説明

加工作業における加工補助装置

【課題】特に木工製品等の精密な加工を容易に行なうことができる加工作業における加工補助装置を提供する。
【解決手段】基盤の上面を加工面とし、そこに配置された加工部によってワークに対する所要の加工作業を行うための装置として、基盤12の側辺に係合する固定手段によって基盤に固定される固定部材40と、上記固定部材の左右方向へ移動可能に当該固定部材に取り付けられた操作側案内部材45と、加工部に対して前進後退可能に上記固定部材に設けられた微調節用案内部材46と、微調節用案内部材の加工部に対する距離を微調節する微動装置50を具備し、上記微動装置は、操作側案内部材と微調節用案内部材がスライド可能に加圧接触する、左右方向成分よりも前後方向成分の方が短く設定された斜面の構成及び微調節用案内部材を前後方向へ移動させるために、操作側案内部材を左右方向へ移動させる機構を具備して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基盤の上面を加工面とし、そこに配置された加工部によってワーク(被加工物)に対する所要の加工作業を行う加工作業において、加工量の微調節に好適な加工補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ルーター或いはトリマーなどと呼ばれ主として木工作業等に用いられる電動工具は、日曜大工などいわゆるドゥーイットユアセルフの分野でも人気の高い工具である。従来この種の電動工具を用いて加工を行う場合、ほとんど手作業に頼っており、その結果、加工精度は作業をする者の熟練の度合いに依存することになる。従って、一定の精度で複数の加工品を製作することには困難が伴う。また、例えば、木材をワークとする切削加工において1mm以下の精密な加工をすることも容易ではなく、特に、小さい木片を正確な形状に切削加工した角材を得ることは難しい作業である。
【0003】
先行技術の調査により見出したものには、サイディング材の端縁についてあいじゃくり部を加工することを主たる目的とした、特開2005−59217号の加工装置がある。同号の発明は、あいじゃくり加工すべき被加工材を定規手段にその一方側縁を当接した状態でかつその加工すべき端縁側を位置決めストッパー手段に当接した状態でテーブル上に載置して、該被加工材をテーブルに対してクランプ手段により上方から押圧固定し、この状態において、位置決めストッパー手段に当接された被加工材の端縁の位置と回転工具手段の回転刃具の外側基準面とが合致され、回転工具手段を該被加工材の端縁に沿って移動することによってその回転刃具により該被加工材の端縁に所定幅及び深さのあいじゃくり加工をなし得るもので、これによって、安定した状態で簡易になし得るとともに、その作業性の向上を図ることができるとされている。
【0004】
つまり、同発明は被加工材をクランプ手段によりテーブル上に押圧固定した状態で所定の加工を行うものであるが、その木工上の技術的な特徴は、ワーク(被加工物)の移動を定規に沿って行い、ワークの固定にクランプ手段を使用することに見られる程度である。クランプ手段として、L字状の2個のクランプレバーと、それらを、第2支ピンを介して傾動可能に連結する第1の連結リンクと、下端のほぼL形部の先端部がクランプレバーの第1支ピンより下位位置において第3支ピンを介して傾動可能に支承されたクランプレバーと、その下端のほぼL形部の隅部の第4支ピンと前記一方のクランプレバーの第1支ピンとを介して斜め状態で傾動可能に連結する第2の連結リンクと、前記2個のクランプレバーのほぼ水平片の先端部に垂下状にそれぞれ螺入されたクランプねじとから成る構成が記載されている。しかしながら、この機構が木工製品の加工を精密に行なう上で特に有用であるとはいえない。
【0005】
