説明

刈払い機及び刈払い機用の羽根部材

【課題】草刈りをする際に、切り屑が舞い上がることを好適に防止できる刈払い機及び刈払い機用の羽根部材を提供すること。
【解決手段】草刈り用のワイヤ22を、そのワイヤ22の先端部が外部へ延出された状態に収納保持する回転基体20を介して動力で回転させて草刈りを行う刈払い機であって、切り屑が飛散することを抑制するように空気流を発生させる羽根30が、回転基体20の上側に、その回転基体20と共に回転するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈り用のワイヤを、該ワイヤの先端部が外部へ延出された状態に収納保持する回転基体を介して動力で回転させて草刈りを行う刈払い機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、刈払い機の使用方法には、上記のワイヤを用いるワイヤ刃方式と、金属製のディスクを用いるディスク刃方式がある。
ワイヤ刃を装着した刈払い機は、一般的にワイヤがナイロン等のプラスチック製であり、安全性が高い。また、刈払い性能も良好であるため、広く普及してきている。
図6は、一般的な刈払い機の全体形状の側面図である。この刈払い機は、作業者の肩から吊り下げられて操作される。長尺の柄10の先端(下端)にワイヤ22の先端部が外部へ延出された状態に収納保持する回転基体20が、高速(例えば、8,000rpm)で回転できるように装着されている。12は動力源の小型エンジンであり、14は作業者が把持するグリップ部である。また、16は切り屑の飛散を防止するガードである。以上の構成は周知であり、詳細な説明を省略する。
一方、ディスク刃を装着した刈払い機を用いる場合は、金属製のディスクを回転させて、そのディスクの周縁に多数設けられた切刃で草を刈る。このディスク刃方式の場合は、安全性に課題はあるが、切り屑の舞い上がりが少ない利点がある。
【0003】
ワイヤ刃方式の場合、切り屑の舞い上がりが多いのは、草を切り取る際に擦るような力が働き易く、切り屑を巻き上げ易いためと考えられる。
このため、ワイヤ刃で刈払い機を用いる場合、作業者は、舞い上がった草の切り屑を受けても良いように、体全体を覆うような前掛けや、顔全体を覆うマスクが必要となる。草刈りの機会の多い夏季に、このような重装備をすることは、作業者にとって大変な負担となっている。
【0004】
これに対して、飛散する切り屑を受け止めるガードの形状が提案されている(特許文献1参照)。この場合、ガードが相対的に大きくなり、先端の回転部が見えにくくなるなど、作業者による操作が難しくなる。また、回転部の全周について切り屑の舞い上がりを防止するには、ガードがさらに大きくなり、さらに操作性が低下するものと考えられる。
【特許文献1】特開2004−65193号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
刈払い機及び刈払い機用の羽根部材に関して解決しようとする問題点は、特にワイヤ刃方式の刈払い機を用いて草刈りをする際に、切り屑が舞い上がることを好適に防止する効率的な手段がない点にある。
そこで本発明の目的は、草刈りをする際に、切り屑が舞い上がることを好適に抑制できる刈払い機及び刈払い機用の羽根部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る刈払い機の一形態によれば、草刈り用のワイヤを、該ワイヤの先端部が外部へ延出された状態に収納保持する回転基体を介して動力で回転させて草刈りを行う刈払い機であって、切り屑が飛散することを抑制するように空気流を発生させる羽根が、前記回転基体の上側に、該回転基体と共に回転するように設けられたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る刈払い機の一形態によれば、前記羽根は、複数枚が設けられ、回転に伴って空気流を発生させるように回転中心に近い側から外方へ延設された空気案内面を備えることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る刈払い機の一形態によれば、前記空気案内面は、回転に伴って空気流を下方側へ発生させる傾斜角度に設けられていることを特徴とすることができる。
【0008】
また、本発明に係る刈払い機の一形態によれば、前記空気案内面は、実質的に弧状に形成され、該弧状の空気案内面が前記回転基体の回転軸と実質的に平行になるように前記回転基体の上側に設けられていることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る刈払い機の一形態によれば、前記弧状の空気案内面は、空気を外側から内側へ案内するように、外周に対して実質的に鈍角に交差するように設けられていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明に係る刈払い機の一形態によれば、前記複数の羽根の外縁上部同士間を接続するように設けられたリング状部を備えることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る刈払い機の一形態によれば、前記羽根が、前記回転基体と一体に設けられていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る刈払い機用の羽根部材の一形態によれば、前記刈払い機の前記羽根を構成する部分であって、該刈払い機に前記回転基体とは別体で着脱可能に設けられたことを特徴とする。
