説明

制振装置

【課題】構造物の振動を抑制する制振装置において、抑制可能な振動の範囲を拡大し、不定性3次元振動を抑制できるようにする。
【解決手段】制振装置は、複数の線状部材をより合わせた索部材を環状に形成した環状部を有する環状索部材と、環状索部材が格納される格納部を備えた第1のベース体と、第2の底部と第2の傾斜側部とを備えた第2のベース体とを有している。第1のベース体は、第1の底部と第1の傾斜側部とによって格納部を形成している。格納部の内側の、第1の傾斜側部と第2の傾斜側部とによって挟まれる傾斜スペースに環状索部材が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の振動を抑制する制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物、高層建築物、産業機械、橋梁、高架式の道路や線路といった固定構造物や、車両、航空機、船舶といった移動構造物は地震や強風、車両の走行等による外力を受けるとその外力に応じて振動する。また、移動構造物や産業機械は移動中または運転中も種々の要因によって振動する。
【0003】
従来、こうした構造物に発生する振動を抑制することを目的とした技術が知られている。例えば、木造建築物や高層建築物の地震や強風等による振動を抑制する装置としてTMD(Tuned Mass Damper)と呼ばれる装置が知られている。この装置は錘とその錘を振動自在に支持する弾性支持部材とから構成され、錘の振動周期が構造物の固有振動周期とほぼ同一となるように、錘の質量および弾性支持部材のばね定数が調整されている。このようなTMDに関して例えば特許文献1には、複数の錘のそれぞれが構造物の複数次の固有振動周期と同一の振動周期で振動するように構成された装置が開示されている。
【0004】
その他、構造物に発生する振動を抑制することを目的とした技術として、特許文献2,3,4に開示されている技術があった。特許文献2には、振り子とその振り子の錘を支える斜面を対称に配設した振り子式制御装置が開示されている。また、特許文献3には制震装置を屋根の棟構造にあわせて対として設置した制震構造が開示されている。特許文献4には竹の子ばね状の振動減衰装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−49387号公報
【特許文献2】特開平7−324518号公報
【特許文献3】特許第3483535号公報
【特許文献4】特開2000−283227号公報
【特許文献5】特開2006−36197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術によれば、地震や強風等によって固定構造物に発生する振動や移動構造物に発生する振動を抑制することが可能になる。
【0007】
しかし、特許文献1,2,3に開示されている装置では、振動を減衰させるための部材の構造上、構造物が水平面に沿って動く2次元的な水平方向の振動(以下「水平振動」という)を抑制できるに留まり、構造物が高さ方向に動く垂直方向の振動(以下「垂直振動」という)は抑制することが極めて困難であった。
【0008】
また、特許文献4に開示されている装置は、振動を減衰させるための竹の子ばねが軸方向に沿って伸縮するように構成されているため、軸方向に沿っている振動しか抑制することができなかった。
【0009】
つまり、上述した従来技術では、振動の方向が限られ、しかも装置の構造がその振動に対応しているときは、期待した振動抑制効果が得られるが、そうでなければ期待した振動抑制効果が得られないという課題があった。
【0010】
ところが、地震によって固定構造物や移動構造物に発生する振動、移動中の車両等に発生する振動、車両の走行に伴い橋梁等に発生する振動は水平振動と垂直振動とが組み合わさった3次元的な振動であり、しかも構造物の動く方向が定まっていない振動(以下「不定性3次元振動」という)であることがある。特に地震によって固定構造物や移動構造物に発生する振動は不定性3次元振動であることが多いため、振動を抑制する装置の構造を地震による振動に正確に適合させることは困難である。
【0011】
また、走行中の自動車等の車両に発生する振動は、車体はもちろんのこと、エンジンや燃料タンク等、車両に搭載されているあらゆる部分に発生する。したがって、ハイブリッド自動車や電気自動車のような走行用のリチウムイオン電池を搭載している車両では、リチウムイオン電池にも振動が発生する。特に舗装されていない道路のような状況の良くない道路を走行するときは振動が大きくなりやすく、車両に不定性3次元振動が発生しやすい。
【0012】
そして、車両の振動を抑制する技術に関して、従来、例えば、特許文献5のように、ハイブリッド自動車における主動力源の振動を減衰させる技術が知られていた。しかし、この技術はエンジンの動作に起因した振動を低減する技術であり、走行中に車輪から伝達される不定性3次元振動を抑制することはできなかった。
【0013】
このように従来技術では、抑制できる振動の範囲が限られ、固定構造物についても移動構造物についても、不定性3次元振動を抑制することが極めて困難であるという課題があった。
【0014】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、構造物の振動を抑制する制振装置において、抑制可能な振動の範囲を拡大し、不定性3次元振動を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の線状部材をより合わせた索部材を環状に形成した環状部を有する環状索部材と、その環状索部材が格納される格納部を備えた第1のベース体と、格納部に格納される大きさの第2の底部とその第2の底部に対して傾斜している第2の傾斜側部とを備えた第2のベース体とを有し、第1のベース体は、第2の底部よりも大きさの大きい第1の底部とその第1の底部に対して傾斜している第1の傾斜側部とによって格納部を形成し、格納部の内側において第1の底部の内底面と第2の底部の外底面とが接することなく対向し、格納部の内側の、第1の傾斜側部の内側面と第2の傾斜側部の外側面とによって挟まれる傾斜スペースに環状索部材が配置され、その環状索部材が第1の傾斜側部の内側面と第2の傾斜側部の外側面の双方に環状部を起立させて固定されている制振装置を特徴とする。
【0016】
この制振装置では、環状索部材が傾斜スペースに配置されて第1の傾斜側部の内側面と第2の傾斜側部の外側面の双方に環状部を起立させて固定されている。傾斜スペースを挟む内側面と外側面は底部に対して傾斜しているから、第1のベース体と第2のベース体の相対位置が水平方向、垂直方向のいずれに移動しても内側面と外側面の間隔が狭まり、その結果、環状部がつぶれるようになる。
【0017】
上記制振装置では、第2のベース体は、第2の傾斜側部の内側に制振対象物または錘が載置される平坦な載置部が形成されていることが好ましい。
【0018】
制振装置は、上記のような載置部が形成されていることによって、載置部に制振対象物または錘を載置することができる。
【0019】
また、本発明は、複数の線状部材をより合わせた索部材を環状に形成した環状部を有する4つの環状索部材と、その環状索部材が格納される格納部を備えた第1のベース体と、格納部に格納される大きさの矩形板状に形成されている第2の底部とその第2の底部に対して傾斜し、その第2の底部の周縁部全体に形成されている第2の傾斜側部とを備えた第2のベース体とを有し、第1のベース体は、第2の底部よりも大きさの大きい矩形板状に形成されている第1の底部とその第1の底部に対して傾斜し、その第1の底部の周縁部全体に形成されている第1の傾斜側部とによって格納部を形成し、格納部の内側において第1の底部の内底面と第2の底部の外底面とが接することなく対向し、格納部の内側の、第1の傾斜側部の内側面と第2の傾斜側部の外側面とによって挟まれる傾斜スペースに、4つの環状索部材のそれぞれが第1の底部の周縁部を形成する各辺それぞれに分散されて配置され、環状索部材のそれぞれが、第1の傾斜側部の内側面と第2の傾斜側部の外側面の双方に環状部を起立させて固定されている制振装置を提供する。
