説明

切削用回転刃および切削加工装置

【課題】一度に多量のワークピースの端部を切削加工により処理出来る切削用回転刃及び加工装置を提供する。
【解決手段】切削加工装置10は、垂直フレーム14に回動可能に支持されたベース18を有し、ベース18の前面において、下端に定盤22を設け、上部に昇降台30を昇降ガイド28に沿って上下に移動可能に設ける。昇降台30に、軸受け32によって回転軸34を支承し、回転軸34に回転刃36を取り付ける。ベース18の後面にエアシリンダ40が設けられ、エアシリンダ40のロッドがS字連結板48によって、昇降台30に連結される。したがって、エアシリンダ40のロッドが下方に変位すると、昇降台30すなわち回転刃36も下降する。下降に伴って、回転刃36の周方向に間隔を隔てて設けた複数の刃部に形成した切削刃が、次々と、定盤22上に支持したワークピースの角部に当たる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は切削用回転刃および切削加工装置に関し、特に、たとえば定盤上に載置されたワークピース(被切削加工物)の端縁を切削加工する、新規な切削用回転刃および切削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、紙を透明プラスチックフィルムでシール(ラミネート)するラミネート加工が知られている。このラミネート加工したフィルムの角部をバリのない、きれいな円形(角丸)に揃えたいという要求がある。このような角丸加工を行うためには、従来では、1〜3枚ずつ手作業でラミネート加工したフィルムの角部を切断して加工していた。したがって、作業性が悪く、しかも仕上がりにばらつきがあるという問題があった。
【0003】
一方、特許文献1には、フィルムの隅角に角加工を施すことができるフィルム切断装置が開示されている。特許文献1に開示されている背景技術では、噛み合う第1刃および第2刃を用いてフィルムを切断するので、その第1および第2の刃の形状を適宜に設定すれば、切断後のフィルムの隅角を角丸にすることができる。
【特許文献1】特開2006‐159394号[B26D 1/09 B26D 3/00 B31B 1/20]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の背景技術は切断刃を用いているため、一度に多量のワークピースを処理することはできないので、依然として、作業性に難点がある。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、ワークピースの端縁を切削加工できる、新規な切削用回転刃および切削加工装置を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、ワークピースの端縁を効率的に切削加工できる、切削用回転刃および切削加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、回転軸に取り付けられる、切削加工のための回転刃であって、周方向に間隔を隔てて、かつ各々が接線に平行に延びる複数の刃部、および複数の刃部のそれぞれに形成され、幅方向に有効な切削刃を備える、切削用回転刃である。
【0008】
請求項1の発明では、回転刃(36:実施例で相当する部分または要素を例示的に示す参照符号。以下同様。)は、回転軸(34)に固着される。回転周方向に間隔を隔てて、複数の刃部(38)が形成される。刃部(38)は、それぞれ、回転円の接線と平行な方向に延びて形成され、先端にワークピースの所望加工形状に適合した形状の切削刃(38a)が、回転刃の幅方向に延びて、形成される。
【0009】
請求項1の発明によれば、回転刃が回転しながら切削刃がワークピースの端縁(角部のような)に当たるので、安定して効率よく、ワークピースを切削加工できる。
【0010】
請求項2の発明は、回転軸、回転軸をこの回転軸の軸に直交する方向に変位させる変位手段、および回転軸に取り付けられる回転刃を備え、回転刃は、少なくとも1つの刃部を有し、刃部には回転刃の幅方向に有効な切削刃が形成され、さらに回転軸の変位に従って変位した回転刃の切削刃がワークピースの端縁に接触するようにワークピースを支持する支持手段、および回転刃の切削刃がワークピースに接触しかつ回転刃が回転することによってワークピースに付与される移動力に抗してワークピースの移動を阻止する移動阻止手段を備える、切削加工装置である。
