説明

制振建物、建物の制振方法、鉄筋コンクリート造の建物、鉄筋コンクリート造の建物の長周期化方法

【課題】上記の問題に鑑みなされたものであり、ラーメン架構を有する外部建物と内部建物との間を制振部材で連結してなる制振建物において、外部建物の柱や梁の数を減らすことなく固有周期を長周期化する。
【解決手段】制振建物10は、ラーメン架構からなる外部建物20及び内部建物30と、これら建物20、30の間を接続するように設けられた制振ダンパー41と、を備え、ラーメン構造からなる外部建物20における梁部材23と柱部材21との接合において、少なくとも一つは、当該梁部材23の材端部又はその近傍における曲げ剛性が、当該梁部材23の本体部分の曲げ剛性よりも小さくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の構造体の間を制振部材により接続してなる制振建物及び建物の制振方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高層建物では、地震力や風荷重による大きな水平力が入力されると、それに応じて大きな変位が生じるため、柱や梁の本数を増やす、柱や梁の断面積を大きくする、又は柱梁架構内に耐震壁を設けるなどの方法により、耐震性を向上している。しかしながら、これらの方法では、建物の開口面積が減ってしまったり、建物の居室空間が削られてしまったりして、平面計画の障害となるという問題があった。
【0003】
そこで、本願出願人らは、建物を構成するラーメン架構を有する外部建物内に、剛性が高く振動特性の異なる耐震壁やラーメン架構などの独立部材要素を独立して設け、この外部建物と独立部材要素との間を制振ダンパーにより接続した制振構造を提案している。このような制振構造によれば、外部建物と独立部材要素とが変形モードが異なることを利用して、制振ダンパーにより効率よく振動エネルギーを吸収することができ、これにより外部建物の剛性を高くしなくても耐震性を向上できるので、上記のような問題を解消できる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開2006―241783号公報
【特許文献2】特開2005―180089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成の建物では、外部建物と、独立部材要素との固有周期の差が大きいほど、制振性能を向上することができる。このため、外部建物の固有周期を長周期化するために、外部建物の柱や梁の寸法を小さくしたり、柱や梁の数を減らすことが考えられる。しかしながら、外部建物に作用する長期荷重を支持しなければならず、柱や梁の数を減らすことには限度がある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、ラーメン架構を有する外部建物と内部建物との間を制振部材で連結してなる制振建物において、外部建物に作用する長期荷重を支持した状態で固有周期をより長周期化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制振建物は、少なくとも一つはラーメン架構からなる複数の構造体と、これら複数の構造体の間を接続するように設けられた制振部材と、を備えた制振建物であって、 前記ラーメン架構からなる構造体における梁部材と柱部材との接合において、少なくとも一つは、当該梁部材の材端部又はその近傍における曲げ剛性が、当該梁部材の本体部分の曲げ剛性よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする。
ここでいう梁部材の柱部材との材端部の近傍とは、例えば、梁部材の材端部から梁せいの1.5倍の距離の位置までの範囲をいう。また、梁部材の本体部分とは、材端部の近傍を除く中央部のことをいう。
上記の制振建物において、前記複数の構造体は、これらの低層部において、構造的に一体に構築されていてもよい。
【0007】
また、本発明の建物の制振方法は、前記建物を、少なくとも一つはラーメン架構からなる複数の構造体と、これら複数の構造体の間を接続するように設けられた制振部材と、から構成し、前記複数の構造体の間を制振部材により接続し、前記ラーメン架構からなる構造体における梁部材と柱部材との接合において、少なくとも一つは、当該梁部材の材端部又はその近傍における曲げ剛性が、当該梁部材の本体部分の曲げ剛性よりも小さくなるように構成することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の鉄筋コンクリート造の建物は、梁部材と柱部材との接合において、少なくとも一つは、当該梁部材の材端部又はその近傍における曲げ剛性が、当該梁部材の本体部分の曲げ剛性よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の鉄筋コンクリート造の建物を長周期化する方法は、前記建物における梁部材と柱部材との接合において、少なくとも一つは、当該梁部材の材端部又はその近傍における曲げ剛性が、当該梁部材の本体部分の曲げ剛性よりも小さくなるように構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、梁部材の材端部又はその近傍における曲げ剛性を小さくすることにより、長期荷重を支持可能なまま、外部建物の固有周期を長周期化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の制振建物の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の制振建物10の構成を示す鉛直方向断面図である。