説明

加工性の改良されたポリプロピレン樹脂組成物

【目的】 加工性の改良されたポリプロピレン樹脂組成物を得る。
【構成】 ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して分子量50万〜2000万のポリテトラフルオロエチレン(B)を0.01〜20重量部含有することを特徴とする加工性の改良されたポリプロピレン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリプロピレン樹脂にポリテトラフルオロエチレンを含有させることにより剛性度を向上させると同時に、加工性を改良し、外観の優れた良好な成形品を得ることを特徴とする熱可塑性組成物に関するものである。さらに詳しくは射出成形における製品外観の向上、ブロー成形におけるパリソンのドローダウン防止、真空成形性の改良および発泡成形におけるセルの調整等の加工性の改良されたポリプロピレン樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリプロピレン樹脂は、非常に適用範囲の広い樹脂で、射出成形、フィルム成形用として広く使用されている。しかしABS樹脂等に較べ剛性が劣っており、そのために用途が制約される事が多い。ポリプロピレン樹脂の剛性改良に関しては既にいくつかの試みがなされているがその殆どはアスベスト、タルク、ケイソウ土、ガラス繊維等の無機質充填剤含有による改質である。これら無機質充填剤を含有した場合にも確かに剛性は大巾に向上するが一方それら無機質充填剤は吸湿性が著しいため、成形前長時間乾燥を行っても、外観を悪化させ、銀条が発生する等種々問題がある。
【0003】又ポリプロピレン樹脂は、結晶性ポリマーで溶融点付近で急激に粘度が下がるため、無機質充填剤を混入したものでも溶融加工時、溶融樹脂のダイスからのドローダウンが大きく、特に押出成形時のサイジングが非常に難しく、かつ金属との離形性が問題となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる現状に鑑み、鋭意検討した結果、ポリプロピレン樹脂に特定の分子量を有するポリテトラフルオロエチレンの特定量を配合することにより、耐衝撃性、耐熱性の特性を低下させることなく、剛性度を著しく向上させると同時に、ドローダウン、ヒケ等を改良し、かつ、寸法性、表面状態の優れた良好な成形品が得られることを見い出し本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して分子量50万〜2000万のポリテトラフルオロエチレン(B)を0.01〜20重量部含有させたことを特徴とする加工性の改良されたポリプロピレン樹脂組成物を提供するものである。
【0006】本発明において使用されるポリプロピレン樹脂(A)は、一般にポリプロピレンとして市販されているものであり、プロピレンホモポリマーのみならずエチレン−プロピレンコポリマー及び若干の低密度又は高密度ポリエチレンをブレンドしたポリプロピレンを含むものである。
【0007】本発明において使用されるポリテトラフルオロエチレン(B)としては、分子量が50万以上、2000万以下のものである。ポリテトラフルオロエチレンの分子量が50万未満の場合には、ポリプロピレンの剛性度及び加工時の弾性が向上せず、加工性改良の効果が得られない。また分子量が2000万を超える場合には、成形が難しくなり加工性の改良が出来なくなる。
【0008】なお、本発明において使用されるポリテトラフルオロエチレンの分子量は、ASTM D 4591で下記式によって算出されたものである。
【0009】LogMw=27.5345−12.1405D(式中、Mwは重量平均分子量、Dは標準比重を示す。)ポリテトラフルオロエチレンは、溶解度指数が6.2とポリマーの中で最も低く、他のポリマーとは相溶性がないにもかかわらず、上記分子量範囲のポリテトラフルオロエチレンをポリプロピレン樹脂に配合することにより、ポリプロピレン樹脂の加工性を著しく改良できる。
【0010】本発明において、ポリテトラフルオロエチレンの配合量としては、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜5.0重量部の範囲であり、特に好ましくは0.1〜1.0重量部の範囲である。0.01重量部未満では加工性の改良が困難となり、20重量部を超えると成形性、成形品外観が低下する。