【0011】
請求項2の発明では、回転軸(34)が設けられ、この回転軸(34)は、たとえばモータ(52)のような回転駆動手段によって回転される。回転軸(34)はまた、変位手段(30,40,42,44,48)によって、軸に直交する方向に変位される。回転刃(36)が変位したとき、たとえば、下降したとき、切削刃(38a)が、たとえば定盤(22)のような支持手段で支持したワークピース(64)の端縁(64a)に接触する。切削刃(38a)が接触した状態で回転刃(36)が回転されるので、ワークピース(64)は、その回転刃によって与えられる力によって、動こうとする。しかるに、移動阻止手段(24,26)がその移動を阻止するので、ワークピース(64)は、結果として一定位置に位置決めされることになり、精度よく、しかも回転刃の回転に応じて次々と当たる切削刃(38a)によって効率的に、切削加工され得る。
【0012】
請求項3の発明は、回転軸を支承する軸受け、および回転軸を駆動する駆動手段をさらに備え、変位手段は軸受けおよび駆動手段を一緒に変位させる、請求項2記載の切削加工装置である。
【0013】
請求項3の発明では、軸受け(32)が回転軸(34)を回転自在に支持する。そして、たとえばモータ(52)によって回転軸を駆動するが、変位手段は、このような軸受けと駆動手段とを一緒に変位させる。
【0014】
請求項4の発明は、ベースをさらに備え、回転刃はベースの前方に設けられ、変位手段は、変位手段は、ベースの後方に設けられた変位駆動手段、および変位駆動手段による変位を回転軸に伝達する変位伝達手段を含む、請求項3記載の切削加工装置である。
【0015】
請求項4の発明では、ベース(18)が設けられ、このベース(18)の前面側に回転刃(36)を配置する。変位駆動手段を構成する、たとえばエアシリンダ(40)はベース(18)の後面側に配置される。たとえば、S字連結板(48)が、変位伝達手段として、変位駆動手段の変位力を回転刃に伝達する。
【0016】
請求項5の発明は、回転刃は、回転周方向に間隔を隔てて形成される複数の刃部を有し、各刃部には回転刃の幅方向に有効な切削刃が形成される、請求項2ないし4のいずれかに記載の切削加工装置である。
【0017】
請求項5の発明では、回転刃の回転周方向に間隔を隔てて複数の切削刃をもうけているため、回転刃の1回転ごとに複数の切削刃でワークピースを切削するので、効率がよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、回転刃を変位させワークピースに接触させるので、精度よくかつ効率的に切削加工することができる。
【0019】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1‐図4に示すこの発明の一実施例の切削加工装置10は、ベース12を含み、このベース12上に垂直フレーム14が直立して設けられる。ベース12の下面には移動用のキャスタ16が取り付けられる。そのため、この実施例の切削加工装置10は任意の場所に移動可能である。
【0021】
垂直フレーム14は、図1には図解できないが、その上端が紙面に直交する奥行き方向に一定間隔で隔てられたU字形状(フォーク形状)とされ、その上端間にはベース18が嵌め合わされる。このベース18は、ベース18は平板であり、軸20によって、回動自在に、垂直フレーム14に取り付けられる。ベース18の下部前面に、ワークピース64(後述)を載置して支持するための支持手段として働く、定盤22が取り付けられる。
【0022】
なお、ベース18を垂直フレーム14に対して回動させるための機構としては、任意の機構が利用可能であるが、一例として、たとえば実用新案登録第3070027号公報の図6に示すような、ハンドルでベース18の角度を変更する機構が好適する。
【0023】
定盤22の上には、図4から特によく分かるように、互いに間隔を隔てて、かつ互いの内面24aおよび26aが上から見たとき適宜の角度(実施例では、直角)を形成するよう配置される2つの当接部材24および26が設けられる。ただし、この当接部材24および26は、図示しない取り付け機構によって、定盤22上で位置や角度を変更できるように、定盤22に取り付けられている。各当接部材24および26の内面24aおよび26aが、角部を挟む、ワークピースの2辺にそれぞれ当接し、ワークピースを、定盤22上に保持することができる。なお、当接部材24および26は、後述のように、ワークピース64の移動を阻止するための移動阻止手段として機能する。
