説明

切断装置

【課題】 切断面の変形や荒れ等の発生を防ぎ、切断材料の種類等に関わりなく切断材料を良好に切断することができる技術を提供する。
【解決手段】 挿入された切断材料をせん断するダイス孔32を有する可動刃12の外周12aに当接する可動ピン10aを第1方向に沿って動作させる第1シリンダ10と、可動刃12の外周12aに当接する可動ピン28aを第1方向とは異なる第2方向に沿って動作させる第2シリンダ28と、可動刃12の外周12aに当接する可動ピン30aを、第1方向及び第2方向とは異なる第3方向に沿って動作させる第3シリンダ30が設けられている。第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30のそれぞれは、互いの位置関係に応じた位相差をもって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定刃と可動刃によって材料をせん断する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、切断する材料を挿入するダイス孔を有する固定刃及び可動刃を備えており、それらの固定刃及び可動刃によって材料を切断する切断装置が記載されている。この装置では、可動刃をダイス孔の中心軸に垂直な一方向に沿って往復動させる。特許文献1の技術では、シリンダを高速動作させることで可動刃の動作する速度を最大化し、そのことにより生じる衝突エネルギーによって切断材料を切断する。
【0003】
【特許文献1】特開2008−6520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、切断時に切断材料に加えられる衝突エネルギーを最大化することによって、切断後の切断材料の端面の変形や荒れ等の発生を抑制するものである。しかしながら、切断材料が剛性率の高い金属である場合や、大きな直径を有する棒材である場合には、切断に必要となるエネルギーも増大する。切断材料の種類や大きさによっては、良好に切断できないおそれがある。
本発明は、切断面の変形や荒れ等の発生を防ぎ、切断材料の種類等に関わりなく切断材料を良好に切断することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る切断装置は、挿入された切断材料をせん断するダイス孔を有する固定刃及び可動刃と、可動刃の外縁に当接する可動部を有するとともに、その可動部を第1方向に進退動作させる第1アクチュエータと、可動刃の外縁に当接する可動部を有するとともに、その可動部を第1方向とは異なる第2方向に進退動作させる第2アクチュエータと、可動刃の外縁に当接する可動部を有するとともに、その可動部を第1方向及び第2方向とは異なる第3方向に進退動作させる第3アクチュエータと、第1アクチュエータと第2アクチュエータと第3アクチュエータの動作を制御するコントローラを備える。
【0006】
第1アクチュエータと第2アクチュエータと第3アクチュエータは、可動部によって可動刃と接触している。各アクチュエータは、それぞれの可動部を互いに異なる方向(第1方向、第2方向及び第3方向)に進退動作させることによって、可動刃を動作させる。即ち、この切断装置では、第1アクチュエータと第2アクチュエータと第3アクチュエータが可動刃を動作させ、固定刃及び可動刃のダイス孔に挿入された切断材料をせん断する。上記の第1アクチュエータが可動刃を動作させる方向と、第2アクチュエータが可動刃を動作させる方向と、第3アクチュエータが可動刃を動作させる方向は交差する。そのことから、各アクチュエータの動作をコントローラによって制御することにより、切断材料をせん断するせん断方向を様々に変化させることができる。例えば、先ずは第1方向に沿って切断材料を中間位置までせん断し、次いで第2方向に沿って切断材料を中間位置までせん断し、最後に第3方向に沿って切断材料をせん断することもできる。この場合、せん断方向が切断材料の中央へと集まることから、ばり等の発生を有意に抑制することができる。さらに、各せん断方向における1回のせん断量を少量とし、上記したせん断方向の変更サイクルを繰り返し行うこともできる。この場合、切断面の変形や荒れ等の発生が防止され、良好な切断面を得ることができる。
【0007】
上記の切断装置において、コントローラは、第1アクチュエータと第2アクチュエータと第3アクチュエータのそれぞれを、互いの位置関係に応じた位相差をもって制御することが好ましい。また、コントローラは、第1アクチュエータと第2アクチュエータの動作の間に、第1方向と第2方向とが成す角と等しい位相差を与え、第2アクチュエータと第3アクチュエータの動作の間に、第2方向と第3方向とが成す角と等しい位相差を与え、第3アクチュエータと第1アクチュエータの動作との間に、第3方向と第1方向とが成す角と等しい位相差を与えることが好ましい。
【0008】
各アクチュエータが上記のように制御されると、可動刃が切断材料の中心に対して渦状に旋回し、可動刃が切断材料を多方向から切り込んでゆく。即ち、切断材料をせん断するせん断方向が、連続的に変化していくことになる。このため、切断材料が剛性の高い材料である場合であっても、切断材料の切断面を変形させてしまうことがない。また、多方向から、多回数にわたって切り込むことができるので、切断材料の直径が大きい場合であっても良好に切断材料をせん断することができる。
【0009】
上記の切断装置では、第1アクチュエータが可動部を進退動作させる第1方向と、第2アクチュエータが可動部を進退動作させる第2方向と、第3アクチュエータが可動部を進退動作させる第3方向が、互いに120度の角度を成していることが好ましい。
この場合、コントローラは、第1アクチュエータと第2アクチュエータと第3アクチュエータの動作の間に、上記の角度(120度)と等しい位相差をそれぞれ与えて動作させることが好ましい。上記の制御により、可動刃は、ダイス孔の中心軸に垂直な平面上で渦を描くように旋回運動する。この可動刃の動作と固定刃によって、ダイス孔に挿入される切断材料を良好に切断することができる。
【0010】
上記の切断装置は、第1アクチュエータと対向する位置で第1方向に沿って可動刃を付勢する第1付勢手段と、第2アクチュエータと対向する位置で第2方向に沿って可動刃を付勢する第2付勢手段と、第3アクチュエータと対向する位置で第3方向に沿って可動刃を付勢する第3付勢手段とをさらに備えていてもよい。
この装置では、可動刃の外縁の各アクチュエータと対向する位置に付勢手段が設けられている。これとともに、この切断装置では、各付勢手段による付勢力によって、可動刃が各アクチュエータに押し付けられている。それにより、例えばアクチュエータの動作方向が反転する場合などでも、アクチュエータによる可動刃の動作調整が正確に行われる。
【0011】
上記の切断装置は、可動刃のダイス孔から突出する切断材料の先端に当接するストッパ部材をさらに備えることが好ましい。このストッパ部材は、可動刃に対して一定の相対位置を保って移動可能であることがより好ましい。
切断材料の先端を支持するストッパ部材の位置が固定されていると、切断加工時にストッパ部材と切断材料が互いに擦れ合い、切断材料の先端面に変形や損傷が生じることがある。それに対し、ストッパ部材が可動刃とともに動作すれば、ストッパ部材と切断材料が互いに擦り合うことがないので、切断材料の先端面に変形や損傷が生じることを防止することができる。
【0012】
上記の切断装置において、ストッパ部材は、可動刃によって支持されていることが好ましい。
ストッパ部材が可動刃によって支持されていれば、可動刃を動作させることによってストッパ部材も同じように動作することから、ストッパ部材を可動刃に連動させるためのアクチュエータ等を別に設ける必要がなくなる。
【0013】
上記の切断装置は、ストッパ部材をダイス孔の中心軸に沿って進退させる第4アクチュエータをさらに備えていることが好ましい。
この構成によると、切断材料の切断が終了した後、ストッパ部材を可動刃から離間させることができ、切断後の切断材料を可動刃のダイス孔から容易に取り出すことできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、切断材料の切断面の変形や荒れ等の発生を防ぐとともに、切断材料の種類等に関わりなく、切断材料を良好に切断することができる。また、本発明では多方向から複数回にわたって切断材料を切断するので、切断時の騒音を小さく抑えることもできる。本発明によると、作業者の労働環境を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1) 第1アクチュエータと第2アクチュエータと第3アクチュエータは、互いに120度の位相差を有して動作する。
(特徴2) 第1付勢手段は第1方向に沿って可動刃を動作させ、第2付勢手段は第2方向に沿って可動刃を動作させ、第3付勢手段は第3方向に沿って可動刃を動作させる。
(特徴3) コントローラは、各種アクチュエータの動作量を決定して動作させるためのプログラムを記憶する記憶部と、そのプログラムを実行する演算部を備えている。
(特徴4) コントローラは、第1アクチュエータと第2アクチュエータと第3アクチュエータの位置を制御可能であり、各アクチュエータの位置制御は、アクチュエータの動作の単位周期毎の切断材料の切断加工量(切り込みしろ)に応じて決定される。
【実施例】
【0016】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1に、本実施例の切断装置2の概略構成を示す。切断装置2は、可動刃12と固定刃14を備えている。可動刃12と固定刃14のそれぞれには、ダイス孔32が形成されている。切断装置2は、可動刃12を固定刃14に対して動作させることによって、ダイス孔32に挿入された切断材料20を切断する。切断材料20は、一対の搬送ローラ18によって、固定刃14側からダイス孔32に挿入される。
搬送ローラ18と固定刃14の間には、切断材料20を下方から支持する支持部24と、支持部24の上部に配置された固定シリンダ16が設けられている。固定シリンダ16には可動ピン16aが設けられており、可動ピン16aの先端部には切断材料20と当接する当接部16bが設けられている。固定シリンダ16の動作は、コントローラ4によって制御される。搬送ローラ18によって切断材料20が送り出される間、固定シリンダ16は可動ピン16aを収容し、切断材料20に対して当接部16bを上方に退避させる(図1を参照)。一方、可動刃12と固定刃14によって切断材料20が切断される間、固定シリンダ16は可動ピン16aを突出させ、当接部16bを切断材料20に押し当てる。それにより、切断材料20の位置を固定する。上記した切断材料20の搬送機構及び固定刃14等は、支持基盤台26によって支持されている。
【0017】
可動刃12は、図1に示す第1シリンダ10を含む複数の油圧式シリンダによって動作する。これらのシリンダの動作は、コントローラ4によって制御される。可動刃12の動作については、後で詳しく説明する。また、可動刃12には、可動刃12の外縁部分に固定された固定具6を用いて、ストッパシリンダ8が固定されている。このストッパシリンダ8は、可動刃12に対して一定の相対位置を保ちながら、可動刃12と同期して移動する。ストッパシリンダ8は、ダイス孔32の中心軸上に位置する可動ピン8aを備えている。ストッパシリンダ8は、ダイス孔32の中心軸に沿って可動ピン8aを進退させる。可動ピン8aの先端部は、搬送ローラ18によって送り出され、可動刃12のダイス孔32から突出する切断材料20の先端に当接する。それにより、切断材料20を切断する切断長さが規定される。また、可動刃12と固定刃14によって切断材料20が切断される間、切断材料20の先端面は可動ピン8aによって支持される。ストッパシリンダ8の動作は、コントローラ4によって制御される。ストッパシリンダ8の動作については、後で詳しく説明する。切断装置2は、さらに、可動刃12の下方に切断後の切断材料20を排出する排出シュート22を備えている。
【0018】
図2に、可動刃12とその可動刃12を動作させるシリンダ10,28,30の概略構成を示す。第1シリンダ10と、第2シリンダ28と、第3シリンダ30は、可動刃12の外周面12aに沿って均等となる位置に配置されている。即ち、第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30は、ダイス孔32の中心軸を中心として、互いに120度となる位置に配置されている。第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30はそれぞれ可動ピン10a,28a,30aを備えており、それらの各可動ピン10a,28a,30aの中心軸はダイス孔32の中心軸上において交差している。また、第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30の各可動ピン10a,28a,30aは、可動刃12の外周面12aと離間可能に接触している。この装置2では、各シリンダ10,28,30が駆動されることによって各可動ピン10a,28a,30aが進退動作する。各可動ピン10a,28a,30aが可動刃12の外周面12aを押圧することで、第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30は可動刃12を動作させる。なお、第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30の配置は、上記した位置関係に限定されない。例えば、切断材料の硬度の分布や形状等に応じて、上記した以外の関係となる位置に配設されてもよい。また、各シリンダ10,28,30の形成角及びそれらの中心軸が交差する位置についても同様に、上記以外の関係となるように配置されてもよい。
【0019】
第1シリンダ10と、第2シリンダ28と、第3シリンダ30は、コントローラ4によって制御される。第1シリンダ10は、コントローラ4の制御により、第1方向、即ち、可動ピン10aの中心軸に沿って可動ピン10aを進退動作させる。このことにより、第1シリンダ10は可動刃12を第1方向に沿って動作させる。第2シリンダ28は、コントローラ4の制御により、第2方向、即ち、可動ピン28aの中心軸に沿って可動ピン28aを進退動作させる。このことにより、第2シリンダ28は可動刃12を第3方向に沿って動作させる。第3シリンダ30は、コントローラ4の制御により、第3方向、即ち、可動ピン30aの中心軸に沿って可動ピン30aを進退動作させる。このことにより、第3シリンダ30は可動刃12を第3方向に沿って動作させる。
【0020】
コントローラ4は、各シリンダ10,28,30の可動ピン10a,28a,30aが進退動作を行う位置を制御することができる。この位置制御は、切断材料を切断するときの切り込みしろに応じて決定することができる。図7に、各シリンダ10,28,30の動作を表わす図を示す。例えば、徐々に切り込みしろを大きくとって切断加工を行いたい場合には、図7に示されるように、コントローラ4の制御によって、切断開始直後の各可動ピン10a,28a,30aの進退動作を小さくするとともに、連続的又は段階的にその進退動作が大きくなるように制御することができる。
【0021】
さらに、コントローラ4は、各シリンダ10,28,30が成す角に対応する位相差を与えて、各シリンダ10,28,30の動作を制御することができる。位相差は各シリンダ10,28,30が成す角に対等しい位相差であってもよい。本実施例では、第1シリンダ10が可動刃12を動作させる第1方向と、第2シリンダ28が可動刃12を動作させる第2方向と、第3シリンダ30が可動刃12を動作させる第3方向が、互いに120度の角度を成している。このことから、コントローラ4は、図7に示すように、第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30の動作の間に、120度の位相差を与えて制御する。
上記の制御が実行されると、第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30の可動ピン10a,28a,30aは、120度の位相差を持って、第1方向と第2方向と第3方向に沿った進退動作を繰り返していく。このとき、可動ピン10a,28a,30aと可動刃12の外周面12aとが当接する位置は変化する。これとともに、可動刃12は、ダイス孔32の中心軸に垂直な平面上で旋回動作する。図8に、可動刃12の動作を矢印で表わす。可動刃12は回転しながらダイス孔32の外縁方向へと移動し、この結果、ダイス孔32に挿入された切断材料20は、その外周部から中心に向かって環状に切り込まれていく。なお、第1アクチュエータ10と第2アクチュエータ28と第3アクチュエータ30の位置関係が固定であることから、各可動ピン10a,28a,30aの可動刃12に当接する位置が変化した場合であっても、第1方向と第2方向と第3方向の関係は一定である。
【0022】
次いで、図3〜6の切断工程を表わす図に基づき、切断材料20の切断加工動作について説明する。切断動作を開始すると、先ず、図1に示した状態から、一対の搬送ローラ18が動作し、切断材料20を送り出して可動刃12のダイス孔32に挿入する。このとき、ストッパシリンダ8が駆動され、可動ピン8aが可動刃12に接近する方向へと突出する。可動ピン8aが突出する位置は、切断材料20の切断後の長さに応じて、コントローラ4によって制御される。可動刃12のダイス孔32に挿入され、ダイス孔32から突出した切断材料20は、ストッパシリンダ8の可動ピン8aの先端部に当接する。このことにより、切断位置が決定される。これとともに、固定シリンダ16が駆動され、当接部16bが切断材料20に当接し、当接部16bと支持部24によって切断材料20が固定される(図3を参照)。
【0023】
図3に示したように、切断材料20がダイス孔32の両端側においてそれぞれ支持固定されると、図4に示すように、第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30が駆動され、切断材料20の切断が開始される。上述したように、第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30は、コントローラ40によって120度の位相差を与えられて駆動される(図7を参照)。それにより、可動刃12は、渦状に旋回しながら切断材料20を切断していく(図8を参照)。このとき、ストッパシリンダ8の可動ピン8aについても、可動刃12と同じように渦状に旋回する。そのことから、ストッパシリンダ8の可動ピン8aと切断材料20が互いに擦れ合うことはない。
可動刃12が旋回する半径は徐々に拡大されていき、ダイス孔32の中心Cが半径方向にダイス孔32の半径rに相当する量を移動すると、切断材料20は可動刃12と固定刃14によって完全にせん断され、切断が終了する。図5に示すように、切断材料20の切断が終了した後、可動刃12は初期位置に戻される。
なお、本実施例では各シリンダ10,28,30が位置決め制御されているが、各シリンダ10,28,30は単一の振幅で動作するように制御されていてもよい。
【0024】
切断が終了すると、ストッパシリンダ8と固定シリンダ16と一対の搬送ローラ18が駆動される。これにより、切断材料20に当接していた可動ピン8aが切断材料20から離間するとともに、搬送ローラ18によって切断材料20がダイス孔32へと送り出される。図6に示すように、切断された切断材料20の切断片は、ダイス孔32から押し出され、排出シュート22へと排出される。切断片の排出後、ストッパシリンダ8は可動ピン8aを再度突出させる。搬送ローラ18は、切断材料20の先端部が可動ピン8aに当接するまで切断材料20を搬送し、搬送後の切断材料20が固定シリンダ16によって再び固定される。それにより、図3に示す状態に戻り、新たな切断加工動作が開始される。
【0025】
上記の切断動作では、可動刃12が切断材料20の中心に対して渦状に旋回し、切断材料20を多方向から切り込んでゆく。このため、切断材料20が剛性の高い材料である場合や、切断材料の直径が大きい場合であっても、切断材料20の切断面を変形させてしまうことがない。また、切断材料20がパイプのように中空を有する場合であっても、その断面を変形させることなく良好に切断加工を行うことができる。
さらに、ストッパシリンダ8が可動刃12とともに動くために、ストッパシリンダ8と切断材料20とが擦れ合うことがなく、よって切断材料20の先端面に傷をつけることがない。上記の切断装置によると、良好な切断面による切断加工を行うことができる。
【0026】
この切断装置2によると、例えば、一方向から切断材料20を切断する場合に比べても、高品質な製品を提供することができる。また、例えば、一方向から切断材料20を切断しようとする場合には、可動刃12をダイス孔32の直径分移動させなければならない。また、例えば、棒状の材料を切断するような場合には、切断方向に対する切断材料20の中央部分と両端部分における切断長さが異なってしまい、このことにより切断面の変形がしばしば生じてしまう。
【0027】
これに対し、上記の切断装置2によると、可動刃12をダイス孔32の半径(図8のrを参照)だけ動かせば切断材料20を切断することができるので、一方向から切断材料20を切断する場合に比べて可動刃12にかかる負荷を小さく維持することができ、可動刃12の消耗を軽減することができる。
また、上記の切断装置2では、各方向からの切断加工量を一定に保って切断することができるため、切断方向に対する切断材料20の長さの不均等が生じない。また、コントローラ4が各シリンダ10,28,30の位置制御を行うことで、切断材料20の形状や硬さ等に応じた切り込みしろ及び切断方法を設定することができる。
さらに、上記の切断装置2によると、多方向から、多回数にわたって切断材料20に切り込むことができるので、切断時の騒音を小さく抑えることができる。例えば、一方向から切断材料20を切断する場合、切断材料20の剛性が高いほど、切断に必要となる応力も増大してしまう。この結果、切断時の騒音が大きくならざるを得ず、作業者の労働環境を悪化させる一因となっていた。上記の切断装置2はそのような悪因の発生を防止することができる。上記の切断装置2によると、作業者の労働環境を改善することができる。
【0028】
(切断装置2の応用例)
図9に、切断装置2の応用例を示す。この応用例では、可動刃12の外周面12aに、第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30に加えて、第1補助シリンダ36と、第2補助シリンダ38と、第3補助シリンダ34がさらに設けられている。第1補助シリンダ36は、第1シリンダ10と対向する位置で可動刃12の外周面12aに接触する。第2補助シリンダ38は、第2シリンダ28と対向する位置で可動刃12の外周面12aに接触する。第3補助シリンダ34は、第3シリンダ30と対向する位置で可動刃12の外周面12aに接触する。第1補助シリンダ36と第2補助シリンダ38と第3補助シリンダ34は、第1シリンダ10と第2シリンダ28と第3シリンダ30にそれぞれ連動して、コントローラ4によって制御される。第1補助シリンダ36は、第1方向に沿って、第1シリンダ10とは反対の向きで可動刃12を動作させる。第2補助シリンダ38は、第2方向に沿って、第2シリンダ28とは反対の向きで可動刃12を動作させる。第3補助シリンダ34は、第3方向に沿って、第3シリンダ30とは反対の向きで可動刃12を動作させる。
上記の補助シリンダ36,38,34を用いると、各方向における可動刃12の動作に対して、往路だけでなく復路においても力が加えられる。このため、切断時間を短縮することができる。
【0029】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上記した実施例ではストッパ部材は可動刃に固定されていたが、ストッパ部材が可動刃に対して一定の相対位置を保って移動するための移動機構をストッパ部材が備えていてもよい。
【0030】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】切断装置の概略構成を表わす図である。
【図2】可動刃の正面図である。
【図3】切断動作の一過程を表わす図(1)である。
【図4】切断動作の一過程を表わす図(2)である。
【図5】切断動作の一過程を表わす図(3)である。
【図6】切断動作の一過程を表わす図(4)である。
【図7】第1〜第3シリンダの進退動作を表わす図である。
【図8】可動刃の移動する方向を説明する図である。
【図9】切断装置の応用例を表わす図である。
【符号の説明】
【0032】
2:切断装置
4:コントローラ
6:固定具
8:ストッパシリンダ
8a,10a,16a,28a,30a:可動ピン
10:第1シリンダ
12:可動刃
12a:外周面
14:固定刃
16:固定シリンダ
16b:当接部
18:搬送ローラ
20:切断材料
22:排出シュート
24:支持部
26:支持基盤台
28:第2シリンダ
30:第3シリンダ
32:ダイス孔
34:第3補助シリンダ
36:第1補助シリンダ
38:第2補助シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入された切断材料をせん断するダイス孔を有する固定刃及び可動刃と、
可動刃の外縁に当接する可動部を有するとともに、その可動部を第1方向に進退動作させる第1アクチュエータと、
可動刃の外縁に当接する可動部を有するとともに、その可動部を第1方向とは異なる第2方向に進退動作させる第2アクチュエータと、
可動刃の外縁に当接する可動部を有するとともに、その可動部を第1方向及び第2方向とは異なる第3方向に進退動作させる第3アクチュエータと、
第1アクチュエータと第2アクチュエータと第3アクチュエータの動作を制御するコントローラと、
を備える切断装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータと前記第3アクチュエータのそれぞれを、互いの位置関係に応じた位相差をもって制御することを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータの動作の間に、前記第1方向と前記第2方向とが成す角と等しい位相差を与え、前記第2アクチュエータと前記第3アクチュエータの動作の間に、前記第2方向と前記第3方向とが成す角と等しい位相差を与え、前記第3アクチュエータと前記第1アクチュエータの動作との間に、前記第3方向と前記第1方向とが成す角と等しい位相差を与えることを特徴とする請求項1又は2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記第1方向と前記第2方向と前記第3方向は、互いに120度の角度を成していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項5】
前記第1アクチュエータと対向する位置で前記第1方向に沿って前記可動刃を付勢する第1付勢手段と、
前記第2アクチュエータと対向する位置で前記第2方向に沿って前記可動刃を付勢する第2付勢手段と、
前記第3アクチュエータと対向する位置で前記第3方向に沿って前記可動刃を付勢する第3付勢手段と、
をさらに備える請求項1から4のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項6】
前記可動刃のダイス孔から突出する前記切断材料の先端に当接するストッパ部材をさらに備え、
ストッパ部材は、可動刃に対して一定の相対位置を保って移動可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項7】
前記ストッパ部材は、前記可動刃によって支持されていることを特徴とする請求項6に記載の切断装置。
【請求項8】
前記ストッパ部材を前記ダイス孔の中心軸に沿って進退させる第4アクチュエータをさらに備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−291901(P2009−291901A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149120(P2008−149120)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】