【特許文献1】特開2005−59217号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、特に木工製品等の精密な加工を容易に行なうことができる加工作業における加工補助装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、1個のレバーのみを用いた簡単な操作によってワークの加工量を迅速かつ精密に微調節できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、基盤の上面を加工面とし、そこに配置された加工部によってワークに対する所要の加工作業を行う加工作業において、基盤の側辺に係合する固定手段によって基盤に固定される固定部材と、上記固定部材の左右方向へ移動可能に当該固定部材に取り付けられた操作側案内部材と、加工部に対して前進後退可能に上記固定部材に設けられた微調節用案内部材と、微調節用案内部材の加工部に対する距離を微調節する微動装置を具備し、上記微動装置は、操作側案内部材と微調節用案内部材がスライド可能に加圧接触する、左右方向成分よりも前後方向成分の方が短く設定された斜面の構成と、微調節用案内部材を前後方向へ移動させるために、操作側案内部材を左右方向へ移動させる機構とを具備して構成するという手段を講じたものである。基盤に固定される固定部材として前後一対の固定部材を具備し、その内の一方は加工部の側に配置し、他方は操作部の側に配置するとともに、操作側案内部材以下の部材より成るワーク移動量の微調節機構を具備させるための基材として使用する。
【0008】
本発明の装置は、基盤の上面を加工面とし、そこに配置された加工部によってワークに対する所要の加工作業を行う切削加工等を対象とするものである。ここでいう加工作業とは、電動工具をいわば据え付け型にして使用する作業を指している。従って、本発明における加工部とは、加工作業を行う機械装置を意味しており、後述の電動工具又はそれを使用した加工機械を含んでいる。据え付け型とするために基盤は作業台などに取り付け、基盤に電動工具を取り付けるが、本発明の装置は任意のテーブル類を作業台として使用することができる。基盤は、公知の任意の手段により作業台へ取り付けることができる。
【0009】
加工作業に使用される上記の電動工具としては、ルーター或いはトリマーなどと呼ばれる主として木工作業に用いられるものが代表的である。しかし、各種のグラインダー、木彫機、ドリルその他の工具も使用可能である。さらに、これらの電動工具は基盤又はその他の部分を取り付け対象として、基盤上の加工面における作業に適した位置及び状態に取り付けられる。なお、後述する実施形態では、電動工具は基盤の下面が電動工具の取り付け部としており、上記基盤の下面に設置した取り付け部を介して、上下動部材が上下動可能に設けられ、その上端の刃物を、上下動部材により前記基盤の上面から突出させて切削加工を行う構成を取るが、これは一例を示したに過ぎない。
【0010】
本発明の加工補助装置は、まず、基盤の側辺に係合する固定手段によって基盤に固定される固定部材と、上記固定部材の左右方向へ移動可能に当該固定部材に取り付けられた操作側案内部材と、加工部に対して前進後退可能に上記固定部材に設けられた微調節用案内部材と、微調節用案内部材の加工部に対する距離を微調節する微動装置を具備している。上記固定部材は、本発明の加工補助装置を基盤に装着するための部材であり、操作側案内部材は固定部材に対して移動操作され、微調節用案内部材は操作側案内部材に対して操作され、微動装置は、微調節用案内部材の微動操作のために固定部材に取り付けられる。
【0011】
即ち、上記微動装置は、操作側案内部材と微調節用案内部材がスライド可能に加圧接触する、左右方向成分よりも前後方向成分の方が短く設定された斜面の構成と、微調節用案内部材を前後方向へ移動させるために、操作側案内部材を左右方向へ移動させる機構とから構成されている。左右方向成分よりも前後方向成分の方が短く設定された斜面により、左右方向移動量に対して前後方向移動量の方を小さくなり、それだけ精度の倍率を高めることが可能になる。
【0012】
操作側案内部材を左右方向へ移動させる機構としては、固定部材に回転可能に軸支された微動レバーと、微動レバーの回転範囲の固定部材に設けた円弧状溝と、上記円弧状溝を移動する際の左右方向成分により操作側案内部材を左右方向へ移動させ、上記操作側案内部材の左右方向への移動が、斜面により微調節用案内部材の前後方向移動に変換されるように、操作側案内部材に設けた上下方向成分を有するガイド溝と、上記円弧状溝とガイド溝に係合する位置にて微動レバーに設けた係合軸とを具備して構成することが望ましい。
【0013】
