説明

分画された高重合度環状グルカンの製造方法

【課題】 所望の重合度を有する分画された高重合度環状グルカンを製造する方法、およびそのためのキットを提供することを、本発明の課題とする。
【解決手段】 高重合度環状グルカンの水溶液に分画用ゲスト分子を添加して包接化合物を形成させる工程、沈澱部と上清部を分離する工程、沈殿部及び/または上清部から、高重合度環状グルカンを回収する工程、を含む分画された高重合度環状グルカンの製造方法を提供することによって、本発明の課題が解決された。また、必要に応じて、グルカン転移酵素を添加して、重合度の再分配を行い、所望の重合度の高重合度環状グルカンを製造してもよい。さらに、出発物質として、グルカン転移酵素とアミロースを用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、糖の分離の分野に関する。より具体的には、重合度に基づく高重合度環状グルカンの分離法、および特定の重合度を有する高重合度環状グルカンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状α−1,4−グルカンは、シクロアミロースとも呼ばれる。高重合度環状グルカンは、その疎水性空洞内に種々の物質を取り込んで包接化合物を形成することが知られている。そのため、高重合度環状グルカンは、揮発性物質の安定化、難溶性物質の乳化や可溶化、不安定物質の酸化防止などの目的で、様々な産業分野において利用可能である。
【0003】
環状α−1,4−グルカンは、アミロースもしくはアミロースを含む糖質(アミロペクチン、グリコーゲン、デキストリン)に、グルカン転移酵素と呼ばれる環状化反応を触媒出来る酵素を作用させることにより合成される。合成される環状α−1,4−グルカンの重合度は、使用する酵素および反応条件により変化させることができる。
【0004】
CGTaseと呼ばれる酵素は、主として、重合度6〜8の環状α−1,4−グルカン(それぞれ、α−,β−,γ−シクロデキストリンと呼ばれている)を合成する。CGTaseは数種の細菌に分布しており、重合度6の環状α−1,4−グルカンを主として作るCGTase、重合度7の環状α−1,4−グルカンを主として作るCGTase、重合度8の環状α−1,4−グルカンを主として作るCGTase、が知られており、この酵素の特徴を利用して、重合度6〜8の環状α−1,4−グルカンは工業的に作り分けられている。
【0005】
一方、近年CGTase以外のグルカン転移酵素が、環状α−1,4−グルカンを合成できることが見つかった(特許文献1)。植物由来のD酵素、微生物由来アミロマルターゼ、グリコーゲンデブランチングエンザイム、始原菌の4−α−グルカン転移酵素などである(非特許文献1、特に表1)。これら酵素の特徴は、重合度6〜8の環状α−1,4−グルカンを合成せず、もっと大きな重合度の環状α−1,4−グルカンを合成する点である。それぞれの酵素が合成できる環状α−1,4−グルカンの最小重合度が決定されている(非特許文献1)。
【0006】
このような大環状α−1,4−グルカンは、通常、重合度がひとつずつ異なる環状α−1,4−グルカンの混合物として製造される(非特許文献1、特に図2)。近年これら大環状α−1,4−グルカンは、その重合度により溶解性や包接機能に違いがあることが判明してきている。その一方で、現存の高重合度環状グルカン製造方法を用いた場合には、その産物は、異なる重合度を有する高重合度環状グルカンの混合物が産生される。そのため、特定重合度の大環状α−1,4−グルカンを合成する技術開発が望まれていた。
【0007】
所望の性質を有する高重合度環状グルカンを製造するためには、例えば、高重合度環状グルカンの混合物から、重合度に基づいて高重合度環状グルカンを分離・精製することが必要となる。また、医薬などへの高重合度環状グルカンの応用を考えた場合には、特定の重合度を有する高重合度環状グルカンの純度を高めることが必須である。
【0008】
これまで、大環状α−1,4−グルカンの平均重合度は、酵素反応条件の設定によりある程度はコントロールできることが判明している(非特許文献2)。しかし、この方法は、おおまかな分布(平均重合度)をコントロールするだけであり、重合度がひとつずつ異なる環状α−1,4−グルカンの混合物が産物であることに変わりはない。
【0009】
より細かく大環状α−1,4−グルカンを分画するためには、ODSカラムを用いたクロマトグラフィーの使用が必須である(非特許文献3)。この場合、単一重合度の大環状α−1,4−グルカンを調製することも可能である。しかし、処理能力および速度の点において、工業スケールでの実用化は、困難である。
【特許文献1】特許第3150266号公報
【非特許文献1】Foods andIngredients Journal of Japan, vol.209, No.4, 2004, pp.320-328
【非特許文献2】T. Takaha, S.M. Smith, Biotechnology and Genetic Engineering Reviews, 16, 257-280 (1999).
【非特許文献3】K. Koizumi etal., J. Chromatogr. A., 852, 407-416 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
重合度に基づく高重合度環状グルカンの分離方法として、従来は、ODSカラムを用いたクロマトグラフィーが使用されていた。しかし、この方法では、処理量が微量であり、工業的な製法とはなりえない。そこで、工業的規模で実施可能な、分画された環状α−1,4−グルカンの製造方法、さらには単一重合度の大環状α−1,4−グルカンの製造方法を提供することが、本発明の解決しようとする課題である。また、そのような方法に使用するためのキットを提供することも、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、異なる重合度を有する高重合度環状グルカンの混合物に対して、分画用ゲスト分子を添加した場合、分画用ゲスト分子は、特定の重合度を有する高重合度環状グルカンと特異的に結合し、高重合度環状グルカンと分画用ゲスト分子との包接化合物を形成し、その結果、元の高重合度環状グルカンとは異なる特性が示されることを見出した。さらに、本発明者らは、包接化合物と、包接化合物を形成しない元の高重合度環状グルカンとの特性(例えば、水または有機溶媒に対する溶解度)の違いに基づき、特定の重合度の複合体を容易に単離できることを見出して、本発明を完成させた。
【0012】
さらに、本発明者らは、本発明の高重合度環状グルカン製造方法においてグルカン転移酵素を作用させると、重合度不均化反応が生じるため、もともと存在していた量よりも多くの特定の重合度の環状α−1,4−グルカンを製造できることを見出した。
【0013】
さらに、この現象は基質アミロースにグルカン転移酵素を添加し、環状α−1,4−グルカンを合成過程においても有効であり、この場合においても分画用ゲスト物質なしの場合よりも多くの、特定の重合度の環状α-1,4-グルカンを製造できることを見出した。
【0014】
従って、本発明は、以下を提供する。
1.分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)少なくとも2つ以上の異なる重合度を有する高重合度環状グルカンの混合物を含む水溶液に分画用ゲスト分子を添加して、包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を分画して、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得る工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
2.分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)少なくとも2つ以上の異なる重合度を有する高重合度環状グルカンの混合物を含む水溶液に分画用ゲスト分子を添加して、包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を沈殿部と上清部に分離する工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた沈殿部および/または上清部から、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
3.分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)高重合度環状グルカンを含む水溶液にグルカン転移酵素を添加して、該高重合度環状グルカンに該グルカン転移酵素を反応させる工程;
(b)工程(a)の酵素反応溶液に分画用ゲスト分子を添加して、包接化合物を形成させる工程;
(c)工程(b)で形成された該包接化合物を含む溶液を分画して、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得る工程;および
(d)工程(c)の分画によって得られた、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
4.分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)高重合度環状グルカンを含む水溶液にグルカン転移酵素を添加して、該高重合度環状グルカンに該グルカン転移酵素を反応させる工程;
(b)工程(a)の酵素反応溶液に分画用ゲスト分子を添加して、包接化合物を形成させる工程;
(c)工程(b)で形成された該包接化合物を含む溶液を沈殿部と上清部に分離する工程;および
(d)工程(c)の分画によって得られた沈殿部および/または上清部から、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
5.分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)アミロースを含む水溶液にグルカン転移酵素を添加して、高重合度環状グルカンを形成する工程;
(b)工程(a)の酵素反応溶液に分画用ゲスト分子を添加して、該高重合度環状グルカンと分画用ゲスト分子との包接化合物を形成させる工程;
(c)工程(b)で形成された該包接化合物を含む溶液を分画して、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得る工程;および
(d)工程(c)の分画によって得られた、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
6.分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)直鎖のグルカンを含む水溶液にグルカン転移酵素を添加して、高重合度環状グルカンを形成する工程;
(b)工程(a)の酵素反応溶液に分画用ゲスト分子を添加して、該高重合度環状グルカンと分画用ゲスト分子との包接化合物を形成させる工程;
(c)工程(b)で形成された該包接化合物を含む溶液を沈殿部と上清部に分離する工程;および
(d)工程(c)の分画によって得られた沈殿部および/または上清部から、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
7.分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)高重合度環状グルカンを含む水溶液に分画用ゲスト分子およびグルカン転移酵素を添加して、該高重合度環状グルカンに該グルカン転移酵素を反応させて、包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を分画して、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得る工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
8.分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)高重合度環状グルカンを含む水溶液に分画用ゲスト分子およびグルカン転移酵素を添加して、該高重合度環状グルカンに該グルカン転移酵素を反応させて、包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を沈殿部と上清部に分離する工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた沈殿部および/または上清部から、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
9.分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)アミロースを含む水溶液に分画用ゲスト分子およびグルカン転移酵素を添加して、該アミロースに該グルカン転移酵素を反応させて高重合度環状グルカンを形成させて、該高重合度環状グルカンと該分画用ゲスト分子との包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を分画して、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得る工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
10.分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)アミロースを含む水溶液に分画用ゲスト分子およびグルカン転移酵素を添加して、該アミロースに該グルカン転移酵素を反応させて高重合度環状グルカンを形成させて、該高重合度環状グルカンと該分画用ゲスト分子との包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を沈殿部と上清部に分離する工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた沈殿部および/または上清部から、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
11.項目1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記所望の重合度を有する高重合度環状グルカンの重合度が26、34、35、38、42、50、62、74からなる群から選択される、方法。
12.項目1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記分画用ゲスト分子が、重合度17〜5000の高重合度環状グルカンを含む0.1〜50%(w/v)水溶液に対して15%以下の濃度で添加された場合、結晶性の沈殿を生じる、方法。
13.項目1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記分画用ゲスト分子が、SB3−10、SB3−12、SB3−14、SB3−16、SDS、CTAB、n−ブタノール、D−リモネン、1−ナフトール、Tween40,Tween60、Tween80からなる群から選択される、方法。
14.項目3〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記グルカン転移酵素が、
(a)アミロースの環状化反応を触媒する活性、および
(b)環状α−1,4グルカンを生成する活性、を有し、かつ
(c)重合度8以下の環状α−1,4グルカンを生成する活性を有さない、
酵素である、方法。
15.項目3〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記グルカン転移酵素が、D−酵素、アミロマルターゼ、グリコーゲンデブランチングエンザイム、4−α−グルカン転移酵素からなる群から選択される、方法。
16.項目1〜4、7、および8のいずれか1項に記載の方法であって、前記分画される高重合度環状グルカンが誘導体化された高重合度環状グルカンである、方法。
17.項目1〜16のいずれか1項に記載の方法に使用するためのキットであって、分画用ゲスト分子を含むキット。
【0015】
また、本発明に従って、以下の方法が提供される。
【0016】
(A)分画された高重合度環状グルカンの製造方法(高重合度環状グルカンの分画方法)であって、
高重合度環状グルカンの水溶液に分画用ゲスト分子を添加して包接化合物を形成させる工程、沈澱部と上清部を分離する工程、沈殿部及び/または上清部から、高重合度環状グルカンを回収する工程、からなる分画された高重合度環状グルカンの製造方法。
【0017】
(B)高重合度環状グルカンの水溶液にグルカン転移酵素を添加し、さらに分画用ゲスト分子を添加し、反応を行う工程、得られた酵素反応液を沈澱部と上清部を分離する工程、沈殿部及び/または上清部から、高重合度環状グルカンを回収する工程、からなる分画された高重合度環状グルカンの製造方法。
【0018】
(C)アミロースの水溶液にグルカン転移酵素を添加し、さらに分画用ゲスト分子を添加し、反応を行う工程、得られた酵素反応液を沈澱部と上清部を分離する工程、沈殿部及び/または上清部から、高重合度環状グルカンを回収する工程、からなる分画された高重合度環状グルカンの製造方法。
【0019】
(D)高重合度環状グルカンの水溶液に分画用ゲスト分子を添加した状態でグルカン転移酵素を添加し、反応を行うことによる、分画された高重合度環状グルカンの製造方法。
【0020】
(E)アミロースの水溶液に分画用ゲスト分子を添加した状態でグルカン転移酵素を添加し、反応を行うことによる、分画された高重合度環状グルカンの製造方法。
【0021】
好ましい実施形態では、分画用ゲスト分子は、高重合度環状グルカンの水溶液中に、10%の濃度で分画用ゲスト分子を添加した際に結晶性の沈澱を生成するものである。より好ましい実施形態では、分画用ゲスト分子は、高重合度環状グルカンの水溶液中に、5%の濃度で分画用ゲスト分子を添加した際に結晶性の沈澱を生成するものである。
【0022】
好ましい酵素の具体例としては、植物由来のD酵素、微生物由来アミロマルターゼ、グリコーゲンデブランチングエンザイム、始原菌の4−α−グルカン転移酵素などが挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に従って、工業的規模で実施可能な、分画された環状α−1,4−グルカンの製造方法が提供される。さらに、本発明に従って、単一重合度の大環状α−1,4−グルカンの製造方法が提供される。また、本発明に従って、本発明の方法に使用するためのキットもまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0025】
本明細書において使用する場合、用語「シクロアミロース」とは、「高重合度環状グルカン」と互換可能に用いられ、α−1,4結合によって連結された環状のアミロースをいう。
【0026】
本明細書で用いられる高重合度環状グルカンとは、好ましくは、17個以上5000個以下のグルコースがα−1,4結合で環状に結合した構造よりなる分子であり、分岐を含んでも、含まなくてもよい。
【0027】
本明細書において使用する場合、用語「グルカン」とは、D−グルコースから構成される多糖をいい、誘導体化されていても、されていなくてもよい。
【0028】
本発明のグルカン誘導体は、上記のグルカンが有するアルコール性水酸基のうちの少なくとも1つが誘導体化されている。上記誘導体化は、エーテル化(カルボキシメチル化、ヒドリキシアルキル化等)、エステル化(リン酸化、アセチル化、硫酸化等)、架橋化、およびグラフト化からなる群から選択される。本発明の高重合度環状グルカンは、これらの2種以上の誘導体の混合物であってもよい。
【0029】
誘導体化の方法としては、通常、澱粉の修飾に用いられる方法が用いられ得る(生物化学実験法19,「澱粉・関連糖質実験法」:中村ら、学会出版センター、1986年 273−303頁)。リン酸化の例としては、本発明のグルカンをジメチルホルムアミド中でオキシ塩化リンと反応させることにより、リン酸化した本発明のグルカンの誘導体を得る方法が用いられる。
【0030】
本発明で用いられる高重合度環状グルカンとしては、重合度が17以上5000以下であれば任意の重合度の高重合度環状グルカンを用い得る。高重合度環状グルカンの重合度は、好ましくは約17以上であり、より好ましくは約22以上である。高重合度環状グルカンの重合度は、好ましくは約3000以下であり、より好ましくは約2000以下であり、さらにより好ましくは約1000以下であり、特に好ましくは約500以下であり、ことに好ましくは約300以下であり、ことさら好ましくは約100以下であり、最も好ましくは約80以下である。
【0031】
通常、重合度が17以上5000以下の高重合度環状グルカンは、種々の重合度のものの混合物として製造および販売される。例えば、重合度が22〜数百の高重合度環状グルカンの混合物は、江崎グリコ株式会社から「シクロアミロース」として販売されている。重合度が17以上5000以下の高重合度環状グルカンの製造方法は、特許第3150266号公報に記載されている。当該分野で公知であって、重合度が17以上5000以下の任意の高重合度環状グルカンが用いられ得る。
【0032】
高分子の混合物は、重量平均重合度(または重量平均分子量)で示されることが多い。本発明で用いられる高重合度環状グルカンの重量平均重合度は、好ましくは約17以上であり、より好ましくは約22以上である。本発明で用いられる高重合度環状グルカンの重量平均重合度は、好ましくは約3000以下であり、より好ましくは約2000以下であり、さらにより好ましくは約1000以下であり、特に好ましくは約500以下であり、格別好ましくは約300以下であり、最も好ましくは約100以下である。
【0033】
本明細書において使用する場合、用語「アミロース」とは、α1→4結合グルコシド結合からなる直鎖状のグルコースの重合体をいい、誘導体化されていても、されていなくてもよい。本発明で用いられるアミロースは、グルカン転移酵素が作用しうる重合度を有しておれば、どのような重合度のアミロースでも使用することが出来る。また、アミロースは、単一重合度のものであっても、混合物であってもよい。アミロースの重合度は、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは5以上である。本発明で用いられるアミロースの重量平均重合度は、好ましくは約50000以下であり、より好ましくは約5000以下であり、さらにより好ましくは約3000以下である。アミロースの具体例としては、マルトペンタオース、マルトヘプタオース、デンプンやデキストリン中のα-1,6結合のみを選択的に分解した、デンプン枝きり物、重量平均重合度3千から5万の酵素合成アミロースがあげられる。
【0034】
本発明のアミロース誘導体は、アミロースが有するアルコール性水酸基のうちの少なくとも1つが誘導体化されている。上記誘導体化は、エーテル化(カルボキシメチル化、ヒドリキシアルキル化等)、エステル化(リン酸化、アセチル化、硫酸化等)、架橋化、およびグラフト化からなる群から選択される。本発明のアミロースは、これらの2種以上の誘導体の混合物であってもよい。
【0035】
本明細書において使用する場合、溶液の「分画」とは、溶液中に溶解している物質(溶質)の特性(例えば、溶解度、親水性、疎水性)に基づいて、溶液を物理的に分離する工程をいう。本発明における分画としては、例えば、遠心分離、ゲル濾過、メンブレン濾過、溶媒抽出、透析などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0036】
本明細書において使用する場合、用語「グルカン転移酵素」とは、(a)アミロースの環状化反応を触媒する活性、および、(b)環状α−1,4グルカンを生成する活性、を有し、かつ(c)重合度8以下の環状α−1,4グルカンを生成する活性を有さない酵素をいう。グルカン転移酵素としては、D−酵素、アミロマルターゼ、グリコーゲンデブランチングエンザイム、および4−α−グルカン転移酵素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
D−酵素の供給源としては、例えば、馬鈴薯(Solanum tuberosum)、人参、トマト、小麦、サツマイモ、ホウレン草、エンドウ豆およびArabidopsisthalianaが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
D酵素は最初、馬鈴薯から発見されたが、種々の植物に存在していることがわかっている。従って、D酵素はその起源は問わず、植物由来の酵素をコードする遺伝子を大腸菌などの宿主を用いて発現せしめたものであっても使用し得る。ここでは、馬鈴薯および馬鈴薯D酵素を発現した大腸菌からのD酵素の精製方法を例として開示するが、これに限られない。
【0039】
馬鈴薯から、D酵素を精製する方法は、Takahaら、J.Biol.Chem. vol.268, 1391-1396 (1993)に記載されている。まず、馬鈴薯塊茎を5mMのメルカプトエタノールを含む適当な緩衝液中でホモジナイズし、遠心分離して、0.45μmのメンブレンを通した後、Q-Sepharoseカラムにかけ、例えば、5mM2ーメルカプトエタノールを含む20mMTris-HCl(pH7.5)(緩衝液A)に150mM NaClを含む緩衝液で洗浄する。D酵素は、450mMのNaClを含む緩衝液Aに溶出する。これを、緩衝液Aに対して透析し、500mM硫酸アンモニウムを含む溶液をPhenyl Toyopearl 650M(Toso)カラムにロードし、緩衝液A中の硫酸アンモニウム濃度を500mMから0mMに変化させることにより溶出を行い、D酵素活性画分を集め、緩衝液Aに対して透析を行う。透析内液を緩衝液Aで平衡化したPL-SAXカラム(PolymerLaboratory U.K.)にロードし、緩衝液A中のNaCl濃度を150mM-400mMに変化させて溶出し、D酵素活性画分を集める。上記の方法で馬鈴薯からD酵素を精製し得る。
【0040】
前出のTakahaら、J.Biol.Chem.vol.268,1391-1396(1993)には、馬鈴薯D酵素のcDNA配列(同1394頁、Fig.3)、D酵素の組換プラスミドの作成(同1392頁)、該組換えプラスミドの大腸菌における発現、および組換え大腸菌からのD酵素の精製が開示されており、組換え法で作成されるD酵素も当然に使用され得る。大腸菌からD酵素を精製する方法は、例えば、まず、D酵素の生産株である大腸菌TG−1株をLB液体培地を用いて37℃で対数増殖期まで培養後、マルトースを終濃度1%(w/v)となるように添加し、さらに37℃で2時間培養する。遠心分離で集めた菌体を、前記緩衝液Aに懸濁して超音波処理、遠心分離を行い、菌体抽出液を得る。次に、例えば、緩衝液Aで平衡化したQ-SepharoseFast Flow(Pharmacia)カラムにロードし、緩衝液A中のNaCl濃度を0mMから500mMに変化させて溶出を行い、D酵素活性画分を集める。活性画分に、終濃度1Mになるように硫酸アンモニウムを加えて放置し、遠心分離で不溶性の沈澱を除去し、上清を1Mの硫酸アンモニウムを含む緩衝液Aで平衡化したPhenylToyopearl 650M(Toso)カラムにロードする。緩衝液A中の硫酸アンモニウム濃度を1Mから0mMに変化させることにより溶出を行い、D酵素活性画分を集める。この画分を、緩衝液Aに対して透析後、透析内液を緩衝液Aで平衡化したResourceQカラム(Pharmacia)にロードし、緩衝液Aの中のNaCl濃度を0mMから500mMに変化させることにより溶出を行い、D酵素を精製する。
【0041】
D酵素は、上記のようにして精製され得るが、澱粉分子内のα−1,4−グルコシド結合に作用するエンド型のアミラーゼ類が検出されなければ、上記いずれの精製段階の粗酵素であっても、高重合度環状グルカンの合成に使用し得る。
【0042】
本明細書において使用するアミロマルターゼの供給源としては、例えば、Escherichia coli、Thermus aquaticus、Deinococcus radiodurans、Synechocystissp.、Aquifex aeolicus、Streptococcus pneumoniae、Clostridium butyricum、Borreliaburgdorferi、Haemophilus influenzae、Chlamydia psittaciおよびMicobacteriumtuberculosisが挙げられるが、これらに限定されない。また、アミロマルターゼはその起源は問わず、植物由来の酵素をコードする遺伝子を大腸菌などの宿主を用いて発現せしめたものであっても使用し得る。
【0043】
本明細書において使用するグリコーゲンデブランチングエンザイムの供給源としては、例えば、Saccharomyces cerevisiaeおよびウサギなどほ乳類の筋肉が挙げられるが、これらに限定されない。また、グリコーゲンデブランチングエンザイムはその起源は問わず、植物由来の酵素をコードする遺伝子を大腸菌などの宿主を用いて発現せしめたものであっても使用し得る。
【0044】
本明細書において使用する4−α−グルカン転移酵素の供給源としては、例えば、Thermotoga maritima、Thermococcus litoralis、およびPyrococcuskodakaraensisが挙げられるが、これらに限定されない。また、4−α−グルカン転移酵素はその起源は問わず、植物由来の酵素をコードする遺伝子を大腸菌などの宿主を用いて発現せしめたものであっても使用し得る。
【0045】
また、高重合度環状グルカンの合成に用いる酵素は、精製酵素、粗酵素を問わず、固定化されたものでも反応に使用し得、反応の形式は、バッチ式でも連続式でもよい。固定化の方法としては、担体結合法、(たとえば、共有結合法、イオン結合法、あるいは物理的吸着法)、架橋法あるいは包括法(格子型あるいはマイクロカプセル型)が使用され得る。
【0046】
上記原料と高重合度環状グルカンの合成に使用し得る酵素との反応は、高重合度の高重合度環状グルカンが生成するpH、温度などの条件であれば、いずれをも使用し得る。
【0047】
馬鈴薯のD酵素を例にとれば、反応のpHは、通常、3から10、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは4から9、さらに好ましくは、6から8である。温度は、約10℃から90℃、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約20℃から60℃、さらに好ましくは、30℃から40℃の範囲である。使用する酵素の量は、反応時間、基質の濃度との関係で、決定され、通常は、約1時間から48時間で反応が終了するように酵素量を選ぶのが好ましく、基質1gあたり、通常10〜10,000単位、好ましくは20〜2,500単位、より好ましくは100〜2,000単位である。
【0048】
Thermusaquaticus由来のアミロマルターゼを例にとれば、反応のpHは、通常、4から9、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは5から8、さらに好ましくは、5.5から7.5である。温度は、約10℃から90℃、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約30℃から80℃、さらに好ましくは、40℃から60℃の範囲である。使用する酵素の量は、反応時間、基質の濃度との関係で、決定され、通常は、約1時間から48時間で反応が終了するように酵素量を選ぶのが好ましく、基質1gあたり、通常10〜10,000単位、好ましくは20〜2,500単位、より好ましくは100〜2,000単位である。
【0049】
Saccharomycescerevisiae由来グリコーゲンデブランチングエンザイムを例にとれば、反応のpHは、通常、3から10、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは4から9、さらに好ましくは、6から8である。温度は、約10℃から90℃、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約20℃から60℃、さらに好ましくは、30℃から40℃の範囲である。使用する酵素の量は、反応時間、基質の濃度との関係で、決定され、通常は、約1時間から48時間で反応が終了するように酵素量を選ぶのが好ましく、基質1gあたり、通常10〜10,000単位、好ましくは20〜2,500単位、より好ましくは100〜2,000単位である。
【0050】
Thermocuccuslitoraris由来4−α−グルカン転移酵素を例にとれば、反応のpHは、通常、4から9、反応速度、効率、酵素の安定性などの点か ら、好ましくは5から8、さらに好ましくは、5.5から7.5である。温度は、約20℃から100℃、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約30℃から95℃、さらに好ましくは、40℃から90℃の範囲である。使用する酵素の量は、反応時間、基質の濃度との関係で、決定され、通常は、約1時間から48時間で反応が終了するように酵素量を選ぶのが好ましく、基質1gあたり、通常10〜10,000単位、好ましくは20〜2,500単位、より好ましくは100〜2,000単位である。
【0051】
本明細書において使用する分画用ゲスト分子とは、高重合度環状グルカンにゲスト分子として包接された場合に高重合度環状グルカンの分画に寄与する分子をいう。本発明において使用し得る分画用ゲスト分子としては、例えば、重合度17〜5000の高重合度環状グルカンを含む0.1〜50%(w/v)水溶液に対して15%以下の濃度で添加された場合、結晶性の沈殿を生じる、物質が挙げられる。分画用ゲスト分子の例として、両親媒性を有する一連の有機化合物、アルコール類、脂肪酸、ベンゼン環を有する一連の有機化合物が挙げられる。
【0052】
1つの実施形態において、分画用ゲスト分子は、界面活性剤である。好ましくは、化学合成された界面活性剤であり、より好ましくは、アルキル基を有する界面活性剤である。界面活性剤の疎水基の炭素数は、好ましくは、30以下であり、より好ましくは20以下である。界面活性剤の疎水基の炭素数は、好ましくは、2以上であり、より好ましくは4以上であり、さらに好ましくは7以上である。
【0053】
1つの実施形態において、分画用ゲスト分子は、芳香族化合物である。好ましくは、好ましくは、芳香族アルコール・芳香族エーテル・芳香族アルデヒド・芳香族ケトン・芳香族カルボン酸・芳香族エステルであり。より好ましくは、D−リモネン、1−ナフトールが挙げられる。
【0054】
1つの実施形態において、分画用ゲスト分子は、脂肪族化合物である。好ましくは、脂肪族アルコール・脂肪族エーテル・脂肪族アルデヒド・脂肪族ケトン・脂肪族カルボン酸・脂肪族エステルであり、より好ましくは、脂肪酸、脂肪である。
【0055】
1つの実施形態において、分画用ゲスト分子は、複素環化合物である。
【0056】
1つの実施形態において、分画用ゲスト分子は、脂環族化合物である。
【0057】
1つの実施形態において、分画用ゲスト分子は、生理機能を有する有機化合物である。好ましくは、医薬品、農薬、機能性食品用成分、機能性化粧品用成分である。
【0058】
1つの実施形態において、分画用ゲスト分子は、炭素数4以上のアルキル基を持つ有機化合物である。
【0059】
本発明において使用し得る分画用ゲスト分子の具体例としては、例えば、SB3−10、SB3−12、SB3−14、SB3−16,SDS,CTAB、n−ブタノール、D−リモネン、1−ナフトール、Tween40,Tween60、Tween80からなる群から選択される分子が挙げられるが、これに限定されない。本発明において使用する場合、分画用ゲスト分子の濃度としては、0.01〜100mMが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明を用いることによって、クロマトグラフィーによる精製を用いることなく、異なる重合度を有する高重合度環状グルカンをその重合度に基づいて分画することが可能となる。さらに、グルカン転移酵素存在下において、本発明の方法を実施することによって、グルカン転移酵素による高重合度環状グルカンの生成と、生成された所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む包接化合物の形成を同時に行うことができる。
【0061】
グルカン転移酵素は、高重合度環状グルカンの重合度の再分配、およびアミロースから高重合度環状グルカンを生成する酵素である。グルカン転移酵素は、アミロースを環状化して、高重合度環状グルカンを生成する反応を触媒する。従って、本発明の方法において、出発物質として高重合度環状グルカンの代わりにアミロースを用い、グルカン転移酵素で反応することにより高重合度環状グルカンを生成し、そして所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得ることができる。
【0062】
また、グルカン転移酵素は、包接化合物を形成する高重合度環状グルカンに対する反応性が低いため、包接化合物を形成した所望の重合度を有する高重合度環状グルカンは基質として反応することは少なく、一旦生成された所望の重合度を有する高重合度環状グルカンが酵素反応によって、異なる重合度を有する高重合度環状グルカンに変換されることはまれである。そのため、グルカン転移酵素による反応と、包接化合物の形成とを同時に行う場合、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンは、包接化合物を形成して、酵素によるさらなる反応には供されず、その一方で、包接化合物を形成しない高重合度環状グルカンおよびアミロースが酵素の基質となって所望の重合度を有する高重合度環状グルカンが生成されることから、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンが蓄積される。
【0063】
本明細書において使用される場合、「キット」とは、分画用ゲスト分子、および本発明の方法を実施するための指示書を含む。本発明のキットはさらに、グルカン転移酵素を含んでもよい。さらに、本発明のキットはさらに、コントロールとしての所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含んでもよい。
【0064】
高重合度環状グルカンの環状構造部分の重合度は、クロマトグラフィーを用いて測定し得る。一般的に、環状多糖は同じ重合度の直鎖多糖とはクロマトグラフィーにおける挙動が異なることが知られており、この性質を用いて、環状であることの証明、及び環状多糖の重合度の決定が行われ得る。例えば、高重合度環状グルカンを上記のDIONEX社の糖分析システム(送液システム:DX300、検出器:PAD-2、カラム:CarboPacPA100;溶出は、例えば、流速:1m1/min,NaOH濃度:150mM,酢酸ナトリウム濃度:0分-50mM、2分-50mM、37分-350mM、45分-850mM、47分-850mMの条件で行う)で分離し、シングルピークの画分を取得し得る。得られた画分を、例えば、0.1NのHClで100℃、30分間処理し、この環状構造部分を部分的に加水分解したのち、分解により生じた種々の重合度の直鎖のグルカンをDIONEX社の糖分析システムを用いて分析し、重合度を決定し得る。
【0065】
本発明により分画された高重合度環状グルカンは、容易に、エーテル化、エステル化、架橋化、およびグラフト化することができ、誘導体とし得、上記目的、用途に使用し得る。誘導体化の方法としては、通常、澱粉の修飾に用いられる方法が用いられ得る(生物化学実験法19,「澱粉・関連糖質実験法」:中村ら、学会出版センター、1986年 273〜303頁)。リン酸化の例としては、本発明のグルカンをジメチルホルムアミド中でオキシ塩化リンと反応させることにより、リン酸化したグルカンの誘導体を得る。
【0066】
これらの性質により、本発明により分画された高重合度環状グルカンは、従来澱粉、デキストリンなどが使用できる食品のすべてに使用することが可能であり、ほとんど全ての飲食用組成物または食品添加物用組成物に使用することができる。この飲食用組成物とは、ヒトの食品、動物飼料、ペットフードを総称するものである。すなわち、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、ジュース、スポーツドリンクなどの液体および粉末の飲料類、パン、クッキー、クラッカー、ビスケット、ケーキ、ピザ、パイなどのベーカリー類、スパゲッテイー、マカロニなどのパスタ類、うどん、そば、ラーメンなどの麺類、キャラメル、ガム、チョコレートなどの菓子類、おかき、ポテトチップス、スナックなどのスナック菓子類、アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓類、クリーム、マーガリン、チーズ、粉乳、練乳、乳飲料などの乳製品、ゼリー、プリン、ムース、ヨーグルトなどの洋菓子類、饅頭、ういろ、モチ、おはぎなどの和菓子類、醤油、たれ、麺類のつゆ、ソース、ダシの素、シチューの素、スープの素、複合調味料、カレーの素、マヨネーズ、ドレッシング、ケチャップなどの調味料類、カレー、シチュー、スープ、どんぶりの素などのレトルトもしくは缶詰食品、ハム、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、ピラフ、おにぎりなどの冷蔵食品および冷凍食品、ちくわ、かまぼこなどの水産加工食品、おにぎり、弁当のご飯、寿司めし等の米飯類、その他、餃子の皮、シュウマイの皮にも効果的に利用できる。さらに、消化性の高さを利用して、乳児用ミルク、離乳食、ベビーフード、ペットフード、動物用飼料、スポーツ飲料、スポーツ食品、栄養補助食品などに使用し得る。