また、本発明に係る刈払い機用の羽根部材の一形態によれば、前記羽根が、前記回転基体の上に位置される円板状の基板の上に形成されたことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の刈払い機及び刈払い機用の羽根部材によれば、羽根によって発生する空気流によって、草刈りの際の切り屑が飛散することを好適に抑制できるという特別有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の刈払い機及び刈払い機用の羽根部材に係る最良の形態の一例を添付図面(図1〜4)と共に詳細に説明する。図1は本発明に係る刈払い機の先端部(下端部)を示す側面図であり、図2はその斜視図である。図3は本発明に係る刈払い機用の羽根部材の基本的な作用原理を説明する側面図である。また、図4は本発明に係る刈払い機用の羽根部材の形態を模式的に説明する断面図である。
この刈払い機は、草刈り用のワイヤ22を、そのワイヤ22の先端部が外部へ延出された状態に収納保持する回転基体20を介して動力で回転させて草刈りを行うものである。なお、回転基体20は、ワイヤ22を収納する厚み(容積)のある概略円盤状に設けられている。
この種類の刈払い機の構造は周知であり、動力源の小型エンジンや回転動力の伝達部18等の構造については説明を省略する。
【0014】
30は羽根であり、図2及び図3に明らかなように、刈り取られた草などの切り屑が舞い上がる(飛散する)ことを防止するように空気流を発生させるフィンとなっている。この羽根30は、回転基体20の上側に、その回転基体20と共に回転するように設けられている。
また、この羽根30は、複数枚が設けられ、回転に伴って空気流を発生させるように回転中心に近い側から外方へ延設された空気案内面32を備える。そして、回転に伴って空気抵抗を受けて空気流を下方側へ発生させる傾斜角度に設けられている。軸流ファン(扇風機型のファン)のフィンの機能と同様に、図3に示すように、羽根30が矢印Aの方向へ回転(移動)すると、図面上において下方へ向かう空気流(矢印B)が発生する。
羽根30の傾斜角度は、空気の抵抗を受ける羽根の空気案内面32が、上側の水平面(仮想面)を基準にすると鈍角αとなっており、下側の水平面34に対しては鋭角βとなっている。
【0015】
また、本形態では、4枚の羽根30が円周4等分の位置に設けられている。
しかし、羽根30の枚数やその形状は、特に限定されるものではなく、装置のサイズや回転数等の仕様との関係で、空気流がより大きく或いはエネルギ効率が高くなるものを設計することが好ましいのは勿論である。また、切り屑が舞い上がることを効率よく防止する空気流の方向性についても、羽根30の枚数やその形状について適宜設計すればよい。
【0016】
なお、羽根の形態としては、本例に限定されるものでなく、シロッコファンの羽根部材のような回転軸から放射状に延びる形態のものでも一定の効果がある。これによれば、遠心力によって、回転中心から放射状に外方へ向かう空気流を発生することができる。その空気流がバリヤーとなって切り屑が舞い上がることを防止できる。
【0017】
この羽根30を構成する部分の取り付け形態としては、回転基体20と一体に設けられていてもよいし、刈払い機に回転基体20とは別体で羽根部材50という部品として着脱可能に設けられてもよい。
回転基体20と一体に設ければ、全体としての製造コストを低減できる。また、回転基体20と別体の羽根部材50とすれば、既存の回転基体20を用いている刈払い機にも適用でき、簡便である。
【0018】
次に図4に基づいて、羽根部材50の具体的な構造について説明する。
本形態の羽根30は、回転基体20の上に位置される円盤状の基板35の上に形成されている。この基板35の中心部には、回転動力の伝達部18に装着可能に取付用の貫通孔33が設けられている。
【0019】
また、36は筒状壁部であり、その内側に回転動力の伝達部18が入った状態に位置し、その外側に羽根30が形成されている。この筒状壁部36と基板35とは、空気流のガイドとなって矢印Bのように、外側方向へ空気流のベクトルを発生させている。つまり、筒状壁部36の外周面が垂直案内面37となり、基板35の上面が水平案内面34となっている。
これらの案内面34、37と、羽根の案内面32とによって空気が案内されて、下方で且つ外方へ向かう空気流が発生し、切り屑が舞い上がることを適切に防止できる。
なお、基板35の外径は、回転基体20の外径よりも大きく設けられている。また、羽根30も回転基体20の外径よりも外側へはみ出すように大きく設けられている。これにより、空気流を好適に案内できる。
【0020】
次に、本発明の刈払い機に係る他の形態例を添付図面(図5)と共に詳細に説明する。図5は本発明に係る刈払い機の先端部に装着される部分の羽根の形態例を示す斜視図である。なお、前記形態例の構成と同等の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
この形態例においても、羽根30aは、複数枚(6枚)が設けられ、回転に伴って空気流を発生させるように回転中心に近い側から外方へ延設された空気案内面32aを備えている。