基盤は、基盤に固定された固定部材と平行に配置され、かつ、加工面に配置された加工部の側に加工部側案内部材を有しており、加工部側案内部材はそれと固定部材との間にワークを挟んで加工する手段を配置した構成とすることが望ましい。これにより、操作部側の固定部材と加工部側の案内部材を併用して、精密な切削加工等の加工作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、左右方向成分よりも前後方向成分の方が短く設定された斜面を含む微動装置の構成によって木工製品の精密な加工を容易に行なうことができるという効果を奏する。また、本発明によれば、固定部材に回転可能に軸支した1個のレバーを用いた簡単な操作によって微動装置を操作し、ワークの加工量を迅速、精密かつ正確に微調節することが可能な加工作業における加工補助装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は本発明に係る加工作業における加工補助装置30の一例を示すもので、10は切削量の調節装置、11は上記の電動工具であり、例えば、ルーターと呼ばれ特に小型のものについてはトリマーなどと呼ばれている木工用電動工具などがそれに当たる。上記の調節装置10は、手持ち工具として扱われる上記のような電動工具11を基盤12の下面に取り付け、その基盤12を作業台13に据え付けて使用することを目的とする(図2参照)。作業台13として特別のものは必要ではなく、およそ十数キログラム程度の荷重に耐えるテーブル類であれば適用可能であり、かつ、安全に作業をすることができるように意図されている。
【0016】
基盤12は上記の電動工具11及び本発明の加工補助装置30を装着し、かつ、その盤面において切削加工等を行うことができるものである。基盤12としては、例えば、アルミニウム板の如く軽量な材料から成り、かつ、切削加工等の各種加工作業用として十分な強度と平面精度を有するとともに、長方形の平面形状に形成されていることが望ましい。上記基盤12は、それを作業台13に据え付ける手段として、クランプ14を具備している。クランプ14は、作業台13の側辺部を受け入れる大きさを有し断面形状がほぼC字型のクランプ枠14aと、取り付けネジ14bとから成る。クランプ枠14aそれ自体は基盤12の取り付け側辺部の下面に強固に取り付けられており、取り付けネジ14bはC字型のクランプ枠14aの下枠にねじ込みによって取り付けられている。
【0017】
基盤12には、その一側辺に着脱可能に加工部側の固定部材15が取り付けられる。加工部側の固定部材15は上記基盤12の盤面に載置する下板部15aと、その一側から立ち上がる側板部15bを有する断面形状がほぼL字型に形成されている(図3参照)。この加工部側の固定部材15は基盤12の一側辺の長さをやや超える寸法を有している。上記加工部側の固定部材15のほぼ中央部には、切削によって生じる切り粉等を吸引によって排除するために、L字型の角に当たる箇所を半球状に切除して吸引口15cを設け、かつ、上記吸引口15cの外側には、吸引フード16が取り付けてあり、その接続口16aに吸引ダクト17が接続される。加工部側の固定部材15は本発明の加工補助装置30と同様に、着脱が容易、かつ、加工作業に耐える程度に強固に基盤12に取り付ける必要があり、そのため以下に述べる固定手段が加工部側の固定部材15に設けられている。
【0018】
加工部側固定部材15は、基盤12の左右両側辺部に係合させるために、断面形状がほぼC字型の係合片18、19を両端に有している。一方の係合片18は係合可能なC字型の断面形状を有していれば良いが、他方の係合片19についてはC字型の断面形状を有することに加えて固定手段を設けている。図示の固定手段では、ロック部材19aをその先端部が内外方向へ移動するように、C字型の断面形状内部に基端部側の支軸19bにて軸支して取り付け、両端部間の外側にはレバー20をネジ軸周りに回転可能に設け、そのネジ軸20aの先端にてロック部材19aの中間部を内方へ加圧するようにした構成を有している(図5、図6及び図7参照)。故に、レバー20を右に回す回転操作で、両係合片18、19及びロック部材19aを介して基盤12の側面を緊締し、上記固定部材15を基盤12に固定することができ、かつ、固定位置を任意に決めることができる。
【0019】
