切羽封じ込め方法
【課題】
トンネル工事において切羽付近から発生する汚染空気が、トンネル内全体に拡散することを抑止し、汚染空気を排出する切羽封じ込め方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
排気管が設置されたトンネル工事における汚染空気の拡散を防止する切羽封じ込め方法であって、トンネルの天井壁面および内壁側面から所定の範囲に隔壁を形成し、隔壁よりも切羽側に排気管の一端を設け、排気管で隔壁と切羽との間の空間における汚染空気を集塵することで、坑口側から切羽側へ空気を流れさせて汚染空気の拡散を防止する、切羽封じ込め方法である。
トンネル工事において切羽付近から発生する汚染空気が、トンネル内全体に拡散することを抑止し、汚染空気を排出する切羽封じ込め方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
排気管が設置されたトンネル工事における汚染空気の拡散を防止する切羽封じ込め方法であって、トンネルの天井壁面および内壁側面から所定の範囲に隔壁を形成し、隔壁よりも切羽側に排気管の一端を設け、排気管で隔壁と切羽との間の空間における汚染空気を集塵することで、坑口側から切羽側へ空気を流れさせて汚染空気の拡散を防止する、切羽封じ込め方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事において切羽付近から発生する汚染空気が、トンネル内全体に拡散することを防止し、それを排出する切羽封じ込め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事では、爆薬による発破や重機による掘削などのさまざまな作業が行われることから、とくに切羽付近では大量の粉塵や、重機の排気ガス、発破によるガスなどの汚染空気が発生する。発生した汚染空気はトンネル内において拡散し、充満するので、速やかにそれを除去・排出することが望まれる。
【0003】
そのため、トンネル内に遮蔽物を設けることで、汚染空気を切羽から遮蔽物の間に閉じ込め、集塵機でそれらを除去・排出することが行われている。これらを下記特許文献1乃至特許文献10に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−294100号公報
【特許文献2】実開昭62−172800号公報
【特許文献3】特開平1−239300号公報
【特許文献4】実公平3−6719号公報
【特許文献5】実公平3−48320号公報
【特許文献6】特開平10−252400号公報
【特許文献7】特開2002−276300号公報
【特許文献8】特開2002−349199号公報
【特許文献9】特開2003−314200号公報
【特許文献10】特開2004−204539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1乃至特許文献10に記載の装置、方法では、汚染空気の遮蔽方法として遮蔽カーテンや遮蔽シート、防音壁などを用いている。しかし、上記特許文献に記載の装置、方法の場合、基本的に、トンネル内の所定位置に固定的に設置される。そのため、掘削が進むと、かかる装置を取り外し、新たな位置に再度、固定設置する必要がある。
【0006】
しかしながら従来の装置、方法の場合、固定設置が原則であることから、装置の取り外し、固定設置のたびに手間および時間を要してしまい、より簡便な汚染空気の封じ込め、排出方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑み、切羽封じ込め方法を発明した。
【0008】
第1の発明は、排気管が設置されたトンネル工事における汚染空気の拡散を防止する切羽封じ込め方法であって、トンネルの天井壁面および内壁側面から所定の範囲に隔壁を形成し、前記隔壁よりも切羽側に前記排気管の一端を設け、前記排気管で前記隔壁と切羽との間の空間における汚染空気を集塵することで、坑口側から切羽側へ空気を流れさせて前記汚染空気の拡散を防止する、切羽封じ込め方法である。
【0009】
本発明のように、トンネルの天井部および側面部を閉塞しただけで集塵を行う場合であっても、トンネル全体への汚染空気の拡散を大きく抑止することが出来る。この場合、トンネルの天井部および側面部のみを隔壁するので、トンネルの中心付近は開放されている。そのため、トンネル工事に不可欠な測量作業の支障とはならない。また、車両や人の通行の妨げになることもない。従って、トンネル工事作業を続行しながら集塵作業を行うことが可能となり、全体の作業時間の短縮にも繋がる。
【0010】
上述の発明では、前記トンネル工事において、前記隔壁よりも切羽側に一端が設けられた送気管がさらに設置されており、前記送気管からの送気量よりも前記排気管の排気量が多い状態として坑口側から切羽側へ空気を流れさせることで前記切羽から隔壁までの空間を負圧とし、前記排気管が前記隔壁と切羽との間の空間における汚染空気を集塵する、切羽封じ込め方法のように構成することもできる。
【0011】
隔壁よりも切羽側に一端がある送気管を設けて、新鮮な空気を供給することで、切羽と隔壁との間の汚染空気の排出をより迅速に行うことができる。この場合には、送気管の送気量よりも排気管の排気量を多くすることで負圧を維持できる。
【0012】
