説明

加圧型遠心濃縮機の洗浄方法

【目 的】一方向に回転するドラムと、ボウル内においてボウルと同軸をなし、かつ回転差を有して同方向に回転するスクリュコンベヤとを有し、一側の軸心よりボウル内に供給される汚泥に遠心力を加えて濃縮液をボウル内壁側に分離沈降させ、これをスクリュコンベヤによってボウル内の他側に移送したのち、固形分を分離した分離液と、濃縮液とを他側の軸心に設けた二重管構造の排出管の内外側よりそれぞれ排出させる加圧型遠心濃縮機において、洗浄が効果的に短時間で、しかも洗浄中は洗浄水を使用することなく洗浄を行えるようにする。
【構 成】汚泥処理後、一旦洗浄水を通して排水し、ボウル内の残量を1/2程度にする。その後、ボウルを回転して1〜4Gまで上がった時点で停止する動作を繰り返すことにより、ボウル内の液が上がっては落下する動作が繰り返され、この結果、液の乱れと衝撃が生じてボウルに付着する固形分が剥離洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、下水処理場やし尿処理場等で発生する汚泥を濃縮するための加圧型遠心濃縮機、詳しくは図1に示すように、一方向に回転する円筒形のボウル1と、ボウル1内においてボウルと同軸で、かつ回転差を有して同方向に回転するスクリュコンベヤ2とを有し、中空の支持軸3を通してボウル内に供給される汚泥に遠心力を加えることにより、ボウル内壁側に分離沈降した濃縮液をスクリュコンベヤによってボウル内の一側に集積させたのち、固形分を分離した分離液と、濃縮液とを二重管構造の排出管4の内外側よりそれぞれ排出させる加圧型遠心濃縮機、又は一側の軸心に二重管構造の給排出管を設け、ボウル内壁側に分離沈降した濃縮液をスクリュコンベヤによってボウル他側より排出させる一方、固形分を分離した分離液を汚泥と共に給排出管の内外側よりそれぞれ排出及び供給させる加圧型遠心濃縮機の洗浄方法に関する。
【0002】
【従来技術】この種の遠心濃縮機では、運転時には上述するように、ボウル内壁側に分離沈降した濃縮液がスクリュコンベヤにより出側に移送されるが、運転を停止すると、ボウル内壁とスクリュコンベヤとの間に溜まり、スクリュコンベヤで掻き出されない固形分がその自重により次第に垂れ下がって下層部に溜まりがちとなり、この状態で運転を再開すると、アンバランスにより振動を生ずることがある。特開平4−108548号には、運転停止後の残留固形物の固化を防止するために、汚泥処理終了後、回転速度を落として低速で回転させながら給水しつゝ固形分の洗除を行う方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記方法により洗浄を行う場合、洗浄中は連続して給水しなければならない。本発明者らは、上記加圧型遠心濃縮機の洗浄方法について種々実験を重ね、ボウル内の液量を半水状態にし、ボウル内に空隙がある状態で低速回転して洗浄を行ったところ、洗浄効果が上がるうえ、洗浄中は洗浄水を供給しないでも洗浄できることを見出した。
【0004】本発明は、この知見に基づいてなされたもので、その目的は、加圧型遠心濃縮機の洗浄効果が上がり、しかも洗浄中は洗浄水を供給しないでも洗浄が行えるような方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題の解決手段及び作用】本発明はそのため、一方向に回転するボウルと、ボウル内においてボウルと同軸をなし、かつ回転差を有して同方向に回転するスクリュコンベヤとを有し、一側の軸心よりボウル内に供給される汚泥に遠心力を加えて濃縮液をボール内壁側に分離沈降させ、これをスクリュコンベヤによってボウル内の他側に集積させたのち、固形分を分離した分離液と、濃縮液とを他側の軸心に設けた二重管構造の排出管の内外側よりそれぞれ排出させる加圧型遠心濃縮機において、汚泥処理終了後、ボウル内の液量を満水状態より少なく空隙を持たせた状態でボウルを1G以下となる臨界回転数以下で低速回転して洗浄を行うようにしたものである。別の方法では、上記加圧型遠心濃縮機の代わりに、一側に二重管構造の給排出管が設けられ、濃縮液がボウル他側より排出される一方、固形分を分離した分離液が汚泥と共に給排出管の内外側よりそれぞれ排出及び供給させるようにしたタイプの遠心濃縮機が用いられる。
