説明

力保持機能付きリニアアクチュエータ

【課題】機械的に力を保持可能とすることにより、必要に応じてモータをオフして省エネルギーを実現し得る力保持機能付きリニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】移動シリンダ20を、力を加える対象物に係合させ、モータ30を回転させることによりボールねじ機構40を介して、移動シリンダ20をベース部材10に対して直線移動させて対象物に加える力を調整する構成で、前記ボールねじ機構40の回転駆動系に、正回転を許容し、かつ逆回転を阻止する逆転防止機構60を設け、逆転防止機構60により、モータ30がオフした状態で、対象物に加えている力の反力として移動側部材20からボールねじ機構30の回転系に伝達される逆回転力を保持可能としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばカットソーのテンション調整等に利用可能なリニアアクチュエータに関し、特に力を保持する力保持機能の付いたリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のテンション調整用に用いられるリニアアクチュエータとしては、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。
すなわち、固定側部材に設けられるモータの回転運動を移動側部材の相対的な直線運動に変換して移動側部材を直線移動させる運動変換機構を有しており、移動側部材を、対象物に係合させ、モータを回転させることにより、移動側部材を固定側部材に対して直線移動させて対象物を変位させ、対象物に加える力を調整する構成となっている。
【0003】
運動変換機構としては、効率の高いボールねじ機構が用いられるが、ボールねじ機構の場合は、軸方向力が回転力に変換される逆作動があるために、リニアアクチュエータでテンションを一定に維持するためには、逆作動力を保持するために、電動モータを常時オンとする必要があり、電力が無駄に消費されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−008193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、逆作動力を機械的保持可能とすることにより、必要に応じてモータをオフして省エネルギーを実現し得る力保持機能付きリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、相対的に直線移動自在に組み付けられる2部材と、
該2部材のうちの一方の部材を固定して固定側部材とし、他方の部材を前記固定側部材に対して直線方向に移動する移動側部材とすると、前記固定側部材と移動側部材のうちの一方の部材側に設けられるモータの回転運動を他方の部材の相対的な直線運動に変換して前記移動側部材を固定側部材に対して直線移動させる運動変換機構と、を有し、
前記移動側部材を、力を加える対象物に係合させ、前記モータを回転させることにより前記移動側部材を固定側部材に対して直線移動させて対象物に加える力を調整する構成となっており、
前記運動変換機構にモータ側から入力される回転運動方向として、前記運動変換機構を介して前記対象物に加える力を増大させる方向を正回転方向とすると、前記運動変換機構のモータ側の回転機構に、正回転を許容し、かつ逆回転を阻止する逆転防止機構を設け、
該逆転防止機構により、モータがオフした状態で、前記対象物に加えている力の反力として前記移動側部材から運動変換機構の回転機構に伝達される逆作動力を保持可能としたことを特徴とする。
【0007】
前記対象物に作用する力が予め設定された力に達するとモータを自動的にオフする制御手段を有する構成としてもよい。
直線運動機構の回転部分と回転防止機構との間に、トルクを軽減させる減速機構を設け
てもよい。
また、対象物に加える力を検出する力検出手段を設けてもよい。
また、力検出手段は、前記対象物に加える力の反力として、前記移動側部材から運動変換機構を介して固定側部材に至るまでの力伝達経路に作用する内力を検出する構成とすることができる。
この力検出手段は、対象物に加える力の反力に応じて弾性変形して軸方向に伸縮する弾性変形部と、弾性変形部の伸縮量を検知する伸縮量検知部と備えた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、逆転防止機構によって逆作動力を機械的に保持することができるので、モータを駆動する必要の無いときにはモータをオフしておけばよく、消費エネルギーを低減することができる。
所定の力に達するとモータをオフする構成としておけば、消費エネルギーを低減しつつ、対象物に加える力を所定の力に保持することができる。
さらに、減速機構を介して逆転防止機構に逆作動力を伝達すれば、逆転防止機構によって保持する力を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る力検出機能付きリニアアクチュエータを示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図2】図2(A)は図1の装置を先端側から見た側面図、(B)は図1の装置の逆回転防止機構の一例を示す図である。
【図3】図3は図1の装置の近接スイッチと対象物間の関係を示す図、(B)は近接スイッチのオン・オフタイミングを示す模式的に示す図、(C)はモータの制御フローを示す図である。
【図4】図4(A)は図1の力検出機能付きリニアアクチュエータをテンション調整装置に適用した構成の全体構成例を示す図、(B)は逆回転防止機構の他の配置例を示す概略図、(C)は図4に示す実施の形態2に係る逆転防止機構を示す図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態2に係る力検出機能付きリニアアクチュエータの他の実施形態を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係る力保持機能付きリニアアクチュエータの構成を示している。
図において、1は力保持機能付きリニアアクチュエータ全体を示すもので、この力保持機能付きリニアアクチュエータ1は、相対的に直線移動自在に組み付けられる2部材として、ベース部材10と、移動シリンダ20とを有している。この実施の形態では、ベース部材10が基盤等に固定される固定側部材であり、移動シリンダ20が移動側部材である。
【0011】
ベース部材10と移動シリンダ20の間には、モータ30の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構としてのボールねじ機構40が設けられている。この実施例では、ベース部材10にモータ30が設けられ、ボールねじ機構40によって、モータ30の回転運動を移動シリンダ20の相対的な直線運動に変換して移動シリンダ20をベース部材10に対して直線移動させるようになっている。
そして、移動シリンダ20を、力を加える対象物100に係合させ、モータ30を回転させることにより、移動シリンダ20をベース部材10に対して直線移動させて対象物100に加える力を調整する構成となっている。
【0012】
ベース部材10は、ボールねじ機構40の軸方向に延びるコ字型断面の長尺部材で、板状のベース底壁11と、ベース底壁11の左右側縁に沿って立ち上がる一対の側壁12,13とを備えている。
移動シリンダ20は、ベース部材10に、直線案内機構50を介して直線方向に移動自在に組み付けられている。直線案内機構50は、ベース部材10のベース底壁11の中央に固定される一本の軌道レール51と、軌道レール51に対して不図示のボール等の転動体を介して移動自在に組み付けられる一つの移動ブロック52とを備えた直線転がり案内装置が用いられている。この直線案内機構50に案内されて移動シリンダ20は直線方向に移動される。
【0013】
移動シリンダ20は、内部にボールねじ機構40のボールねじ軸41がほぼ全長にわたって挿入可能な長さを有する中空の収納空間21を備えた円筒状部材で、その側面が直線運動案内機構50の移動ブロック52に固定されている。
この移動シリンダ20が対象物100に向かって近づく方向を前進方向、対象物100から後退して遠ざかる方向を後退方向とすると、後方向の端部には円板状の後端壁22が設けられ、後端壁22にナット42が固定されている。ナット42は、ナット本体42aが後端壁22に設けられた孔から収納空間21内に挿入され、ナット42の後端のフランジ部42bが後端壁22に固定されている。これにより、ナット42は、移動シリンダ20を介して直線運動案内機構50の移動ブロック52に固定され、回転方向には移動不能となり、移動シリンダ20と共に軸方向にのみ移動可能可能に構成される。また、移動シリンダ20の前端は、円板状の前端壁23が設けられている。
【0014】
ボールねじ機構40のボールねじ軸41とボールナット42は、不図示のボールを介して互いに螺合する構成となっている。移動シリンダ20の中空孔に挿入されるボールねじ軸41は、その後端部がナット42の後端から後方に突出し、軸端部がベース部材10上に取り付けられた軸受台14に、回転軸受15を介して、回転自在に支持されている。一方、移動シリンダ20の中空空間21内に挿入されている部分は、前端部が自由状態で挿入されており、ボールナット42が固定される移動シリンダ20を支持する直線案内機構50を介して、ボールナット42及び移動シリンダ20の中心軸と同軸的に位置決めされた状態で組み付けられている。
一方、軸受台15から後方に突出する軸端部41aが、カップリング16を介してモータ30の出力軸31に作動連結されている。
【0015】
モータ30は電動のギヤードモータであり、モータ本体32と、内部に歯車減速機33を備えたギヤボックス34を有し、出力軸31がギヤボックス34から突出している。この歯車減速機33による減速比は、たとえば、50:1に構成されている。歯車減速機33の構成は特に限定されない。
モータ30は、ギヤボックス34に設けられた取付けブラケット35を介してベース部材10のベース底壁11に固定されている。モータ30の出力軸31とボールねじ軸41は一直線上に同軸的に位置決めされている。
【0016】
ボールねじ機構40の回転部分であるボールねじ軸41にモータ30側から入力される回転運動方向として、ボールねじ機構40を介して対象物100に加える力を増大させる方向を正回転方向Aとすると、ボールねじ機構40の減速機構33の上流側に、ボールねじ機構40の回転部分であるボールねじ軸41の正回転を許容し、かつ逆回転を阻止する逆転防止機構60が設けられている。
この逆転防止機構60により、モータ30がオフした状態で、対象物100に加えている力の反力として移動シリンダ20に固定されたボールナット42からボールねじ機構40の回転部分であるボールねじ軸41に伝達される逆作動力を保持可能としている。
【0017】
この逆転防止機構60は、ボールねじ機構40への入力側の回転駆動系に設けられるもので、この実施の形態では、モータ本体32後方に突出するロータ軸36に取り付けられている。すなわち、ボールねじ機構40のボールねじ軸41に対して減速機構33の上流側に配置されることになる。
この実施の形態では、モータ30としてギヤードモータを用いているので、モータ本体32の後方に設けているが、減速機構33の上流側に配置していればよく、図4(B)に示すように、減速機構の無いモータ130の場合、減速機構133とモータ130の間に配置するようにすることもできる。
【0018】
逆転防止機構60は、たとえば、図2(B)に示すような、ラチェット機構が適用される。すなわち、電動モータ30のロータ軸36に連結されるラチェット歯車61と、ラチェット歯車61の歯に係合する揺動自在の爪62とを備えている。ラチェット歯車61の歯は周方向に沿って一方に傾けられており、一方向の回転方向(正回転方向A)には、爪62は歯に噛み合うことなく回転を許容し、他方向の回転方向(逆回転方向B)には、爪62は歯の側面に噛み合って回転を阻止する一方向クラッチ機構を構成している。
【0019】
このラチェット機構は一例であって、逆転防止機構60としては、逆転を防止する構造であればよく、たとえば、爪が歯車に対して単に係合して逆転を防止し、正回転方向には爪が離脱するような構成となっていてもよいし、逆転を阻止する構成であれば、他の種々構成が採用可能である。
【0020】
一方、移動シリンダ20の前端壁23には、対象物100に加える力を検出するための力検出部70が設けられ、この力検出部70からの検出信号が、電動モータ30の制御部80に入力され、制御部80によって電動モータ30の駆動が制御される。制御部80は、たとえばコンピュータ処理であり、力検出部70からの信号を読み込んで、メモリに予め記憶されたプログラムに基づいて、演算処理され、モータ30のオン・オフ制御をおこなうようになっている。
この力検出部70は、対象物100に加える力の反力に応じて軸方向に弾性変形する弾性変形部としての検出ばね71と、この検出ばね71の伸縮量を検知する伸縮量検知部としての近接スイッチ72とを備えている。
【0021】
検出ばね71は、図示例ではコイルばねが用いられ、一端が移動シリンダ20の前端壁23に固定され、対象物100に係合する係合端部が自由端となっている。また、この移動シリンダ20の前端壁23には、近接スイッチ72がスイッチ支持部73を介して取り付けられている。近接スイッチ72は、検出ばね71の係合端が係合する対象物100の端面に対向するように配置されている。この近接スイッチ72は、自由状態の検出ばね71の係合端よりも所定距離だけ前端壁23に近い位置に配置されている。
【0022】
図3(A)、(B)には、近接スイッチ72のオン・オフするタイミング、(C)には、モータの制御フローが示されている。
すなわち、対象物100に加えた力の反力が所定値より小さい場合には、検出ばね71の弾性変形量は小さく、近接スイッチ72と対象物100間の距離は離れていて近接スイッチ72はオフ状態である。この状態では、電動モータ30はオン状態に保持され、ボールねじ軸41が正作動方向Aに駆動され、移動シリンダ20を前進させる。この移動シリンダ20によって対象物100が押され、その反力が増大し、検出ばね61の圧縮量が大きくなって、対象物100が徐々に近接スイッチ72に近づいていく。
押圧力の反力Fが所定の大きさ(F)に達して、近接スイッチ72と対象物100間の距離が所定距離xbまで近づくと、近接スイッチ72がオンとなり、検出信号をモータ30の制御部80に送信し、検出信号に基づいて、モータ30への通電をオフとする。
【0023】
このように対象物100からの反力が所定値に達してモータ30がオフとなった状態では、ボールねじ機構40のボールねじ軸41に作用する逆作動トルクは、モータ30の出力軸31から減速機構33を通じて逆転防止機構60に伝達され、逆転防止機構60によって保持される。この逆転防止機構60に作用する逆作動トルクは、減速機構33の減速比に対応して小さく、小さい力で対象物100に加えている力を機械的に保持することができる。
【0024】
経時変化によって対象物100からの押圧反力が低下すると、リニアアクチュエータの力検出部70において近接スイッチ72と対象物100間の距離が再び離れ、押圧反力がFまで低下して近接スイッチ72と対象物100間の距離が所定距離xaまで離れると、近接スイッチ72がオフとなる。このオフ信号が制御部80に送られ、制御部80によってモータ30がオンされる。モータ30の再回転によって移動シリンダ20が前進して押圧力が所定の大きさFまで増大し(図3(B)参照)、所定距離xbに達すると、近接スイッチ72がオンとなり、再びモータ30をオフさせる。この動作を繰り返して、所定範囲の押圧力を維持する。
近接スイッチ72にはヒステリシスがあり、オン、オフする距離が異なっている。たとえば、4tで、xaが1.6mmとなってオフ、3.95tで、xbが8mmでオフとなるように設定されている。
【0025】
この近接スイッチ72は、予め定められた所定の伸縮量に達したかどうかを検知するものであるが、近接スイッチ72に限定されるものではなく、機械的なスイッチであってもよい。また、リニアスケールのように伸縮量を連続的に検出し、制御部80で所定の伸縮量に達したかどうかを演算するようにしてもよい。
【0026】
なお、力検出部70の設置位置としては、移動シリンダ20の前端壁23に限るものではなく、対象物100に加える力の反力として、移動シリンダ20から運動変換機構40を介してベース部材10に至るまでの軸力の力伝達経路のいずれかに設ければよい。
なお、力検出部70として機械的なスイッチやセンサを設けるのではなく、モータ30への制御電流を読み込み、制御部80において負荷トルクを演算し、負荷トルクから移動シリンダ20によって加えている力を演算するようにしてもよい。
【0027】
図4(A)には、この力保持機能付きリニアアクチュエータを、バンドソーのテンション調整装置に適用した例を示している。
図示例では、可撓性で無端状のバンドソー103がテンションローラ101と固定ローラ102間に巻き掛けられ、テンションローラ101を固定ローラ102との間隔を広げる方向に移動させることにより、バンドソー103のテンションを増大させる構成となっており、このテンションローラ101の支持部材101aが、図1の対象物100に相当する。
【0028】
[実施の形態2]
図5には、本発明の実施の形態2に係る力保持機能付きリニアアクチュエータを示している。以下の説明では、主として上記実施の形態1と異なる点のみを説明し、同一の構成部分については同一の符号を付して説明する。
【0029】
上記実施の形態1では、モータ30とボールねじ機構40を直列配置としているが、この実施の形態2では、モータ30とボールねじ機構40を並列配置とし、全長を短くしている点と、対象物200に加える力が引張り力となっている点で相違している。
すなわち、この実施の形態では、モータ30の出力軸31と、ボールねじ軸41の軸端部41a間が、動力伝達機構110を介して連結されている。この例では、伝動ベルトあ
るいはチェイン等の巻き掛け伝動部材111が、出力軸31及びボールねじ軸41に装着されたプーリーやスプロケット等の伝動輪に巻き掛けられている。もちろん、動力伝達機構110としては、歯車等の駆動伝達系を利用してもよい。
【0030】
一方、移動シリンダ20の前端壁23には、図示例では、力検出部170を備えた引張りアタッチメント90が設けられている。この引張りアタッチメント90は、移動シリンダ20の前端壁23に出没する引張り軸91と、引張り軸91の収納空間21内に挿入される挿入端から張り出すフランジ部92と、を備えている。引張り軸91には、ねじ91aが切られており、対象物にねじ連結される構成となっている。もちろん、ねじ91aに限定されるものではなく、要するに引張り力を加えることができる構成であれば、フック形状等、種々の構成を採用することができる。
力検出部170は、移動シリンダ20の収納空間21内において、フランジ部92と前端壁23間に介装される検出ばね171と、フランジ部92に対向して配置される近接スイッチ172とを備えている。
【0031】
検出ばね171はコイルスプリングであり、移動シリンダ20を後退させて対象物200に引張り力を加えると、その反力によって検出ばね171が収縮し、フランジ部92が前端壁23に近づく。このフランジ部92の位置を近接スイッチ172で検出し、フランジ部92が前端壁23に所定量近づくと、近接スイッチ172がオンとなる。
この実施の形態2では、モータ30を回転させることにより移動シリンダ20をベース部材10に対して直線移動させて対象物200に加える引っ張り力が調整される。
ボールねじ機構40にモータ30側から入力される回転運動方向としては、実施の形態1とは逆に、ボールねじ機構40を介して対象物200に加える引っ張り力を増大させる方向が正回転方向であり、逆転防止機構160は、引っ張り力を増大させるボールねじ軸41の正回転を許容し、かつ逆回転を阻止するようになっている。
【0032】
図4(D)には、逆転防止機構160の概略構成が示されている。
この逆転防止機構160は、逆転防止状態を解除する解除機構が設けられた例で、ラチェット歯車161と、このラチェット歯車161を挟むように互いに平行に一対設けられる第1爪レバー162と第2爪レバー163とを備えている。第1爪レバー162と第2爪レバー163は、同じ側の端部が回転自在に支持され、中途部に設けられた第1爪162aと第2爪163aラチェット歯車161側に押し付ける方向に常時付勢する付勢ばね164で連結されている。
【0033】
また、第1爪レバー162と第2爪レバー163間には、第1爪レバー162と第2爪レバー163の間隔を広げる方向に駆動するソレノイド165,166が設けられ、ソレノイド165,166によって第1爪レバー162と第2爪レバー163を押し広げて係合状態を解除する。この対向する各第1爪162aと第2爪163aの向きは、互いに逆向きになっている。
ラチェット歯車161の外周には、鋸刃状に周方向一方の係合面には爪が引っ掛かって回転を阻止し、他方の係合面には爪が引っ掛からないように構成され、係合した状態で、一方向の回転を許容し、他方向の回転を阻止するように構成されている。
そして、ソレノイド165、166によって、ラチェット歯車161のロック状態を電気的に解除できるように構成されている。解除機構としては、ソレノイドに限定されず、手動によって解除できるようにしておいてもよい。
【0034】
この実施の形態2でも、逆転防止機構160により、モータ30がオフした状態で、対象物200に加えている力の反力として移動シリンダ20からボールねじ機構40の回転部分であるボールねじ軸41に伝達される逆作動力を保持可能となっている。
なお、上記実施の形態1では、圧縮力を加える場合について、実施の形態2では引張り
力を加える例について説明したが、上記実施の形態1において、実施の形態2のように引張りアタッチメントを用いて引張り力を加える構成としてもよいし、実施の形態2において、実施の形態1のように圧縮力を加える構成とすることもできる。
【0035】
また、実施の形態1では、モータ30とボールねじ機構40を直列配置としているが、実施の形態2のように並列配置としてもよいし、図4に示す実施の形態2において、図1に示すような直列配置してもよい。
【0036】
また、上記各実施の形態では、モータのロータ軸側に逆転防止機構を連結する構成としたが、たとえば、減速ギアがついていないモータの場合、モータの出力側で、減速ギアとモータの間に配置してもよい。また、作用する力が小さい場合には、減速機構が無くてもよい。
【0037】
さらに、上記各実施の形態では、固定側部材にモータを配置しているが、モータが移動側部材に取り付けられていてもよい。固定側部材と移動側部材は、相対的に直線移動する部分であり、いずれを固定側としてもよい。