また、図2は、制振建物10の制振ダンパー41が取り付けられた階の水平方向断面図である。図1に示すように、本実施形態の制振建物10は、内部に上下方向に伸びるボイド空間40を有する外部建物20と、外部建物20のボイド空間40内に構築された内部建物30と、外部建物20と内部建物30とを接続するようにボイド空間40内の所定の高さに設けられた複数の制振ダンパー41と、を備える。
【0012】
外部建物20は、平面視矩形に形成され、内部に上下方向に延びるボイド空間40を有するラーメン構造からなる鉄筋コンクリート造の建物である。後述するように、外部建物20は、少なくとも一部の梁部材23の梁材端部における曲げ剛性が、梁部材23の中央付近の曲げ剛性よりも低くなっているため、低剛性となっている。
【0013】
内部建物30は、外部建物20のボイド空間40内に構築された鉄筋コンクリート造の建物であり、外周壁に耐震壁が用いられている。このように外周壁に耐震壁を用いることにより高い剛性とすることができる。
【0014】
また、制振ダンパー41は、地震動などの外力が作用した場合に、外部建物20と内部建物30の変形差が大きくなるような階層において、図2に示すように、内部建物30の四隅から水平に2方向に延びるように設けられ、外部建物20のボイド空間40に接続されている。これにより、外力が作用して内部建物30に対して外部建物20が、水平方向何れの方向に相対移動しても、制振ダンパー41により振動エネルギーを吸収することができる。このような制振ダンパー41としては、オイルダンパー、摩擦ダンパー、粘性ダンパー、粘弾性ダンパー、履歴型ダンパー、又はこれらを組み合わせたものを用いることができる。なお、本実施形態では、制振ダンパー41を平面的に配置するものとしたが、内部建物30と外部建物20の異なる高さの位置を結ぶように設置することもできる。
【0015】
制振建物10に外力が作用すると、外部建物20に比べて内部建物30の剛性が高いため、外部建物20及び内部建物30は、異なる振動モードで振動する。この際、上記のように、制振ダンパー41が外部建物20と内部建物30の変形差が大きくなるような位置を接続するように取り付けられているため、制振ダンパー41により振動エネルギーを吸収することができる。
【0016】
ここで、図3は、上記のような制振建物10における外部建物20の固有周期T1と内部建物30の固有周期T2とを複数通りに設定し、各場合の最大応答変形の低減効果を示すグラフである。なお、グラフの縦軸は、最大応答変形比を、外部建物20及び内部建物30の固有周期T1,T2をともに4[s]とした(すなわち、制振ダンパー41において振動エネルギーを吸収しない)場合に対する比率で示し、横軸は制振ダンパーの減衰係数を示す。
【0017】
同図に示すように、減衰係数によらず、固有周期の差を大きくするほど最大応答変形の低減効果は大きくなることがわかる。すなわち、内部建物30の固有周期を短くし、外部建物20の固有周期を長くするほど、制振建物10の制振効果が向上することとなる。
【0018】
そこで、本実施形態の制振建物10では、以下に説明する方法により、外部建物20の梁の柱との接合における梁部材23の材端部の曲げ剛性及び曲げ耐力を、梁本体の曲げ剛性及び曲げ耐力に比べて小さくすることにより外部建物20の固有周期を長くするものとした。
【0019】
図4は、外部建物20の柱梁の接合部を示す図であり、(A)は鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII−II´断面図である。同図に示すように、柱部材21の梁部材23が接続される部分には水平方向に延びるようにコンクリートコッター102が形成されている。また、梁部材23の端面にはこのコンクリートコッター102に対応する形状の水平方向に延びる凹部104が設けられている。梁部材23は、柱部材21に形成されたコンクリートコッター102に凹部104を嵌合させることにより接合されている。梁部材23に作用する鉛直方向荷重はコンクリートコッター102を介して柱部材21に伝達される。
【0020】