【0006】上記各方法においては、ボウルを1G以下の臨界回転数以下で回転することにより、ボウル内の液がボウルに追随してはその自重により元に戻る動作を繰り返すようになり、濯ぎによる洗浄が行われる。別の発明は、汚泥処理終了後、ボウル内の液量を満水状態より少なく空隙を持たせた状態でボウルを1Gの臨界回転数以上と以下の回転を交互に繰返して洗浄を行うようにしたものである。
【0007】ボウルの回転数が臨界回転数以上になると、ボウル内の液が遠心力によりボウル全周に張り付いた状態となり、臨界回転数以下になると、自重によりボウル上側部に張り付いた液が落下する。したがってボウルの回転を臨界回転数以上と以下に交互に繰り返すことにより、ボウル内の液が全周に張り付いては落下する動作を繰り返すようになり、これにより液の乱れと衝撃が繰り返され、ボウル内周に付着する固形分が剥離洗浄される。
【0008】更に別の発明では、臨界回転数以上の回転と停止を交互に繰返して洗浄が行われる。上記各発明において、洗浄は汚泥処理終了後、ボウル内に残る残液のみで行うこともできるが、好ましくは汚泥処理終了後、一旦ボウル内に洗浄水を通して洗浄したのち、ボウル内に一定量の洗浄水が溜まった状態で洗浄を行うのが望ましい。洗浄水を使用する場合も、洗浄中は洗浄水の供給を行わないため、洗浄水の使用量が少なくなる。
【0009】
【実施例】
実施例1ボウル径700mmφ、ボウル長2100mmの図1に示す遠心濃縮機を用い、図2に示すように、定常負荷運転で汚泥を30m3/hr 処理した。その後運転を停止し、図1の分離液調整弁5を閉、濃縮液調整弁6を開にして洗浄水を30m3/hr 、ボウルが停止するまでの10分間供給し、機内の濃縮液を排出した。その後、分離液調整弁5を開にし、濃縮液調整弁6を開いた状態のまゝにして排液を行い、ボウル内の残液が1/2程度になった3分後、両調整弁5及び6を閉じた。
【0010】次にボウルを0.8Gとなるように低速回転し、21分後、分離液調整弁5、濃縮液調整弁6を開いて30m3/hr の洗浄水を3分間供給し、通水したのち、ボウルの回転を停止し排液した。停止後、装置を分解してボウル内を点検したところ、付着固形物の厚みは0であった。またこのとき使用した洗浄水は6.5m3であった。
【0011】実施例2実施例1と同じ遠心濃縮機を用いて汚泥処理を行ったのち、運転を停止し、実施例1と同様、洗浄水をボウルが停止するまでの10分間供給し、その後排水してボウル内の残液を1/2程度にした。次に図3に示すように、ボウルを回転して1〜4Gまで上がった時点で停止する動作(駆動から停止までの時間が3分)を繰返し、18分後、実施例1と同様、洗浄水を供給してボウル内を満水にしたのち、ボウルの回転を停止し、排液した。停止後、装置を分解してボウル内を点検したところ、付着固形物の厚みは0であった。また使用した洗浄水も実施例1と同様、6.5m3であった。
【0012】比較例実施例1と同じ遠心濃縮機を用いて汚泥処理を行ったのち減速し、3Gの低速でボウルを12分、15分、18分、24分、27分或いは30分間それぞれ駆動した実験を行い、各実験においてそれぞれ減速開始と共に洗浄水を同時間、30m3/hr 供給し、満水状態で洗浄を行った。そして各実験の時間ごとに一旦排水したのち、装置を分解し、ボウル内の固形の付着状況を点検した。その結果、図4に示すように、12分間洗浄したものではほとんど変化がなく3mm程度、18分で2.5mm、24分で2.0mm、27分で1mm、30分洗浄したもので0であった。なお、30分の洗浄に要した洗浄水は20m3であった。図5はそのときのタイムチャートを示す。