上述の発明において、前記隔壁は、機密性袋体で構成されるバルーンによって形成する、切羽封じ込め方法のように構成することもできる。
【0013】
隔壁はいかようにも構成することができるが、バルーンによって形成することが好ましい。バルーンであれば隔壁を軽量化でき、またトンネルの天井壁面および内壁側面と密着するので、封じ込めの効果を高めることが出来るからである。
【発明の効果】
【0014】
以上の各発明のように構成することで、トンネルの断面全体を閉塞せずとも、トンネルの天井部および側面部を隔壁で閉塞しただけで、トンネル全体への汚染空気の拡散を大きく抑止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】バルーン台車と各バルーンとの関係を模式的に示す図である。
【図2】切羽封じ込め装置のバルーンを膨らませた状態の正面図である。
【図3】トンネル内に切羽封じ込め装置を設置した状態の正面図である。
【図4】切羽封じ込め装置がトンネルに設置される状態を模式的に示す図である。
【図5】実験において各部の断面積を示す図である。
【図6】実験における粉塵濃度の測定地点を示す図である。
【図7】実験における粉塵濃度の測定地点を示す図である。
【図8】実験1における条件、測定結果を示す図である。
【図9】実験1における粉塵濃度の変化を示すグラフである。
【図10】実験2における条件、測定結果を示す図である。
【図11】実験2における粉塵濃度の変化を示すグラフである。
【図12】隔壁付近の空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の切羽封じ込め方法では、トンネルの内壁側面Wsおよび天井壁面Wuに隔壁を設置し、トンネルの断面の中心付近は開口した状態を維持する。そしてこの状態において隔壁よりも切羽側を負圧、たとえばトンネルの天井壁面Wuから吊下固定された送気管4からの送気量よりも、トンネルの天井壁面Wuから吊下された第1の排気管5からの集塵量(排気量)が多い状態とする。以下に詳述する。
【0017】
まず、トンネルの内壁側面Wsおよび天井側面Wuのみに隔壁を設置し、トンネルの断面の中心付近は開口した状態を維持するために、その一例として、以下のような切羽封じ込め装置1を用いる。なお、切羽封じ込め装置1は、内壁側面Wsおよび天井側面Wuに、後述するバルーン3が密着することで、トンネルの側面部および天井部を閉塞する隔壁を形成する装置の一例である。切羽封じ込め装置1は、門形状のバルーン台車2とバルーン3とを少なくとも備えている。図1に、切羽封じ込め装置1におけるバルーン台車2とバルーン3との関係を模式的に示す。
【0018】
バルーン台車2は、トンネル内部に設置する部材であって、左右の支柱部21、22、および左右の支柱部21、22の上方とそれぞれ接合する水平部23とにより、門形状が形成されている。またバルーン台車2には、バルーン3が設置されている。
【0019】
バルーン3は、トンネルの天井壁面Wsと密着し天井部を閉塞するアーチバルーン31と、トンネルの右側の内壁側面Wsと密着し、右側の側面部を閉塞する右側バルーン32と、トンネルの左側の内壁側面Wsを密着し、左側の側面部を閉塞する左側バルーン33とからなる。
【0020】
また各バルーン3は袋体が複数連結して形成されており、空気をその内部に流入させることにより膨張する。アーチバルーン31はトンネルの天井壁面Wuと密着し、トンネルの天井部を閉塞する隔壁となり、右側バルーン32、左側バルーン33はトンネルの内壁側面Wsを密着し、トンネルの側面部を閉塞する隔壁となる。
【0021】
以上のような各バルーン3の袋体に空気を流入させて膨張させることで、図2のようにトンネルの天井部および側面部が、バルーン3による隔壁で閉塞できる。その結果、トンネルの中心付近には、工事機械や車両、作業員が通行可能な空間(開口部7)を形成することが出来る。
【0022】
上述のアーチバルーン31、右側バルーン32、左側バルーン33の素材としてはナイロンタフタなどを用いることが出来るが、軽量で耐久性があればこれに限定されない。たとえば素材としてナイロンタフタを用いた場合、1m2あたり0.5kgの重量であることから、アーチバルーン31が20m2、右側バルーン32および左側バルーン33がそれぞれ15m2であったとした場合、アーチバルーン31の重量は10kg、右側バルーン32および左側バルーン33の重量はそれぞれ7.5kgとなり、80m2の断面積のトンネルの閉塞に用いるナイロンタフタの重量は25kgで足り、軽量化を実現できる。また、各バルーン3を形成する袋体は、二重構造、多重構造になっていても良く、それぞれに空気を流出させるためのファスナーが取り付けられていても良い。
【0023】
つぎに本発明の切羽封じ込め方法を、上述の切羽封じ込め装置1を用いて説明する。
【0024】
まずトンネル工事における切羽から所定距離付近、たとえば切羽から30メートルや50メートル付近の位置に、上述の切羽封じ込め装置1を設置する。これを模式的に示すのが図3である。また図4では、実際のトンネル工事における状態を示す。図4(a)は切羽封じ込め装置1が設置されたトンネルの縦断面図であり、図4(b)は切羽封じ込め装置1が設置されたトンネル内の上方からの図である。また図4(c)は図4(a)におけるA−A線の断面図である。
【0025】