【0020】
この制振装置では、環状索部材が4つとも傾斜スペースに配置されて第1の傾斜側部の内側面と第2の傾斜側部の外側面の双方に環状部を起立させて固定されている。傾斜スペースを挟む内側面と外側面は底部に対して傾斜しているから、第1のベース体と第2のベース体の相対位置が水平方向、垂直方向のいずれに移動しても内側面と外側面の間隔が狭まり、その結果、環状部がつぶれるようになる。また、環状索部材が第1の底部の周縁部を形成する各辺それぞれに分散されているから、振動吸収作用が4つに分散される。
【0021】
さらに、本発明は、複数の線状部材をより合わせた索部材を環状に形成した環状部を有する環状索部材と、その環状索部材が格納される格納部を備えた第1のベース体と、格納部に格納される大きさの円板状に形成されている第2の底部とその第2の底部に対して傾斜し、その第2の底部の周縁部全体に形成されている第2の傾斜側部とを備えた第2のベース体とを有し、第1のベース体は、第2の底部よりも大きさの大きい円板状に形成されている第1の底部とその第1の底部に対して傾斜し、その第1の底部の周縁部全体に形成されている第1の傾斜側部とによって格納部を形成し、格納部の内側において第1の底部の内底面と第2の底部の外底面とが接することなく対向し、格納部の内側の、第1の傾斜側部の内側面と第2の傾斜側部の外側面とによって挟まれる傾斜スペースに、環状索部材が第2の底部全体を取り囲むように配置され、環状索部材が、第1の傾斜側部の内側面と第2の傾斜側部の外側面の双方に環状部を起立させて固定されている制振装置を提供する。
【0022】
この制振装置では、環状索部材が傾斜スペースに配置されて第1の傾斜側部の内側面と第2の傾斜側部の外側面の双方に環状部を起立させて固定されている。傾斜スペースを挟む内側面と外側面は底部に対して傾斜しているから、第1のベース体と第2のベース体の相対位置が水平方向、垂直方向のいずれに移動しても内側面と外側面の間隔が狭まり、その結果、環状部がつぶれるようになる。また、環状索部材が第2の底部全体を取り囲むように配置されているから、どの方向の振動でも同じように吸収作用が発揮される。
【0023】
上記いずれの制振装置も、第1の傾斜側部の内側面の第1の底部の内底面に対する第1の傾斜角度と、第2の傾斜側部の外表面の第2の底部の外底面に対する第2の傾斜角度とが同じ大きさの鈍角に設定されていることが好ましい。
【0024】
また、上記いずれの制振装置も、第1の傾斜角度と、第2の傾斜角度とがともに135度に設定されているようにすることができる。
【0025】
さらに、上記いずれの制振装置も、環状索部材は、それぞれ環状部を複数備えた螺旋状に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、本発明によれば、構造物の振動を抑制する制振装置において、抑制可能な振動の範囲を拡大し、不定性3次元振動を抑制できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る制振装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の制振装置の平面図である。
【図3】図1の制振装置の側面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図1の制振装置を螺旋構造体を簡略化して示した平面図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】(a)は螺旋構造体の一例を示す側面図、(b)は同じく正面図である。
【図8】索部材の一例を示す断面図である。
【図9】(a)は螺旋構造体とその周辺を示す斜視図、(b)は螺旋構造体の周辺を示す斜視図である。
【図10】(a)は螺旋構造体とその周辺を示す別の斜視図、(b)は螺旋構造体の周辺を示す別の斜視図である。
【図11】変形例に係る制振装置の一部省略した平面図である。
【図12】図11の断面図である。
【図13】別の変形例に係る制振装置の要部を示す斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る制振装置の一例を示す平面図である。
【図15】図14の制振装置を構成するベース体を示す斜視図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係る制振装置の一例を示す平面図である。
【図17】図16の制振装置を構成するベース体を示す斜視図である。
【図18】図16の制振装置の要部を示す斜視図である。
【図19】図1の制振装置とリチウムイオン電池を示す側面図である。
【図20】リチウムイオン電池を搭載した図1の制振装置と車両の要部を示す一部断面にした側面図である。
【図21】図1の制振装置と別の車両を示す側面図である。
【図22】図1の制振装置の要部を示し、(a)は水平振動が発生した場合の断面図、(b)は垂直振動が発生した場合の断面図である。
【図23】本発明の第4の実施の形態に係る制振装置の一例を示し(a)は制振装置170の断面図、(b)は制振装置199の断面図である。
【図24】本発明の別の実施の形態に係る制振装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0029】
第1の実施の形態
(制振装置の構成)
図面を参照して本発明の第1の実施の形態に係る制振装置の構成について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る制振装置50の構成を示す斜視図、図2は同じく制振装置50の構成を示す平面図である。図3は制振装置50の側面図、図4は図2の4−4線断面図である。また、図5は制振装置50の螺旋構造体10を簡略化して示した平面図、図6は図5の6−6線断面図である。
【0030】
図1〜図6に示すとおり、制振装置50はベース体1と、ベース体21と、4つの螺旋構造体10(10a,10b,10c,10d)とを有している。
【0031】
ベース体1は本発明における第1のベース体であって、底部2と、4つの傾斜側部3a,3b,3c,3dと、4つの起立端部4a,4b,4c,4dとを有している。また、ベース体1は底部2と、傾斜側部3a,3b,3c,3dおよび起立端部4a,4b,4c,4dとによって形成される格納部8を有している。
【0032】
底部2は、本発明における第1の底部であって、図2、図5に詳しく示すように鋼等の金属を用いて正方形状に形成され、内底面2aおよび外底面2bが平坦な板材である。底部2は、後述する底部22よりも大きい大きさを有している。この底部2は制振装置50の底部を構成している。制振装置50を木造家屋や自動車等の構造物に設置する際、底部2の外底面2bがその構造物に接するようになっている。底部2は均一な厚さを有している。
【0033】
傾斜側部3a,3b,3c,3dは本発明における第1の傾斜側部であって、底部2と同様に鋼等の金属を用いて矩形状に形成された板材である。傾斜側部3a,3b,3c,3dは、高さおよび厚さが等しく形成されている。傾斜側部3a,3b,3c,3dはいずれも底部2の周縁部に固定されている。傾斜側部3a,3b,3c,3dは互いに接続されて一体となっていて、底部2の全体を取り囲んでいる。
【0034】
そして、傾斜側部3a,3b,3c,3dについては、傾斜角度が鈍角に設定されている。この傾斜角度は、図9(b)に示すように、底部2の内底面2aと傾斜側部3b(傾斜側部3a,3c,3dについても同様)の内側面3baとが挟む角度X1であって、傾斜側部3bの内側面3baが底部2の内底面2aに対してどの程度傾いているのかを示す角度である。
【0035】
また、詳しくは後述するが、螺旋構造体10b(螺旋構造体10a,10c,10dも同様)に作用する水平方向の外力と、垂直方向の外力とがそれぞれ後述する垂直分力F1と平行分力F2とに均等に分解されるようにするため、傾斜角度(上記の角度X1)が135度に設定されている。そのため、傾斜側部3b(傾斜側部3a,3c,3dについても同様)の、底部2の外底面2bの延長線上から計測した角度α(図9(a),(b)参照)は45度に設定されている。
【0036】
傾斜側部3a,3b,3c,3dのほか、後述する傾斜側部23a,23b,23c,23dについても傾斜角度が同じ大きさの鈍角に設定されている。これにより、傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面3ba等の内側面と、傾斜側部23a,23b,23c,23dの外側面23ba等の外表面とが平行に対向している。
【0037】
起立端部4a,4b,4c,4dはそれぞれ傾斜側部3a,3b,3c,3dの底部2に固定されていない開放側の端部に固定されている。起立端部4a,4b,4c,4dは底部2の内底面2aに対し、ほぼ直交するように起立している。
【0038】
格納部8は、螺旋構造体10a,10b,10c,10dが格納される部分であって、底部2の内底面2aと、傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面および起立端部4a,4b,4c,4dによって囲まれた内側の窪みの部分である。格納部8はベース体1の内側に形成されている。格納部8の内側には傾斜スペース18が形成されている。
【0039】
この傾斜スペース18は格納部8の内側の、傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面と、傾斜側部23a,23b,23c,23dの外表面とに挟まれる部分である。傾斜スペース18は、底部2の周縁部に沿った平面視矩形のドーナツ状の空間である。傾斜スペース18の、底部2と交差する方向の断面が図4、図6に示すように傾斜面となっている。傾斜スペース18の幅は、後述する棒状部材13aと、棒状部材13bとの間隔と同じかそれよりもやや小さい大きさに設定されている。傾斜スペース18の幅は、ベース体21が格納部8に納められたときの傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面と、傾斜側部23a,23b,23c,23dの外表面との間隔に対応している。そして、この傾斜スペース18に螺旋構造体10a,10b,10c,10dが配置されている。
【0040】
なお、本実施の形態では、底部2とは別体の傾斜側部3a,3b,3c,3dが底部2に固定された構造としているが、傾斜側部3a,3b,3c,3dが底部2の周縁部に形成され、双方が一体に形成された箱状の構造にしてもよい。また、起立端部4a,4b,4c,4dについても、傾斜側部3a,3b,3c,3dに固定された構造としているが、起立端部4a,4b,4c,4dが傾斜側部3a,3b,3c,3dに形成され、双方が一体に形成された構造にしてもよい。
【0041】
ベース体21は本発明における第2のベース体であって、底部22と、4つの傾斜側部23a,23b,23c,23dとを有している。また、ベース体21は傾斜側部23a,23b,23c,23dの内側に受部9が形成されている。
【0042】
底部22は本発明における第2の底部であって、底部2よりも大きさの小さい正方形状に形成されている。底部22は底部2と同様に金属を用いて形成され、内底面22eおよび外底面22fが平坦な板材である。底部2の内底面22eは平坦であり、コンピュータ等の精密機械や電気自動車のリチウムイオン電池といった制振の対象となるもの(制振対象物)が載置される載置部としての構成を有している。
【0043】
なお、図1では、内底面22e上に制振対象物を載置する代わりに金属板状の錘28が載置されている。図1以外の図では、錘28の図示を省略している。
【0044】
傾斜側部23a,23b,23c,23dは本発明における第2の傾斜側部であって、底部22と同様に鋼等の金属を用いて矩形状に形成された板材である。傾斜側部23a,23b,23c,23dは、高さおよび厚さが等しく形成されている。傾斜側部23a,23b,23c,23dはそれぞれ底部22の周縁部22a,22b,22c,22dに固定されている。傾斜側部23a,23b,23c,23dは互いに接続されて一体となっていて、底部22の全体を取り囲んでいる。
【0045】
そして、傾斜側部23a,23b,23c,23dについても、傾斜側部3a,3b,3c,3dと同様、傾斜角度が鈍角に設定されている。この傾斜角度は、図9(b)に示すように、底部22の外底面22fと傾斜側部23b(傾斜側部23a,23c,23dについても同様)の外側面23baとが挟む角度X2であって、傾斜側部23bの外側面23baが底部2の外底面22fに対してどの程度傾いているのかを示す角度である。
【0046】
次に、螺旋構造体10について説明する。制振装置50は4つの螺旋構造体10a,10b,10c,10dを有している。螺旋構造体10a,10b,10c,10dは同じ構造を有している。
【0047】
螺旋構造体10は図7(a),(b)に詳しく示すようにワイヤーバネ12と、棒状部材13a,13bとを有している。ワイヤーバネ12は本発明における環状索部材であって環状部12aを複数備え、全体が螺旋状に形成されている。環状部12aは図8に詳しく示す索部材16を概ね円環状に形成したものである。索部材16が強固な弾力性を有する弾性部材であるため、環状部12aは例えば円形から楕円形に変化する等の形状の変化がおきた場合に復元力を発揮し、元の形状に戻ろうとする。
【0048】
索部材16は鋼、ステンレス等からなる断面円形状の線状部材14を複数(図8では19本)より合わせて単位索部材15とし、この単位索部材15をさらに複数本(図8では7本)より合わせ、かつ捩り込んで形成されている。本実施の形態に係る索部材16は鋼索であり、強固な弾力性を有している。なお、図8に示した索部材16は合計133本の線状部材14がより合わされている。
【0049】
棒状部材13a,13bは、断面角型の外側が平坦な部材である。棒状部材13a,13bは、長さ方向に沿って複数の貫通孔が等間隔に形成されている。棒状部材13a,13bはそれぞれの貫通孔にワイヤーバネ12の環状部12aが挿通されることでワイヤーバネ12と一体化されている。環状部12aは、中心12pを挟んで対向している一部分(この部分を対向部ともいう)だけが棒状部材13a,13bに挿通されている。また、棒状部材13a,13bは各環状部12aの中心12pを挟んで対向する位置に配置され、ワイヤーバネ12の中心軸CL(図7(b)参照)と平行になっている。
【0050】
そして、図2、図4、図5、図6に示すように、螺旋構造体10a,10b,10c,10dはそれぞれ傾斜側部3a,3b,3c,3dと、傾斜側部23a,23b,23c,23dの幅方向中間位置に配置されている。また、各螺旋構造体10は底部2の周方向に沿って等間隔で配置されている。
【0051】
螺旋構造体10a,10b,10c,10dはそれぞれ傾斜側部3a,3b,3c,3dと、傾斜側部23a,23b,23c,23dとによって挟まれている。しかも、図9に詳しく示すように、それぞれの棒状部材13aが傾斜側部3a,3b,3c,3dに固定されるとともに、棒状部材13bが傾斜側部23a,23b,23c,23dに固定されている。棒状部材13a、13bはボルト11a,11bを用いて傾斜側部3a,3b,3c,3dと、傾斜側部23a,23b,23c,23dとに固定されている。
【0052】
こうすることにより、ワイヤーバネ12がそれぞれ環状部12aを起立させて、傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面3ba等の内側面と、傾斜側部23a,23b,23c,23dの外側面23ba等の外側面の双方に固定されている。そのため、ベース体21からの荷重が各螺旋構造体10に加わり、ワイヤーバネ12が図4、6に示すように撓んで変形している。
【0053】
一方、棒状部材13a、棒状部材13bを固定するときは、図10(a)に示すように、斜め金具17a、17bを用いてもよい。斜め金具17a、17bは厚さが不均一であり、裏面に対して表面が傾斜している。
【0054】
この斜め金具17a、17bをそれぞれ棒状部材13a、棒状部材13bと、傾斜側部3b、傾斜側部23bとの間に介在させることによって、傾斜側部3b、傾斜側部23bの傾斜角度を135度とは別の角度に変えた場合と同等の効果が得られる。
【0055】
例えば、図10(b)に示すように、傾斜側部23bの傾斜角度を角度αよりも大きい角度βとするためには、傾斜側部23bを折り曲げねばならない。傾斜側部23bは他の傾斜側部23aにも接続されているから、傾斜側部23b(他の傾斜側部3b等、他の傾斜側部も同様)の傾斜角度は容易には変更できない。しかし、斜め金具17a、17bを用いることで傾斜角度の変更による効果がごく簡易に得られる。
【0056】
そして、制振装置50では、図1に示すように、ベース体1の格納部8にベース体21が上側から納められている。この場合、ベース体1の底部2の大きさよりも、ベース体21の底部22の大きさが小さい。そのため、格納部8の中に底部22を納めて、底部2の内底面2aと底部22の外底面22fとを接することなく対向させることができる。この場合、内底面2aと外底面22fとの間に隙間が確保されているから、ベース体21が格納部8の中で上下に動けるようになっている。
【0057】
(制振装置の動作内容)
続いて以上の構成を有する制振装置50の動作内容について説明する。制振装置50は、パターン(1)とパターン(2)の2つのパターンで使用することができる。パターン(1)は、ベース体1の底部2を制振の対象となる固定構造物に固定して使用するパターンである。パターン(2)は、ベース体21の底部22に制振対象物を載置して使用するパターンである。
【0058】
そして、パターン(1)では、図1に示したように、ベース体21の底部22に錘28を載置した上で、制振装置50を木造家屋等の固定構造物に固定する。パターン(2)では、制振対象物として、電気自動車のリチウムイオン電池等を底部22に載置する。
【0059】
パターン(1)での動作内容は次のとおりである。なお、以下の説明では、固定構造物として木造家屋を想定している。例えば地震が発生して木造家屋に水平振動が発生したとする。すると、その振動に伴い制振装置50も木造家屋と一緒になって水平方向に振動する。ところが、制振装置50は錘28を載置したベース体21を有しており、その錘28は固有の慣性を有するため、固有の振動周期で水平方向に振動する。錘28が水平方向に振動するとベース体21も同様に振動する。
【0060】
そして、ベース体21の傾斜側部23a,23b,23c,23dと、ベース体1の傾斜側部3a,3b,3c,3dの双方に螺旋構造体10a,10b,10c,10dが固定されている。そのため、ベース体21の振動に伴い底部22と底部2との相対的な位置が水平方向にずれるが、そのずれ(水平方向の位置ずれ)の原因となった外力は棒状部材13a,13bを介して螺旋構造体10a,10b,10c,10dのワイヤーバネ12に加わる。
【0061】
このとき、ワイヤーバネ12は螺旋状に形成されているから弾力性を有し、外力により変形したときは元の形状に戻ろうと復元力を発揮する。ワイヤーバネ12は変形した際、索部材16の捩れが発生して座屈を生じ得るおそれがあるが、各環状部12aが棒状部材13a、13bに挿通されているため、座屈の発生が抑制されている。また、ワイヤーバネ12は複数の環状部12aが起立するようにして固定されているため、外力はすべての環状部12aに加わる。各環状部12aは加わった外力の向きと大きさに応じて傾斜したり撓む等して変形するが、それと同時並行的に復元力を発生してその変化を打ち消すように動く。
【0062】
一方、ワイヤーバネ12は索部材16を用いて構成されている。索部材16は多数の線状部材14をより合わせて形成されている。そのため、環状部12aが前述のような動きをすると各線状部材14が隣接するもの同士で激しくこすれ合い、熱を発生させる。すなわち、ワイヤーバネ12は加えられた外力を熱に変換する熱変換機能を有している。環状部12aが加わった外力の向きと大きさに応じて変形し、それに伴い熱を発生することにより、ワイヤーバネ12が加わった外力を吸収することになる。また、棒状部材13a,13bが水平方向に沿ってどのような方向にずれてもそのずれに応じた熱変換機能をワイヤーバネ12が発生することになる。したがって、木造家屋に水平方向のどのような振動が発生しても(発生する振動の方向が定まっていなくても)、螺旋構造体10a,10b,10c,10dによってその振動を吸収することができる。
【0063】
また、螺旋構造体10a,10b,10c,10dのワイヤーバネ12は垂直振動が発生した場合も外力に応じて撓む。そのため、螺旋構造体10は水平方向の振動吸収機能とともに垂直方向の振動吸収機能も有している。
【0064】
そして、線状部材14は断面円形状であるため、隣接しているもの同士は接触しつつそれぞれの間に多数の隙間が形成されている。そのため、線状部材14が発生する熱は空気中に拡散され、螺旋構造体10の内部にとどめられることなく空気中に放出される。
【0065】
一方、図22(a)に示すように、上記のような水平振動に伴い、ワイヤーバネ12に水平方向の外力Fhが加わったとする。外力Fhは、垂直分力F1と、平行分力F2とに分解することができる。垂直分力F1は、傾斜側部3bの内側面3baおよび傾斜側部23bの外側面23baに垂直な方向の分力である。平行分力F2は、内側面3baおよび外側面23baに平行な方向の分力である。ワイヤーバネ12に外力Fhが加わるということは、垂直分力F1と平行分力F2とが同時にワイヤーバネ12に加わるということである。
【0066】
そして、内側面3baと外側面23baの傾斜角度が135度に設定されているため、垂直分力F1、平行分力F2とが均等な大きさになる。垂直分力F1はワイヤーバネ12に対して環状部12aをつぶす方向に働くが、水平分力F2はワイヤーバネ12に対して環状部12aを撓ませる方向に働き、いずれもワイヤーバネ12の熱変換機能を発揮させる。
【0067】
以上のように、制振装置50は水平振動に対してワイヤーバネ12の各環状部12aによる熱変換機能を確実に発揮させることができる。また、ワイヤーバネ12は複数の環状部12aを備えた螺旋構造を有しているから、各環状部12aによる弾性作用を強力に発揮する。そのうえ、制振装置50は、4つの螺旋構造体10を有しているため、水平振動を各螺旋構造体10に分散させて効果的に抑制することができる。
【0068】
一方、直下型の地震が発生して前述の木造家屋に垂直振動が発生したとする。すると、その振動に伴い制振装置50も木造家屋と一緒になって垂直方向に振動する。制振装置50は、錘28固有の振動周期で垂直方向(上下)に振動する。錘28が垂直方向に振動するとベース体21も同様に振動する。
【0069】
そして、ベース体21の振動に伴い傾斜側部3a,3b,3c,3dと傾斜側部23a,23b,23c,23dとの相対的な位置が垂直方向にずれる。そのずれ(垂直方向の位置ずれ)の原因となった外力は、棒状部材13a,13bを介して螺旋構造体10のワイヤーバネ12に加わる。この外力は各環状部12aの全体に加わる。この場合も、各環状部12aは加わった外力の向きと大きさに応じて変形するが、それと同時並行的に復元力を発生してその変化を打ち消すように動く。ワイヤーバネ12は前述した熱変換機能を有しているため、その熱変換機能を螺旋構造体10が発揮することによって垂直振動が吸収される。