【0013】
【発明の効果】本発明は以上のように構成され、次のような効果を奏する。請求項1及び2記載の洗浄方法によれば、洗浄が濯ぎにより行われ、洗浄効果が上がると共に、洗浄中は洗浄水を使用しないため、洗浄水の使用量が少なくなる。請求項3或いは4記載の洗浄方法によれば、ボウル内の液が一旦上に上がっては落ちてくる動作を繰り返すため、液の乱れが激しくなると共に、落下する際の衝撃によりボウル内壁に付着する固形分が剥離され、その結果、洗浄効果が上がって洗浄時間が短縮し、また洗浄中は洗浄水を使用しないため、洗浄水の使用量が少なくてすむ。
【0014】請求項5記載の洗浄方法のように、洗浄に洗浄水を用いれば、洗浄がより効果的に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で用いる加圧型遠心濃縮機の概略図。
【図2】 実施例1のタイムチャート。
【図3】 実施例2のタイムチャート。
【図4】 比較例の洗浄時間と固形分付着量の関係を示す図。
【図5】 比較例のタイムチャート。
【符号の説明】
1・・ボウル 2・・スクリュコンベヤ
3・・中空軸 4・・排出管
5・・分離液調整弁 6・・濃縮液調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一方向に回転するボウルと、ボウル内においてボウルと同軸をなし、かつ回転差を有して同方向に回転するスクリュコンベヤとを有し、一側の軸心よりボウル内に供給される汚泥に遠心力を加えて濃縮液をボール内壁側に分離沈降させ、これをスクリュコンベヤによってボウル内の他側に集積させたのち、固形分を分離した分離液と、濃縮液とを他側の軸心に設けた二重管構造の排出管の内外側よりそれぞれ排出させる加圧型遠心濃縮機において、汚泥処理終了後、ボウル内の液量を満水状態より少なくし、空隙を持たせた状態でボウルを1G以下となる臨界回転数以下で低速回転して洗浄を行うようにしたことを特徴とする加圧型遠心濃縮機の洗浄方法。
【請求項2】 一方向に回転するボウルと、ボウル内においてボウルと同軸をなし、かつ回転差を有して同方向に回転するスクリュコンベヤとを有し、一側の軸心よりボウル内に供給される汚泥に遠心力を加えて濃縮液をボール内壁側に分離沈降させ、これをスクリュコンベヤによってボウル内の他側に集積させたのち、固形分を分離した分離液と、濃縮液とを他側の軸心に設けた二重管構造の排出管の内外側よりそれぞれ排出させる加圧型遠心濃縮機において、汚泥処理終了後、ボウル内の液量を満水状態より少なくし、空隙を持たせた状態でボウルを1Gの臨界回転数以上と以下の回転を交互に繰返して洗浄を行うようにしたことを特徴とする加圧型遠心濃縮機の洗浄方法。
【請求項3】 加圧型遠心濃縮機は、濃縮液と分離液を二重管構造の排出管の内外側よりそれぞれ排出させる上記遠心濃縮機の代わりに、一側の軸心に二重管構造の給排出管を設け、濃縮液を他側の軸心より排出させる一方、固形分を分離した分離液と汚泥を給排出管の内外側よりそれぞれ排出及び供給するタイプの遠心濃縮機が用いられる請求項1又は2記載の加圧型遠心濃縮機の洗浄方法。
【請求項4】 臨界回転数以上と以下の回転を交互に繰り返す代わりに、臨界回転数以上の回転と停止が交互に繰返される請求項2又は3記載の加圧型遠心濃縮機の洗浄方法。
【請求項5】 汚泥処理終了後、一旦ボウル内に洗浄水を通して洗浄したのち、ボウル内に一定量の洗浄水が溜まった状態で洗浄を行う請求項1ないし4記載のいづれかの請求項に記載の加圧型遠心濃縮機の洗浄方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate