説明

割岩装置

【課題】小型で、汎用性と優れた作業効率を有する割岩装置を提供する。
【解決手段】割岩対象物5に設けられた削孔6に対して削孔6の深さ方向Zに挿脱自在で、かつ深さ方向Zとほぼ直交する直交方向Xにおいて互いに近接および離間自在な第1および第2押圧部材1、2と、削孔6に挿入された押圧部材1、2を互いに離間移動させて削孔6の内壁面を押圧する駆動機構3とが設けられている。そして、駆動機構3は、第1押圧部材1に取り付けられたシリンダー31と、シリンダー31の第2押圧部材側端部から直交方向Xに進退移動するピストン32とを有するジャッキ33であり、ピストン32が第2押圧部材側に駆動することによりピストン32が第2押圧部材2を直交方向Xに移動させて押圧部材1、2を互いに離間させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岩盤、岩石やコンクリート塊などの割岩対象物に形成された削孔に挿入されて割岩対象物を割岩する割岩装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の割岩装置は、例えば特許文献1に記載されているように、油圧ジャッキによって楔部材を進退させることで進退方向とほぼ直交する方向に開拡片を広げることが可能となっている。このため、割岩装置の開拡片を岩盤等の割岩対象物に形成した削孔に挿入した状態で、油圧ジャッキにより楔部材が下方に移動すると、楔部材が開拡片を径方向に外側へ移動する。そして、移動した開拡片が岩石の削孔内壁面を押圧し、岩石を割岩する。
【0003】
【特許文献1】特開平8−105288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の割岩装置では、割岩処理を行うために楔部材が削孔内に進行すると、楔部材の外側面が開拡片の内側面と摺接しつつ、開拡片を径方向に外側へ移動させる。したがって、削孔内での楔部材の移動量を十分に確保する必要がある。つまり、楔部材の先端部が開拡片の先端部を越えて削孔底部に向けて移動する構成となっていたため、次のような問題が生じていた。この装置を用いる場合、予め削孔を深く形成する必要があり、作業効率の面で問題があった。また、装置の大型化を招いていた。さらに言うと、削孔が浅い場合には、割岩処理が困難となっており、汎用性の面で問題があった。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、小型で、汎用性と優れた作業効率を有する割岩装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる割岩装置は、上記目的を達成するため、割岩対象物に設けられた削孔に対して挿脱自在で、かつ削孔の深さ方向とほぼ直交する直交方向において互いに近接および離間自在な複数の押圧部材と、削孔に挿入された押圧部材を互いに離間移動させて削孔の内壁面を押圧する駆動機構とを備え、駆動機構は、複数の押圧部材の間に設けられ、シリンダーに対してピストンを直交方向に進退移動させるジャッキで構成され、ピストンをシリンダーから直交方向に前進移動させて複数の押圧部材を互いに離間させることを特徴としている。
【0007】
このように構成された発明では、複数の押圧部材が削孔に挿入された状態で駆動機構が作動すると、ピストンがシリンダーから直交方向に前進移動して複数の押圧部材が互いに離間する。これによって、押圧部材が削孔の内壁面を押圧して割岩対象物の割岩が行われる。このように、ジャッキのピストンが直交方向に移動して割岩が行われるため、従来装置の特徴、つまり割岩処理を行うために割岩装置の一部が削孔の深さ方向に突出するという構成が必要なくなり、次のような作用効果が得られる。すなわち、装置の小型化を図ることができる。また、深い削孔はもとより、比較的浅い削孔に対しても割岩処理を行うことができ、汎用性に優れている。さらに、必要以上に削孔を深く設けることなく、割岩処理を効率的に行うことができる。
【0008】
ここで、押圧部材の個数、駆動機構を構成するジャッキの個数や構造などについては任意であり、次のような態様を採用することができる。第1の態様として、例えばシリンダーを複数の押圧部材と分離して設ける一方、各押圧部材ごとに、ピストンをシリンダーから直交方向に進退移動可能に設けるとともにピストンの先端部に押圧部材を取り付け、複数のピストンがシリンダーから直交方向に前進移動することで複数の押圧部材が互いに離間移動して削孔の内壁面を押圧するように構成してもよい。