【0024】
ベース18の前面には、幅方向に間隔を隔てて2組の昇降ガイド28が上下方向に延びて設けられる。各昇降ガイド28は、リニア(ガイド)ウェイと呼ばれるもので、断面矩形のレール28aとそのレール28aに嵌り合う断面「コ」字状のユニット(外筒)28bとを含む。レール28aとユニット28bとの間にはたとえば鋼球が介在され、ユニット28bは鋼球による点接触でレール28a上を滑動(移動)する。レール28aは、ユニット28bの移動可能長さを決めるが、この実施例では、ベース18のほぼ全長に亘る長さを有し、ベース18の前面に固着される。ユニット28bは、レール28aよりかなり短く、昇降台30の後面(裏面)に固着される。したがって、昇降台30が昇降ガイド28によって上下方向、すなわち、ベース18の主面に平行な方向に移動可能に支持される。
【0025】
昇降台30には、その前面に軸受け32が設けられ、この軸受け32によって回転軸34が回転自在に支承される。回転軸34の一端には回転刃36が固着され、したがって、回転刃36は回転軸34の回転に伴って回転される。
【0026】
この回転刃36は、図5からよくわかるように、周方向(回転方向)に間隔を隔てて設けられた複数の(この実施例では4つの)刃部38を有し、実施例では図3における矢印A方向に回転される。刃部38には、この回転刃36の幅方向(厚み方向)に有効な所定形状を有する切削刃38aが形成される。つまり、切削刃38aは回転刃36の幅方向(厚み方向)に延びて形成される。この切削刃38aの形状は、ワークピースの加工部分の最終形状に適合するように形成されていて、実施例では、最終形状が角丸なので、切削刃38aは緩やかな円弧を有する凹形状とされる。ただし、切削刃38aのアール(R)とワークピース64の角部64a(図2:ただし、図2では図示の便宜上両方のアールを同じに描いている。)とは同じでもよいが、発明者等の実験によれば、前者を後者よりやや大きくしたほうが切削加工が良好に行なえた。たとえば、角部64aのアールが3Rだとすると、切削刃38aのアールはそれより大きく、たとえば5Rとする。
【0027】
刃部38はまた、図5に示すように、回転刃36の回転周側面の形状を円としたとき、その円の接線方向に延びて形成される。これによって、回転刃36が回転するとき、刃部38の切削刃38aがワークピース64に対して上面から直角に当ることになる。このとき、切削刃38aの刃角α(図5)はたとえば、10°〜60°程度に設定される。刃角αがあまり大きすぎると切削刃38aのワークピース64への喰い込みが悪く、切削刃38aからワークピース64が逃げてしまうし、小さすぎれば、ワークピース64への喰い込みが強すぎてしまうからである。
【0028】
ベース18の後方には、適宜の取り付け手段によって、変位駆動手段の一例であるエアシリンダ40のエアチューブ42を固定する。エアシリンダ40には、チューブ42の下端からチューブ42の軸方向へ変位可能なロッド44が設けられる。したがって、エアチューブ42にホース(図示せず)からエアが注入されたとき、ロッド44はチューブ42の下端から下方に向かって突出する。
【0029】
ロッド44の先端には、たとえば、ねじ止めなどの適宜の手段で、U字金具46の底板46aが固着され、このU字金具46の両側の側板46bには、それぞれ、S字連結板48がたとえばねじ止めなどの適宜の手段で取り付けられる。各S字連結板48は、1つの縦杆48aとその上下端から互いに背反する前後方向に伸びる上側杆48bおよび下側杆48cとを有し、下側杆48bがU字金具46の側板46aに固着される。S字連結板48の上側杆48cは、たとえば、ねじ止めなどの適宜の手段によって、先に説明した昇降台30の側面に固着される。したがって、S字連結板46は、エアシリンダ40のロッド44と昇降台30とを連結する連結部材として機能し、エアシリンダ40のロッド44の上下方向の変位に応じて、昇降台30も上下方向に変位(昇降)する。
【0030】
なお、図2からよくわかるように、2つのS字連結板48は、ベース18を挟んで、ベース18の両側に配置されるが、ベース18にこのようなS字連結板48が貫通する孔またはスリットを形成し、2つのS字連結板48がそこを通してベース18を貫通するようにしてもよい。いずれにしても、連結部材すなわちS字連結板48は、ベース18の前方の昇降台30とベース18の後方のシリンダロッド44とを、ベース18を越えて、連結する。