また、通常は、梁主筋が柱部材21内に定着されているが、本実施形態では、梁主筋27を柱部材21に定着せず、梁部材23の中央において柱部材21と梁部材23とに亘ってダボ鉄筋101が埋設されている。通常は、梁部材外周部に埋設された梁主筋が柱部材に定着されることにより、曲げ剛性及び曲げ耐力が向上しているが、本実施形態では、ダボ鉄筋101を梁部材23の中央に埋設する構成としたため、梁部材23の材端部における曲げ剛性が梁部材23の本体の曲げ剛性及び曲げ耐力に比べて低くなる。
【0021】
また、柱部材21のコンクリートコッター102の周囲にはゴムや発泡スチロールからなる緩衝材103が取り付けられている。これにより、梁部材23の端面の凹部104以外の部分と、柱部材21との間には緩衝材103が介在するため、柱梁接合部における梁部材23の曲げ変形に対する拘束を緩和することができる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態によれば、外部建物20の梁部材23の材端部における曲げ剛性及び曲げ耐力を低下させ、梁部材23と柱部材21との接合をピン接合に近づけることができるため、外部建物20の剛性を低下させて、固有周期を長周期化することができる。これにより、図3を参照して説明したように、制振建物10の制振性能を向上することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、柱部材21のコンクリートコッター102と梁部材23の凹部104とを嵌合させるとともに、柱部材21と梁部材23とに亘ってダボ鉄筋101を埋設することにより柱部材21と梁部材23とを接合しているが、何れか一方により柱部材21と梁部材23とを接合することとしてもよい。
【0024】
<第2実施形態>
以下、本発明の制振建物の第2実施形態を説明する。本実施形態の制振建物は、第1実施形態と、外部建物の柱梁接合部の構成が異なり、その他の部位は同様の構成であるため、柱梁接合部の構成について説明する。本実施形態では、梁部材の断面中央に、鉄筋コンクリート部材に比べて剛性の低いH型鋼を端部より突出するように埋設し、このH型鋼を柱部材に一体に接合することにより、梁材端部の曲げ剛性及び曲げ耐力を小さくしている。
【0025】
図5は、本実施形態の外部建物20の柱梁接合部の構成を示す鉛直断面図である。同図に示すように、本実施形態では、梁部材23の断面中央にH型鋼111を端面から突出するように埋設し、このH型鋼111の突出した部分を柱部材21内に埋設することにより柱部材21と梁部材23とを接合している。また、梁部材23の柱梁接合部における曲げ変形を拘束しないように、柱部材21と梁部材23との間には緩衝材112を介在させている。なお、緩衝材112としては、上記の実施形態と同様にゴムや発泡スチロールなどの弾性を有し、コンクリートの成分により腐食を受けないような材料を用いることができる。
【0026】
また、上記のように梁部材23より突出するH型鋼111の端部を柱部材21に埋設せず、図6に示すように、ガセットプレートにより柱部材21に取り付けてもよい。なお、図中、(A)は鉛直断面図であり、(B)は、水平断面図である。ガセットプレート122はH型鋼23の表裏面にボルト122により取り付けられており、このガセットプレート122が柱部材21に長ボルト125により固定されることにより、柱部材21と梁部材とが接合されている。また、H型鋼23の周囲には梁部材23の曲げ変形を拘束しないように、ゴムや発泡スチロールなどからなる緩衝材123が取り付けられている。
【0027】
本実施形態によっても、梁部材23に作用する長期荷重はH型鋼111を介して柱部材21に伝達される。また、H型鋼121は、鉄筋コンクリート造の梁部材23に比べて曲げ剛性が低く、さらに、柱梁接合部の上部及び下部に緩衝材112、123を介在させ、梁部材23の曲げ変形を拘束しないようにしたため、梁部材23の接合端部における曲げ剛性及び曲げ耐力が梁部材23の本体の曲げ剛性及び曲げ耐力に比べて低くなる。これにより、上記実施形態と同様に、外部建物20の固有周期が長周期化され、制振建物10の制振性能を向上することができる。
【0028】
<第3実施形態>
以下、本発明の制振建物の第3実施形態を説明する。本実施形態の制振建物も、第1実施形態と外部建物20の柱梁接合部の構成が異なるものの、その他の部位は同様の構成であるため、柱梁接合部の構成について説明する。本実施形態では、梁端部の梁せいを小さくすることにより梁端部の曲げ剛性及び曲げ耐力を小さくしている。
【0029】
図7は、本実施形態の外部建物の柱梁接合部の構成の例を示す図である。同図に示すように、梁部材23の接合端部付近には、端部に向かって梁せいが小さくなるような傾斜が設けられている。また、梁部材23には、梁端部より突出するように梁主筋131、132が埋設されており、これら梁主筋131、132の突出した部分は柱部材21内に埋設されている。なお、梁部材23の柱梁接合部における断面は、鉛直荷重を支持するのに必要となる最小限の断面となっている。
【0030】
また、必ずしも、柱部材21と梁部材23とに亘って梁主筋131、132を配置する必要はなく、例えば、図8に示すように柱部材21と梁部材23とに亘ってダボ筋142を埋設する構成とすることもできる。同図の構成では、梁部材23の端部に切り欠き部143を形成することで、梁材端部の剛性を更に小さくしている。
【0031】
本実施形態によっても、梁材端部の梁せいを小さくしたため、梁部材23の接合端部における曲げ剛性及び曲げ耐力が梁部材23の本体の曲げ剛性及び曲げ耐力に比べて低くなる。これにより、外部建物20の固有周期が長周期化され、制振建物10の制振性能を向上することができる。
【0032】
<第4実施形態>
以下、本発明の制振建物の第4実施形態を説明する。本実施形態も、第1実施形態と外部建物の柱梁接合部の構成が異なるものの、その他の部位は同様の構成であるため、柱梁接合部の構成を説明する。本実施形態では、柱部材に突出部を設け、この突出部の上部に梁部材を載置している。
【0033】
図9は、本実施形態の外部建物20の柱梁接合部の構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態では、柱部材21の側面に梁部材23を受けるための突出部151を設けるとともに、梁部材23の端部の下部に切り欠き部155を設け、梁部材23を、柱部材21の突出部151の上面と梁部材23の切り欠き部155の内面とが当接するように載置することにより、梁部材23を支持している。これにより、梁部材23に作用する長期荷重は、柱部材21に伝達される。また、梁部材23の上部と柱部材21との間には、スリット154が設けられており、柱部材21の突出部151と梁部材23の切り欠き部155の対抗する面の間には、梁部材23の曲げを拘束しないように緩衝材152が介在されている。また、梁部材23と柱部材21とを跨ぐようにダボ筋153が埋設されており、梁部材23が水平方向に移動してしまうのを防止している。
【0034】
本実施形態によれば、梁部材23に作用する長期荷重は突出部を介して柱部材21に伝達されるため、この荷重を支持することができる。また、梁部材23と柱部材21の接合部の上部にはスリット154を設けるとともに、下部には緩衝材152を介在する構成としたため、梁材端部の曲げ剛性が低下し、梁部材23本体の曲げ剛性に比べて低くなる。これにより、外部建物20の固有周期が長周期化され、制振建物10の制振性能を向上することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、梁部材23の端部に切り欠き部155を設け、この切り欠き部155において柱部材21の突出部152と係合させることとしたが、これに限らず、切り欠き部155を設けずに、梁部材23の下面を突出部152により支持する構成としてもよい。
【0036】
また、上記各実施形態では、梁部材の材端部の曲げ剛性を低下させているが、これに限らず、梁部材の材端部の近傍の曲げ剛性を低下させてもよい。図10は、第4実施形態の梁材端部に設けていたのと同様の構成を梁材端部の近傍に設けた場合を示す図である。同図に示す構成によれば、梁材端部の近傍の曲げ剛性及び曲げ耐力が低下することとなり、柱梁接合部の梁材端部の曲げ剛性及び曲げ耐力を低下させた場合と同様に、外部建物の剛性が低下し、固有周期を長周期化することができる。
また、上記各実施形態において説明した柱部材と梁部材の接合構造は、鉄筋コンクリート造の柱梁構造の建物の固有周期を長周期化する場合にも用いることができる。
【0037】
なお、上記の各実施形態では、外部建物30が鉄筋コンクリート造の場合について説明したが、これに限らず、外部建物30が鉄骨造の場合であっても、本発明を適用することができる。外部建物30が鉄骨造の場合には、梁部材23を構成するH型鋼と柱部材とをボルト接合する際に、梁部材23のウエブだけをボルト接合すればよい。このような構成によっても、梁部材23の中央部の曲げ剛性よりも、梁材端部の曲げ剛性が小さくなる。
【0038】
また、外部建物20が鉄骨造の場合には、上記の方法に限らず、第3実施形態と同様に、鉄骨梁の端部の梁せいを小さくし、柱とボルト接合又は溶接接合する構成とすることもできるし、第4実施形態と同様に、柱部材に突部を設け、この突部に梁部材を載置する構成とすることもできる。
【0039】
また、上記各実施形態では、内部建物30及び外部建物20を夫々独立して構築するものとしたが、これに限らず、これらの建物20、30の低層階において、構造的に接続した建物に本発明を適用することも可能である。図11は、内部建物30及び外部建物20を低層階において、構造的に接続した制振建物110を示す図である。同図に示すように、本実施形態の制振建物110では、外部建物120の低層階の梁123と、内部建物130の低層階の梁133とが一体に構築されており、低層階の梁143は内部建物130及び外部建物120を貫通するように設けられている。これにより、外部建物120及び内部建物130の低層階が構造的に接続された一体の構造として機能する。かかる構成の制振建物110の外部建物120の柱梁接合部に対しても、上記の各実施形態で説明した構成を適用することにより同様の効果が得られる。