【0067】
本発明により分画された高重合度環状グルカンは様々な物質を包接あるいは吸着する。物質はアミロースやサイクロデキストリンに包接もしくは吸着されることによりその性質が変化したり、新たな性質を獲得したりできる。例えば、溶解度の向上、揮発性物質の不揮発化、不安定物質の安定化、不快臭のマスキングなどがよく知られている。本発明の高重合度環状グルカンに吸着あるいは包接させる物質としては特に制限なく、たとえばわさび、醤油、お茶、さんしょ、ゆず、香料、調味料、色素などの食品、メントール、リノール酸などの医薬品がある。このようにしてできた包接物または吸着物は食品、医薬品として用いることができる。例えば、上記のような食品、および入浴剤、飲み薬、粉末薬などの医薬品に利用可能である。従って、本発明の高重合度環状グルカンは、他の化合物の、揮発性物質の安定化、難溶性物質の乳化や可溶化、不安定物質の酸化防止などの目的のために使用され得る。
【0068】
さらに、本発明の方法によって得られる高重合度環状グルカンの包接能を利用して、タンパク質のリフォールディングに使用することができる。例えば、特開2001−261697には、高重合度環状グルカンと、ポリオキシエチレン系界面活性剤またはイオン性界面活性剤を用いるタンパク質のリフォールディングが記載されている。αヘリックス構造を取る変性タンパク質に対しては、過剰量のポリオキシエチレン系界面活性剤を添加することにより、タンパク質を変性状態にしている物質を希釈すると共に、タンパク質分子同士の凝集を防ぎ、次いで高重合度環状グルカンを添加し、その包接能を利用して前記界面活性剤を除き、タンパク質を正しい高次構造に戻し、活性を有する正しい高次構造にフォールディングさせることが可能である。ポリオキシエチレン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプタメチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルまたはスクロース脂肪酸エステルを使用することができる。また、ポリオキシエチレン系界面活性剤を用いる場合には、高重合度環状グルカンとしては、例えば、重合度25〜50もしくは40〜150の高重合度環状グルカンを使用する。一方、βシート構造を取る変性タンパク質および/または分子内S−S結合を有する変性タンパク質に対しては、過剰量のイオン性界面活性剤を添加することにより、タンパク質を変性状態にしている物質を希釈すると共に、タンパク質分子同士の凝集を防ぎ、次いで高重合度環状グルカンを添加し、その包接能を利用して前記界面活性剤を除き、タンパク質を正しい高次構造に戻し、活性を有する正しい高次構造にフォールディングさせることが可能である。イオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドまたはミリスチルサルホォベタインを用いることができる。イオン性界面活性剤を用いる場合には、高重合度環状グルカンとしては、例えば、重合度40〜150の高重合度環状グルカンを使用することができる。
【0069】
本発明の方法において、高重合度環状グルカンと分画用ゲスト分子との包接化合物を形成するためには、例えば、高重合度環状グルカンを含む水溶液に分画用ゲスト化合物を添加する。包接反応を効率的に行うために、加熱を行ってもよい。また分画用ゲスト分子が水に不溶性の場合には、水と相溶性の溶媒に溶解した後添加してもよい。相溶性を有する溶媒の具体例としては、エタノール、メタノール、アセトン、ジメチルホルムアミドなどがあげられる。
【0070】
高重合度環状グルカンと分画用ゲスト分子との包接化合物の生成は、例えば、高重合度環状グルカンを含む水溶液を沸騰水で加熱した後に、分画用ゲスト分子を添加して、室温にて放冷することによって可能である。包接反応の条件としては、例えば、95℃の温度、ならびに1分間〜6ヶ月間、が挙げられるが、これらに限定されない
用いる高重合度環状グルカンの濃度としては、例えば、0.1%〜10%、好ましくは、0.5%〜10%が挙げられるが、これらに限定されない。添加する分画用ゲスト分子の濃度としては、例えば、0.01mM〜100mM、好ましくは、0.1〜50mMが挙げられるが、これらに限定されない。反応pHとしては、5〜10が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
高重合度環状グルカンと分画用ゲスト分子との組み合わせによって、包接化合物は、沈殿する場合もあれば、溶液中に溶解したまま残る場合もある。
【0072】
本発明の方法において、包接化合物を含む溶液の分画は、溶液中に溶解している物質(溶質)の特性(例えば、溶解度、親水性、疎水性)に基づいて行うことができる。包接化合物が沈殿を形成する場合には、包接化合物を含む溶液を遠心することによって、包接化合物を含む画分を得ることができる。包接化合物が上清部に残り、包接化合物を形成しない高重合度環状グルカンが沈殿する場合は、その逆に、遠心することによって、包接化合物を形成しない高重合度環状グルカンを除去し、包接化合物を含む溶液画分を得ることができる。遠心をする場合には、例えば、3500×g、20分の遠心を行う。
【0073】
高重合度環状グルカンにグルカン転移酵素を反応させる場合には、分画用ゲスト分子存在下で反応させても、分画用ゲスト分子非存在下で反応させてもよい。分画用ゲスト分子存在下で反応させる場合は、分画用ゲストと高重合度環状グルカンが包接化合物を形成できる温度で反応させることが好ましい。包接化合物を形成する温度は、ゲスト化合物に依存して、当業者が適宜選択し得る。また、そのような温度を選択することは、当業者が容易になし得る。グルカン転移酵素を反応させる場合、用いる高重合度環状グルカンの濃度としては、例えば、0.1%〜10%、好ましくは、0.5%〜10%が挙げられるが、これらに限定されない。酵素反応の濃度および反応条件は当業者に周知であり、用いる酵素に依存して変化する。また、当業者は、各酵素の至適条件を適宜決定することができる。
【0074】
アミロースまたは、高重合度環状グルカンにグルカン転移酵素を反応させた後に、分画用ゲスト分子と包接化合物を形成する場合には、酵素反応後の反応液に直接分画用ゲストを添加してもよいし、反応液から高重合度環状グルカンを精製後、水に溶解し、分画用ゲスト化合物を添加してもよい。このとき、酵素反応は用いる酵素に至適な温度で行い、分画用ゲスト分子と包接化合物を形成する場合には、それに至適な温度で行うことができる。
【0075】
アミロースにグルカン転移酵素を反応させる場合には、分画用ゲスト分子存在下で反応させても、分画用ゲスト分子非存在下で反応させてもよい。分画用ゲスト分子存在下で反応させる場合は、分画用ゲストと高重合度環状グルカンが包接化合物を形成できる温度で反応させることが好ましい。包接化合物を形成する温度は、ゲスト化合物に依存して、当業者が適宜選択し得る。また、そのような温度を選択することは、当業者が容易になし得る。用いるアミロースとしては、重合度が4〜50のアミロースが挙げられるが、これに限定されない。用いるアミロースは、誘導体化されていても、されていなくてもよい。グルカン転移酵素を反応させる場合、用いるアミロースの濃度としては、例えば、0.1%〜10%、好ましくは、0.5%〜10%が挙げられるが、これらに限定されない。用いる酵素の濃度としては、0.01U/ml〜10U/ml、好ましくは、0.02U/ml〜2U/mlが挙げられるが、これらに限定されない。酵素反応の時間は、1時間〜36時間、好ましくは、4時間〜16時間が挙げられるが、これらに限定されない。用いる酵素の反応条件(pH、温度)は、周知である。また、当業者は、各酵素の至適条件を適宜決定することができる。
【0076】
本発明の方法において、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収するためには、例えば、包接化合物が沈殿を形成する場合、その沈殿を溶解した後、10倍量のエタノールを添加して、高重合度環状グルカンを回収することができる。沈殿の溶解は、水を添加して加熱する、DMSOに溶解する、および終濃度1N NaOHを添加するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。また、溶液中の高重合度環状グルカンの回収で添加する物質には、エタノール、メタノール、アセトン、イソプロパノール等のアルコール、ケトン類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
包接化合物が沈殿を形成しない場合、包接化合物を含む溶液に10倍量のエタノールを添加することによって、高重合度環状グルカンを回収することができる。高重合度環状グルカンの回収で添加する物質には、エタノール、メタノール、アセトン、イソプロパノール等のアルコール、ケトン類が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0078】
以下に、本発明の方法について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
(実施例1:界面活性剤SB3−14との包接による高重合度環状グルカンの分画)