【0031】
前述の軸34の他端にはタイミングプーリ50が固着され、このタイミングプーリ50には、モータ52のモータ軸54に固着されたタイミングプーリ56との間に、タイミングベルト58が掛け渡される。したがって、モータ52が駆動されると、それによる回転がモータ軸54からプーリ56、ベルト58、プーリ50と伝わり、回転軸34を回転させるので、結局、モータ52が回転刃36を矢印A(図3)方向へ回転させる。つまり、モータ52が回転刃36を回転させる回転駆動手段の一部を構成する。
【0032】
モータ52は、図4などからよくわかるように、ベース18の後面でさらにエアシリンダ40より後方に、取り付け板60によって取り付けられる。この取り付け板60は、一方の(必要なら、両方の)上述のS字連結板48の縦杆48aに、たとえば、ねじ止めなどの適宜の手段で固着される。先に説明したように、シリンダ40のロッド44の上下方向の変位に応じてS字連結板48すなわち昇降台30が上下方向に変位し、そのS字連結板48の変位に伴って取り付け板60に取り付けられたモータ52も変位する。したがって、エアシリンダ40やS字連結板48などが、回転軸34すなわち回転刃36を昇降させるための変位手段として機能する。
【0033】
なお、上述のしたように、回転刃36の各刃部38の切削刃38aは定盤22上に載置されたワークピース64に直角に当らなければならないので、ベース18には、切削刃38aと定盤22との角度(90度)を調整するための角度調節機構62が組み込まれている。
【0034】
このような、図1‐図4に示す実施例において、エアシリンダ40の1つのポートにエアを注入すると、ロッド44が下方に変位する。それに応じて、S字連結板48によってロッド44に連結された昇降台30が、昇降ガイド28にガイドされて下方に移動する。そのため、昇降台30に取付けた回転刃36が下降する。他方、回転刃36は昇降台30すなわち回転刃36とともに下降するモータ50によって、図3の矢印A方向に回転されている。
【0035】
回転刃36が下降すると、図6に示すように、各刃部38の先端の切削刃38aが定盤22上に積層し、押さえ手段としてのたとえばクランパ65によってクランプされて保持されたワークピース64の角部64aに当る。ただし、このクランパ65は、昇降台30を昇降するためのエアシリンダ40のロッド44に連結され、そのエアシリンダ40によって所定位置まで下降されるようにしてもよい。この場合、作業者の足で操作するフットスイッチまたは手で操作する押しボタンスイッチ(いずれも図示せず)は2段階で操作することができ、最初の操作でクランパ65が下降され、次の操作で(最後まで踏み込むと)回転刃36(昇降台30)が下降されるようにする。ただし、これとは異なる制御方法で、クランパ65と昇降台30すなわち回転刃36とを個別に下降(変位)させるようにしてもよい。
【0036】
切削刃38aがワークピース64の角部64aに当ると、このとき回転刃36が回転しているので、切削刃38aがワークピース64に当ったまま、切削刃38aが矢印B方向に移動する。したがって、ワークピース64に矢印B方向へ移動する力が付与され、ワークピース64が矢印Bに引き寄せられる。やがて、角部64aを挟んだワークピース64の2辺が、当接部材24および26の内面24aおよび26aに当接することになり、ワークピース64の矢印B方向への移動は当接部材24および26によって阻止される。このことは、図6に示すように定盤22上に積層支持されている各ワークピース64についても切削刃が当たるときは全て同じである。つまり、ワークピース64は回転刃36の回転によって当接部材24および26で移動が阻止されるまで矢印B方向へ移動するが、角部64aを挟む2辺が当接部材24および26に当接するとその移動が止められる。換言すれば、当接部材24および26は、回転刃36の回転によってワークピース64に付与される移動力に抗して、ワークピース64の移動を阻止する。したがって、全てのワークピース64は、結局、当接部材24および26によって位置決めされる一定位置でかつ一定の姿勢で回転刃36の各切削刃38aで切削されることになり、そのために、切削加工精度がよい。しかも、全てのワークピースについて同じように位置決めした上で切削加工することになるので、たくさんのワークピースを積層した状態で安定して加工できる。