【0011】ポリプロピレンにポリテトラフルオロエチレンを分散させるには、任意の方法が採用される。例えばポリテトラフルオロエチレンの分散液をポリプロピレン粉粒体に撹拌下噴霧する方法、ポリテトラフルオロエチレンの分散液をポリプロピレン溶液に撹拌下添加し、ニーダーの如き装置で溶媒を揮発させる方法、ベント付き押出機でポリプロピレンをペレット化する際に、ポリテトラフルオロエチレンの分散液を定量供給し、ベント部より揮発成分を除去する方法、ポリテトラフルオロエチレンの粉体とポリプロピレン樹脂粉粒体を、スーパーミキサーの如き強力な撹拌下混合する方法、ポリテトラフルオロエチレンの粉体をポリプロピレン溶液に添加混合した後溶媒を揮発させる方法等をあげることができる。なお、ポリテトラフルオロエチレンを分散液として使用する場合、0.5〜60%程度にするのが好ましい。
【0012】このようにして得られるポリテトラフルオロエチレンを含有するポリプロピレン樹脂粉粒体は、そのままペレットにした後ブロー成形に供することができる。また、一旦シート又はフィルムにした後、真空成形に供することができる。
【0013】なお、本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、必要に応じて光および熱安定剤、可塑剤、滑剤、耐衝撃強化剤、着色剤、発泡剤等の各種添加剤や無機充填剤を配合することができる。
【0014】
【発明の効果】本発明は、ポリプロピレン樹脂に特定分子量のポリテトラフルオロエチレンを添加することにより、剛性及び加工時の弾性が向上し、従来製造し難かったブロー成形物、特に大型のブロー成形物が容易に得られ、かつ真空成形における深絞り性等が顕著に改良され、その用途拡大に有用である。
【0015】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。以下の記載において「部」とあるものは、すべて「重量部」を意味する。
【0016】なお、各実施例、比較例での諸物性の測定方法は、次の方法による。
【0017】(1)HDT(熱変形温度℃)
ASTM D 648に準じて測定した。18.5kg/cm2荷重。
【0018】(2)ダイスウェル(%)
樹脂を押出機で押出した際に、バラス効果により膨らんだ樹脂の膨らみ具合を下記の式により算出した。
【0019】ダイスウェル(%)=[((押出しサンプルの径)−(ダイスのノズル径))/(ダイスのノズル径)]×100ダイスウェル(%)の値が大きい程、溶融弾性にすぐれ、樹脂の加工性がよくなることを示す。
【0020】(3)ドローダウン(cm)
押出機のノズルからストランドを15cm垂らしたところで切断し、切断したサンプルの端を固定し、垂れ下がりの状態で放置冷却し、サンプルの長さを測定する。
【0021】サンプルの長さが短い程、ドローダウン防止の効果にすぐれ、樹脂の加工性が良くなることを示す。
【0022】(4)曲げ剛性度(kg/cm2
ASTM D 747に準じて測定した。
【0023】(5)メルトストレングス(g)
メルトストレングスとは、フィラメント状の溶融ポリマーを長さ方向に引張るときに生じる張力のことで降下式フロテスターを使用し一定押出量の下(降下速度10mm/min)に一定速度(10mm/min)で巻取り張力を測定した。ノズルのL/Dは10、測定温度は230℃。
【0024】(6)成形品の外観射出成形品の外観を目視により判定した。
【0025】◎…すぐれる ○…良好 △…やや不良 ×…不良(7)発泡成形品の評価発泡成形品における断面セル構造を目視より判定した。
【0026】◎…微細で均一 ○…均一 △…やや不均一 ×…不均一実施例1〜15、比較例5ポリプロピレン樹脂(東燃石油化学(株)製品、J−205)、エチレン−プロピレンゴム(住友化学工業(株)製品、エスプレンE808)およびポリテトラフルオロエチレン(旭硝子(株)製品、フルオンファインパウダー)を表1、表2に示す割合にてミキサーで混合した後、二軸押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30,L/O=28.5、スクリュー径=30mm)で、シリンダー温度190〜220℃で押出しペレットに賦形した。
【0027】このペレットを用いてブロー成形および射出成形してその性能を評価した。また、この賦形ペレットの各々100重量部に対してアゾジカルボンアミド(発泡剤)1.0部配合して、射出成形を行い、発泡成形品を作製し、そのセルの状態を評価した。これらの結果を表1、表2に示す。
【0028】
ブロー成形 成形機:田原昭栄機工(株)製、TS−5023L 成形温度(シリンダー温度):190〜220℃ 金型温度:12℃射出成形 成形機:(株)日本製鋼所製、N−140BII 成形温度(シリンダー温度):190〜220℃ 金型温度:60℃なお、表1、表2中のPPはポリプロピレン樹脂、EPMはエチレン−プロピレンゴムを示す。
【0029】
【表1】


【0030】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して分子量50万〜2000万のポリテトラフルオロエチレン(B)を0.01〜20重量部含有することを特徴とする加工性の改良されたポリプロピレン樹脂組成物。