【0070】
また、図22(b)に示すように、上記のような垂直振動に伴い、ワイヤーバネ12に垂直方向の外力Fvが加わったとする。外力Fvも外力Fhと同様、均等な大きさの垂直分力F1と、平行分力F2とに分解することができる。この場合も、垂直分力F1はワイヤーバネ12に対して環状部12aをつぶす方向に働くが、水平分力F2はワイヤーバネ12に対して環状部12aを撓ませる方向に働き、いずれもワイヤーバネ12の熱変換機能を発揮させる。
【0071】
以上のように、制振装置50は垂直振動に対してワイヤーバネ12の各環状部12aによる熱変換機能を確実に発揮させることができる。そのうえ、制振装置50では、4つの螺旋構造体10を有しているため、垂直振動を各螺旋構造体10に分散させて効果的に抑制することができる。
【0072】
一方、ワイヤーバネ12は、棒状部材13a,13bが平行に移動する方向の外力よりも、両者の間隔が狭まり、環状部12aがつぶれる方向の外力に対して、より強い復元力を発揮する。したがって、ワイヤーバネ12は、外力によって環状部12aがつぶれるようにしておくことが望ましい。そのためには、内側面3ba等の傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面と、外側面23ba等の傾斜側部23a,23b,23c,23dの外側面との間隔が、外力によって狭まるようにすればよい。
【0073】
傾斜側部3a,3b,3c,3dも傾斜側部23a,23b,23c,23dも傾斜角度が鈍角に設定されている。そのため、両者の相対的な位置が水平方向、垂直方向いずれの方向にずれても、傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面と、傾斜側部23a,23b,23c,23dの外側面との間隔が狭まる。しかも、双方の傾斜角度が同じ大きさの鈍角に設定されているから、内側面3ba等の内側面と、外側面23ba等の外側面とが平行になる。すると、環状部12aが直径に沿ってつぶれるようになり、環状部12aが直径に沿っていないつぶれ方をしたときよりも、より大きい弾性エネルギーがワイヤーバネ12に蓄えられる。
【0074】
仮に、内側面と外側面とが平行でないとすれば環状部12aが直径に沿っていないつぶれ方をするため、蓄えられる弾性エネルギーが減少し、復元力も減少するため好ましくない。一方、底部2と底部22との間隔は、両者の相対的な位置が垂直方向にずれたときにだけ狭まる。水平方向にずれたときは変化しない。
【0075】
つまり、傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面と、傾斜側部23a,23b,23c,23dの外側面との間隔が水平方向、垂直方向いずれの方向についても狭まるのは、両者が底部に対して傾斜しているからである。しかも、傾斜角度が鈍角に設定されていれば、底部22に載置した錘28や制振対象物の重さが環状部12aをつぶすように作用するから、振動が無い状態でワイヤーバネ12に弾性エネルギーを蓄えておくことができ、復元力を発揮させやすい。傾斜角度が鋭角に設定されていても、内側面と外側面との間隔が水平方向、垂直方向いずれの方向についても狭まる。しかし、底部22に載置した制振対象物の重さによって、環状部12aが引き延ばされてしまい、好ましくない。
【0076】
そして、螺旋構造体10a,10b,10c,10dは前述した傾斜スペース18に配置されて、傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面と、傾斜側部23a,23b,23c,23dの外側面とに固定されている。そのため、水平振動、垂直振動のいずれについても、環状部12aがつぶれるようにすることができる。しかも、傾斜角度が135度に設定されているため、水平振動、垂直振動の双方ともに垂直分力F1と平行分力F2とが均等な大きさになり、外力に含まれる半分の成分で環状部12aをつぶすことができる。制振装置50では、水平振動と垂直振動のどちらについても、4つの螺旋構造体10a,10b,10c,10dにおいて、ワイヤーバネ12の熱変換機能が発揮される。そして、水平振動と垂直振動の双方をどちらかに偏ることなくバランスよく吸収することができる。
【0077】
そのうえ、制振装置50では、4つの螺旋構造体10を有し、そのそれぞれが周方向等間隔で配置されている。そのため、水平振動、垂直振動による外力がいずれか1つに偏るようなことはなく4つの螺旋構造体10によってバランスよく吸収される。
【0078】
ところで、木造家屋に地震による振動が発生する場合、水平振動と垂直振動のいずれか一方だけが発生することよりも、両者が組み合わさった3次元的な振動が発生することが多い。その上、振動の方向もまちまちで定まってなく、振動が始まってから終わるまでの間に方向が変化していくこともある。地震によって木造家屋等の固定構造物や移動構造物に発生する振動や、移動中の車両等に発生する振動、車両の走行に伴い橋梁等に発生する振動は、このような不定性3次元振動になることがある。
【0079】
しかしながら、制振装置50は前述した構成を採用することによって、ワイヤーバネ12による水平振動に対する熱変換機能と垂直振動に対する熱変換機能とを同時並行的に発揮することができる。不定性3次元振動が構造物に発生した場合、そのうちの水平方向成分、垂直方向成分ともに4つの螺旋構造体10が抑制する。螺旋構造体10はそれぞれのワイヤーバネ12が加えられた外力の向きと大きさに応じて熱変換機能を発揮することで振動を吸収する。そのため、制振装置50は3次元的などのような振動でも抑制することができる。したがって、制振装置50は、抑制できる振動の範囲が従来技術よりも大幅に拡大されており、不定性3次元振動を十分に抑制できるようになっている。
【0080】
また、制振装置50は構造物に対し、木造家屋の床面等に底部2を固定することによって設置することができるから、建築中に家屋はもとよりすでに建築された既存家屋にも設置することができる。
【0081】
続いてパターン(2)の動作内容について説明する。パターン(2)の場合、例えば、制振対象物は、電気自動車に搭載されている図19、図20に示すようなリチウムイオン電池300とすることができる。リチウムイオン電池300は、図19に示すように、制振装置50の受部9に納められて内底面22eに載置される。そして、図20に示すように、リチウムイオン電池300および制振装置50が、電気自動車の車体200に備えられた収納スペース201に搭載される。収納スペース201は例えばガソリンエンジン車における燃料タンクの収納スペースに相当している。
【0082】
電気自動車の走行中、車輪202を通して様々な振動が車体200に伝達される。リチウムイオン電池300は本来、制振装置50を用いることなく収納スペース201に搭載される。そのため、リチウムイオン電池300も車体200とともに振動する。特に、電気自動車が舗装されていない道路のような悪路を走行するときは路面のうねりや凹凸といった路面状況に応じた様々な振動がリチウムイオン電池300に伝達される。このような振動は垂直振動を主体としつつも、水平振動も加わるため不定性3次元振動となることが多い。
【0083】
そこで、制振装置50を収納スペース201に搭載し、ベース体1を車体200に固定した上で、ベース体21の受部9(ベース体1、ベース体21、受部9については図1参照、図20には図示せず)にリチウムイオン電池300を納め、内底面22eに載置する。
【0084】