【0009】
また、各押圧部材をピストンの先端部に対して揺動自在としてもよい。その理由は以下のとおりである。金属製品や木工製品などに対して孔を形成する場合、その孔の形状を精度良くコントロールすることができる。しかしながら、岩盤、岩石やコンクリート塊などの割岩対象物に対して削孔を形成する場合には削孔形状を正確にコントロールすることは難しく、削孔毎に削孔形状が異なっていることが多々ある。そこで、本発明では、ピストンの先端部に対して押圧部材を揺動自在に構成している。そのため、押圧部材が直交方向に駆動されて削孔内壁面に接触すると、その内壁面の形状に応じて押圧部材がピストンの先端部に対して揺動して押圧部材の外側面が内壁面に密着する。このように押圧部材が削孔の内壁面と密着した状態で内壁面を押圧するため、駆動機構により与えられる押圧力を効率的に割岩対象物に加えて割岩処理を良好に行うことができる。
【0010】
また、第2の態様として、複数の押圧部材として第1および第2押圧部材を設け、シリンダーを第1押圧部材に取り付ける一方、ピストンをシリンダーの第2押圧部材側端部から直交方向に進退移動可能に設け、ピストンが第2押圧部材側に駆動することによりピストンが第2押圧部材を直交方向に移動させて押圧部材を互いに離間させるように構成してもよい。
【0011】
このように構成された発明では、第1および第2押圧部材が削孔に挿入された状態で駆動機構が作動すると、第2押圧部材が直交方向に駆動されて押圧部材が互いに離間移動する。これによって、押圧部材が削孔の内壁面を押圧して割岩対象物の割岩が行われる。このように、ジャッキのピストンが直交方向に移動して割岩が行われるため、従来装置の特徴、つまり割岩処理を行うために割岩装置の一部が削孔の深さ方向に突出するという構成が必要なくなり、次のような作用効果が得られる。装置の小型化を図ることができる。また、深い削孔はもとより、比較的浅い削孔に対しても割岩処理を行うことができ、汎用性に優れている。さらに、必要以上に削孔を深く設けることなく、割岩処理を効率的に行うことができる。
【0012】
また、この第2の態様においても、第2押圧部材がピストンの先端部に対して揺動自在となるように構成してもよい。その理由は第1の態様と同一である。
【0013】
さらに、第3の態様として、複数の押圧部材として第1および第2押圧部材を設けるとともに、ジャッキとして第1および第2ジャッキを設けてもよい。ここでは、第1ジャッキとして、第1押圧部材に取り付けられた第1シリンダーと、第1シリンダーの第2押圧部材側端部から直交方向に進退移動する第1ピストンとを有するものを用い、また第2ジャッキとして、第2押圧部材に取り付けられた第2シリンダーと、第2シリンダーの第1押圧部材側端部から直交方向に進退移動する第2ピストンとを有するものを用いることができる。そして、第1ピストンの第2押圧部材側への駆動および第2ピストンの第1押圧部材側への駆動により第1および第2ピストンの先端部同士で押し合って押圧部材を直交方向に互いに離間させるように構成してもよい。
【0014】
このように構成された発明においても、上記第2の態様と同様に、第1および第2押圧部材が削孔に挿入された状態で駆動機構が作動することで押圧部材が互いに離間移動して削孔の内壁面を押圧して割岩対象物の割岩が行われる。ここで注目すべき点は、第2態様においては2つのジャッキを用いている点である。つまり、第1ピストンの第2押圧部材側への駆動および第2ピストンの第1押圧部材側への駆動により第1および第2ピストンの先端部同士で押し合って押圧部材を直交方向に互いに離間させる点である。このように2つのジャッキを用いることによって削孔の内壁面に与える押圧力が高まり、割岩性能を高めることができる。
【0015】
また、第1および第2ピストンの先端部の各々が互いに相手方に対して揺動自在となるように構成すると、押圧部材を削孔の内壁面と密着させた状態で内壁面を押圧させることができる。つまり、上記したように削孔形状を正確にコントロールすることは難しく、削孔毎に削孔形状が異なっていることが多々あるが、上記構成を採用することにより、削孔内壁面の形状に応じて各押圧部材がピストン先端部を中心として揺動し、内壁面に密着する。その結果、駆動機構により与えられる押圧力を効率的に割岩対象物に加えて割岩処理を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明にかかる割岩装置の一実施形態を示す図である。この割岩装置は、岩盤、岩石やコンクリート塊などの割岩対象物に形成された削孔に挿入されて割岩対象物を割岩するものであり、一対の押圧部材1、2と、駆動機構3とを備えている。これらの押圧部材1、2はともに削孔の深さ方向Zと平行に伸びる半円柱形状を有している(同図(a−1)、(a−2)参照)。また、各押圧部材1、2には、矩形平面の中央部において開口しながら凹部空間11、21が深さ方向Zと略直交する直交方向Xに広がるように形成されている。これらの凹部空間11、21は互いに対向している。そして、各矩形平面を密着させると、図1(a−1)に示すように、一対の押圧部材1、2は全体として円柱形状をとるとともに、その内部では凹部空間11、21からなる空間が形成される。こうして一体化された押圧部材1、2は後述するように削孔に対して挿脱自在で、しかも互いに近接および離間自在となっており、駆動機構3により駆動可能となっている。
【0017】
この駆動機構3は、第1押圧部材1に取り付けられたシリンダー31と、シリンダー31の第2押圧部材側端部(図1(b−1)、(b−2)の左側端部)から直交方向Xに進退移動するピストン32とを有する油圧ジャッキ33である。このように(+X)方向に伸びるピストン32の先端部には、固定部4の(−X)側先端部に設けられた球状頭部41が嵌め込まれており、固定部4はピストン32に対して揺動自在となっている。また、この固定部4の(+X)側端部42は略L字ブラケット43により第2押圧部材2に固着されている。したがって、球状頭部41がピストン32の先端部で摺動し、その摺動位置を中心として第2押圧部材2がピストン32の先端部に対して揺動自在となっている。
【0018】
なお、図1中の符号34、35は油圧ジャッキ33を駆動するための加圧ポートと戻りポートである。つまり、この実施形態では、複動形の油圧ジャッキ33を用いているが、ジャッキの構成についてはこれに限定されるものでない。例えばスプリング戻りを有する単動形の油圧ジャッキを用いてもよく、この場合には戻りポート35が不要となる。この点に関しては、後の実施形態についても全く同様である。
【0019】
次に、上記のように構成された割岩装置の動作について図2および図3を参照しつつ説明する。割岩装置による割岩処理を実行する場合、それに先立って、岩盤などの割岩対象物5に対して一対の押圧部材1、2を一体化させた際の直径寸法(例えば148mm)よりも若干大きな径(例えば150mm)の削孔6を形成する。そして、この削孔6に対して一対の押圧部材1、2を一体化させた状態で挿入する(図2(a−1))。このとき、ピストン32をシリンダー31側に後退させて一対の押圧部材1、2を一体化させている。
【0020】
削孔6への装着が完了すると、作業者が油圧コントローラ(図示省略)を操作してピストン32を(+X)方向に駆動する。これによって、図2(b−1)、(b−2)に示すように、第2押圧部材2が直交方向(+X)に駆動されて押圧部材1,2が互いに離間移動し、各押圧部材1、2が削孔6の内壁面を押圧して割岩対象物5の割岩が行われる。
【0021】
ところで、削孔6の断面形状を常に円形に仕上げることが困難であり、例えば図3(a)に示すように変形することがある。このような場合には、第2押圧部材2が(+X)方向に駆動されて削孔6の内壁面に接触すると、その内壁面の形状に応じて第2押圧部材2がピストン32の先端部に対して揺動して第2押圧部材2の外側面が内壁面に密着する(同図(b))。また、第1押圧部材側も同様である。これらは、球状頭部41がピストン32の先端部で摺動し、その摺動位置を中心として第2押圧部材2がピストン32の先端部に対して揺動自在となっているからである。このように押圧部材1、2が削孔6の内壁面と密着した状態で内壁面を押圧するため、油圧ジャッキ33により与えられる押圧力を効率的に割岩対象物5に加えて割岩処理を行っている。
【0022】
割岩処理が完了すると、上記と逆の手順で削孔6から一対の押圧部材1、2を取り除く。
【0023】
