説明

切抜き加工装置用コンピュータプログラム

【課題】切抜き加工装置によって二次元情報が切り抜き加工された被加工シートにおける不要部分を台紙上から捲り易くすることができる切抜き加工装置用コンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】切抜き加工装置100は、記録メディアWKに対して相対変位可能に支持された加工キャリッジ106に工具ホルダ107を保持している。工具ホルダ107は、ピン状の押圧工具109を保持している。押圧工具109の先端部には、尖った形状の押圧部109aが形成されている。切抜き加工装置100が実行する切抜き加工プログラムは、被加工シートCSの不要部分を台紙BSから捲る捲り加工ステップを含んでいる。捲り加工ステップは、押圧工具109の押圧部109aを被加工シートCSの不要部分における張出部BPに押し付けた状態で同押圧工具109を張出部BPから遠ざける方向に変位させることにより同張出部BPを台紙BSから捲る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台紙上に分離可能に積層された被加工シートに対して所望する二次元情報を切り抜き加工する切抜き加工装置に適用される切抜き加工装置用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、台紙上に分離可能に積層された被加工シートに所望する文字、記号および図形などからなる二次元情報を切り抜き加工する切抜き加工装置がある。一般に、切抜き加工装置は、台紙と被加工シートとからなる記録メディアをプラテン上で保持するとともに、この保持した記録メディアを所定の搬送方向に変位させながら、カッターを保持したキャリッジを記録メディアの搬送方向に直交する方向に往復変位させることにより二次元情報を切り抜き加工する。
【0003】
このような切抜き加工装置によって切り抜き加工された記録メディアは、ユーザによって切抜き加工装置から取り外された後、二次元情報の施工対象物の表面に貼り付けられる。具体的には、ユーザは、二次元情報が切り抜き加工された被加工シートのうち施工対象物に貼り付けられる使用部分以外の不要部分を台紙上から剥がして除去した後、アプリケーションシート(転写用シート)を用いて施工対象物に前記使用部分を転写する。この場合、施工対象物に貼り付けられる使用部分には、前記二次元情報を被加工シート自身で表した中実型の被加工シートと、同二次元情報を被加工シートの切り抜いた空洞部によって表わした場合の中空型の被加工シートとがある。
【0004】
しかしながら、被加工シート上からこれらの不要部分を取り除く所謂カス取り作業は、被加工シートが台紙と同じ大きさおよび同じ形状で密着しているため、台紙から不要部分を捲り難く極めて煩雑かつ時間を要する作業であるという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、切抜き加工装置によって二次元情報が切り抜き加工された被加工シートにおける不要部分を台紙上から捲り易くすることができる切抜き加工装置用コンピュータプログラムを提供することにある。
【0006】
なお、下記特許文献1には、二次元情報が切り抜き加工された被加工シートに対して一定間隔の切断線を加工することにより被加工シートにおける不要部分の剥離作業を容易化したカッティングプロッタが開示されている。また、下記特許文献2には、二次元情報における使用部分の内側に不要部分が入り込んでいる場合において、使用部分の内側に入り込んだ不要部分を使用部分に含めるように使用部分の外側の輪郭線を連続的に繋げることにより、使用部分に入り込んだ不要部分が使用部分ととともに剥がれることを防止する切れ目の形成方法が開示されている。しかし、これらの各特許文献1,2に記載された各技術は、被加工シートから不要部分を剥がす際に使用部分が不要部分とともに剥がれてしまうことを防止するものであり、依然として被加工シートにおける不要部分が台紙上から捲り難いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−113893号公報
【特許文献2】特開平06−238594号公報
【発明の概要】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、台紙上に分離可能に積層された被加工シートを切断するためのカッターおよび同被加工シートに押し付けられる押圧部を有する押圧工具をそれぞれ保持する加工キャリッジと、加工キャリッジに保持されたカッターおよび押圧工具を被加工シートに対して押圧および離隔させる工具押圧手段と、加工キャリッジと被加工シートとを相対変位させる相対変位手段とを備え、カッターによって被加工シートを切断して二次元情報を切り抜き加工する切抜き加工装置に適用される切抜き加工装置用コンピュータプログラムであって、切抜き加工装置の作動を制御する制御装置に、二次元情報が切り抜き加工された被加工シートの不要部分における輪郭のうち外側に張り出した張出部に押圧工具による加工位置を特定する押圧工具加工位置特定ステップと、工具押圧手段および相対変位手段の作動を制御して押圧工具の押圧部を加工位置に押圧した状態で、押圧部を張出部から遠ざける方向に変位させて張出部を台紙上から捲るシート捲りステップとを実行させることにある。
【0009】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、切抜き加工装置用コンピュータプログラムは、二次元情報が形成される被加工シート上の不要部分における張出部に押圧工具による加工位置を特定した後、この特定した加工位置に押圧工具を押し付けるとともに同押圧工具を張出部から遠ざける方向に変位させる。このため、被加工シートの不要部分における押圧工具が押し付けられた張出部は、この押圧工具の押圧部に引っ張られて台紙上から捲り上がる。これにより、二次元情報が切り抜き加工された被加工シートから不要部分を剥がす際、ユーザは被加工シートの張出部における捲れた部分を摘まむことにより容易に不要部分を台紙上から剥がすことができる。
【0010】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記切抜き加工装置用コンピュータプログラムにおいて、さらに、工具押圧手段および相対変位手段の作動を制御して被加工シート上に二次元情報を切り抜き加工する二次元情報切抜き加工ステップを含み、シート捲りステップは、二次元情報切抜き加工ステップ後に実行されることにある。
【0011】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、切抜き加工装置用コンピュータプログラムは、被加工シートに対して二次元情報を切り抜き加工した後に不要部分における張出部を捲るように構成されている。このため、被加工シートに対する二次元情報の切り抜き加工時においては、被加工シートの全面が台紙上に密着して台紙上から捲れた部分が存在しないため、切抜き加工装置は被加工シートに対して精度良く二次元情報の切り抜き加工を行うことができる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記切抜き加工装置用コンピュータプログラムにおいて、さらに、二次元情報を表すデジタル画像データを生成する画像データ生成ステップを含み、押圧工具加工位置特定ステップは、デジタル画像データによって表された二次元情報を含む切抜き加工領域内に同二次元情報の輪郭線によって囲まれた内側の閉領域および同内側の閉領域を囲む外側の閉領域をそれぞれ特定する閉領域特定ステップと、切抜き加工領域内に特定した各閉領域のうち一つ置きごとの各閉領域に対して前記不要部分をそれぞれ設定する不要部分設定ステップとを含むことにある。
【0013】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、切抜き加工装置用コンピュータプログラムは、デジタル画像データによって表された二次元情報を含む切抜き加工領域内に同二次元情報の輪郭線によって囲まれた内側の閉領域および同内側の閉領域を囲む外側の閉領域をそれぞれ特定するとともに、この特定した各閉領域のうち一つ置きごとの各閉領域に対して前記不要部分を設定している。すなわち、切抜き加工装置用コンピュータプログラムは、二次元情報を表すデジタル画像データにおいて、二次元情報における内側部分または外側部分に不要部分を設定している。これにより、切抜き加工装置用コンピュータプログラムは、二次元情報が切り抜き加工される記録メディアに対して簡単に不要部分を設定することができる。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記切抜き加工装置用コンピュータプログラムにおいて、さらに、不要部分設定ステップによる不要部分の設定結果の適否をユーザに問い合わせる設定結果問合せステップと、設定結果問合せステップにて設定結果が不適と判定されたとき、ユーザによる前記設定結果の設定変更を受付ける設定結果変更ステップとを含むことにある。
【0015】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、切抜き加工装置用コンピュータプログラムは、不要部分設定ステップにて設定した不要部分の設定結果をユーザに問い合わせるとともに同問い合わせに対してユーザが不適と判定した場合には、ユーザによる前記設定結果の設定変更を受付けるように構成されている。これにより、ユーザは、制御装置によって意図しない閉領域に対して不要部分が設定された場合には、その設定内容を変更することができる。この結果、ユーザの意図する閉領域に対して精度良く押圧工具による加工位置を特定することができるとともに、ユーザの意図する加工位置の近傍に形成された張出部を台紙から精度良く捲ることができる。
【0016】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記切抜き加工装置用コンピュータプログラムにおいて、さらに、押圧工具加工位置特定ステップは、ユーザによる押圧工具の加工位置の設定を受付ける押圧工具加工位置設定受付ステップを含むことにある。
【0017】
このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、切抜き加工装置用コンピュータプログラムは、ユーザからの押圧工具による加工位置の設定を受付けるように構成されている。これにより、ユーザの意図する加工位置の近傍に形成された張出部を台紙から精度良く捲ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る切抜き加工装置の全体構成を概略的に示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す切抜き加工装置の作動を制御するための制御システムのブロック図である。
【図3】(A)〜(C)は図1に示す切抜き加工装置が保持する工具ホルダおよび同工具ホルダが保持する押圧工具の外観構成を概略的に示しており、(A)はカッターを保持した工具ホルダの正面図であり、(B)は押圧工具を保持した工具ホルダの正面図であり、(C)は(B)に示す工具ホルダが保持する押圧工具の正面図である。
【図4】図2に示す外部コンピュータ装置によって実行される切抜き加工プログラムのフローチャートである。
【図5】二次元情報を含む切抜き加工領域内において閉領域、張出部、不要部分および加工位置を特定または設定する過程を説明するために説明図である。
【図6】記録メディアの台紙上から被加工シートを捲る過程を説明するために記録メディアにおける張出部周辺を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る切抜き加工装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る切抜き加工装置100の外観構成を概略的に示す斜視図である。また、図2は、同切抜き加工装置100の作動を制御するための制御システムのブロック図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この切り抜き加工装置100は、シート状の記録メディアWKに対してカッターを用いて切り抜き加工を行うことにより所望する文字、記号または図形などからなる二次元情報を切り抜き加工する所謂カッティング装置である。また、被加工対象である記録メディアWKは、図6に示すように、樹脂製の台紙BS上に樹脂製の被加工シートCSが分離可能に積層されて構成されている。
【0020】
(切り抜き加工装置100の構成)
切り抜き加工装置100は、平面部を有するとともに同平面部における切り抜き加工装置100の前方側および後方側が図示下方に向かってそれぞれ湾曲したエプロン部を有するプラテン101を備えている。プラテン101は、前記平面部上に記録メディアWKが載置されて支持する載置台であり、図示左右(Y軸)方向に延びて形成されている。このプラテン101における平面部には、図示Y軸方向に沿って円筒状のグリッドローラ102がその上面部を露出させた状態で設けられている。グリッドローラ102は、後述するコントローラ120によって駆動が制御されるX軸方向フィードモータ103によって回転駆動され鋼製の円筒体である。なお、図1において、プラテン101が延びる長手方向(図示Y軸方向)を主走査方向、同主走査方向に直交する図示前後方向(図示X軸方向)を記録メディアWKが搬送される副走査方向とする。
【0021】
プラテン101上に露出したグリッドローラ102の上方には、2つのピンチローラ104aと3つの押圧ローラ104bとがグリッドローラ102に対して平行に延びたローラ支持ロッド105にそれぞれ回転自在に支持されて設けられている。これらのピンチローラ104aおよび押圧ローラ104bは、前記グリッドローラ102と協働してシート状の記録メディアWKを図示上下方向から挟んで保持する樹脂製の回転体である。すなわち、グリッドローラ102とピンチローラ104aおよび押圧ローラ104bとで挟持された記録メディアWKは、グリッドローラ102の回転駆動によって図示X軸方向の副走査方向に搬送される。
【0022】
また、プラテン101上における前記ローラ支持ロッド105の後方には、加工キャリッジ106が図示Y軸方向に沿って互いに平行に延びる長尺状のガイドロッド110およびキャリッジ支持体111にそれぞれ支持された状態で設けられている。加工キャリッジ106は、プラテン101上において工具ホルダ107を着脱自在に保持するための樹脂製の部品であり、図示X軸方向に延びて形成されている。この加工キャリッジ106は、図示X軸方向後端部がガイドロッド110に支持されているとともに図示X軸方向中央部がキャリッジ支持体111に支持された状態で工具ホルダ107を着脱自在に保持する保持部106aが図示X軸方向前方に向って突出して設けられている。
【0023】
工具ホルダ107は、図3(A),(B)に示すように、カッター108および押圧工具109をそれぞれ選択的に着脱自在に保持する樹脂製の保持具であり、略円筒状に形成されている。より具体的には、工具ホルダ107には、図示Z軸方向(図示上下方向)に沿って図示しない工具保持貫通孔が形成されており、この工具貫通孔によってカッター108または押圧工具109を図示しない磁石を介して保持する。この工具ホルダ107は、前記工具保持貫通孔における図示下側の開口部からカッター108または押圧工具109が抜き挿しされるとともに、同工具保持貫通孔における図示上側の開口部から突出したピン107aのプッシュ操作によって工具保持貫通孔内のカッター108または押圧工具109が押し出されるように構成されている。
【0024】
カッター108は、図3(A)に示すように、記録メディアWKにおける上層を構成する被加工シートCSを切断するための工具であり、ピン状の本体部の先端部にナイフ状の刃が形成されて構成されている。押圧工具109は、図3(B),(C)に示すように、前記被加工シートCSを記録メディアWKにおける下層を構成する台紙BSから捲るための工具であり、ピン状の本体部の先端部に尖った形状の押圧部109aが形成されて構成されている。この押圧工具109における押圧工具109aは、本実施形態においては、約90°の円錐形に形成されている。
【0025】
ガイドロッド110は、加工キャリッジ106を支持するための鋼製の研きの丸棒体であり、加工キャリッジ106を図示Y軸方向および軸線回りにそれぞれ摺動可能な状態で支持する。キャリッジ支持体111は、加工キャリッジ106における図示X軸方向の中央部を支持するアルミニウム製の長尺板状体である。このキャリッジ支持体111は、後述するサイドカバー115L内に設けられたソレノイド112(図1において図示せず)の進退駆動によって軸線回りに揺動する。ソレノイド112は、前記コントローラ120によって駆動が制御され電気エネルギを機械的な直進エネルギに変換する機能部品である。
【0026】
したがって、このキャリッジ支持体111の軸線回りの揺動動作によって加工キャリッジ106の保持部106aに保持されたカッター108または押圧工具109が被加工シートCSに対して押圧および離隔される。すなわち、このガイドロッド110、キャリッジ支持体111およびソレノイド112が、本発明に係る工具押圧手段を構成する。
【0027】
ガイドロッド110の上方には、図示Y軸方向に沿って図示しない駆動ベルトが架設されている。駆動ベルトは、Y軸方向スキャンモータ113によって回転駆動される環状の無端ベルトであり、その一部が加工キャリッジ106に連結されている。したがって、加工キャリッジ106は、Y軸方向スキャンモータ113によって回転駆動される駆動ベルトによりガイドロッド110に沿って図示Y軸方向に変位する。すなわち、記録メディアWKと加工キャリッジ106とを互いに直交する方向に相対変位させるためのグリッドローラ102、X軸方向フィードモータ103、ピンチローラ104a、押圧ローラ104b、駆動ベルトおよびY軸方向スキャンモータ113が、本発明に係る相対変位手段を構成する。
【0028】
また、この駆動ベルトを介したガイドロッド110の上方には、切抜き加工装置100の上側の筐体を構成する長尺状の上カバー114が設けられている。また、これらのプラテン101および上カバー114の両側には、切抜き加工装置100の両側の筐体を構成するサイドカバー115R,115Lがそれぞれ設けられている。これらのうち、サイドカバー115Rの側面には、切抜き加工装置100の電源スイッチ116が設けられている。また、サイドカバー115Lの側面には、グリッドローラ102を手動で回転させることによってプラテン101上の記録メディアWKを副走査方向に変位させるための送りノブ117が設けられている。