【0037】
図7および図8を参照して、もう少し詳しく説明する。回転刃36が変位(下降)して切削刃38aがワークピース64に当たると、ワークピース64の角部64aは図7に示すように、押し下げられて撓み、切削刃38aから逃げる。この角部の撓み(逃げ)は、積層した各ワークピースについて切削刃に当たるとき同じように生じる。一方、先に説明したように、切削刃38aのアールをワークピース64の角部64の最終仕上がりのアールより大きく設定しているので、図8に示すように、切削刃38aは角部64aの端縁より奥に入り込む。つまり、切削刃38aはワークピース64の角部64の端縁にかぶさった状態(重なった状態)で下降するため、図7のように角部64aが撓んだとしても、切削刃38aは、角部64aに引っかかるので、角部64aを切削することができる。
【0038】
さらに、実施例の回転刃36には回転周方向に複数の刃部38すなわち切削刃38aを形成しているため、1つ1つの切削刃では少しずつでも、これらの切削刃38aが次々にワークピース64に当たって削り取るので、最終的に、各ワークピース64が切削されるのである。
【0039】
このように、この実施例の切削加工装置10によれば、回転刃36の回転によってワークピース64を引き寄せながら切削するので、たとえば、ラミネート加工したフィルムのように面方向に厚みが異なるワークピースであっても、均質な切削加工を行えるのである。
【0040】
なお、上述の実施例では、ワークピース64に角丸加工を施すために、回転刃36の切削刃38aは緩やかな円弧を有する凹形状に形成された。しかしながら、この刃38aの形状はこの実施例の形状に限られるものではなく、たとえば図9に示すように直線形状に形成されてもよい。図9に示す回転刃36を用いた場合、ワークピース64の角部が直線状に切削されることになる。
【0041】
また、先の実施例では回転刃36は接線方向に延びる4つの刃部38を有するものとして説明した。しかしながら、刃部38の数は、2以上であれば任意でよく、たとえば図9に示すように5つの刃部38を形成するようにしてもよい。
【0042】
さらに、上述の説明では、図1‐図4で示す実施例は、たとえばパウチシートのようなワークピースを複数積層して加工する場合に効率的にかつ精度よく加工できることを説明したが、この実施例の切削加工装置10は、図10に示すように、たとえば、アクリル板のような比較的肉厚の合成樹脂からなるワークピース64Aであっても、その端縁たとえば角部64Aaを切削加工できる。
【0043】
従来このような厚板を角丸加工するには、砥石のようなもので研磨加工する方法が一般てきであったが、その方法では設備が大掛かりになるだけでなく、効率がよくない。これに対して実施例のような切削加工装置10によれば、回転刃36の周方向に形成された複数の刃部38の切削刃38aが次々とワークピースを削り取るので、効率がよい。しかも、先に説明したように、回転刃36の回転によってワークピース64Aを当接部材24および26に当接させたまま一定位置で切削するので、各刃部の切削刃の切削位置のばらつきがなく、順次繰り出される各刃でワークピースの同じ位置を切削することになり、厚板であってもきれいに仕上げることができる。
【0044】
さらに、上述の実施例では、ワークピース64(64A)の角部64a(64Aa)を切削加工する場合について説明した。しかしながら、図1‐図4で示す実施例では、ワークピースの端縁であればどのような位置ででも、どのような形状にでも切削加工することができる。
【0045】
図11に示す切削加工の例では、回転刃36Aに、突出する形状の切削刃38aAを形成し、その切削刃38aAで、ワークピース64Bの側端縁64Baに切り込み(切り欠き:ノッチ)を形成する。この場合、当接部材24Aおよび26Aは、それぞれワークピース64Bの2辺に同時に当接するようなL字形状のものとすれば、回転刃36による矢印B方向への拘引力と相俟って、ワークピース64Bを一層確実に保持できる。この実施例でも、各刃38aAによる間欠的な切削加工によって、端縁64BaにV字形状の切り込みを加工することができる。
【0046】
さらに、変位駆動手段として実施例では、エアシリンダ40を用いたが、これに限定されるものではなく、他の流体アクチュエータを用いてもよいし、回転を直線に変換する機構なども利用可能である。