そして、車体200に垂直振動が発生した場合、ベース体1と、ベース体21との垂直方向の相対的な位置がずれるが、そのずれの原因となった外力がワイヤーバネ12に加わる。ワイヤーバネ12は加わった外力の向きと大きさに応じた熱変換機能を発揮するため、垂直振動を吸収する。また、水平振動が発生すると、ベース体1と、ベース体21との水平方向の相対的な位置がずれるが、そのずれの原因となった外力がワイヤーバネ12に加わる。この場合もワイヤーバネ12は熱変換機能を発揮し、水平振動を吸収する。
【0085】
このように、制振装置50はパターン(2)についても、抑制できる振動の範囲が従来技術よりも大幅に拡大されており、制振対象物の不定性3次元振動を十分に抑制できるようになっている。
【0086】
特に、パターン(2)の場合、例えばベース体21の内底面22eにリチウムイオン電池300を載置したときは、リチウムイオン電池300がある程度の重量を有するため、リチウムイオン電池300が前述した錘28の役割を兼備することになる。すなわち、車体200を前述したパターン(1)における固定構造物としての木造家屋に見立てることができる。したがって、制振装置50によって、リチウムイオン電池300だけでなく車体200そのものに発生する不定性3次元振動を抑制することもできる。
【0087】
また、そのほか、図21に示すように、トラック220の荷台221上に制振装置50を固定し、そのベース体21の上にサーバ310を載置することもできる。トラック220の走行中は荷台221に不定性3次元振動が発生し、サーバ310にも不定性3次元振動が発生する。しかし、制振装置50を用いることでサーバ310における不定性3次元振動を抑制することができる。
【0088】
(変形例)
続いて制振装置50の変形例について図11〜図13を参照して説明する。図11は変形例に係る制振装置の傾斜側部3b、23b等とワイヤーバネ30を示す平面図、図12は断面図である。図13は別の変形例に係る制振装置の傾斜側部3b、23b等と、ワイヤーバネ34とを斜視図である。
【0089】
前述した制振装置50では、螺旋構造体10a,10b,10c,10dが棒状部材13a,13bによって、傾斜側部3a,3b,3c,3dと、傾斜側部23a,23b,23c,23dとに固定されていた。図11に示すように、螺旋構造体10a,10b,10c,10dが傾斜側部3a,3b,3c,3dと、傾斜側部23a,23b,23c,23dとに棒状部材13a,13bを用いることなく固定されていてもよい。
【0090】
図11、図12では、傾斜側部3a,3b,3c,3dと、傾斜側部23a,23b,23c,23dのそれぞれに、環状部12aの太さに応じた孔部3bb、23bbを形成し、その孔部3bb、23bbに環状部12aの一部分を貫通させている。こうすると、ワイヤーバネ12が傾斜側部3a,3b,3c,3dと、傾斜側部23a,23b,23c,23dとに係合するため、ワイヤーバネ12の位置を固定することができる。
【0091】
また、ワイヤーバネ12、30は螺旋状に形成されているが、図13に示すようなリング状のワイヤーバネ34を複数個用いてもよい。ワイヤーバネ34は索部材16の両端を接続して一巻きのリング状に形成されている。このようなワイヤーバネ34を複数並べて、傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面3baと、傾斜側部23a,23b,23c,23dの内側面23baとに固定金具35を用いる等して固定してもよい。
【0092】
図11〜図13のいずれも場合も、ワイヤーバネ30,34によって、垂直振動および水平振動に対する熱変換機能を発揮できるので、制振装置50は不定性3次元振動を十分に抑制することができる。
【0093】
第2の実施の形態
次に、図14、図15を参照して本発明の第2の実施の形態に係る制振装置60の構成について説明する。図14は制振装置60の構成を示す一部省略した平面図である。図15は、ベース体121を示す斜視図である。制振装置60は制振装置50と比較してベース体21がベース体121になっている点、ワイヤーバネ12がベース体121に対して棒状部材13aを用いずに固定されている点で相違している。
【0094】
ベース体121は、本発明における第2のベース体であって、図15に示すように、円板状に形成されている底部121bと、傾斜側部121aとを有する底の浅いすり鉢状に形成されている。傾斜側部121aは、底部121bの周縁部全体を取り囲むように、底部121bの周縁部に固定されている。傾斜側部121aは円錐の周側面の、高さ方向一部分に相当していて、上下を反対にして(つまり、直径の小さい方を下側にして)底部121bに固定されている。傾斜側部121aは傾斜角度が鈍角に設定されている。
【0095】
ベース体121は底部121bと、傾斜側部121aとによって形成される受部122が形成されている。この受部122に制振対象物が納められる。
【0096】
ワイヤーバネ12は、ベース体121の傾斜側部121aに対し、例えば前述した固定金具35(図14には図示せず)を用いて固定することができるが、溶接等によって固定してもよい。
【0097】
そして、ベース体1の格納部8にベース体121が納められると、底部2の内底面2aと底部121bの外底面とを対向させることができる。そのうえ、格納部8の内側に傾斜スペース38を形成することができる。傾斜スペース38に螺旋構造体10a,10b,10c,10dを配置することができる。
【0098】
そして、水平振動、垂直振動のいずれが発生しても、傾斜側部3a,3b,3c,3dの内側面と、傾斜側部121aの外側面との間隔が狭まる。したがって、制振装置60でも、ワイヤーバネ12によって水平振動、垂直振動を抑制することができる。そのため、制振装置60は制振装置50と同様に不定性3次元振動を十分に抑制することができる。
【0099】
第3の実施の形態
次に、図16〜図18を参照して本発明の第3の実施の形態に係る制振装置70の構成について説明する。図16は制振装置70の構成を示す一部省略した平面図である。図17はベース体111を示す斜視図である。図18はベース体111と、ワイヤーバネ80の要部を示す斜視図である。
【0100】
制振装置70は制振装置60と比較して、ベース体1がベース体111になっている点、長さの長いワイヤーバネ80が、ベース体111の全周に渡ってその傾斜側部111aの内側面と、傾斜側部121aの外側面とに固定されている点で相違している。
【0101】
ベース体111は、本発明における第1のベース体であって、ベース体121よりも大きさの大きい円板状に形成されている底部111bを有し、その周縁部全体を取り囲むように、底部121bの周縁部に傾斜側部111aが固定されている。傾斜側部111aは円錐の周側面の、高さ方向一部分に相当していて、上下を反対にして底部111bに固定されている。傾斜側部111aは傾斜角度が鈍角に設定されている。傾斜側部111aの傾斜角度と、傾斜側部121aの傾斜角度は同じ大きさの鈍角(135度が好ましい)に設定されている。
【0102】
さらに、傾斜側部111aの端部に起立端部111cが固定されている。ベース体111はベース体121よりも大きさが大きく深さの深いすり鉢状に形成されている。そして、ベース体111は、底部111bと傾斜側部111aとによって形成される格納部112を有している。格納部112の内側において、底部111bの内底面と底部121bの外底面とが接することなく対向している。
【0103】
また、格納部112の内側に傾斜スペース48が形成されている。傾斜スペース48は、傾斜側部111aの内側面と、傾斜側部121aの外表面とに挟まれる部分である。傾斜スペース48は、底部111bの周縁部に沿った平面視円形のドーナツ状(円環状)の空間である。この傾斜スペース48にワイヤーバネ80が配置されている。ワイヤーバネ80は底部121b全体を取り囲むような長さを有し、かつ環状部12bを多数有し、底部121b全体を取り囲んでいる。
【0104】
ワイヤーバネ80は図18に示すように、傾斜側部111aの内側面に対しては、前述した固定金具35を用いて固定することができる。また、傾斜側部121aの外側面に対しても、固定金具35を用いて固定することができる。傾斜側部111a、121aのいずれに対しても溶接で固定してもよい。
【0105】
制振装置60の場合は、ベース体1が採用されていたため、底部2が正方形に形成されている。そのため、傾斜側部3a,3b,3c,3dと、傾斜側部121aの距離が場所によって変化し、一様になっていなかった。また、傾斜側部121aの全周に渡って、傾斜側部3a,3b,3c,3dと傾斜側部121aの双方にワイヤーバネを固定することが甚だ困難な構造であった。
【0106】
しかし、制振装置70では、ベース体111を有しているため、傾斜側部121aと傾斜側部111aとの間隔を、傾斜側部121aの全周に渡って一様にすることができる。そのため、傾斜側部121aの全周に渡って、傾斜側部121aと傾斜側部111aの双方にワイヤーバネ80が固定されている。
【0107】
このような制振装置70は、水平振動、垂直振動のいずれが発生しても、傾斜側部111aの内側面と、傾斜側部121aの外側面との間隔が狭まる。したがって、制振装置70も、ワイヤーバネ12によって水平振動、垂直振動を抑制することができ、制振装置60と同様に不定性3次元振動を十分に抑制することができる。
【0108】
そのうえ、制振装置70では、傾斜側部121aの全周に渡ってワイヤーバネ80が固定されている。そのため、制振装置70では、水平振動がどのような方向の振動であっても、振動による外力に応じてワイヤーバネ80が変形し、振動抑制効果を発揮する。制振装置70では、振動抑制効果に場所によるムラの出ることがなく、傾斜側部121aの全周に渡って均一な振動抑制効果を発揮させることができる。
【0109】
また、傾斜側部121aの全周に渡ってワイヤーバネ80が固定されているため、垂直振動が発生した場合はワイヤーバネ80の全体がほぼ一様に変形する。したがって、ワイヤーバネ80の各部がバランスよく変形し、バランスのよい振動抑制効果が発揮される。制振装置70は制振装置60と同様に不定性3次元振動を十分に抑制することができるだけでなく、水平振動および垂直振動のいずれについても、ワイヤーバネ80の変形の場所による偏りが無く、極めて効果的に不定性3次元振動が抑制される。
【0110】
第4の実施の形態
次に、図23を参照して本発明の第4の実施の形態に係る制振装置170,199の構成について説明する。図23(a)は制振装置170の構成を示す一部省略した断面図、図23(b)は制振装置199の構成を示す一部省略した断面図である。
【0111】
制振装置170はベース体151と、ベース体161と、複数の螺旋構造体10とを有している。
【0112】
ベース体151は、本発明における第1のベース体であって、矩形板状の底部152と、その周縁部全体に固定された傾斜側部153とを有している。また、ベース体151は、傾斜側部153の端部に起立端部154が固定されている。傾斜側部153の傾斜角度が鈍角に設定されている。起立端部154は先端部151aが制振装置170の設置面に接しないように高さが低く設定されている。ベース体151は、底部152と傾斜側部153とによって形成される格納部155を有している。格納部155の内側にベース体161が納められている。格納部155の内側において、底部152の内底面と後述する底部162の外底面とが接することなく対向している。また、格納部155の内側には傾斜スペース156が形成されている。傾斜スペース156は、傾斜側部153の内側面と、傾斜側部163の外側面とによって挟まれている。傾斜スペース156は、平面視矩形のドーナツ状の空間である。
【0113】
ベース体161は、本発明における第2のベース体であって、底部152よりも大きさの小さい矩形板状の底部162と、その周縁部全体に固定された傾斜側部163と、起立端部164とを有している。傾斜側部163の傾斜角度が傾斜側部153と同じ大きさの鈍角に設定されている。起立端部164は先端部が制振装置170の設置面に接する長さを有している。
【0114】
螺旋構造体10は、傾斜スペース156に配置され、傾斜側部153の内側面と、傾斜側部163の外側面の双方に固定されている。
【0115】
この制振装置170では、底部152の表側に制振対象物を載置して使用する。制振対象物を載置すると、その制振対象物の重量によって螺旋構造体10がつぶれ、ベース体151が下方に移動する。しかし、先端部151aが制振装置170の設置面に接しないよう、起立端部154の高さが低く設定されているため、螺旋構造体10のつぶれる状態が得られる。水平振動が発生した場合も、垂直振動が発生した場合も、傾斜側部153の内側面と、傾斜側部163の外側面との間隔が狭まるため、双方の振動とも螺旋構造体10によって抑制される。そのため、制振装置170も、制振装置50と同様に不定性3次元振動を十分に抑制することができる。
【0116】
次に、制振装置199はベース体180と、ベース体190と、複数の螺旋構造体10とを有している。
【0117】
ベース体180は、本発明における第1のベース体であって、大きい厚さを備えた厚肉板状部材を主体として構成されている。ベース体180は、格納部185を有している。格納部185は、厚肉板状部材の片面の一部をくり抜く等して形成されたもので、底部182と傾斜側部181とによって形成されている。底部182は平坦な矩形状に形成されている。傾斜側部181は底部182を取り囲むようにその周縁部全体に形成されている。傾斜側部181の傾斜角度は鈍角に設定されている。
【0118】
ベース体190は本発明における第2のベース体であって、ベース体180よりも厚さの薄い厚肉板状部材を主体として構成されている。ベース体190は格納部185に格納される大きさの四角錐台状を呈している。ベース体190は底部182よりも大きさの小さい底部192と、傾斜側部191と、外表面193とを有している。傾斜側部191の傾斜角度は傾斜側部181と同じ大きさの鈍角に設定されている。
【0119】
そして、制振装置199では、格納部185の内側に傾斜スペース195が形成されている。傾斜スペース195は、傾斜側部181の内側面と、傾斜側部191の外側面とによって挟まれている。傾斜スペース195は、平面視矩形のドーナツ状の空間である。この傾斜スペース195に螺旋構造体10が配置されている。螺旋構造体10は、傾斜側部181の内側面と、傾斜側部191の外側面の双方に固定されている。
【0120】
この制振装置199は図23(b)に示すように、外表面193にリチウムイオン電池300等の制振対象物を載置して使用する。制振対象物を載置すると、その制振対象物の重量によって螺旋構造体10の環状部12aがつぶれ、ベース体190が下方に移動する。また、水平振動、垂直振動のいずれが発生した場合も、傾斜側部181の内側面と、傾斜側部191の外側面の間隔が狭まり、環状部12aがつぶれるから、その振動は螺旋構造体10によって抑制される。そのため、制振装置190も、制振装置50と同様に不定性3次元振動を十分に抑制することができる。
【0121】
前述した各実施の形態において、パターン(1)では、ベース体21等に錘28を載置していた。しかしながら、ベース体21等にもそれ自体の自重がある。そのため、ベース体21に錘28の働きを持たせることもできる。制振装置50は錘28を有しない構造とすることができる。また、傾斜側部3a,3b,3c,3d等のように傾斜側部は互いに接続され一体となっていた。例えば、傾斜側部3a,3b,3c,3dの長さを短くする等して、接続箇所(図1の角部)を開放して、底部2の全体を取り囲まないようにしてもよい。こうすると、外部から格納部8の内側を視認しやすくなる。
【0122】