切羽から切羽封じ込め装置1までの汚染空気を換気するため、トンネルの天井壁面Wu付近に送気管4、第1の排気管5および第2の排気管6が設置される。この際に、送気管4および第1の排気管5は、切羽封じ込め装置1と同じ位置あるいは切羽封じ込め装置1よりも切羽側に、その一端が設置される。また第1の排気管5の他の一端は、切羽封じ込め装置1と坑口との間の集塵機8に連結しており、集塵機8での集塵作用によって、切羽と切羽封じ込め装置1との空間における粉塵やガスなどを含んだ汚染空気を集塵・排気する。集塵機8には集塵後の空気をトンネルから排気するための第2の排気管6が連結している。第2の排気管6の集塵機8と連結していない他の一端は、トンネルの坑口から外部に位置している。送気管4、第1の排気管5および第2の排気管6はトンネルの天井付近の天井壁面Wuから吊下固定される。図4では、送気管4の他の一端は、トンネル内の所定箇所に設けられた送風口Hから、トンネル外部に設置された送風機41に連結しており、送風機41からの送風によって、切羽付近に送風する。
【0026】
以上のように配管することで、送気管4は切羽と切羽封じ込め装置1との間の空間に送風が出来、第1の排気管5は切羽と切羽封じ込め装置1との間の汚染空気を集塵・排気することが出来る。また集塵機8で集塵したあとの空気は、第2の排気管6からトンネルの外部に排気される。
【0027】
以上のようにして送気管4、第1の排気管5および第2の排気管6などが配管された後、バルーン台車2の各バルーン3に空気を送り込むことで、切羽と坑口との間の空間に、バルーン3による隔壁を設ける。具体的には、バルーン台車2の所定箇所に設置された送風機24からアーチバルーン31、右側バルーン32および左側バルーン33に対して、送風機24a、24b、24cで空気を送り込むことで、各バルーンを膨張させる。
【0028】
このようにバルーン3に空気を送り込むことで、図2に示すように、切羽封じ込め装置1が設置された位置で、トンネルの天井壁面Wuおよび内壁側面Wsと、アーチバルーン31、右側バルーン32および左側バルーン33とが密着し、天井部および側面部に隔壁が形成される。なお、各バルーン3の大きさは、各バルーン3がトンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wuに密着する大きさまで膨張させられればよい。その結果、トンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wu付近は、アーチバルーン31、右側バルーン32および左側バルーン33が設置されたまま、中心部付近は車両が通行可能となる。またトンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wuが、凹凸のある吹き付け面となっていることがあるが、バルーン3で空間を区切る構造とすることで、バルーン3と内壁側面Ws、天井壁面Wuとを密着させることができ、粉塵やガスなどの汚染空気を切羽から切羽封じ込め装置1の間に封じ込めることが出来る。
【0029】
このようにして切羽から切羽封じ込め装置1の空間と、切羽封じ込め装置1から坑口までの空間とを区切り、送気管4からの送気量と第1の排気管5での集塵量(排気量)とでは、集塵量(排気量)が多くなるように集塵・排気を行う。すなわち切羽から切羽封じ込め装置1の空間が負圧となるようにする。
【0030】
本発明の切羽封じ込め装置1では、負圧となるように送気管4からの送気量と第1の排気管5での排気量を調整しているため、開口部7を開けたままでも、トンネル全体に粉塵やガスなどの汚染空気が拡散するのを大きく防止することが出来る。
【0031】
出願人は、模擬トンネル(全長100m、内空断面積80m2)にて、開口部7を開けたままでも、トンネル全体に粉塵やガスなどを含んだ汚染空気が拡散するのを大きく防止する効果があることの実験を行った。模擬トンネルの断面積は80m2、アーチバルーン31の断面積は20m2、右側バルーン32および左側バルーン33の断面積はそれぞれ15m2、開口部7の断面積は30m2である。これを模式的に示すのが図5である。
【0032】
図6および図7の実験概略図に示すように、本実験では、切羽近傍に粉塵発生装置Dを設置する。そして、切羽から15m地点(A点)、切羽封じ込め装置1の後方5m地点(B点)、集塵機8の後方で切羽から50m地点(C点)の各点の粉塵濃度を測定した。また、A点乃至C点では、それぞれ3箇所の粉塵濃度を測定し、平均値を採ることで、A点乃至C点の粉塵濃度(平均粉塵濃度)とした。またA点の測定地点であるP1、P3、B点の測定地点であるP4、P6、C点の測定地点であるP7、P9は、それぞれ、トンネル地面から1mの高さで、それぞれの内壁側面Wsから1m離れた点である。またA点の測定地点であるP2、B点の測定地点であるP5、C点の測定地点であるP8は、トンネル地面から1mの高さで中央の点である。
【0033】
粉塵濃度の測定は、デジタル粉塵計LD−3K(質量濃度変換係数(K値)=0.002(mg/m3/cpm))を用いた。また粉塵濃度(mg/m3)は、K値×相対濃度(cpm)で表される。
【0034】
実験は以下の方法で行った。第1に、ゼオライト粉体(ゼオライト#600 中心粒径1.92μm)を粉塵とする粉塵発生装置Dで切羽に粉塵を発生させる。第2に、図7における測定地点P1〜P3の測定値がすべて8mg/m3を超えた時点で粉塵発生装置Dを停止させる。第3に、送風機41、集塵機8を所定の風量で起動させることで、送気管4からの送気、第1の排気管5からの集塵・排気を所定の風量で行う。第4に、測定地点P1〜P3の測定値がすべて3mg/m3以下になるまで、各測定地点の粉塵濃度を測定する。
【0035】
まず負圧をせずに、トンネルの断面の閉塞状態に応じて粉塵濃度に差があるかを測定するため、開口部7を設けた状態、トンネルが閉塞されていない状態(全開状態)で測定した(実験1)。図8(a)に条件、図8(b)に測定結果、図9(a)乃至(c)に、A点乃至C点の測定値の変化のグラフを示す。
【0036】
つぎに、負圧とした場合に、トンネルの断面の閉塞状態に応じて粉塵濃度に差があるかを測定するため、開口部7を設けた状態、トンネルが閉塞されていない状態(全開状態)で測定した(実験2)。図10(a)に条件、図10(b)に測定結果、図11(a)乃至(c)に、A点乃至C点の測定値の変化のグラフを示す。
【0037】
実験1では負圧をかけていない(送気量と排気量はともに1000m3/min)。この場合、開口部7を設けた状態と全開状態とでは、粉塵濃度に大きな差が見られず、とくにB点においては開口部7を設けた状態と全開状態とでは粉塵濃度に大きな差がない。
【0038】
一方、実験2では送気量が750m3/min、排気量が1000m3/minであり、切羽と隔壁との間が負圧となっている。この場合、開口部7を設けた状態と全開状態とでは、実験1よりも粉塵濃度は低くなり、さらに、B点およびC点では粉塵濃度に差が見られる。とくに、C点では粉塵濃度に著しい差がある。
【0039】
このように、切羽と隔壁との間を負圧にしている場合、隔壁はトンネル外周部分のみに設置するだけで、粉塵やガスなどを含んだ汚染空気を切羽側にとどめる効果が非常に高いことが判った。つまり、この形態で切羽付近の換気を行うことで、集塵作業中であっても開口部7を形成できるため、車両が切羽と坑口との間を通行可能な状態を保持することが出来る。その結果、切羽での作業と集塵作業とを並行することも出来る。
【0040】
これは次のような理由によるものと考察する。図12は、切羽封じ込め装置1付近の空気の流れを示す図である。切羽から隔壁の空間が負圧となることで、切羽封じ込め装置1による隔壁から坑口までの空間の空気は、切羽から隔壁までの空間に流入しやすくなる。一方、トンネルの内壁側面Wsに沿って切羽から坑口側に流出しようとする汚染空気は、隔壁となる切羽封じ込め装置1の右側バルーン32、左側バルーン33で抑止され、トンネルの内壁側面Wsと右側バルーン32、左側バルーン33に沿って、切羽側に向かう流入空気により、流れの向きが切羽の方向に変えられる。その結果、右側バルーン32、左側バルーン33付近に到達した汚染空気は、右側バルーン32、左側バルーン33付近で、再度、切羽側に流れることとなる。これは、アーチバルーン31がある天井部であっても同様である。
【0041】
このように、切羽からの粉塵やガスなどを含んだ汚染空気は、トンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wuに沿って流れるが、天井部および側面部は各バルーン3によって閉塞されており、また負圧のため、切羽封じ込め装置1から坑口側に漏れにくくなる。その結果、開口部7を設けたとしても、汚染空気が切羽封じ込め装置1から坑口側に漏れにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のように構成することで、トンネルの断面全体を閉塞せずとも、トンネルの天井部および側面部を隔壁で閉塞しただけで、切羽からの粉塵やガスなどを含んだ汚染空気の拡散を大きく防止することが出来る。また、トンネルの天井部および側面部のみを隔壁するので、トンネルの中心付近は開放されているため、トンネル工事に不可欠な測量作業の支障とはならない。さらに、車両や人の通行の妨げになることもないので、トンネル工事作業を続行しながら集塵作業を行うことが可能となり、全体の作業時間の短縮にも繋がる。
【符号の説明】
【0043】
1:切羽封じ込め装置
2:バルーン台車
3:バルーン
4:送気管
5:第1の排気管
6:第2の排気管
7:開口部
8:集塵機
21:右支柱部
22:左支柱部
23:水平部
24:送風機
31:アーチバルーン
32:右側バルーン
33:左側バルーン
41:送風機
Ws:トンネルの内壁側面
Wu:トンネルの天井壁面
H:送風口
D:粉塵発生装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事において切羽付近から発生する汚染空気が、トンネル内全体に拡散することを防止し、それを排出する切羽封じ込め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事では、爆薬による発破や重機による掘削などのさまざまな作業が行われることから、とくに切羽付近では大量の粉塵や、重機の排気ガス、発破によるガスなどの汚染空気が発生する。発生した汚染空気はトンネル内において拡散し、充満するので、速やかにそれを除去・排出することが望まれる。
【0003】
そのため、トンネル内に遮蔽物を設けることで、汚染空気を切羽から遮蔽物の間に閉じ込め、集塵機でそれらを除去・排出することが行われている。これらを下記特許文献1乃至特許文献10に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−294100号公報
【特許文献2】実開昭62−172800号公報
【特許文献3】特開平1−239300号公報
【特許文献4】実公平3−6719号公報
【特許文献5】実公平3−48320号公報
【特許文献6】特開平10−252400号公報
【特許文献7】特開2002−276300号公報
【特許文献8】特開2002−349199号公報
【特許文献9】特開2003−314200号公報
【特許文献10】特開2004−204539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1乃至特許文献10に記載の装置、方法では、汚染空気の遮蔽方法として遮蔽カーテンや遮蔽シート、防音壁などを用いている。しかし、上記特許文献に記載の装置、方法の場合、基本的に、トンネル内の所定位置に固定的に設置される。そのため、掘削が進むと、かかる装置を取り外し、新たな位置に再度、固定設置する必要がある。
【0006】
しかしながら従来の装置、方法の場合、固定設置が原則であることから、装置の取り外し、固定設置のたびに手間および時間を要してしまい、より簡便な汚染空気の封じ込め、排出方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑み、切羽封じ込め方法を発明した。
【0008】
第1の発明は、排気管が設置されたトンネル工事における汚染空気の拡散を防止する切羽封じ込め方法であって、トンネルの天井壁面および内壁側面から所定の範囲に隔壁を形成し、前記隔壁よりも切羽側に前記排気管の一端を設け、前記排気管で前記隔壁と切羽との間の空間における汚染空気を集塵することで、坑口側から切羽側へ空気を流れさせて前記汚染空気の拡散を防止する、切羽封じ込め方法である。
【0009】
本発明のように、トンネルの天井部および側面部を閉塞しただけで集塵を行う場合であっても、トンネル全体への汚染空気の拡散を大きく抑止することが出来る。この場合、トンネルの天井部および側面部のみを隔壁するので、トンネルの中心付近は開放されている。そのため、トンネル工事に不可欠な測量作業の支障とはならない。また、車両や人の通行の妨げになることもない。従って、トンネル工事作業を続行しながら集塵作業を行うことが可能となり、全体の作業時間の短縮にも繋がる。
【0010】
上述の発明では、前記トンネル工事において、前記隔壁よりも切羽側に一端が設けられた送気管がさらに設置されており、前記送気管からの送気量よりも前記排気管の排気量が多い状態として坑口側から切羽側へ空気を流れさせることで前記切羽から隔壁までの空間を負圧とし、前記排気管が前記隔壁と切羽との間の空間における汚染空気を集塵する、切羽封じ込め方法のように構成することもできる。
【0011】
隔壁よりも切羽側に一端がある送気管を設けて、新鮮な空気を供給することで、切羽と隔壁との間の汚染空気の排出をより迅速に行うことができる。この場合には、送気管の送気量よりも排気管の排気量を多くすることで負圧を維持できる。
【0012】
上述の発明において、前記隔壁は、機密性袋体で構成されるバルーンによって形成する、切羽封じ込め方法のように構成することもできる。
【0013】
隔壁はいかようにも構成することができるが、バルーンによって形成することが好ましい。バルーンであれば隔壁を軽量化でき、またトンネルの天井壁面および内壁側面と密着するので、封じ込めの効果を高めることが出来るからである。
【発明の効果】
【0014】
以上の各発明のように構成することで、トンネルの断面全体を閉塞せずとも、トンネルの天井部および側面部を隔壁で閉塞しただけで、トンネル全体への汚染空気の拡散を大きく抑止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】バルーン台車と各バルーンとの関係を模式的に示す図である。
【図2】切羽封じ込め装置のバルーンを膨らませた状態の正面図である。
【図3】トンネル内に切羽封じ込め装置を設置した状態の正面図である。
【図4】切羽封じ込め装置がトンネルに設置される状態を模式的に示す図である。
【図5】実験において各部の断面積を示す図である。
【図6】実験における粉塵濃度の測定地点を示す図である。
【図7】実験における粉塵濃度の測定地点を示す図である。
【図8】実験1における条件、測定結果を示す図である。
【図9】実験1における粉塵濃度の変化を示すグラフである。
【図10】実験2における条件、測定結果を示す図である。
【図11】実験2における粉塵濃度の変化を示すグラフである。
【図12】隔壁付近の空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の切羽封じ込め方法では、トンネルの内壁側面Wsおよび天井壁面Wuに隔壁を設置し、トンネルの断面の中心付近は開口した状態を維持する。そしてこの状態において隔壁よりも切羽側を負圧、たとえばトンネルの天井壁面Wuから吊下固定された送気管4からの送気量よりも、トンネルの天井壁面Wuから吊下された第1の排気管5からの集塵量(排気量)が多い状態とする。以下に詳述する。
【0017】