また、上記各実施の形態では、ボールねじ機構のボールねじ軸を回転側として、ボールナット側を直線移動側として構成しているが、ボールナット側を回転側と、ボールねじ軸側を移動側として構成することも可能である。
【0038】
さらに、運動変換機構としては、ボールねじ機構に限定されるものではなく、たとえば、ピニオンの回転運動をラックの直線運動に変換するようなラックとピニオンの組み合わせのように、モータ側に逆作動力が作用するような運動変換機構に広く適用することができる。
なお、上記実施の形態では、本発明の力保持機能付きリニアアクチュエータの使用例としてテンション調節装置に適用する場合を例示したが、テンション調節装置に限定されるものではなく、対象物に押圧力や引張り力を加え続けるような各種装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 リニアアクチュエータ
10 ベース部材(固定側部材)
20 移動シリンダ(移動側部材)、21 収納空間
30 モータ、31 出力軸、32 モータ本体
33 減速機構、34 ギヤボックス、36 ロータ軸
40 運動変換機構、41 ボールねじ軸、42 ボールナット
50 直線運動案内機構、51 軌道レール、52 移動ブロック
60 逆転防止機構、61 ラチェット歯車、62 爪
70 力検出部、72 近接スイッチ、
80 制御部
90 アタッチメント、91 軸、92 フランジ部
100 対象物
110 動力伝達機構、111伝動部材
130 モータ、133 減速機構
160 逆転防止機構、161 ラチェット歯車、
162 爪レバー、162a 爪
163 爪レバー、163a 爪
165 ソレノイド(解除機構)
170 力検出部、172 近接スイッチ
200 対象物
A 正回転方向
B 逆回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に直線移動自在に組み付けられる2部材と、
該2部材のうちの一方の部材を固定して固定側部材とし、他方の部材を前記固定側部材に対して直線方向に移動する移動側部材とすると、前記固定側部材と移動側部材のうちの一方の部材側に設けられるモータの回転運動を他方の部材の相対的な直線運動に変換して前記移動側部材を固定側部材に対して直線移動させる運動変換機構と、を有し、
前記移動側部材を、力を加える対象物に係合させ、前記モータを回転させることにより前記移動側部材を固定側部材に対して直線移動させて対象物に加える力を調整する構成となっており、
前記運動変換機構にモータ側から入力される回転運動方向として、前記運動変換機構を介して前記対象物に加える力を増大させる方向を正回転方向とすると、前記運動変換機構のモータ側の回転機構に、正回転を許容し、かつ逆回転を阻止する逆転防止機構を設け、
該逆転防止機構により、モータがオフした状態で、前記対象物に加えている力の反力として前記移動側部材から運動変換機構の回転機構に伝達される逆作動力を保持可能としたことを特徴とする力保持機能付きリニアアクチュエータ。
【請求項2】
直線運動機構の回転機構と回転防止機構との連結部に、トルクを軽減させる減速機構が設けられている請求項1に記載の力保持機能付きリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記対象物に作用する力が予め設定された力に達するとモータを自動的にオフする制御手段を有している請求項1又は2に記載の力保持機能付きリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記対象物に加える力を検出する力検出手段を有し、前記対象物に作用する力が予め設定された力に達するとモータをオフすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の力保持機能付きリニアアクチュエータ。
【請求項5】
力検出手段は、前記対象物に加える力の反力として、前記移動側部材から運動変換機構を介して固定側部材に至るまでの力伝達経路に作用する内力を検出する構成となっている請求項4に記載の力保持機能付きリニアアクチュエータ。
【請求項6】
力検出手段は、対象物に加える力の反力に応じて弾性変形して軸方向に伸縮する弾性変形部と、該弾性変形部の伸縮量を検知する伸縮量検知部と備えていることを特徴とする請求項4又は5のいずれかの項に記載の力保持機能付きリニアアクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate