説明

切断装置

【課題】 移動容器に収容したロール状媒体の引き出し及び切断を片手で行うことのできる切断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 回転部材とベースフレームとからなる切断装置において、回転部材には回転中心と、その反対端に切断歯と、切断歯の下側に押し付け部材と、回転中心と切断歯との間にガイドとを設け、ベースフレームに可動部材を回転可能に取り付け、ロール状媒体から引き出した媒体をベースフレームと押し付け部材との間を通し、次いで、ガイド、切断歯の順に張りまわし、媒体の引き出し時にはガイドのところで媒体を上方に引き上げ、媒体の切断時には媒体を切断歯の部分で下方に引いて切断するようにすることで、引き出し時には小さい力で媒体を引き出すことが出来、切断時には大きなブレーキ力が働いて容易に切断出来るので、移動容器の切断装置に適用出来ると共に、これらの操作を片手で出来るようにする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパーやキッチンペーパーなどのロール状紙類、ロール状のプラスチックフィルムやアルミシート等(これらを総称してロール状媒体と呼び、引き出した後を媒体と呼ぶ)の引き出し及び切断を片手で行うことのできる切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー、キッチンペーパー、プラスチックフィルムやアルミシート等のロール状媒体を日常生活で使用する機会は多いが、それらのホルダーや収納箱は引き出す時や切断する時に両手で操作するのが当然な構造になっており、調理中で片手しか使えない場合や、各種の疾患や傷害により片手しか使えない人々が使用する場合には大変不便であった。
【0003】
また、安価なトイレットペーパーをトイレット以外の、例えば、台所や居間でも手軽に使用したいという要望に応じて、移動可能な容器にトイレットペーパーを収納する商品は存在したが、片手で使用出来る商品は無かった。
【0004】
従来から、トイレットでトイレットペーパーを片手で引き出し、切断したいという要望は大きく、壁面に固定したトイレットペーパー・ホルダーについては、切断時の力で紙押さえ板をトイレットペーパー・ロールに押し付けてブレーキをかける提案(例えば特許文献1、特許文献2)があるが、特許文献1の方法は、上記要望を満足しているが、トイレットペーパー・ロールの直径が小さくなるにつれて切断歯の位置が下がっていくので移動可能な容器に使用するには不都合があり、特許文献2の方法では、実際に試してみると分かるが、切断が進むにつれて未切断部の紙幅が小さくなるので、途中から十分なブレーキ力が得られなくなり、トイレットペーパーは切断出来ずにずるずると引き出されてしまうという問題があり、これらの提案を移動可能な容器に適用することは出来なかった。
【0005】
切断時に十分なブレーキ力を得ることが難しいなら、トイレットペーパーを水で溶解して切断しようという方法(例えば特許文献3、特許文献4)が提案され、一部製品化もなされているが、きわめて小さい力で切断出来ると言う目的は達せられるが、切断された端面が濡れているので使用時に不快を感じるとか、水を補給する手間がかかるとか、移動容器では転倒した時に水漏れするという問題等があり、さらに、水で溶解出来ないプラスチックフィルムやアルミシート等には使えなかった。
【0006】
移動可能な容器にトイレットペーパー・ロールを収納して、切断に要する力を利用してトイレットペーパーにブレーキ力を与える方法が提案されているが(例えば特許文献5、特許文献6、特許文献7)、特許文献5は、トイレットペーパーにブレーキをかける内容は前記の特許文献2のところで述べたと同様の理由で切断の途中から必要なブレーキ力が得られなくなるという問題があり、特許文献6は、移動可能な容器にトイレットペーパーを収納したということが主で、技術的に片手操作は難しく、特許文献7は、片手操作を可能にしているが、引き出したトイレットペーパーから手を離してハンドルを押し下げて切断するという操作が煩雑な上に、構造が複雑で製作コストが高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3014725号
【特許文献2】特開2002−283280
【特許文献3】特開2003−310478
【特許文献4】特開2005−245647
【特許文献5】特開2002−253446
【特許文献6】特開平8−230871
【特許文献7】特許4418469
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
移動可能な容器にロール状媒体を収納して片手で引き出し、切断が出来るようにするためには、
