説明

制御装置および方法

【課題】瞬間総エネルギーが一定値を超えないように、かつ温度のオーバーシュートの発生を抑制できる確率が高くなるようにする。
【解決手段】制御装置は、各制御ループLiの昇温電力量PWiを予測する昇温電力量予測部3と、昇温電力量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定する昇温実行順序決定部4と、最初の昇温開始のとき、あるいは昇温対象の制御ループの昇温が進むことにより操作量が下降して電力余裕が生じたと判断されるときに、昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択する昇温対象選択部5と、各制御ループLiのヒータに供給する電力の制限操作を行なう電力制限操作部6と、制御ループLi毎に設けられた制御部7−iとから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置および制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題に起因する法改正などに伴い、工場や生産ラインのエネルギー使用量管理が強く求められている。工場内の加熱装置や空調機器は特にエネルギー使用量の大きな設備装置であるため、エネルギー使用量の上限を、本来備える最大量よりも低く抑えるように管理されることが多い。例えば電力を使用する設備装置では、電力デマンド管理システムからの指示により、特定の瞬間電力使用量以内に制限する運用が行なわれている。
【0003】
特に複数の電気ヒータを備える加熱装置では、立ち上げ時(複数の電気ヒータが設置されている領域の一斉昇温時)に同時供給される瞬間総電力を抑制するために、特許文献1〜特許文献4に開示されているような手法が提案されている。この特許文献1〜特許文献4に開示された制御装置が対象とする加熱装置の1例を図6に示す。酸化拡散炉100内の石英管104の内部には、シリコンウェハ105が搬入される。温度センサ102−1〜102−3は、それぞれヒータ103−1〜103−3によって加熱される制御ゾーンZ1〜Z3の温度PVを測定する。調節計101−1〜101−3は、それぞれ温度センサ102−1〜102−3によって測定された温度PVが温度設定値SPと一致するように操作量MVを算出してヒータ103−1〜103−3に出力する。こうして、酸化拡散炉100内の石英管104内に導入される酸素とシリコンウェハ105とを加熱することにより、シリコンウェハ105の表面に酸化膜を形成する。この図6に示した加熱装置においては、各調節計101−1〜101−3がそれぞれ対応する制御ゾーンZ1〜Z3の温度PVを制御する制御ループが3個形成されていることになる。
【0004】
次に、特許文献1〜特許文献4に開示された技術について説明する。特許文献1に開示されたリフロー装置では、立ち上げ時の消費電流を低減するために、ヒータの近傍が熱的に飽和してから次のヒータを立ち上げるようにして、立ち上げ時間帯をずらすようにしていた。
特許文献2に開示された半導体ウエハの処理装置では、装置立ち上げ時に一時に大電力(瞬間電力)が消費されないように、各ヒータに対して時間的にずらしながら電力を供給するようにしていた。
【0005】
特許文献3に開示された基板処理装置では、電力供給部から同時に供給される最大電力(瞬間電力)を小さくするために、所定の立ち上げ順序に従って、各熱処理部を1台ずつ順次立ち上げていくようにしていた。
特許文献4に開示された加熱装置では、装置立ち上げ時の過度の消費電流による電力障害を防止するために、まずコンベアより下方に位置するヒータに対し必要とする電力を供給し、かつコンベアより上方に位置するヒータへ供給される電力を制限して、合計消費電力(瞬間電力)を一定値以下に制御し、炉体内の温度の上昇に伴って温度を切換パラメータとして、コンベアより下方に位置するヒータへの供給電力を減少させるように制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2885047号公報
【特許文献2】特開平11−126743号公報
【特許文献3】特開平11−204412号公報
【特許文献4】特許第4426155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜特許文献4に開示された技術は、いずれも複数のヒータに時間差を設けて電力を供給して昇温を行なう方式であるため、昇温させる順番次第では、制御ループ間の温度干渉により、先行して温度上昇していた制御ループの温度PVに大きなオーバーシュートが発生する。このようなオーバーシュートが発生すると、制御の整定状態が得られるまでの時間が長くなり、装置稼働効率を損ねる。オーバーシュートの発生を抑制できる順序を考慮して昇温実施の時間をずらさないと、装置稼動効率を損ねる確率が高くなるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、制御ループ間の温度干渉のある複数の制御系に関し、ステップ応答制御(設定値SPのステップ変更が行なわれ、設定値SPへの追従制御として制御機能が利用されている状態)において、瞬間総エネルギー(例えば瞬間総電力)が指定された一定値(例えば割当瞬間総電力)を超えないように、かつ温度PVのオーバーシュートの発生を抑制できる確率が高くなるように、ステップ応答制御が行なわれる制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の制御装置は、各制御ループLi(i=1〜n)の制御ゾーンを昇温するときに必要とされるヒータのエネルギー使用量である昇温エネルギー量PWiを制御ループLi毎に予測する昇温エネルギー量予測手段と、各制御ループLiの昇温エネルギー量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定する昇温実行順序決定手段と、最初の昇温開始のとき、あるいは昇温対象の制御ループの昇温が進むことによりこの制御ループの操作量が下降してエネルギー余裕が生じたと判断されるときに、前記昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択する昇温対象選択手段と、各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの総和が所定の割当瞬間総エネルギーPT以内になり、かつ昇温対象の制御ループのヒータに優先的にエネルギーが供給されるように、各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの制限操作を行なうエネルギー制限操作手段と、制御ループLi毎に設けられ、温度設定値SPiと温度PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記エネルギー制限操作手段の設定に従って制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiのヒータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記エネルギー制限操作手段は、各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの制限操作を、各制御ループLiの前記制御手段の操作量上限値OHiを変更することにより行なうことを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記昇温対象選択手段は、昇温対象の制御ループの温度が温度設定値に到達したときに、昇温対象の制御ループの昇温が進むことにより操作量が下降してエネルギー余裕が生じたと判断することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の制御装置は、各制御ループLi(i=1〜n)の制御ゾーンを昇温するときに必要とされるヒータの電力使用量である昇温電力量PWiを制御ループLi毎に予測する昇温電力量予測手段と、各制御ループLiの昇温電力量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定する昇温実行順序決定手段と、最初の昇温開始のとき、あるいは昇温対象の制御ループの昇温が進むことによりこの制御ループの操作量が下降して電力余裕が生じたと判断されるときに、前記昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択する昇温対象選択手段と、各制御ループLiのヒータに供給する電力の総和が所定の割当瞬間総電力PT以内になり、かつ昇温対象の制御ループのヒータに優先的に電力が供給されるように、各制御ループLiのヒータに供給する電力の制限操作を行なう電力制限操作手段と、制御ループLi毎に設けられ、温度設定値SPiと温度PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記電力制限操作手段の設定に従って制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiのヒータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記電力制限操作手段は、各制御ループLiのヒータに供給する電力の制限操作を、各制御ループLiの前記制御手段の操作量上限値OHiを変更することにより行なうことを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記昇温対象選択手段は、昇温対象の制御ループの温度が温度設定値に到達したときに、昇温対象の制御ループの昇温が進むことにより操作量が下降して電力余裕が生じたと判断することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の制御方法は、各制御ループLi(i=1〜n)の制御ゾーンを昇温するときに必要とされるヒータのエネルギー使用量である昇温エネルギー量PWiを制御ループLi毎に予測する昇温エネルギー量予測ステップと、各制御ループLiの昇温エネルギー量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定する昇温実行順序決定ステップと、最初の昇温開始のとき、あるいは昇温対象の制御ループの昇温が進むことによりこの制御ループの操作量が下降してエネルギー余裕が生じたと判断されるときに、前記昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択する昇温対象選択ステップと、各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの総和が所定の割当瞬間総エネルギーPT以内になり、かつ昇温対象の制御ループのヒータに優先的にエネルギーが供給されるように、各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの制限操作を行なうエネルギー制限操作ステップと、温度設定値SPiと温度PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記エネルギー制限操作ステップの設定に従って制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiのヒータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の制御方法は、各制御ループLi(i=1〜n)の制御ゾーンを昇温するときに必要とされるヒータの電力使用量である昇温電力量PWiを制御ループLi毎に予測する昇温電力量予測ステップと、各制御ループLiの昇温電力量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定する昇温実行順序決定ステップと、最初の昇温開始のとき、あるいは昇温対象の制御ループの昇温が進むことによりこの制御ループの操作量が下降して電力余裕が生じたと判断されるときに、前記昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択する昇温対象選択ステップと、各制御ループLiのヒータに供給する電力の総和が所定の割当瞬間総電力PT以内になり、かつ昇温対象の制御ループのヒータに優先的に電力が供給されるように、各制御ループLiのヒータに供給する電力の制限操作を行なう電力制限操作ステップと、温度設定値SPiと温度PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記電力制限操作ステップの設定に従って制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiのヒータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、昇温エネルギー量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定し、その昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択しながら、各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの制限操作を行なうことで、各制御ループLiのヒータに供給する瞬間総エネルギーが所定の割当瞬間総エネルギーPTを超えないようにし、かつ各制御ループLiの温度PViのオーバーシュートの発生を抑制できる確率を高めることができる。
【0016】
また、本発明では、昇温電力量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定し、その昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択しながら、各制御ループLiのヒータに供給する瞬間総電力が所定の割当瞬間総電力PTを超えないようにし、かつ各制御ループLiの温度PViのオーバーシュートの発生を抑制できる確率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の動作例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る制御装置の動作例を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】複数の電気ヒータを備えた加熱装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明の原理]
本発明では、一定の短い時間を対象として瞬間的に消費される「電力」と、昇温を完了させるために累積的に必要になる「電力量」を扱う。
また、本発明では、特許第4468868号公報に開示された電力使用量予測方法を応用することを前提とする。制御ループ間に温度干渉が存在する複数の制御系において、各制御系(各制御ループ)をほぼ同じ低温度にある状態からほぼ同じ高温度の状態へと昇温する場合に、オーバーシュートが発生しにくくなるメカニズムとして、下記の(A)、(B)の2点について着眼できる。
【0019】
(A)各制御ループがほぼ同じ容量のヒータを用いている場合、各制御ループの昇温能力もほぼ同じであり、昇温能力は昇温前後の平衡状態における操作量MVの高さで決まる。昇温電力量予測値が大きい制御ループほど降温能力もあることになるので、熱干渉によるオーバーシュートに対応しやすい。
【0020】
(B)複数の制御ループ間でヒータの容量が大きく異なる場合、ヒータ容量が小さいことにより昇温電力量予測値が小さくなる制御ループほど隣接ループへの熱干渉の影響力も少ないことになるので、昇温済みの隣接ループへの悪影響になりにくい。
【0021】
上記のように、各制御ループの昇温電力量を予測し、昇温電力量予測値の大きい制御ループを優先して昇温を行なうことで、温度のオーバーシュートの発生を抑制できる確率が高くなる。具体的には、瞬間総電力が指定された一定値(例えば割当瞬間総電力)を超えないように操作量MVあるいは操作量上限値が制限されるように構成し、昇温電力量予測値の大きい制御ループを優先して操作量MVの制限あるいは操作量上限値の制限を緩和する。このようにすることにより、結果的に不要な待機時間やオーバーシュートが少なくなるように、順次昇温を実施しやすくなる。
【0022】
温調計などの汎用調節計であれば、複数のヒータの容量のバランスなどを予め想定できない状態で技術が実装されて、装置メーカなどに流通することになる。したがって、各制御ループがほぼ同じ容量のヒータを用いるケースと、各制御ループでヒータの容量が大きく異なるケースとで、共通に扱える方法が提供されることは実用範囲の拡大に繋がる。
なお、以上の原理は昇温制御に限らず、電力消費する冷却装置を用いた降温制御についても同様に成り立つ。