図示の実施形態に一例として示した切削量の調節装置10は、電動工具11を基盤12の下面に取り付けるもので、各社の電動工具11の取り付けを可能にするために、嵌合による工具取り付け方式を取っている。即ち、基盤12のクランプ14から所要距離だけ離れた位置には、電動工具11の刃物11aを配置する刃物配置部12aが設けられており(図3、図5等参照)、この刃物配置部12aに刃物11aが配置されるように、電動工具11の取り付け部21が設けられている(図6、図7参照)。上記取り付け部21は基盤12の裏面に上端部にて取り付けられ、かつ、前記クランプ14の正面に背面部が取り付けられているもので、取り付けはボルト止めにより強固になされている。
【0020】
電動工具11の取り付け部21には、電動工具11の上下動機構が併設されており、そのため、取り付け部21には上下方向のアリ溝から成るガイドレール22が形成され、さらにそのガイドレール22と係合するアリ足23を有する上下動部材24が装着されている(図8参照)。取り付け部21には、上下動部材24の一部に、外側に配置されたストッパー25のオネジ部25aが螺合するメネジ部24aが形成されており、従って、上記上下動部材24の一部がスライドする範囲の取り付け部内面に、オネジ部25aの上下動範囲にわたって長孔21aが形成されている。
【0021】
上下動部材24は、電動工具11の円筒状の胴部を挿入により嵌め合わせて取り付けるために、欠円形断面形状に形成されており、その欠円端部24b、24bをボルト24cにより緊締可能にした構成を有している。しかしながら、各社の電動工具11のサイズは大同小異であるとは言えるものの同一ではないので、図示の例ではアダプター26を併用してほぼ全社の電動工具11を使用することができるように図っている。図4に示したアダプター26はサイズの異なる円筒状の胴部と欠円形断面形状との径差を埋めるためにその径差に応じるべく、肉厚の異なる複数種類のもの(説明の便宜上符号26−1、26−2で区別する。)が用意されている。このアダプター26は、電動工具11の円筒状の胴部とほぼ全面で接触するように円筒型とし、かつ、欠円筒型にして着脱の融通性を高めたものである。電動工具11は上下動部材24或いはアダプター26に摩擦嵌合によって取り付けられているが、ボルト24cによる緊締との併用であり、刃物11aに加えられる外力は側方からであるので保持力に不足はない。
【0022】
図示の例ではこの上下動部材24による刃物11aの上下動機構として、レバー操作によって刃物11aの突出量を正確に調節するカムレバー機構を適用している。このため上下動機構は、基盤12の下部に設置した支持部材27と、支持部材27に形成されている軸孔に基端部にて回転可能に軸支したレバー28と、上記レバー28の回転軸28aと一体に取り付け、上記支持部材27と前期取り付け部21との間に配置したカム29と、カム29の円弧型のカム溝29aと係合するように上下動部材24に設けられた係合子24dとを有している。よって、円弧型のカム溝29aは、角度にして数十度のレバー28の回転に伴い、刃物11aを基盤面下から作業に応じた突出量だけ基盤面上へ突出するように設けられている(図9参照)。
【0023】
なお、図示のカムレバー機構では、円弧型のカム溝29aの基盤寄りに係合子24dがあるときに刃物11aが上昇位置にあり、反対側の位置では下降位置になる。また、上記レバー28が直線状であるのに対して、円弧型のカム溝29aは始点と終点がレバー28上にてほぼ重なり、かつ、支点と終点の途中がレバー28を押す操作方向に対して凹んだ形態を取るように配置されている。このため、レバー28を引き、刃物11aを突出させるときに操作の開始側ではやや早目に上昇し、終了側では遅目に上昇することになり、操作性が向上するとともに、突出量の微妙な調節が可能になる。
【0024】
さらに、本発明の加工補助装置30について説明する。本発明の加工補助装置30は、また、操作部側の固定部材40に取り付ける補助装置32を有している。しかし、同時に前述した加工部側固定部材15に取り付けて使用する加工部側補助装置31とともに使用可能なものでもある(図1、図11等参照)。加工部側の補助装置31は、加工部側固定部材15に設けられている送り方向前方の長孔33の部分にて、加工部側固定部材15に取り付ける加工部側の可動案内部材34と、同じく送り方向後方の長孔35にて加工部側固定部材15に取り付ける固定案内部材36とを有し、加工部側可動案内部材34は、斜面37a、38aにて接触移動可能な一対の平行移動部材37、38を有している(図5参照)。34aは指掛けを示しており、加工部側可動案内部材34の押し引き操作に用いられる。
【0025】
一方の平行移動部材37は加工部側固定部材15の側板部15bの板面に摺接し、それ自体に開けられた左右方向の長孔37bの範囲で左右方向へ移動可能に設けられている。他方の平行移動部材38は上記長孔37bと重なる位置に設けたメネジ部38bを有しており、止めねじ39を側板部15bの板面に開けられた長孔33から挿入し、長孔37bを通過してメネジ部材38bに螺合することによって位置調節可能に固定される構成である。上記斜面37a、38aは10:1の傾斜を有しており、左右方向へ10mmの移動が前後方向へ1.0mmの移動となるので、前後方向の移動量は左右方向への移動量に対し十分の一となり、実質的に十倍の精度で切削量を調節することができる。その数値設定のために、上記斜面37a、38aの一方にスケールSを設け、他方にはその目盛りを指し示す指標Aを設けるものとする。
【0026】
他方の平行移動部材36は側板部15bの板面に摺接可能であり、切削後のワークを支えるために設けられている。従って、上記平行移動部材36の前面は刃物11aの回転面における切削側の接線と一致する位置を占めるように取り付けられる。その取り付けは、前記と同じ止めねじ39を側板部15bの板面に開けられた長孔35から挿入し、それと重なる位置に設けられている穴部36bの奥に設けたメネジ部材38bと螺合することによって、位置調節可能に固定される。これら一対の平行移動部材37、38の、刃物11aの近傍の部分36c、37cは四分円形に切除され、抵触を防止するとともに、切り粉の排除のための空所を提供する。止めねじ39にはバネ39aを効かせており、これによって平行移動部材の斜面同士を接触させる作用をする。
【0027】
本発明の加工補助装置30における主な構成を司る上記補助装置32は、操作部側の固定部材40とともに使用する。上記固定部材40は、加工部側補助装置31を使用するために基盤12の左右両側辺部に係合させて取り付けた、前記加工部側固定部材15と同様の構成によって基盤12に取り付けられている。従って、図示の上記固定部材40は、基盤12の盤面に載置する下板部40aと、その一側から立ち上がる側板部40bを有する断面形状がほぼL字型に形成されており(図1、図2、図5等参照)、基盤12の一側辺の長さをやや超える寸法を有している。
【0028】
操作部側の固定部材40は、断面形状がほぼC字型の係合片41、42を両端に有し、一方の係合片41は基盤12の側辺に係合可能なC字型の断面形状を有し、他方の係合片42はC字型の断面形状を有することに加えて固定手段を有している。上記固定手段は、ロック部材42aを、その先端部が内外方向へ移動するようにC字型の断面形状内部に基端部側の支軸42bにて軸支して取り付け、両端部間の外側にはレバー43をネジ軸周りに回転可能に設け、そのネジ軸43aの先端にてロック部材42aの中間部を内方へ加圧可能に構成されている(図1、図5参照)。故に、前記と同様に、レバー43の回転操作により、係合片42及びロック部材42aを介して基盤12の側面を係合片41とともに緊締し、操作部側の固定部材40を基盤12に固定することができ、かつ、固定位置を任意に決めることができる。
【0029】
上記の補助装置32は、上記固定部材40の側板部40bに設けた送り方向(前後方向)の透孔44、44の部分にて取り付ける操作側案内部材45と、同じ透孔44、44において取り付ける、微調節用案内部材46を左右に二組具備している。操作側案内部材45と微調節用案内部材46とは、斜面45a、46aにて接触移動可能であり、操作側案内部材45は操作部側の固定部材40の側板部40bの板面に摺接し、それ自体に開けられた左右方向の長孔45bの範囲で左右方向へ移動可能に設けられている。
【0030】
微調節用案内部材46は、上記透孔44と重なる位置に設けたメネジ部46bを有している。よって、止めねじ47を側板部40bの板面に開けられた透孔44から挿入し、操作側案内部材45に開けられた長孔45bを通過させ、メネジ部46bに螺合させることができ、さらに調節位置にて固定可能にされる。上記斜面45a、46aは前記一対の平行移動部材37、38と同様に10:1の傾斜を有しており、左右方向へ10mmの移動が前後方向へ1.0mmの移動となるので、前記と同様に前後方向の移動量は左右方向の移動量に対し十分の一となり、実質的に十倍の精度で切削量を微調節することができる。この数値設定のために、上記斜面45a、46aの一方にスケールSを設け、他方にはその目盛りを指し示す指標Aを設けるものとする。