以上のように、この実施形態によれば、油圧ジャッキ33のピストン32が直交方向Xに移動して割岩が行われるため、割岩処理を行うために割岩装置の一部を削孔6の深さ方向Zに突出するという構成が不要となっている。その結果、(1)装置の小型化を図ることができる、(2)深い削孔6はもとより、比較的浅い削孔6に対しても割岩処理を行うことができ、汎用性に優れている、(3)必要以上に削孔を深く設けることなく、割岩処理を効率的に行うことができる、という種々の作用効果が得られる。
【0024】
また、第2押圧部材2がピストン32の先端部に対して揺動自在に構成しているため、常に押圧部材1、2を削孔6の内壁面に密着させた状態で内壁面を押圧することができる。その結果、油圧ジャッキ33により与えられる押圧力を効率的に割岩対象物5に加えて割岩処理を良好に行うことができる。
【0025】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態では、固定部4の球状頭部41がピストン32の先端部に嵌め込んでいるが、ピストン32の先端部を球状に仕上げ、固定部4の(−X)側端部に嵌め込むように構成してもよい。
【0026】
また、上記実施形態では、固定部4の球状頭部41がピストン32の先端部に嵌め込んで一対の押圧部材1、2を常に連結状態に保っているが、連結状態を維持することは本発明の必須事項ではなく、例えば図4に示すように一対の押圧部材1、2を非連結状態に設けてもよい。
【0027】
図4は本発明にかかる割岩装置の他の実施形態を示す図である。この実施形態では、ピストン32の先端部321を球状に仕上げる一方、第2押圧部材2では凹部空間21の中央底部に半球状の凹部22が形成されている。そして、一対の押圧部材1、2を一体化させた際に球状先端部321が半球状凹部22に嵌合され、その嵌合位置を中心として第2押圧部材2がピストン先端部321に対して揺動自在となっている。
【0028】
このように構成された割岩装置を用いて割岩処理を行う場合、削孔6に割岩装置をセットする前に、球状先端部321が半球状凹部22に嵌合させながら互いに分離している一対の押圧部材1、2を一体化させる。そして、一体化したまま押圧部材1、2を削孔6に挿入した後、先の実施形態と同様にして割岩処理を実行する。この実施形態においても、半球状凹部と球状凸部との形成位置を逆転させてもよい。すなわち、第2押圧部材2に球状頭部41を有する固定部4を固着する一方、球状頭部41に嵌合可能な球状凹部を、第1押圧部材1において設けてもよい。
【0029】
ところで、上記実施形態では、1本のジャッキ33を用いて割岩処理を行っているが、複数のジャッキにより駆動機構3を構成してもよい。これにより、削孔6の内壁面に与える押圧力が高まり、割岩性能を高めることができる。例えば、図5に示す装置では、第1押圧部材1側に第1ジャッキ33Aが設けられており、加圧ポート34Aおよび戻りポート35Aを介して油圧制御することで第2ジャッキ33Aを駆動可能となっている。また、第2押圧部材2側にもジャッキ33Bが設けられており、加圧ポート34Bおよび戻りポート35Bを介して油圧制御することでジャッキ33Bを駆動可能となっている。さらに、ジャッキ33Aのピストン32Aの先端部はラウンド形状の凸部321Aに仕上げられる一方、ジャッキ33Bのピストン32Bの先端部321Bは凸部321Aに嵌合可能な凹部形状に仕上げられおり、両者が嵌合しながら摺動して押圧部材1、2が互いに嵌合部分を中心に揺動自在となっている。
【0030】
このように構成された割岩装置を用いて割岩処理を行う場合、削孔6に割岩装置をセットする前に、ピストン先端部321A、321Bを嵌合させながら互いに分離していている一対の押圧部材1、2を一体化させる。そして、一体化したまま押圧部材1、2を削孔6に挿入した後、ジャッキ33A、33Bをともに駆動してピストン32A、32Bを前進させる。これによって、両ジャッキ33A、33Bの駆動力を合計した押圧力で押圧部材1、2が削孔6の内壁面を押圧することとなる。その結果、図1等の割岩装置に比べて割岩性能を高めることができる。
【0031】
さらに、図4や図5に示す割岩装置では、押圧部材1、2は非連結状態となっているため、削孔6に挿入する前に一体化させる必要がある。この際の作業性を高めるために、押圧部材1、2の少なくとも一方に永久磁石を設けたり(図4、図5)、ピストン32の先端部321と凹部22の少なくとも一方に永久磁石を設けたり(図4)、ピストン32A、32Bの先端部321A、321Bの少なくとも一方に永久磁石を設け(図5)、磁力により一体化をアシストするように構成してもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、一対の押圧部材1、2を1組のみ削孔6に挿入して割岩処理を行っているが、例えば図6に示すように連結部材7Aにより複数(ここでは3個)の押圧部材1を、また連結部材7Bにより複数(ここでは3個)の押圧部材2を連結して複数組の押圧部材対を削孔6に挿入して割岩処理を行ってもよい。このように削孔6の深さに応じて押圧部材対の個数を設定することができ、優れた汎用性が得られる。
【0033】
図7は本発明にかかる割岩装置のさらに他の実施形態を示す図である。また、図8は図7に示す割岩装置のA−A線断面図である。さらに図9は図7の割岩装置の動作を示す図である。この実施形態では、駆動機構3はシリンダー31から複数のピストンを直交方向に進退移動可能な油圧ジャッキ33で構成されている。すなわち、油圧ジャッキ33では、シリンダー31の(+X)側端部から第1ピストン32Aが3本直交方向Xに進退自在に設けられる一方、シリンダー31の(−X)側端部から第2ピストン32Bが3本直交方向Xに進退自在に設けられている。また、これらのピストン32A、32Bの先端部には第1および第2押圧部材1、2がそれぞれボルト8によって取り付けられている。そして、加圧ポート34を介して油圧をシリンダー31に送り込むことで図9(b)に示すようにピストン32A,32Bがシリンダー31から直交方向Xに前進移動する。これによって第1および第2押圧部材(ヘッド)1、2が互いに離間移動して削孔6の内壁面を押圧可能となっている。また、この実施形態では、ピストン32A,32Bを元に戻すべく、戻りバネ35がピストン32A,32Bの凹部に挟まれた領域に配置されるとともに、戻りバネ35の両端部がそれぞれピストン32A,32Bの凹部内底部に固定されている。このように本実施形態では、戻りバネ機構(スプリング戻り)を採用した単動形の油圧ジャッキ33を用いているが、第1実施形態と同様に、戻りポートを設けた複動形の油圧ジャッキ33を用いてもよい。なお、第1ピストン32Aおよび第2ピストン32Bの本数はそれぞれ「3本」に限定されるものではなく、任意である。また、この実施形態では、ピストン32A,32Bをそれぞれ3本ずつ設けていることに対応して3個の戻りバネ35を用いているが、戻りバネ35の個数や配置などについても任意である。
【0034】
このように構成された割岩装置による割岩処理を実行する場合、それに先立って、岩盤などの割岩対象物5に対してピストン32A、32Bを後退させた状態での直径寸法D(図8)よりも若干大きな径の削孔6を形成する。そして、この削孔6に対して両ピストン32A、32Bを後退させた状態で挿入する(図9(a))。
【0035】
削孔6への装着が完了すると、作業者が油圧コントローラ(図示省略)を操作して第1ピストン32Aを(+X)方向に駆動するとともに、第2ピストン32Bを(−X)方向に駆動する。これによって、図9(b)に示すように、第1押圧部材1が直交方向(+X)に駆動されるとともに第2押圧部材2が直交方向(−X)に駆動されて押圧部材1,2が互いに離間移動して削孔6の内壁面を押圧する。これによって、割岩対象物5の割岩が行われる。なお、割岩処理が完了すると、上記と逆の手順で削孔6から一対の押圧部材1、2を取り除く。
【0036】
以上のように、この実施形態においても、油圧ジャッキ33のピストン32A、32Bがシリンダー31から直交方向Xに移動して割岩が行われるため、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。つまり、割岩処理を行うために割岩装置の一部を削孔6の深さ方向Zに突出するという構成が不要となっており、(1)装置の小型化を図ることができる、(2)深い削孔6はもとより、比較的浅い削孔6に対しても割岩処理を行うことができ、汎用性に優れている、(3)必要以上に削孔を深く設けることなく、割岩処理を効率的に行うことができる、という種々の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
岩盤、岩石やコンクリート塊などの割岩対象物に形成された削孔に複数の押圧部材を挿入し、それらの押圧部材を削孔の深さ方向に対して略直交する方向に互いに離間して割岩対象物を割岩する割岩装置全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる割岩装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の割岩装置の動作を示す図である。