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態の制御装置は、割当瞬間総電力PTを入力する割当瞬間総電力入力部1と、昇温開始を指示する昇温開始指示部2と、各制御ループLi(i=1〜n、nは2以上の整数)の制御ゾーンを昇温するときに必要とされるヒータの電力使用量である昇温電力量PWiを制御ループLi毎に予測する昇温電力量予測部3と、各制御ループLiの昇温電力量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定する昇温実行順序決定部4と、最初の昇温開始のとき、あるいは昇温対象の制御ループの昇温が進むことによりこの制御ループの操作量が下降して電力余裕が生じたと判断されるときに、昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択する昇温対象選択部5と、各制御ループLiのヒータに供給する電力の制限操作を行なう電力制限操作部6と、制御ループLi(i=1〜n、nは2以上の整数)毎に設けられた制御部7−iとから構成される。
【0024】
制御部7−iは、設定値入力部8−iと、制御量入力部9−iと、PID制御演算部10−iと、操作量上限処理部11−iと、操作量出力部12−iとから構成される。なお、本実施の形態では、制御装置を図6に示した加熱装置に適用するものとし、図6の符号を用いて説明する。この場合、図6に示した調節計101−iが制御部7−iとなる。
【0025】
図2は制御装置の動作を説明するフローチャート、図3(A)〜図3(F)は制御装置の動作例を示す図である。本実施の形態では、昇温能力が同じ3ループの場合について説明する。図3(A)、図3(C)、図3(E)はそれぞれ制御ループL1,L2,L3の制御量PV1,PV2,PV3の変化を示す図、図3(B)、図3(D)、図3(F)はそれぞれ制御ループL1,L2,L3の操作量MV1,MV2,MV3の変化を示す図である。
【0026】
ここで、効果の概略を説明すると、特許文献1〜特許文献4に開示された従来技術の場合、偶然に昇温電力量PWが小さい順に各制御ループの昇温を行なうと、昇温順番が2番目の制御ループからの熱干渉により、昇温順番が1番目の制御ループで制御量のオーバーシュートが発生し、かつこのオーバーシュート状態が解消困難になる。過度なオーバーシュートが発生している場合に、そのオーバーシュート状態の解消を待ってから昇温順番が3番目の制御ループの昇温を開始するように操作するならば、昇温順番が1番目の制御ループのオーバーシュート状態が解消されるのを待つことになり、昇温順番が3番目の制御ループは昇温開始まで長い時間待機することになる。
【0027】
一方、本実施の形態のように昇温電力量PWが大きい順(すなわち操作量MViが高い順)に各制御ループの昇温を行なうと、昇温順番が2番目の制御ループからの熱干渉により発生する、昇温順番が1番目の制御ループでのオーバーシュート状態を比較的容易に解消することが可能である。また、昇温順番が3番目の制御ループからの熱干渉により発生する、昇温順番が1番目、2番目の制御ループでのオーバーシュート状態を比較的容易に解消することが可能である。したがって、本実施の形態では、昇温開始までの待機時間や制御量のオーバーシュートを削減することが可能である。
【0028】
以下、制御装置の動作について具体的に説明する。本実施の形態では、前提条件として制御ループがL1〜L3の3つあり、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3の瞬間消費電力がそれぞれ操作量MV1〜MV3に線形的に比例するものと仮定し、さらに各条件を以下のように仮定する。
【0029】
まず、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3の加熱する能力を表すヒータ能力係数HP1〜HP3を、HP1=400W、HP2=400W、HP=400Wとする。ここでは、ヒータ能力係数HP1〜HP3としてヒータ容量を用いている。
次に、各制御ループL1〜L3の制御ゾーンZ1〜Z3を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数TH1〜TH3を、TH1=10sec./℃、TH2=10sec./℃、TH3=10sec./℃とする。
【0030】
また、各制御ループL1〜L3の昇温開始後の温度設定値SP1〜SP3を、SP1=200℃、SP2=200℃、SP3=200℃とし、昇温開始前の制御量PV1〜PV3(温度)を、PV1=100℃、PV2=100℃、PV3=100℃とする。
また、各制御ループL1〜L3の操作量上限値OH1〜OH3の初期値を、OH1=100%、OH2=100%、OH3=100%とし、昇温開始前の操作量MV1〜MV3を、MV1=30%、MV2=10%、MV3=40%とする。
【0031】
さらに、最大瞬間総電力PMを、PM=1200W(=HP1+HP2+HP3)とし、割当瞬間総電力入力部1に入力される割当瞬間総電力PTを、PT=720W(最大瞬間総電力PMの60%)とする。
【0032】
上記のように、制御ループL1〜L3でほとんどの条件が同じでありながら、昇温開始前操作量が異なる理由は、加熱対象の制御ゾーンZ1〜Z3の配置の違いなどにより放熱量に違いがあるためである。放熱量が大きい制御ゾーンでは、一定の温度に維持するために必要な瞬間電力(あるいは操作量)が高くなる。同時に、放熱特性が高いということでもあるので、放熱量が大きいということは降温能力もあるということになる。
【0033】
各制御ループLi(i=1〜3)の温度設定値SPiは、制御装置のオペレータによって設定され、設定値入力部8−iを介してPID制御演算部10−iに入力される(図2ステップS100)。また、温度設定値SPiは、設定値入力部8−iを介して昇温電力量予測部3と昇温対象選択部5とに入力される。
【0034】
各制御ループLiの制御量PVi(温度)は、制御ループLi毎に設けられた温度センサ(図6の例では温度センサ102−i)によって測定され、制御量入力部9−iを介してPID制御演算部10−iに入力される(ステップS101)。また、制御量PViは、制御量入力部9−iを介して昇温電力量予測部3と昇温対象選択部5とに入力される。
【0035】
昇温電力量予測部3は、昇温開始指示部2が例えばオペレータからの指示に応じて昇温開始指示信号を入力すると(ステップS102においてYES)、各制御ループL1〜L3の昇温電力量PW1〜PW3を下記のように算出する(ステップS103)。
PW1=(SP1−PV1)HP1TH1{OH1/(OH1−MV1)}
=(200−100)400×10{100/(100−30)}=571429
・・・(1)
PW2=(SP2−PV2)HP2TH2{OH2/(OH2−MV2)}
=(200−100)400×10{100/(100−10)}=444444
・・・(2)
PW3=(SP3−PV3)HP3TH3{OH3/(OH3−MV3)}
=(200−100)400×10{100/(100−40)}=666667
・・・(3)
【0036】
式(1)〜式(3)を一般化すると次式となる。
PWi=(SPi−PVi)HPiTHi{OHi/(OHi−MVi)}
・・・(4)
【0037】
式(1)〜式(4)による昇温電力量PW1〜PW3の算出原理は特許第4468868号公報に開示されているので、詳細な説明は省略する。なお、昇温開始指示部2は、オペレータからの指示ではなく、各設定値入力部8−iから取得した温度設定値SPiが同時に同方向(ここでは昇温方向)に変更されたとき、昇温開始指示信号を生成するようにしてもよい。
【0038】
昇温実行順序決定部4は、各制御ループL1〜L3の昇温電力量PW1〜PW3が大きい方から小さい方への順序を各制御ループL1〜L3の昇温実行順序として決定する(ステップS104)。式(1)〜式(3)によると、昇温電力量PW1〜PW3の予測結果はPW3>PW1>PW2の順になるので、各制御ループL1〜L3の昇温実行順序はL3→L1→L2の順となる。なお、ステップS103〜S104の処理は、昇温開始時に1回だけ行えばよい。
【0039】
次に、昇温対象選択部5は、制御ループ昇温開始条件が成立するか否かを判定し(ステップS105)、制御ループ昇温開始条件が成立する場合には、昇温実行順序決定部4が決定した昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループLiを選択する(ステップS106)。制御ループ昇温開始条件が成立するのは、最初の昇温開始のときか、あるいは昇温対象の制御ループLiの昇温が進むことにより、この制御ループLiの操作量MViが下降して電力余裕が生じたと判断されるときである。具体的には、昇温対象の制御ループLiの制御量PViが温度設定値SPiに到達したときに、制御ループLiの操作量MViが下降して電力余裕が生じたと判断する。ここでは、最初の昇温を開始しようとするときなので、昇温対象選択部5は、制御ループ昇温開始条件が成立したと判断し、昇温実行順序に従って1番目の昇温対象の制御ループL3を選択する(ステップS106)。
