制振部材の脱着装置及び方法
【課題】感光体ドラムの制振において、中空を有し、かつ片端が密閉若しくは、一部開口が有る制振部材を感光体ドラムの内壁に脱着する際、押付力を必要とせず、負荷なく制振材部材の脱着がスムーズにでき、かつ制振材部材と感光体ドラムとが摩擦接触せずに、ゴミを発生させない製造装置、方法を提案する。
【解決手段】中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口を有する円筒形状の制振部材を円筒状の感光体ドラムの内壁に脱着する制振部材の脱着装置において、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させる変形手段を有することとした。
【解決手段】中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口を有する円筒形状の制振部材を円筒状の感光体ドラムの内壁に脱着する制振部材の脱着装置において、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させる変形手段を有することとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体ドラム内壁に制振部材を装着する脱着装置及び方法に関し、特に脱着時、制振部材に形状変化を与えるようにした装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置に用いられる感光体ドラムは、中空円筒状基体の表面に感光層が形成されて製造されており、これを複写機やプリンターに装着して使用する場合、使用条件によっては感光体ドラムから振動音が発生し、この振動音は人に不快感を与えるものであった。
【0003】
この解決手段として、制振部材を感光体ドラム内部に充填する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、粘弾性の材料を充填若しくはある厚さを持つように層状に電子写真感光体内部に密着させ、騒音を防ぐ方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記二つの文献には、粘弾性材料である制振部材を充填或いは密着させることにより、感光体ドラムと機器との共振エネルギーを吸収し、その振動が弱まって騒音が小さくなることが記載されている。特許文献1には片側端部が閉鎖された円筒形状の弾性体で形成された制振部材により制振効果がえられる旨の記載がある。また特許文献2には、感光体ドラム内側にスムーズかつ確実にサイレンサを押し込むことが出来る装置及び方法が記載されている。
【0005】
一般に、特許文献1又は2に開示されている制振部材若しくはサイレンサの材質としては、概ねゴム系のものが用いられている。そして、感光体ドラムの内壁に、制振部材若しくはサイレンサを密接させる場合(接着材を使用する場合を除く)、外径を感光体ドラムの内径よりやや大きめに設定した制振部材若しくはサイレンサに圧力をかけて圧入し、圧入後は、制振部材若しくはサイレンサの弾性を利用することで感光体ドラム内壁に固定するものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−43862公報
【特許文献2】特開2003−66770公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述の制振部材若しくはサイレンサを圧入するためには、押圧力が必要となる。単純に圧力をかけて押し込むだけでは、制振部材若しくはサイレンサが変形してしまい、スムーズに押し込むことが出来ず、スムーズに押し込むためには制振部材若しくはサイレンサを鉛直に押し込む必要がある。
【0008】
これをより具体的に説明する。図10は片端密封型中空制振部材を示す構成図である。図11は片端一部開口型中空制振部材の構成図である。図12は制振部材を感光体ドラムへ押し込む従来の動作の説明図である。
【0009】
従来、中空を有しかつ片端が密閉若しくは一部開口の有る円筒形状の制振部材6(図10(a)、(b))あるいは7(図11(a)、(b)各参照)をドラムホルダー10の上に載せられた円筒状の感光体ドラム8の内壁に脱着するために押し込む場合、押し込み棒11のような装置を用いて行っていた(図12参照)。
【0010】
しかしながら、このような方法によれば、制振部材を押し込む際には、制振部材の表面特性や制振部材外径のバラツキによって押し込み力にバラツキが生じてしまう。これでは、制振部材6、7をスムーズに感光体ドラム8の内壁に脱着することが出来ないという問題があった。また、感光体ドラム8を、例えばリサイクルのために、感光体ドラム8自体と制振部材6、7とに分離するような際、感光体ドラム8及び制振部材に傷を付けずに取り外すことも困難であった。更に、制振部材6、7と感光体ドラム8とが摩擦接触によって発生するゴミが感光体ドラム8の表面に付着することが予期され、このようなゴミが画像形成に悪影響を及ぼすという問題もあった。