【0040】
また、上記各実施形態では、外部建物20に形成されたボイド空間40内に内部建物30を構築し、これら建物を制振ダンパー41により接続してなる制振建物10について説明したが、これに限らず、2つ以上の並設された構造物の間を制振ダンパーにより連結した制振建物にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態の制振建物の構成を示す鉛直方向断面図である。
【図2】制振建物の制振ダンパーが取り付けられた階の水平方向断面図である。
【図3】制振建物における外部建物の固有周期T1と内部建物の固有周期T2とを複数通りに設定し、各場合の最大応答変形の低減効果を示すグラフである。
【図4】第1実施形態の外部建物の柱梁接合部を示す図であり、(A)は鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII−II´断面図である。
【図5】第2施形態の外部建物の柱梁接合部の構成を示す鉛直断面図である。
【図6】第2実施形態の外部建物の柱梁接合部の構成の別の例を示す図であり、(A)は鉛直断面図であり、(B)は、水平断面図である。
【図7】第3実施形態の外部建物の柱梁接合部の構成を示す鉛直断面図である。
【図8】柱部材と梁部材と跨ぐようにダボ筋を埋設した場合の第3実施形態の外部建物の柱梁接合部の構成を示す鉛直断面図である。
【図9】第4施形態の外部建物の柱梁接合部の構成を示す鉛直断面図である。
【図10】第4実施形態の梁材端部に設けていたのと同様の構成を梁材端部の近傍に設けた場合を示す図である。
【図11】内部建物及び外部建物を低層階において、構造的に接続した制振建物を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10、110 制振建物 20、120 外部建物
21 柱部材 22 住戸ユニット
23 梁部材 24 廊下
25 屋根 26 エレベータシャフト
27 梁主筋 30、130 内部建物
31 立体駐車機 40 ボイド空間
41 制振ダンパー 101,142、153 ダボ筋
102 コンクリートコッター 103、112、123,152 緩衝材
104 凹部 111、121 H型鋼
122 ガセットプレート 124 ボルト
125 長ボルト 131、132、141 梁主筋
133 傾斜 143、155 切り欠き部
151 突部 154 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つはラーメン架構からなる複数の構造体と、これら複数の構造体の間を接続するように設けられた制振部材と、を備えた制振建物であって、
前記ラーメン架構からなる構造体における梁部材と柱部材との接合において、少なくとも一つは、当該梁部材の材端部又はその近傍における曲げ剛性が、当該梁部材の本体部分の曲げ剛性よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする制振建物。
【請求項2】
前記複数の構造体は、これらの低層部において、構造的に一体に構築されていることを特徴とする請求項1記載の制振建物。
【請求項3】
建物の制振方法であって、
前記建物を、少なくとも一つはラーメン架構からなる複数の構造体と、これら複数の構造体の間を接続するように設けられた制振部材と、から構成し、
前記複数の構造体の間を制振部材により接続し、
前記ラーメン架構からなる構造体における梁部材と柱部材との接合において、少なくとも一つは、当該梁部材の材端部又はその近傍における曲げ剛性が、当該梁部材の本体部分の曲げ剛性よりも小さくなるように構成することを特徴とする建物の制振方法。
【請求項4】
梁部材と柱部材との接合において、少なくとも一つは、当該梁部材の材端部又はその近傍における曲げ剛性が、当該梁部材の本体部分の曲げ剛性よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする鉄筋コンクリート造の建物。
【請求項5】
鉄筋コンクリート造の建物を長周期化する方法であって、
前記建物における梁部材と柱部材との接合において、少なくとも一つは、当該梁部材の材端部又はその近傍における曲げ剛性が、当該梁部材の本体部分の曲げ剛性よりも小さくなるように構成することを特徴とする鉄筋コンクリート造の建物の長周期化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図4】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−52251(P2009−52251A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218851(P2007−218851)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】