【0031】
さらに、操作部側の固定部材40には、微調節用案内部材46の微動装置50が設けられている。上記微動装置50は、上記固定部材40の側板部40bに形成した円弧状のガイド溝40cと、操作側案内部材45に形成した上下方向の直線状ガイド溝45cと、上記円弧の中心点にて上記固定部材40に軸支されている微動レバー48と、上記微動レバー48の軸芯と操作部との間にて微動レバー48に取り付けられた係合軸49とから構成され、係合軸49それ自体は上記半円弧状のガイド溝40cと直線状ガイド溝45cに係合する。よって、微動レバー48の回転操作が操作側案内部材45の左右方向への移動に変換され、斜面45a、46aによる分力で、さらに微調節用案内部材46の前後方向への移動(微動)に変換される構成である(図6参照)。
【0032】
このように構成されている切削加工機において刃物11aの突出量を調節するには、まず、電動工具11の胴部を上下動部材24に下から挿入して、嵌め合わせることによって取り付ける。そのとき、上下動部材24の胴部の径と上記胴部の径が合わなければ、適合するアダプター26を用いて密な嵌合が得られるようにし、必要に応じてボルト24cを締め付ける。電動工具11を上下動部材24に取り付けた状態では、電動工具11の荷重により上下動部材24が下がった位置にあり、係合子24dは円弧型のカム溝29aの下方端部にある。そこで、レバー28を時計回りに回転操作し、係合子24dを上記カム溝29aの基盤寄りに移動させ、電動工具11を上方へ移動させると図2の状態になる。それによって、電動工具11の刃物11aを、基盤12の上面から所望量突出させることができるもので、所望の突出に達したならストッパー25を操作して固定する。
【0033】
本発明における加工作業における加工補助装置30によれば、以下のように様々な切削加工が可能である。その加工例を説明すると、図10は、刃物11aによりワークWを切削量dmmだけ加工して基準面を形成する状態を示している。切削量を設定するには、平行移動部材38のスケールSにおいて、指標Aが0mmからdmmの10倍に相当する位置を指すまで、平行移動部材37を左右方向へ移動させ、止めねじ39を操作して可動案内部材34を該当位置にて固定する。図10では指標Aが30mmを指しているので、ワークWに対する切削量は3mmとなり、これで固定案内部材36の前面と平行移動部材38の前面の差が3mmとなる。従って、電動工具11を作動させ、ワークWを平行移動部材38の前面に沿って送り、刃物11aによって切削加工を行うことで、ワークWに基準面51を形成することができ、そのとき、加工直後の基準面51は固定側案内部材36の前面に支えられる。
【0034】
上記加工により切削加工されたワークWの幅をL1とする(図11)。精密に加工された幅LのワークWを得るためには、次に、ワークWの基準面51の反対側、を加工する必要があり、そのため、上記の基準面51を、本発明の補助装置32を構成する、微調節用案内部材46の後面46bに密接させて配置する。その際、加工部側の固定部材15側の方は、加工部側の固定部材15から平行移動部材37、38を取り外し、その代わりにフェザーボードと称する戻り止め部材53、53′を刃物11aの左右に2個取り付けるようにする(図12)。上記戻り止め部材53、53′は、多数の弾性歯53aをワークWの送り方向に順傾斜となるように取り付けた構造を有しており、傾斜に逆らう方向へのワークWの移動即ち戻りを防止し、良好な作業性を得ることができるので、特に、切削加工量(削り代)が小さい場合に有効である。上記弾性歯53aの弾性変形によって吸収可能な削り代は、素材の弾性によって変わるが想定するのは1〜3mm程度である。なお、53bは透明カバーであり、戻り止め部材53、53′の間を覆うように一方の戻り止め部材に設けられている。
【0035】
図12では、指標AがスケールSの0mmから15mmだけずらせた位置を指しているので、ワークWの切削量d′は1.5mmである。図10の如く、削り代が大きいか不明な場合は、固定案内部材36の前面と平行移動部材38の前面との間に段差を設けたが、削り代が1.5mmと小さい場合、戻り止め部材53、53′の前面に段差を設けなくても良く、弾性歯53aの弾性変形によって吸収することができる範囲である。そこで、上記の設定において止めねじ39、47等を操作し、ワークWが戻り止め部材53、53′と本発明の補助装置32によって挟まれ、適度の加圧力の下で固定された状態とする。この状態にて切削加工を行うことにより、前工程で切削された面(基準面51)は微調節用案内部材46の後面46bに支えられてワークWが摺動し、刃物11aによる精密加工がなされる(図13参照)。
【0036】
本発明の加工補助装置30により、このようにしてワークWの平行な2面に対する精密加工が行われ、基準面51と平行な加工面52を得ることができる(図14参照)。しかし、精密に加工された角材を得るには、残る2面についても上記と全く同じ操作を繰り返して切削加工を行う必要がある。そうした全ての加工の結果、4面が平坦に精密に切削加工され、かつ、角が90度に精密に切削加工された角材を得ることができる。いわゆるドゥーイットユアセルフの分野では、小型の角材を必要とする場合も少なくなく、特に、手許にあるような任意の素材から小型の角材を精密に切削加工することは従来の木工機械類では困難であった。しかし、本発明の加工補助装置30によれば、上記のようにして確実にワークWを精密加工し、高い精度の角材を容易かつ確実に得ることができる。
【0037】
本発明の加工補助装置30により最初の基準面51を切削加工した後、基準面51と平行な加工面52が形成された、ワークWの断面図を示すと図15のとおりである。54、55は残る2面の加工面を示す。この切削加工は、ワークWの最大幅よりも長い刃物11aにより行う加工であるが、本発明の加工補助装置30により行える加工の種類は上記に限られない。即ち、刃物11aの突出量によって、ワークWの一部だけを切削するか全幅にわたって切削するかを自由に選択することも可能である。図16はその一例を示しており、曲面11bを有する刃物11aを用いてワークWの一隅に化粧部Cを切削加工した状態である(図16A)。こうして一隅を加工したワークWの左右を入れ替え、微調節用案内部材46の案内面46bに沿ってワークWを送ることで、両角に化粧部Cを切削加工することができる(図16B)。
【0038】
図16の例を考慮すれば、発明の加工補助装置30によって、ワークWに対して様々な形態の切削加工を行うことが可能であり、自由度の高い加工を行えることも了解されるであろう。なお、ワークWの一部だけに化粧部C等を切削する加工の場合には、化粧部C以外のワークWの大部分は元の寸法と同じである。従って、加工直後の部分であっても、固定側案内部材36の前面に支えられるので、図10について説明した切削量調整のための段差は不必要である。本発明では、小さい木片を正確な形状に切削加工した角材が容易に得られることを特徴としているが、ここで「小さい」とは、例えば断面形状について10×10mm角程度、厚さは3mm程度まで切削することができるので帯状の板材であれば3×10mm程度を意図している。このように小さいワークWを送る場合、ワークWに係合する部分を有するヘラのような器具を使用することができる。
【0039】
上記実施形態として示したものは切削加工機であり、主として木材加工を対象とするものであるが、天然木材以外の材料ないしは合成樹脂材料、軽金属材料等を対象とする材料の加工についても適用できることは自明である。また、本発明の加工補助装置30は、切削加工機類への適用にとどまるものではない。即ち、本発明を適用することができる電動工具類としては、前述のとおりルーター或いはトリマーなどと呼ばれる、電動工具又はそれを使用した各種の加工機械が対象となる。さらに、各種のグラインダー、木彫機、ドリルその他の工具も使用可能である。なお、電動工具を使用した加工機械とは、電動ドリルのビットを例えば回転ヤスリと交換し、サンダーとして使用する例のように、工具それ自体の能力が変わったり、新たに付け加わったりするものを想定しており、このような加工機械についてもそれを加工面に加工部として設置し作業を行う場合に、本発明の加工補助装置30を適用することができることは当然であろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る加工作業における加工補助装置の一例を示す斜視図である。
【図2】同上の装置に用いる切削加工機の右側面図である。
【図3】同上における固定部材を拡大して示す断面図である。
【図4】同じく電動工具取り付けの例を示す正面説明図である。
【図5】同上の装置の上面図である。
【図6】同上の装置の正面図である。
【図7】同上の装置の背面図である。
【図8】同じく電動工具取り付け部を拡大して示す下面図である。
【図9】同じく本発明におけるカムレバー機構の説明図である。
【図10】本発明における加工補助装置の使用例1を示す説明図である。
【図11】同上の使用例による加工例を示すワークの平面図である。
【図12】図10に続く使用例を示す平面図である。
【図13】同じく図12に続く使用例を示す平面図である。
【図14】同上の使用例による加工例を示すワークの平面図である。
【図15】同じく本発明による加工例を示すワークの端面図である。
【図16】加工例を示すもので、Aは一隅の加工例を示す端面図、Bは両隅の加工例を示す端面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 本発明の加工補助装置と刃物突出量の調節装置を適用した切削加工機
11 電動工具
12 基盤
13 作業台
14 クランプ
15 加工部側固定部材
16 吸引フード
17 吸引ダクト
18、19 係合片
20 レバー
21 取り付け部
22 ガイドレール
23 アリ足
24 上下動部材
25 ストッパー
26 アダプター
27 支持部材
28 レバー
29 カム
30 加工補助装置
31 加工部側補助装置
32 主たる補助装置
33 前方の長孔
34 可動案内部材
35 後方の長孔
36 固定案内部材
37、38 平行移動部材
39、47 止めネジ
40 操作部側固定部材
41、42 係合片
43 レバー
44 透孔
45 操作側案内部材
46 微調節用案内部材
48 微動レバー
49 係合軸
50 微動装置
51 基準面
52、54、55 加工面
53、53′ 戻り止め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤の上面を加工面とし、そこに配置された加工部によってワークに対する所要の加工作業を行うための装置であって、
基盤の側辺に係合する固定手段によって基盤に固定される固定部材と、
上記固定部材の左右方向へ移動可能に当該固定部材に取り付けられた操作側案内部材と、
加工部に対して前進後退可能に上記固定部材に設けられた微調節用案内部材と、
微調節用案内部材の加工部に対する距離を微調節する微動装置を具備し、
上記微動装置は、操作側案内部材と微調節用案内部材がスライド可能に加圧接触する、左右方向成分よりも前後方向成分の方が短く設定された斜面の構成と、微調節用案内部材を前後方向へ移動させるために、操作側案内部材を左右方向へ移動させる機構とから成る
加工作業における加工補助装置。
【請求項2】
操作側案内部材を左右方向へ移動させる機構として、固定部材に回転可能に軸支された微動レバーと、微動レバーの回転範囲の固定部材に設けた円弧状溝と、上記円弧状溝を移動する際の左右方向成分により操作側案内部材を左右方向へ移動させ、上記操作側案内部材の左右方向への移動が、斜面により微調節用案内部材の前後方向移動に変換されるように、操作側案内部材に設けた上下方向成分を有するガイド溝と、上記円弧状溝とガイド溝に係合する位置にて微動レバーに設けた係合軸とを具備して構成された
請求項1記載の加工作業における加工補助装置。
【請求項3】
基盤は、基盤に固定された案内部材と平行に配置され、かつ、加工面に配置された加工部の側に加工部側案内部材を有しており、加工部側案内部材はそれと固定部材との間にワークを挟んで加工する手段を配置した構成を有する
請求項1記載の加工作業における加工補助装置
【請求項4】
加工部側案内部材に、多数の弾性歯をワークの送り方向に順傾斜となるように取り付けた戻り止め部材を刃物の左右に2個取り付けるようにした構成を有する
請求項3記載の加工作業における加工補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−49243(P2013−49243A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189639(P2011−189639)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(307012698)オトロデザイン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】