度の変化量および前記試薬分注処理前後における吸光度の変化量を取得することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項5】
前記所定の第1の許容範囲および前記所定の第2の許容範囲は、前記検体に対する分析方法の内容に応じて予め求められることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項6】
前記所定の第1の許容範囲および前記所定の第2の許容範囲を記憶する記憶手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項7】
反応容器内の液体の吸光度を測定して検体を分析する分析方法において、
前記検体を前記反応容器に分注する検体分注ステップと、
前記検体分注ステップの前後に前記反応容器内の液体の吸光度を測定する第1の測定ステップと、
前記第1の測定ステップにおいて測定された前記検体分注ステップ前後における吸光度の変化量が所定の第1の許容範囲を満たすか否かをもとに前記検体分注ステップが正常に行われたか否かを判断する第1の判断ステップと、
前記試薬を前記反応容器に分注する試薬分注ステップと、
前記試薬分注ステップの前後に前記反応容器内の液体の吸光度を測定する第2の測定ステップと、
前記第2の測定ステップにおいて測定された前記試薬分注ステップ前後における吸光度の変化量が所定の第2の許容範囲を満たすか否かをもとに前記試薬分注ステップが正常に行われたか否かを判断する第2の判断ステップと、
を含むことを特徴とする分析方法。
【請求項8】
反応容器内の液体の吸光度を測定して検体を分析する分析プログラムにおいて、
前記検体を前記反応容器に分注する分注処理を指示する検体分注手順と、
前記検体分注手順の前後に前記反応容器内の液体の吸光度測定を指示する第1の測光手順と、
前記第1の測光手順において測定された前記検体分注手順前後における吸光度の変化量が所定の第1の許容範囲を満たすか否かをもとに前記検体分注手順が正常に行われたか否かを判断する第1の判断手順と、
前記試薬を前記反応容器に分注する分注処理を指示する試薬分注手順と、
前記試薬分注手順の前後に前記反応容器内の液体の吸光度測定を指示する第2の測光手順と、
前記第2の測光手順において測定された前記試薬分注手順前後における吸光度の変化量が所定の第2の許容範囲を満たすか否かをもとに前記試薬分注手順が正常に行われたか否かを判断する第2の判断手順と、
を含むことを特徴とする分析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−292495(P2007−292495A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118096(P2006−118096)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】