説明

制振装置

【課題】 効果的な振動抑制を実現する制振装置を提供することである。
【解決手段】 シリンダ2と、シリンダ2内の各圧力室6a,6bを連結するメイン流路10と、メイン流路10をバイパスするバイパス流路11と、前記メイン流路10の途中に設けられた一対の第1逆止弁8a,8bと、前記バイパス流路11の途中に設けられた一対の第2逆止弁9a,9bと、第1逆止弁8a,8b間のメイン流路10と第2逆止弁9a,9b間のバイパス流路11とを接続する一対の分岐流路20,21と、一方の分岐流路20の途中に設けた減衰力調整可能な除荷制御弁12と、他方の分岐流路21の途中に設けたオリフィス24および開閉弁14と、前記第1逆止弁8a,8b間のメイン流路10に接続されるアキュムレータ19とを備え、振動外力の大きさに基づいて開閉弁14および除荷制御弁12を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に作用する地震や風等による振動を減衰する制振装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種制振装置としては、例えば、柱と梁で構成された構造体の柱と梁との間、上梁と下梁との間等にブレス等を介してダンパを介装したものが知られており、地震、風、交通振動等により構造体を複数積層した構造物に作用する振動をダンパで減衰して上記振動を抑制するものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような制振装置のダンパにあっては、構造物に作用する振動を抑制する効果を高めるには、発生減衰力を高くする方が良いが、発生減衰力を高めると、柱やブレスは弾性変形するために、バネとして作用し、構造物の層間変位が大きくなり、その結果ダンパ自体のストローク量が減少し、充分振動を抑制することができないという問題がある。
【0004】
そこで、近年では、シリンダが伸縮作動している状態では高減衰力を発生させ、シリンダが最大振幅に達したときに、シリンダが発生している荷重を除去、すなわち、減衰係数を急激に減少させて、柱やブレス等に蓄積された弾性エネルギをシリンダ自体で消散するようにし、振動方向が逆となったときの柱やブレス等の復元力による振動の増幅作用をキャンセルして、シリンダに振動エネルギを効率的に吸収させる制振装置の提案がある(たとえば、特許文献2,3参照)。
【0005】
そして、上記提案を実現する制振装置は、例えば、図5に示すように、両ピストンロッド型のシリンダ52と、前記シリンダ52内のピストン53の両側に形成された圧力室56,56を連結するメイン流路60と、メイン流路60に並列に接続したバイパス流路61と、前記メイン流路60の途中に互いに反対方向を向いて設けられた一対の第1逆止弁58,58と、前記バイパス流路61の途中に互いに反対方向を向いて設けられた一対の第2逆止弁59,59と、第1逆止弁58,58間のメイン流路60と第2逆止弁59,59間のバイパス流路61との間に並列に接続させた一対の分岐流路70,71と、一方の分岐流路70の途中に設けた流量調整可能なソレノイド除荷制御弁62と、他方の分岐流路71の途中に設けたフェールセーフ弁64およびオリフィス74と、前記第1逆止弁58,58間のメイン流路60に接続したアキュムレータ69と、シリンダ52のピストン変位を検出するストロークセンサ(図示せず)と、上記除荷制御弁62を制御するコントローラ63とからなるもである(たとえば、非特許文献1参照)。
【0006】
この制振装置にあっては、シリンダ52のピストンピストンロッド54の一方が構造物の上梁に、他方がVブレス等の取付部材を介して構造物の下梁に結合され、地震、風等で上層と下層との間に水平方向の相対的な層間変位が生じた場合、減衰力が発生し構造物の振動を減衰する。
【0007】
また、フェールセーフ弁64はソレノイドS3が通電された状態では遮断ポジションにあり分岐流路71を閉じている。そして、フェールセーフ時の断電時には連通ポジションに切り替わり、オリフィス74を介して分岐流路71を油が流れて通常のパッシブダンパーと同じ働きをする。
【0008】
そして、除荷制御弁62は、断電時においてはノーマルクローズに設定され、制御時には、コントローラ63によりソレノイドS4が印加されて開弁状態とされる。具体的には、コントローラ63は、振動外力の大きさによりで弁開度を決定し、その弁開度を実現する制御電流をソレノイドS4に印加することにより行われる。
【0009】
上記のように構成された制振装置にあっては、振動外力が構造物に作用し、シリンダ52のピストン53が一定方向に移動しているときには、図示のように遮断ポジションにあって高減衰力を発生する。この場合、柱やブレスは、制振装置が高減衰力を発生するので、弾性変形して、振動エネルギが弾性エネルギに変換されこの弾性エネルギを内部蓄積する。つづいて、この制振装置は、構造物の振動方向が逆となったとき、すなわち、ピストン変位が最大振幅となったときに、コントローラ63を介してソレノイドS4に電流を印加して連通ポジションに切換えて制振装置のシリンダ52の発生荷重を除去、すなわち、除荷するように制御され、柱やブレス等に蓄積された弾性エネルギを消散させることができる。その後、除荷制御弁62は、遮断ポジションに戻され、再び、柱等は内部に弾性エネルギを蓄積する。この一連の動作により、構造物に作用する振動エネルギは、高減衰力を発生するシリンダに吸収されるとともに、柱等に蓄積される弾性エネルギも消散することができるので、効率的に制振することが可能となる。
【特許文献1】特開2000−54677号公報(第3頁右欄第25行目から第3頁右欄第45行目、図1)
【特許文献2】特許番号第2959554号の特許公報(発明の実施の形態,図2)
【特許文献3】特開2002-13310号公報(発明の実施の形態,図6)
【非特許文献1】小倉,「制震ダンパシステム」,カヤバ工業株式会社,カヤバ技報,2002年10月,No25(42〜45ページ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の制振装置にあっては、効果的に構造物の振動を抑制できる点で優れてはいるが、以下の問題がある。
【0011】
すなわち、従来の制振装置にあっては、フェールセーフ弁64は、非常のフェールセーフ時にのみ開いて作動するようになっており、構造物に作用する地震等の外力の大小に拘わらず除荷制御弁62だけで同一の減衰制御がなされていたに過ぎなかった。すなわち、構造物に作用する振動外力が大きいときでも小さいときでも、シリンダ52が最大振幅に達するまでは、フェールセーフ弁64と除荷制御弁62を閉弁状態に保たち、シリンダ56が最大振幅に達したときに除荷制御弁62のみを開放動作させ除荷していた。
【0012】
そのために、振動外力が大きい場合にあっても、除荷制御弁62で除荷応答性を充分担保するためには、短時間のうちに充分な量の作動油を流す必要があるので、該除荷制御弁62を大型なものとするか、除荷制御弁62を複数搭載する対応が必要となり、結果、制震装置全体が必然的に大型になってしまうと不具合がある。
【0013】
そこで本発明は、上記不具合を解消するために創案されたものであって、その目的とするところは、小形化可能な制振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の課題解決手段における制振装置は、シリンダと、シリンダ内のピストン両側に形成され受圧面積を同一にした各圧力室を連結するメイン流路と、メイン流路をバイパスするバイパス流路と、前記メイン流路の途中に互いに反対方向を向いて設けられた一対の第1逆止弁と、前記バイパス流路の途中に互いに反対方向を向き、かつ、第1逆止弁の向きに対し反対方向を向くように設けられた一対の第2逆止弁と、第1逆止弁間のメイン流路と第2逆止弁間のバイパス流路とを接続する一対の分岐流路と、一方の分岐流路の途中に設けた減衰力調整可能な除荷制御弁と、他方の分岐流路の途中に設けたオリフィス及び開閉弁と、前記第1逆止弁間のメイン流路に接続されるアキュムレータとを備え、開閉弁および除荷制御弁を開閉制御しシリンダを除荷する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、振動外力が大きい場合には除荷時に開閉弁をも開弁させることができるので、この開閉弁および除荷制御弁を小形化することが可能となり、これにより、制震装置全体も小形化することができる。
【0016】
さらに、開閉弁および除荷制御弁を小形化することができるので、製造コストを削減することができる。
【0017】
また、除荷時に開閉弁をも開弁させることができ、従来の制振装置より流量面積を増大させることができるので、作動油の通過量を多くさせ、除荷時間を短縮することが可能となる、すなわち、除荷応答性を向上することができる。
【0018】
すると、除荷時間が短縮されるので、振動周期が短い振動外力が構造物に作用した場合であっても、充分除荷可能となり、除荷不足による振動抑制不足という弊害を防止することができる。すなわち、除荷が充分でないと、柱等の移動方向が切換わったときに、それまで圧縮されていた圧力室内の圧力が高いままとなり、柱等の移動を却って増長させてしまうので、除荷を充分に行う必要があるが、本発明の制振装置にあっては、除荷が従来に比較して短時間で済むので上記弊害が回避されるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明を図示した実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、一実施の形態における制振装置を概念的に示す図である。
【0020】
一実施の形態におけるの制振装置1は、図1に示すように、シリンダ2と、前記シリンダ2内でピストン3の両側に形成された圧力室6a,6bと、各圧力室6a,6bを連結するメイン流路10と、メイン流路10に並列に接続したバイパス流路11と、前記メイン流路10の途中に設けられた一対の第1逆止弁8a,8bと、前記バイパス流路11の途中に設けられた一対の第2逆止弁9a,9bと、メイン流路10とバイパス流路11とを接続する一対の分岐流路20,21と、一方の分岐流路20の途中に設けた除荷制御弁12と、他方の分岐流路21の途中に設けたオリフィス24及び開閉弁14と、メイン流路10に接続されるアキュムレータ19と、シリンダ2のピストン変位を検知する変位検知手段たる変位センサ15と、上記除荷制御弁12および開閉弁14を制御するコントローラ13とで構成されている。
【0021】
以下、詳細に説明すると、シリンダ2は、図1に示すように、筒状のシリンダ本体5と、シリンダ本体5内を上記2つの圧力室6a,6bを区画するピストン3と、ピストン3の両端から延設されるピストンロッド4とで構成され、シリンダ本体5の側部にはポートaおよびポートbが設けられ、シリンダ本体5内には作動油が充填されている。
【0022】
この上記ピストンロッド4には、多数のスケールメモリ(図示せず)が等間隔をもって埋め込まれており、これらスケールメモリと対向して変位センサ15が設けられている。したがって、ピストンロッド4がシリンダ本体5に対し、図1中左右方向に移動すると、その移動に伴いスケールメモリも移動するので、これを変位センサ15で検知してピストンロッド4の図1中左右変位を検出する、すなわち、ピストンロッド4に連繋するピストン3の位置を検出することが可能となっている。なお、ピストン3の変位を検出するセンサとしては、ポテンショメータや、他の公知のものが使用可能である。
【0023】
なお、シリンダ本体5のポートaとポートbは、ピストン3がシリンダ本体5内を移動しても、ピストン3によって塞がれることがないように、シリンダ本体5の側部の端部側に設けられているが、シリンダ本体5の両端に設けてもよい。
【0024】
また、ポートaとポートbは、互いに上述のメイン流路10により連通されており、メイン流路10には、バイパス流路11がメイン流路10に対し並列に接続されており、また、上記メイン流路10の途中には、一対の第1逆止弁8a,8bが互いに反対方向を向いて設けられるとともに、一対の第2逆止弁9a,9bがバイパス流路11の途中に互いに反対方向を向き、かつ、第1逆止弁8a,8bの向きに対し反対方向を向くように設けられている。
【0025】
さらに、メイン流路10の第1逆止弁8a,8b間とバイパス流路11の第2逆止弁9a,9b間とを接続する一対の分岐流路20,21が並列に設けられており、一方の分岐流路20の途中には減衰力調整可能な除荷制御弁12が、他方の分岐流路21の途中にはオリフィス24及び開閉弁14が設けられている。
【0026】
除荷制御弁12は、ソレノイドS2へ電流供給を行うと一方の分岐流路20を連通する連通ポジションをとり、ソレノイドS2への電流供給を行わないときは附勢バネSP2のバネ力等で閉鎖され、分岐流路20を遮断する遮断ポジションをとるように設定され、通常時には、後述するコントローラ13からソレノイドS2に電流供給を行われず閉弁状態下に維持される。
【0027】
また、除荷制御弁12は、ソレノイドS2への印加電流の大小によって、流路面積を変化させることができ、これにより除荷制御弁12を通過する流量を制御することが可能となっている。
【0028】
他方、開閉弁14は、除荷制御弁12と異なり、ソレノイドS1へ電流供給を行うと他方の分岐流路21を遮断する遮断ポジションをとり、ソレノイドS1への電流供給を行わないときは附勢バネSP1のバネ力等で開放され、分岐流路21を連通する連通ポジションをとるように設定され、通常時には、後述するコントローラ13からソレノイドS1に電流供給がなされ閉弁状態下に維持される。
【0029】
また、第1逆止弁8a,8b間のメイン流路10には流路22を介してアキュムレータ19が接続されており、このアキュムレータ19は、シリンダ2を含む油圧回路内の作動油の温度変化や圧縮に伴う体積変化を補償して油圧回路の損傷を防止する。
【0030】
つづいて、コントローラ13は、変位センサ15と、除荷制御弁12および開閉弁14の各ソレノイドS1,S2に接続されており、ハードウェアとしては、図示しないが、上記変位センサ15が検出したピストン変位の信号を受け取り、除荷制御弁12および開閉弁14のソレノイドS1,S2に制御信号としての電流を出力できるものであれば良く、例えば、前記信号増幅するためのアンプと、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換器と低周波及び高周波成分をカットするバンドパスフィルタと、各ソレノイドS1,S2を駆動するソレノイドドライバと、CPU、ROM、RAM、水晶発振子及びこれらを連絡するバスラインとからなる公知のコンピュータシステムとにより構成され、制御力の演算に使用される除荷制御弁12および開閉弁14の制御に使用される演算処理手順と制御信号出力手順は、プログラムとしてROMに予め格納させておくとする周知なシステムで良い。
【0031】
そして、上述のように構成された制振装置1は、構造体Lを構成する柱30と梁31との間に介装される。具体的には、たとえば、図2に示すように、柱30,30と上下の梁31,31からなる構造体L内に配在される。すなわち、この制振装置1は、シリンダ2のピストンロッド4の一端が図2中下方の下側の梁31にヒンジ結合され、シリンダ本体5の端部は、ピストンロッド4の移動を妨げることのないように筒体34を介して図2中右柱30と上側の梁31との交差部および図2中左柱30と上側の梁31との交差部に掛け渡されたVブレス33の図2中下端にヒンジ結合されて、構造体L内に配在されている。なお、上述したところでは、Vブレス33を介して柱30,30と上下の梁31,31との間に介装されるが、制振装置1は、柱と梁との間に介装されればよいので、構造体L内への取付方法は、上記したところに限られず、たとえば、シリンダ2を斜材の一部として、構造体Lに対して斜めに取付けられたり、図4(a)および図4(b)に示すように、上側の梁31と下側の梁31との間に介装されたりしてもよい。
【0032】
つづいて、上述のように、構造体L内に配在された制振装置1の作用について説明する。
【0033】
振動外力、たとえば、地震や強風等による振動が構造体Lに作用した場合、構造体Lの柱30は、振動外力により、左右に振動する。そして、たとえば、柱30が撓んで右方向に移動しているとき、シリンダ2には、柱30の右方への移動により、この移動がVブレス33を介して伝達されて、ピストン3も右方へ移動する。このとき制振装置1のコントローラ13は、変位センサ15で検知するピストン変位から、ピストン3が右方に向けて変位していると判断し、除荷制御弁12および開閉弁14を閉弁状態とするべく、除荷制御弁12には電流供給を行わず、開閉弁14には電流供給状態を維持する。
【0034】
すると、ピストン3の右方への移動により、シリンダ2の圧力室6b内の圧力が高まり、圧力室6b内の作動油は、メイン流路10、バイパス流路11、第2チェック弁9b、分岐流路20,21、メイン流路10、第1チェック弁8aのルートを通って圧力室6aに移動しようとするが、分岐流路20,21の途中にそれぞれ設けた除荷制御弁12および開閉弁14は閉弁状態に維持されたままとなるので、除荷制御弁12および開閉弁14を通過する際に大きな圧力損失が発生し、制振装置1は高減衰力を発生する。したがって、構造体Lの柱30とVブレス30は、図3の実線に示すように、制振装置1のシリンダ2が略シリンダロックに近い状態となるので、振動外力によって、弾性変形し、振動エネルギを弾性エネルギに変換し、内部に弾性エネルギを蓄積する。これを、図4(a)に示すように、柱30とVブレス33の弾性部材をバネkに置き換えたものとして、これと制振装置1のシリンダ2とを直列に接続し、上梁31と下梁31との間に介装したモデルで説明すると、上梁31が右方にxだけ変位すると、シリンダ2は略シリンダロックに近い状態であるので、バネkが略xだけ縮んで、バネkに弾性エネルギが蓄積されることとなる。なお、ここで、シリンダ2も僅かに変位する。
【0035】
そして、柱30が振動外力により最大振幅点に達すると、こんどは、柱30が左方に移動しようとする。このとき、シリンダ2には、柱30の左方への移動により、この移動がVブレス33を介して伝達されて、ピストン3も左方へ移動する。このとき制振装置1のコントローラ13は、変位センサ15で検知するピストン変位から、ピストン3が今までとは逆向きの左方へ向けて変位していることから、ピストン3が最大振幅点に達したと判断し、除荷制御弁12を開弁状態とし、開閉弁14については必要に応じて開弁状態とするべく、除荷制御弁12には電流供給を行ない、開閉弁14には必要に応じて電流供給を行う。
【0036】
すると、シリンダ2の圧力室6b内の高まった圧力は、圧力室6b内の作動油が除荷制御弁12は開弁状態となり除荷制御弁12を通過する際に圧力損失はさほど発生せず、速やかに圧力室6a内に流入することとなり、制振装置1は小さな減衰力しか発生しない。すなわち、制振装置1のシリンダ2は、高減衰力を発生していた略シリンダロック状態から速やかに低減衰力を発生する状態に移行するので、シリンダ2が発生していた減衰力(荷重)は速やかに除去される。
【0037】
したがって、構造体Lの柱30とVブレス30は、図3の破線に示すように、制振装置1のシリンダ2が低減衰力を発生する状態に速やかに移行するので、復元力で元の状態に戻って、振動外力によって蓄積された弾性エネルギが消散される。これを、図4(b)に示すモデルで説明すると、バネkが復元力でもとの長さにもどって、バネkに蓄えられた弾性エネルギが消散される。
【0038】
除荷終了の判断については、たとえば、コントローラ13により変位センサ15の検出するピストン変位から判断される。具体的には、ピストン変位、すなわち、ピストン3の位置が中立位置近傍に戻った状態を除荷終了と判断したり、ピストン変位を微分して得られるピストン速度からシリンダ2の各圧力室6a,6b内の圧力を算出して、充分除荷が行われたか否かを判断したりすることにより行われるが、シリンダ2の各圧力室6a,6bの圧力値を検知する圧力センサを別途設けて上記圧力センサで検出される圧力値から判断するとしてもよく、また、ピストン変位を微分して得られるピストン速度から振動外力の大きさを判断し、その振動外力の大きさと最大振幅とから除荷が終了する時間を想定して、その想定された除荷時間が経過したことにより除荷が終了したと判断するとしてもよい。
【0039】
そして、制振装置1のシリンダ2の除荷後は、コントローラ13は、除荷制御弁12および開閉弁14を閉弁状態とし、柱30の左方への移動にたいして、シリンダ2に高減衰力を発生させて、再度、柱30およびVブレス33に弾性エネルギを蓄積させ、ピストン3が最大振幅点に達すると、上記したように、シリンダ2を除荷する。
【0040】
以上の動作を繰り返し行うことにより、最大振幅点に達するまでは、高減衰力を発生して構造物Lに作用する振動を抑制するとともに、柱やVブレスに蓄積された弾性エネルギはシリンダ除荷により消散させることができるので、シリンダのストローク量確保が可能となり、効果的に振動を抑制することができる。
【0041】
そして、開閉弁14は、具体的にたとえば、振動外力が大きい場合には開弁され、これにより除荷制御弁12と協働して作動油の流量を多くすることができ、速やかに除荷を行うことができると同時に、振動外力が小さい場合には、除荷時の流量が少なくて済むので開閉弁14を閉じておき、流量調整が可能な除荷制御弁12のみできめ細かい制御を行いつつ除荷することができる。なお、当然ではあるが、振動外力外が大きい場合にも、除荷制御弁12の制御により流量調整を行いつつ除荷することが可能である。
【0042】
したがって、従来の制振装置では、除荷制御弁のみの制御により除荷していたが、つまり開閉弁は除荷時には全く機能しなかったが、本実施の形態における制振装置にあっては、除荷時に開閉弁14をも開弁させることができ、言い換えれば、従来の除荷制御弁の流量を開閉弁14と除荷制御弁12とを協働させて担保することとすればよく、この開閉弁14および除荷制御弁12を従来の制震装置におけるフェールセーフ弁および除荷制御弁に比較して小形化することが可能となり、これにより、制震装置全体も小形化することができる。
【0043】
さらに、開閉弁14および除荷制御弁12を小形化することができるので、製造コストを削減することができる。
【0044】
なお、振動外力の大きさは、最大振幅時のピストン変位から判断するか、変位センサ15で検出する変位を微分することによりピストン速度を算出し、このピストン速度に基づいて振動外力の大きさを判断するとすればよい。また、変位センサの変わりに、ピストン速度を検知するセンサを設けるとしてもよく、さらに、圧力センサでシリンダ2内圧を検出してこの圧力値に基づいて振動外力の大きさを判断してもよく、また、圧力センサと変位センサの両方をも使用して精緻に制御してもよい。
【0045】
さらに、除荷時に開閉弁14をも開弁させることができ、従来の制振装置より速やかに流量面積を増大させることができるので、作動油の通過量を多くさせ、除荷時間を短縮することが可能となる、すなわち、除荷応答性を向上することができる。
【0046】
すると、除荷時間が短縮されるので、振動周期が短い振動外力が構造物Lに作用した場合であっても、充分除荷可能となり、振動抑制不足という弊害を防止することができる。すなわち、除荷が充分でないと、柱等の移動方向が切換わったときに、それまで圧縮されていた圧力室内の圧力が高いままとなり、柱等の移動を却って増長させてしまうので、除荷を充分に行う必要があるが、本実施の形態の制振装置にあっては、除荷が従来に比較して短時間で済むので上記弊害が回避されるのである。
【0047】
なお、コントローラ13への電流供給が断たれた状態、すなわち、フェールセーフ時にあっては、コントローラ13からの各ソレノイドS1,S2への電流供給も断たれる。このときには、除荷制御弁12は、附勢バネSP2により附勢され、閉弁状態下に保たれる。他方、開閉弁14は、附勢バネSP1により附勢され開弁状態下に保たれる。この状態で構造体Lに振動外力が作用すると、作動油は必ずオリフィス24を通過することになり、制振装置1は、作動油のオリフィス24通過時に発生する圧力損失に応じた減衰力を発生することとなり、いわゆるパッシブダンパとして機能する。したがって、フェールセーフ時にも、最低限の振動抑制効果が得られる。
【0048】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一実施の形態における制振装置を概念的に示す図である。
【図2】一実施の形態における制振装置を構造体に取付けた状態を示す図である。
【図3】一実施の形態における制振装置を取付けた構造体に振動外力が作用した状態を示す図である。
【図4】(a)一実施の形態における制振装置および構造体をモデル化した図である。(b)一実施の形態における制振装置および構造体をモデル化した図である。
【図5】従来の制振装置を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 制振装置
2 シリンダ
3 ピストン
4 ピストンピストンロッド
5 シリンダ本体
6a,6b 圧力室
8a,8b 第1逆止弁
9a,9b 第2逆止弁
10 メイン用流路
11 バイパス流路
12 除荷制御弁
13 コントローラ
14 開閉弁
15 変位検出手段たる変位センサ
19 アキュムレータ
24 オリフィス
S1,S2 ソレノイド
SP1,SP2 附勢バネ
30 柱
31 梁
33 Vブレス
L 構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、シリンダ内のピストン両側に形成され受圧面積を同一にした各圧力室を連結するメイン流路と、メイン流路をバイパスするバイパス流路と、前記メイン流路の途中に互いに反対方向を向いて設けられた一対の第1逆止弁と、前記バイパス流路の途中に互いに反対方向を向き、かつ、第1逆止弁の向きに対し反対方向を向くように設けられた一対の第2逆止弁と、第1逆止弁間のメイン流路と第2逆止弁間のバイパス流路とを接続する一対の分岐流路と、一方の分岐流路の途中に設けた減衰力調整可能な除荷制御弁と、他方の分岐流路の途中に設けたオリフィス及び開閉弁と、前記第1逆止弁間のメイン流路に接続されるアキュムレータとを備え、開閉弁および除荷制御弁を開閉制御しシリンダを除荷する制振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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