【0040】
そして、電力制限操作部6は、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3に供給する電力の総和が割当瞬間総電力PT以内になり、かつ昇温対象の制御ループL3のヒータ103−3に優先的に電力が供給されるように、各制御ループL1〜L3に供給する電力の制限操作を行なう(ステップS107)。具体的には、電力制限操作部6は、昇温対象選択部5が選択した1番目の昇温対象の制御ループL3を構成する制御部7−3の操作量上限値OH3を、最大値100%に設定する。また、電力制限操作部6は、昇温対象外の制御ループL1を構成する制御部7−1の操作量上限値OH1を、昇温開始前操作量MV1=30%に設定し、同じく昇温対象外の制御ループL2を構成する制御部7−2の操作量上限値OH2を、昇温開始前操作量MV2=10%に設定する。
【0041】
このとき、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3の瞬間消費電力PSは、下記のように推定され、割当瞬間総電力PT=720W以内になる。なお、本実施の形態の仮定では瞬間消費電力PSの推測値と実績値とは一致する。
PS=(HP1MV1/100)+(HP2MV2/100)
+(HP3MV3/100)
=(400×30/100)+(400×10/100)
+(400×100/100)
=120+40+400=560W ・・・(5)
【0042】
割当瞬間総電力PT=720Wに対して瞬間消費電力PSは560Wになり、160Wの余裕が生じる。電力制限操作部6は、この余裕分を、制御ループL3に次いで昇温電力量が大きいと予測された制御ループL1の操作量上限値OH1の増加に回してもよい。本実施の形態では、電力の余裕分が生じても余裕分が生じたままで、まずは制御ループL3の昇温を完了させる動作としておく。
【0043】
なお、瞬間消費電力PSが割当瞬間総電力PT=720Wを超える推定になる場合、電力制限操作部6は、昇温対象の制御ループL3を構成する制御部7−3の操作量上限値OH3を適宜下げればよい。操作量上限値OH3を下げるための方法としては、操作量上限値OH3を最大値100%から5%ずつ減らしながら、瞬間消費電力PSが割当瞬間総電力PT=720Wを超えない設定を繰り返し探索してもよいし、下記の数式により操作量上限値OH3を直接的に算出してもよい。式(6)を用いる場合には、不等号の右辺が操作量上限値OH3となる。
MV3≦100{PS−(HP1MV1/100)−(HP2MV2/100)}
/HP3
=100{720−(400×30/100)−(400×10/100)}
/400=140% ・・・(6)
【0044】
ただし、式(6)を使用できるのは、算出結果が100%より小さい場合で、式(6)の例のように算出結果が140%の場合には、この値を操作量上限値OH3として使用することはできない。
【0045】
次に、制御部7−iのPID制御演算部10−iは、設定値入力部8−iから入力された温度設定値SPiと制御量入力部9−iから入力された制御量PViに基づいて、周知のPID制御演算により操作量MViを算出する(ステップS108)。
【0046】
操作量上限処理部11−iは、以下の式のような操作量MViの上限処理を行なう(ステップS109)。
IF MVi>OHi THEN MVi=OHi ・・・(7)
すなわち、操作量上限処理部11−iは、操作量MViが操作量出力上限値OHiより大きい場合、操作量MVi=OHiとする上限処理を行なう。
【0047】
操作量出力部12−iは、操作量上限処理部11−iによって上限処理された操作量MViを制御対象(実際の出力先は図6の例ではヒータ103−i)に出力する(ステップS110)。制御部7−iは制御ループLiに対応して設けられているので、ステップS108〜S110の処理は制御部7−i毎に実施されることになる。
制御装置は、以上のようなステップS100〜S110の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(ステップS111においてYES)、一定時間毎に行なう。
【0048】
こうして、図3(A)、図3(C)、図3(E)に示すように温度設定値SP1〜SP3が同時に変更されると、図3(E)、図3(F)に示すように制御ループL3の操作量上限値OH3が最大値100%に設定されるので、制御ループL3において昇温が開始され、制御量PV3が上昇を開始する。一方、図3(B)、図3(D)に示すように制御ループL1の操作量上限値OH1は30%に設定され、制御ループL2の操作量上限値OH2は10%に設定されるので、制御ループL3において昇温が開始された時点では制御ループL1,L2の制御量PV1,PV2は変化せず、100℃のまま維持される。
【0049】
制御ループL3の制御量PV3が温度設定値SP3=200℃に概ね到達すると、PID制御演算部10−3で算出される操作量MV3は、昇温開始前の操作量40%よりも多少高い値(例えば45%)に収束する。この操作量MV3は、後続の制御ループL1,L2からの熱干渉により制御ループL3の制御量PV3がオーバーシュート状態になる場合に、45%ほどの下げ幅がオーバーシュート解消能力として確保されているという意味になる。すなわち、制御ループL1〜L3のうち、最もオーバーシュート解消能力が確保される制御ループL3が、1番目の昇温対象の制御ループとして適切に選択されている確率が高いことを意味している。
【0050】
制御ループL1からの熱干渉により、制御ループL3の制御量PV3に図3(E)の30で示すようなオーバーシュート状態が発生している。このとき、図3(F)の31で示すとおり操作量MV3を下げることによってオーバーシュートが解消されていることが分かる。同様に、制御ループL1,L2からの熱干渉により、制御ループL3の制御量PV3に図3(E)の32で示すようなオーバーシュート状態が発生している。このとき、図3(F)の33で示すとおり操作量MV3を下げることによってオーバーシュートが解消されていることが分かる。
【0051】
次に、昇温対象選択部5は、制御ループL3の制御量PV3が温度設定値SP3=200℃に到達すると、昇温対象の制御ループL3の操作量MV3が下降して電力余裕が生じたと判断し、制御ループ昇温開始条件が成立したと判定する(ステップS105においてYES)。そして、昇温対象選択部5は、昇温実行順序に従って2番目の昇温対象の制御ループL1を選択する(ステップS106)。
【0052】
電力制限操作部6は、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3に供給する電力の総和が割当瞬間総電力PT以内になり、かつ昇温対象の制御ループL1のヒータ103−1に優先的に電力が供給されるように、各制御ループL1〜L3に供給する電力の制限操作を行なう(ステップS107)。具体的には、電力制限操作部6は、昇温対象選択部5が選択した2番目の昇温対象の制御ループL1を構成する制御部7−1の操作量上限値OH1を、最大値100%に設定する。また、電力制限操作部6は、昇温対象外の制御ループL2を構成する制御部7−2の操作量上限値OH2を、昇温開始前操作量MV2=10%に設定したままとする。また、電力制限操作部6は、制御ループL3については、昇温が完了し電力を制限する必要性がなくなっているので、操作量上限値OH3を最大値100%に設定したままとする。
【0053】
このとき、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3の瞬間消費電力PSは、下記のように推定され、割当瞬間総電力PT=720W以内になる。
PS=(HP1MV1/100)+(HP2MV2/100)
+(HP3MV3/100)
=(400×100/100)+(400×10/100)
+(400×45/100)
=400+40+180=620W ・・・(8)
【0054】
割当瞬間総電力PT=720Wに対して瞬間消費電力PSは620Wになり、100Wの余裕が生じる。電力制限操作部6は、この余裕分を、残る制御ループL2の操作量上限値OH2の増加に回してもよい。本実施の形態では、電力の余裕分が生じても余裕分が生じたままで、まずは制御ループL1の昇温を完了させる動作としておく。
【0055】
なお、瞬間消費電力PSが割当瞬間総電力PT=720Wを超える推定になる場合、電力制限操作部6は、昇温対象の制御ループL1を構成する制御部7−1の操作量上限値OH1を適宜下げればよい。操作量上限値OH1を下げるための方法としては、操作量上限値OH1を最大値100%から5%ずつ減らしながら、瞬間消費電力PSが割当瞬間総電力PT=720Wを超えない設定を繰り返し探索してもよいし、下記の数式により操作量上限値OH1を直接的に算出してもよい。式(9)を用いる場合には、不等号の右辺が操作量上限値OH1となる。
MV1≦100{PS−(HP2MV2/100)−(HP3MV3/100)}
/HP1
=100{720−(400×10/100)−(400×45/100)}
/400=125% ・・・(9)
【0056】
ただし、式(9)を使用できるのは、算出結果が100%より小さい場合で、式(9)の例のように算出結果が125%の場合には、この値を操作量上限値OH1として使用することはできない。
【0057】
ステップS108〜S110の処理は上記のとおりである。こうして、制御ループL3の制御量PV3が温度設定値SP3=200℃に到達すると、図3(A)、図3(B)に示すように制御ループL1の操作量上限値OH1が最大値100%に設定されるので、制御ループL1において昇温が開始され、制御量PV1が上昇を開始する。一方、図3(D)に示すように制御ループL2の操作量上限値OH2は10%に設定されたままとなるので、制御ループL1において昇温が開始された時点では制御ループL2の制御量PV2は変化せず、100℃のまま維持される。
【0058】
制御ループL1の制御量PV1が温度設定値SP1=200℃に概ね到達すると、PID制御演算部10−1で算出される操作量MV1は、昇温開始前の操作量30%よりも多少高い値(例えば40%)に収束する。この操作量MV1は、後続の制御ループL2からの熱干渉により制御ループL1がオーバーシュート状態になる場合に、40%ほどの下げ幅がオーバーシュート解消能力として確保されているという意味になる。すなわち、制御ループL1,L2のうち、オーバーシュート解消能力が確保される制御ループL1が、2番目の昇温対象の制御ループとして適切に選択されている確率が高いことを意味している。
【0059】
制御ループL2からの熱干渉により、制御ループL1の制御量PV1に図3(A)の34で示すようなオーバーシュート状態が発生している。このとき、図3(B)の35で示すとおり操作量MV1を下げることによってオーバーシュートが解消されていることが分かる。
【0060】
次に、昇温対象選択部5は、制御ループL1の制御量PV1が温度設定値SP1=200℃に到達すると、昇温対象の制御ループL1の操作量MV1が下降して電力余裕が生じたと判断し、制御ループ昇温開始条件が成立したと判定する(ステップS105においてYES)。そして、昇温対象選択部5は、昇温実行順序に従って3番目の昇温対象の制御ループL2を選択する(ステップS106)。
【0061】
電力制限操作部6は、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3に供給する電力の総和が割当瞬間総電力PT以内になり、かつ昇温対象の制御ループL2のヒータ103−2に優先的に電力が供給されるように、各制御ループL1〜L3に供給する電力の制限操作を行なう(ステップS107)。具体的には、電力制限操作部6は、昇温対象選択部5が選択した3番目の昇温対象の制御ループL2を構成する制御部7−2の操作量上限値OH2を、最大値100%に設定する。また、電力制限操作部6は、制御ループL1,L3については、昇温が完了し電力を制限する必要性がなくなっているので、操作量上限値OH1,OH3を最大値100%に設定したままとする。
【0062】
このとき、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3の瞬間消費電力PSは、下記のように推定され、割当瞬間総電力PT=720W以内になる。
PS=(HP1MV1/100)+(HP2MV2/100)
+(HP3MV3/100)
=(400×40/100)+(400×100/100)
+(400×45/100)
=160+400+180=740W ・・・(10)
【0063】
なお、瞬間消費電力PSが割当瞬間総電力PT=720Wを超える推定になる場合、電力制限操作部6は、昇温対象の制御ループL2を構成する制御部7−2の操作量上限値OH2を適宜下げればよい。操作量上限値OH2を下げるための方法としては、操作量上限値OH2を最大値100%から5%ずつ減らしながら、瞬間消費電力PSが割当瞬間総電力PT=720Wを超えない設定を繰り返し探索してもよいし、下記の数式により操作量上限値OH2を直接的に算出してもよい。式(11)を用いる場合には、不等号の右辺が操作量上限値OH2となる。
MV2≦100{PS−(HP1MV1/100)−(HP3MV3/100)}
/HP2
=100{720−(40040/100)−(40045/100)}
/400=95% ・・・(11)
【0064】
すなわち、操作量MV2は95%以内と算出される。電力制限操作部6は、操作量上限値OH2を95%に設定することで、割当瞬間総電力PT=720W以内での昇温を行なうことができる。
【0065】
ステップS108〜S110の処理は上記のとおりである。こうして、制御ループL1の制御量PV1が温度設定値SP1=200℃に到達すると、図3(C)、図3(D)に示すように制御ループL2の操作量上限値OH2が95%に設定されるので、制御ループL2において昇温が開始され、制御量PV2が上昇を開始する。また、電力制限操作部6は、制御量PV2が温度設定値SP2=200℃に到達した時点で、電力を制限する必要性がなくなるので、操作量上限値OH2を最大値100%に復帰させる。
【0066】
以上のように、本実施の形態では、昇温電力量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定し、その昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択しながら、供給する電力の制限操作を行なうことで、制御量PViのオーバーシュートの発生を抑制できる確率を高めることができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、昇温能力が大きく異なる3ループの場合について説明する。本実施の形態においても、制御装置の構成および処理の流れは第1の実施の形態と同様であるので、図1、図2の符号を用いて説明する。図4(A)〜図4(F)は本実施の形態の制御装置の動作例を示す図である。図4(A)、図4(C)、図4(E)はそれぞれ制御ループL1,L2,L3の制御量PV1,PV2,PV3の変化を示す図、図4(B)、図4(D)、図4(F)はそれぞれ制御ループL1,L2,L3の操作量MV1,MV2,MV3の変化を示す図である。
【0068】
ここで、効果の概略を説明すると、特許文献1〜特許文献4に開示された従来技術の場合、偶然に昇温電力量PWが小さい順に各制御ループの昇温を行なうと、昇温順番が1番目の制御ループからの熱干渉では、隣接する制御ループが温度上昇することは少ない。したがって、この場合は速やかに昇温順番が2番目の制御ループの昇温を開始できる。そして、昇温順番が3番目の制御ループは昇温電力量PWが大きいので、熱干渉により隣接する制御ループは一時的にでも温度上昇する。隣接する制御ループは既に昇温を完了していることになるので、この熱干渉による温度上昇は実質的なオーバーシュート状態に相当する。過度なオーバーシュートが発生している場合に、そのオーバーシュート状態の解消をもって目標通りの昇温の完了と扱うのが通常的なので、3ループの昇温完了までに長い時間を費やすということになる。
【0069】
一方、本実施の形態のように昇温電力量PWが大きい順(すなわち隣接ループへの熱干渉が大きい順)に各制御ループの昇温を行なうと、まず昇温順番が1番目の制御ループからの熱干渉により、隣接する制御ループは一時的にでも温度上昇する。隣接する制御ループは昇温前の低い温度であり、この熱干渉により目標温度を上回る温度上昇が発生する確率は極めて低いので、速やかに昇温順番が2番目の制御ループの昇温を開始できる。そして、昇温順番が3番目の制御ループは昇温電力量PWが小さいので、隣接する制御ループへの熱干渉も小さい。隣接する制御ループは既に昇温を完了していることになるが、この熱干渉による温度上昇は小さく、過度なオーバーシュート状態にはならない。すなわち、3ループの昇温完了までに長い時間を費やすことはない。
【0070】
以下、制御装置の動作について具体的に説明する。本実施の形態では、前提条件として制御ループがL1〜L3の3つあり、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3の瞬間消費電力がそれぞれ操作量MV1〜MV3に線形的に比例するものと仮定し、さらに各条件を以下のように仮定する。
【0071】
まず、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3の加熱する能力を表すヒータ能力係数HP1〜HP3を、HP1=200W、HP2=800W、HP3=200Wとする。
次に、各制御ループL1〜L3の制御ゾーンZ1〜Z3を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数TH1〜TH3を、TH1=10sec./℃、TH2=10sec./℃、TH3=10sec./℃とする。
【0072】
また、各制御ループL1〜L3の昇温開始後の温度設定値SP1〜SP3を、SP1=200℃、SP2=200℃、SP3=200℃とし、昇温開始前の制御量PV1〜PV3(温度)を、PV1=100℃、PV2=100℃、PV3=100℃とする。
また、各制御ループL1〜L3の操作量上限値OH1〜OH3の初期値を、OH1=100%、OH2=100%、OH3=100%とし、昇温開始前の操作量MV1〜MV3を、MV1=10%、MV2=10%、MV3=10%とする。
【0073】
さらに、最大瞬間総電力PMを、PM=1200W(=HP1+HP2+HP3)とし、割当瞬間総電力入力部1に入力される割当瞬間総電力PTを、PT=720W(最大瞬間総電力PMの60%)とする。
このように、本実施の形態では、制御ループL1〜L3でヒータ能力係数HP1〜HP3のみが大きく異なる。ヒータ能力係数HPが大きいほど、隣接ループに与える影響として、熱干渉による温度上昇効果が大きいことになる。
【0074】
図2のステップS100,S101の処理は第1の実施の形態と同じである。昇温電力量予測部3は、温度設定値SP1〜SP3が変更され、昇温開始指示部2が昇温開始指示信号を入力すると(図2ステップS102においてYES)、各制御ループL1〜L3の昇温電力量PW1〜PW3を下記のように算出する(ステップS103)。
PW1=(SP1−PV1)HP1TH1{OH1/(OH1−MV1)}
=(200−100)200×10{100/(100−10)}=222222
・・・(12)
PW2=(SP2−PV2)HP2TH2{OH2/(OH2−MV2)}
=(200−100)800×10{100/(100−10)}=888889
・・・(13)
PW3=(SP3−PV3)HP3TH3{OH3/(OH3−MV3)}
=(200−100)200×10{100/(100−10)}=222222
・・・(14)
【0075】
昇温実行順序決定部4は、各制御ループL1〜L3の昇温電力量PW1〜PW3が大きい方から小さい方への順序を各制御ループL1〜L3の昇温実行順序として決定する(ステップS104)。式(12)〜式(14)によると、昇温電力量PW1〜PW3の予測結果はPW2>PW1=PW3の順になるので、各制御ループL1〜L3の昇温実行順序はL2→L1→L3の順となる。なお、昇温電力量PW1とPW3が等しいので、制御ループL1とL3のどちらを先に昇温してもよいが、ここでは制御ループの数字順により、制御ループL1を制御ループL3よりも先行させることにする。
【0076】
次に、昇温対象選択部5は、制御ループ昇温開始条件が成立するか否かを判定する(ステップS105)。ここでは、最初の昇温を開始しようとするときなので、昇温対象選択部5は、制御ループ昇温開始条件が成立したと判断し、昇温実行順序に従って1番目の昇温対象の制御ループL2を選択する(ステップS106)。
【0077】
電力制限操作部6は、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3に供給する電力の総和が割当瞬間総電力PT以内になり、かつ昇温対象の制御ループL2のヒータ103−2に優先的に電力が供給されるように、各制御ループL1〜L3に供給する電力の制限操作を行なう(ステップS107)。具体的には、電力制限操作部6は、昇温対象選択部5が選択した1番目の昇温対象の制御ループL2を構成する制御部7−2の操作量上限値OH2を、最大値100%に設定する。また、電力制限操作部6は、昇温対象外の制御ループL1を構成する制御部7−1の操作量上限値OH1を、昇温開始前操作量MV1=10%に設定し、同じく昇温対象外の制御ループL3を構成する制御部7−3の操作量上限値OH3を、昇温開始前操作量MV3=10%に設定する。
【0078】
このとき、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3の瞬間消費電力PSは、下記のように推定され、割当瞬間総電力PT=720W以内にならない。
PS=(HP1MV1/100)+(HP2MV2/100)
+(HP3MV3/100)
=(200×10/100)+(800×100/100)
+(200×10/100)
=20+800+20=840W ・・・(15)
【0079】
瞬間消費電力PSが割当瞬間総電力PT=720Wを超える推定になる場合、電力制限操作部6は、昇温対象の制御ループL2を構成する制御部7−2の操作量上限値OH2を適宜下げればよい。操作量上限値OH2を下げるための方法としては、操作量上限値OH2を最大値100%から5%ずつ減らしながら、瞬間消費電力PSが割当瞬間総電力PT=720Wを超えない設定を繰り返し探索してもよいし、下記の数式により操作量上限値OH2を直接的に算出してもよい。式(16)を用いる場合には、不等号の右辺が操作量上限値OH2となる。
MV2≦100{PS−(HP1MV1/100)−(HP3MV3/100)}
/HP2
=100{720−(200×10/100)−(200×10/100)}
/800=85% ・・・(16)
【0080】
すなわち、操作量MV2は85%以内と算出される。電力制限操作部6は、操作量上限値OH2を85%に設定することで、割当瞬間総電力PT=720W以内での昇温を行なうことができる。
【0081】
図2のステップS108〜S110の処理は第1の実施の形態と同じである。こうして、図4(A)、図4(C)、図4(E)に示すように温度設定値SP1〜SP3が同時に変更されると、図4(C)、図4(D)に示すように制御ループL2の操作量上限値OH2が85%に設定されるので、制御ループL2において昇温が開始され、制御量PV2が上昇を開始する。一方、図4(B)、図4(F)に示すように制御ループL1,L3の操作量上限値OH1,OH3は10%に設定されるので、制御ループL2において昇温が開始された時点では制御ループL1,L3の制御量PV1,PV3は直ぐには変化しない。ただし、制御ループL2からの熱干渉があるため、制御量PV1,PV3は徐々に上昇していくことになる。
【0082】
制御ループL2の制御量PV2が温度設定値SP2=200℃に概ね到達すると、PID制御演算部10−2で算出される操作量MV2は、昇温開始前の操作量10%よりも多少高い値(例えば15%)に収束する。
制御ループL2の昇温の間に、上記のとおり制御ループL2からの熱干渉により、隣接する制御ループL1,L3の制御量PV1,PV3は一時的にでも上昇する。制御ループL1,L3は昇温前の低い温度であり、この熱干渉により温度設定値SP1,SP3を上回る温度上昇が発生する確率は極めて低く、例えば100℃から120℃への温度上昇程度に留まるので、速やかに次の制御ループL1の昇温を開始できる。
【0083】
昇温対象選択部5は、制御ループL2の制御量PV2が温度設定値SP2=200℃に到達すると、昇温対象の制御ループL2の操作量MV2が下降して電力余裕が生じたと判断し、制御ループ昇温開始条件が成立したと判定する(ステップS105においてYES)。そして、昇温対象選択部5は、昇温実行順序に従って2番目の昇温対象の制御ループL1を選択する(ステップS106)。
【0084】
電力制限操作部6は、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3に供給する電力の総和が割当瞬間総電力PT以内になり、かつ昇温対象の制御ループL1のヒータ103−1に優先的に電力が供給されるように、各制御ループL1〜L3に供給する電力の制限操作を行なう(ステップS107)。具体的には、電力制限操作部6は、昇温対象選択部5が選択した2番目の昇温対象の制御ループL1を構成する制御部7−1の操作量上限値OH1を、最大値100%に設定する。また、電力制限操作部6は、昇温対象外の制御ループL3を構成する制御部7−3の操作量上限値OH3を、昇温開始前操作量MV3=10%に設定したままとする。また、電力制限操作部6は、制御ループL2については、昇温が完了し電力を制限する必要性がなくなっているので、操作量上限値OH2を85%から最大値100%に復帰させる。