【0011】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたもので、中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口が有る制振部材を、感光体ドラムの内壁に脱着する際、押し込み力をほとんど必要とせず、負荷なくスムーズに制振部材の脱着ができ、かつ制振材部材と感光体ドラムとが摩擦接触するために発生するゴミを排除した制振部材の脱着装置及び方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口を有する円筒形状の制振部材を、円筒状の感光体ドラムの内壁に脱着する制振部材の脱着装置において、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させる変形手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制振部材と感光体ドラム内壁の定位置に脱着する為の押当部材を有しており、且つ押当部材には吸引する吸引部材軸芯と制振部材軸芯を合わせる位置合わせ機構を有していることを特徴とする。請求項3に記載の発明は、中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口を有する円筒形状の制振部材を、円筒状の感光体ドラムの内壁に脱着する制振部材の脱着方法において、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させて脱着を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させる変形装置を有する制振部材の脱着装置により、作業時間の短縮並びに、作業精度向上可能で、ごみ付着が少ない感光体の制振部材の脱着が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の脱着装置の制振部材用吸引棒2の構成を示す斜視図であり、図2(a)は、本発明の制振部材用吸引棒2の構成を示す断面図である。
【0016】
制振部材用吸引棒2は、制振部材6、7を感光体ドラム8内壁の定位置に脱着する為の、制振部材用押当部材9を有している。また、制振部材用吸引棒2は、制振部材6、7を感光体ドラム8の内壁の定位置に脱着する為の感光体ドラム8用の押当部材5を有している。
【0017】
感光体ドラム8の外径をDA、制振部材6、7の外径をDB、制振部材6、7の内径をDC、制振部材6、7用の押当部材外径をDD、感光体ドラム8用の押当部材外径をDEとした場合、DE>DA>DB>DD>DCの関係にある。この理由は、吸引前の制振部材6、7の外径は感光体ドラム8との密着が要求されるため、感光体ドラム8の内径より大である必要があるからである。
【0018】
また制振部材用吸引棒2の内側は、中空であり、かつ両端が密閉されており、吸引ポート13及び送気ポート14を有している。更に、制振部材用吸引棒2には、吸引・送気孔12が1ヶ以上開いており、この孔12を介して吸引ポート13及び送気ポート14から制振部材6、7の内側の気体又は流体を吸引・送気する。送気孔12の孔径は、吸引・送気するのに抵抗とならない孔径とする。
【0019】
制振部材用吸引棒2は、制振部材6、7を感光体ドラム8内壁の定位置に脱着する為の、制振部材用押当部材9を有するが、本実施形態では制振部材用押当部材9は制振部材吸引棒2軸芯と制振部材6、7軸芯を合わせる位置合わせ機構を有している。図3は制振部材吸引棒2に制振部材6が定位置におかれた時の図である。位置合わせ機構は、制振部材用押当部材9の外周形状がテーパー形状となっており、制振部材用吸引棒2軸心と制振部材6、7軸心が同一になるようになっている。この事により、制振部材6、7を均一に吸引する事が出来る。なお、上記のような位置合わせ機構がない場合(例えば制振部材用押当部材9が円環状)は、制振部材6、7が制振部材用吸引棒2に対して偏って吸引されてしまう為、スムーズに感光体ドラム8の内壁に脱着することが出来ない場合も皆無とは言えない。また、制振部材7の様に一部開口のあるような物を対象とする場合については、図4の断面図に記載のように、上部位置合わせ部材15を設けるようにすれば、更に良い。
【0020】
なお、制振部材6、7の材質は、ブチルゴム、ニトリルゴム、天然ゴム等の、制振部材6、7の内側の気体又は流体の吸引・送気に対応できる柔軟な材質でなければならない。本発明の目的からして、弾性により密着効果及び制振効果が得られるのであるから柔軟な材質は必須である。
【0021】
また感光体ドラム8の内壁の定まった位置に制振部材を固定しておく為に、また接着工程を不要とする為にも、制振部材6、7の外径(DB)は、感光体ドラム8の内径よりやや大きめに外径を設定しておく必要がある。その為、感光体ドラム8の内径をD、上記制振部材6、7の外径をd(=DB)とした場合、D<d若しくは、D=dでなければならない。
【0022】
斯かる装置により、上記制振部材6、7を、制振部材用吸引棒2に挿し込み、その後吸引ポート13より制振部材内側の気体又は流体を吸引することにより、吸引前の通常状態における制振部材外径をd、吸引後の制振部材外径をd1とした場合、d>d1になる。制振部材の外径をdとした場合、吸引後の制振部材外径d1が、dの1〜5%、好ましくは5%〜10%、更に好ましくは、10%〜15%まで吸引変形させる。
【0023】
本発明はこのようにして感光体ドラム8の内壁に制振部材を脱着する点が特徴である。吸引が最適化されることで、挿入時のみならず、使用済みの感光体ドラム8のリサイクル時の制振部材6、7の抜き取り時にも活用できる。
【0024】
図5は、本発明の制振部材着脱用棒とこれに接続した吸引、送気系の構成図である。図6は、本発明の制振部材の吸引棒への装着時の説明図である。図7は、本発明の吸引棒の吸引操作による制振部材収縮を示す説明図である。
【0025】
図5に示すような制振部材6、7内側の中空部分を真空にさせる為の機構(変形手段)を有していることが好ましい。真空にさせる為の機構としては、例えば公知の技術であるエジェクタ1(一対のノズルとディフューザから構成され、ノズルからディフューザへ向かって高速流れを発生させて周囲の気体又は流体を吸引しディフューザから大気へ消音器等を介して排出される装置)を使用する。符号3は吸引用ハンドバルブを、符号4は真空解除用ハンドバルブを示す。
【0026】
制振部材6、7の内側の中空部分を真空にした後、真空部分に気体を充足解除する機構を有していることが好ましい。真空を充足解除する機構として例えば、常圧の大気圧を真空状態の中に送気する事によりタクトアップが図れる。
【0027】
[実施例]
以下、本発明の具体的態様を示すべく実施例並びに比較例をあげて本発明の効果を示す。これらは、本発明の一態様に過ぎずこれらに本発明の技術的範囲は限定されない。
外径60mm、内径57mm、長さ350mmのアルミニウムドラム上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を順次塗布した電子写真感光体ドラムに、制振部材外径58mm、内径45mm、長さ275mm、材質ブチルゴムで片端が密閉されているものを感光体ドラム片端より37.5mmの位置に制振部材が固定出来るように、感光体100本について、作業時間と押圧力を測定、かつごみの付着状況について確認した。
[実施例1]
図5に記載した脱着装置にて挿入実験を実施した。以下作業フローを示す。
先ず、吸引棒2に制振部材6、7を片端の開放されている方向から挿し込み、制振部材用の押当部材9に、制振部材6、7片端が当たるまで挿し込む(図6参照)。次に、吸引用ハンドバルブ3をONし、一旦圧縮エアーを送気する。続いてエジェクタ1をONし、制振部材6、7を縮めるために吸引ポート13より気体又は流体を吸引する。
制振部材6、7は、中空部分の気体又は流体が吸引され真空状態となる。これにより図7に示すように制振部材は収縮し外径51mmとなった。制振材変形度12%であった。感光体ドラム8を制振部材6、7外側より、吸引棒2の感光体ドラム用の押当部材5まで感光体ドラム片端が当たるまで挿し込む。これにより、感光体ドラム端より、制振部材端までの距離が37.5mmとなる(図7参照)。この後、吸引用ハンドバルブ3をOFF、エジェクタ1をOFFする。
真空解除用ハンドバルブ4をONし(送気ポートより圧縮エアー送気)、感光体ドラム内壁で真空状態が急速に解除され、制振部材6、7が元の外径に戻る。これにより、制振部材6、7の弾性によって、感光体ドラム8の内壁に制振部材6、7が密着、固定される。この状態を図9に示す。最後に真空解除用ハンドバルブ4をOFFにして、感光体ドラム8を取り出す。これにより感光体ドラム8の内壁には制振部材6、7が挿入されることになる。
[実施例2]
上記実施例1により挿入した制振部材を実施例1とは逆の要領で感光体ドラムから抜き取った。
【0028】
[比較例1]
図12に記載した従来の挿入装置にて挿入実験を実施した。以下に作業フローを示す。感光体ドラム8をドラムホルダー10に押し込み、制振部材6、7を押し込み棒11により制振部材6、7の片端の開放されている方向から押し込む。
次に、制振部材6、7を人手により感光体ドラム8の内壁に沿って押し込み、ドラムホルダー10に、制振部材6、7の片端が突き当たるまで押し込む。これにより、感光体ドラム8の端より、制振部材6、7の端までの距離が37.5mmとなる。この後、押し込み棒11を取り出し、感光体ドラム8を取り出すようにした。
[比較例2]
比較例1で挿入した制振部材6、7を比較例1と逆の要領で抜き取った。
確認結果を表1(挿入時)、表2(抜き取り時)に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の制振部材用吸引棒の構成を示す斜視図。
【図2】本発明の制振部材用吸引棒の構成を示す断面図。
【図3】本発明の制振部材用吸引棒に制振部材を装着した時の構成を示す断面図。
【図4】本発明の制振部材用吸引棒に上部位置合わせ部材を取付け、一部開口のある制振部材を装着した時の構成を示す断面図。
【図5】本発明の制振部材着脱用棒への吸引、送気系の構成図。
【図6】本発明の制振部材の吸引棒への装着時の説明図。
【図7】本発明の吸引棒の吸引操作による制振部材収縮を示した図。
【図8】本発明の制振部材と感光体ドラムの関係を示す構成図。
【図9】吸引操作解除による制振部材の感光体への密着を示す図。
【図10】片端密封型中空制振部材を示す構成図。
【図11】片端一部開口型中空制振部材の構成図。
【図12】従来の制振部材を感光体ドラムへ押込む動作の説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 エジェクタ
2 吸引棒
3 吸引用ハンドバルブ
4 真空解除用ハンドバルブ
5 感光体ドラム用押当部材
6 片端密閉制振部材
7 一部開口制振部材
8 感光体ドラム
9 制振部材用押当部材
10 ドラムホルダー
11 押し込み棒
12 吸引用孔
13 吸引ポート
14 送気ポート
15 上部位置合わせ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体ドラム内壁に制振部材を装着する脱着装置及び方法に関し、特に脱着時、制振部材に形状変化を与えるようにした装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置に用いられる感光体ドラムは、中空円筒状基体の表面に感光層が形成されて製造されており、これを複写機やプリンターに装着して使用する場合、使用条件によっては感光体ドラムから振動音が発生し、この振動音は人に不快感を与えるものであった。
【0003】
この解決手段として、制振部材を感光体ドラム内部に充填する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、粘弾性の材料を充填若しくはある厚さを持つように層状に電子写真感光体内部に密着させ、騒音を防ぐ方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記二つの文献には、粘弾性材料である制振部材を充填或いは密着させることにより、感光体ドラムと機器との共振エネルギーを吸収し、その振動が弱まって騒音が小さくなることが記載されている。特許文献1には片側端部が閉鎖された円筒形状の弾性体で形成された制振部材により制振効果がえられる旨の記載がある。また特許文献2には、感光体ドラム内側にスムーズかつ確実にサイレンサを押し込むことが出来る装置及び方法が記載されている。
【0005】
一般に、特許文献1又は2に開示されている制振部材若しくはサイレンサの材質としては、概ねゴム系のものが用いられている。そして、感光体ドラムの内壁に、制振部材若しくはサイレンサを密接させる場合(接着材を使用する場合を除く)、外径を感光体ドラムの内径よりやや大きめに設定した制振部材若しくはサイレンサに圧力をかけて圧入し、圧入後は、制振部材若しくはサイレンサの弾性を利用することで感光体ドラム内壁に固定するものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−43862公報
【特許文献2】特開2003−66770公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述の制振部材若しくはサイレンサを圧入するためには、押圧力が必要となる。単純に圧力をかけて押し込むだけでは、制振部材若しくはサイレンサが変形してしまい、スムーズに押し込むことが出来ず、スムーズに押し込むためには制振部材若しくはサイレンサを鉛直に押し込む必要がある。
【0008】
これをより具体的に説明する。図10は片端密封型中空制振部材を示す構成図である。図11は片端一部開口型中空制振部材の構成図である。図12は制振部材を感光体ドラムへ押し込む従来の動作の説明図である。
【0009】
従来、中空を有しかつ片端が密閉若しくは一部開口の有る円筒形状の制振部材6(図10(a)、(b))あるいは7(図11(a)、(b)各参照)をドラムホルダー10の上に載せられた円筒状の感光体ドラム8の内壁に脱着するために押し込む場合、押し込み棒11のような装置を用いて行っていた(図12参照)。
【0010】
しかしながら、このような方法によれば、制振部材を押し込む際には、制振部材の表面特性や制振部材外径のバラツキによって押し込み力にバラツキが生じてしまう。これでは、制振部材6、7をスムーズに感光体ドラム8の内壁に脱着することが出来ないという問題があった。また、感光体ドラム8を、例えばリサイクルのために、感光体ドラム8自体と制振部材6、7とに分離するような際、感光体ドラム8及び制振部材に傷を付けずに取り外すことも困難であった。更に、制振部材6、7と感光体ドラム8とが摩擦接触によって発生するゴミが感光体ドラム8の表面に付着することが予期され、このようなゴミが画像形成に悪影響を及ぼすという問題もあった。
【0011】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたもので、中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口が有る制振部材を、感光体ドラムの内壁に脱着する際、押し込み力をほとんど必要とせず、負荷なくスムーズに制振部材の脱着ができ、かつ制振材部材と感光体ドラムとが摩擦接触するために発生するゴミを排除した制振部材の脱着装置及び方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口を有する円筒形状の制振部材を、円筒状の感光体ドラムの内壁に脱着する制振部材の脱着装置において、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させる変形手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制振部材と感光体ドラム内壁の定位置に脱着する為の押当部材を有しており、且つ押当部材には吸引する吸引部材軸芯と制振部材軸芯を合わせる位置合わせ機構を有していることを特徴とする。請求項3に記載の発明は、中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口を有する円筒形状の制振部材を、円筒状の感光体ドラムの内壁に脱着する制振部材の脱着方法において、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させて脱着を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させる変形装置を有する制振部材の脱着装置により、作業時間の短縮並びに、作業精度向上可能で、ごみ付着が少ない感光体の制振部材の脱着が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の脱着装置の制振部材用吸引棒2の構成を示す斜視図であり、図2(a)は、本発明の制振部材用吸引棒2の構成を示す断面図である。
【0016】
制振部材用吸引棒2は、制振部材6、7を感光体ドラム8内壁の定位置に脱着する為の、制振部材用押当部材9を有している。また、制振部材用吸引棒2は、制振部材6、7を感光体ドラム8の内壁の定位置に脱着する為の感光体ドラム8用の押当部材5を有している。
【0017】
感光体ドラム8の外径をDA、制振部材6、7の外径をDB、制振部材6、7の内径をDC、制振部材6、7用の押当部材外径をDD、感光体ドラム8用の押当部材外径をDEとした場合、DE>DA>DB>DD>DCの関係にある。この理由は、吸引前の制振部材6、7の外径は感光体ドラム8との密着が要求されるため、感光体ドラム8の内径より大である必要があるからである。
【0018】
また制振部材用吸引棒2の内側は、中空であり、かつ両端が密閉されており、吸引ポート13及び送気ポート14を有している。更に、制振部材用吸引棒2には、吸引・送気孔12が1ヶ以上開いており、この孔12を介して吸引ポート13及び送気ポート14から制振部材6、7の内側の気体又は流体を吸引・送気する。送気孔12の孔径は、吸引・送気するのに抵抗とならない孔径とする。
【0019】
制振部材用吸引棒2は、制振部材6、7を感光体ドラム8内壁の定位置に脱着する為の、制振部材用押当部材9を有するが、本実施形態では制振部材用押当部材9は制振部材吸引棒2軸芯と制振部材6、7軸芯を合わせる位置合わせ機構を有している。図3は制振部材吸引棒2に制振部材6が定位置におかれた時の図である。位置合わせ機構は、制振部材用押当部材9の外周形状がテーパー形状となっており、制振部材用吸引棒2軸心と制振部材6、7軸心が同一になるようになっている。この事により、制振部材6、7を均一に吸引する事が出来る。なお、上記のような位置合わせ機構がない場合(例えば制振部材用押当部材9が円環状)は、制振部材6、7が制振部材用吸引棒2に対して偏って吸引されてしまう為、スムーズに感光体ドラム8の内壁に脱着することが出来ない場合も皆無とは言えない。また、制振部材7の様に一部開口のあるような物を対象とする場合については、図4の断面図に記載のように、上部位置合わせ部材15を設けるようにすれば、更に良い。
【0020】
なお、制振部材6、7の材質は、ブチルゴム、ニトリルゴム、天然ゴム等の、制振部材6、7の内側の気体又は流体の吸引・送気に対応できる柔軟な材質でなければならない。本発明の目的からして、弾性により密着効果及び制振効果が得られるのであるから柔軟な材質は必須である。
【0021】
また感光体ドラム8の内壁の定まった位置に制振部材を固定しておく為に、また接着工程を不要とする為にも、制振部材6、7の外径(DB)は、感光体ドラム8の内径よりやや大きめに外径を設定しておく必要がある。その為、感光体ドラム8の内径をD、上記制振部材6、7の外径をd(=DB)とした場合、D<d若しくは、D=dでなければならない。
【0022】
斯かる装置により、上記制振部材6、7を、制振部材用吸引棒2に挿し込み、その後吸引ポート13より制振部材内側の気体又は流体を吸引することにより、吸引前の通常状態における制振部材外径をd、吸引後の制振部材外径をd1とした場合、d>d1になる。制振部材の外径をdとした場合、吸引後の制振部材外径d1が、dの1〜5%、好ましくは5%〜10%、更に好ましくは、10%〜15%まで吸引変形させる。
【0023】
本発明はこのようにして感光体ドラム8の内壁に制振部材を脱着する点が特徴である。吸引が最適化されることで、挿入時のみならず、使用済みの感光体ドラム8のリサイクル時の制振部材6、7の抜き取り時にも活用できる。
【0024】
図5は、本発明の制振部材着脱用棒とこれに接続した吸引、送気系の構成図である。図6は、本発明の制振部材の吸引棒への装着時の説明図である。図7は、本発明の吸引棒の吸引操作による制振部材収縮を示す説明図である。
【0025】
図5に示すような制振部材6、7内側の中空部分を真空にさせる為の機構(変形手段)を有していることが好ましい。真空にさせる為の機構としては、例えば公知の技術であるエジェクタ1(一対のノズルとディフューザから構成され、ノズルからディフューザへ向かって高速流れを発生させて周囲の気体又は流体を吸引しディフューザから大気へ消音器等を介して排出される装置)を使用する。符号3は吸引用ハンドバルブを、符号4は真空解除用ハンドバルブを示す。
【0026】
制振部材6、7の内側の中空部分を真空にした後、真空部分に気体を充足解除する機構を有していることが好ましい。真空を充足解除する機構として例えば、常圧の大気圧を真空状態の中に送気する事によりタクトアップが図れる。
【0027】
[実施例]
以下、本発明の具体的態様を示すべく実施例並びに比較例をあげて本発明の効果を示す。これらは、本発明の一態様に過ぎずこれらに本発明の技術的範囲は限定されない。
外径60mm、内径57mm、長さ350mmのアルミニウムドラム上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を順次塗布した電子写真感光体ドラムに、制振部材外径58mm、内径45mm、長さ275mm、材質ブチルゴムで片端が密閉されているものを感光体ドラム片端より37.5mmの位置に制振部材が固定出来るように、感光体100本について、作業時間と押圧力を測定、かつごみの付着状況について確認した。
[実施例1]
図5に記載した脱着装置にて挿入実験を実施した。以下作業フローを示す。
先ず、吸引棒2に制振部材6、7を片端の開放されている方向から挿し込み、制振部材用の押当部材9に、制振部材6、7片端が当たるまで挿し込む(図6参照)。次に、吸引用ハンドバルブ3をONし、一旦圧縮エアーを送気する。続いてエジェクタ1をONし、制振部材6、7を縮めるために吸引ポート13より気体又は流体を吸引する。
制振部材6、7は、中空部分の気体又は流体が吸引され真空状態となる。これにより図7に示すように制振部材は収縮し外径51mmとなった。制振材変形度12%であった。感光体ドラム8を制振部材6、7外側より、吸引棒2の感光体ドラム用の押当部材5まで感光体ドラム片端が当たるまで挿し込む。これにより、感光体ドラム端より、制振部材端までの距離が37.5mmとなる(図7参照)。この後、吸引用ハンドバルブ3をOFF、エジェクタ1をOFFする。
真空解除用ハンドバルブ4をONし(送気ポートより圧縮エアー送気)、感光体ドラム内壁で真空状態が急速に解除され、制振部材6、7が元の外径に戻る。これにより、制振部材6、7の弾性によって、感光体ドラム8の内壁に制振部材6、7が密着、固定される。この状態を図9に示す。最後に真空解除用ハンドバルブ4をOFFにして、感光体ドラム8を取り出す。これにより感光体ドラム8の内壁には制振部材6、7が挿入されることになる。
[実施例2]
上記実施例1により挿入した制振部材を実施例1とは逆の要領で感光体ドラムから抜き取った。
【0028】
[比較例1]
図12に記載した従来の挿入装置にて挿入実験を実施した。以下に作業フローを示す。感光体ドラム8をドラムホルダー10に押し込み、制振部材6、7を押し込み棒11により制振部材6、7の片端の開放されている方向から押し込む。
次に、制振部材6、7を人手により感光体ドラム8の内壁に沿って押し込み、ドラムホルダー10に、制振部材6、7の片端が突き当たるまで押し込む。これにより、感光体ドラム8の端より、制振部材6、7の端までの距離が37.5mmとなる。この後、押し込み棒11を取り出し、感光体ドラム8を取り出すようにした。
[比較例2]
比較例1で挿入した制振部材6、7を比較例1と逆の要領で抜き取った。
確認結果を表1(挿入時)、表2(抜き取り時)に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の制振部材用吸引棒の構成を示す斜視図。
【図2】本発明の制振部材用吸引棒の構成を示す断面図。
【図3】本発明の制振部材用吸引棒に制振部材を装着した時の構成を示す断面図。
【図4】本発明の制振部材用吸引棒に上部位置合わせ部材を取付け、一部開口のある制振部材を装着した時の構成を示す断面図。
【図5】本発明の制振部材着脱用棒への吸引、送気系の構成図。
【図6】本発明の制振部材の吸引棒への装着時の説明図。
【図7】本発明の吸引棒の吸引操作による制振部材収縮を示した図。
【図8】本発明の制振部材と感光体ドラムの関係を示す構成図。
【図9】吸引操作解除による制振部材の感光体への密着を示す図。
【図10】片端密封型中空制振部材を示す構成図。
【図11】片端一部開口型中空制振部材の構成図。
【図12】従来の制振部材を感光体ドラムへ押込む動作の説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 エジェクタ
2 吸引棒
3 吸引用ハンドバルブ
4 真空解除用ハンドバルブ
5 感光体ドラム用押当部材
6 片端密閉制振部材
7 一部開口制振部材
8 感光体ドラム
9 制振部材用押当部材
10 ドラムホルダー
11 押し込み棒
12 吸引用孔
13 吸引ポート
14 送気ポート
15 上部位置合わせ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口を有する円筒形状の制振部材を、円筒状の感光体ドラムの内壁に脱着する制振部材の脱着装置において、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させる変形手段を有することを特徴とする制振部材の脱着装置。
【請求項2】
前記制振部材と感光体ドラム内壁の定位置に脱着する為の押当部材を有しており、且つこの押当部材には吸引する吸引部材軸芯と制振部材軸芯を合わせる位置合わせ機構を有していることを特徴とする請求項1に記載の制振部材の脱着装置。
【請求項3】
中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口を有する円筒形状の制振部材を、円筒状の感光体ドラムの内壁に脱着する制振部材の脱着方法において、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させて脱着を行うことを特徴とする制振部材の脱着方法。
【請求項1】
中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口を有する円筒形状の制振部材を、円筒状の感光体ドラムの内壁に脱着する制振部材の脱着装置において、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させる変形手段を有することを特徴とする制振部材の脱着装置。
【請求項2】
前記制振部材と感光体ドラム内壁の定位置に脱着する為の押当部材を有しており、且つこの押当部材には吸引する吸引部材軸芯と制振部材軸芯を合わせる位置合わせ機構を有していることを特徴とする請求項1に記載の制振部材の脱着装置。
【請求項3】
中空を有し、かつ片端が密閉若しくは一部開口を有する円筒形状の制振部材を、円筒状の感光体ドラムの内壁に脱着する制振部材の脱着方法において、制振部材の外径を通常状態における外径より1〜15%まで変形させて脱着を行うことを特徴とする制振部材の脱着方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−350321(P2006−350321A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138800(P2006−138800)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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