高重合度環状グルカン水溶液(5重量%)0.5 mLをガラス試験管中に入れ、沸騰水で加熱した。この溶液に、終濃度でそれぞれ0.9、1.8、2.8、4.6、9.2、23mMとなるように、界面活性剤SB3−14(シグマ社製)を加えて混合した後、室温にて放冷した。沈澱を遠心分離により回収し、加えた界面活性剤と同じ濃度の界面活性剤溶液で2回洗浄した。この沈澱に水を加え加熱溶解し、10倍容量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。高重合度環状グルカンの重合度分布はDIONEX社の糖分析システム(送液システム:DX300、検出器:PAD−2、カラム:CarboPacPA100)により分析した。溶出は流速:1ml/min,NaOH濃度:150mM、硝酸ナトリウム濃度:0分〜8mM、2分〜8mM、22分〜16mM、38分〜18mM、49分〜36mM、69分〜56mM、89分〜70mM、115分〜90mM、155分〜126mM(Gradient curve No.5)の条件で行った。
【0080】
分析の結果としての界面活性剤SB3−14により分画した高重合度環状グルカンの重合度分布を図1に示す。図1Aは、分画前の高重合度環状グルカン溶液を示す。SB3−14を、0.9mM(図1B)、1.8mM(図1C)、2.8mM(図1D)、4.6mM(図1E)、9.2mM(図1F)、23mM (図1G)添加後の遠心沈殿の結果を、図1B〜図1Gに示す。図中の数字は、高重合度環状グルカンの重合度を表す。この結果から、添加するSB3−14の濃度により沈殿として回収される高重合度環状グルカンの重合度が異なっていたことが示された。SB3−14の濃度が2.8mM以下では、主として重合度50の高重合度環状グルカンが回収され、SB3−14の濃度が上昇するに従って、重合度62、42、34〜35、38を中心とする高重合度環状グルカンが順に沈殿として回収された。得られた沈殿は、SB3−14 0.9mMのとき0.5mg(収率:2%)、1.8mMのとき2mg(収率:8%)、2.8mMのとき4mg(収率:16%)、4.6mMのとき8mg(収率:32%)、9.2mMのとき12mg(収率:48%),23mMのとき18mg(収率:72%)であった。
【0081】
(実施例2:界面活性剤SB3−14との包接による高重合度環状グルカンの分画)
高重合度環状グルカン水溶液(5重量%)2mLをガラス試験管中に入れ、沸騰水で加熱した。この溶液に終濃度で1.8mMになるようにSB3−14を加え、室温にて放冷した。沈澱を遠心分離により回収し、その上清部分に2.8mMになるようにSB3−14を加えるといった操作を5回繰り返した。それぞれの沈殿は水を加え加熱溶解し、10倍量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。
【0082】
高重合度環状グルカンの重合度分布をDIONEX社の糖分析システム(装置及び溶出条件は前記に同じ)で分析したところ、段階的にSB3−14を加えることにより重合度分布がそれぞれ異なる高重合度環状グルカンに分画することができた。SB3−14を段階的に加えた場合の界面活性剤SB3−14により分画した高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果を図2に示す。図2A〜Gの各々は、分画前(図2A)、1.8mM SB3−14添加後の遠心による沈殿画分(図2B)、図2Bの上清画分に2.8mM SB3−14添加後の遠心による沈殿画分(図2C)、図2Cの上清画分に2.8mM SB3−14添加後の遠心による沈殿画分(図2D)、図2Dの上清画分に2.8mM SB3−14添加後の遠心による沈殿画分(図2E):図2Eの上清画分に2.8mM SB3−14添加後の遠心による沈殿画分(図2F)、図2Fの上清画分に2.8mM SB3−14添加後の遠心による沈殿画分(図2G)、図2Gの上清画分(図2H)についての結果を示す。図2中の数字は、高重合度環状グルカンの重合度を表す。
【0083】
この方法により特に、重合度50、42、38、35、26の高重合度環状グルカンを多く含む画分を得ることができた。得られた沈殿は、SB3−14添加1回目のとき8mg(収率:8%)、2回目のとき13mg(収率:13%)、3回目のとき15mg(収率:15%)、4回目のとき15mg(収率:15%)、5回目のとき15mg(収率:15%)、6回目のとき5mg(収率:5%)であり、最後に上清中に残っていた高重合度環状グルカンは15mg(収率:15%)であった。
【0084】
(実施例3:界面活性剤SB3−16との包接による高重合度環状グルカンの分画)
高重合度環状グルカン水溶液(5重量%)1mLをガラス試験管中に入れ、沸騰水で加熱した。この溶液に、終濃度でそれぞれ0.5、1.0、3.0、10mMとなるように、界面活性剤SB3−16(シグマ社製)を加えて混合した後、室温にて放冷した。沈澱を遠心分離により回収し、加えた界面活性剤と同じ濃度の界面活性剤溶液で2回洗浄した。この沈澱に水を加え加熱溶解し、10倍容量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。DIONEX社の糖分析システム(装置及び溶出条件は前記に同じ)で分析した。
【0085】
高重合度環状グルカンの重合度分布をDIONEX社の糖分析システム(装置及び溶出条件は前記に同じ)で分析したところ、添加するSB3−16の濃度により沈殿として回収される高重合度環状グルカンの重合度が異なっていた。界面活性剤SB3−16により分画した高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果を図3に示す。図3A〜Eの各々は、分画前の高重合度環状グルカン溶液(図3A)、ならびにSB3−16 0.5mM(図3B)、1.0mM(図3C)、3.0mM(図3D)、および10mM(図3E)添加後の遠心による沈殿画分についての結果を示す。図中の数字は、高重合度環状グルカンの重合度を表す。SB3−16の濃度が0.5mM以下では、主として重合度62の高重合度環状グルカンが回収され、SB3−16の濃度が上昇するに従って、重合度50、42、35を中心とする高重合度環状グルカンが順に沈殿として回収された。SB3−16はSB3−14よりも親油基の炭化水素が炭素数2つ分長い化合物である。このことが、特に界面活性剤濃度が低い条件で、選択的に沈殿として回収される高重合度環状グルカンの重合度が異なった原因と考えられた。得られた沈殿は、SB3−16 0.5mMのとき5mg(収率:10%)、1.0mMのとき8mg(収率:16%)、3.0mMのとき15mg(収率:30%)、10mMのとき20mg(収率:40%)であった。
【0086】
(実施例4:界面活性剤CTABとの包接による高重合度環状グルカンの分画)
高重合度環状グルカン水溶液(10重量%)をガラス試験管中に入れ、沸騰水で加熱した。この溶液に、終濃度でそれぞれ1.8、9.2、46mMとなるように、界面活性剤CTAB(シグマ社製)を加えて混合した後、室温にて放冷した。沈澱を遠心分離により回収し、加えた界面活性剤と同じ濃度の界面活性剤溶液で2回洗浄した。この沈澱に水を加え加熱溶解し、10倍容量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。
【0087】
高重合度環状グルカンの重合度分布をDIONEX社の糖分析システム(装置及び溶出条件は前記に同じ)で分析したところ、添加するCTABの濃度により沈殿として回収される高重合度環状グルカンの重合度が異なっていた。界面活性剤CTABにより分画した高重合度環状グルカンの重合度分布の結果を図4に示す。図4A〜Dの各々は、分画前の高重合度環状グルカン溶液(図4A)ならびにCTAB 1.8mM(図4B)、9.2mM(図4C)、および46mM(図4D)添加後の遠心による沈殿画分を示す。図4中の数字は、高重合度環状グルカンの重合度を表す。
【0088】
CTABの濃度が9.2mM以下では、主として重合度62の高重合度環状グルカンが回収され、CTABの濃度が上昇するに従って、重合度50、42と34を中心とする高重合度環状グルカンが順に沈殿として回収された。CTABは親油基の炭化水素鎖の長さがSB3−16と同じ、炭素数16である。このことが、最初に沈殿として回収される高重合度環状グルカンの重合度が、SB3−16と同じ62になった原因と考えられた。
【0089】
(実施例5:高重合度環状グルカン溶液に界面活性剤SB3−14とグルカン転移酵素(アミロマルターゼ)を添加することによる分画された高重合度環状グルカンの製造)
高重合度環状グルカン水溶液(5重量%)と界面活性剤SB3−14(9.2mM)を含む水溶液0.5mLに、終濃度2.2U/mLのアミロマルターゼ(Thermus aquaticus由来)を40℃で作用させた。反応開始1日後に100℃、10分間の加熱により反応を停止した。反応は2連で行い、一方の反応液は、終濃度1N NaOHを加えて沈殿を溶解した後、10倍量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。もう一方の反応液は、遠心により上清と沈澱に分け、沈澱は加えた界面活性剤と同じ濃度の界面活性剤溶液で2回洗浄後、終濃度1N NaOHに溶解した。この溶液に10倍量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。
【0090】
高重合度環状グルカンの重合度分布をDIONEX社の糖分析システム(装置及び溶出条件は前記に同じ)で分析したところ、反応後に重合度50の高重合度環状グルカンが蓄積していることが分かった。界面活性剤SB3−14存在下、高重合度環状グルカンにアミロマルターゼを作用させた反応液中の高重合度環状グルカンの重合度分布の結果を、図5に示す。図5A〜Dの各々は、酵素反応前(図5A)、界面活性剤なし(図5B)、9.2mM SB3−14添加(図5C)、および9.2mM SB3−14添加後の遠心による沈殿画分(図5D)についての結果を示す。図中の数字は、高重合度環状グルカンの重合度を表す。
【0091】
この反応液を遠心して沈殿を回収することにより、重合度50の高重合度環状グルカンを主成分とする画分(図5D)が約8mg(収率:32%)得られた。
【0092】
また、高重合度環状グルカン水溶液(5重量%)と界面活性剤SB3−14(8.3、5.0、2.76mM)を含む水溶液0.5mLに、終濃度0.055U/mLのアミロマルターゼを40℃、1日作用させ、遠心により沈殿を回収したところ、どちらも重合度50の高重合度環状グルカンを主成分とする画分が得られた。収量はそれぞれ、10.3、5.4、2.0mg(収率:41、22、8%)であった。