【0085】
このとき、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3の瞬間消費電力PSは、下記のように推定され、割当瞬間総電力PT=720W以内になる。
PS=(HP1MV1/100)+(HP2MV2/100)
+(HP3MV3/100)
=(200×100/100)+(800×15/100)
+(200×10/100)
=200+120+20=340W ・・・(17)
【0086】
割当瞬間総電力PT=720Wに対して瞬間消費電力PSは340Wになり、380Wの余裕が生じる。電力制限操作部6は、この余裕分を、残る制御ループL3の操作量上限値OH3の増加に回してもよい。本実施の形態では、電力の余裕分が生じても余裕分が生じたままで、まずは制御ループL1の昇温を完了させる動作としておく。
【0087】
なお、瞬間消費電力PSが割当瞬間総電力PT=720Wを超える推定になる場合、電力制限操作部6は、昇温対象の制御ループL1を構成する制御部7−1の操作量上限値OH1を適宜下げればよい。操作量上限値OH1を下げるための方法としては、操作量上限値OH1を最大値100%から5%ずつ減らしながら、瞬間消費電力PSが割当瞬間総電力PT=720Wを超えない設定を繰り返し探索してもよいし、下記の数式により操作量上限値OH1を直接的に算出してもよい。式(18)を用いる場合には、不等号の右辺が操作量上限値OH1となる。
【0088】
MV1≦100{PS−(HP2MV2/100)−(HP3MV3/100)}
/HP1
=100{720−(800×15/100)−(200×10/100)}
/200=290% ・・・(18)
【0089】
ただし、式(18)を使用できるのは、算出結果が100%より小さい場合で、式(18)の例のように算出結果が290%の場合には、この値を操作量上限値OH1として使用することはできない。
【0090】
ステップS108〜S110の処理は上記のとおりである。こうして、制御ループL2の制御量PV2が温度設定値SP2=200℃に到達すると、図4(A)、図4(B)に示すように制御ループL1の操作量上限値OH1が最大値100%に設定されるので、制御ループL1において昇温が開始され、制御量PV1が大きく上昇する。一方、図4(F)に示すように制御ループL3の操作量上限値OH3は10%に設定されたままとなるので、制御ループL1において昇温が開始された時点では制御ループL3の制御量PV3は大きく変化せず、制御ループL1,L2からの熱干渉により徐々に上昇する。
【0091】
制御ループL1の制御量PV1が温度設定値SP1=200℃に概ね到達すると、PID制御演算部10−1で算出される操作量MV1は、昇温開始前の操作量10%よりも多少高い値(例えば15%)に収束する。
制御ループL1の昇温の間に、制御ループL1からの熱干渉により、隣接する制御ループL2,L3の制御量PV2,PV3は一時的にでも上昇する。ただし、制御ループL1はヒータ能力係数の低い制御ループであり、この制御ループL1からの熱干渉による温度上昇は例えば制御ループL2の制御量PV2が200℃から205℃へ温度上昇し、制御ループL3の制御量PV3が120℃から125℃へ温度上昇するといったように比較的小さいもので済むので、速やかに次の制御ループL3の昇温を開始できる。
【0092】
昇温対象選択部5は、制御ループL1の制御量PV1が温度設定値SP1=200℃に到達すると、昇温対象の制御ループL1の操作量MV1が下降して電力余裕が生じたと判断し、制御ループ昇温開始条件が成立したと判定する(ステップS105においてYES)。そして、昇温対象選択部5は、昇温実行順序に従って3番目の昇温対象の制御ループL3を選択する(ステップS106)。
【0093】
電力制限操作部6は、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3に供給する電力の総和が割当瞬間総電力PT以内になり、かつ昇温対象の制御ループL3のヒータ103−3に優先的に電力が供給されるように、各制御ループL1〜L3に供給する電力の制限操作を行なう(ステップS107)。具体的には、電力制限操作部6は、昇温対象選択部5が選択した3番目の昇温対象の制御ループL3を構成する制御部7−3の操作量上限値OH3を、最大値100%に設定する。また、電力制限操作部6は、制御ループL1,L2については、昇温が完了し電力を制限する必要性がなくなっているので、操作量上限値OH1,OH2を最大値100%に設定したままとする。
【0094】
このとき、各制御ループL1〜L3のヒータ103−1〜103−3の瞬間消費電力PSは、下記のように推定され、割当瞬間総電力PT=720W以内になる。
PS=(HP1MV1/100)+(HP2MV2/100)
+(HP3MV3/100)
=(200×15/100)+(800×15/100)
+(200×100/100)
=30+120+200=350W ・・・(19)
【0095】
ステップS108〜S110の処理は上記のとおりである。こうして、制御ループL1の制御量PV1が温度設定値SP1=200℃に到達すると、図4(E)、図4(F)に示すように制御ループL3の操作量上限値OH3が最大値100%に設定されるので、制御ループL3において昇温が開始され、制御量PV3が大きく上昇する。
【0096】
制御ループL3の昇温の間に、制御ループL3からの熱干渉により、隣接する制御ループL1,L2の制御量PV1,PV2は一時的にでも上昇する。ただし、制御ループL3はヒータ能力係数の低い制御ループであり、この制御ループL3からの熱干渉による温度上昇は例えば制御ループL1,L2の制御量PV1,PV2が200℃から205℃へ温度上昇するといったように比較的小さいもので済む。
【0097】
以上のように、複数の制御ループLiの昇温能力が大きく異なる場合においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
[第3の実施の形態]
第1、第2の実施の形態では、昇温電力量PWiに基づいて昇温実行順序を決定しているが、これに限るものではなく、例えば燃料使用量などの昇温エネルギー量PWiに基づいて昇温実行順序を決定するようにしてもよい。すなわち、本発明は、第1、第2の実施の形態で用いる「電力」という物理量を、「エネルギー」に置き換えた形態を権利範囲に含む。
【0099】
第1、第2の実施の形態の制御装置で用いる「電力」という物理量を「エネルギー」に置き換えた制御装置の構成を図5に示す。
図5の制御装置は、割当瞬間総エネルギー入力部1aと、昇温開始指示部2aと、昇温エネルギー量予測部3aと、昇温実行順序決定部4aと、昇温対象選択部5aと、エネルギー制限操作部6aと、制御ループLi毎に設けられた制御部7−iとから構成される。この制御装置の構成は、第1、第2の実施の形態において「電力」を「エネルギー」に置き換えたものに相当するので、詳細な説明は省略する。
【0100】
第1〜第3の実施の形態の制御装置は、制御部7−iとそれ以外の装置(割当瞬間総電力入力部1、割当瞬間総エネルギー入力部1a、昇温開始指示部2,2a、昇温電力量予測部3、昇温エネルギー量予測部3a、昇温実行順序決定部4,4a、昇温対象選択部5,5a、電力制限操作部6、エネルギー制限操作部6a)に分かれるが、各々の装置は、CPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。各々の装置のCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、複数の制御ループを備えたマルチループ制御系に適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1…割当瞬間総電力入力部、1a…割当瞬間総エネルギー入力部、2,2a…昇温開始指示部、3…昇温電力量予測部、3a…昇温エネルギー量予測部、4,4a…昇温実行順序決定部、5,5a…昇温対象選択部、6…電力制限操作部、6a…エネルギー制限操作部、7−i…制御部、8−i…設定値入力部、9−i…制御量入力部、10−i…PID制御演算部、11−i…操作量上限処理部、12−i…操作量出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各制御ループLi(i=1〜n)の制御ゾーンを昇温するときに必要とされるヒータのエネルギー使用量である昇温エネルギー量PWiを制御ループLi毎に予測する昇温エネルギー量予測手段と、
各制御ループLiの昇温エネルギー量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定する昇温実行順序決定手段と、