空気案内面32aは、実質的に弧状に形成され、その弧状の空気案内面32aが回転基体20の回転軸と実質的に平行な位置関係になるように回転基体20の上側に起立した状態に設けられている。
なお、羽根30aの数や形状等は、前記形態例と同様にこれに限定されないのは勿論であり、仕様によって最適な形態を設計すればよい。
【0021】
また、弧状の空気案内面32aは、実線の矢印方向Aの回転に伴って空気を外側から内側へ案内するように、外周に対して実質的に鈍角Cに交差するように設けられている。
このように羽根30aが形成されているため、一点鎖線の矢印で示すように空気流が発生し、その空気流によって切り屑が飛散することを好適に抑制できる。すなわち、この場合は、遠心力によって飛散しようとする切り屑の動きと、外側から内側へ流れる空気の動きが相殺して、切り屑の飛散が抑制されるものと考えられる。さらに、周囲の各方向から流入した空気の流れ同士が回転中心部39で衝突し、それぞれの流れの勢いが相殺されると考えられ、切り屑の飛散が好適に抑制される。
【0022】
また、図5の形態例では、複数の羽根30aの外縁上部同士間を接続するように設けられたリング状部40を備える。
このリング状部40によれば、羽根30aの角部を実質的に露出することがない形状とすることができ、安全性を向上させることができる。
【0023】
また、羽根部材の形態は、以上に説明した形状等に限定されるものではない。例えば、アルミニウム等の金属板材を折り曲げて羽根30を形成してもよい。
また、羽根部材は、アルミダイカストによるような金属成形品であってもよいし、樹脂成形型による樹脂成形品であってもよい。すなわち、高速な回転速度による草刈作業に耐え得る材質や形態であればよい。
【0024】
以上、本発明につき好適な実施の形態を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。例えば、金属製のディスク刃の上側に本発明の羽根を設けても同様の効果があり、切り屑の巻上げを防止できる。つまり、円盤状等の回転体を回転させて草刈りを行う刈払い機であれば、他の形態の装置についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る刈払い機の一形態の先端部を示す側面図である。
【図2】図1の部分の斜視図である。
【図3】本発明に係る刈払い機用の羽根部材の作用原理を説明する側面図である。
【図4】本発明に係る刈払い機用の羽根部材の一形態を説明する断面図である。
【図5】本発明に係る刈払い機の他の形態例を説明する斜視図である。
【図6】従来の刈払い機の全体形状を示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 長尺の柄
20 回転基体
22 ワイヤ
30 羽根
32 空気案内面
35 基板
40 リング状部
50 羽根部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
草刈り用のワイヤを、該ワイヤの先端部が外部へ延出された状態に収納保持する回転基体を介して動力で回転させて草刈りを行う刈払い機であって、
切り屑が飛散することを抑制するように空気流を発生させる羽根が、前記回転基体の上側に、該回転基体と共に回転するように設けられたことを特徴とする刈払い機。
【請求項2】
前記羽根は、複数枚が設けられ、回転に伴って空気流を発生させるように回転中心に近い側から外方へ延設された空気案内面を備えることを特徴とする請求項1記載の刈払い機。
【請求項3】
前記空気案内面は、回転に伴って空気流を下方側へ発生させる傾斜角度に設けられていることを特徴とする請求項2記載の刈払い機。
【請求項4】
前記空気案内面は、実質的に弧状に形成され、該弧状の空気案内面が前記回転基体の回転軸と実質的に平行になるように前記回転基体の上側に設けられていることを特徴とする請求項2記載の刈払い機。
【請求項5】
前記弧状の空気案内面は、空気を外側から内側へ案内するように、外周に対して実質的に鈍角に交差するように設けられていることを特徴とする請求項4記載の刈払い機。
【請求項6】
前記複数の羽根の外縁上部同士間を接続するように設けられたリング状部を備えることを特徴とする請求項2、3、4又は5記載の刈払い機。
【請求項7】
前記羽根が、前記回転基体と一体に設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の刈払い機。
【請求項8】
前記請求項1、2、3、4、5又は6記載の刈払い機の前記羽根を構成する部分であって、該刈払い機に前記回転基体とは別体で着脱可能に設けられたことを特徴とする刈払い機用の羽根部材。
【請求項9】
前記羽根が、前記回転基体の上に位置される円板状の基板の上に形成されたことを特徴とする請求項8記載の刈払い機用の羽根部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−60948(P2007−60948A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249231(P2005−249231)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(505327343)
【Fターム(参考)】