【0093】
(実施例6:高重合度環状グルカン溶液に界面活性剤SB3−14とグルカン転移酵素(アミロマルターゼ)を添加することによる分画された高重合度環状グルカンの製造)
高重合度環状グルカン水溶液(5重量%)と界面活性剤SB3−14(27.5mM)を含む水溶液0.5mLに、終濃度0.22U/mLのアミロマルターゼを40℃で作用させた。反応開始1日後に100℃、10分間の加熱により反応を停止した。反応は2連で行い、一方の反応液は、加熱して沈殿を溶解した後、10倍量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。もう一方の反応液は、遠心により上清と沈澱に分けた。この上清に10倍量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。
【0094】
高重合度環状グルカンの重合度分布をDIONEX社の糖分析システム(装置及び溶出条件は前記に同じ)で分析したところ、反応後に重合度26、42、50を主成分とする高重合度環状グルカンが得られた。界面活性剤SB3−14存在下、高重合度環状グルカンにアミロマルターゼを作用させた反応液中の高重合度環状グルカンの重合度分布の結果を、図6Aに示す。図6Aは、27.5mM SB3−14添加した場合の結果を示す。図6Bは、27.5mM SB3−14添加し、遠心した後の上清画分についての結果を示す。図中の数字は、高重合度環状グルカンの重合度を表す。反応前の高重合度環状グルカンの重合度分布は図5に同じ。
【0095】
この反応液を遠心して沈殿を除くことにより、重合度26の高重合度環状グルカンを主成分とする画分(図6B)が約2mg(収率:8%)得られた。
【0096】
(実施例7:高重合度環状グルカン溶液に界面活性剤SB3−16とグルカン転移酵素(アミロマルターゼ)を添加することによる分画された高重合度環状グルカンの製造)
高重合度環状グルカン水溶液(5重量%)と界面活性剤SB3−16(0.25mM)を含む水溶液4mLに、終濃度0.055U/mLのアミロマルターゼを40℃で作用させた。反応開始1日後に遠心により沈殿を回収した。沈殿を脱イオン水で3回洗浄後、180μLの脱イオン水を加え、100℃、30分間加熱することにより沈殿を溶解後、10倍量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。
【0097】
界面活性剤SB3−16存在下、高重合度環状グルカンにアミロマルターゼを作用させた反応液中の高重合度環状グルカンの重合度分布の結果を図7に示す。図7Aは、酵素反応前の結果である。図7Bは、0.25mM SB3−16を含む反応液を遠心した沈殿画分についての結果を示す。図中の数字は、高重合度環状グルカンの重合度を表す。
【0098】
高重合度環状グルカンの重合度分布をDIONEX社の糖分析システム(装置及び溶出条件は前記に同じ)で分析したところ、重合度62を主成分とする高重合度環状グルカン(図7B)が2.8mg(収率:11%)得られた。
【0099】
(実施例8:高重合度環状グルカン溶液に界面活性剤CTABとグルカン転移酵素(アミロマルターゼ)を添加することによる高重合度環状グルカンの製造)
高重合度環状グルカン水溶液(5重量%)と界面活性剤CTAB(4.6mM)を含む水溶液0.5mLに、終濃度2.2U/mLのアミロマルターゼを40℃で作用させた。反応開始1日後に100℃、10分間の加熱により反応を停止した。反応は2連で行い、一方の反応液は、終濃度1N NaOHを加えて沈殿を溶解した後、10倍量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。もう一方の反応液は、遠心により上清と沈澱に分け、沈澱を加えた界面活性剤と同じ濃度の界面活性剤溶液で2回洗浄後、終濃度1N NaOHに溶解した。この溶液に10倍量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを回収した。
【0100】
高重合度環状グルカンの重合度分布をDIONEX社の糖分析システム(装置及び溶出条件は前記に同じ)で分析した。界面活性剤CTAB存在下、高重合度環状グルカンにアミロマルターゼを作用させた反応液中の高重合度環状グルカンの重合度分布の結果を図8に示す。図8A〜Dは、各々、酵素反応前(図8)、界面活性剤なし(図8B)、4.6mM CTABを添加した場合(図8C)、4.6mM CTABを添加して遠心した沈殿画分(図8D)についての結果を示す。図中の数字は、高重合度環状グルカンの重合度を表す。
【0101】
図8に示されるように、反応後に重合度62の高重合度環状グルカンが蓄積していることが分かった(図8C)。この反応液を遠心して沈殿を回収することにより、重合度62の高重合度環状グルカンを主成分とする画分(図8D)が約5mg(収率:20%)得られた。
(実施例9:アミロース溶液に界面活性剤SB3−14とグルカン転移酵素(アミロマルターゼ)を添加することによる高重合度環状グルカンの製造)
重合度7および平均重合度18の各アミロース水溶液(0.5重量%)と界面活性剤SB3−14(4.95mM)を含む水溶液1mLに、終濃度0.055U/mLのアミロマルターゼ(Thermus aquaticus由来)を40℃で作用させた。反応開始1日後に100℃、30分間の加熱により反応を停止した(反応液A)。反応液A0.5mLに10倍量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを沈殿として回収した。この沈殿を0.1mM酢酸バッファー(pH5.5)200μLに溶解し、3.6Uのグルコアミラーゼ(TOYOBOGLA-111)を加え、40℃、一晩反応させることにより、直鎖のグルカンをグルコースにまで分解後、100℃、5分加熱することにより反応を停止した。この反応液100μLに10倍量のエタノールを加えて高重合度環状グルカンを沈殿として回収した。
【0102】
反応液中の高重合度環状グルカン量は以下のように定量した。上記反応液Aを水で50倍に希釈した溶液を、200μLずつ2本のチューブに分注した。一方のチューブに、3.6Uのグルコアミラーゼを(反応液1)、もう一方のチューブに、3.6Uのグルコアミラーゼと5.2Uのα−アミラーゼ(Sigma A4268)を(反応液2)加え、37℃で一晩反応させ、生じたグルコース量を市販のグルコース定量キットを用いて定量した。高重合度環状グルカン量は、反応液2のグルコース量から反応液1のグルコース量を引くことによって求めた。
【0103】
アミロースに、界面活性剤SB3−14存在下、アミロマルターゼを作用させた反応液中の高重合度環状グルカンの重合度分布を、DIONEX社の糖分析システム(装置及び溶出条件は前記に同じ)で分析した結果を、図9に示す。図9Aは重合度7のアミロースを、図9Bは重合度18のアミロースを用いた結果を示す。図中の数字は、高重合度環状グルカンの重合度を表す。どちらのアミロースを用いた場合も、重合度26の高重合度環状グルカンを主成分とする画分が得られた。収率はそれぞれ、4.6および13%であった。
【0104】
(実施例10)
本実験では、高重合度環状グルカンに界面活性剤(SB3−14:3−(N,N−Dimethylmyristylammonio)propanesulfonate CTAB:Hexadecyltrimethylammonium bromide)を包接させて高重合度環状グルカンと界面活性剤の関係を明らかにすること、またSB3−14と複合体を形成しやすい高重合度環状グルカンを用いることによるタンパク質のリフォールディング法の改良を目的とした。
【0105】
まず、高重合度環状グルカンの溶液に界面活性剤を加えたときに生じた沈澱を回収し、粉末X線回折による結晶構造の解析、DIONEX社の糖分析システム(装置及び溶出条件は前記に同じ)による複合体形成に関与する重合度の分析を行った。その結果、高重合度環状グルカンと界面活性剤の包接複合体は6ヘリックス構造をとり、SB3−14が重合度50の高重合度環状グルカン、CTABが重合度62の高重合度環状グルカンと強く相互作用することが分かった。
【0106】
また、SB3−14と複合体を形成しやすい高重合度環状グルカンを用いてリゾチームをモデルタンパクとしたリフォールディングを行った。このSB3−14と強く相互作用する高重合度環状グルカンを用いると、リフォールディング後の溶液から界面活性剤を遠心により取り除くことができ、また、回収した複合体を解離させて界面活性剤及び高重合度環状グルカンを再利用できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に従って、重合度に基づく高重合度環状グルカンの分離・製造法が提供される。また、この方法に用いられるキットもまた、提供される。本発明の方法により分画された高重合度環状グルカンは、タンパク質のリフォールディングなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、界面活性剤SB3−14により分画した高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果である。
【図2】図2は、SB3−14を段階的に加えた場合の界面活性剤SB3−14により分画した高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果である。
【図3】図3は、界面活性剤SB3−16により分画した高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果である。
【図4】図4は、界面活性剤CTABにより分画した高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果である。
【図5】図5は、界面活性剤SB3−14存在下、高重合度環状グルカンにアミロマルターゼを作用させた反応液中の高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果である。
【図6】図6は、界面活性剤SB3−14存在下、高重合度環状グルカンにアミロマルターゼを作用させた反応液中の高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果である。
【図7】図7は、界面活性剤SB3−16存在下、高重合度環状グルカンにアミロマルターゼを作用させた反応液中の高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果である。
【図8】図8は、界面活性剤CTAB存在下、高重合度環状グルカンにアミロマルターゼを作用させた反応液中の高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果である。
【図9】図9は、界面活性剤SB3−14存在下、アミロースにアミロマルターゼを作用させた反応液中の高重合度環状グルカンの重合度分布を示す結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)少なくとも2つ以上の異なる重合度を有する高重合度環状グルカンの混合物を含む水溶液に分画用ゲスト分子を添加して、包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を分画して、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得る工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)少なくとも2つ以上の異なる重合度を有する高重合度環状グルカンの混合物を含む水溶液に分画用ゲスト分子を添加して、包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を沈殿部と上清部に分離する工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた沈殿部および/または上清部から、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項3】
分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)高重合度環状グルカンを含む水溶液にグルカン転移酵素を添加して、該高重合度環状グルカンに該グルカン転移酵素を反応させる工程;
(b)工程(a)の酵素反応溶液に分画用ゲスト分子を添加して、包接化合物を形成させる工程;
(c)工程(b)で形成された該包接化合物を含む溶液を分画して、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得る工程;および
(d)工程(c)の分画によって得られた、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項4】
分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)高重合度環状グルカンを含む水溶液にグルカン転移酵素を添加して、該高重合度環状グルカンに該グルカン転移酵素を反応させる工程;
(b)工程(a)の酵素反応溶液に分画用ゲスト分子を添加して、包接化合物を形成させる工程;
(c)工程(b)で形成された該包接化合物を含む溶液を沈殿部と上清部に分離する工程;および
(d)工程(c)の分画によって得られた沈殿部および/または上清部から、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項5】
分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)アミロースを含む水溶液にグルカン転移酵素を添加して、高重合度環状グルカンを形成する工程;
(b)工程(a)の酵素反応溶液に分画用ゲスト分子を添加して、該高重合度環状グルカンと分画用ゲスト分子との包接化合物を形成させる工程;
(c)工程(b)で形成された該包接化合物を含む溶液を分画して、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得る工程;および
(d)工程(c)の分画によって得られた、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)直鎖のグルカンを含む水溶液にグルカン転移酵素を添加して、高重合度環状グルカンを形成する工程;
(b)工程(a)の酵素反応溶液に分画用ゲスト分子を添加して、該高重合度環状グルカンと分画用ゲスト分子との包接化合物を形成させる工程;
(c)工程(b)で形成された該包接化合物を含む溶液を沈殿部と上清部に分離する工程;および
(d)工程(c)の分画によって得られた沈殿部および/または上清部から、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項7】
分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)高重合度環状グルカンを含む水溶液に分画用ゲスト分子およびグルカン転移酵素を添加して、該高重合度環状グルカンに該グルカン転移酵素を反応させて、包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を分画して、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得る工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項8】
分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)高重合度環状グルカンを含む水溶液に分画用ゲスト分子およびグルカン転移酵素を添加して、該高重合度環状グルカンに該グルカン転移酵素を反応させて、包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を沈殿部と上清部に分離する工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた沈殿部および/または上清部から、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項9】
分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)アミロースを含む水溶液に分画用ゲスト分子およびグルカン転移酵素を添加して、該アミロースに該グルカン転移酵素を反応させて高重合度環状グルカンを形成させて、該高重合度環状グルカンと該分画用ゲスト分子との包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を分画して、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分を得る工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを含む画分から、該所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項10】
分画された高重合度環状グルカンの製造方法であって、以下の工程:
(a)アミロースを含む水溶液に分画用ゲスト分子およびグルカン転移酵素を添加して、該アミロースに該グルカン転移酵素を反応させて高重合度環状グルカンを形成させて、該高重合度環状グルカンと該分画用ゲスト分子との包接化合物を形成させる工程;
(b)工程(a)で形成された該包接化合物を含む溶液を沈殿部と上清部に分離する工程;および
(c)工程(b)の分画によって得られた沈殿部および/または上清部から、所望の重合度を有する高重合度環状グルカンを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記所望の重合度を有する高重合度環状グルカンの重合度が26、34、35、38、42、50、62、74からなる群から選択される、方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記分画用ゲスト分子が、重合度17〜5000の高重合度環状グルカンを含む0.1〜50%(w/v)水溶液に対して15%以下の濃度で添加された場合、結晶性の沈殿を生じる、方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記分画用ゲスト分子が、SB3−10、SB3−12、SB3−14、SB3−16、SDS、CTAB、n−ブタノール、D−リモネン、1−ナフトール、Tween40,Tween60、Tween80からなる群から選択される、方法。
【請求項14】
請求項3〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記グルカン転移酵素が、
(a)アミロースの環状化反応を触媒する活性、および
(b)環状α−1,4グルカンを生成する活性、を有し、かつ
(c)重合度8以下の環状α−1,4グルカンを生成する活性を有さない、
酵素である、方法。
【請求項15】
請求項3〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記グルカン転移酵素が、D−酵素、アミロマルターゼ、グリコーゲンデブランチングエンザイム、および4−α−グルカン転移酵素からなる群から選択される、方法。
【請求項16】
請求項1〜4、7、および8のいずれか1項に記載の方法であって、前記分画される高重合度環状グルカンが誘導体化された高重合度環状グルカンである、方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法に使用するためのキットであって、分画用ゲスト分子を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−273963(P2006−273963A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93240(P2005−93240)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年3月5日 社団法人日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会2005年度(平成17年度)大会講演要旨集」に発表
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】