【0029】
コントローラ120は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、ユーザからの指示、またはインターフェース121を介して接続される外部コンピュータ装置200からの指示に従って、ROMなどの記憶装置に予め記憶された制御プログラムを実行することにより、切抜き加工装置100の各種作動を制御する。具体的には、このコントローラ120は、X軸方向フィードモータ103、ソレノイド112およびY軸方向スキャンモータ113の各作動をそれぞれ制御する。
【0030】
外部コンピュータ装置200は、キーボードおよびマウスからなる入力装置201および液晶ディスプレイからなる表示装置202を備えるパーソナルコンピュータ(所謂パソコン)である。この外部コンピュータ装置200には、図4に示す切抜き加工プログラムが記憶されており、この切抜き加工プログラムを実行することにより切抜き加工装置100の作動を制御する。
【0031】
(切抜き加工装置100の作動)
次に、上記のように構成した切抜き加工装置100の作動について説明する。まず、ユーザは、外部コンピュータ装置200と切抜き加工装置100とをインターフェース121を介して接続し、外部コンピュータ装置200および切抜き加工装置100の電源をそれぞれONにする。これにより、外部コンピュータ装置200は、図示しない所定の制御プログラムを実行することによりユーザからの指令の入力を待つ待機状態となる。
【0032】
また、切り抜き加工装置100は、コントローラ120内のROMに予め記憶されている図示しない所定の制御プログラムを実行することにより、加工キャリッジ106を原点復帰させた後、外部コンピュータ装置200からの指示を待つ待機状態となる。なお、この場合、加工キャリッジ106における図示X軸方向の原点とは、加工キャリッジ106の主走査方向における移動可能範囲内の一方の移動可能限界位置(図示最左端)である(図1参照)。また、加工キャリッジ106における図示Z軸方向の原点位置とは、加工キャリッジ106の保持部106aが記録メディアWKの上面から遠ざかる図示上方に上昇した位置である。
【0033】
次に、ユーザは、切抜き加工装置100に対して記録メディアWKを切り抜くためのカッター108を保持した工具ホルダ107をセットするとともに、二次元情報の切り抜き加工対象となるシート状の記録メディアWKをセットする。具体的には、ユーザは、工具ホルダ107に形成された工具保持孔(図示せず)内にカッター108を挿入して保持させた後、このカッター108を保持した工具ホルダ107を加工キャリッジ106の保持部106aに保持させる。次いで、ユーザは、記録メディアWKをプラテン101上に配置するとともに、同記録メディアWKをプラテン101上でグリッドローラ102とピンチローラ104aおよび押圧ローラ104bとによって挟持させる。この場合、ユーザは、記録メディアWKにおける被加工シートCS側を加工キャリッジ106に対向させた状態でプラテン101上にセットする。
【0034】
次に、ユーザは、外部コンピュータ装置200の入力装置201を操作して外部コンピュータ装置200に図4に示す切抜き加工プログラムの実行を指示する。この切抜き加工プログラムは、ユーザが所望する二次元情報を記録メディアWKの被加工シートCSに形成するために所望する二次元情報に対応する切抜き加工データを生成するとともに、記録メディアWKにおける台紙BS上から被加工シートCSの一部を捲るための捲り加工データを生成して切抜き加工装置100にそれぞれ出力するプログラムである。
【0035】
ユーザによる前記指示に応答して、外部コンピュータ装置200は、切抜き加工プログラムをステップS100にて開始するとともに、ステップS102にて、デジタル画像データの入力を待つ。したがって、ユーザは、所望する任意の二次元情報を外部コンピュータ装置200に入力する。この場合、ユーザは、紙などに形成された二次元情報をスキャナなどの読み取り装置を用いて外部コンピュータ装置200に入力することができる他、マウスやデジタイザなどの入力装置201を用いて任意の二次元情報を外部コンピュータ装置200に入力することができる。
【0036】
本実施形態においては、ユーザは、図5に示すように、アルファベット文字である「A」を図案化した二次元情報を入力装置201を介して外部コンピュータ装置200に入力する。これにより、所望する二次元情報を表すデジタル画像データが外部コンピュータ装置200の記憶装置内に記憶される。なお、本実施形態においては、デジタル画像データはラスターデータ(ビットマップデータ)形式である。すなわち、このステップS102における二次元情報を表すデジタル画像データの生成処理が、本発明に係る画像データ生成ステップに相当する。
【0037】
次に、外部コンピュータ装置200は、ステップ104にて、前記デジタル画像データに基づいて切抜き加工データを生成する。ここで切抜き加工データとは、記録メディアWKに対して加工キャリッジ106が保持するカッター108の位置を制御することにより、記録メディアWKにおける被加工シートCSに前記所望する二次元情報を切り抜くためのデータである。したがって、外部コンピュータ装置200は、デジタル画像データによって表された二次元情報の中から線図によって表されたデジタル画像データ、すなわち、二次元情報における輪郭線を表すデジタル画像データを抽出(公知のアウトライン抽出処理)するとともに同抽出したデジタル画像データをベクターデータ形式に変換して切抜き加工データを生成する。なお、この場合、デジタル画像データによって表された二次元情報の中から二次元情報における輪郭線を抽出する処理は、外部コンピュータ装置200に対して入力装置201を操作してユーザが直接輪郭線を指示するようにしてもよい。
【0038】
次に、外部コンピュータ装置200は、ステップS106にて、切抜き加工装置100に対して前記ステップS104にて生成した切抜き加工データを出力するとともに切抜き加工の実行を指示する。この指示に応答して、切抜き加工装置100は、外部コンピュータ装置200から入力した切抜き加工データに基づいて、X軸方向フィードモータ103、ソレノイド112およびY軸方向フィードモータ113等の各作動を制御することにより記録メディアWKに対して二次元情報における輪郭線部分の切断加工を実行する。具体的には、切抜き加工装置100のコントローラ120は、加工キャリッジ106が工具ホルダ107を介して保持するカッター108を被加工シートSCに刺し込んだ状態で同加工キャリッジ106に対する記録メディアWKの相対的な位置を変化させる。これにより、記録メディアWKにおける被加工シートSCには、二次元情報の輪郭線に対応する形状が切抜き加工される。すなわち、このステップS106における切抜き加工データの出力および切抜き加工処理の実行指示が、本発明に係る二次元情報切抜き加工ステップに相当する。
【0039】
次に、外部コンピュータ装置200は、ステップS108にて、閉領域CEを特定する。ここで、閉領域CEとは、デジタル画像データによって表された二次元情報を含む切抜き加工領域ME内において、二次元情報を構成する輪郭線で囲まれた内側の閉じられた領域および同内側の閉じられた領域の外側を囲む外側の閉じられた領域であり、それぞれデジタル画像データによって表されている。また、切抜き加工領域MEとは、二次元情報を配置して同二次元情報の切り抜き加工を行うことができる平面状の加工範囲であり、本実施形態においては記録メディアWKの大きさおよび形状に相当する。なお、この切抜き加工領域MEは、記録メディアWKの範囲内において、ユーザによって適当な大きさおよび形状で指定するようにしてもよい。
【0040】
したがって、外部コンピュータ装置200は、切抜き加工領域MEにおける二次元情報を表すデジタル画像データの中から二次元情報の輪郭線を表すデジタル画像データを抽出するとともに、同抽出した輪郭線で囲まれた内側の閉じられた領域および同内側の領域を囲む外側の閉じられた領域をそれぞれ閉領域として特定する。本実施形態においては、二次元情報である「A」の輪郭線OLで囲まれた閉領域CE、輪郭線OLで囲まれた閉領域CEおよび閉領域CEの外側を囲む閉領域CEがそれぞれ特定される。すなわち、このステップS108による閉領域の特定処理が、本発明に係る閉領域特定ステップに相当する。
【0041】
次に、外部コンピュータ装置200は、ステップS110にて、不要部分を設定する。ここで不要部分とは、記録メディアWKの被加工シートCSにおいて実際に施工対象物(図示せず)に貼り付けられる使用部分以外の部分であり、アプリケーションシート(図示せず)を使用する前に台紙BS上から予め除去される部分である。そして、この不要部分の設定処理は、切抜き加工領域ME内の全ての閉領域CE(本実施形態においては、CE〜CE)のうち一つ置きごとの閉領域CEに対して不要部分がそれぞれ設定される。換言すれば、切抜き加工領域ME内の全ての閉領域CEにおいて互いに隣り合う閉領域CEのうちの一方に不要部分を設定するものである。
【0042】
本実施形態においては、切抜き加工領域ME内において最も外側で特定された閉領域CEから順に一つ置きごとの閉領域CEに対して不要部分を設定する。これにより、本実施形態においては、閉領域CEおよび閉領域CEがそれぞれ不要部分として設定される。すなわち、本実施形態においては、二次元情報は、被加工シートCSの外側の輪郭線によって表された中実型である。そして、このステップS110による不要部分の設定処理が、本発明に係る不要部分設定ステップに相当する。
【0043】
次に、外部コンピュータ装置200は、ステップS112にて、押圧工具109による加工位置MPを特定する。このステップS112による押圧工具109の加工位置MPの特定処理は、前記ステップS110にて設定した不要部分における張出部BPの近傍に押圧工具109の押圧部109aを押し付ける位置を特定するものである。この場合、張出部BPとは、不要部分が設定された閉領域CEの輪郭部分において、同閉領域CEが外側に向って張り出した部分であり、具体的には、出隅(2つの線が出合った部分の外側の角)部分や凸状に張り出した曲線部分が該当する。本実施形態においては、張出部BPを図5,6にて破線円で示す。
【0044】
そして、この加工位置MPの特定処理は、不要部分が設定された閉領域CEごとに前記張出部BPを抽出(公知のアウトライン抽出処理)するとともに、同各張出部BPの近傍に1つの加工位置MPが特定される。この場合、張出部BPの近傍とは、押圧工具109における押圧部109aによって張出部BPを引っ掛けて台紙BSから捲ることができる領域であり、概ね、出隅を構成する2つの輪郭線または凸状の曲線部分からそれぞれ0.1mm〜数mmずつ閉領域側に入った位置が適当である。本実施形態においては、8つの張出部BPに対応して8つの加工位置MP〜MPが特定される。すなわち、このステップS112による加工位置MPの特定処理が、本発明に係る押圧工具加工位置特定ステップに相当する。
【0045】
次に、外部コンピュータ装置200は、ステップS114にて、前記ステップS112にて特定した加工位置MP(本実施形態においては、MP〜MP)が適当か否かをユーザに問い合わせる。この場合、外部コンピュータ装置200は、前記ステップS112にて特定した加工位置MPを表示装置202に表示させてユーザからの適否の入力を待つ。したがって、ユーザは、外部コンピュータ装置200が特定した加工位置MPに対して「適当」または「不適当」を表すデータを入力装置201を介して入力する。これにより、外部コンピュータ装置200は、ユーザから「適当」を表すデータが入力された場合には、この判定処理にて「Yes」と判定してステップS118に進む。一方、ユーザから「不適」を表すデータが入力された場合には、外部コンピュータ装置200は、この判定処理にて「No」と判定してステップS116に進む。すなわち、このステップS114による加工位置MPの適否の判定処理が、本発明に係る設定結果問合せステップに相当する。
【0046】
そして、前記ステップS114にて「No」と判定された場合、すなわち、外部コンピュータ装置200が特定した加工位置MP(本実施形態においては、MP〜MP)が「不適」と判定された場合には、外部コンピュータ装置200は、ステップS116にて、ユーザからの加工位置MPの設定変更を受付ける。したがって、ユーザは、不要部分が設定された閉領域CE(本実施形態においては、CE〜CE)内において所望する位置を加工位置MPとして入力装置202を操作することにより外部コンピュータ装置200に入力する。これにより、外部コンピュータ装置200は、ユーザによって入力された位置を加工位置MPとして受付けて記憶する。すなわち、このステップS116によるユーザからの加工位置MPの設定変更を受付ける処理が、本発明に係る設定結果変更ステップに相当する。
【0047】
次に、外部コンピュータ装置200は、ステップS118にて、捲り加工データを生成する。ここで、捲り加工データとは、前記ステップS112または前記ステップS116にて特定した加工位置MP上の被加工シートCSに押圧工具109の押圧部109aを押し付けるとともに、同押圧部109aを押し付けた状態で押圧工具109を前記張出部BPから遠ざかる方向に変位させるためのデータである。したがって、外部コンピュータ装置200は、前記ステップS112または前記ステップS116にて特定した加工位置MP(本実施形態においては、MP〜MP)を表すデジタル画像データに基づいて捲り加工データを生成する。
【0048】
次に、外部コンピュータ装置200は、ステップS120にて、被加工シートCSの捲り加工の実行準備が整ったか否かをユーザに問い合わせる。この場合、被加工シートCSの捲り加工とは、前記ステップS112または前記ステップS116にて特定された加工位置MP(本実施形態においては、MP〜MP)の近傍に形成された被加工シートCSにおける張出部BPを台紙BSから捲る加工である。したがって、このステップS120による問い合わせに対してユーザは、工具ホルダ108に保持されているカッター108を押圧工具109に付け替えた後、入力装置201を操作して捲り加工の実行を外部コンピュータ装置200に指示する。
【0049】
このユーザによる捲り加工の実行指示を入力するまでの間、外部コンピュータ装置200は、このステップS120による判定処理にて「No」と判定し続ける。一方、ユーザから捲り加工の実行指示が入力された場合には、外部コンピュータ装置200は、このステップS120による判定処理にて「Yes」と判定してステップS122に進む。
【0050】
次に、外部コンピュータ装置200は、ステップS122にて、切抜き加工装置100に対して前記ステップS118にて生成した捲り加工データを出力するとともに捲り加工の実行を指示する。この指示に応答して、切抜き加工装置100は、外部コンピュータ装置200から入力した捲り加工データに基づいて、X軸方向フィードモータ103、ソレノイド112およびY軸方向フィードモータ113等の各作動を制御することにより記録メディアWKに対して被加工シートSPの捲り加工を実行する。
【0051】
具体的には、切抜き加工装置100のコントローラ120は、図6(A)に示すように、X軸方向フィードモータ103、ソレノイド112およびY軸方向フィードモータ113の各作動を制御して、加工キャリッジ106が工具ホルダ107を介して保持した押圧工具109における押圧部109aを加工位置MP(本実施形態においては、MP〜MP)の一つに位置決めする(図6(A)においては、加工位置OP1に位置決めしている)。なお、この場合、コントローラ120は、ソレノイド112の作動を制御することにより加工キャリッジ106の保持部106a側を上昇させて押圧工具109の押圧部109aが被加工シートSPに対して離隔した状態で加工キャリッジ106を位置決めする。
【0052】
次いでコントローラ120は、ソレノイド112の作動を制御して、加工キャリッジ106における保持部106a側を被加工シートSP側に下降させる。これにより、加工キャリッジ106が工具ホルダ107を介して保持する押圧工具109の押圧部109aが被加工シートCSにおける前記加工位置MP上に押し付けられて台紙BSの内部に至らない範囲で被加工シートCSに食い込む。
【0053】
次いで、コントローラ120は、図6(B)に示すように、X軸方向フィードモータ103、ソレノイド112およびY軸方向フィードモータ113の各作動を制御して、押圧工具109の押圧部109aが被加工シートCSに食い込んだ状態で、加工キャリッジ106の位置を被加工シートCSの張出部BPから遠ざける方向(図6(B)において破線矢印)、換言すれば、張出部BPの張り出し方向とは反対方向に変位させる。これにより、被加工シートCSの張出部BPは押圧工具109に引っ張られて台紙BSから捲れる。次いで、コントローラ120は、図6(C)に示すように、ソレノイド112の作動を制御して、加工キャリッジ106における保持部106a側を上カバー114側に上昇させる(図6(C)において破線矢印)。これにより、加工キャリッジ106が工具ホルダ107を介して保持する押圧工具109の押圧部109aが被加工シートSPから離脱して、1つの加工位置に対する捲り加工が終了する。この場合、押圧工具109によって台紙BS上から捲られた被加工シートCSの張出部BPは、押圧工具109の引き釣り変位により塑性変形するため、捲れた状態が維持される。
【0054】
そして、コントローラ120は、前記ステップS112またはステップS116にて特定した全ての加工位置MPに対して前記と同様の手順で捲り加工をそれぞれ実行する。これにより、被加工シートCS上における全ての加工位置MPに対応する張出部BPが台紙BSから捲れられる。すなわち、このステップS122による捲り加工の実行処理が、本発明に係るシート捲りステップに相当する。そして、外部コンピュータ装置200は、このステップS122による捲り加工の実行処理後、ステップS124にて、この切抜き加工プログラムの実行を終了する。すなわち、この切抜き加工プログラムが、本発明に係る切抜き加工装置用コンピュータプログラムに相当する。
【0055】
この後、ユーザは、二次元情報の切抜き加工および被加工シートCSの捲り加工が施された記録メディアWKを切抜き加工装置100のプラテン101から取り外す。そして、ユーザは、記録メディアWKに対して施工対象物に貼り付けられる被加工シートCSを台紙BS上に残した状態で施工対象物に貼り付けられない不要部分を台紙BS上から取り除く。具体的には、ユーザは、被加工シートCSの不要部分(不要部分として設定された閉領域CE)において台紙BS上から捲られた部分をピンセットで摘んで引っ張ることにより、同不要部分の全体を台紙BSから剥がすことができる。
【0056】
そして、ユーザは、被加工シートCSにおける全ての不要部分を前記と同様の手順で剥がすことにより、記録メディアWKにおける台紙BS上に使用部分のみを残すことができる。次いで、ユーザは、図示しないアプリケーションシート(転写用シート)を使用部分である被加工シートCSが残る台紙BS上に貼り付けることにより、同アプリケーションシートに被加工シートCSを移す。次いで、ユーザは、被加工シートCSが貼り付いたアプリケーションシートを施工対象物に貼り付けて同アプリケーションシートを施工対象物から剥がすことにより、アプリケーションシートに貼り付いた被加工シートCS、すなわち、被加工シートCSによって表される二次元情報を施工対象物表面に転写することができる。
【0057】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、切抜き加工プログラムは、二次元情報が形成される被加工シートCS上の不要部分における張出部BPの近傍に押圧工具109による加工位置MPを特定した後、この特定した加工位置MPに押圧工具109を押し付けるとともに同押圧工具109を張出部BPから遠ざける方向に変位させる。このため、被加工シートCS上の不要部分に押し付けられた押圧工具109の近傍における張出部BPは、この押圧工具109の押圧部109aに引っ掛けられて台紙BS上から捲り上がる。これにより、二次元情報が切り抜き加工された被加工シートCSから不要部分を剥がす際、ユーザは被加工シートCSの張出部BPにおける捲れた部分を摘まむことにより容易に不要部分を台紙CS上から剥がすことができる。
【0058】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態においては、押圧工具109の押圧部109aを約90°の円錐形に形成した。しかし、押圧工具109の押圧部109aの形状は、被加工シートCSに押し付けられることにより同被加工シートCSを引っ掛けるまたは引っ張ることができる形状であれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、押圧工具109における押圧部109aの形状を、丸みを持った曲面または球面形状、平らな平面形状、凹凸を有した凸凹形状などに形成することができる。これらの場合、切抜き加工装置100は、押圧工具109の押圧部109aを被加工シートCS上に押し付けて押圧部109aと被加工シートCSとの摩擦により被加工シートCSを台紙BSから引き剥がすようにする。
【0060】
また、上記実施形態においては、押圧工具109は、金属製のピン部材で構成した。しかし、押圧工具109は、被加工シートCSに押し付けられることにより同被加工シートCSを引っ掛けるまたは引っ張ることができる形状であれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、押圧工具109は、樹脂材、セラミック材、ゴム材などを単体でまたは適宜組み合わせて構成することができる。特に、押圧工具109の押圧部109aを平面状に形成した場合には、被加工シートCSに対する摩擦抵抗を増大させるために押圧部109aを摩擦係数の大きな材料、例えば、ゴム材や紙材を用いると良い。
【0061】
また、上記実施形態においては、押圧工具109は、工具ホルダ107に対してカッター108と付け替えて保持されるように構成されている。しかし、被加工シートCSの捲り加工時における押圧工具109のセッティングは、加工キャリッジ106の保持部106aに対して、カッター108を保持した工具ホルダ107と押圧工具109を保持した工具ホルダ107とを付け替えるようにしてもよい。また、切抜き加工装置100がカッター108および押圧工具109、またはカッター108を保持した工具ホルダ107および押圧工具109を保持した工具ホルダ107を加工キャリッジ106とは別構成の工具マガジンなどに保持するように構成しておき、カッター108と押圧工具109との相互の交換、またはカッター108を保持した工具ホルダ107と押圧工具109を保持した工具ホルダ107との相互の交換をコントローラ120による制御によって自動的に行なうように構成することもできる。また、切抜き加工装置100は、加工キャリッジ106がカッター108を保持した工具ホルダ107と押圧工具109を保持した工具ホルダ107とを同時に保持するとともに、コントローラ120の作動制御によって加工内容に応じてこれらを適宜使い分けるように構成することもできる。
【0062】
また、上記実施形態においては、切抜き加工プログラムは、記録メディアWKに対して二次元情報の切り抜き加工(ステップS106)を実行した後、被加工シートCSの捲り加工(ステップS122)を行うように構成した。しかし、切抜き加工プログラムは、被加工シートCSの捲り加工(ステップS122)を実行した後、記録メディアWKに対して二次元情報の切り抜き加工(ステップS106)を実行するように構成することもできる。
【0063】
また、上記実施形態においては、切抜き加工プログラムは、ステップS110における不要部分の設定処理において、切抜き加工領域ME内において最も外側で特定された閉領域CEから順に一つ置きごとの閉領域CEに対して不要部分を設定した。これは、施工対象物に貼り付ける二次元情報が中実型の二次元情報であることによる。したがって、二次元情報が、被加工シートCSの外側の輪郭線によって表された中空型である場合には、切抜き加工領域ME内において最も外側で特定された閉領域CEからに隣接する閉領域CEから順に一つ置きごとの閉領域CEに対して不要部分を設定すればよい。これによれば、上記実施形態の場合、閉領域CEが不要部分として設定されるため、閉領域CEと閉領域CEとが施工対象物に貼り付けられる使用部分となる。
【0064】
また、上記実施形態においては、切抜き加工プログラムは、押圧工具109による加工位置MPを特定するために、ステップS108による閉領域の特定処理、ステップS110による不要部分の設定処理、ステップS112による加工位置の特定処理、ステップS114による設定結果の問合せ処理およびステップS116による設定結果変更処理を実行するように構成した。しかし、押圧工具109による加工位置MPをユーザが直接外部コンピュータ装置200に指定する構成とすれば、上記ステップS108〜ステップS114による各処理は不要である。この場合、具体的には、切抜き加工プログラムにおいて、ステップS106による二次元情報の切抜き加工処理とステップS118による捲り加工データの生成処との間に、ユーザに対して押圧工具109による加工位置MPの位置の設定を受付ける処理である押圧工具加工位置設定受付ステップを設ける。これによれば、切抜き加工プログラムの構成を簡単にすることができる。
【0065】
また、上記実施形態においては、切抜き加工装置100は、記録メディアWKに対して切り抜き加工のみを実行する構成とした。しかし、本願発明に係る切抜き加工装置用コンピュータプログラムは、記録メディアWKの切り抜き加工に加えて任意の二次元情報を印刷する機能を備えた所謂プリント&カット装置にも適用することができるものである。
【0066】
また、上記実施形態においては、切抜き加工プログラムは、外部コンピュータ装置200によって実行された。しかし、切抜き加工装置100が、外部コンピュータ装置200において切抜き加工プログラムを実行するために必要な入出力機能および演算機能と同等な機能を有して構成されていれば、上記実施形態における切抜き加工プログラムを切抜き加工装置100のコントローラ120が実行するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0067】
WK…記録メディア、BS…台紙、CS…被加工シート、CE…閉領域、ME…切抜き加工領域、MP…加工位置、BP…張出部、
100…切抜き加工装置、101…プラテン、102…グリッドローラ、103…X軸方向フィードモータ、104a…ピンチローラ、104b…押圧ローラ、105…ローラ支持ロッド、106…加工キャリッジ、106a…保持部、107…工具ホルダ、107a…ピン、108…カッター、109…押圧工具、109a…押圧部、110…ガイドロッド、111…キャリッジ支持体、112ソレノイド、113…Y軸方向スキャンモータ、114…上カバー、115R,115L・・・サイドカバー、116…電源スイッチ、117…送りノブ、120…コントローラ、121…インターフェース、200…外部コンピュータ装置、201…入力装置、202…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台紙上に分離可能に積層された被加工シートを切断するためのカッターおよび同被加工シートに押し付けられる押圧部を有する押圧工具をそれぞれ保持する加工キャリッジと、
前記加工キャリッジに保持された前記カッターおよび前記押圧工具を前記被加工シートに対して押圧および離隔させる工具押圧手段と、
前記加工キャリッジと前記被加工シートとを相対変位させる相対変位手段とを備え、前記カッターによって前記被加工シートを切断して二次元情報を切り抜き加工する切抜き加工装置に適用される切抜き加工装置用コンピュータプログラムであって、
前記切抜き加工装置の作動を制御する制御装置に、
前記二次元情報が切り抜き加工された前記被加工シートの不要部分における輪郭のうち外側に張り出した張出部に前記押圧工具による加工位置を特定する押圧工具加工位置特定ステップと、
前記工具押圧手段および前記相対変位手段の作動を制御して前記押圧工具の前記押圧部を前記加工位置に押圧した状態で、前記押圧部を前記張出部から遠ざける方向に変位させて前記張出部を前記台紙上から捲るシート捲りステップとを実行させることを特徴とする切抜き加工装置用コンピュータプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載した切抜き加工装置用コンピュータプログラムにおいて、さらに、
前記工具押圧手段および前記相対変位手段の作動を制御して前記被加工シート上に前記二次元情報を切り抜き加工する二次元情報切抜き加工ステップを含み、
前記シート捲りステップは、前記二次元情報切抜き加工ステップ後に実行されることを特徴とする切抜き加工装置用コンピュータプログラム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した切抜き加工装置用コンピュータプログラムにおいて、さらに、
前記二次元情報を表すデジタル画像データを生成する画像データ生成ステップを含み、
前記押圧工具加工位置特定ステップは、
前記デジタル画像データによって表された前記二次元情報を含む切抜き加工領域内に同二次元情報の輪郭線によって囲まれた内側の閉領域および同内側の閉領域を囲む外側の閉領域をそれぞれ特定する閉領域特定ステップと、
前記切抜き加工領域内に特定した前記各閉領域のうち一つ置きごとの前記各閉領域に対して前記不要部分をそれぞれ設定する不要部分設定ステップとを含むことを特徴とする切抜き加工装置用コンピュータプログラム。
【請求項4】
請求項3に記載した切抜き加工装置用コンピュータプログラムにおいて、さらに、
前記不要部分設定ステップによる前記不要部分の設定結果の適否をユーザに問い合わせる設定結果問合せステップと、
前記設定結果問合せステップにて前記設定結果が不適と判定されたとき、前記ユーザによる前記設定結果の設定変更を受付ける設定結果変更ステップとを含むことを特徴とする切抜き加工装置用コンピュータプログラム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した切抜き加工装置用コンピュータプログラムにおいて、さらに、
前記押圧工具加工位置特定ステップは、
ユーザによる前記押圧工具の加工位置の設定を受付ける押圧工具加工位置設定受付ステップを含むことを特徴とする切抜き加工装置用コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−171036(P2012−171036A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34006(P2011−34006)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【Fターム(参考)】