一方、上記各制振装置をパターン(2)で使用する場合、制振対象物の重量によっては、制振装置が共振を起こし、振動が大きくなることがある。制振装置に加わる外力の振動数が制振対象物の固有振動数に近くなったときに、制振対象物の振動数が急激に増加することがあり、この現象が共振である。
【0123】
この共振による振動の増加を抑制するためには、上記各制振装置において、次のようにすることが好ましい。すなわち、格納部の内側の、第1の底部の内底面と第2の底部の外底面との間に別の環状索部材(第2の環状索部材)を配置する。
【0124】
例えば、前述した制振装置50は図24に示す制振装置250とすることが好ましい。制振装置250は、螺旋構造体10a,10b,10c,10dとは別の螺旋構造体10xが第2の環状索部材として配置されている。この点で制振装置250は制振装置50と相違している。螺旋構造体10xは環状部12aが起立するようにして内底面2aと外底面22fとに固定されている。
【0125】
螺旋構造体10xは螺旋構造体10a,10b,10c,10dと同じ構成を有するが、これらとは配置されている場所が相違している。螺旋構造体10xは底部2の内底面2aと、底部22の外底面22fとの間に配置されている。
【0126】
制振装置250をパターン(2)で使用する場合は制振対象物がベース体21上に載置される。螺旋構造体10xは底部2の内底面2aと、底部22の外底面22fとの間に配置されている。そのため、螺旋構造体10xは制振対象物の重量による上からの荷重によって、環状部12aを直径方向につぶすように変形する。したがって、螺旋構造体10xを別途配置することにより、共振によって増加する振動の特に上下方向成分が効果的に抑制される。また、螺旋構造体10xは水平方向成分を抑制する作用を有するので、共振によって増加する振動の水平方向成分も螺旋構造体10xによって抑制される。
【0127】
以上の説明では、前述した制振装置50を例にとって説明したが、他の制振装置60,70等の場合も、共振による振動の増加を抑制するため、第2の環状索部材を別途配置することが好ましい。また、第2の環状索部材は1つだけでなく、複数配置してもよい。制振装置250では、第2の環状索部材として螺旋構造体10xを配置しているが、ワイヤーバネ34を配置してもよい。
【0128】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【0129】
以上の実施の形態では、固定構造物として主に木造家屋、精密機械、産業機械などを取り上げているが、本発明は上記以外の固定構造物や移動構造物についても適用することができる。本発明は例えば橋梁、高架式の道路や線路といった固定構造物や、車両、航空機、船舶といった移動構造物についても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明を適用することにより、制振装置について、抑制可能な振動の範囲を拡大し、不定性3次元振動を抑制できるようになる。
【符号の説明】
【0131】
1,21,111,121,151,161…ベース体、2,22,111b,121b,152,162…底部、3a,3b,3c,3d,23a,223b,23c,23d,111a,12a…傾斜側部、8,112,185…格納部、9…載置部、10,10a,10b,10c,10d,10x…螺旋構造体、12,80…ワイヤーバネ、14…線状部材、15…単位索部材、16…索部材、18,38,48…傾斜スペース、50,60,70,170,199,250…制振装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状部材をより合わせた索部材を環状に形成した環状部を有する環状索部材と、
該環状索部材が格納される格納部を備えた第1のベース体と、
前記格納部に格納される大きさの第2の底部と該第2の底部に対して傾斜している第2の傾斜側部とを備えた第2のベース体とを有し、
前記第1のベース体は、前記第2の底部よりも大きさの大きい第1の底部と該第1の底部に対して傾斜している第1の傾斜側部とによって前記格納部を形成し、
前記格納部の内側において前記第1の底部の内底面と前記第2の底部の外底面とが接することなく対向し、
前記格納部の内側の、前記第1の傾斜側部の内側面と前記第2の傾斜側部の外側面とによって挟まれる傾斜スペースに前記環状索部材が配置され、該環状索部材が前記第1の傾斜側部の内側面と前記第2の傾斜側部の外側面の双方に前記環状部を起立させて固定されている制振装置。
【請求項2】
前記第2のベース体は、前記第2の傾斜側部の内側に制振対象物または錘が載置される平坦な載置部が形成されている請求項1記載の制振装置。
【請求項3】
複数の線状部材をより合わせた索部材を環状に形成した環状部を有する4つの環状索部材と、
該環状索部材が格納される格納部を備えた第1のベース体と、
前記格納部に格納される大きさの矩形板状に形成されている第2の底部と該第2の底部に対して傾斜し、該第2の底部の周縁部全体に形成されている第2の傾斜側部とを備えた第2のベース体とを有し、
前記第1のベース体は、前記第2の底部よりも大きさの大きい矩形板状に形成されている第1の底部と該第1の底部に対して傾斜し、該第1の底部の周縁部全体に形成されている第1の傾斜側部とによって前記格納部を形成し、
前記格納部の内側において前記第1の底部の内底面と前記第2の底部の外底面とが接することなく対向し、
前記格納部の内側の、前記第1の傾斜側部の内側面と前記第2の傾斜側部の外側面とによって挟まれる傾斜スペースに、前記4つの環状索部材のそれぞれが前記第1の底部の前記周縁部を形成する各辺それぞれに分散されて配置され、
前記環状索部材のそれぞれが、前記第1の傾斜側部の内側面と前記第2の傾斜側部の外側面の双方に前記環状部を起立させて固定されている制振装置。
【請求項4】
複数の線状部材をより合わせた索部材を環状に形成した環状部を有する環状索部材と、
該環状索部材が格納される格納部を備えた第1のベース体と、
前記格納部に格納される大きさの円板状に形成されている第2の底部と該第2の底部に対して傾斜し、該第2の底部の周縁部全体に形成されている第2の傾斜側部とを備えた第2のベース体とを有し、
前記第1のベース体は、前記第2の底部よりも大きさの大きい円板状に形成されている第1の底部と該第1の底部に対して傾斜し、該第1の底部の周縁部全体に形成されている第1の傾斜側部とによって前記格納部を形成し、
前記格納部の内側において前記第1の底部の内底面と前記第2の底部の外底面とが接することなく対向し、
前記格納部の内側の、前記第1の傾斜側部の内側面と前記第2の傾斜側部の外側面とによって挟まれる傾斜スペースに、前記環状索部材が前記第2の底部全体を取り囲むように配置され、
前記環状索部材が、前記第1の傾斜側部の内側面と前記第2の傾斜側部の外側面の双方に前記環状部を起立させて固定されている制振装置。
【請求項5】
前記第1の傾斜側部の内側面の前記第1の底部の内底面に対する第1の傾斜角度と、前記第2の傾斜側部の外表面の前記第2の底部の外底面に対する第2の傾斜角度とが同じ大きさの鈍角に設定されている請求項1〜4のいずれか一項記載の制振装置。
【請求項6】
前記第1の傾斜角度と、前記第2の傾斜角度とがともに135度に設定されている請求項5記載の制振装置。
【請求項7】
前記環状索部材は、それぞれ前記環状部を複数備えた螺旋状に形成されている請求項1〜6のいずれか一項記載の制振装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2012−31926(P2012−31926A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171498(P2010−171498)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(501055075)株式会社田中制震構造研究所 (3)
【Fターム(参考)】