【図3】図1の割岩装置の動作を示す図である。
【図4】本発明にかかる割岩装置の他の実施形態を示す図である。
【図5】本発明にかかる割岩装置の別の実施形態を示す図である。
【図6】本発明にかかる割岩装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【図7】本発明にかかる割岩装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【図8】図7に示す割岩装置の断面図である。
【図9】図7の割岩装置の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1、2…押圧部材
3…駆動機構
5…割岩対象物
6…削孔
31…シリンダー
32、32A、32B…ピストン
33、33A、33B…油圧ジャッキ
321、321A、321B…ピストン先端部
X…直交方向
Z…深さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
割岩対象物に設けられた削孔に対して挿脱自在で、かつ前記削孔の深さ方向とほぼ直交する直交方向において互いに近接および離間自在な複数の押圧部材と、
前記削孔に挿入された前記押圧部材を互いに離間移動させて前記削孔の内壁面を押圧する駆動機構とを備え、
前記駆動機構は、前記複数の押圧部材の間に設けられ、シリンダーに対してピストンを前記直交方向に進退移動させるジャッキで構成され、前記ピストンを前記シリンダーから前記直交方向に前進移動させて前記複数の押圧部材を互いに離間させることを特徴とする割岩装置。
【請求項2】
前記シリンダーは前記複数の押圧部材と分離して設けられ、
各押圧部材ごとに、前記ピストンが前記シリンダーから前記直交方向に進退移動可能に設けられるとともに前記ピストンの先端部に前記押圧部材が取り付けられ、
前記複数のピストンが前記シリンダーから前記直交方向に前進移動することで前記複数の押圧部材が互いに離間移動して前記削孔の内壁面を押圧する請求項1記載の割岩装置。
【請求項3】
各押圧部材は前記ピストンの先端部に対して揺動自在となっている請求項2記載の割岩装置。
【請求項4】
前記複数の押圧部材として第1および第2押圧部材を有し、
前記シリンダーは前記第1押圧部材に取り付けられる一方、前記ピストンは前記シリンダーの前記第2押圧部材側端部から前記直交方向に進退移動可能に設けられ、
前記ピストンが前記第2押圧部材側に駆動することにより前記ピストンが前記第2押圧部材を前記直交方向に移動させて前記押圧部材を互いに離間させる請求項1記載の割岩装置。
【請求項5】
前記第2押圧部材は前記ピストンの先端部に対して揺動自在となっている請求項4記載の割岩装置。
【請求項6】
前記複数の押圧部材として第1および第2押圧部材を有するとともに、前記ジャッキとして第1および第2ジャッキを有し、
前記第1ジャッキは、前記第1押圧部材に取り付けられた第1シリンダーと、前記第1シリンダーの前記第2押圧部材側端部から前記直交方向に進退移動する第1ピストンとを有し、
前記第2ジャッキは、前記第2押圧部材に取り付けられた第2シリンダーと、前記第2シリンダーの前記第1押圧部材側端部から前記直交方向に進退移動する第2ピストンとを有し、
前記第1ピストンの前記第2押圧部材側への駆動および前記第2ピストンの前記第1押圧部材側への駆動により前記第1および第2ピストンの先端部同士で押し合って前記押圧部材を前記直交方向に互いに離間させる請求項1記載の割岩装置。
【請求項7】
前記第1および第2ピストンの先端部の各々は、互いに相手方に対して揺動自在となっている請求項6記載の割岩装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−91884(P2009−91884A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320544(P2007−320544)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(399048869)株式会社神島組 (10)
【Fターム(参考)】