【0047】
さらにまた、上述の実施例では回転刃が、周方向に間隔を隔てて複数の刃部すなわち切削刃を有するものとして説明した。複数の切削刃を設けたほうが、回転刃が1回転する間に複数回ワークピースが切削されるので切削効率が上がるという利点があるが、この発明は、回転周方向に1つだけ切削刃を設ける場合を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1はこの発明の一実施例を示す図解図である。
【図2】図2は図1実施例を上から見た一部省略の図解図である。
【図3】図3は図1実施例を前面(側面)から見た一部省略の図解図である。
【図4】図4は図1実施例の要部を詳細に示す図解図である。
【図5】図5は図1実施例で用いられる回転刃の一例を示す図解図であり、図5(A)は側面から見た図で、図5(B)は上から見た図である。
【図6】図6は図1実施例でワークピースを切削加工している状態を示す図解図である。
【図7】図7は図1実施例でワークピースを切削加工するときワークピースの角部がたわむことを示す図解図である。
【図8】図8は図1実施例でワークピースを切削加工するとき、切削刃のアールをワークピースの角部の最終形状のアールより大きく設定したことによって切削刃が奥まで当たることを示す図解図である。
【図9】図9は図1実施例で用いられる回転刃の他の例を示す図解図であ、図9(A)は側面から見た図で、図9(B)は上から見た図である。
【図10】図10は図1実施例でワークピースを切削加工している状態の他の例を示す図解図である。
【図11】図11は図1実施例でワークピースを切削加工している状態のさらに他の例を示す図解図である。
【符号の説明】
【0049】
10 …切削加工装置
18 …ベース
22 …定盤
24,26 …当接部材
28 …昇降ガイド
30 …昇降台
34 …回転軸
36 …回転刃
38 …刃部
38a …切削刃
40 …エアシリンダ
44 …シリンダロッド
48 …S字連結板
50,56 …タイミングプーリ
52 …モータ
58 …タイミングベルト
64,64A,64B …ワークピース
64a,64Aa …角部
64ba …端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けられる、切削加工のための回転刃であって、
周方向に間隔を隔てて、かつ各々が接線に平行に延びる複数の刃部、および
前記複数の刃部のそれぞれに形成され、幅方向に有効な切削刃を備える、切削用回転刃。
【請求項2】
回転軸、
前記回転軸をこの回転軸の軸に直交する方向に変位させる変位手段、および
前記回転軸に取り付けられる回転刃を備え、前記回転刃は、少なくとも1つの刃部を有し、前記刃部には前記回転刃の幅方向に有効な切削刃が形成され、さらに
前記回転軸の変位に従って変位した前記回転刃の前記切削刃がワークピースの端縁に接触するように前記ワークピースを支持する支持手段、および
前記回転刃の前記切削刃が前記ワークピースに接触しかつ前記回転刃が回転することによって前記ワークピースに付与される移動力に抗して前記ワークピースの移動を阻止する移動阻止手段を備える、切削加工装置。
【請求項3】
前記回転軸を支承する軸受け、および前記回転軸を駆動する駆動手段をさらに備え、前記変位手段は前記軸受けおよび前記駆動手段を一緒に変位させる、請求項2記載の切削加工装置。
【請求項4】
ベースをさらに備え、
前記回転刃は前記ベースの前方に設けられ、
前記変位手段は、前記ベースの後方に設けられた変位駆動手段、および前記変位駆動手段による変位を前記回転軸に伝達する変位伝達手段を含む、請求項3記載の切削加工装置。
【請求項5】
前記回転刃は、回転周方向に間隔を隔てて形成される複数の刃部を有し、各刃部には前記回転刃の幅方向に有効な切削刃が形成される、請求項2ないし4のいずれかに記載の切削加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−260108(P2008−260108A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106013(P2007−106013)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(507122489)
【Fターム(参考)】