1.媒体を引き出すためにその先端を掴めるように掴み代があること
2.軽量な容器が動かないように小さい力で媒体を引き出すことが出来ること
3.切断時に媒体が切断歯の部分で動かないように、切断時に加えられる力を利用して媒体に十分なブレーキ力が働くこと
4.切断時に容器が軽量でも移動や転倒しないこと
5.上記1〜4を簡単な機構で実現すること
といった課題がある。
【0009】
上記の課題の中で、1は、媒体を引き出した箇所と切断歯との距離が掴み代になるので、レイアウトで考えれば良いが、2、3、4は新しい発想による切断装置を5の簡単な機構で実現しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決する媒体の切断装置を提供することを目的とし、この目的を達成するために、回転部材とベースフレームとからなる切断装置において、回転部材には回転中心と、その反対端に切断歯と、切断歯の下側に押し付け部材と、回転中心と切断歯との間にガイドとを設け、ベースフレームに可動部材を回転可能に取り付け、媒体をベースフレームと押し付け部材との間を通し、ガイド、切断歯の順に張りまわして、媒体の引き出し時にはガイドのところで媒体を上方に引き上げ、媒体の切断時には媒体を切断歯の部分で下方に引いて切断するようにする。
【0011】
動作としては、ベースフレームと押し付け部材との間を通した媒体を引き出す時にはガイドに約1/4周沿わせて上方に引っ張ることで可動部材を持ち上げるので押し出し部材は媒体から離れて媒体にブレーキがかからず、切断する時には媒体をガイドに約半周沿わせて折り返し、切断歯の部分で切断のために斜め下方に力を入れることで可動部材を押し下げるので、切断歯の下部の押し付け部材が媒体をベースフレームとの間にはさんでブレーキをかける。
【0012】
その結果、ブレーキがかかるか、かからないかと同時に、媒体の切断時にはガイドへの巻き付き角が約半周と、引き出し時の約1/4周より大きくなることから、「オイラー(Euler)の理論」によって切断時にはブレーキ力を拡大するので大きなブレーキ力が働くことになる。
【0013】
「オイラーの理論」によれば、円柱状ガイドに媒体を巻きつけた時に、入力側の張力をTi、出力側の張力をTo、円柱状ガイドと媒体間の摩擦係数をμ、円柱状ガイドへの媒体の巻き付き角をθ とすると、
To/Ti =(exp)μθ
となるので、例えば、摩擦係数μを0.2とし、巻き付き角θを90度(π/2)、180度(π)、225度(5/8・π)で比較すると、Toの大きさはそれぞれTiの約1.4倍、約1.9倍、約2.2倍と大きくなる。
【0014】
加えて、押し付け部材とガイドとの間で媒体に食い込むようにベースフレームに上向きの突起(以後、しごき部材という)を設けると、切断する時に可動部材が下がると、しごき部材が媒体に食い込むので媒体の走行抵抗が大きくなるばかりでなく、ガイドへの巻き付き角も増えるので、ブレーキ力をさらに拡大することが出来る。
【0015】
媒体を引き出す時には、可動部材が持ち上がるので媒体へのしごき部材の食い込み量が小さくなるか、無くなることで走行抵抗はほとんど増えず、しごき部材が無い時とほぼ変わらない小さな力で引き出すことが出来る。
【0016】
以上に説明したように、本発明は、媒体の走行経路内に設けた切断装置の可動部材が媒体に加えられた力で動くだけで、小さな力で媒体を引き出すことが出来、切断時には媒体に大きなブレーキ力が働いて切断動作を確実に出来るようにすることを特徴とするだけでなく、媒体の引き出しや切断の操作を片手で出来ることを特徴とする媒体の切断装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、媒体の走行経路に設けた切断装置の可動部材が、引き出しや切断の操作時に媒体に加えられる力とその方向を利用して動くだけで、媒体を引き出す時には上向きの引き出し力を小さく出来、切断時には媒体に大きなブレーキ力が働くので媒体を容易に切断出来る上に、媒体を引く方向が下方なので、媒体の引き出しや切断の操作時に移動容器が移動しにくく、かつ、転倒しにくいという効果と、これらの操作を片手だけで出来るという効果がある。
【0018】
なお、本発明によるブレーキ力を確認するため、走行経路に厚さ4mm、切断時に媒体への食い込み量が8mm程度のしごき部材を設け、可動部材のガイドは直径10mmの木製、切断歯はピッチ8mm、深さ4mm程度の三角形の歯を付けた厚さ1mmのポリカーボネート樹脂板、押し付け部材の面に1mm厚のゴム板を貼った切断機構を試作して実験をした結果、切断操作で加えた力のみで、市販のコピー用紙(厚さが80ミクロン・メートル程度の上質紙)を切断出来るほどの強力なブレーキ力が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ロール状媒体の移動可能な収納容器の断面図
【図2】切断装置の外観図
【図3】媒体切断時の切断装置の断面図
【図4】引き出し時の切断装置の断面図
【図5】ロール状媒体セット時の切断装置断面図
【図6】切断機構を応用したロール状媒体を切断する機器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施する最適な形態として、移動可能な収納容器にトイレットペーパー・ロールを収納した場合について切断装置の動作を説明する。
【0020】
図1は、移動可能な収納容器2に切断装置1を装着し、トイレットペーパー・ロールの収納部を有する前扉3を開けた状態を示す外観図、図2は、移動可能な収納容器2に切断装置1を装着し、前扉3の収納部にトイレットペーパー・ロール31を収納した状態を示す断面図で、トイレットペーパー・ロール31からトイレットペーパー32を引き出して、切断装置1に張りまわしている様子を一点鎖線で示している。
【0021】
なお、トイレットペーパー・ロール31の残量が減ってきて全体重量が軽くなった時とか、トイレットペーパー32の紙質が硬くて切断時に転倒しやすい場合は、矢印方向に引き出して使用する転倒防止部材4を示している。
【0022】
図3は、切断装置1の外観図で、ベースフレーム11と、回転中心13を中心に回転可能に支持された可動部材12とからなり、ベースフレーム11には用紙ガイド14、しごき板15、断面が円形かそれに近い形状のガイド16を設け、また、可動部材12は、揺動フレーム17、断面が円形かそれに近い形状のガイド18、切断歯19、及び、押し付け部材20から構成されていることを示しており、可動部材12が起きている状態を破線で示している。
【0023】
図4、図5、図6は切断装置1の断面図であり、図4は切断時の様子で、トイレットペーパー32が、ベースフレーム11に設けたガイド16、しごき板15、および、可動部材12の揺動フレーム17に設けたガイド18を経由して切断歯19にいたるまでの経路を一点鎖線で示しており、切断歯19で切断するためにトイレットペーパー32を矢印で示すように下向きに引っ張ると、可動部材12は回転中心13を中心に時計方向に回転し、押し付け部材20はトイレットペーパー32をベースフレーム11(図では、ベースフレーム11に設けたガイド16)との間に挟みこんでブレーキをかけ、かつ、可動部材12のガイド18の近くでしごき板15がトイレットペーパー32に食い込むことによってガイド18へのトイレットペーパー32の巻き付き角が約半周より大きくなる。
【0024】
この構造によれば、トイレットペーパー32を途中まで切断して残りの幅が小さくなっても、押し付け部材20をベースフレーム11(図では、ベースフレーム11に設けたガイド16)に押し付ける力でトイレットペーパー32にブレーキ力が働き、さらに、トイレットペーパー32にしごき板15が食い込むことでトイレットペーパー32の走行抵抗が増えると共に、ガイド18への巻き付き角が大きくなることでブレーキ力が増大するので、切断歯19のところでトイレットペーパー32は移動することが無く、容易に切断することが出来る。
【0025】
なお、ガイド16と18について「断面が円形かそれに近い形状」と説明し、回転するかどうかには言及しなかったが、「オイラーの理論」の計算式で、断面を円形にして回転させる時には、ガイド16や18の軸受けの摩擦係数を用いれば良く、トイレットペーパー32を引き出す時に要する力がさらに小さくなり、切断時はガイド16や18は回転しないのでガイド16や18とトイレットペーパー32との摩擦係数を用いることが出来るので、ブレーキ力は変わらない。
【0026】
図5は、切断装置1のガイド18のところでトイレットペーパー32(一点鎖線で図示)を引き出している様子を示しており、トイレットペーパー32を引き出すために矢印のように上方に引き上げると、その力によって可動部材12は回転中心13を中心に反時計方向に回転し、押し付け部材20はベースフレーム11から離れてブレーキ力が働かなくなり、また、しごき板15の食い込み量も小さくなるか、無くなるので走行抵抗が減ると共に、ガイド18へのトイレットペーパー32の巻き付き角も1/4周以下と小さくなる。
【0027】
すなわち、トイレットペーパー32を上方に引き上げることで、押し付け部材20によるブレーキもしごき板15の食い込みもほぼ無くなり、かつ、ガイド18への巻き付き角も小さくなるので、トイレットペーパー32を小さな力で引き出すことが出来る。
【0028】
図6は、トイレットペーパー32を切断装置1にセットする場合で、可動部材12を上方にはね上げて、トイレットペーパー32(一点鎖線で図示)の先端を用紙ガイド14の上端近くまで引き出した様子を示しており、その後、可動部材12を倒せばトイレットペーパー32の切断機構1へのセットは完了する。
【0029】
可動部材12を倒した後は、トイレットペーパー32の先端がガイド18と切断歯19の間の距離の分だけ出ているので容易につまむことが出来るので、トイレットペーパー32の先端を持って必要な長さだけ図5のように上方に引き出し、次いで、図4のように下方に引っ張れば、切断歯19でトイレットペーパー32を容易に切断することが出来る。
【0030】
なお、トイレットペーパー32の引き出し時に要する力が小さく、かつ、上向きなので、移動可能な収納容器2とトイレットペーパー・ロール31との合計重量がそれほど大きくなくても全体が持ち上がることが無く、また、切断時には切断歯19のところでトイレットペーパー32を下方に引くので移動や転倒はしにくいという特徴がある。
【0031】
片手操作を重視して、図1や図2では、前扉3のトイレットペーパー・ロールの収納部にトイレットペーパー・ロール31を置くだけという構造を示したが、通常のトイレットペーパー・ロールのホルダーのように心棒を使用する構造でも良い。
【0032】
なお、トイレットペーパーの種類や収納容器2内のトイレットペーパー・ロールの保持の方法によって切断時に必要なブレーキ力が増減するのは当然で、上記説明ではしごき板15が存在する状態での説明をしたが、しごき板15が必ずしも必要では無い場合もある。
【0033】
以上、本発明による切断機構の適用形態として、トイレットペーパー・ロールを移動可能な収納容器に入れて使用する場合で説明したが、本発明の切断装置は切断時のブレーキ力が大きいことから、移動可能な収納容器以外の、例えば、通常のトイレットに設置されるトイレットペーパー・ロールのホルダーや、箱入りでロール状のキッチンペーパー、プラスチックフィルム、アルミシート等のロール状媒体の切断装置にも適用出来るのは明らかである。
【0034】
図7は、本発明による切断装置の他の適用例として、箱入りでロール状のキッチンペーパー、プラスチックフィルム、アルミシート等のロール状媒体の媒体を切断する場合を示しており、切断装置101とロール状媒体の紙箱131を収納する収納部102とを組み合わせて冷蔵庫や壁の面103に、ネジや永久磁石を使って取り付ければ、該媒体を片手で切断することが出来る。
【0035】
この場合の使用方法は、まず、箱入りで、ロール状のキッチンペーパー、プラスチックフィルム、アルミシート等のロール状媒体132の箱の開閉出来る面を切り離して箱ごと収納部102に挿入し、引き出した媒体133を、前に説明したトイレットペーパーの場合と同様の走行経路で切断装置101にセットすれば、媒体133を引き出す時は上方へ引き出し、切断時は切断歯のところで下方に引くという操作で、片手で容易に切断出来る。
【符号の説明】
1 切断装置
2 収納容器
3 前扉
4 転倒防止部材
11 ベースフレーム
12 可動部材
13 回転中心
14 用紙ガイド
15 しごき板
16 ガイド
17 揺動フレーム
18 ガイド
19 切断歯
20 押し付け部材
31 トイレットペーパー・ロール
32 トイレットペーパー
101 切断装置
102 収納部
103 壁の面
131 紙箱
132 ロール状媒体
133 媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、プラスチックフィルム、アルミ箔等の媒体の切断装置において、
回転中心と、その反対端に切断歯と、切断歯の下側に押し付け部材と、回転中心と切断歯との間にガイドとを設けた可動部材と、
該可動部材を回転可能に取り付けるベースフレームとからなり、
該媒体を該ベースフレームと該押し付け部材との間を通し、該ガイド、該切断歯の順に張りまわして、
該媒体の引き出し時には該ガイドのところで該媒体を上方に引いて引き出し、該媒体の切断時には該媒体を該切断歯の部分で下方に引いて切断することを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記ベースフレームの、該回転部材の該ガイドと該押し付け部材との間に対応する位置に上向きの突起を設け、切断動作時に該突起が該媒体を押し上げるようにしたことを特徴とする[請求項1]記載の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−139788(P2012−139788A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294896(P2010−294896)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(502133859)
【Fターム(参考)】