最初の昇温開始のとき、あるいは昇温対象の制御ループの昇温が進むことによりこの制御ループの操作量が下降してエネルギー余裕が生じたと判断されるときに、前記昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択する昇温対象選択手段と、
各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの総和が所定の割当瞬間総エネルギーPT以内になり、かつ昇温対象の制御ループのヒータに優先的にエネルギーが供給されるように、各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの制限操作を行なうエネルギー制限操作手段と、
制御ループLi毎に設けられ、温度設定値SPiと温度PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記エネルギー制限操作手段の設定に従って制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiのヒータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置において、
前記エネルギー制限操作手段は、各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの制限操作を、各制御ループLiの前記制御手段の操作量上限値OHiを変更することにより行なうことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の制御装置において、
前記昇温対象選択手段は、昇温対象の制御ループの温度が温度設定値に到達したときに、昇温対象の制御ループの昇温が進むことにより操作量が下降してエネルギー余裕が生じたと判断することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
各制御ループLi(i=1〜n)の制御ゾーンを昇温するときに必要とされるヒータの電力使用量である昇温電力量PWiを制御ループLi毎に予測する昇温電力量予測手段と、
各制御ループLiの昇温電力量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定する昇温実行順序決定手段と、
最初の昇温開始のとき、あるいは昇温対象の制御ループの昇温が進むことによりこの制御ループの操作量が下降して電力余裕が生じたと判断されるときに、前記昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択する昇温対象選択手段と、
各制御ループLiのヒータに供給する電力の総和が所定の割当瞬間総電力PT以内になり、かつ昇温対象の制御ループのヒータに優先的に電力が供給されるように、各制御ループLiのヒータに供給する電力の制限操作を行なう電力制限操作手段と、
制御ループLi毎に設けられ、温度設定値SPiと温度PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記電力制限操作手段の設定に従って制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiのヒータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の制御装置において、
前記電力制限操作手段は、各制御ループLiのヒータに供給する電力の制限操作を、各制御ループLiの前記制御手段の操作量上限値OHiを変更することにより行なうことを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項5記載の制御装置において、
前記昇温対象選択手段は、昇温対象の制御ループの温度が温度設定値に到達したときに、昇温対象の制御ループの昇温が進むことにより操作量が下降して電力余裕が生じたと判断することを特徴とする制御装置。
【請求項7】
各制御ループLi(i=1〜n)の制御ゾーンを昇温するときに必要とされるヒータのエネルギー使用量である昇温エネルギー量PWiを制御ループLi毎に予測する昇温エネルギー量予測ステップと、
各制御ループLiの昇温エネルギー量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定する昇温実行順序決定ステップと、
最初の昇温開始のとき、あるいは昇温対象の制御ループの昇温が進むことによりこの制御ループの操作量が下降してエネルギー余裕が生じたと判断されるときに、前記昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択する昇温対象選択ステップと、
各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの総和が所定の割当瞬間総エネルギーPT以内になり、かつ昇温対象の制御ループのヒータに優先的にエネルギーが供給されるように、各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの制限操作を行なうエネルギー制限操作ステップと、
温度設定値SPiと温度PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記エネルギー制限操作ステップの設定に従って制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiのヒータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする制御方法。
【請求項8】
請求項7記載の制御方法において、
前記エネルギー制限操作ステップは、各制御ループLiのヒータに供給するエネルギーの制限操作を、制御ループLi毎の前記制御ステップの操作量上限値OHiを変更することにより行なうことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項8記載の制御方法において、
前記昇温対象選択ステップは、昇温対象の制御ループの温度が温度設定値に到達したときに、昇温対象の制御ループの昇温が進むことにより操作量が下降してエネルギー余裕が生じたと判断することを特徴とする制御方法。
【請求項10】
各制御ループLi(i=1〜n)の制御ゾーンを昇温するときに必要とされるヒータの電力使用量である昇温電力量PWiを制御ループLi毎に予測する昇温電力量予測ステップと、
各制御ループLiの昇温電力量PWiが大きい方から小さい方への順序を各制御ループLiの昇温実行順序として決定する昇温実行順序決定ステップと、
最初の昇温開始のとき、あるいは昇温対象の制御ループの昇温が進むことによりこの制御ループの操作量が下降して電力余裕が生じたと判断されるときに、前記昇温実行順序に従って昇温対象の制御ループを選択する昇温対象選択ステップと、
各制御ループLiのヒータに供給する電力の総和が所定の割当瞬間総電力PT以内になり、かつ昇温対象の制御ループのヒータに優先的に電力が供給されるように、各制御ループLiのヒータに供給する電力の制限操作を行なう電力制限操作ステップと、
温度設定値SPiと温度PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記電力制限操作ステップの設定に従って制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiのヒータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項10記載の制御方法において、
前記電力制限操作ステップは、各制御ループLiのヒータに供給する電力の制限操作を、制御ループLi毎の前記制御ステップの操作量上限値OHiを変更することにより行なうことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項11記載の制御方法において、
前記昇温対象選択ステップは、昇温対象の制御ループの温度が温度設定値に到達したときに、昇温対象の制御ループの昇温が進むことにより操作量が下降して電力余裕が生じたと判断することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−41317(P2013−41317A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175902(P2011−175902)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】