まず、トンネルの内壁側面Wsおよび天井側面Wuのみに隔壁を設置し、トンネルの断面の中心付近は開口した状態を維持するために、その一例として、以下のような切羽封じ込め装置1を用いる。なお、切羽封じ込め装置1は、内壁側面Wsおよび天井側面Wuに、後述するバルーン3が密着することで、トンネルの側面部および天井部を閉塞する隔壁を形成する装置の一例である。切羽封じ込め装置1は、門形状のバルーン台車2とバルーン3とを少なくとも備えている。図1に、切羽封じ込め装置1におけるバルーン台車2とバルーン3との関係を模式的に示す。
【0018】
バルーン台車2は、トンネル内部に設置する部材であって、左右の支柱部21、22、および左右の支柱部21、22の上方とそれぞれ接合する水平部23とにより、門形状が形成されている。またバルーン台車2には、バルーン3が設置されている。
【0019】
バルーン3は、トンネルの天井壁面Wsと密着し天井部を閉塞するアーチバルーン31と、トンネルの右側の内壁側面Wsと密着し、右側の側面部を閉塞する右側バルーン32と、トンネルの左側の内壁側面Wsを密着し、左側の側面部を閉塞する左側バルーン33とからなる。
【0020】
また各バルーン3は袋体が複数連結して形成されており、空気をその内部に流入させることにより膨張する。アーチバルーン31はトンネルの天井壁面Wuと密着し、トンネルの天井部を閉塞する隔壁となり、右側バルーン32、左側バルーン33はトンネルの内壁側面Wsを密着し、トンネルの側面部を閉塞する隔壁となる。
【0021】
以上のような各バルーン3の袋体に空気を流入させて膨張させることで、図2のようにトンネルの天井部および側面部が、バルーン3による隔壁で閉塞できる。その結果、トンネルの中心付近には、工事機械や車両、作業員が通行可能な空間(開口部7)を形成することが出来る。
【0022】
上述のアーチバルーン31、右側バルーン32、左側バルーン33の素材としてはナイロンタフタなどを用いることが出来るが、軽量で耐久性があればこれに限定されない。たとえば素材としてナイロンタフタを用いた場合、1m2あたり0.5kgの重量であることから、アーチバルーン31が20m2、右側バルーン32および左側バルーン33がそれぞれ15m2であったとした場合、アーチバルーン31の重量は10kg、右側バルーン32および左側バルーン33の重量はそれぞれ7.5kgとなり、80m2の断面積のトンネルの閉塞に用いるナイロンタフタの重量は25kgで足り、軽量化を実現できる。また、各バルーン3を形成する袋体は、二重構造、多重構造になっていても良く、それぞれに空気を流出させるためのファスナーが取り付けられていても良い。
【0023】
つぎに本発明の切羽封じ込め方法を、上述の切羽封じ込め装置1を用いて説明する。
【0024】
まずトンネル工事における切羽から所定距離付近、たとえば切羽から30メートルや50メートル付近の位置に、上述の切羽封じ込め装置1を設置する。これを模式的に示すのが図3である。また図4では、実際のトンネル工事における状態を示す。図4(a)は切羽封じ込め装置1が設置されたトンネルの縦断面図であり、図4(b)は切羽封じ込め装置1が設置されたトンネル内の上方からの図である。また図4(c)は図4(a)におけるA−A線の断面図である。
【0025】
切羽から切羽封じ込め装置1までの汚染空気を換気するため、トンネルの天井壁面Wu付近に送気管4、第1の排気管5および第2の排気管6が設置される。この際に、送気管4および第1の排気管5は、切羽封じ込め装置1と同じ位置あるいは切羽封じ込め装置1よりも切羽側に、その一端が設置される。また第1の排気管5の他の一端は、切羽封じ込め装置1と坑口との間の集塵機8に連結しており、集塵機8での集塵作用によって、切羽と切羽封じ込め装置1との空間における粉塵やガスなどを含んだ汚染空気を集塵・排気する。集塵機8には集塵後の空気をトンネルから排気するための第2の排気管6が連結している。第2の排気管6の集塵機8と連結していない他の一端は、トンネルの坑口から外部に位置している。送気管4、第1の排気管5および第2の排気管6はトンネルの天井付近の天井壁面Wuから吊下固定される。図4では、送気管4の他の一端は、トンネル内の所定箇所に設けられた送風口Hから、トンネル外部に設置された送風機41に連結しており、送風機41からの送風によって、切羽付近に送風する。
【0026】
以上のように配管することで、送気管4は切羽と切羽封じ込め装置1との間の空間に送風が出来、第1の排気管5は切羽と切羽封じ込め装置1との間の汚染空気を集塵・排気することが出来る。また集塵機8で集塵したあとの空気は、第2の排気管6からトンネルの外部に排気される。
【0027】
以上のようにして送気管4、第1の排気管5および第2の排気管6などが配管された後、バルーン台車2の各バルーン3に空気を送り込むことで、切羽と坑口との間の空間に、バルーン3による隔壁を設ける。具体的には、バルーン台車2の所定箇所に設置された送風機24からアーチバルーン31、右側バルーン32および左側バルーン33に対して、送風機24a、24b、24cで空気を送り込むことで、各バルーンを膨張させる。
【0028】
このようにバルーン3に空気を送り込むことで、図2に示すように、切羽封じ込め装置1が設置された位置で、トンネルの天井壁面Wuおよび内壁側面Wsと、アーチバルーン31、右側バルーン32および左側バルーン33とが密着し、天井部および側面部に隔壁が形成される。なお、各バルーン3の大きさは、各バルーン3がトンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wuに密着する大きさまで膨張させられればよい。その結果、トンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wu付近は、アーチバルーン31、右側バルーン32および左側バルーン33が設置されたまま、中心部付近は車両が通行可能となる。またトンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wuが、凹凸のある吹き付け面となっていることがあるが、バルーン3で空間を区切る構造とすることで、バルーン3と内壁側面Ws、天井壁面Wuとを密着させることができ、粉塵やガスなどの汚染空気を切羽から切羽封じ込め装置1の間に封じ込めることが出来る。
【0029】
このようにして切羽から切羽封じ込め装置1の空間と、切羽封じ込め装置1から坑口までの空間とを区切り、送気管4からの送気量と第1の排気管5での集塵量(排気量)とでは、集塵量(排気量)が多くなるように集塵・排気を行う。すなわち切羽から切羽封じ込め装置1の空間が負圧となるようにする。
【0030】
本発明の切羽封じ込め装置1では、負圧となるように送気管4からの送気量と第1の排気管5での排気量を調整しているため、開口部7を開けたままでも、トンネル全体に粉塵やガスなどの汚染空気が拡散するのを大きく防止することが出来る。
【0031】
出願人は、模擬トンネル(全長100m、内空断面積80m2)にて、開口部7を開けたままでも、トンネル全体に粉塵やガスなどを含んだ汚染空気が拡散するのを大きく防止する効果があることの実験を行った。模擬トンネルの断面積は80m2、アーチバルーン31の断面積は20m2、右側バルーン32および左側バルーン33の断面積はそれぞれ15m2、開口部7の断面積は30m2である。これを模式的に示すのが図5である。
【0032】
図6および図7の実験概略図に示すように、本実験では、切羽近傍に粉塵発生装置Dを設置する。そして、切羽から15m地点(A点)、切羽封じ込め装置1の後方5m地点(B点)、集塵機8の後方で切羽から50m地点(C点)の各点の粉塵濃度を測定した。また、A点乃至C点では、それぞれ3箇所の粉塵濃度を測定し、平均値を採ることで、A点乃至C点の粉塵濃度(平均粉塵濃度)とした。またA点の測定地点であるP1、P3、B点の測定地点であるP4、P6、C点の測定地点であるP7、P9は、それぞれ、トンネル地面から1mの高さで、それぞれの内壁側面Wsから1m離れた点である。またA点の測定地点であるP2、B点の測定地点であるP5、C点の測定地点であるP8は、トンネル地面から1mの高さで中央の点である。
【0033】
粉塵濃度の測定は、デジタル粉塵計LD−3K(質量濃度変換係数(K値)=0.002(mg/m3/cpm))を用いた。また粉塵濃度(mg/m3)は、K値×相対濃度(cpm)で表される。
【0034】
実験は以下の方法で行った。第1に、ゼオライト粉体(ゼオライト#600 中心粒径1.92μm)を粉塵とする粉塵発生装置Dで切羽に粉塵を発生させる。第2に、図7における測定地点P1〜P3の測定値がすべて8mg/m3を超えた時点で粉塵発生装置Dを停止させる。第3に、送風機41、集塵機8を所定の風量で起動させることで、送気管4からの送気、第1の排気管5からの集塵・排気を所定の風量で行う。第4に、測定地点P1〜P3の測定値がすべて3mg/m3以下になるまで、各測定地点の粉塵濃度を測定する。
【0035】
まず負圧をせずに、トンネルの断面の閉塞状態に応じて粉塵濃度に差があるかを測定するため、開口部7を設けた状態、トンネルが閉塞されていない状態(全開状態)で測定した(実験1)。図8(a)に条件、図8(b)に測定結果、図9(a)乃至(c)に、A点乃至C点の測定値の変化のグラフを示す。
【0036】
つぎに、負圧とした場合に、トンネルの断面の閉塞状態に応じて粉塵濃度に差があるかを測定するため、開口部7を設けた状態、トンネルが閉塞されていない状態(全開状態)で測定した(実験2)。図10(a)に条件、図10(b)に測定結果、図11(a)乃至(c)に、A点乃至C点の測定値の変化のグラフを示す。
【0037】
実験1では負圧をかけていない(送気量と排気量はともに1000m3/min)。この場合、開口部7を設けた状態と全開状態とでは、粉塵濃度に大きな差が見られず、とくにB点においては開口部7を設けた状態と全開状態とでは粉塵濃度に大きな差がない。
【0038】
一方、実験2では送気量が750m3/min、排気量が1000m3/minであり、切羽と隔壁との間が負圧となっている。この場合、開口部7を設けた状態と全開状態とでは、実験1よりも粉塵濃度は低くなり、さらに、B点およびC点では粉塵濃度に差が見られる。とくに、C点では粉塵濃度に著しい差がある。
【0039】
このように、切羽と隔壁との間を負圧にしている場合、隔壁はトンネル外周部分のみに設置するだけで、粉塵やガスなどを含んだ汚染空気を切羽側にとどめる効果が非常に高いことが判った。つまり、この形態で切羽付近の換気を行うことで、集塵作業中であっても開口部7を形成できるため、車両が切羽と坑口との間を通行可能な状態を保持することが出来る。その結果、切羽での作業と集塵作業とを並行することも出来る。
【0040】
これは次のような理由によるものと考察する。図12は、切羽封じ込め装置1付近の空気の流れを示す図である。切羽から隔壁の空間が負圧となることで、切羽封じ込め装置1による隔壁から坑口までの空間の空気は、切羽から隔壁までの空間に流入しやすくなる。一方、トンネルの内壁側面Wsに沿って切羽から坑口側に流出しようとする汚染空気は、隔壁となる切羽封じ込め装置1の右側バルーン32、左側バルーン33で抑止され、トンネルの内壁側面Wsと右側バルーン32、左側バルーン33に沿って、切羽側に向かう流入空気により、流れの向きが切羽の方向に変えられる。その結果、右側バルーン32、左側バルーン33付近に到達した汚染空気は、右側バルーン32、左側バルーン33付近で、再度、切羽側に流れることとなる。これは、アーチバルーン31がある天井部であっても同様である。
【0041】
このように、切羽からの粉塵やガスなどを含んだ汚染空気は、トンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wuに沿って流れるが、天井部および側面部は各バルーン3によって閉塞されており、また負圧のため、切羽封じ込め装置1から坑口側に漏れにくくなる。その結果、開口部7を設けたとしても、汚染空気が切羽封じ込め装置1から坑口側に漏れにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のように構成することで、トンネルの断面全体を閉塞せずとも、トンネルの天井部および側面部を隔壁で閉塞しただけで、切羽からの粉塵やガスなどを含んだ汚染空気の拡散を大きく防止することが出来る。また、トンネルの天井部および側面部のみを隔壁するので、トンネルの中心付近は開放されているため、トンネル工事に不可欠な測量作業の支障とはならない。さらに、車両や人の通行の妨げになることもないので、トンネル工事作業を続行しながら集塵作業を行うことが可能となり、全体の作業時間の短縮にも繋がる。
【符号の説明】
【0043】
1:切羽封じ込め装置
2:バルーン台車
3:バルーン
4:送気管
5:第1の排気管
6:第2の排気管
7:開口部
8:集塵機
21:右支柱部
22:左支柱部
23:水平部
24:送風機
31:アーチバルーン
32:右側バルーン
33:左側バルーン
41:送風機
Ws:トンネルの内壁側面
Wu:トンネルの天井壁面
H:送風口
D:粉塵発生装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管が設置されたトンネル工事における汚染空気の拡散を防止する切羽封じ込め方法であって、
トンネルの天井壁面および内壁側面から所定の範囲に隔壁を形成し、
前記隔壁よりも切羽側に前記排気管の一端を設け、
前記排気管で前記隔壁と切羽との間の空間における汚染空気を集塵することで、坑口側から切羽側へ空気を流れさせて前記汚染空気の拡散を防止する、
ことを特徴とする切羽封じ込め方法。
【請求項2】
前記トンネル工事において、前記隔壁よりも切羽側に一端が設けられた送気管がさらに設置されており、
前記送気管からの送気量よりも前記排気管の排気量が多い状態として坑口側から切羽側へ空気を流れさせることで前記切羽から隔壁までの空間を負圧とし、
前記排気管が前記隔壁と切羽との間の空間における汚染空気を集塵する、
ことを特徴とする請求項1に記載の切羽封じ込め方法。
【請求項3】
前記隔壁は、
機密性袋体で構成されるバルーンによって形成する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切羽封じ込め方法。
【請求項1】
排気管が設置されたトンネル工事における汚染空気の拡散を防止する切羽封じ込め方法であって、
トンネルの天井壁面および内壁側面から所定の範囲に隔壁を形成し、
前記隔壁よりも切羽側に前記排気管の一端を設け、
前記排気管で前記隔壁と切羽との間の空間における汚染空気を集塵することで、坑口側から切羽側へ空気を流れさせて前記汚染空気の拡散を防止する、
ことを特徴とする切羽封じ込め方法。
【請求項2】
前記トンネル工事において、前記隔壁よりも切羽側に一端が設けられた送気管がさらに設置されており、
前記送気管からの送気量よりも前記排気管の排気量が多い状態として坑口側から切羽側へ空気を流れさせることで前記切羽から隔壁までの空間を負圧とし、
前記排気管が前記隔壁と切羽との間の空間における汚染空気を集塵する、
ことを特徴とする請求項1に記載の切羽封じ込め方法。
【請求項3】
前記隔壁は、
機密性袋体で構成されるバルーンによって形成する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切羽封じ込め方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−202093(P2012−202093A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67048(P2011−67048)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(594036135)株式会社東宏 (6)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(594036135)株式会社東宏 (6)
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